説明

電気化学素子用電極の製造方法、電気化学素子用電極及び電気化学素子

【課題】高い塗着効率で、安定して、内部抵抗の低い電気化学素子用電極を製造する方法を提供する。
【解決手段】電極活物質、結着剤、導電助剤及び帯電制御樹脂を含んでなる電極材料を、帯電させ、集電体上の少なくとも一面上に供給することにより電極層を形成させることを特徴とする電気化学素子用電極の製造方法、および前記製造方法により得られる電気化学素子用電極を備える電気化学素子。前記帯電制御樹脂の表面帯電量C(μ・クーロン/g)は、10≦|C|≦600の範囲にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学素子用電極の製造方法、これによって得られる電気化学素子用電極及びこの電極を備えた電気化学素子に関する。より詳しくは、電極厚みが薄くかつ均一で、内部抵抗を低減可能な電気化学素子用電極を生産性良く製造する製造方法、これによって得られる電気化学素子用電極及びこの電極を備えた電気化学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタは、エネルギーの環境問題や資源問題から、分散電源やハイブリッド自動車などの大型電源としての応用が期待されている。しかしながら、これらの電気化学素子を大電源として応用するためには、内部抵抗を低減し、大電流放電時のエネルギー損失を小さくする必要がある。
【0003】
内部抵抗の低減のためには、電極厚みを薄くかつ均一にすることが一般的に行われており、薄膜電極を生産性良く製造することが求められている。
【0004】
電極の製造方法としては、電極活物質、結着剤などを含む電極材料をスラリーとし、集電体に塗布、乾燥する方法;電極材料を、混練して、圧延ロールにて目標の厚みまで延展する方法;電極材料をそのまま、あるいは複合粒子状にして加圧成形する方法などが挙げられる。この中でも電極材料を加圧成形する方法は、生産性の点で好ましく、そのための電極材料の供給方法が様々提案されている。
【0005】
電極材料の供給方法として電極材料を帯電させて、静電的に付着させるという方法がある。この方法は、薄く均等に電極材料を供給でき、付着しなかった電極材料を回収して再利用できる可能性があり、生産性の面でも優れている。
【0006】
電極材料を帯電させる方法としては、電極材料を摩擦により帯電させる方法や、コロナ放電を利用し電極材料に直接電圧を印加して帯電させる方法が挙げられる。
【0007】
例えば特許文献1には、結着剤および電極活物質を含む粉末状電極材料を集電体上に供給し、その粉末状電極材料を加熱することにより、前記集電体上に電気化学デバイス用電極を形成する方法が開示されている。そして、粉末状電極材料を集電体上に供給する方法として、静電吹き付け法や静電流動浸漬法など静電気により付着させる方法が例示されている。この方法によれば、電気化学デバイス用電極を連続的に量産することが可能とされている。
また、特許文献2には、活性炭粉末、熱硬化性樹脂、バインダ樹脂、及び帯電制御剤からなる電極用粉体原料を、電子写真プロセスにより有機繊維材料から成る基体上に転写し、さらに炭化工程を経ることにより固体活性炭電極を製造する方法が開示されている。この方法によれば極めて薄い固体活性炭電極を安定して製造できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2004/077467号公報
【特許文献2】特開2001−223142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
薄膜電極を生産性良く製造するための課題として、連続的に安定した電極材料の供給が求められる。このような課題に対して、電極材料を静電的に供給する方法は有効である。しかしながら、電極材料を静電的に供給する場合、塗着効率の向上は生産性の面で重要である。このような課題に対して、特許文献1に記載されている方法では塗着効率を十分に高くできないという問題があった。
また、電極材料の塗着効率を向上させるために、電極材料に帯電制御剤を含有させる方法は有効である。しかしながら、特許文献2に記載されている方法は、帯電工程と、静電付着工程と、転写工程と、炭化工程という複数の工程を有しているため、塗着効率を十分に高くできなず、安定して電気化学素子用電極を製造することがないという問題があった。
従って、本発明は、高い塗着効率で安定して電気化学素子用電極を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に対して鋭意検討の結果、電極活物質、結着剤、導電助剤及び帯電制御樹脂を含んでなる電極材料を、帯電させ、集電体上の少なくとも一面上に供給して電極層を形成させることにより、環境安定性や安全性などが向上するとともに、電極材料を効率よく帯電させることができるので、電極材料を集電体上に効率よく供給することができ、長時間安定して電気化学素子用電極の製造が可能となることを見出し、これらの知見に基づき以下の本発明を完成させるに至った。
【0011】
かくして本発明によれば、電極活物質、結着剤、導電助剤及び帯電制御樹脂を含んでなる電極材料を、帯電させ、集電体上の少なくとも一面上に供給することにより電極層を形成させることを特徴とする電気化学素子用電極の製造方法が提供される。
本発明の電気化学素子用電極の製造方法において、帯電制御樹脂の表面帯電量C(μ・クーロン/g)が、10≦|C|≦600の範囲にあることが好ましい。
また、本発明の電気化学素子用電極製造方法において、帯電制御樹脂のガラス転移温度が、−50℃〜150℃であることが好ましい。
更に、本発明の電気化学素子用電極の製造方法において、帯電制御樹脂の含有量が、電極活物質100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲内であることが好ましい。
更に、本発明の電気化学素子用電極の製造方法において、電極材料が複合粒子であることが好ましい。
更に、本発明の電気化学素子用電極の製造方法において、集電体が、金属であることが好ましい。
本発明によれば、前記製造方法により得られる電気化学素子用電極が提供される。
また、本発明によれば、前記電気化学素子用電極を用いてなる電気化学素子が提供される。
更に、本発明によれば、電気化学素子が電気二重層キャパシタであることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電極材料が帯電制御樹脂を含むことにより、電極材料を効率よく、かつ均一に帯電させることができる。それによって、長時間安定して、集電体上に均一な厚みで、かつ効率よく電極材料を供給することが可能となり、その結果、厚みが均一で内部抵抗の低い電気化学素子用電極を生産性よく製造することが可能である。本発明は、特に電気二重層キャパシタ用電極、ハイブリットキャパシタ用電極、リチウムイオン二次電池用電極の製造方法として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の電気化学素子用電極の製造方法は、電極活物質、結着剤、導電助剤及び帯電制御樹脂を含んでなる電極材料を、帯電させ、集電体上の少なくとも一面上に供給することにより電極層を形成させることを特徴とする。
【0014】
<電極材料>
本発明に用いる電極材料とは、電極活物質、導電助剤、結着剤、帯電制御樹脂、及びその他の電極を構成するのに必要な材料であって、通常は固体粒子状の形態をなしているものを言う。
【0015】
(電極活物質)
本発明の製造方法により得られる電気化学素子用電極に用いる電極活物質は、電極が利用される電気化学素子に応じて選択すればよい。
【0016】
本発明の製造方法により得られる電気化学素子用電極を、電気二重層キャパシタ用電極やハイブリッドキャパシタの正極用電極に用いる場合には、電極活物質としては、通常、炭素の同素体が用いられる。炭素の同素体の具体例としては、活性炭、ポリアセン、カーボンウィスカ及びグラファイト等が挙げられ、これらの粉末または繊維を使用することができる。好ましい電極活物質は活性炭であり、具体的にはフェノール樹脂、レーヨン、アクリロニトリル樹脂、ピッチ、およびヤシ殻等を原料とする活性炭を挙げることができる。
【0017】
本発明の製造方法により得られる電気化学素子用電極を、リチウムイオン二次電池の正極用電極に用いる場合においては、電極活物質としては、具体的には、LiCoO、LiNiO、LiMnO、LiMn、LiFePO、LiFeVOなどのリチウム含有複合金属酸化物;TiS、TiS、非晶質MoSなどの遷移金属硫化物;Cu、非晶質VO・P、MoO、V、V13などの遷移金属酸化物が例示される。さらに、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性高分子が挙げられる。好ましくは、リチウム含有複合金属酸化物である。
【0018】
本発明の製造方法により得られる電気化学素子用電極を、リチウムイオン二次電池の負極用電極やハイブリッドキャパシタの負極用電極に用いる場合には、電極活物質としては、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、及びピッチ系炭素繊維などの炭素質材料;ポリアセン等の導電性高分子;リチウムと合金化可能なSi、Sn、Sb、Al、ZnおよびWなどが挙げられる。好ましくは、グラファイト、天然黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ(MCMB)などの結晶性炭素質材料である。
【0019】
本発明に用いる電極活物質の体積平均粒子径は、通常、0.1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜20μmである。これらの電極活物質は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることが出来る。
【0020】
(導電助剤)
本発明に用いる導電助剤は、導電性を有し、電気二重層を形成し得る細孔を有さない粒子状の炭素の同素体からなり、具体的には、ファーネスブラック、アセチレンブラック、及びケッチェンブラック(アクゾノーベル ケミカルズ ベスローテン フェンノートシャップ社の登録商標)などの導電性カーボンブラックが挙げられる。これらの中でも、アセチレンブラックおよびファーネスブラックが好ましい。
【0021】
本発明に用いる導電助剤の体積平均粒子径は、電極活物質の体積平均粒子径よりも小さいものが好ましく、その範囲は、通常、0.001〜10μm、好ましくは0.05〜5μm、より好ましくは0.01〜1μmである。導電助剤の体積平均粒子径がこの範囲にあると、より少ない使用量で高い導電性が得られる。これらの導電助剤は、単独でまたは二種類以上を組み合わせて用いることができる。導電助剤の量は、電極活物質100重量部に対して通常0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。導電助剤の量がこの範囲にあると、得られる電気化学素子用電極を使用した電気化学素子の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。
【0022】
(結着剤)
本発明に用いる結着剤は、電極活物質や導電助剤を相互に結着させることができる化合物であれば特に制限はない。その種類としては、フッ素系重合体、ジエン系重合体、アクリレート系重合体、セルロース系ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ジエン系重合体、アクリレート系重合体または、セルロース系ポリマーが好ましく、ジエン系重合体又はアクリレート系重合体が、耐電圧を高くでき、かつ電気化学素子のエネルギー密度を高くすることができる点で、より好ましい。また、電極材料を帯電させる方法が、フッ素含有基を有する物質との摩擦帯電である場合は、帯電列の関係を利用することにより、後述する帯電量を調整することができる。例えば、アクリレート系重合体は、ジエン系重合体よりも帯電列上はプラスに帯電し易いので、帯電量を大きくすることが出来る点で好ましい。
【0023】
ジエン系重合体は、共役ジエンの単独重合体もしくは共役ジエンを含む単量体混合物を重合して得られる共重合体、またはそれらの水素添加物である。前記単量体電極材料における共役ジエンの割合は、通常、30重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上である。ジエン系重合体の具体例としては、ポリブタジエンやポリイソプレンなどの共役ジエン単独重合体;カルボキシ変性されていてもよいスチレン・ブタジエン共重合体(SBR)などの芳香族ビニル・共役ジエン共重合体;スチレン・ブタジエン・メタクリル酸共重合体や、スチレン・ブタジエン・イタコン酸共重合体などの芳香族ビニル・共役ジエン・カルボン酸基含有単量体の共重合体;アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)などのシアン化ビニル・共役ジエン共重合体;水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。
【0024】
アクリレート系重合体は、一般式(1):CH=CR−COOR(式中、Rは水素原子またはメチル基を、Rはアルキル基またはシクロアルキル基を表す。)で表される化合物の単独重合体、または前記一般式(1)で表される化合物を含む単量体混合物を重合して得られる重合体である。一般式(1)で表される化合物の具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸n−アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ステアリルなどのアクリレート;メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t-ブチル、メタクリル酸n−アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸ステアリルなどのメタアクリレート等が挙げられる。これらの中でも、アクリレートが好ましく、アクリル酸n−ブチルおよびアクリル酸2−エチルヘキシルが、得られる電極の強度を向上できる点で、特に好ましい。アクリレート系重合体中の一般式(1)で表される化合物由来の単量体単位の割合は、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上である。前記一般式(1)で表される化合物由来の単量体単位の割合が前記範囲であるアクリレート系重合体を用いると、耐熱性が高く、かつ得られる電気化学素子用電極の内部抵抗を小さくできる。
【0025】
前記アクリレート系重合体には、一般式(1)で表される化合物の他に、共重合可能なカルボン酸基含有単量体を用いることができる。カルボン酸基含有単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸などの一塩基酸含有単量体;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの二塩基酸含有単量体が挙げられる。なかでも、二塩基酸含有単量体が好ましく、集電体との結着性を高め、電極強度を向上できる点で、イタコン酸が特に好ましい。これらの一塩基酸含有単量体、二塩基酸含有単量体は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて、使用できる。共重合の際の単量体混合物中のカルボン酸基含有単量体の量は、一般式(1)で表される化合物100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。カルボン酸基含有単量体の量がこの範囲であると、集電体との結着性に優れ、得られる電極強度が高まる。
【0026】
前記アクリレート系重合体には、一般式(1)で表される化合物の他に、共重合可能なニトリル基含有単量体を用いることができる。ニトリル基含有単量体の具体例としては、アクリロニトリルやメタクリロニトリルなどが挙げられ、中でもアクリロニトリルが、集電体との結着性が高まり、電極強度が向上できる点で好ましい。共重合の際の単量体混合物中のアクリロニトリルの量は、一般式(1)で表される化合物100重量部に対して、通常は0.1〜40重量部、好ましくは0.5〜30重量部、より好ましくは1〜20重量部の範囲である。アクリロニトリルの量がこの範囲であると、集電体との結着性に優れ、得られる電極強度が高まる。
【0027】
前記アクリレート系重合体には、前記単量体以外に、アルキルスチレン系モノマーやビニルエステル類などを共重合させたものであってもよい。スチレン系モノマーとしては、スチレンや、メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、トリエチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、ヘプチルスチレンおよびオクチルスチレン等のスチレン系誘導体が挙げられる。ビニルエステル類としては、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n‐酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、パーサティック酸ビニル、ラウリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等のビニルエステル類が挙げることができる。
【0028】
セルロース系ポリマーとは、セルロースのヒドロキシル基の一部もしくは全て置換させたセルロースであり、具体的には、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースエーテルなどが挙げられる。これらの中でもカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ならびにこれらアンモニウム塩またはアルカリ金属塩などのセルロースエーテルが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が、集電体との結着性が高まり、電極強度が向上できる点でより好ましい。
【0029】
本発明に用いる結着剤の量は、電極活物質100重量部に対して、通常は0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜20重量部、より好ましくは1〜10重量部の範囲である。結着剤の量が前記範囲にあると、得られる電極層と集電体との密着性を充分に確保でき、電気化学素子の容量を高く且つ内部抵抗を低くすることができる。また、結着剤の量を多くすると、後述する電極材料の帯電量を大きくすることができ、結着剤の量を少なくすると電極材料の帯電量を小さくすることができる。
【0030】
(帯電制御樹脂)
本発明に用いる帯電制御樹脂とは、本発明に用いる電極材料に帯電性を付与する機能を有する樹脂のことをいう。本発明に用いる帯電制御樹脂としては、負帯電制御樹脂と正帯電制御樹脂とがあげられる。帯電制御樹脂は、本発明の電極材料を負帯電性とするか、正帯電性とするかによって、使い分けることが好ましい。以下、負帯電制御樹脂及び正帯電制御樹脂について説明する。
【0031】
負帯電制御樹脂としては、重合体の側鎖に、カルボキシル基もしくはその塩、フェノール類基もしくはその塩、チオフェノール基もしくはその塩、及び、スルホン酸基もしくははその塩から選択される置換基を有する樹脂等が挙げられる。重合体の側鎖に含有される上記置換基の塩としては、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、ナトリウム、カルシウム、クロム、鉄、マンガン、コバルト等の金属との塩;アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン等の有機塩基との塩が挙げられる
【0032】
上記の中でも、重合体の側鎖にスルホン酸基もしくはその塩を有する樹脂が、帯電量を向上させることができる点で好ましい。具体的には、スルホン酸基又はその塩を含有するモノビニル単量体と、該モノビニル単量体と共重合可能な他のモノビニル単量体を共重合することによって得られる樹脂が挙げられる。共重合可能な他のモノビニル単量体としては、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、ビニルエステル類等が挙げられる。
【0033】
スルホン酸基又はその塩を含有するモノビニル単量体としては、例えばスチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸カリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタクリルスルホン酸アンモニウム等が挙げられる。
【0034】
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。芳香族ビニル単量体としては、例えばスチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられる。エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等が挙げられる。ビニルエステル類としては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n−酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等が挙げられる。
【0035】
負帯電制御樹脂として、重合体の側鎖にスルホン酸基もしくはその塩を有する樹脂を用いる場合ににおける、スルホン酸基もしくはその塩を含有するモノビニル単量体の単量体単位の含有割合は、好ましくは0.5〜15重量%であり、更に好ましくは1〜10重量%である。負帯電制御樹脂における、スルホン酸基もしくはその塩を含有するモノビニル単量体の単量体単位の含有割合が上記範囲であることにより、負帯電制御樹脂の帯電量を十分に向上させることができる。
【0036】
正帯電制御樹脂としては、NH、−NHCH、−N(CH、−NHC、−N(C、−NHCOH等のアミノ基を有する樹脂、及びそれらがアンモニウム塩化された官能基を有する樹脂が挙げられる。このような樹脂は、アミノ基を含有するモノビニル単量体と、それと共重合可能な他のモノビニル単量体を共重合することによって得られる。また、上記のようにして得られた共重合体をアンモニウム塩化することによって得られる。更にまた、アンモニウム塩基を含有するモノビニル単量体と、それと共重合可能なモノビニル単量体と共重合することによっても得られるが、これらの方法に限定されない。アミノ基を含有するモノビニル単量体と共重合可能なモノビニル単量体や、アンモニウム塩基を含有するモノビニル単量体と共重合可能な他のモノビニル単量体としては、負帯電性制御樹脂を得るために用いられるものが挙げられる。
【0037】
アミノ基を含有するモノビニル単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリレート、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリレート、アクリロイロキシメチルモルホリン、アクリロイロキシエチルモルホリン等が例示される。
【0038】
さらに、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノフェニル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジメチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジエチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジプロピルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N,N−ジブチルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ラウリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、p−N−ステアリルアミノベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸3−(ジメチルアミノ)プロピル、2−アミノスチレン、4−アミノスチレン、アリルアミン等が例示される。
【0039】
共重合体をアンモニウム塩化するために用いられるアンモニウム化剤としては、通常に用いられるものが用いられ、例えばヨウ化メチル、ヨウ化エチル、臭化メチル、臭化エチル等のハロゲン化アルキル; パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル、パラトルエンスルホン酸プロピル等のパラトルエンスルホン酸アルキルエステル等が挙げられる。
【0040】
本発明に用いる帯電制御樹脂のガラス転移温度は、好ましくは−50〜150℃であり、更に好ましくは20〜120℃であり、最も好ましくは40〜100℃である。帯電制御樹脂のガラス転移温度が上記範囲にあると、少量の使用量で結着性に優れ、電極強度が強く、柔軟性に富み、電極形成時のプレス工程により電極密度を容易に高めることができる。
【0041】
本発明に用いる帯電制御樹脂の表面帯電量C(μ・クーロン/g)は、好ましくは10≦|C|≦600、より好ましくは50≦|C|≦600、特に好ましくは300≦|C|≦600である。本発明における表面帯電量とは、ブローオフ帯電量測定装置(京セラケミカル製、機器名「TB−200」もしくは「TB−203」)で測定された、鉄粉キャリアに対する帯電量である。帯電制御樹脂の表面帯電量Cが、上記範囲内にあると、電極材料の帯電量をさらに十分に向上させることができる。
【0042】
本発明に用いる帯電制御樹脂の電極材料における含有量は、特に制限されないが、電極活物質100重量部に対して、好ましくは0.01〜20重量部、より好ましくは0.05〜10重量部、特に好ましくは0.1〜5重量部である。電極材料における帯電制御樹脂の含有量が上記範囲にあると、電極材料の帯電量を向上させることができ、塗着効率をより向上させることができる。
帯電制御樹脂含有させる方法としては、特に制限されず、帯電制御樹脂と、他の電極材料とをヘンシェルミキサーなどの混合機に仕込み攪拌する方法;後述する噴霧乾燥造粒法において複合粒子を製造する場合において、帯電制御樹脂を、後述する電極活物質と、結着剤と、導電助剤と、必要に応じて分散剤およびその他の成分とを溶媒中で混合して得られる分散液中に溶解または分散させる方法等が挙げられるが、中でも、帯電制御樹脂と他の電極材料を構成する材料とをヘンシェルミキサーなどの混合機に仕込み攪拌する方法が好ましく、電極活物質、結着剤及び導電助剤を含む複合粒子と帯電制御樹脂とをヘンシェルミキサーなどの混合機に仕込み攪拌する方法がより好ましい。帯電制御樹脂を含有させる方法として、電極活物質、結着剤及び導電助剤を含む複合粒子と、帯電制御樹脂とをヘンシェルミキサーなどの混合機に仕込み攪拌する方法を用いることにより、電極活物質を含む複合粒子の表面に帯電制御樹脂を付着させることができる。
【0043】
本発明の製造方法においては、電極材料が、その他の電極を構成するのに必要な以下のような材料を含有していてもよい。
【0044】
(分散剤等)
分散剤とは後述するスラリーの溶媒に溶解させて用いられ、電極活物質、導電助剤等を溶媒に均一分散させするものである。
分散剤の具体例としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース系ポリマー、ならびにこれらのアンモニウム塩またはアルカリ金属塩;ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウムなどのポリ(メタ)アクリル酸塩;ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;ポリカルボン酸;酸化スターチ、リン酸スターチ、カゼイン等の各種変性デンプン;キチン;キトサン誘導体;などが挙げられる。
これらの分散剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。中でも、セルロース系ポリマーが好ましく、カルボキシメチルセルロースまたはそのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩が特に好ましい。
【0045】
分散剤の使用量は、本発明の効果を損なわない範囲で用いることができ、格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して、通常は0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは1〜4重量部の範囲である。分散剤を用いることで、スラリー中の固形分の沈降や凝集を抑制できる。また、噴霧乾燥時のアトマイザーの詰まりを防止することができるので、噴霧乾燥を安定して連続的に行うことができる。
【0046】
その他の添加剤としては、例えば、界面活性剤がある。界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、ノニオニックアニオンなどの両性の界面活性剤が挙げられるが、中でもアニオン性もしくはノニオン性の界面活性剤で熱分解しやすいものが好ましい。
【0047】
界面活性剤は単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。界面活性剤の量は、格別な限定はないが、電極活物質100重量部に対して0〜50重量部、好ましくは0.1〜10重量部より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0048】
本発明に使用される電極材料は、上記電極活物質、導電助剤、結着剤、帯電制御樹脂を好適な成分として、必要に応じて分散剤、その他添加剤を含有してなる粒子形状のもの(以下、「複合粒子」ということがある)であることが好ましい。また、電極活物質、導電助剤及び結着剤を含んでなる複合粒子の表面に帯電制御樹脂を外添した外添粒子であることがより好ましい。電極材料が前記外添粒子であることにより、異なる材料間での帯電性の差をなくすことができる点において好適である。
【0049】
複合粒子の製造方法は特に制限されず、噴霧乾燥造粒法、転動層造粒法、圧縮型造粒法、攪拌型造粒法、押出し造粒法、破砕型造粒法、流動層造粒法、流動層多機能型造粒法、パルス燃焼式乾燥法、および溶融造粒法などの公知の造粒法により製造することができる。中でも、表面付近に結着剤および導電助剤が偏在した複合粒子を容易に得られるので、噴霧乾燥造粒法が好ましい。
噴霧乾燥造粒法は、電極活物質と、結着剤と、導電助剤と、必要に応じて分散剤およびその他の成分とを溶媒中で混合して分散液とする工程、並びに、該分散液を噴霧乾燥して複合粒子を形成する工程を含む。具体的には、複合粒子の形成工程で、噴霧乾燥機を使用して上記分散液をアトマイザから噴霧し、噴霧された分散液を乾燥塔内部で乾燥することで、分散液中に含まれる電極活物質、結着剤およびその他の成分からなる球状の複合粒子が形成される。噴霧乾燥造粒法で得られる複合粒子を用いると、本発明の電気化学素子用電極を高い生産性で得ることができる。また、該電極の内部抵抗をより低減することができる。
【0050】
噴霧乾燥造粒法により複合粒子を製造する場合において、前記分散液を得るために用いられる溶媒は、特に限定されないが、分散剤を溶解可能な溶媒が好適に用いられる。具体的には、通常水が用いられるが、有機溶媒を用いることもできるし、水と有機溶媒との混合溶媒を用いてもよい。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール等のアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のアルキルケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグライム等のエーテル類;ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン等のアミド類;ジメチルスルホキサイド、スルホラン等のイオウ系溶剤;等が挙げられる。この中でも有機溶媒としては、アルコール類が好ましい。水よりも沸点の低い有機溶媒と、水とを併用すると、噴霧乾燥時に、乾燥速度を速くすることができる。また、水と併用する有機溶媒の量または種類によって、結着剤の分散性または分散剤の溶解性が変わる。これにより、スラリーの粘度や流動性を調整することができ、生産効率を向上させることができる。
【0051】
スラリーを調製するときに使用する溶媒の量は、スラリーの固形分濃度が、通常1〜50質量%、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲となる量である。固形分濃度がこの範囲にあるときに、結着剤が均一に分散するため好適である。
【0052】
電極活物質、結着剤、導電助剤や分散剤などの他の成分を、溶媒に分散または溶解する方法または手順は特に限定きれず、例えば、溶媒に電極活物質、結着剤、導電助剤や分散剤などの他の成分を添加し混合する方法;溶媒に分散剤を溶解した後、溶媒に分散きせた結着剤(例えば、ラテックス)を添加して混合し、最後に電極活物質及び導電助剤を添加して混合する方法;溶媒に分散させた結着剤に電極活物質および導電助剤を添加して混合し、これに溶媒に溶解させた分散剤を添加して混合する方法等が挙げられる。混合の手段としては、例えば、ボールミル、サンドミル、ビーズミル、顔料分散機、らい潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、ホモミキサー、プラネタリーミキサー等の混合機器が挙げられる。混合は、通常、室温室温〜80℃の範囲で、10分間〜数時間行う。
【0053】
スラリーの粘度は、室温において、通常5〜3000mPa・s、好ましくは10〜1000mPa・s、より好ましくは15〜500mPa・sの範囲である。スラリーの粘度がこの範囲にあると、複合粒子の生産性を上げることができる。また、スラリーの粘度が低いほど、噴霧液滴が小さくなり、得られる複合粒子の体積平均粒子径が小さくなる。
【0054】
次に、上記で得たスラリーを噴霧乾燥して造粒し、複合粒子を得る。噴霧乾燥は、熱風中にスラリーを噴霧して乾燥することにより行う。スラリーの噴霧に用いる装置としてアトマイザーが挙げられる。アトマイザーは、回転円盤方式と加圧方式との二種類の装置がある。回転円盤方式は、高速回転する円盤のほぼ中央にスラリーを導入し、円盤の遠心力によってスラリーが円盤の外に放たれ、その際にスラリーを霧状にする方式である。円盤の回転速度は円盤の大ききに依存するが、通常は5,0000〜50,000rpm、好ましくは20,000〜45,000rpmである。円盤の回転速度が高いほど、噴霧液滴が小さくなり、得られる複合粒子の重量平均粒子径が小さくなる。回転円盤方式のアトマイザーとしては、ピン型とべーン型が挙げられるが、好ましくはピン型アトマイザーである。ピン型アトマイザーは、噴霧盤を用いた遠心式の噴霧装置の一種であり、該噴霧盤が上下取付円板の間にその周縁に沿ったほぼ同心円上に着脱自在に複数の噴霧用コロを取り付けたもので構成きれている。スラリーは噴霧盤中央から導入きれ、遠心力によって噴霧用コロに付着し、コロ表面を外側へと移動し、最後にコロ表面から離れ噴霧される。一方、加圧方式は、スラリーを加圧してノズルから霧状にして乾燥する方式である。
【0055】
噴霧されるスラリーの温度は、通常は室温であるが、加温して室温以上にしたものであってもよい。また、噴霧乾燥時の熱風温度は、通常80〜250℃、好ましくは100〜200℃である。噴霧乾燥において、熱風の吹き込み方法は特に制限きれず、例えば、熱風と噴霧方向が横方向に並流する方式、乾燥塔頂部で噴霧きれ熱風と共に下降する方式、噴霧した滴と熱風が向流接触する方式、噴霧した滴が最初熱風と並流し次いで重力落下して向流接触する方式等が挙げられる。
【0056】
本発明に好適に用いる複合粒子の重量平均粒子径は、通常0.1〜1,000μm、好ましくは5〜500μm、より好ましくは10〜100μmの範囲である。複合粒子の重量平均粒子径がこの範囲にあるとき、複合粒子が凝集を起こしにくく、重力に対して静電気力が大きくなるので好ましい。重量平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
【0057】
また、前記複合粒子は、球状であることが好ましい。前記複合粒子が球状であるか否かの評価は、複合粒子の短軸径をLs、長軸径をLlとしたときに(Ll−Ls)/{(Ls+Ll)/2}で算出される値(以下、「球状度」という。)により行う。ここで、短軸径Lsおよび長軸径Llは、反射型電子顕微鏡を用いて複合粒子を観察した写真像より測定される100ケの任意の複合粒子についての平均値である。この数値が小さいほど球状複合粒子が真球に近いことを示す。
【0058】
たとえば、上記写真像で正方形として観察される粒子は、上記球状度は34.4%と計算されるので、34.4%を超える球状度を示す複合粒子は、少なくとも球状とはいえない。複合粒子の球状度は、好ましくは20%以下であり、さらに好ましくは15%以下である。複合粒子の球状度が、前記範囲であることにより、この複合粒子からなる電極層を形成した電気化学素子用電極を備える電気化学素子の内部抵抗が低減し、出力特性を向上させることができる。
【0059】
上記の製造方法で得られた複合粒子は、必要に応じて粒子製造後の後処理を実施することもできる。具体例としては、複合粒子に上記の電極活物質、導電助剤、結着剤、分散剤あるいはその他の添加剤等と混合することによって、複合粒子表面を改質して、複合粒子の流動性を向上または低下させる、連続加圧成形性を向上させる、複合粒子の電気伝導性を向上させる、複合粒子の平均帯電量を調整することなどができる。
【0060】
<集電体>
本発明に用いる集電体としては、例えば、金属、炭素、導電性高分子などを用いることができ、好適には金属が用いられる。集電体用金属としては、通常、アルミニウム、白金、ニッケル、タンタル、チタン、ステンレス鋼、銅、その他の合金等が使用される。これらの中で導電性、耐電圧性の面から銅、アルミニウムまたはアルミニウム合金を使用するのが好ましい。
【0061】
本発明に用いる集電体の形状は、特に制限されないが、通常、フィルム状またはシート状であり、シート状集電体は、空孔を有していてもよい。また、シート状集電体はエキスパンドメタル、パンチングメタル、網状などの形状を有していてもよい。空孔を有するシート状集電体を用いると、得られる電極の体積当りの容量を高くすることができる。シート状集電体が空孔を有する場合の空孔の割合は、好ましくは10〜79面積%、より好ましくは20〜60面積%である。
【0062】
集電体の厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜200μm、好ましくは5〜100μm、より好ましくは10〜50μmである。集電体の厚みがこの範囲内にあると、電子の移動抵抗を低減でき、内部抵抗が低減できる。
【0063】
本発明では、集電体の少なくとも一面上に接着剤層が形成されていることが好ましい。接着剤層は、電極層と集電体との界面抵抗を小さくできることから、導電性のものがより好ましい。接着剤層は集電体の表面に接着剤を塗布、乾燥することで形成することができる。
接着剤は、導電助剤の粉末と結着剤と、必要に応じ添加される分散剤とを、水または有機溶媒中に分散させたものである。導電性接着剤に用いられる導電助剤としては、銀、ニッケル、金、黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラックなどが挙げられ、好ましくは、黒鉛、アセチレンブラックである。導電性接着剤に用いられる結着剤としては、上述する電極層を構成する結着剤として例示したものをいずれも使用できる。また、水ガラス、エポキシ樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ウレタン樹脂等も用いることができ、これらはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用できる。
導電性接着剤に用いられる結着剤としては、アクリレート系重合体、カルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩もしくはアルカリ金属塩、水ガラス、またはポリアミドイミド樹脂が好ましい。また、導電性接着剤に用いられる分散剤としては、上記本発明の製造方法の電極層に使用してもよい分散剤、または界面活性剤を用いることができる。
本発明に用いる接着剤層の形成方法は、特に制限されないが、例えば、ドクターブレード法、ディップ法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り、静電塗装法などによって、集電体上に形成される。
【0064】
接着剤層の厚みは、通常、0.01〜20μm、好ましくは0.1〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。接着剤層の厚みが前記範囲であることにより、本発明の製造方法により得られる電気化学素子用電極を有する電気化学素子の内部抵抗をより低減することができる。
【0065】
<帯電>
本発明において、電極材料を帯電させるとは、電極材料に処理を施すことにより電極材料をプラスまたはマイナスに帯電させることをさす。電極材料の帯電方法としては、特に制限はないが、電極材料に直接電圧を印加して帯電させる方法や、電極材料を摩擦により帯電させる方法などが挙げられる。
【0066】
電極材料に直接電圧を印加して帯電させる方法としては、コロナ放電を利用した帯電方法が挙げられる。コロナ放電を利用した帯電方法は、電極材料を集電体上にスプレー噴霧するときにこれをコロナ放電電極近傍を通過させることにより帯電させる方法や、電極材料を流動化状態(流動層)にし、その中にコロナ放電電極を設置して帯電させる方法が挙げられる。
【0067】
電極材料を摩擦帯電させる方法としては、帯電列を利用して、電極材料とこれを帯電させやすい物質とを接触させて帯電させる方法が用いられる。帯電列とは、物資が固有に持つものであり、帯電しやすさを、マイナスに帯電しやすい材料からプラスに帯電しやすい材料までにわたって相対的に序列したものである。摩擦させる2つの物質が帯電列上離れているほど、それぞれが大きく帯電するので、帯電列上で、電極材料から帯電列が離れた物質と、電極材料とを接触させることで容易に電極材料を帯電させることができる。電極材料をプラスに帯電させる場合は、これとポリテトラフルオロエチレンや塩化ビニルなどとを接触させることにより、電極材料をマイナスに帯電させる場合は、これとアスベストやナイロンなどと電極材料とを接触させることにより、それぞれ帯電させることができる。
【0068】
電極材料は、上記の複数の電極材料および帯電制御樹脂を混合して帯電させてもよいが、異なる材料間での帯電性の差をなくすことができるので、上記の電極材料を複合粒子化したものを帯電させるほうが好ましい。
【0069】
<電極層の形成>
(電極材料供給方法)
本発明では、上記帯電させた電極材料を、集電体上の少なくとも一面上に供給することにより電極層を形成する。帯電させた電極材料を集電体上に供給する方法に特に制限はない。例えば、静電粉体塗装のように、接地された集電体上に、帯電させた電極材料を噴霧して供給してもよいし、静電スクリーン印刷のように、設置された集電体上に帯電させた電極材料を転写させてもよい。また、本発明における帯電と、電極材料供給とを同時に行ってもよい。
【0070】
そして、前記集電体と前記供給方法によりその一面上に供給された電極材料とを一対の加熱ロールで加圧して、集電体と電極層との密着性を向上させる。この工程では、必要に応じ加温された前記電極材料が、一対のロールでシート状の電極層に成形されてもよい。供給される電極材料の温度は、好ましくは40〜160℃、より好ましくは70〜140℃である。この温度範囲にある電極材料を用いると、プレス用ロールの表面で電極材料のすべりがなく、電極材料が連続的かつ均一にプレス用ロールに供給されるので、膜厚が均一で、電極密度のばらつきが小さい、電気化学素子用電極シートを得ることができる。
【0071】
本発明において、成形時の加熱ロールの温度は、通常、0〜200℃である、結着剤の融点またはガラス転移温度より高いことが好ましく、結着剤の融点またはガラス転移温度より20℃以上高いことがより好ましい。プレス用ロールを用いる場合の成形速度は、通常10m/分以上、成形性をより高く、薄膜化をより容易にすべく、好ましくは20〜200m/分、さらに好ましくは30〜80m/分である。またプレス用ロール間のプレス線圧は、特に規定されないが、得られる電極の電極強度を高くすることができる点で、好ましくは0.2〜30kN/cm、より好ましくは0.5〜10kN/cmである。
【0072】
本発明においては、前記一対の加熱ロールの配置は特に限定されないが、略水平または略垂直に配置されることが好ましい。略水平に配置する場合は、前記集電体を一対のロール間に連続的に供給し、該ロールの少なくとも一方に電極材料を供給することで、集電体とロールとの間隙に電極材料が供給され、加圧により電極層を形成できる。略垂直に配置する場合は、前記集電体を水平方向に搬送させ、該集電体上に電極材料を供給し、電極材料の層を形成する。供給された電極材料層を必要に応じブレード等で均した後、該集電体を一対のロール間に供給し、加圧により電極層を形成できる。
【0073】
成形した成形体の厚みばらつきをなくし、密度を上げて高容量化をはかるために、必要に応じて更に後加圧を行ってもよい。後加圧の方法は、ロールによるプレス工程が一般的である。ロールプレス工程では、2本の円柱状のロールをせまい間隔で平衡に上下に並べ、それぞれを反対方向に回転させて、その間に電極をかみこませ加圧する。ロールは加熱または、冷却等、温度調節してもよい。
【0074】
<電気化学素子用電極>
本発明の電気化学素子用電極は、本発明の電気化学素子用電極の製造方法によって得られる。
本発明の製造方法で得られる電気化学素子用電極の、電極層の厚みは、電気化学素子の種類により異なるが、通常10μm〜200μm、好ましくは30〜100μmである。電極層の厚みがこの範囲にあると、内部抵抗とエネルギー密度のバランスがとれた電気化学素子用の電極となり好ましい。
電気化学素子用電極は、集電体層、並びに、電極活物質、結着剤、導電助剤及び帯電制御樹脂を含有してなる電極層から構成され、必要に応じて、接着剤層、セパレータ層があってもよい。
【0075】
<電気化学素子>
本発明の電気化学素子は、本発明の電気化学素子用電極を備えてなる。電気化学素子としては、リチウムイオン二次電池、電気二重層キャパシタやハイブリッドキャパシタなどが挙げられるが、電気二重層キャパシタが好適である。
【0076】
電気二重層キャパシタは、電極、セパレータおよび電解液で構成され、前記電極として、本発明の電気化学素子用電極を用いる。
【0077】
セパレータは、電極の間を絶縁でき、陽イオンおよび陰イオンを通過させることができるものであれば特に限定されない。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、レーヨンもしくはガラス繊維製の微孔膜または不織布、一般に電解コンデンサ紙と呼ばれるパルプを主原料とする多孔質膜などを用いることができる。セパレータは、上記一対の電極層が対向するように、電極の間に配置され、素子が得られる。セパレータの厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常は1〜100μm、好ましくは10〜80μm、より好ましくは20〜50μmである。
【0078】
電解液は、通常、電解質と溶媒で構成される。電解質は、カチオン性であってもよく、アニオン性であってもよい。カチオン性電解質としては、以下に示すような(1)イミダゾリウム、(2)第四級アンモニウム、(3)第四級ホスホニウム、(4)リチウム等を用いることができる。
(1)イミダゾリウム
1,3−ジメチルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジエチルイミダゾリウム、1,2,3−トリメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラメチルイミダゾリウム、1,3,4−トリメチル−エチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2,4−ジエチルイミダゾリウム、1,2−ジメチル−3,4−ジエチルイミダゾリウム、1−メチル−2,3,4−トリエチルメチルイミダゾリウム、1,2,3,4−テトラエチルイミダゾリウム、1,3−ジメチル−2−エチルイミダゾリウム、1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム、1,2,3−トリエチルイミダゾリウム等
(2)第四級アンモニウム
テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム等
(3)第四級ホスホニウム
テトラメチルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、メチルトリエチルホスホニウム、メチルトリブチルホスホニウム、ジメチルジエチルホスホニウム等
(4)リチウム
【0079】
また、アニオン性電解質としては、PF、BF、AsF、SbF、N(RfSO2−、C(RfSO3−、RfSO(Rfはそれぞれ炭素数1〜12のフルオロアルキル基)、F、ClO、AlCl、AlF等を用いることができる。これらの電解質は単独または二種類以上として使用することができる。
【0080】
電解液の溶媒は、一般に電解液の溶媒として用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、プロピレンカーボート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジメチルカーボネートなどのカーボネート類;γ−ブチロラクトンなどのラクトン類;スルホラン類;アセトニトリルなどのニトリル類;が挙げられる。これらは単独または二種以上の混合溶媒として使用することができる。中でも、カーボネート類が好ましい。
【0081】
上記の素子に電解液を含浸させて、本発明の電気化学素子が得られる。具体的には、キャパシタ素子を必要に応じ捲回、積層または折るなどして容器に入れ、容器に電解液を注入して封口して製造できる。また、素子に予め電解液を含浸させたものを容器に収納してもよい。容器としては、コイン型、円筒型、角型などの公知のものをいずれも用いることができる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における部および%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0083】
<試験法>
(塗着効率)
供給した電極材料の重量および、集電体上に電極材料の層を形成した電極材料の重量から下式にしたがって集電体への塗着効率を算出する。塗着効率は高いほど好ましい。
塗着効率(%)=集電体上に付着した電極材料の重量/供給した電極材料の重量×100
【0084】
(内部抵抗)
内部抵抗は、作製したセルを24時間静置させた後に充放電の操作を行い測定する。充電は100mAの定電流で行い、放電0.1秒後の電圧降下と定電流値から内部抵抗を算出する。内部抵抗値は小さいほど好ましい。
【0085】
<実施例1>
電極活物質として比表面積1,800m/g、体積平均粒子径5μmの高純度活性炭粉末「クラレコール YP−17D」(クラレケミカル社製)100部、結着剤として、体積平均粒子径0.31μmのアクリレート系重合体(アクリル酸n−ブチル40重量%、メタクリル酸エチル40重量%、メタクリル酸n−ブチル17重量%、メタクリル酸3重量%を乳化重合した共重合体)の40%水分散体を固形分換算で5部、導電助剤として平均粒径0.7μmのアセチレンブラック(デンカブラック粉状;電気化学工業社製)を5部、分散剤としてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩「DN−800H」(ダイセル化学工業社製)の1.5%水溶液を固形分換算で1.4部、およびイオン交換水を348.7部加えて、「TKホモミキサー」(プライミクス社製)で攪拌混合して固形分濃度が20%のスラリーを得た。スラリーのpHは23℃で7.6であった。このスラリーを25%アンモニア水でpH8.5に調整し、スプレー乾燥機(OC−16;大河原化工機社製)を使用し、回転円盤方式のアトマイザ(直径65mm)の回転数40,000rpm、熱風温度150℃、粒子回収出口の温度が90℃の条件で噴霧乾燥造粒を行い、電極材料の複合粒子を得た。この複合粒子の重量平均粒子径は25μm、球状度は8%であった。
前記複合粒子100部と、正帯電制御樹脂として表面帯電量+30μC/g、ガラス転移温度82℃、平均粒径0.07μmのスチレンアクリル系樹脂「QA‐1150」(日本ペイント社製)0.2部とを、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)を用いて10分間混合し、複合粒子に帯電制御樹脂を付着させた粒子(外添粒子)を得た。
【0086】
体積平均粒子径が0.7μmのカーボンブラック100部、分散剤であるカルボキシメチルセルロースの4.0%水溶液(DN−10L;ダイセル化学工業社製)を固形分換算で4部、結着剤である数平均粒子径が0.25μmのアクリレート系重合体の40%水分散体を固形分換算で8部およびイオン交換水を全固形分濃度が30%となるように混合し、導電性接着剤層形成用のスラリーを調製した。
【0087】
厚さ30μmのアルミニウム箔からなる集電体に前記導電性接着剤形成用のスラリーを塗布し、120℃で、10分間乾燥して厚み4μmの導電性接着剤層を形成した。その後、導電性接着剤層を表面に形成した集電体を水平に設置した。
【0088】
次いで、旭サナック社製摩擦帯電式静電粉体塗装機MTR−100VTminiおよび旭サナック社製摩擦帯電式静電粉体手動ガンT−2mタイプL7(インナースリーブおよびアウタースリーブはポリテトラフルオロエチレン製)を用いて、前記外添粒子を帯電させると共にこれを集電体の接着剤層上に供給して、電極層を形成して、電気化学素子用電極を得た。具体的には前記外添粒子を前記粉体塗装機のホッパー内に投入し、定量供給用スクリューフィーダーの回転数を調節し、外添粒子を90g/分で供給した。また、前記粉体手動ガンからの搬送エア圧力を0.4MPaとして前記集電体の導電性接着剤層に上部より電極材料を供給した。なお、外添粒子は、前記粉体手動ガンのインナースリーブとアウタースリーブの隙間を通過させる際の摩擦により帯電させた。塗着効率は35%であった。
【0089】
この電極材料の層が形成された集電体をロールプレス機(押し切り粗面熱ロール、ヒラノ技研工業社製)のロール(ロール温度120℃、プレス線圧4kN/cm)に供給し、ロール加圧成形によりシート状の厚密化された電極層を形成し、これを5cm正方に打ち抜いて、電極層厚みが60μm、電極層密度が0.58g/cmの電気二重層キャパシタ用電極を製造した。
【0090】
<実施例2>
正帯電制御樹脂として、表面帯電量+80μC/g、ガラス転移温度102℃、平均粒径0.06μmのスチレンアクリル系樹脂「FS‐401」(日本ペイント社製)を1.0部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電極層厚みが60μm、電極層密度が0.58g/cmの電気二重層キャパシタ用電極を製造した。塗着効率は47%であった。
【0091】
<実施例3>
正帯電制御樹脂として、表面帯電量+320μC/g、ガラス転移温度93℃、平均粒径0.5μmのスチレンアクリル系樹脂「FS‐501」(日本ペイント社製)を3.0部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電極層厚みが60μm、電極層密度が0.58g/cmの電気二重層キャパシタ用電極を製造した。塗着効率は65%であった。
【0092】
<実施例4>
正帯電制御樹脂として、表面帯電量+450μC/g、ガラス転移温度105℃、平均粒径0.4μmのスチレンアクリル系樹脂「MP‐5500」(綜研化学社製)を0.05部用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電極層厚みが60μm、電極層密度が0.58g/cmの電気二重層キャパシタ用電極を製造した。塗着効率は50%であった。
【0093】
<比較例1>
帯電制御樹脂を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にして、電極層厚みが60μm、電極層密度が0.58g/cmの電気二重層キャパシタ用電極を製造した。塗着効率は15%であった。
【0094】
<比較例2>
摩擦帯電式静電粉体塗装ガンT−2mタイプL7のポリテトラフルオロオエチレン製のインナースリーブおよびアウタースリーブを同形状のステンレス鋼製のものに交換し、電極材料を帯電させなかったこと以外は、実施例1と同様にして、電極層厚みが60μm、電極層密度が0.58g/cmの電気二重層キャパシタ用電極を製造した。塗着効率は5%であった。
【0095】
上記実施例や比較例で得られた電極を、室温で1時間、電解液(1.0mol/Lのテトラエチルアンモニウムテトラフルオロボレートのプロピレンカーボネート溶液)に含浸させ、次いで2枚の電極がセルロースセパレータ(TF40;ニッポン高度紙工業社製)を介して電極層が内側になるように対向させ、それぞれの電極が電気的に接触しないように配置して、ラミネートセル形状の電気二重層キャパシタを作製した。そして、作製した電気二重層キャパシタの内部抵抗を測定した。なお、比較例1の内部抵抗の値を100%としたとき相対値で示す。以上の実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0096】
【表1】

【0097】
表1の結果より、以下のことがわかる。本願発明によれば、実施例1〜4に示すように、電極材料として、電極活物質、結着剤、導電助剤及び帯電制御樹脂を含むものを用い、かつ電極材料を帯電させて、集電体上に供給することにより、高い塗着効率で、かつ得られる電気化学素子の内部抵抗の低減可能な電気化学素子用電極を安定して得ることができる。
一方、比較例1は、帯電制御樹脂を含有していないために、塗着効率が劣り、電極層の厚みが均一にならず、内部抵抗が劣っている。比較例2は帯電制御樹脂を含有しているが帯電させていないために塗着効率が劣り、電極材料の供給が均一にならず内部抵抗が劣っている。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の電気化学素子用電極の製造方法は、内部抵抗に優れ、電極材料の塗着効率も高いので、生産性よく電気二重層キャパシタ電極、ハイブリッドキャパシタ電極、リチウムイオン二次電池等の電極製造に好適に使用することができる。
【0099】
以上、現時点において、最も、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気化学素子用電極の製造方法もまた本発明の技術的範囲に含包されるものとして理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極活物質、結着剤、導電助剤及び帯電制御樹脂を含んでなる電極材料を、帯電させ、集電体上の少なくとも一面上に供給することにより電極層を形成させることを特徴とする電気化学素子用電極の製造方法。
【請求項2】
前記帯電制御樹脂の表面帯電量C(μ・クーロン/g)が、10≦|C|≦600の範囲にある請求項1に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
【請求項3】
前記帯電制御樹脂のガラス転移温度が、−50℃〜150℃である請求項1または請求項2に記載の電気化学素子用電極の製造方法。
【請求項4】
前記帯電制御樹脂の含有量が、電極活物質100重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲内である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電気化学素子用電極の製造方法。
【請求項5】
前記電極材料が、複合粒子である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の電気化学素子用電極の製造方法。
【請求項6】
前記集電体が、金属である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電気化学素子用電極の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法により得られる電気化学素子用電極。
【請求項8】
請求項7に記載の電気化学素子用電極を備える電気化学素子。
【請求項9】
電気化学素子が、電気二重層キャパシタである請求項8に記載の電気化学素子。

【公開番号】特開2011−96831(P2011−96831A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−248948(P2009−248948)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】