説明

電源装置

【課題】小形でかつ高い力率を得られる電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置10は、交流電源を整流する整流回路14、整流後電圧を平滑する第1のキャパシタ21、および負荷に電力を供給する降圧チョッパ回路16を備える。第1のキャパシタ21は、交流電源を整流した半周期内に平滑後電圧が負荷への出力電圧まで下がる区間が設けられる容量に設定される。降圧チョッパ回路16は、平滑後電圧が入力されるとともに平滑後電圧が出力電圧を超える区間で動作しかつ出力電圧の区間で休止する電界効果トランジスタQ1、および出力側に設けられ第1のキャパシタ21よりも容量の大きい第2のキャパシタ22を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、負荷を駆動する電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばLED素子を負荷とする電源装置では、交流電源の交流電圧を直流電圧に変換し、この直流電圧をLED素子の両端間に出力してLED素子を点灯させている。
【0003】
このようなLED素子を負荷とする電源装置では、電力容量(VA)を削減することを目的として力率の向上が求められている。高い力率を得るために、例えばフライバック方式の電源回路を用いた電源装置が提案されているが、構成部品が大形になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2011−501351号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の電源装置では、高い力率を得るには大形化する問題がある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、小形でかつ高い力率を得られる電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電源装置は、交流電源を整流する整流回路、整流後電圧を平滑する第1のキャパシタ、および負荷に電力を供給する降圧チョッパ回路を備える。第1のキャパシタは、交流電源を整流した半周期内に平滑後電圧が負荷への出力電圧まで下がる区間が設けられる容量に設定される。降圧チョッパ回路は、平滑後電圧が入力されるとともに平滑後電圧が出力電圧を超える区間で動作しかつ出力電圧の区間で休止する少なくとも1つのスイッチング素子、および出力側に設けられ第1のキャパシタよりも容量の大きい第2のキャパシタを有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、第1のキャパシタの容量を交流電源を整流した半周期内に平滑後電圧が負荷への出力電圧まで下がる区間が設けられる容量に設定し、降圧チョッパ回路のスイッチング素子を平滑後電圧が出力電圧を超える区間で動作し、出力電圧の区間で休止することにより、小形でかつ高い力率を得られる電源装置を提供することが期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態を示す電源装置の回路図である。
【図2】同上電源装置の第1のキャパシタによる平滑後電圧の波形図である。
【図3】同上電源装置の第1のキャパシタによる平滑後電流の波形図であり、(a)は比較例の波形図、(b)は本実施形態の波形図である。
【図4】同上電源装置の出力電流を示す波形図である。
【図5】同上電源装置の第1のキャパシタによるサージ吸収を示す波形図であり、(a)は交流電源の入力電圧の波形図、(b)は第1のキャパシタによる平滑後電圧の波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0011】
図1において、電源装置10は、負荷11として直列接続された複数のLED素子12を点灯させるものである。電源装置10は、商用交流電源Eが接続される入力部13、商用交流電源Eの交流電圧を整流する整流回路14、整流された交流電圧を平滑する平滑回路15、平滑後電圧を降圧する降圧チョッパ回路16、および負荷11が接続されて降圧チョッパ回路16からの出力電圧を出力する出力部17を備えている。
【0012】
入力部13の両端間には、ヒューズF1を介して、ノイズフィルタ回路を構成するコンデンサC1およびインダクタL1,L2が接続されている。
【0013】
また、整流回路14は、全波整流器DB1が用いられており、インダクタL1,L2に全波整流器DB1の入力端が接続されている。
【0014】
また、平滑回路15は、全波整流器DB1の出力端に、雑音防止用のコンデンサC2と並列に接続された第1のキャパシタ21を備えている。第1のキャパシタ21は、所定の容量に設定された電解コンデンサC3で構成されている。
【0015】
また、降圧チョッパ回路16は、電解コンデンサC3の両端に、スイッチング素子としてのMOSFETである電界効果トランジスタQ1とコンデンサC4との並列回路、抵抗R1、インダクタL3の第1のインダクタ部L31および出力部17を介して負荷11が接続されている。出力部17には抵抗R2および第2のキャパシタ22が並列に接続されている。第2のキャパシタ22は、第1のキャパシタ21の容量との関係で、第1のキャパシタ21の容量より大きい所定の容量に設定された電解コンデンサC5で構成されている。
【0016】
抵抗R1とインダクタL3との間にダイオードD1のカソードが接続され、負荷11および電解コンデンサC5の負極側にダイオードD1のアノードが接続されている。このダイオードD1は、電界効果トランジスタQ1がオフしているときにインダクタL3に蓄えられたエネルギを負荷11および電解コンデンサC5を介して放出する作用を有する。
【0017】
インダクタL3の第1のインダクタ部L31に磁気結合された第2のインダクタ部L32の一端がコンデンサC6および抵抗R3を介して電界効果トランジスタQ1のゲートに接続され、他端が抵抗R1と第1のインダクタ部L31との間に接続されている。
【0018】
電界効果トランジスタQ1のドレインとゲートとの間に抵抗R4,R5が接続され、電界効果トランジスタQ1のゲートと抵抗R1を介したソースとの間に抵抗R6が接続されている。
【0019】
抵抗R6と並列に、カソードを電界効果トランジスタQ1のゲートに接続してツェナーダイオードZD1が接続されているとともに、コレクタを電界効果トランジスタQ1のゲートに接続してNPN型のトランジスタQ2のコレクタおよびエミッタが接続されている。
【0020】
トランジスタQ2のベースに制御部ICが接続されている。この制御部ICは、電界効果トランジスタQ1のソースと抵抗R1との間が制御部ICのプラス端子に接続され、電界効果トランジスタQ1に流れる電圧を抵抗R1を介して検出するとともに基準値と比較し、比較結果に応じてトランジスタQ2をオンオフする。
【0021】
第2のインダクタ部L32の一端と他端との間に制御部ICに電源を供給する電源供給回路25が接続されている。電源供給回路25では、第2のインダクタ部L32の一端がダイオードD2、抵抗R7、NPN型のトランジスタQ3のエミッタおよびコレクタを介して制御部ICのVDD端子に接続され、他端がコンデンサC7を介して制御部ICのマイナス端子に接続されている。トランジスタQ3のベースにツェナーダイオードZD2のカソードが接続され、トランジスタQ3のエミッタとツェナーダイオードZD2のアノードとの間にコンデンサC8が接続され、トランジスタQ3のコレクタベース間に抵抗R8が接続されている。抵抗R7および抵抗R8の間とコンデンサC7を介した制御部ICのマイナス端子との間に抵抗R9、ダイオードD3およびツェナーダイオードZD3が接続され、ダイオードD3およびツェナーダイオードZD3と並列に抵抗R10,R11が接続され、抵抗R10,R11間と制御部ICのマイナス端子とが接続されている。抵抗R7および抵抗R9の間と第2のインダクタ部L32の他端との間にコンデンサC9が接続されている。
【0022】
次に、第1のキャパシタ21である電解コンデンサC3の容量について説明する。
【0023】
整流後電圧を平滑する場合、図2に破線で示すように、平滑後電圧の波形としていることが一般的であるが、本実施形態の電解コンデンサC3は容量を小さくしており、図2に実線で示すように、商用交流電源Eを整流した半周期内に平滑後電圧が負荷11への出力電圧Vfまで下がる区間が設けられる波形としている。すなわち、電解コンデンサC3の容量は、商用交流電源Eを整流した半周期内に平滑後電圧が負荷11への出力電圧Vfの区間が設けられる容量に設定されている。
【0024】
図2に破線で示す平滑後電圧の波形の場合に流れる電流は、図3(a)に示すように、平滑後電圧波形のピーク付近のみに電流が流れるインプット形の電流波形となり、電源装置10の力率が低下する原因となっている。
【0025】
図2に実線で示す平滑後電圧の波形の場合に流れる電流は、図3(b)に示すように、インプット形電流波形よりもサイン波に近い電流波形となり、電源装置10の力率を向上できる。
【0026】
また、第2のキャパシタ22である電解コンデンサC5の容量について説明する。
【0027】
電解コンデンサC5の容量は、電解コンデンサC3の容量より大きく設定されている。
【0028】
電解コンデンサC3の容量が小さいために出力電流に含まれる脈流が大きくなりやすく、図4に破線で示すように、電解コンデンサC5の容量が小さいとリップルを十分に抑制することができないが、図4に実線で示すように、本実施形態の電解コンデンサC5の容量が電解コンデンサC3に比べて十分に大きいと脈流を十分に抑制することができ、負荷11の点灯時のちらつきを防止できる。ここで、出力電流の脈流の程度を示すパラメータとして、電流平均値(実効電流値)Iaと出力電流の変動幅Ippとを用いてリプル率RFで規定することができる。リプル率RFとは、電源装置10の出力電流の変動幅Ippをランプ電流平均値(実効電流値)Iaにより除したものであり(RF=Ipp/Ia)、また、出力電流の変動幅Ippとは、出力電流の最大値Imaxから最小値Iminを減じたものである(Ipp=Imax−Imin)。そして、本実施形態では、例えば電解コンデンサC3を平滑後電圧が出力電圧Vfまで下がる容量に設定された場合に、電解コンデンサC5の容量は出力電流のリプル率が5以下、好ましくは1.3以下になるように設定されている。
【0029】
そして、制御部ICは、電界効果トランジスタQ1を、電解コンデンサC3による平滑後電圧が出力電圧Vfを超える区間で動作させ、電解コンデンサC3による平滑後電圧が出力電圧Vfを下回る区間で休止するように制御する。具体的には、抵抗R4及び抵抗R5と抵抗R6との分圧比を所定値に設定しておくことで、出力電圧Vfをわずかに超える区間から電界効果トランジスタQ1を動作させることができる。これにより、電解効果トランジスタQ1を安定して動作をさせることができる。これにより、負荷11のLED素子12に対して、LED素子12の順方向電圧以上の出力電圧を供給し、LED素子12が消灯する期間が発生するのを防止できる。
【0030】
次に、電源装置10の動作を説明する。
【0031】
商用交流電源Eを全波整流器DB1で整流し、電解コンデンサC3で平滑し、整流および平滑した直流電圧を降圧チョッパ回路16に供給する。
【0032】
降圧チョッパ回路16では、直流電流が抵抗R4,R5を通じて電界効果トランジスタQ1のゲートに出力電圧Vf以上の所定の電圧が印加されると、電界効果トランジスタQ1がオンし、電界効果トランジスタQ1、抵抗R1、インダクタL3の第1のインダクタ部L31を経由して電解コンデンサC5に電流が流れる。電解コンデンサC5の充電電圧が負荷11のLED素子12の順方向電圧以上になると、負荷11のLED素子12に電流が流れ、負荷11のLED素子12が点灯する。
【0033】
インダクタL3の第1のインダクタ部L31に電流が流れると、第2のインダクタ部L32に電圧が誘起され、この電圧がコンデンサC6および抵抗R3を介して電界効果トランジスタQ1のゲートに駆動信号として印加され、電界効果トランジスタQ1はオン動作を維持する。
【0034】
制御部ICは、電界効果トランジスタQ1に流れる電圧すなわち電解コンデンサC3による平滑後電圧を抵抗R1を介して検出して基準値と比較し、検出電圧が基準値を超えると、トランジスタQ2をオンする。トランジスタQ2のオンにより、電界効果トランジスタQ1のゲートに印加されていた電圧が低下し、電界効果トランジスタQ1がターンオフする。
【0035】
電界効果トランジスタQ1がオフすると、インダクタL3の第1のインダクタ部L31に蓄えられていたエネルギが電解コンデンサC5、負荷11のLED素子12、ダイオードD1の閉回路で放出される。このエネルギの放出により流れる電流によって、負荷11のLED素子12が点灯するとともに、インダクタL3の第2のインダクタ部L32に発生する電圧の極性が反転するので、電界効果トランジスタQ1のオフ状態が維持される。
【0036】
その後、インダクタL3の第1のインダクタ部L31から放出される電流が無くなると、インダクタL3の第2のインダクタ部L32に発生する電圧の極性が再度反転し、今度は電界効果トランジスタQ1をターンオンするように作用する。こうして、電界効果トランジスタQ1は再びオン動作を開始し、電界効果トランジスタQ1から抵抗R1、インダクタL3の第1のインダクタ部L31を経由して負荷11のLED素子12に電流が流れる。
【0037】
以降、この動作が繰り返され、電界効果トランジスタQ1は高周波スイッチング動作し、負荷11のLED素子12を点灯させる。
【0038】
また、制御部ICは、電界効果トランジスタQ1を、平滑後電圧が出力電圧Vfを超える区間で動作させ、平滑後電圧が出力電圧Vfの区間で休止するように制御する。すなわち、制御部ICは、電界効果トランジスタQ1に流れる電解コンデンサC3による平滑後電圧を抵抗R1を介して検出して基準値と比較しており、この基準値を超えているか否かを判定し、判定結果に応じて電界効果トランジスタQ1を制御できる。
【0039】
そして、上記したように、本実施形態の電源装置10では、電解コンデンサC3の容量を、商用交流電源Eを整流した半周期内に平滑後電圧が負荷11への出力電圧Vfの区間が設けられる小さい容量に設定しているため、平滑後の電流波形を力率のよいものとし、力率を向上できる。
【0040】
また、降圧チョッパ回路16を用いることにより、電源装置10を小形化できる。しかも、降圧チョッパ回路16では、電界効果トランジスタQ1を、電解コンデンサC3による平滑後電圧が出力電圧Vfを超える区間で動作させ、電解コンデンサC3による平滑後電圧が出力電圧Vfの区間で休止するように制御するため、負荷11のLED素子12に対して、LED素子12の順方向電圧以上の出力電圧を供給し、LED素子12が消灯する期間が発生するのを防止できる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、第1のキャパシタ21の容量を、交流電源を整流した半周期内に平滑後電圧が負荷11への出力電圧の区間が設けられる容量に設定し、降圧チョッパ回路16の電界効果トランジスタQ1を、平滑後電圧が出力電圧を超える区間で動作し、平滑後電圧が出力電圧を下回る区間で休止することにより、小形でかつ高い力率を得られる電源装置10を提供できる。
【0042】
また、第2のキャパシタ22を第1のキャパシタ21よりも大きい容量とし、かつ、リプル率RFが5以下、好ましくは1.3以下になるように第2のキャパシタ22を設定したので、ちらつきを抑制することができる。
【0043】
さらに、第1のキャパシタ21は、容量の小さい電解コンデンサC3であるため、電解コンデンサC3による平滑前より平滑後のサージを低減することができる。図5(a)に示すように、商用交流電源Eの交流電圧に重畳して例えば1kV程度のサージが電源装置10に入ってくることがあるが、第1のキャパシタ21が電解コンデンサC3であることとこの電解コンデンサC3の容量が小さいことにより、図5(b)に示すように、電解コンデンサC3による平滑後電圧に重畳されるサージを例えば0.6kV程度に低減することができる。そのため、入力部13と整流回路14との間に例えばバリスタなどのサージ吸収素子を用いるのが一般的であるが、このような特別なサージ吸収素子を省略することが可能となり、部品点数を削減し、小形化できる。
【0044】
なお、各キャパシタ21,22は、電解コンデンサC3,C5に限らず、例えばフイルムコンデンサなどを用いてもよい。
【0045】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
10 電源装置
11 負荷
14 整流回路
16 降圧チョッパ回路
21 第1のキャパシタ
22 第2のキャパシタ
C3 電解コンデンサ
Q1 スイッチング素子としての電界効果トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を整流する整流回路と;
交流電源を整流した半周期内に平滑後電圧が負荷への出力電圧まで下がる区間が設けられる容量に設定され、整流後電圧を平滑する第1のキャパシタと;
平滑後電圧が入力されるとともに、平滑後電圧が出力電圧を超える区間で動作しかつ出力電圧の区間で休止する少なくとも1つのスイッチング素子、および出力側に設けられ第1のキャパシタよりも容量の大きい第2のキャパシタを有し、負荷に電力を供給する降圧チョッパ回路と;
を具備していることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
第1のキャパシタは、平滑前より平滑後のサージを低減する電解コンデンサである
ことを特徴とする請求項1記載の電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−21786(P2013−21786A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151975(P2011−151975)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】