説明

電気式操作レバーが備えられた建設機械

【課題】電気式操作レバー又は制御部に故障が発生したとき、ブームなどの作業装置の誤作動を防止する。
【解決手段】エンジン1、油圧ポンプ2及びパイロットポンプ3、油圧アクチュエータ4を含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバー7と、操作信号にエラーが発生したとき、電気式操作レバー7より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバー10と、電気式操作レバー7の操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられる電子式流量制御弁5と、制御信号を演算して出力する演算部15と、制御信号に対応する電流値が電子式流量制御弁5に印加されるように電流を制御する電流駆動部16を備える制御部6と、電気式操作レバー7又は制御部6に故障が発生した状態で操作ロックレバー10を操作すると電流駆動部16から電子式流量制御弁5に印加される電流を遮断する電源制御部とを、含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式操作レバーの操作によりブームなどの作業装置を駆動させる建設機械に関するものであって、特に、操作レバー又は制御部(ECU)に故障が発生したとき、流量制御弁に印加される制御信号を遮断することができるようにした電気式操作レバーが備えられた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
図1に示すように、従来の技術による電気式操作レバーが備えられた建設機械は、エンジン50と、エンジン50により駆動される可変容量型の油圧ポンプ51(以下、油圧ポンプと称する)及びパイロットポンプ52と、油圧ポンプ51により作動される油圧シリンダなどのアクチュエータ53と、油圧ポンプ51と油圧アクチュエータ53との間の流路に設けられ、切換時、油圧アクチュエータ53の起動、停止及び方向切換を制御する電子式流量制御弁54(MCV)(以下、流量制御弁と称する)と、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバー56(以下、操作レバーと称する)と、操作レバー56の操作信号に比例するように制御部(ECU)55から印加される電流値によってパイロットポンプ52からの作動油を2次の信号圧力に変換し、変換した信号圧力により流量制御弁54のスプールを切り換えさせる電子比例弁57、58と、操作レバー56による操作信号にエラーが発生した場合、操作レバー56の操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバー59(以下、ロックレバーと称する)と、パイロットポンプ52の吐出流路に設けられ、ロックレバー59を操作すると切り換えられ、パイロットポンプ52から電子比例弁57、58に印加される信号圧力を遮断するソレノイド弁60とを含む。
【0003】
前述した操作レバー56から操作信号が制御部55に入力され、ロックレバー59がロック位置から解除位置に変移された場合、操作レバー56の操作信号にしたがって、予め定められたアルゴリズムにより計算され、電子比例弁57、58に制御信号として入力される。
【0004】
その反面、操作レバー56から操作信号が制御部55に入力され、ロックレバー59がロック位置に切り換わった場合は、操作レバー56から操作信号が制御部55に入力されたとしても無視するようになっている。
【0005】
同時に、ロックレバー59に設けられたスイッチ61によりパイロットポンプ52の吐出流路を開閉することができる。即ち、ロックレバー59がロックの位置に切り換わる場合、ソレノイド弁60が閉鎖状態(図1の状態)を保持しているので、パイロットポンプ52から電子比例弁57、58に供給される作動油をそれぞれ遮断することができる。
【0006】
一方、図5に示すように、自己パイロット作動圧により作動される電子油圧比例弁(self pilot operated electro-hydraulic proportional valve)を使用する油圧システムは、電子油圧比例弁(P1−P4)(P5−P8)の開閉が操作レバー7からの操作信号による油圧アクチュエータ4、4bの作動油により制御される。これにより、操作レバー7の操作誤信号又は制御部のエラーに起因するブームなどのような作業装置の誤作動を解消できなくなる。
【0007】
下記に記載された特許文献1の技術は、電気式操作レバー及びこのレバーの操作により駆動される電子油圧制御弁などが備えられる油圧システムにおいて、作業装置の誤作動を感知すべく、操作レバーへの操作(中立状態)があるかどうかを感知できる感知スイッチを設けている。即ち、操作レバーが中立位置にある場合、コントローラで油圧制御弁の駆動信号を絶縁するという方式を採用している。
【0008】
前述した特許文献1の油圧システムでは、電気式操作レバーの操作信号に対する電子比例弁の望ましい制御信号を演算する場合、作業装置のスムーズな増速及び減速、方向切換などのため、制御信号の遅延、フィルタリング、または正逆変換による変換ロジックを使う場合が多い。この場合、電子比例弁の駆動電流が、操作レバーに設けられた感知スイッチにより任意的に短絡されたりすることによって、ソフトウェア的に加工された制御信号の適用が難しくなる不都合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4、881、450号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、電気式操作レバー又は制御部に故障が発生した場合、流量制御弁への制御信号の印加を遮断し、作業装置の誤動作を防止することができるようにした電気式操作レバーが備えられた建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による電気式操作レバーが備えれた建設機械は、エンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ及びパイロットポンプ、油圧ポンプにより作動される油圧アクチュエータを含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバーと、電気式操作レバーによる操作信号にエラーが発生したとき、電気式操作レバーの操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバーと、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の流路に設けられ、電気式操作レバーの操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられ、切換時、油圧アクチュエータの起動、停止及び方向切換を制御する電子式流量制御弁と、電気式操作レバーの操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部、演算部により演算された制御信号に対応する電流値が電子式流量制御弁に印加されるように電流を制御する電流駆動部を備える制御部と、電気式操作レバー又は制御部に故障が発生した状態で操作ロックレバーを操作する場合、電流駆動部から電子式流量制御弁に印加される電流を遮断する電源制御部とを、含む。
【0012】
また、本発明による電気式操作レバーが備えられた建設機械は、エンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ及びパイロットポンプ、油圧ポンプにより作動される油圧アクチュエータを含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバーと、電気式操作レバーによる操作信号にエラーが発生したとき、電気式操作レバーの操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバーと、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の流路に設けられ、電気式操作レバーの操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられ、切換時、油圧アクチュエータの起動、停止及び方向切換を制御する電子式流量制御弁と、パイロットポンプの吐出流路に設けられ、外部からの電気式信号の入力に従って切り換えられるとき、電子式流量制御弁を切り換えさせるように供給される信号圧力を遮断するソレノイド弁と、電気式操作レバーの操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部、演算部により演算された制御信号に対応する電流値が電子式流量制御弁に印加されることができるように電流を制御する電流駆動部を備える制御部と、電気式操作レバー又は制御部に故障が発生した状態で操作ロックレバーを操作する場合、電流駆動部から電子式流量制御弁に印加される電流を遮断する電源制御部とを、含む。
【0013】
さらに、本発明による電気式操作レバーが備えられた建設機械は、エンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプにより作動される油圧アクチュエータを含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバーと、電気式操作レバーによる操作信号にエラーが発生したとき、電気式操作レバーの操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバーと、油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の流路に設けられ、電気式操作レバーの操作信号に比例して油圧ポンプから作動油が供給される供給側の流路に形成される圧力により切り換えられ、切換時、油圧アクチュエータの起動、停止及び方向切換を制御する電子式油圧比例制御弁と、電気式操作レバーの操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部、演算部により演算された制御信号に対応する電流値が電子式油圧制御弁に印加されることができるように電流を制御する電流駆動部を備える制御部と、電気式操作レバー又は制御部に故障が発生した状態で操作ロックレバーを操作する場合、電流駆動部から電子式油圧制御弁に印加される電流を遮断する電源制御部とを、含む。
【0014】
望ましくは、前述した電源制御部は、電気式操作レバーに設けられるスイッチを備えており、電気式操作レバーを操作すると、スイッチがオンとなり、電流駆動部へ電源を供給することになる。
【0015】
望ましくは、前述した電源制御部は、スイッチがスイッチングオンの状態に切り換えられるときに駆動されるリレーを具備し、リレーの駆動により電流駆動部に電源を供給する。
【0016】
望ましくは、前述した電源制御部は、電流駆動部につながっており、操作ロックレバーの出力信号に応じて演算部により駆動されるリレーを具備し、リレーの駆動により電流駆動部に電源を供給する。
【0017】
望ましくは、前述した演算部と操作ロックレバーは、有線又は無線通信により連結されており、操作ロックレバーの操作信号を伝達する。
【発明の効果】
【0018】
前述したように構成される本発明は、次のような効果を有する。操作レバーによる操作信号にエラーが発生した場合、あるいは制御部に故障が発生した場合、流量制御弁を駆動させるために印加される電流駆動部の電源を遮断することによって、ブームなどのような作業装置に対する誤作動を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術による電気式操作レバーが備えられた建設機械の油圧回路図である。
【図2】本発明の第1実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械の油圧回路図である。
【図3】本発明の第2実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械の油圧回路図である。
【図4】本発明の第3実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械の油圧回路図である。
【図5】本発明の第4実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械の油圧回路図である。
【図6】本発明の第1、2、3の実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械における制御部の詳細図である。
【図7】本発明の第5実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械の油圧回路図である。
【図8】本発明の第4、5の実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械における制御部の詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次いで、本発明の望ましい実施例等を添付図面に基づいて説明するが、これは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が発明を容易に実施し得る程度に説明するためのものであって、これに本発明の技術的思想及び範疇が限定されるものではない。
【0021】
図2において、本発明の第1実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械は、エンジン1、エンジン1により駆動される可変容量型の油圧ポンプ2(以下、油圧ポンプと称する)及びパイロットポンプ3、油圧ポンプ2により作動される油圧シリンダなどの油圧アクチュエータ4を含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバー7(以下、操作レバーと称する)と、操作レバー7による操作信号にエラーが発生したとき、操作レバー7の操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバー10(以下、ロックレバーと称する)と、油圧ポンプ2と油圧アクチュエータ4との間の流路に設けられ、操作レバー7の操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられ、切換時、油圧アクチュエータ4の起動、停止、及び方向切換を制御する電子式流量制御弁5(以下、流量制御弁と称する)と、操作レバー7の操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部15(MPU)、演算部15により演算された制御信号に対応する電流値が流量制御弁5に印加されるように電流を制御する電流駆動部16を備える制御部6(ECU)と、操作レバー7又は制御部6に故障が発生した状態で作業装置の誤作動を防止するためにロックレバー10を操作する場合、電流駆動部16から流量制御弁5に印加される電流を遮断する電源制御部とを、含む。
【0022】
前述した電源制御部は、ロックレバー10に設けられるスイッチ12を備えており、ロックレバー10を操作すると、スイッチ12がスイッチングオンとなり、電流駆動部16に電源を供給することになる。
【0023】
前述した電源制御部は、スイッチ12がスイッチングオンの状態に切り換えられるときに駆動されるリレー18を備えており、リレー18の駆動により電流駆動部16に電源を供給する。
【0024】
前述した電源制御部は、電流駆動部16につながっており、ロックレバー10の出力信号に応じて演算部15により駆動されるリレー18を備えており、リレー18の駆動により電流駆動部16に電源を供給する。
【0025】
前述した演算部15とロックレバー10は、有線通信又は無線通信を介して連結されており、ロックレバー10の操作信号を伝達する。
【0026】
次いで、本発明の第1実施例による電気式操作レバーが備えられた建設機械の使用例について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0027】
図2の如く、前述した操作レバー7の操作による操作信号及びロックレバー10の操作による操作信号を、制御部(ECU)6の演算部(MPU)15にそれぞれ入力する。この時、ロックレバー10の操作信号が、ロック位置に当たるオフに置かれる場合、演算部15では、操作レバー7の操作信号の有無に関係なく、電子比例弁8、9に印加する電流を流量制御弁5のスプールが動かない範囲内における待機状態の電流値、又は最小の電流値に演算して出力する。
【0028】
この際、電子比例弁に対する電流駆動は、PWM(pulse width modulation)方式を主に用いているので、本発明の実施例では、PWM方式に限定して説明する。
【0029】
前述した演算部15は、PWM駆動部(pwm ic)につながっているディジタル出力ポート(D00、D01)を介して、電子比例弁8、9に印加される電流値によって、オン、オフの変調幅(duty)を調整して出力する。
【0030】
PWM駆動部は、高速スイッチング素子からなり、出力された信号によって電源を電子比例弁8、9に印加するようになっている。電子比例弁8、9に印加される電源を継続的にオン・オフさせることによって発生する電流の平均値が、演算部15で演算された、電子比例弁8、9への電流と同一となるように変調幅を調整して電流を制御する。
【0031】
PWM制御方式は、オン・オフする搬送波(carrier wave)の周波数が、駆動しようとする電子比例弁のソレノイド部の電気的な固有振動数より小さいので、前述したように流れる電流がオン・オフされる特性を持っている。また、制御部の内部に、実際電子比例弁のソレノイドへ流れる電流をフィードバックし得るべく、フィルタリング回路からなるフィードバック回路を設置し、演算された電子比例弁の電流とPWMの電流とが同一となるようにフィードバック制御を実施する。
【0032】
この際、PWM駆動部は、電源と電子比例弁のソレノイド部との高速スイッチングを行うにあたって、PWMの駆動時、相対的な大容量電流の使用に因って別途のヒューズを備えており、このヒューズを通じて、電源部を、制御部の電源から分離し、別途の電源に連結して使用することが好ましい。
【0033】
本発明の実施例は、PWM駆動部の電源が、ロックレバー10のスイッチ12を介して、PWM駆動部につながるように構成される。ロックレバー10が、操作ロックの位置にある場合、PWM駆動部の電源を遮断することにより、制御部6に故障が発生したとき、電子比例弁8、9への電流印加を前もって遮断する手段を提供することができる。
【0034】
図3において、本発明の第2実施例による電気式操作レバーが備えられた建設機械は、エンジン1、エンジン1により駆動される可変容量型の油圧ポンプ2(以下、油圧ポンプと称する)及びパイロットポンプ3と、油圧ポンプ2により作動される油圧シリンダなどの油圧アクチュエータ4を含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバー7(以下、操作レバーと称する)と、操作レバー7による操作信号にエラーが発生したとき、操作レバー7の操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバー10(以下、ロックレバーと称する)と、油圧ポンプ2と油圧アクチュエータ4との間の流路に設けられ、操作レバー7の操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられ、切換時、油圧アクチュエータ4の起動、停止、及び方向切換を制御する電子式流量制御弁5(以下、流量制御弁と称する)と、操作レバー7の操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部15(MPU)と、演算部15により演算された制御信号に対応する電流値が流量制御弁5に印加されるように電流を制御する電流駆動部16を備える制御部6(ECU)と、操作レバー7又は制御部6に故障が発生した状態で作業装置の誤作動を防止するためにロックレバー10を操作する場合、電流駆動部16から流量制御弁5に印加される電流を遮断する電源制御部と、ロックレバー10に設けられるスイッチ12の負荷を減らすことはできるようにロックレバー10と電流駆動部16との間に設けられるリレー18とを、含む。
【0035】
図中、説明されていない符号20は、制御部6の電源に対して電流駆動部16の電源を別途に連結して使用することができるようにバッテリとリレー18との間に設けられるヒューズである。
【0036】
この際、前述した電子比例弁5の駆動電流が相対的に大容量であることを勘案して、ロックレバー10に設けられたスイッチ12の負荷を減らすようにロックレバー10と電流駆動部16との間に設けられるリレー18の構成を除いては、図2に示された本発明の第1実施例による油圧システムと実質的に同じなので、これらの構成及び作動に関する詳しい説明は省略し、同じ構成要素には同じ図面符号を付する。
【0037】
図4において、本発明の第3実施例による電気式操作レバーが備えられた建設機械は、エンジン1、エンジン1により駆動される可変容量型の油圧ポンプ2(以下、油圧ポンプと称する)及びパイロットポンプ3、油圧ポンプ2により作動される油圧シリンダなどの油圧アクチュエータ4を含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバー7(以下、操作レバーと称する)と、操作レバー7による操作信号にエラーが発生したとき、操作レバー7の操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバー10(以下、ロックレバーと称する)と、油圧ポンプ2と油圧アクチュエータ4との間の流路に設けられ、操作レバー7の操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられ、切換時、油圧アクチュエータ4の起動、停止及び方向切換を制御する電子式流量制御弁5(以下、流量制御弁と称する)と、パイロットポンプ2の吐出流路に設けられ、外部より電気的信号の入力によって切り換えられるとき、流量制御弁5を切り換えさせるように供給される信号圧力を遮断するソレノイド弁11と、操作レバー7の操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部15と、流量制御弁5に連結され、演算部15により演算された制御信号に対応する電流値が流量制御弁5に印加されることができるように電流を制御する電流駆動部16を備える制御部6と、操作レバー7又は制御部6に故障が生じた状態でロックレバー10を操作する場合、電流駆動部16から流量制御弁5に印加される電流を遮断する電源制御部とを、含む。
【0038】
この際、前述した操作レバー7の操作信号にエラーが発生した場合、流量制御弁5に印加される電流を遮断するように電流駆動部16に操作信号を出力すると同時にソレノイド弁11から流量制御弁5にこれを切り換えさせるために供給される信号圧力を遮断するロックレバー10の構成を除いては、図1に示された従来技術による油圧システムと実質的に同じなので、これらの構成及び作動に関する詳しい説明は省略する。
【0039】
本発明の第3実施例による、電気式操作レバーが備えられた建設機械は、図1に示された油圧システムのパイロットポンプ52の吐出流路を遮断し、操作ロックを実施する回路と並行して使用することができる。この場合、ソレノイド弁11の回路連結及び遮断の時に発生し得るサージ電圧を制御部6に対して遮断するためにリレー18を設けることによって、両方の回路を電気的に絶縁することが可能である。
【0040】
図5において、本発明の第4実施例による電気式操作レバーが備えられた建設機械は、エンジン1、エンジン1により駆動される油圧ポンプ2、油圧ポンプ2により作動される油圧アクチュエータ4、4bを含む建設機械において、操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバー7と、電気式操作レバー7による操作信号にエラーが発生したとき、電気式操作レバー7の操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバー10(以下、ロックレバーと称する)と、油圧ポンプ2と油圧アクチュエータ(4、4b)との間の流路に設けられ、電気式操作レバー7の操作信号に比例して油圧ポンプ2から作動油が供給される供給側の流路に形成される圧力により切り換えられ、切換時、油圧アクチュエータ4、4bの起動、停止及び方向切換を制御する電子油圧比例制御弁(P1‐P4)(P5‐P8)と、電気式操作レバー7の操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部15と、演算部15により演算された制御信号に対応する電流値が電子油圧制御弁(P1‐P4)(P5‐P8)に印加されることができるように電流を制御する電流駆動部16を備える制御部6と、電気式操作レバー7又は制御部6に故障が発生した状態でロックレバー10を操作する場合、電流駆動部16から電子油圧制御弁(P1‐P4)(P5‐P8)に印加される電流を遮断する電源制御部とを、含む。
【0041】
図5に示された本発明の第4実施例による電気式操作レバーが備えられた建設機械において、自己パイロット作動圧により作動される電子油圧比例弁(self pilot operated electro-hydraulic proportional valve)電子油圧比例弁は、電子油圧比例弁(P1‐P4)(P5‐P8)の供給側の流路に形成された圧力が、電子油圧比例弁(P1‐P4)(P5‐P8)のメインスプールを切り換えさせる力として作用し、電気的信号により電子油圧比例弁(P1‐P4)(P5‐P8)の開口が決定されるようになっている。
【0042】
図5に示された油圧システムは、複数のコントローラが、油圧アクチュエータ4、4bに連結されたそれぞれの電子油圧比例弁(P1‐P4)(P5‐P8)を駆動している。即ち、操作レバー7を操作すると、この操作信号が通信(有線又は無線)により各コントローラに入力されることになる。
【0043】
制御部(ECU0)は、操作レバー7から操作信号を受信し、操作信号に対応する油圧ポンプ2の流量を計算し、レギュレータにより油圧ポンプ2の斜板傾転角を制御する。
【0044】
制御部(ECU1)は、操作レバー7から操作信号を受信し、操作信号に対応する制御信号により、図5において、右側の油圧アクチュエータ4につながっている電子油圧比例弁P1、P2、P3、P4をそれぞれ制御する。
【0045】
制御部(ECU2)は、操作レバー7から操作信号を受信し、操作信号に対応する制御信号により、図5において、左側の油圧アクチュエータ4bにつながっている電子油圧比例弁P5、P6、P7、P8をそれぞれ制御する。
【0046】
図5に示したように、右側の油圧アクチュエータ4のピストンを収縮駆動させる場合、ECU1のA0電流を駆動し、油圧ポンプ2の作動油が油圧アクチュエータ4のスモールチェンバーに供給され、A3電流を駆動し、油圧アクチュエータ4のラージチェンバー側の作動油を油圧タンクの方に帰還させる。
【0047】
前述したロックレバー10の操作信号がロックの位置にある場合、操作レバー7を操作しても、演算部15は、電子油圧比例弁を駆動するための電流を最小、または0に出力し、電子比例弁が駆動しないように制御する。
【0048】
一方、ロックレバー10の操作信号がロック解除の位置にある場合、操作レバー7を操作することにより演算部15は電子油圧比例弁を駆動させることができるように駆動電流を演算して出力する。
【0049】
この際、前述した各コントローラの電流駆動部の電源を、ロックレバー10により制御させられるようにすることによって、各コントローラに故障が発生したとき、電流駆動部に非希望の電流が出力されるのを遮断することができる。
【0050】
前述したように、演算部15で操作レバー7の操作信号により電子油圧比例弁を駆動させる電流をロックレバー10の操作信号によって演算することになる。これにより、操作レバー7の操作信号にエラーが生じる場合、ロックレバー10の操作信号により非希望の電子油圧比例弁の駆動を遮断することができる。
【0051】
また、ロックレバー10の操作信号が演算部15に正常的に伝達されなかった場合、電流駆動部16の電源を同時に制御することによって、操作レバー7の故障により非希望の電流が電子油圧比例弁に出力されるのを遮断することができる。
【0052】
図5に示したように、複数のコントローラに対して複数の電流駆動部が備えられるため、負荷の発生を考慮し、リレー18を設ける。このことから、ロックレバー10の操作信号によりリレー18が駆動し、電源を遮断することになる。図には示されていないが、ロックレバー10に設けられたスイッチの容量が充分であれば、リレーの省かれたスイッチによる電源遮断回路を使用することも可能である。
【0053】
図6は、図2、図3及び図4に示されたロックレバーにより制御された電源が各制御部に連結されていることを示している。即ち、制御部の主電源部(パワー)と電流駆動部16の電源とをそれぞれ分けて使用していることを確認できる。
【0054】
図7に示しように、本発明の第5実施例による電気式操作レバーが備えられた建設機械は、ロックレバーの操作信号による各制御部の電流駆動部の電源制御を行うにあたって、ロックレバー10に設けられたスイッチ12の信号が通信を通じて各制御部に伝達されることによって、それぞれの制御部は、その信号に従って電流駆動部16の電源を制御している。
【0055】
ロックレバー10の操作信号がECU0に入力され、通信ラインを通じて ECU1、ECU2に伝達され、各ECUの演算部15は、その信号に従って、図8に示されたリレー18を駆動するための制御信号を出力することになる。出力された信号が電流増幅素子によりリレー18を駆動することになる。即ち、リレー18の駆動によりコントローラの電流駆動部16の電源が制御される。
【0056】
ここでは、ロックレバー10の操作信号が有線通信により伝達されていることについて説明したが、無線通信(図示せず)を通じても実現可能である。また、ロックレバー10に該当する操作信号の発生装置を機械の運転席に据え付けたり、別途の移動可能な有・無線装置を通じても油圧システムをわざわざ変えることなく同じ効果を期待することができる。
【0057】
前述したように本発明の実施例等による電気式操作レバーの操作により油圧アクチュエータに供給される作動油を制御する建設機械によれば、操作レバー又は制御部に故障が発生した場合、流量制御弁に印加される制御信号を遮断することによって、ブームなどのような作業装置の誤作動を防止できる。
【符号の説明】
【0058】
1 エンジン
2 油圧ポンプ
3 パイロットポンプ
4 油圧アクチュエータ
5 流量制御弁
6 制御部(ECU)
7 操作レバー
8、9 電子比例弁
10 操作ロックレバー
12 スイッチ
15 演算部(MPU)
16 電流駆動部
18 リレー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ及びパイロットポンプ、油圧ポンプにより作動される油圧アクチュエータを含む建設機械において、
操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバーと、
前記電気式操作レバーによる操作信号にエラーが発生したとき、前記電気式操作レバーの操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバーと、
油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の流路に設けられ、前記電気式操作レバーの操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられ、切換時、前記油圧アクチュエータの起動、停止及び方向切換を制御する電子式流量制御弁と、
前記電気式操作レバーの操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部、前記演算部により演算された制御信号に対応する電流値が前記電子式流量制御弁に印加されることができるように電流を制御する電流駆動部を備える制御部と、
前記電気式操作レバー又は制御部に故障が発生した状態で前記操作ロックレバーを操作する場合、前記電流駆動部から前記電子式流量制御弁に印加される電流を遮断する電源制御部とを含む、電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項2】
エンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ及びパイロットポンプ、油圧ポンプにより作動される油圧アクチュエータを含む建設機械において、
操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバーと、
前記電気式操作レバーによる操作信号にエラーが発生したとき、前記電気式操作レバーの操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバーと、
前記油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の流路に設けられ、前記電気式操作レバーの操作信号に比例して入力される信号圧力により切り換えられ、切換時、前記油圧アクチュエータの起動、停止及び方向切換を制御する電子式流量制御弁と、
前記パイロットポンプの吐出流路に設けられ、外部からの電気的信号の入力によって切り換えられるとき、前記電子式流量制御弁を切り換えさせるように供給される信号圧力を遮断するソレノイド弁と、
前記電気式操作レバーの操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部、前記演算部により演算された制御信号に対応する電流値が前記電子式流量制御弁に印加されることができるように電流を制御する電流駆動部を備える制御部と、
前記電気式操作レバー又は制御部に故障が発生した状態で前記操作ロックレバーを操作する場合、前記電流駆動部から前記電子式流量制御弁に印加される電流を遮断する電源制御部とを含む、電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項3】
エンジン、エンジンにより駆動される油圧ポンプ、油圧ポンプにより作動される油圧アクチュエータを含む建設機械において、
操作量に比例して操作信号を出力する電気式操作レバーと、
前記電気式操作レバーによる操作信号にエラーが発生したとき、前記電気式操作レバーの操作信号より優先的に制御が行われるように操作信号を出力する操作ロックレバーと、
油圧ポンプと油圧アクチュエータとの間の流路に設けられ、前記電気式操作レバーの操作信号に比例して前記油圧ポンプから作動油が供給される供給側の流路に形成される圧力により切り換えられ、切換時、前記油圧アクチュエータの起動、停止及び方向切換を制御する電子油圧比例制御弁と、
前記電気式操作レバーの操作信号に対応する制御信号を演算して出力する演算部、前記演算部により演算された制御信号に対応する電流値が前記電子油圧制御弁に印加されることができるように電流を制御する電流駆動部を備える制御部と、
前記電気式操作レバー又は制御部に故障が発生した状態で前記操作ロックレバーを操作する場合、前記電流駆動部から前記電子油圧制御弁に印加される電流を遮断する電源制御部とを含む、電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項4】
前記電源制御部は、前記操作ロックレバーに設けられるスイッチを備えており、前記操作ロックレバーを操作する場合、前記スイッチがスイッチングオンとなり、前記電流駆動部に電源を供給する、請求項1に記載の電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項5】
前記電源制御部は、前記スイッチがスイッチングオンの状態に切り換えられるときに駆動されるリレーを具備し、前記リレーの駆動により前記電流駆動部に電源を供給する、請求項4に記載の電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項6】
前記電源制御部は、前記電流駆動部につながっており、前記操作ロックレバーの出力信号によって前記演算部により駆動されるリレーを具備し、前記リレーの駆動により前記電流駆動部に電源を供給する、請求項3に記載の電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項7】
前記演算部と前記操作ロックレバーは、有線又は無線通信を通じて連結され、前記操作ロックレバーの操作信号を伝達する、請求項6に記載の電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項8】
前記電源制御部は、前記操作ロックレバーに設けられるスイッチを備え、前記操作ロックレバーを操作する場合、前記スイッチがスイッチングオンとなり、前記電流駆動部に電源を供給する、請求項2に記載の電気式操作レバーが備えられた建設機械。
【請求項9】
前記電源制御部は、前記スイッチがスイッチングオンの状態に切り換えられるときに駆動されるリレーを具備し、前記リレーの駆動により前記電流駆動部に電源を供給する、請求項8に記載の電気式操作レバーが備えられた建設機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−286116(P2010−286116A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−132567(P2010−132567)
【出願日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(502032378)ボルボ コンストラクション イクイップメント アーベー (156)
【Fターム(参考)】