説明

電池組付け装置

【課題】電池とその電池を収容する枠体とを高精度に組付けることができるとともに、生産性を向上させることができる電池組付け装置を提供すること。
【解決手段】電池組付け装置40は、電池回転手段50と枠体回転手段60とを備え、回転する電池20と回転する枠体30とが対向したときに電池20と枠体30とを組付けるものである。電池回転手段50は、回転アーム51と、この回転アーム51の径外方端部に揺動可能に取付けられるとともに回転アーム51に対して所定角度傾くように取付けられていて電池20を把持する把持治具52とを有する。そして、電池供給マガジン53から回転する把持治具52に向けて電池20が押し出されて、電池20の回転方向後端部20aが把持治具52に係止しているときに、電池20の回転方向前端部20bを弾性力によって把持治具52に向けて押圧して電池20の姿勢を矯正する姿勢矯正機構90が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池とこの電池を収容する枠体との組付けを自動で連続して行う電池組付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池は、携帯電話やノート型パソコン等の電子機器の電源として、或いはハイブリッド自動車や電気自動車等の車両用電源として、様々な分野で利用されている。そして、電池には、ニッケル・カドミウム電池、ニッケル・水素電池、リチウムイオン二次電池等がある。
【0003】
そして、電池は、様々な用途の電源として利用される際に、その用途に応じた出力を得るため、複数の単電池(セル)を電気的に接続した組電池(モジュール)として用いられている。例えば、車両用電源として利用される組電池においては、複数の単電池を電気的に直列に接続し、必要となる出力電圧を得ている。この場合、一般に、車両へ搭載する際の省スペース化の観点から、複数の角型の単電池が積層するように配置された組電池が用いられる。このような組電池においては、放熱や、隣り合う単電池同士の絶縁及び断熱等を考慮する必要があり、例えば下記特許文献1に記載されたものがある。
【0004】
下記特許文献1に記載された組電池では、隣り合う単電池の間にスペーサが挟み込まれている。そして、このスペーサは、一定以上の熱に反応し熱分解される発泡剤を含有させた絶縁性の樹脂で形成されている。これにより、隣り合う単電池同士を絶縁しつつ、何れかの単電池が異常発熱をした際に、その隣り合う単電池に熱が伝達されることを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−165597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、単電池同士の絶縁や放熱が確保された組電池として、上記特許文献1のようなスペーサを用いた組電池以外に、単電池(以下、単に「電池」と呼ぶ)を枠体で覆うものがある。即ち、電池と枠体とが組付けられた枠付電池が積層した組電池がある。この組電池の枠付電池を製造する場合、ズレやガタが生じないように電池と枠体とを精度良く組付ける必要がある。しかし、近年、1台の車両に必要な電池の個数は多いもので数百個にもなるため、大量生産のために電池と枠体とを高速に(短時間で)組付ける必要もある。こうして、枠付電池を製造する際に、高い組付け精度と高い生産性との両方が要求される。
【0007】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、電池とその電池を収容する枠体とを高精度に組付けることができるとともに、生産性を向上させることができる電池組付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明における電池組付け装置は、電池を把持した状態で前記電池を第1円周りに回転させる電池回転手段と、前記電池に組付けられる枠体を把持した状態で前記枠体を第2円周りに回転させる枠体回転手段とを備え、前記回転する電池と前記回転する枠体とが対向したときに前記電池と前記枠体とを組付けるものであって、前記電池回転手段は、前記第1円の回転中心から径方向に延びていて径内方端部を回転中心として回転する回転アームと、この回転アームの径外方端部に揺動可能に取付けられるとともに前記回転アームに対して所定角度傾くように取付けられていて前記電池を把持する把持治具と、前記回転する把持治具が接近したときに前記把持治具に向けて前記電池を押し出す電池供給部と、を有し、前記電池供給部から前記回転する把持治具に向けて前記電池が押し出されて、前記電池の回転方向一端部が前記把持治具に係止しているときに、前記電池の回転方向他端部を弾性力によって前記把持治具に向けて押圧して前記電池の姿勢を矯正する姿勢矯正機構が設けられていることを特徴とする。
【0009】
この場合には、電池供給部が、回転する把持治具が接近したときに把持治具に向けて電池を押し出すと、電池の回転方向一端部が把持治具に係止した状態で、姿勢矯正機構が電池の回転方向他端部を弾性力によって把持治具に向けて押圧する。これにより、電池の姿勢が強制的に矯正されて、回転アームの小さな回転で把持治具が電池を確実に掴むことができる。このため、回転アームと把持治具の個数を増やして、回転アームの1回転のうちに電池が把持治具によって把持される個数を大幅に増やすことができる。従って、この電池組付け装置によれば、電池と枠体とを高精度に組付けることができるとともに、生産性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明の電池組付け装置において、前記姿勢矯正機構は、平面状に延びる受け部材と、この受け部材を平面的に支持する板ばねとを有することが好ましい。この場合には、電池の回転方向他端部が受け部材に当接したとき、板ばねは受け部材の平面方向に移動し難い。即ち、板ばねの移動方向は、ほとんど受け部材の平面方向と略直交する方向のみである。従って、電池の回転方向他端部が受け部材に当接したときの付勢力をコントロールし易く、電池の姿勢を的確に矯正し易くなる。
【0011】
また、本発明の電池組付け装置において、前記姿勢矯正機構は、平面状に延びる受け部材と、この受け部材を支持するコイルスプリングとを有していても良い。この場合には、電池の回転方向他端部が受け部材に当接したとき、コイルスプリングが受け部材の平面方向と直交する方向に大きく収縮する。このため、受け部材が把持治具の回転動作を阻害し難くなる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電池とその電池を収容する枠体とを高精度に組付けることができるとともに、生産性を向上させることができる電池組付け装置が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る組電池を示した斜視図である。
【図2】図1に示した組電池の構成部材である枠付電池を示した斜視図である。
【図3】図2に示した枠付電池を単電池と枠体とに分解した斜視図である。
【図4】電池組付け装置を概略的に示した図である。
【図5】図4に示した電池回転手段と枠体回転手段を側面側から見たときの駆動機構を概略的に示した図である。
【図6】電池と枠体とが組付けられた状態を示した図である。
【図7】枠付電池が搬送される状態を示した図である。
【図8】姿勢矯正ガイドが設けられている場合に把持治具が電池を掴む状態を示した図である。
【図9】アクチュエータが設けられている場合に把持治具が電池を掴む状態を示した図である。
【図10】本実施形態の姿勢矯正機構が設けられている場合に把持治具が電池を掴む状態を示した図である。
【図11】電池供給マガジンから押し出された電池が、把持治具に把持されるまでの状態を示した図である。
【図12】第2実施形態の姿勢矯正機構において、受け部材と板ばねとが移動する状態を示した図である。
【図13】第1実施形態の姿勢矯正機構において、受け部材とコイルスプリングとが移動する状態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る電池組付け装置の実施形態について、図面を参照しながら以下に説明する。図1は、本実施形態に係る組電池1を示した斜視図であり、図2は、図1に示した組電池1の構成部材である枠付電池10を示した斜視図である。また、図3は、図2に示した枠付電池10を単電池20と枠体30とに分解した斜視図である。
【0015】
組電池1は、図1に示すように、複数の枠付電池10が積層された電池群である。枠付電池10は、図2及び図3に示すように、単電池20と枠体30とが組付けられたものである。この組電池1では、図1に示すように、枠付電池10が一方向に並べて積層するように配置され、両端がエンドプレート2によって挟み込まれている。そして、金属プレート3が架け渡されることで、各枠付電池10が固定されている。枠付電池10における複数の単電池20(以下、単に「電池20」と呼ぶ)は、バスバー4によって、電気的に接続されている。
【0016】
電池20は、図2及び図3に示すように、その外形が直方体状のリチウムイオン二次電池である。この電池20は、正極板と負極板とを、それらの間にセパレータを挟み込みつつ扁平形状に捲回してなる発電要素(捲回電極体)と、リチウム塩を溶解させた有機溶剤からなる電解液とをその内部に収容している。電池20において、図3に示すように、枠体30に組付けられる際、その外面のうち最初に枠体30の内部に入り込むこととなる面を挿入面21ということとする。
【0017】
枠体30は、図2及び図3に示すように、隣り合う電池20の外面同士を絶縁するために、絶縁性の樹脂で形成されている。また、枠体30は、組電池1に対して振動や衝撃が加えられた際に電池20のズレ、ガタを防止するものであり、且つ耐熱機能を有するものである。この枠体30は、底面31と、その四辺に設けられた壁面32とを有し、全体として扁平な直方体形状をしている。これにより、枠体30は、電池20を収容できるようになっている。そして、枠付電池10において、枠体30の底面31が電池20の挿入面21と密着していて、電池20と枠体30とがツメの引っ掛け等によって容易に外れないようになっている。
【0018】
このような枠付電池10では、生産性向上のために電池20と枠体30との連続した自動組付けが望まれている。図4は、連続した自動組付けを行う電池組付け装置40を概略的に示した図である。ここで、図4では、電池20と枠体30との組付けが分かり易いように、枠体30をコの字の断面形状で示すことにする。なお、図4には、後述する姿勢矯正機構90が省略されている。
【0019】
電池組付け装置40は、図4に示したように、電池20を第1円C1周りに回転させる電池回転手段50と、枠体30を第2円C2周りに回転させる枠体回転手段60とを備えている。そして、電池組付け装置40は、電池回転手段50によって把持された電池20と、枠体回転手段60によって把持された枠体30とを、中央の組付け位置Yに搬送して組付けるようになっている。組付け位置Yは、電池20と枠体30との組付けが完了する位置であり、第1円C1の回転中心O1と第2円C2の回転中心O2とを結んだ直線上に位置する。
【0020】
電池回転手段50は、第1円C1の回転中心O1から径方向に延びる回転アーム51と、この回転アーム51の径外方端部に取付けられている把持治具52と、この把持治具52が接近したときに把持治具52に向けて電池20を押し出す電池供給マガジン53とを有している。ここで、径方向とは、図5に示した回転中心O1に対する径方向であり、周方向とは、図5に示した回転中心O1に対する周方向である。回転アーム51は、周方向に180度離れて二個設けられていて、径内方向端部を回転中心O1として図4の反時計方向に回転する。
【0021】
把持治具52は、電池20を把持した状態で第1円C1周りに回転するものであり、各回転アーム51にそれぞれ取付けられている。各把持治具52は、略T字状に形成されていて、軸部54と、この軸部54の先端に取付けられている略コ字状の把持部55とを有している。軸部54は、回転アーム51の径外方端部にピン結合されている。これにより、把持治具52は、第1円C1周りに回転するとともに、旋回中心X1を支点として揺動可能である。
【0022】
把持部55は、ツメによって電池20を掴むように構成されている。電池20が掴まれた状態では、把持部55の受け面55aと、電池20の把持面22とが平面的に対向している。言い換えると、軸部54の中心線L1が電池20の把持面22に略直交している。ここで、電池20の把持面22とは、上述した電池20の挿入面21(図3参照)と反対側の面であり、電池20が把持される際に把持部55の内部に最初に入り込む面である。把持部55は、第1円C1周りに回転する際に、電池供給マガジン53から押し出された電池20を掴むようになっている。
【0023】
回転アーム51と把持治具52とは、回転方向(図4の反時計方向)の前方側に設けられたスプリング56によって連結されている。これにより、通常の状態では、把持治具52の軸部54の中心線L1は、回転アーム51の中心線R1に対して回転方向に所定角度θ1傾くように設定されている。また、把持治具52は、回転する回転アーム51に対して旋回中心X1を支点として揺動可能であるが、スプリング56の付勢力を受けながら揺動することになる。
【0024】
電池供給マガジン(電池供給部)53は、回転する把持治具52の把持部55に対して電池20を一つずつ供給するものである。この電池供給マガジン53は、複数の重なり合う電池20を収容していて、押圧機構53aの押圧作動によって各電池20をスライドさせるようになっている。これにより、重なり合う電池20のうち、電池回転手段50に一番近い電池20が押し出されることになる。なお、電池20が一つ押し出された後に、新たな電池20が電池供給マガジン53に補充される。電池20が押し出されるタイミングは、回転する把持部55が最接近する僅か前であって、電池20の把持面22が把持部55の内部に入り込むことができるように制御されている。
【0025】
枠体回転手段60は、第2円C2の回転中心O2から径方向に延びる回転アーム61と、この回転アーム61の径外方端部に取付けられている把持治具62と、この把持治具62が接近したときに把持治具62に向けて枠体30を押し出す枠体供給マガジン63とを有している。ここで、径方向とは、図4に示した回転中心O2に対する径方向であり、周方向とは、図4に示した回転中心O2に対する周方向である。回転アーム61は、周方向に180度離れて二個設けられていて、径内方向端部を回転中心O2として図4の時計方向に回転する。
【0026】
把持治具62は、枠体30を把持した状態で第2円C2周りに回転するものであり、各回転アーム61にそれぞれ取付けられている。各把持治具62は、略T字状に形成されていて、軸部64と、この軸部64の先端に取付けられている略コ字状の把持部65とを有している。軸部64は、回転アーム61の径外方端部にピン結合されている。これにより、把持治具62は、第2円C2周りに回転するとともに、旋回中心X2を支点として揺動可能である。
【0027】
把持部65は、ツメによって枠体30を掴むように構成されている。枠体30が掴まれた状態では、把持部65の受け面65aと、枠体30の底面31とが平面的に対向している。言い換えると、軸部64の中心線L2が枠体30の底面31に略直交している。把持部65は、第2円C2周りに回転する際に、枠体供給マガジン63から押し出された枠体30を掴むようになっている。
【0028】
回転アーム61と把持治具62とは、回転方向(図4の時計方向)の前方側に設けられたスプリング66によって連結されている。これにより、通常の状態では、把持治具62の軸部64の中心線L2は、回転アーム61の中心線R2に対して回転方向に所定角度θ2傾くように設定されている。ここで、所定角度θ2は、上記した所定角度θ1と同一の角度である。把持治具62は、回転する回転アーム61に対して旋回中心X2を支点として揺動可能であるが、スプリング66の付勢力を受けながら揺動することになる。
【0029】
枠体供給マガジン63は、回転する把持治具62の把持部65に対して枠体30を一つずつ供給するものである。この枠体供給マガジン63は、複数の重なり合う枠体30を収容していて、押圧機構63aの押圧作動によって各枠体30をスライドさせるようになっている。これにより、重なり合う枠体30のうち、枠体回転手段60に一番近い枠体30が押し出されることになる。なお、枠体30が一つ押し出された後に、新たな枠体30が枠体供給マガジン63に補充される。枠体30が押し出されるタイミングは、回転する把持部65が最接近する僅か前であって、枠体30の把持面32が把持部65の内部に入り込むことができるように制御されている。
【0030】
ここで、図5は、図4に示した電池回転手段50と枠体回転手段60を側面側から見たときの駆動機構70を概略的に示した図である。なお、図5では、説明を分かり易くするために、回転方向に180度離れた2組の回転アーム51,61及び把持治具52,62のうち、1組の回転アーム51,61及び把持治具52,62のみが示されている。
【0031】
図5に示すように、駆動機構70では、平板状のテーブル71に直交する方向に延びる回転軸72,73に、回転アーム51,61の径内方端部が固定されている。なお、回転アーム51,61の径外方端部には、上述したように、把持治具52,62の軸部54,64がピン結合している。回転軸72は、駆動モータ74の出力軸に連結され、駆動モータ74の回転出力が直接伝達するように構成されている。また、回転軸72には第1ギヤ75が一体的に接続されていて、この第1ギヤに第2ギヤ76が噛合している。
【0032】
そして、第2ギヤ76には第3ギヤ77が同軸的に連結し、回転軸73には第4ギヤ78が連結していて、これら第3ギヤ77と第4ギヤ78とが歯付ベルト79を介して連結している。第1〜第4ギヤ75,76,77,78は、全て同じ大きさのギヤである。こうして、第1ギヤ75と第4ギヤ78、即ち回転アーム51と回転アーム61とが、同じ回転速度で逆方向に回転するようになっている。
【0033】
次に、上述したように構成された電池組付け装置40において、電池20と枠体30とが組付けられる工程について説明する。電池回転手段50では、回転している一方側の把持治具52が、電池供給マガジン53から押し出された一つの電池20を掴み取る。また、枠体回転手段60では、回転している一方側の把持治具62が、枠体供給マガジン63から押し出された一つの枠体30を掴み取る。こうして、把持された電池20及び枠体30は、回転アーム51,61の回転により、図4に示した組付け位置Yに同じタイミングで送られる。ここで、図6は、電池20と枠体30とが組付けられた状態を示した図である。
【0034】
図6に示すように、組付け位置Yでは、把持治具52,62は、スプリング56,66の付勢力に抗して旋回中心X1,X2を支点に揺動していて、回転アーム51,61の中心線R1,R2及び把持治具52,62の中心線L1,L2の全てが、一直線上になる。こうして、電池20と枠体30とは真正面に対向した状態で、図6の左右から押し付けられる。このとき、電池20に作用する押し付け力は、電池20の挿入面21の中央に直交し、枠体30に作用する押し付け力は、枠体30の底面31の中央に直交する。このため、電池20と枠体30とは、電池20の挿入面21及び枠体30の底面31にほぼ均等に作用する圧力によって組付けられる。
【0035】
図7は、枠付電池10が搬送される状態を示した図である。図7に示すように、電池20と枠体30とが組付けられて枠付電池10が作成された後、枠付電池10はコンベア80を介して次の工程へと送られる。そして、回転している一方側の把持治具52,62は、電池供給マガジン53,枠体供給マガジン63の方へ近づいていき、電池供給マガジン53,枠体供給マガジン63から電池20,枠体30を掴み取る。また、回転している他方側の把持治具52,62は、組付け位置Yの方へ近づいていき、電池20と枠体30との組付けを同様に行う。
【0036】
ところで、上述したような電池組付け装置40の電池回転手段50において、把持治具52が電池供給マガジン53からから押し出される電池20を把持する際に、以下のような問題点がある。即ち、把持治具52は第1円C1周りに回転しているのに対して、電池20は把持治具52に向けて直線的に押し出されるため、把持治具52の把持部55が電池20を掴み取る際に電池20の姿勢が安定しない。このため、電池20の把持面22が把持部55の受け面55aに対して平面的に対向する状態にならず、把持部55が電池20を確実に把持できないという問題点がある。なお、仮に把持治具52(回転アーム51)の回転速度を遅くした場合には、把持部55が電池20を掴み易くなるが、電池組付け装置40における電池20と枠体30との組付け作業の速度が遅くなり、枠付電池10を高速に大量生産できなくなる。
【0037】
ここで、把持部55が電池20を掴み易くする第1案として、図8に示す姿勢矯正ガイド190を設けた場合について説明する。図8は、姿勢矯正ガイド190が設けられている場合に把持治具52が電池20を掴む状態を示した図である。姿勢矯正ガイド190は、回転する把持治具52より径外方向側に配置された円弧状のプレートである。この姿勢矯正ガイド190は、反時計方向に進むに従って把持部55との距離D1が徐々に小さくなるように、形成されている。
【0038】
上記した第1案の場合、電池供給マガジン53が回転する把持治具52に向かって電池20を押し出すと、電池20の回転方向後端部20aは把持部55の受け面55aに係止するのに対して、電池20の回転方向前端部20bは把持部55の受け面55aに係止しない。即ち、電池供給マガジン53が電池20を押し出した直後では、電池20の把持面22が把持部55の受け面55aに対して平面的に対向する状態にならず、電池20の回転方向前端部20bと把持部55の受け面55aとの間に比較的大きな隙間が生じる。
【0039】
そして、図8の仮想線で示すように、把持治具52の回転に伴って、電池20の姿勢が姿勢矯正ガイド190によって徐々に矯正される。即ち、電池20の回転方向前端部20bと把持治具52の受け面52aとの間の隙間が、徐々に小さくなっていく。この結果、電池供給マガジン53が電池20を押し出したときから回転アーム51が約90度以上回転したときに、電池20の把持面22が把持部55の受け面55aに対して平面的に対向する状態になる。
【0040】
ここで、上記した第1案では、以下の問題点がある。先ず、回転アーム51が上述したように約90度以上回転したときに、電池20の姿勢の矯正が完了するため、電池20の姿勢が矯正されるまでの回転アーム51の回転角度φ(図8参照)が大きい。このため、電池回転手段50において、回転アーム51と把持治具52との1セットを4個以上設けることはできない。言い換えると、回転アーム51と把持治具52との1セットを4個以上に増やして、回転アーム51の一回転のうちに電池20が把持治具52によって把持される個数を増やすことができない。従って、姿勢矯正ガイド190を用いる場合には、枠付電池10の大量生産に対応し難い。更に、姿勢矯正ガイド190は円弧状の大きな部材であるため、電池組付け装置40が大きくなり、実用的なものでなくなるという問題点がある。
【0041】
また、把持部55が電池20を掴み易くする第2案として、図9に示すアクチュエータ290を設けた場合について説明する。図9は、アクチュエータ290が設けられている場合に把持治具52が電池20を掴む状態を示した図である。アクチュエータ290は、ピストンロッド291の伸縮によって把持治具52に一番近い電池20を把持部55へ押し込むエアシリンダである。
【0042】
上記した第2案の場合、回転する回転アーム51及び把持治具52は、把持部55が電池供給マガジン53に接近したとき、静止する。その後、アクチュエータ290が把持治具52に一番近い電池20を把持部55へ押し込むことによって、図9に示すように、把持部55が電池20を掴む。そして、再び回転アーム51及び把持治具52が回転することになる。
【0043】
ここで、上記した第2案では、以下の問題点がある。アクチュエータ290を用いた場合、把持部55が電池20を確実に掴むことができるが、上述したように回転アーム51及び把持治具52の回転を一旦静止させる必要がある。このため、回転アーム51の回転速度が大きくならない。即ち回転アーム51の一回転のうちに電池20が把持治具52によって把持される個数を増やすことができない。従って、アクチュエータ290を用いる場合には、枠付電池10の大量生産に対応し難い。
【0044】
これらに対して、本実施形態では、図10に示すように、電池供給マガジン53から回転する把持治具52に向けて電池20が押し出されたとき、電池20の姿勢を矯正する姿勢矯正機構90が設けられている。図10は、姿勢矯正機構90が設けられている場合に把持治具52が電池20を掴む状態を示した図である。姿勢矯正機構90は、図10に示すように、平面状に延びる受け部材91と、この受け部材91を支持するコイルスプリング92とを有している。
【0045】
受け部材91は、電池供給マガジン53から押し出された電池20の回転方向前端部20bを把持治具52に向けて押圧するものである。この受け部材91は、電池の回転方向前端部20bに当接するように、電池供給マガジン53より電池20の回転方向の前方側に配置されている。コイルスプリング92の一端部は受け部材91に接続されていて、コイルスプリング92の他端部は図示しない固定された部材に接続されている。
【0046】
本実施形態の作用効果について、図11を用いて説明する。図11は、電池供給マガジン53から押し出された電池20が、把持治具52に把持されるまでの状態を示した図である。図11(A)に示すように、電池供給マガジン53が回転する把持治具52に向かって電池20を押し出すと、電池20の回転方向後端部20aは把持部55の受け面55aに係止するのに対して、電池20の回転方向前端部20bは把持部55の受け面55aに係止しない。ここで、上記した係止とは、電池20の回転方向後端部20aが把持部55の受け面55aに接触している状態だけでなく、電池20の回転方向後端部20aが、電池20の回転方向前端部20bに比べて把持部55の受け面55aに近いものの、把持部55の受け面55aと僅かに離れている状態も含む。
【0047】
そして、図11(B)に示すように、把持治具52の回転によって、電池20の回転方向後端部20aが把持部55の受け面55aに係止した状態で、電池20の回転方向前端部20bが受け部材91に当接する。これにより、電池20の回転方向前端部20bは、コイルスプリング92の付勢力(弾性力)によって、把持治具52に向けて強制的に押圧される。ここで、電池20の回転方向前端部20bがコイルスプリング92によって受ける付勢力が、電池20が電池供給マガジン53の押圧機構53aによって受ける押圧力と同程度になるように、コイルスプリング92の弾性係数、コイルスプリング92の長さ、受け部材91の位置が設定されている。
【0048】
これにより、図11(C)に示すように、電池20の把持面22が把持部55の受け面55aに対して平面的に対向する状態になり、把持治具52が電池20を確実に掴むことができる。また、このときには、コイルスプリング92が収縮して受け部材91が逃げるため、把持治具52の回転動作を阻害することはない。こうして、姿勢矯正機構90によって、回転アーム51の回転角度φ(図10参照)が30度以下で、電池20の姿勢を矯正することができる。
【0049】
本実施形態よれば、回転アーム51の小さな回転(例えば20度)で、電池供給マガジン53から押し出された電池20の姿勢を矯正しつつ、把持治具52が電池20を確実に掴むことができる。このため、回転アーム51と把持治具52との1セットを例えば4個以上に増やして、回転アーム51の1回転のうちに電池20が把持治具52によって把持される個数を大幅に増やすことができる。また、回転アーム51及び把持治具52の回転を一旦静止させる必要がない。従って、この電池組付け装置40は、電池20と枠体30とを高精度に組付けることができるとともに、生産性を向上させることができる。
【0050】
次に、第2実施形態について、図12を用いて説明する。図12は、第2実施形態の姿勢矯正機構90Aを示した図である。姿勢矯正機構90Aは、図12に示すように、平面状に延びる受け部材91と、この受け部材91を支持する板ばね93とを有している。受け部材91は、第1実施形態の受け部材91と同様のものである。板ばね93は、1mm程度の薄いばね鋼であり、くの字状に形成されている。板ばね93の一端部は受け部材91に接続されていて、板ばね93の他端部は図示しない固定された部材に接続されている。第2実施形態のその他の構成は、第1実施形態の構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0051】
ここで、第2実施形態の作用効果を説明する前に、第1実施形態の姿勢矯正機構90のメリット及びデメリットを図13を用いて説明する。図13に示すように、第1実施形態では、電池20の回転方向前端部20bが受け部材91に当接したとき、コイルスプリング92が受け部材91の平面方向と直交する方向に大きく収縮する。このため、受け部材91が把持治具52の回転動作を阻害し難いというメリットがある。
【0052】
しかし、コイルスプリング92は、受け部材91の平面方向にも移動し易いため、移動方向が安定し難い。即ち、コイルスプリング92は、移動方向の自由度が大きいため、安定性に欠けるものである。このため、受け部材91と電池20の回転方向前端部20bとの当たり方によっては、受け部材91が電池20の回転方向とは逆側(図13の右側)に移動して、電池20の姿勢を的確に矯正できない場合があるというデメリットがある。
【0053】
これに対して、第2実施形態では、板ばね93が受け部材91を平面的に支持しているため、図12の仮想線で示すように、電池20の回転方向前端部20bが受け部材91に当接したとき、板ばね93は受け部材91の平面方向に移動し難い。即ち、板ばね93の移動方向は、ほとんど受け部材91の平面方向と略直交する方向のみである。従って、電池20の回転方向前端部20bが受け部材91に当接したときの付勢力をコントロールし易く、電池20の姿勢を的確に矯正し易い。なお、板ばね93は受け部材91の平面方向と直交する方向に移動し難いため、板ばね93を用いる場合には、コイルスプリング92を用いる場合に比して、受け部材91が回転する把持治具52から逃げ難い。
【0054】
以上、本発明に係る電池組付け装置40について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、各実施形態において、回転アーム51と把持治具52との1セットを2個設けたが(図4参照)、回転アーム51及び把持治具52の個数は適宜変更可能であり、回転アーム51と把持治具52との1セットを3個以上設けても良い。
また、各実施形態において、電池回転手段50が電池20を第1円C1周りに反時計方向に回転させ、枠体回転手段60が枠体30を第2円C2周りに時計方向に回転させたが(図4参照)、電池回転手段50が電池20を第1円C1周りに時計方向に回転させ、枠体回転手段60が枠体30を第2円C2周りに反時計方向に回転させても良い。
また、各実施形態において、姿勢矯正機構90,90Aの受け部材91、コイルスプリング92、板ばね93の形状、大きさ、配置等適宜変更可能である。また、姿勢矯正機構の構成は、受け部材91とコイルスプリング92又は板ばね93を有する構成に限定されるものではなく、適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0055】
1 組電池
10 枠付電池
20 電池
20a 回転方向後端部
20b 回転方向前端部
30 枠体
40 電池組付け装置
50 電池回転手段
51 回転アーム
52 把持治具
53 電池供給マガジン
55 把持部
60 枠体回転手段
61 回転アーム
62 把持治具
70 駆動機構
80 コンベア
90 姿勢矯正機構
91 受け部材
92 コイルスプリング
93 板ばね

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を把持した状態で前記電池を第1円周りに回転させる電池回転手段と、
前記電池に組付けられる枠体を把持した状態で前記枠体を第2円周りに回転させる枠体回転手段とを備え、
前記回転する電池と前記回転する枠体とが対向したときに前記電池と前記枠体とを組付ける電池組付け装置において、
前記電池回転手段は、
前記第1円の回転中心から径方向に延びていて径内方端部を回転中心として回転する回転アームと、
この回転アームの径外方端部に揺動可能に取付けられるとともに前記回転アームに対して所定角度傾くように取付けられていて前記電池を把持する把持治具と、
前記回転する把持治具が接近したときに前記把持治具に向けて前記電池を押し出す電池供給部と、を有し、
前記電池供給部から前記回転する把持治具に向けて前記電池が押し出されて、前記電池の回転方向一端部が前記把持治具に係止しているときに、前記電池の回転方向他端部を弾性力によって前記把持治具に向けて押圧して前記電池の姿勢を矯正する姿勢矯正機構が設けられていることを特徴とする電池組付け装置。
【請求項2】
請求項1に記載された電池組付け装置において、
前記姿勢矯正機構は、平面状に延びる受け部材と、この受け部材を平面的に支持する板ばねとを有することを特徴とする電池組付け装置。
【請求項3】
請求項1に記載された電池組付け装置において、
前記姿勢矯正機構は、平面状に延びる受け部材と、この受け部材を支持するコイルスプリングとを有することを特徴とする電池組付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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