電気音響変換器
【課題】ピークやディップの発生を抑制できると共に小型化が可能な電気音響変換器を提供する。
【解決手段】面上にコイル3が形成された振動板2と、前記振動板2に対向し当該振動板2の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石7と、を備えた電気音響変換器であって、前記振動板2の周辺部Eの厚みが、当該振動板2の中央部Cの厚みよりも薄く、前記コイル3が、蛇行構造により前記振動板2の中央部Cに形成され、前記磁石7は、前記振動板2の平面方向視において前記蛇行構造をなすコイル部の間隙部6に配置されると共に、隣接する当該磁石7どうしの極性を異ならせた。
【解決手段】面上にコイル3が形成された振動板2と、前記振動板2に対向し当該振動板2の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石7と、を備えた電気音響変換器であって、前記振動板2の周辺部Eの厚みが、当該振動板2の中央部Cの厚みよりも薄く、前記コイル3が、蛇行構造により前記振動板2の中央部Cに形成され、前記磁石7は、前記振動板2の平面方向視において前記蛇行構造をなすコイル部の間隙部6に配置されると共に、隣接する当該磁石7どうしの極性を異ならせた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を音声に変換する電気音響変換器に関し、特に周波数特性におけるピークやディップの発生を抑制する電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の機器が小型化するに伴い、それらの機器に用いるスピーカやヘッドフォンの小型化、薄型化への要請が高まると同時に、音の再現性の向上が望まれている。
【0003】
例えば、従来のスピーカは、振動板に取り付けられた筒状のボイスコイルと、ボイスコイルの内部に対応する位置に配置された磁石により、ボイスコイルに流れる電流に対してローレンツ力を作用させることで、ボイスコイルおよび振動板を振動させている。しかしながら、このようなスピーカは、ボイスコイルが筒状をしているため薄型化が困難であると共に、振動板の振動がボイスコイルの配置場所付近のみから発生するために、周波数特性において、ピークやディップが発生し易いという問題を有していた。
【0004】
このような問題点を解決するために、例えば、ヨークに複数の磁石をその磁極が交互に極性が反転するように、平行に分離して配置し、このような2つのヨークを磁石が同一極性の磁極で対向するように配置することにより磁気回路を構成し、上記ヨーク間に制動手段を付した振動板を配置したスピーカがある(特許文献1参照)。このようなスピーカでは、振動板の全面が振動するため、ピークやディップの発生を抑制することができる。
【0005】
【特許文献1】特開昭52−89911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ボイスコイルのパターンが複雑であり、小型化に適さないという問題があった。また、一様な厚みを持つ振動板のエッジ部がフレームに固着されているため、振幅を大きくできず、音の再現性に問題があった。
【0007】
本発明の課題は、上記実状に鑑み、ピークやディップの発生を抑制できると共に小型化が可能な電気音響変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の電気音響変換器は、面上にコイルが形成された振動板と、前記振動板に対向し当該振動板の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石と、を備えた電気音響変換器であって、前記振動板の周辺部の厚みが、当該振動板の中央部の厚みよりも薄く、前記コイルが、蛇行構造により前記振動板の中央部に形成され、前記磁石は、前記振動板の平面方向視において前記蛇行構造をなすコイル部の間隙部に配置されると共に、隣接する当該磁石どうしの極性を異ならせてある。
【0009】
この構成では、面上にコイルが形成された振動板と、振動板に対向し当該振動板の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石により電気音響変換器が構成されており、以下の特徴を有している。まず、振動板はコルゲーションが形成されている周辺部とコルゲーションより内部の中央部とで厚みが異なっている。具体的には、周辺部を中央部の厚みよりも薄く構成している。このように構成することにより、振動板の振幅を大きくすることができ、ピークやディップを低減し、音の再現性を高めることができる。
【0010】
また、コイルは、蛇行構造により形成されているため、隣り合う部分に流れる電流が逆方向となる。さらに、磁石は前記振動板の平面方向視において蛇行構造をなすコイル部の間隙部に配置されると共に、隣接する当該磁石どうしの極性が異ならせてある。このため、磁石の磁力方向がコイルと略直交交差し、コイルに電流を流した際に、効果的にローレンツ力を生じさせることが可能となっている。そのローレンツ力がコイルから振動板に伝達され、効率的に振動板を振動させるため、音響変換効率を高めることができる。特に、ボイスコイルが振動板の中央部の略全面に形成されると、振動板全体を同時に同方向に振動させることができるため、ピークやディップが低減する。
【0011】
また、本発明の電気音響変換器の好適な実施形態の一つでは、前記コイルが前記振動板の一の径方向の一方から他方へ向かう蛇行構造をなし、前記一の径方向に沿って隣接する部分どうしが略平行に整列し、前記磁石が棒状の磁石である。
【0012】
この構成では、簡易な配線パターンで振動板の中央部の略全面にコイルを形成することができ、そのコイルに対して棒状の磁石の磁力が作用するため、発生するローレンツ力により振動板全体を同時に同方向に振動させることができ、ピークやディップが低減する。
【0013】
さらに、本発明の電気音響変換器の好適な実施形態の一つでは、前記コイルが、半径の異なる複数の円弧状部を有し、当該複数の円弧状部の端部どうしを接続して前記振動板の周囲の一点と中心とを結ぶ一本のコイルとして形成され、前記磁石がドーナツ状の多極着磁磁石である。
【0014】
この構成では、コイルは半径の異なる複数の円弧状部を有し、その複数の円弧状部の端部どうしが接続されている。したがって、簡易な配線パターンで振動板の中央部の略全面にコイルを形成することができる。さらに、そのコイルに対してドーナツ状の多極着磁磁石の磁力が作用し、発生するローレンツ力により振動板全体を同時に同方向に振動する。これにより、ピークやディップを低減させることができる。また、磁石に多極着磁磁石を用いることにより、部品点数が低減するため、スピーカをより小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、図面を用いて本発明の電気音響変換器の第1実施形態を説明する。図1は本実施形態における電気音響変換器の斜視図、図2は上面図、図3は断面図および図4は底面図である。本実施形態の電気音響変換器は、フレーム1の内部に振動板2を有しており、振動板2の表面には金属箔によりボイスコイル3が形成されている。また、振動板2の周辺部Eにはコルゲーション4が形成されており、振動板2を補強し、柔軟性を持たせると共に、周波数特性のピークやディップを抑制する働きを有している。
【0016】
棒状の磁石7はヨーク8に支持され、ヨーク8はフレーム1に支持されている。また、底面には、通気孔9が設けられると共に、音響抵抗用クロス10が張られている。この音響抵抗用クロス10により、音響特性の平坦化を図っている。
【0017】
なお、振動板2はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等で形成されている。コルゲーション4が形成されている周辺部E以外の中央部Cは、さらに耐熱性や剛性が高いポリエーテルイミド(PEI)等のポリイミド系の樹脂が積層されている。このような構成とすることにより、振動板2の周辺部Eの厚みが中央部Cに比べて薄くなり、振動板2の全体が振動し易くなって、振幅が大きくなり、音の再現性の向上に寄与している。
【0018】
本実施形態におけるボイスコイル3の配線パターンは、図2に示したように振動板2の一の径方向の一方から他方へ向かう蛇行構造を有しており、この一の径方向に沿って隣接する部分どうしが、略平行となるように整列している。なお、このボイスコイル3は、銀に代表される金属ペースト印刷(スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等)技術により直接形成されている。ただし、使用される金属は銀に限定されるものではなく、他の金属を用いても構わない。
【0019】
本発明における作用部5とは、ローレンツ力の作用を大きく受けるボイスコイル3の部分であり、図2の配線パターンの場合には、略平行に整列しているボイスコイル3の直線部分が作用部5となる。なお、振動板の裏面にも同様の形状のボイスコイル3(図2の点線部分)が形成されており、スルーホール11を介して表面と繋がっている。本実施形態では、振動板2の両面にボイスコイル3を形成しているが、片面のみにボイスコイル3を形成しても構わない。
【0020】
ここで、図3を参照すると、図から明らかなように、本実施形態のボイスコイル3の配線パターンの間隙部6に対応する位置に棒状の磁石7が配置されている。この棒状の磁石7は図5に示すように、配置する面に対して上下方向に磁極を有している。このため、作用部5の電流方向と磁石7からの磁力方向が直交し、作用部5を流れる電荷に対してローレンツ力が作用することとなる。なお、本実施形態では、図5に示す棒状の磁石7を用いているが、縞状に着磁された平面上の多極磁石を用いることも可能である。この場合には、磁力の相殺により磁力が弱められるため、棒状の磁石を用いた方が有利である。また、作用部5として機能するボイスコイル3の直線部分の数は適宜変更可能であり、それに伴い棒状の磁石7の数も変更可能である。
【0021】
次に図6および図7を用いて、本実施形態の電気音響変換器の動作原理を説明する。以下、図中において、×印は紙面に対して手前から奥方向に電流が流れている作用部5、●印は紙面に対して奥から手前方向に電流が流れている作用部5を表すものとする。図6から、隣接する作用部5に流れる電流方向は互いに異なっているのが分かる。図2の(a)方向に電流を流した場合には、作用部5a、5c、5eに対して手前から奥方向に電流が流れ、作用部5b、5d、5fには、奥から手前方向に電流が流れることとなる。このとき、各作用部5には下向きのローレンツ力(図6の矢印)が働くため、それに伴い振動板2も同方向への力を受けることとなる。
【0022】
一方、図7は、図2の(b)方向に電流を流した場合の図である。この場合には、作用部5a、5c、5eには奥から手前方向に電流が流れ、作用部5b、5d、5fには、手前から奥方向に電流が流れる。しかし、磁力の方向は図6と同一であるため、作用するローレンツ力は図6と逆方向の上方向となる(図7の矢印)。したがって、それに伴い、振動板2も上方向の力を受けることとなる。
【0023】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の電気音響変換器の第2実施形態を説明する。図8は、本第2実施形態における電気音響変換器の上面図、図9は断面図、図10底面図である。本実施形態は、第1実施形態とボイスコイル3の配線パターンおよび磁石7が異なっている。
【0024】
本第2実施形態におけるボイスコイル3の配線パターンは、図8に示すように、ボイスコイル3が複数の円弧状部を有し、その複数の円弧状部の端部どうしが接続されている。このような配線パターンでは、この複数の円弧状部が作用部5として機能する。なお、本実施形態も第1実施形態と同様に、振動板2の中央部Cに金属ペースト印刷技術によりボイスコイル3が形成されており、スルーホール11を介して、振動板2の表面のボイスコイル3と裏面のボイスコイル3とが接続されている。
【0025】
本実施形態のボイスコイル3の配線パターンでは、上述のように作用部5は、同心円状の五つの円弧により形成されている。そのため、図11に示すような2つのドーナツ型の多極着磁磁石7aおよび7bを磁石7として用いている。この多極着磁磁石7a、7bは、図11に示すように、各々は径方向に3極の磁極を有しており、互いに磁極が反転した構成となっている。なお、本実施形態では、二つの多極着磁磁石7a、7bを用いているがこれに限定するものではない。例えば、一つの多極着磁磁石を用いてもよく、また、配置する面に対する上下方向に異なる磁極を有するドーナツ状の磁石等を用いることも可能である。後者の場合に、図8のボイスコイル3のパターンに対応させるためには、六つのドーナツ状の磁石7が必要となる。ここで、同心円状に形成されるボイスコイル3の円弧の数は適宜変更可能であり、それに伴い使用する磁石7の磁極特性等も変更可能である。
【0026】
図12および図13は、本第2実施形態の電気音響変換器の動作原理を表す模式図である。図12は、図8の(c)の向きに電流を流した場合における、各作用部5の電流方向、磁力の方向、およびローレンツ力の方向を示している。この場合には、各作用部5には下向きのローレンツ力が働いている。一方、図13は、図8の(d)の向きの電流を流した場合の電流、磁力およびローレンツ力の方向を示しており、各作用部5には上向きの力が作用しているのが分かる。
【0027】
以上のように、本発明の電気音響変換器によれば、振動板の中央部の略全面に渡り形成されたボイスコイルに対して、磁力によるローレンツ力が作用し、振動板全体を振動させることができる。さらに、振動板の周辺部が中央部に比べて薄く形成されているため、振動板が振動し易く、振動板の振幅を大きくすることができる。これらにより、ピークやディップを低減すると共に、音の再現性が向上している。
【0028】
なお、上述の実施形態では、磁石は振動板の一方に配置されていたが、実際の使用時には、音響変換効率を高めるために、磁石は振動板の両側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の斜視図
【図2】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の上面図
【図3】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の断面図
【図4】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の底面図
【図5】本発明による電気音響変換器の第1実施形態で用いる磁石を表す図
【図6】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の動作原理を表す模式図
【図7】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の動作原理を表す模式図
【図8】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の上面図
【図9】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の断面図
【図10】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の底面図
【図11】本発明による電気音響変換器の第2実施形態で用いる磁石を表す図
【図12】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の動作原理を表す模式図
【図13】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の動作原理を表す模式図
【符号の説明】
【0030】
1:フレーム
2:振動板
3:ボイスコイル
4:コルゲーション
5:作用部
6:間隙部
7:磁石
8:ヨーク
9:通気孔
10:音響抵抗用クロス
11:スルーホール
C:中央部
E:周辺部
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を音声に変換する電気音響変換器に関し、特に周波数特性におけるピークやディップの発生を抑制する電気音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の機器が小型化するに伴い、それらの機器に用いるスピーカやヘッドフォンの小型化、薄型化への要請が高まると同時に、音の再現性の向上が望まれている。
【0003】
例えば、従来のスピーカは、振動板に取り付けられた筒状のボイスコイルと、ボイスコイルの内部に対応する位置に配置された磁石により、ボイスコイルに流れる電流に対してローレンツ力を作用させることで、ボイスコイルおよび振動板を振動させている。しかしながら、このようなスピーカは、ボイスコイルが筒状をしているため薄型化が困難であると共に、振動板の振動がボイスコイルの配置場所付近のみから発生するために、周波数特性において、ピークやディップが発生し易いという問題を有していた。
【0004】
このような問題点を解決するために、例えば、ヨークに複数の磁石をその磁極が交互に極性が反転するように、平行に分離して配置し、このような2つのヨークを磁石が同一極性の磁極で対向するように配置することにより磁気回路を構成し、上記ヨーク間に制動手段を付した振動板を配置したスピーカがある(特許文献1参照)。このようなスピーカでは、振動板の全面が振動するため、ピークやディップの発生を抑制することができる。
【0005】
【特許文献1】特開昭52−89911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、ボイスコイルのパターンが複雑であり、小型化に適さないという問題があった。また、一様な厚みを持つ振動板のエッジ部がフレームに固着されているため、振幅を大きくできず、音の再現性に問題があった。
【0007】
本発明の課題は、上記実状に鑑み、ピークやディップの発生を抑制できると共に小型化が可能な電気音響変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明の電気音響変換器は、面上にコイルが形成された振動板と、前記振動板に対向し当該振動板の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石と、を備えた電気音響変換器であって、前記振動板の周辺部の厚みが、当該振動板の中央部の厚みよりも薄く、前記コイルが、蛇行構造により前記振動板の中央部に形成され、前記磁石は、前記振動板の平面方向視において前記蛇行構造をなすコイル部の間隙部に配置されると共に、隣接する当該磁石どうしの極性を異ならせてある。
【0009】
この構成では、面上にコイルが形成された振動板と、振動板に対向し当該振動板の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石により電気音響変換器が構成されており、以下の特徴を有している。まず、振動板はコルゲーションが形成されている周辺部とコルゲーションより内部の中央部とで厚みが異なっている。具体的には、周辺部を中央部の厚みよりも薄く構成している。このように構成することにより、振動板の振幅を大きくすることができ、ピークやディップを低減し、音の再現性を高めることができる。
【0010】
また、コイルは、蛇行構造により形成されているため、隣り合う部分に流れる電流が逆方向となる。さらに、磁石は前記振動板の平面方向視において蛇行構造をなすコイル部の間隙部に配置されると共に、隣接する当該磁石どうしの極性が異ならせてある。このため、磁石の磁力方向がコイルと略直交交差し、コイルに電流を流した際に、効果的にローレンツ力を生じさせることが可能となっている。そのローレンツ力がコイルから振動板に伝達され、効率的に振動板を振動させるため、音響変換効率を高めることができる。特に、ボイスコイルが振動板の中央部の略全面に形成されると、振動板全体を同時に同方向に振動させることができるため、ピークやディップが低減する。
【0011】
また、本発明の電気音響変換器の好適な実施形態の一つでは、前記コイルが前記振動板の一の径方向の一方から他方へ向かう蛇行構造をなし、前記一の径方向に沿って隣接する部分どうしが略平行に整列し、前記磁石が棒状の磁石である。
【0012】
この構成では、簡易な配線パターンで振動板の中央部の略全面にコイルを形成することができ、そのコイルに対して棒状の磁石の磁力が作用するため、発生するローレンツ力により振動板全体を同時に同方向に振動させることができ、ピークやディップが低減する。
【0013】
さらに、本発明の電気音響変換器の好適な実施形態の一つでは、前記コイルが、半径の異なる複数の円弧状部を有し、当該複数の円弧状部の端部どうしを接続して前記振動板の周囲の一点と中心とを結ぶ一本のコイルとして形成され、前記磁石がドーナツ状の多極着磁磁石である。
【0014】
この構成では、コイルは半径の異なる複数の円弧状部を有し、その複数の円弧状部の端部どうしが接続されている。したがって、簡易な配線パターンで振動板の中央部の略全面にコイルを形成することができる。さらに、そのコイルに対してドーナツ状の多極着磁磁石の磁力が作用し、発生するローレンツ力により振動板全体を同時に同方向に振動する。これにより、ピークやディップを低減させることができる。また、磁石に多極着磁磁石を用いることにより、部品点数が低減するため、スピーカをより小型化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、図面を用いて本発明の電気音響変換器の第1実施形態を説明する。図1は本実施形態における電気音響変換器の斜視図、図2は上面図、図3は断面図および図4は底面図である。本実施形態の電気音響変換器は、フレーム1の内部に振動板2を有しており、振動板2の表面には金属箔によりボイスコイル3が形成されている。また、振動板2の周辺部Eにはコルゲーション4が形成されており、振動板2を補強し、柔軟性を持たせると共に、周波数特性のピークやディップを抑制する働きを有している。
【0016】
棒状の磁石7はヨーク8に支持され、ヨーク8はフレーム1に支持されている。また、底面には、通気孔9が設けられると共に、音響抵抗用クロス10が張られている。この音響抵抗用クロス10により、音響特性の平坦化を図っている。
【0017】
なお、振動板2はポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等で形成されている。コルゲーション4が形成されている周辺部E以外の中央部Cは、さらに耐熱性や剛性が高いポリエーテルイミド(PEI)等のポリイミド系の樹脂が積層されている。このような構成とすることにより、振動板2の周辺部Eの厚みが中央部Cに比べて薄くなり、振動板2の全体が振動し易くなって、振幅が大きくなり、音の再現性の向上に寄与している。
【0018】
本実施形態におけるボイスコイル3の配線パターンは、図2に示したように振動板2の一の径方向の一方から他方へ向かう蛇行構造を有しており、この一の径方向に沿って隣接する部分どうしが、略平行となるように整列している。なお、このボイスコイル3は、銀に代表される金属ペースト印刷(スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等)技術により直接形成されている。ただし、使用される金属は銀に限定されるものではなく、他の金属を用いても構わない。
【0019】
本発明における作用部5とは、ローレンツ力の作用を大きく受けるボイスコイル3の部分であり、図2の配線パターンの場合には、略平行に整列しているボイスコイル3の直線部分が作用部5となる。なお、振動板の裏面にも同様の形状のボイスコイル3(図2の点線部分)が形成されており、スルーホール11を介して表面と繋がっている。本実施形態では、振動板2の両面にボイスコイル3を形成しているが、片面のみにボイスコイル3を形成しても構わない。
【0020】
ここで、図3を参照すると、図から明らかなように、本実施形態のボイスコイル3の配線パターンの間隙部6に対応する位置に棒状の磁石7が配置されている。この棒状の磁石7は図5に示すように、配置する面に対して上下方向に磁極を有している。このため、作用部5の電流方向と磁石7からの磁力方向が直交し、作用部5を流れる電荷に対してローレンツ力が作用することとなる。なお、本実施形態では、図5に示す棒状の磁石7を用いているが、縞状に着磁された平面上の多極磁石を用いることも可能である。この場合には、磁力の相殺により磁力が弱められるため、棒状の磁石を用いた方が有利である。また、作用部5として機能するボイスコイル3の直線部分の数は適宜変更可能であり、それに伴い棒状の磁石7の数も変更可能である。
【0021】
次に図6および図7を用いて、本実施形態の電気音響変換器の動作原理を説明する。以下、図中において、×印は紙面に対して手前から奥方向に電流が流れている作用部5、●印は紙面に対して奥から手前方向に電流が流れている作用部5を表すものとする。図6から、隣接する作用部5に流れる電流方向は互いに異なっているのが分かる。図2の(a)方向に電流を流した場合には、作用部5a、5c、5eに対して手前から奥方向に電流が流れ、作用部5b、5d、5fには、奥から手前方向に電流が流れることとなる。このとき、各作用部5には下向きのローレンツ力(図6の矢印)が働くため、それに伴い振動板2も同方向への力を受けることとなる。
【0022】
一方、図7は、図2の(b)方向に電流を流した場合の図である。この場合には、作用部5a、5c、5eには奥から手前方向に電流が流れ、作用部5b、5d、5fには、手前から奥方向に電流が流れる。しかし、磁力の方向は図6と同一であるため、作用するローレンツ力は図6と逆方向の上方向となる(図7の矢印)。したがって、それに伴い、振動板2も上方向の力を受けることとなる。
【0023】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の電気音響変換器の第2実施形態を説明する。図8は、本第2実施形態における電気音響変換器の上面図、図9は断面図、図10底面図である。本実施形態は、第1実施形態とボイスコイル3の配線パターンおよび磁石7が異なっている。
【0024】
本第2実施形態におけるボイスコイル3の配線パターンは、図8に示すように、ボイスコイル3が複数の円弧状部を有し、その複数の円弧状部の端部どうしが接続されている。このような配線パターンでは、この複数の円弧状部が作用部5として機能する。なお、本実施形態も第1実施形態と同様に、振動板2の中央部Cに金属ペースト印刷技術によりボイスコイル3が形成されており、スルーホール11を介して、振動板2の表面のボイスコイル3と裏面のボイスコイル3とが接続されている。
【0025】
本実施形態のボイスコイル3の配線パターンでは、上述のように作用部5は、同心円状の五つの円弧により形成されている。そのため、図11に示すような2つのドーナツ型の多極着磁磁石7aおよび7bを磁石7として用いている。この多極着磁磁石7a、7bは、図11に示すように、各々は径方向に3極の磁極を有しており、互いに磁極が反転した構成となっている。なお、本実施形態では、二つの多極着磁磁石7a、7bを用いているがこれに限定するものではない。例えば、一つの多極着磁磁石を用いてもよく、また、配置する面に対する上下方向に異なる磁極を有するドーナツ状の磁石等を用いることも可能である。後者の場合に、図8のボイスコイル3のパターンに対応させるためには、六つのドーナツ状の磁石7が必要となる。ここで、同心円状に形成されるボイスコイル3の円弧の数は適宜変更可能であり、それに伴い使用する磁石7の磁極特性等も変更可能である。
【0026】
図12および図13は、本第2実施形態の電気音響変換器の動作原理を表す模式図である。図12は、図8の(c)の向きに電流を流した場合における、各作用部5の電流方向、磁力の方向、およびローレンツ力の方向を示している。この場合には、各作用部5には下向きのローレンツ力が働いている。一方、図13は、図8の(d)の向きの電流を流した場合の電流、磁力およびローレンツ力の方向を示しており、各作用部5には上向きの力が作用しているのが分かる。
【0027】
以上のように、本発明の電気音響変換器によれば、振動板の中央部の略全面に渡り形成されたボイスコイルに対して、磁力によるローレンツ力が作用し、振動板全体を振動させることができる。さらに、振動板の周辺部が中央部に比べて薄く形成されているため、振動板が振動し易く、振動板の振幅を大きくすることができる。これらにより、ピークやディップを低減すると共に、音の再現性が向上している。
【0028】
なお、上述の実施形態では、磁石は振動板の一方に配置されていたが、実際の使用時には、音響変換効率を高めるために、磁石は振動板の両側に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の斜視図
【図2】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の上面図
【図3】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の断面図
【図4】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の底面図
【図5】本発明による電気音響変換器の第1実施形態で用いる磁石を表す図
【図6】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の動作原理を表す模式図
【図7】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の動作原理を表す模式図
【図8】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の上面図
【図9】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の断面図
【図10】本発明による電気音響変換器の第1実施形態の底面図
【図11】本発明による電気音響変換器の第2実施形態で用いる磁石を表す図
【図12】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の動作原理を表す模式図
【図13】本発明による電気音響変換器の第2実施形態の動作原理を表す模式図
【符号の説明】
【0030】
1:フレーム
2:振動板
3:ボイスコイル
4:コルゲーション
5:作用部
6:間隙部
7:磁石
8:ヨーク
9:通気孔
10:音響抵抗用クロス
11:スルーホール
C:中央部
E:周辺部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
面上にコイルが形成された振動板と、前記振動板に対向し当該振動板の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石と、を備えた電気音響変換器であって、
前記振動板の周辺部の厚みが、当該振動板の中央部の厚みよりも薄く、
前記コイルが、蛇行構造により前記振動板の中央部に形成され、
前記磁石は、前記振動板の平面方向視において前記蛇行構造をなすコイル部の間隙部に配置されると共に、隣接する当該磁石どうしの極性を異ならせてある電気音響変換器。
【請求項2】
前記コイルが前記振動板の一の径方向の一方から他方へ向かう蛇行構造をなし、前記一の径方向に沿って隣接する部分どうしが略平行に整列し、前記磁石が棒状の磁石である請求項1記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記コイルが、半径の異なる複数の円弧状部を有し、当該複数の円弧状部の端部どうしを接続して前記振動板の周囲の一点と中心とを結ぶ一本のコイルとして形成され、前記磁石がドーナツ状の多極着磁磁石である請求項1記載の電気音響変換器。
【請求項1】
面上にコイルが形成された振動板と、前記振動板に対向し当該振動板の面に対して直交方向に磁力線が出入りするように配置した磁石と、を備えた電気音響変換器であって、
前記振動板の周辺部の厚みが、当該振動板の中央部の厚みよりも薄く、
前記コイルが、蛇行構造により前記振動板の中央部に形成され、
前記磁石は、前記振動板の平面方向視において前記蛇行構造をなすコイル部の間隙部に配置されると共に、隣接する当該磁石どうしの極性を異ならせてある電気音響変換器。
【請求項2】
前記コイルが前記振動板の一の径方向の一方から他方へ向かう蛇行構造をなし、前記一の径方向に沿って隣接する部分どうしが略平行に整列し、前記磁石が棒状の磁石である請求項1記載の電気音響変換器。
【請求項3】
前記コイルが、半径の異なる複数の円弧状部を有し、当該複数の円弧状部の端部どうしを接続して前記振動板の周囲の一点と中心とを結ぶ一本のコイルとして形成され、前記磁石がドーナツ状の多極着磁磁石である請求項1記載の電気音響変換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−260623(P2009−260623A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106873(P2008−106873)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)
【Fターム(参考)】
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