説明

電解加工装置および電解加工方法

【課題】例えばダマシン法により基板上の配線を形成する場合に、基板にダメージを与えることなく、低い圧力で基板の表面を全面にわたって均一に平坦化することができる電解加工装置を提供する。
【解決手段】電解加工装置10は、表面に金属膜が形成されたウェハを保持しつつ、ウェハを回転させるウェハホルダ14と、ウェハに対して電解加工を行う電解加工ユニット16とを備えている。電解加工ユニット16は、回転可能な加工電極52と、加工電極52に取り付けられた研磨パッド53と、研磨パッド53をウェハに押圧する押圧機構72と、電解加工液をウェハと加工電極52との間に供給する液供給機構と、ウェハと加工電極52とを相対運動させる相対運動機構と、加工電極52がカソード、ウェハの金属膜がアノードとなるように、加工電極52とウェハの金属膜との間に電圧を印加する電源103とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解加工装置および電解加工方法に係り、特に半導体ウェハ等の基板の表面に形成された導電性材料を除去加工するのに使用される電解加工装置および電解加工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体ウェハ等の基板上に回路を形成するための配線材料として、アルミニウムまたはアルミニウム合金に代えて、電気抵抗率が低くエレクトロマイグレーション耐性が高い銅(Cu)を用いる動きが顕著になっている。この種の銅配線は、基板の表面に設けた微細凹みの内部に銅を埋め込むことによって一般に形成される。この銅配線を形成する方法としては、化学気相成長法(CVD)、スパッタリングおよびめっきといった手法があるが、いずれにしても、基板のほぼ全表面に銅を成膜して、化学機械的研磨(CMP)により不要の銅を除去するようにしている。
【0003】
図1Aから図1Cは、この種の銅配線基板Wの一製造例を工程順に示す。まず、図1Aに示すように、半導体素子が形成された半導体基材1上の導電層1aの上にSiOからなる酸化膜やlow−k材膜などの層間絶縁膜2が堆積され、リソグラフィ・エッチング技術によりコンタクトホール3と配線溝4が形成される。これらの上にTaN等からなるバリア膜5、さらにその上に電解めっきの給電層としてのシード層7がスパッタリングやCVD等により形成される。
【0004】
そして、基板Wの表面に銅めっきを施すことで、図1Bに示すように、半導体基材1のコンタクトホール3および配線溝4内に銅6を充填する。その後、化学機械的研磨(CMP)により、めっき工程でできた配線パターンに応じて意図せずに生成される表面の段差を解消し、さらに絶縁膜2上の銅膜6、シード層7およびバリア膜5を除去して、コンタクトホール3および配線溝4内に充填させた銅膜6の表面と絶縁膜2の表面とをほぼ同一平面にする。これにより、図1Cに示すように銅膜6からなる配線が形成される。
【0005】
最近ではあらゆる機器の構成要素において微細化かつ高精度化が進み、サブミクロン領域での物作りが一般的となるにつれて、加工法自体が材料の特性に与える影響は益々大きくなっている。このような状況下においては、従来の機械加工のように、工具が被加工物を物理的に除去していく加工方法では、加工によって被加工物に多くの欠陥を生み出してしまうため、被加工物の特性が劣化してしまう。特に今後絶縁膜としていわゆるlow−k材が採用されるにしたがって、いかに材料の特性を損なうことなく機械的に低負荷で加工を行うことができるかが問題となってくる。
【0006】
この問題を解決する手段として開発された特殊加工法に、化学研磨や電解加工、電解研磨がある。これらの加工方法は、従来の物理的な加工とは対照的に、化学的溶解反応を起こすことによって、除去加工等を行うものである。したがって、塑性変形による加工変質層や転位等の欠陥は発生せず、上述の材料の特性を損なわずに加工を行うといった課題が達成される。
【0007】
例えば、CMP工程は、一般にかなり複雑な操作が必要で、制御も複雑となり、加工時間もかなり長い。さらに、スラリー(研磨砥粒)を使用するため研磨後の基板の後洗浄を十分に行う必要があるばかりでなく、スラリーや洗浄液の排液処理のための負荷が大きい等の課題がある。このため、CMP自体を省略もしくはこの負荷を軽減することが強く求められていた。また、特に今後、層間絶縁膜も誘電率の小さいlow−k材に変わると予想され、そのlow−k材は、機械的強度が弱くCMPによるストレスに耐えられなくなる。したがって、基板にストレスを与えることなく、平坦化できるようにしたプロセスが望まれている。
【0008】
従来のCMP工程では、実用上、所定の研磨速度(例えば500nm/min)が必要であり、そのためには、研磨圧力を例えば350kPa程度に増やす必要があった。すなわち、CMP工程の加工速度は次のプレストンの式に従うとされている。
RR=kPV
ここで、RRは研磨速度(m/s)、kは定数(Pa−1)、Pは研磨圧力(Pa)、Vは基板と研磨面との間の相対速度(m/s)である。
【0009】
プレストンの式からわかるように、所定の研磨速度を確保するためには、研磨圧力Pや相対速度Vを増やして研磨を行なうことが必要であった。
【0010】
この結果、基板の配線表面にスクラッチやケミカルダメージが生じ易くなり、またディシングやリセスといった配線の痩せも生じ易くなる。このため、配線の抵抗値が増大したり、配線の欠陥による信頼性が損なわれたりするなどという問題が生じていた。このように、CMP工程によれば、平坦性のよい膜が得られるものの、配線へのダメージが問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、例えばダマシン法により基板上の配線を形成する場合に、基板にダメージを与えることなく、低い圧力で基板の表面を全面にわたって均一に平坦化することができる電解加工装置および電解加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の第1の態様によれば、基板にダメージを与えることなく、低い圧力で基板の表面を全面にわたって均一に平坦化することができる電解加工装置が提供される。この電解加工装置は、表面に金属膜が形成された基板を保持しつつ、該基板を回転させる基板ホルダと、前記基板ホルダに保持された基板に対して電解加工を行う電解加工ユニットとを備えている。前記電解加工ユニットは、回転可能な加工電極と、前記加工電極に取り付けられた研磨パッドと、前記研磨パッドを前記基板に押圧する押圧機構と、電解加工液を前記基板と前記加工電極との間に供給する液供給機構と、前記基板と前記加工電極とを相対運動させる相対運動機構と、前記加工電極がカソード、前記基板の金属膜がアノードとなるように、前記加工電極と前記基板の金属膜との間に電圧を印加する電源とを備えている。
【0013】
本発明の第2の態様によれば、基板にダメージを与えることなく、低い圧力で基板の表面を全面にわたって均一に平坦化することができる電解加工方法が提供される。この電解加工方法によれば、表面に金属膜が形成された基板を保持しつつ、該基板を回転させる。加工電極に取り付けられた研磨パッドを回転させる。電解加工液を前記基板と前記加工電極との間に供給する。前記加工電極がカソード、前記基板の金属膜がアノードとなるように、前記加工電極と前記基板の金属膜との間に電圧を印加する。前記研磨パッドを前記基板に押圧する。前記基板と前記加工電極および前記研磨パッドとを前記基板の径方向に相対移動させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加工電極と基板との間に電解処理用の電解液を供給し、給電電極と基板との間に電圧を印加して電解加工を行う。これにより、基板に与える機械的ストレスを抑制しつつ、基板の平坦化を行うことができる。また、金属の錯体、酸化物、水酸化物などの不動態膜の除去が、研磨パッドと電解加工液の吐出とによって交互に連続的に行われるため、比較的低電圧かつ低圧力で、基板の表面の凹凸のパターンに依存せずに、基板の表面を全面にわたってより均一に平坦化することができる。例えば、バリア層の近傍まで低圧力(例えば70kPa以下)で薄く電解加工し、残りの金属膜とバリア層は、従来のCMP装置を用いて低圧力で比較的低速で加工することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る電解加工装置の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、同一または相当する構成要素には、図面を通して同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0016】
図2は本発明の第1の実施形態における電解加工装置10を示す平面図、図3は電解加工装置10の正面図、図4は図2のIV−IV線断面図である。図2から図4に示すように、電解加工装置10は、直方体状のフレーム12と、表面に金属薄膜が形成された基板、例えば半導体ウェハを保持するウェハホルダ14と、ウェハホルダ14に保持されたウェハに電解加工を行う電解加工ユニット16と、電解加工後のウェハを洗浄する洗浄ユニット18と、電解加工ユニット16と洗浄ユニット18との間でウェハホルダ14を移動するキャリア20とを備えている。ウェハホルダ14、電解加工ユニット16、および洗浄ユニット18は、フレーム12に収容されている。
【0017】
キャリア20は、ウェハホルダ14を支持するサポートブロック22と、電解加工ユニット16および洗浄ユニット18の並び方向に沿って延びる2本のリニアガイド24と、ボールねじ機構によりサポートブロック22をリニアガイド24に沿って水平に移動させる第1リニアドライブユニット26(水平移動機構)とを備えている。サポートブロック22は、2本のリニアガイド24に摺動自在に取り付けられており、第1リニアドライブユニット26の駆動によりサポートブロック22が電解加工ユニット16と洗浄ユニット18との間を移動するようになっている。
【0018】
また、図4に示すように、キャリア20は、ボールねじ機構によりウェハホルダ14を上下動させる第2リニアドライブユニット28(垂直移動機構)を備えている。この第2リニアドライブユニット28は、キャリア20のサポートブロック22上に設置されており、第2リニアドライブユニット28の駆動によりウェハホルダ14が上下に移動するようになっている。
【0019】
ウェハホルダ14は、フレーム12内にロードされたウェハを保持して搬送し、加工のためにウェハを回転させるものである。図4に示すように、ウェハホルダ14は、キャリア20の第2リニアドライブユニット28により上下動されるボディ30と、ウェハWの周縁部を支持するハウジング31と、ウェハWの裏面に当接されるバックプレート32と、ハウジング31を回転させる中空回転軸を有するサーボモータ33と、バックプレート32を上下動させる第3リニアドライブユニット34と、ハウジング31の軸の上端に取り付けられたスリップリング35と、スリップリング35を支持するブラケット36とを備えている。ハウジング31の側面には、ウェハWを通過させるための開口37が形成されている。
【0020】
ハウジング31は、軸受38を介してボディ30に取り付けられており、サーボモータ33の駆動により回転するようになっている。また、バックプレート32は、軸受39を介して第3リニアドライブユニット34に連結されており、第3リニアドライブユニット34の駆動によりハウジング31とともに回転するバックプレート32を上下に移動できるようになっている。
【0021】
図4に示すように、電解加工ユニット16は、電解加工液(薬液)を保持するトレー40と、加工電極を有する電極ヘッド41と、電極ヘッド41を上下動および回転させるヘッドアクチュエータ42と、電解加工液を貯留する研磨液タンク43と、研磨液タンク43内の研磨液を電極ヘッド41に供給するポンプ44とを備えている。
【0022】
図5は、電解加工ユニット16の要部を示す断面図である。図5に示すように、電極ヘッド41は、上下に延びる中空シャフト50と、中空シャフト50の上端に取り付けられた電極ベース51と、電極ベース51に取り付けられた円形の加工電極52と、加工電極52の上面に取り付けられた研磨パッド53とを備えている。さらに、電極ヘッド41は、中空シャフト50の外側に取り付けられたボールスプライン軸54と、トレー40の開口部を覆うカバー55とを備えている。トレー40とカバー55との間にはラビリンス56が形成されている。
【0023】
加工電極52の径はウェハWの径より小さく、加工電極52は導電性および耐腐食性を有する金属から形成されている。例えば、加工電極52はステンレススチール(SUS304)で形成される。また、加工電極52に白金蒸着の表面処理を施すことにより、加工電極52の耐久性を向上させることができる。また、電極ベース51も導電性の材料、例えばステンレスで形成される。
【0024】
図6Aは、図5に示す加工電極52および研磨パッド53を示す斜視図である。図6Aに示すように、本実施形態では、円形の研磨パッド53が加工電極52の上面を覆うように取り付けられている。研磨パッド53の加工電極52への取り付けは、例えば接着によりなされる。加工電極52の径は例えば30mm程度である。あるいは、加工電極52の径をウェハWの半径程度としてもよい。
【0025】
図5および図6Aに示すように、加工電極52および研磨パッド53には複数の貫通孔57,58が形成されている。後述するように、これらの貫通孔57,58から電解加工液(薬液)がウェハWの加工面に供給される。例えば、それぞれの貫通孔57,58の径を1mmとし、ピッチを4mmとする。貫通孔57,58の径およびピッチは、電解加工液がウェハWの加工面の全体に供給されるようなものであれば、どのような寸法であってもよい。また、研磨パッド53の表面に貫通孔58同士を連絡する溝を形成し、電解加工液の回り込みと副生成物の排出性を容易にしてもよい。
【0026】
また、図6Aに示す研磨パッド53に代えて、図6Bに示すようなストリップ状の研磨パッド53aを加工電極52の上面に取り付けてもよい。あるいは、図6Cに示すように、複数の円分状の研磨パッド53bを加工電極52に取り付けてもよい。これらの場合においては、研磨パッド53に貫通孔58を形成しなくてもよい。図6Bに示すストリップ状の研磨パッド53aは、図6Aに示す研磨パッド53よりも高い加工速度を実現することができる。ストリップ状の研磨パッド53aを用いた場合は、電解加工と不動態膜の除去が不均一になりがちであるが、図6Cに示す複数の円分状の研磨パッド53bを用いることにより、電解加工と不動態膜の除去を均一にすることができる。
【0027】
加工電極52に取り付ける研磨パッド53としては、例えば、ポリウレタンからなるIC1000(Rodel社の商標)やPolitex(Rodel社の商標)を用いることができる。例えば、研磨パッド53の厚みは1〜3mm程度である。なお、必要に応じて、研磨パッド53をウェハWに均一に接触させるために、加工電極52と研磨パッド53との間に弾性シートを挟んでもよい。
【0028】
より加工の平坦性を高めるためには、固定砥粒パッド(fixed abrasive pad)を用いることができる。この固定砥粒パッドは、平坦化特性に優れているが、研磨に伴い砥粒が脱離するため、耐久性の面で不利である。
【0029】
あるいは、図7に示すように、固定砥粒を含まず、三角状の凸部59が数十ミクロンオーダーで連続的に形成された樹脂パッド53c(鋸歯パッド)を研磨パッドとして用いることもできる。このような鋸歯パッド53cに用いる樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、フッ素樹脂(PTFE)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)などを用いることができる。なお、図7に示した寸法は例示であり、これに限られるものではない。
【0030】
図5に戻って、中空シャフト50の中空部には、ウェハWの加工面に電解加工液(薬液)を供給する研磨液供給路60が設けられている。また、電極ベース51の内部には、この研磨液供給路60と加工電極52および研磨パッド53の貫通孔57,58とを連通するマニホルド61が形成されている。中空シャフト50の下端部にはロータリコネクタ62が設けられており、研磨液供給路60はこのロータリコネクタ62を介して図4に示す研磨液タンク43に接続されている。このように、ポンプ44の作動により研磨液タンク43の電解加工液が研磨液供給路60を通って加工電極52および研磨パッド53の貫通孔57,58からウェハWの加工面に供給されるようになっている。
【0031】
なお、加工電極52の貫通孔57と研磨パッド53の貫通孔58は互いに対応して設けられているが、研磨パッド53の貫通孔58に対向する位置で加工が進行しやすいので、研磨パッド53の貫通孔58を加工電極52の貫通孔57よりも大きくすれば、加工速度の点で有利である。
【0032】
図5に示すように、ヘッドアクチュエータ42は、軸受70を介してボールスプライン軸54を支持するアクチュエータフレーム71と、電極ヘッド41を上下動させるヘッド押圧機構72と、電極ヘッド41を回転させるヘッド回転機構73とを備えている。中空シャフト50は、ボールスプライン軸54を介してアクチュエータフレーム71に対して回転自在および軸方向に摺動自在に構成されている。
【0033】
ヘッド押圧機構72は、中空シャフト50を上下動させる空気圧アクチュエータ80と、空気圧アクチュエータ80に圧縮ガスを供給するガス供給源81と、ガス供給源81からの圧縮ガスの圧力を調整する圧力レギュレータ82とを備えている。図5に示すように、中空シャフト50にはスラスト軸受83が取り付けられており、このスラスト軸受83が空気圧アクチュエータ80によって上方に付勢されることによって中空シャフト50が上方に持ち上げられる。このように、中空シャフト50を上方に持ち上げることによって、電極ヘッド41の研磨パッド53がウェハWの表面に所定の荷重で押圧されるようになっている。また、本実施形態では、空気圧アクチュエータ80および圧力レギュレータ82によって研磨パッド53の押圧力を直接制御することができるので、荷重センサや変位センサが不要となり、高精度の制御が可能となる。
【0034】
ヘッド回転機構73は、ボールスプライン軸54に取り付けられたプーリ90と、プーリ90に取り付けられたベルト91と、ベルト91に連結されたモータ(図示せず)とを備えている。モータが駆動すると、その回転がベルト91およびプーリ90を介してボールスプライン軸54に伝達され、中空シャフト50が回転するようになっている。
【0035】
中空シャフト50にはスリップリング100が取り付けられており、このスリップリング100は、電極ベース51に設けられた端子101から延びる電線102と、電源103から延びる電線104とを互いに接続するものである。すなわち、導電性の電極ベース51に接する加工電極52は、電線102、スリップリング100、および電線104を介して電源103に接続される。
【0036】
ここで、図5に示すように、ウェハホルダ14のハウジング31には、ウェハWの周縁部に接触する櫛状の給電端子110と、給電端子110を電解加工液からシールする環状のリップシール112とが設けられている。図5に示すように、給電端子110は、径方向外側の端部がハウジング31に固定され、片持梁状に径方向内側上方に向かって延びている。給電端子110の他端部はウェハWの周縁部に接触するようになっており、この他端部には弾力を持たせて接点圧力を保持させている。給電端子110としては、例えばステンレス(SUS304)に白金を蒸着したものを用いることができる。
【0037】
リップシール112は、例えばフッ素系ゴムにより形成され、ウェハWの外周部に接触するようになっている。リップシール112の径方向外側に給電端子110を配置することで、給電端子110を電解加工液から隔離して給電端子110が電解加工液に接触することがないようにしている。なお、給電電極110からの電線114は、ハウジング31の中空部を通り、スリップリング35(図4参照)を介して電源103に接続されている。
【0038】
なお、本実施形態では、ウェハWの被研磨面(デバイス形成面)を下向きに、加工電極52および研磨パッド53を上向きにして電解加工装置を構成している。ウェハWの被研磨面を上向きに配置して加工すると、デバイス形成面の凹部に電解加工液が溜まり、この凹部で加工が進んでしまうため、電解加工速度を制御しにくいことがある。これに対して、本実施形態の電解加工装置は、ウェハWの被研磨面を下向きにして加工を行っているので、ウェハW上に予期せぬ電解加工液溜まりができず、加工電極52に取り付けられた研磨パッド53に接触する被研磨部分のみが優先的に除去加工されるため、所望の除去加工速度および加工プロファイルを得やすいという利点がある。
【0039】
図8は、図2のVIII−VIII線断面図である。図2、図3および図8に示すように、洗浄ユニット18は、洗浄液を保持するトレー120と、ウェハWに対して洗浄液を噴射するノズル121と、ウェハWに対して清浄ガス(例えば窒素ガス)を噴射するノズル122と、洗浄液を貯留する洗浄液タンク123と、洗浄液タンク123内の洗浄液をノズル121に供給するポンプ124と、ポンプ124とノズル121との間に設けられたバルブ125とを備えている。なお、図3に示すように、洗浄ユニット18の近傍のフレーム12の側面には、ウェハWの出し入れを行う開口126が形成されている。なお、図8では、洗浄液が循環使用されるように示されているが、例えば洗浄液が純水であれば、使い捨ててもよい。
【0040】
ここで、図9に示すように、フレーム12の外側には、研磨前のウェハWをフレーム12内にロードし、研磨後のウェハWをフレーム12からアンロードするロード/アンロード部としての外部ロボット130が設置されている、ロード/アンロード時には、ウェハホルダ14が洗浄ユニット18の上方に移動され、ウェハホルダ14のバックプレート32は上昇した位置にセットされる。
【0041】
図10および図11は、本実施形態における電解加工装置の処理工程を示すフローチャートである。研磨前のウェハWは、外部ロボット130の真空吸着ハンド131に吸着され、保持される(ステップS1)。このハンド131がフレーム12に設けられた開口126およびハウジング31に設けられた開口37を通ってフレーム12内に挿入される。そして、図9に示すように、ウェハWはハウジング31の給電端子110およびリップシール112(図5参照)の上に載置され、ロードされる(ステップS2)。このときのウェハWの高さをLとする。
【0042】
その後、外部ロボット130のハンド131がフレーム12から引き抜かれ、第3リニアドライブユニット34の駆動によりバックプレート32が所定の位置まで下げられウェハWを押圧する。これにより、ハウジング31のリップシール112(図5参照)がウェハWの外周部の表面上の金属(銅)膜に密着され、給電端子110がシールされる。
【0043】
次に、キャリア20の第1リニアドライブユニット26を駆動し、その高さを維持したままウェハホルダ14を水平に移動させ、電解加工ユニット16の上方の電解加工開始位置まで移動させる(ステップS3)。通常、電解加工開始位置は、ウェハの外周部が加工電極52に対向する位置とされる。図4は、このときのウェハホルダ14の状態を示している。この状態で第2リニアドライブユニット28を駆動し、図12に示すように、ウェハホルダ14を下げて電解加工ユニット16の電極ヘッド41に近接または接触させる(ステップS4)。このときのウェハWの高さをLとする。
【0044】
電解加工時には、ウェハホルダ14のサーボモータ33を駆動してハウジング31を所定の回転速度で回転させる。同時に、電解加工ユニット16のヘッドアクチュエータ42を駆動する。すなわち、ヘッドアクチュエータ42のヘッド回転機構73(図5参照)により電極ヘッド41を所定の回転速度で回転させ、ヘッド押圧機構72により電極ヘッド41を所定の荷重でウェハWの加工面に押圧する。そして、電解加工ユニット16のポンプ44を駆動して電解加工液を圧送し、加工電極52および研磨パッド53の貫通孔57,58からウェハWの加工面に供給する(ステップS5)。電極ヘッド41から噴出した電解加工液はトレー40に収集されるが、トレー40と回転する電極ヘッド41との間に形成されるラビリンス56により電解加工液の漏洩が防止される。また、トレー40に収集された電解加工液は研磨液タンク43に回収される。回収された電解加工液を所定の期間再利用してもよい。
【0045】
このとき、電源103により、加工電極52がカソード、給電端子110がアノードとなるように、加工電極52と給電端子110との間に所定の電圧を印加して、ウェハの加工面を電解加工する(ステップS6)。このような電解加工を所定の時間行い、ウェハの加工面の金属膜を所定量だけ除去して平坦化加工を行う。
【0046】
ここで、電解加工時には、ウェハホルダ14を電解加工ユニット16のトレー40内でウェハの略中心を通る直径方向に所定の距離だけ反復往復させて、ウェハWと加工電極52とを相対移動させてもよい。この相対移動距離は、最大でもリップシール112の内径から加工電極52の外径を差し引いた値である。
【0047】
また、直径方向に分割したウェハWの領域ごとに設定された相対移動速度でウェハWと加工電極52とを相対移動させてもよい。すなわち、加工電極52が対向するウェハの位置によってウェハホルダ14の移動速度を変化させ、加工電極52のウェハに対する相対移動速度がウェハ面内で所定の分布となるようにすることができる。例えば、図13に示すような分布とすることができる。図13に示す例では、ウェハの面内の領域Sに加工電極52が対向するときにはウェハホルダ14の速度をVとし、領域Sに対向するときはウェハホルダ14の速度をVとする。なお、これらの領域Sとウェハホルダ14の速度Vは、加工電極52と研磨パッド53の形状や、加工電極52とウェハのサイズおよび回転速度などによって最適化される。これにより、次工程の要求に応じたプロファイルコントロールが可能となる。例えば、ウェハの外周部で相対移動速度を所定値より大きくすれば、外周部の除去量を少なくすることができ、外周部が盛り上がったプロファイルを有するウェハに対して適切な研磨を行うことができる。
【0048】
また、各領域における相対移動速度は、加工電極52がウェハWに対向する時間の総和が各領域で略等しくなるように設定することが好ましい。さらに、設定された相対移動速度の一番小さい領域(通常、ウェハの最外周部)から相対移動を開始し、その領域で相対移動を終了するのが、始動および停止時の機械的負荷を小さくすることができる点で好ましい。
【0049】
電解除去加工を終了するときは、加工電極52と給電端子110との間の電圧の印加を停止する。また、ヘッドアクチュエータ42のヘッド回転機構73を停止して、電極ヘッド41の回転を停止し、ヘッド押圧機構72の空気圧アクチュエータ80に供給する圧縮ガスの圧力を調整して電極ヘッド41を下降させてウェハの加工面から離す(ステップS7)。また、ウェハホルダ14のサーボモータ33を停止し、ハウジング31の回転も停止させる。
【0050】
その後、ウェハホルダ14の第2リニアドライブユニット28を駆動し、ウェハWが高さL(図4参照)になるまでウェハホルダ14を上昇させる(ステップS8)。そして、キャリア20の第1リニアドライブユニット26を駆動し、ウェハホルダ14を水平に移動させ、洗浄ユニット18の中央上方まで移動させる(ステップS9)。図8は、このときのウェハホルダ14の状態を示している。この状態で第2リニアドライブユニット28を駆動し、図14に示すように、ウェハホルダ14を下げる(ステップS10)。このときのウェハWの高さをLとする。このLは、Lより低く、Lよりも高い。
【0051】
洗浄時には、ウェハホルダ14のサーボモータ33を駆動してハウジング31を比較的低速で回転させる。同時に、回転するウェハWの被加工面に向かってノズル121から洗浄液(例えば純水)を噴射する(ステップS11)。このように、本実施形態においては、電解加工ユニット16での電解加工後にウェハを速やかに洗浄ユニット18に移動して、ウェハの表面に付着している電解加工液を除去し、清浄な表面に戻すことができる。
【0052】
所定時間経過後に洗浄液の噴出を停止した後、ウェハホルダ14のサーボモータ33によりウェハWを高速で回転させ、スピンドライを行なう(ステップS12)。この後、必要に応じて、ウェハWを低速で回転させるとともに、別のノズル122から清浄ガス(例えば窒素ガス)をウェハWの加工面に向かって噴射してウェハWの乾燥を促進してもよい。このように、本実施形態の洗浄ユニット18は、スピンリンスドライユニット(SRD)として構成されており、処理後に清浄な基板を得ることができる。
【0053】
洗浄終了後、ウェハホルダ14の第2リニアドライブユニット28を駆動し、ウェハWが高さL(図8参照)になるまでウェハホルダ14を上昇させる(ステップS13)。そして、さらに第3リニアドライブユニット34を駆動してバックプレート32を上昇させた後、図9に示すように、外部ロボット130のハンド131がフレーム12内に挿入され、このハンド131に研磨後のウェハWが吸着されて、フレーム12からアンロードされる(ステップS14)。
【0054】
例えば、電解加工液の供給速度が低い場合などには、電解加工により除去された金属(銅)が加工電極52に移動して析出してしまうことがある。このような場合には、電解加工後に、加工電極52がアノードとなるように加工電極52に電解加工時とは逆の電圧を印加し、加工電極52の表面に生成した金属を電解エッチングにより除去してもよい。
【0055】
図15は、本発明の第2の実施形態における電解加工ユニット16の要部を示す断面図である。上述した第1の実施形態においては、ウェハWへの給電のために、ウェハホルダ14のハウジング31に給電端子110とリップシール112とを設けた例について説明したが、第2の実施形態においては、ウェハホルダ14の給電端子110およびリップシール112に代えて、サポートブロック22に取り付けられたボールコンタクト200を用いてウェハWへの給電を行っている。
【0056】
本実施形態においては、ウェハホルダ14のバックプレート232が、ウェハWの裏面を真空吸着できる真空吸着機構を有している。ウェハホルダ14のハウジング31の軸の上端には、図15に示すように、図4のスリップリング35に代えて、真空ロータリジョイント235が設けられている。バックプレート232の真空吸着機構から延びるチューブ202が真空ロータリジョイント235を介して真空ポンプ(図示せず)に接続されている。
【0057】
図16は、図15の部分拡大図である。図16に示すように、ボールコンタクト200は、サポートブロック22に取り付けられたブラケット210と、ブラケット210に取り付けられたケース212と、ケース212の頂部から一部が露出するようにケース212内に収容されたボール214と、ボール214の下方に配置されたロッド216と、ボール214およびロッド216を上方に付勢するスプリング218と、ボール214、ロッド216、およびスプリング218をケース212内に保持するホルダ220とを備えている。ボール214のケース212から露出した部分は、バックプレート232に吸着されたウェハWの周縁部(加工電極52と干渉しない位置)に接触するようになっている。
【0058】
ボール214は、例えば黒鉛などの導電体で形成されている。このように、ボール214の材質を軟らかく導電性のある黒鉛とすれば、ボール214がウェハWの表面に傷をつけてしまうことを防止することができる。ロッド216およびホルダ220も、それぞれ導電体で形成されている。ホルダ220には電源103(図5参照)に接続される電線222が接続されている。したがって、ホルダ220、ロッド216、およびボール214を介してウェハWの外周部の表面上の金属(銅)膜に給電できるようになっている。このようなボールコンタクト200を用いることにより、給電端子110とリップシール112により構成されるドライシールコンタクトに比べて、ウェハの全面にわたる均一加工が容易になる。
【0059】
ボールコンタクト200は、ケース212の下面とブラケット210の上面との間に配置されたシール224と、ホルダ220の外周面とケース212の内周面との間に配置されたシール226とを備えている。ロッド216の中央部およびホルダ220の中央部には、上下に延びる電解液流路228,230が形成されている。このように、電解液流路230,228を通して電解液をボール214の表面に供給できるようになっている。さらには、ロッド216とケース212の内周面の間からも電解液が供給されるようになっている。このように、ボール214の表面に電解液を供給しているので、電源103と電気的に接続されるボール214の実効面積を広げることができ、給電の安定性を確保することができる。
【0060】
好ましくは、電解加工液と同一種類の液体をボール214の表面に供給する。電解加工液と同一の液体をボール214の表面に供給することにより、ウェハWの表面における薬液によるコンタミネーションを防止することができ、ボール214のウェハWに対する電気的接続の信頼性を向上させることができる。また、装置をシンプルにすることができる。
【0061】
図17に示すように、本実施形態においては、外部ロボット130のハンドとして、ウェハWの周縁部を把持するハンド131aを用いる。研磨前のウェハWの周縁部がハンド131aに把持された状態で、ハンド131aがフレーム12に設けられた開口126およびハウジング31に設けられた開口37を通ってフレーム12内に挿入される。そして、ウェハWはバックプレート232の下面に真空吸着される。このときのウェハWの高さをLとする。このLは、図9に示すLよりも高い。
【0062】
図18は、図16に示すボールコンタクトの変形例200aを示す断面図である。図16に示すボールコンタクト200は、コンパクトな構造とすることができるが、ボール214の押圧力を調整することが困難である。したがって、図18に示すように、ホルダ220の下方にベース240を配置し、ベース240とホルダ220との間に追加のスプリング242を配置する。このような構造によれば、ボール214のストロークおよび押圧力の調整が可能であり、より実用的なボールコンタクトとすることができる。
【0063】
図19は、図16に示すボールコンタクト200を複数個組み合わせた例を示す模式図であり、左側が底面図、右側が正面図である。図19に示すように、複数のボールコンタクト200を保持するリテーナ400が2つ設けられ、これら2つのリテーナ400の間で電極ヘッド41が移動される。これらのリテーナ400はサポートブロック22に取り付けられている。この例においては、電解加工中に電極ヘッド41をウェハWの径方向に移動させる際に、電極ヘッド41とリテーナ400とが相互に干渉しないように、電極ヘッド41とリテーナ400とを配置する必要がある。このように、複数のボールコンタクト200を用いることにより、ウェハWへの給電をより確実に行うことができる。すなわち、ウェハの表面の銅膜の部分的な除去が始まると、銅膜が島状に残ることがあるため、銅膜に給電することが困難になるが、図19に示すように、複数のボールコンタクト200を設けることにより、給電の信頼性を向上することができる。
【0064】
図20は、ウェハWを給電するために用いることができる垂直ローラコンタクト500を示す断面図である。図20に示すように、このローラコンタクト500は、ウェハWの回転軸とは垂直な軸502を中心として回転自在のローラ504と、ローラ504の下部に摺動接触する給電電極506と、ローラ504と給電電極506とを収容したホルダ508と、ホルダ508を上方に付勢するスプリング510とを備えている。ローラ504の上部は、バックプレート232に吸着されたウェハWの周縁部に接触するようになっている。
【0065】
ローラ504の表面は導電体で形成されており、給電電極506の給電端子には電源103(図5参照)に接続される電線512が接続されている。したがって、給電電極506およびローラ504の導電面を介してウェハWの外周部の表面上の金属(銅)膜に給電できるようになっている。このようなローラコンタクト500を用いることにより、上述したボールコンタクト200に比べて、ウェハWとの接触面積が確保しやすくなる。すなわち、ボールコンタクト200はウェハWと点接触するが、このローラコンタクト500はウェハWと線接触するので、給電の信頼性を向上することができる。
【0066】
図21は、図20に示すローラコンタクトの変形例500aを示す断面図である。図21に示すように、このローラコンタクト500aは、図20に示す構成に加えて、ハウジング31の回転と同期してローラ504を回転させる回転同期機構としての歯車520を備えている。この歯車520の歯522は、ハウジング31の下面に設けられた歯に噛合し、ハウジング31の回転に伴い歯車520が回転するようになっている。
【0067】
ここで、ローラ504の半径r、歯車520の半径r、ウェハWの中心からローラ504までの距離R、ウェハWの中心から歯車520までの距離Rとすると、r/r=R/Rという関係が成立することが必要である。これにより、歯車520が回転すると、これに同期してローラ504が同期して回転するようになっている。したがって、ローラ504とウェハWとの接触面でのすべりを防止して、転がり接触のみとすることができ、ウェハWへのダメージを低減することができる。
【0068】
図22は、図21に示すローラコンタクトの変形例500bを示す断面図である。図22に示すように、このローラコンタクト500bのホルダ508は、壁530によってローラ室532と歯車室534とに分割されている。図22に示すローラコンタクト500bは、ローラ504に接触する給電電極506を備えていない。電線512が接続された給電端子536とローラ504との間に電解液を満たし、この電解液を介してローラ504に通電を行っている。このように、ローラ504と接触する給電電極506がないので、給電電極506の接触によるローラ504のダメージをなくすことができる。また、ローラ504の回転に伴い、ウェハWとローラ504との接触面には常に電解液が供給されるので、ウェットな転動接触面を得ることができ、ウェハWへの給電の信頼性をさらに向上させることができる。
【0069】
図23は、ウェハWを給電するために用いられる水平ローラコンタクト600を示す模式図であり、左側が底面図、右側が正面図である。図23に示すように、このローラコンタクト600は、ウェハWの周縁部(ベベル部)の表面の金属膜に接触するローラ602と、複数のローラ602を保持するリテーナ604とを備えている。ローラ602の表面は導電体で形成されており、このローラ602は電源103に接続されている。ローラ602はウェハWの回転軸と平行な軸を中心として回転可能に構成されており、その側面でウェハWの周縁部に回転接触するようになっている。なお、ローラ602はスプリング(図示せず)によって上方に付勢されている。このような構成によれば、ウェハWの配線部に直接接触させずにベベル部の表面の金属膜に給電ができるため、配線部へのダメージをなくし、配線の信頼性を向上させることができる。
【0070】
図24は、ウェハWに給電するために用いられる電解液コンタクト700を示す断面図である。図24に示すように、この電解液コンタクト700は、電解液を保持するホルダ702と、ホルダ702に電解液を供給する電解液供給管704と、ホルダ702を上方に付勢するスプリング706とを備えている。ホルダ702の上部には、ホルダ702内に電解液溜まりを形成するための弾性パッド708が取り付けられている。この弾性パッド708は、スポンジ状の極めて軟らかいもので、ウェハWに接触してもウェハWにダメージを与えにくいものがよい。
【0071】
ホルダ702は導電体で形成されており、ホルダ702に取り付けられた給電端子710には、電源103(図5参照)に接続される電線712が接続されている。したがって、ホルダ702内部に保持された電解液を介してウェハWに給電が行われる。このように、電解液を介してウェハWへの給電を行うので、ウェハWに固体を接触させる必要がなく、配線の信頼性を向上させることができる。
【0072】
図15から図24に示す例では、給電コンタクトが電解加工液に濡れてしまうが、ウェハの外周部にシールを設ける必要がないので、ウェハの外周部まで均一に加工することができる。なお、電解加工時には、ウェハホルダ14を電解加工ユニット16のトレー40内でウェハの略中心を通る直径方向に所定の距離だけ反復往復させて、ウェハWと加工電極52とを相対移動させてもよい。この相対移動距離は、ウェハWの径と加工電極52の径の合計値以上あることが好ましい。
【0073】
上述した実施形態においては、ウェハの加工面を下向きにした状態で研磨が行われる場合について説明したが、図22に示すローラコンタクト500bの実施形態以外の実施形態においては、ウェハの加工面を上向きにした状態で研磨を行うこととしてもよい。
【0074】
図25は、本発明に係る電解加工装置を用いてウェハを電解加工したときの平坦化特性を示すグラフである。図25からわかるように、本発明に係る電解加工装置によれば、従来の電解加工装置に比べて、平坦化特性が著しく向上し、低荷重の研磨でありながら理想的な特性に極めて近い特性が得られた。なお、この電解加工実験は、以下の条件の下で行ったものである。
電解加工液: HEDP(1−ヒドロキシエチリデンジホスホン酸)+NHOH+BTA(ベンゾトリアゾール)
ウェハの直径: 200mm
加工電極の直径: 30mm
ウェハの回転速度: 200min−1
加工電極の回転速度: 75min−1
研磨パッド: ストリップ状の固定砥粒パッド
電解加工液の吐出流量: 200ml/min
加工電極の押圧荷重: 1psi(約70kPa)
印加電圧: 2.25V(CV)
【0075】
図26Aは、従来の電解加工装置を用いて研磨を行った場合の研磨前の銅膜6の表面6aにおける初期段差tと、研磨途中の銅膜6の表面6bにおける途中段差tとの関係を示す模式図である。図26Bは、本発明に係る電解加工装置を用いて研磨を行った場合の研磨前の銅膜6の表面6aにおける初期段差tと、研磨途中の銅膜6の表面6cにおける途中段差tとの関係を示す模式図である。図26Aおよび図26Bから、本発明に係る電解加工装置によれば、研磨途中の銅膜6の表面における途中段差が著しく低減されることがわかる。
【0076】
なお、電解加工液としては、高濃度のリン酸液やHEDPとNMI(N−メチルイミダゾール)の混合液などを使用することもできるが、これらの薬液は、上記実験に用いた電解加工液に比べて平坦化性能がやや劣る。
【0077】
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、その技術的思想の範囲内において種々異なる形態にて実施されてよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1A】半導体デバイスに配線を形成する工程を示す断面図である。
【図1B】半導体デバイスに配線を形成する工程を示す断面図である。
【図1C】半導体デバイスに配線を形成する工程を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における電解加工装置を示す平面図である。
【図3】図2に示す電解加工装置の正面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2に示す電解加工装置における電解加工ユニットの要部を示す断面図である。
【図6A】図5に示す電解加工ユニットに用いることができる加工電極および研磨パッドを示す斜視図である。
【図6B】図5に示す電解加工ユニットに用いることができる加工電極および研磨パッドを示す斜視図である。
【図6C】図5に示す電解加工ユニットに用いることができる加工電極および研磨パッドを示す斜視図である。
【図7】図5に示す電解加工ユニットに用いることができる研磨パッドを示す斜視図である。
【図8】図2のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図2に示す電解加工装置において、ウェハをフレーム内にロードするときの洗浄ユニットを示す断面図である。
【図10】図2に示す電解加工装置の処理工程を示すフローチャートである。
【図11】図2に示す電解加工装置の処理工程を示すフローチャートである。
【図12】図2に示す電解加工装置において、ウェハに電解加工を行うときの電解加工ユニットを示す断面図である。
【図13】ウェハの領域ごとに設定された相対移動速度の分布を示すグラフである。
【図14】図2に示す電解加工装置において、ウェハを洗浄するときの洗浄ユニットを示す断面図である。
【図15】本発明の第2の実施形態における電解加工装置を示す断面図である。
【図16】図15の部分拡大図である。
【図17】図15に示す電解加工装置において、ウェハをフレーム内にロードするときの洗浄ユニットを示す断面図である。
【図18】図16に示すボールコンタクトの変形例を示す断面図である。
【図19】図16に示すボールコンタクトを複数個組み合わせた例を示す底面図および正面図である。
【図20】本発明の第3の実施形態における給電コンタクトを示す断面図である。
【図21】本発明の第4の実施形態における給電コンタクトを示す断面図である。
【図22】本発明の第5の実施形態における給電コンタクトを示す断面図である。
【図23】本発明の第6の実施形態における給電コンタクトの例を示す底面図および正面図である。
【図24】本発明の第7の実施形態における給電コンタクトを示す断面図である。
【図25】本発明に係る電解加工装置を用いてウェハを研磨したときの平坦化特性を示すグラフである。
【図26A】従来の電解加工装置を用いたときに除去されるウェハ上の段差を示す断面図である。
【図26B】本発明に係る電解加工装置を用いたときに除去されるウェハ上の段差を示す断面図である。
【符号の説明】
【0079】
10 電解加工装置
14 ウェハホルダ
16 電解加工ユニット
18 洗浄ユニット
20 キャリア
22 サポートブロック
26 第1リニアドライブユニット(水平移動機構)
28 第2リニアドライブユニット(垂直移動機構)
31 ハウジング
32 バックプレート
50 中空シャフト
52 加工電極
53 研磨パッド
57,58 貫通孔
60 研磨液供給路
72 ヘッド押圧機構
73 ヘッド回転機構
80 空気圧アクチュエータ
103 電源
110 給電端子
112 リップシール
121,122 ノズル
130 外部ロボット
200 ボールコンタクト
212 ケース
214 ボール
216 ロッド
218 スプリング
220 ホルダ
228,230 電解液流路
232 バックプレート
400 リテーナ
500 垂直ローラコンタクト
504 ローラ
506 給電電極
508 ホルダ
520 歯車
536 給電端子
600 水平ローラコンタクト
602 ローラ
604 リテーナ
700 電解コンタクト
702 ホルダ
704 電解液供給管
708 弾性パッド
710 給電端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に金属膜が形成された基板を保持しつつ、該基板を回転させる基板ホルダと、
前記基板ホルダに保持された基板に対して電解加工を行う電解加工ユニットと、
を備え、前記電解加工ユニットは、
回転可能な加工電極と、
前記加工電極に取り付けられた研磨パッドと、
前記研磨パッドを前記基板に押圧する押圧機構と、
電解加工液を前記基板と前記加工電極との間に供給する液供給機構と、
前記基板と前記加工電極とを相対運動させる相対運動機構と、
前記加工電極がカソード、前記基板の金属膜がアノードとなるように、前記加工電極と前記基板の金属膜との間に電圧を印加する電源と、
を備えたことを特徴とする電解加工装置。
【請求項2】
前記加工電極の径は前記基板の径より小さいことを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項3】
前記電解加工ユニットの液供給機構は、前記加工電極および前記研磨パッドに形成され、前記電解加工液を流通させる貫通孔を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項4】
前記電解加工ユニットは、上端に前記加工電極が取り付けられた中空シャフトをさらに備え、
前記電解加工ユニットの液供給機構は、前記中空シャフトの中空部に設けられ、前記電解加工液を前記貫通孔に供給する研磨液供給路をさらに備えたことを特徴とする請求項3に記載の電解加工装置。
【請求項5】
前記電解加工ユニットは、上端に前記加工電極が取り付けられた中空シャフトをさらに備え、
前記電解加工ユニットの押圧機構は、前記中空シャフトを軸方向に押圧する空気圧アクチュエータを備えたことを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項6】
前記電解加工ユニットの研磨パッドは固定砥粒パッドであることを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項7】
前記電解加工ユニットの研磨パッドは凸部が連続的に形成された樹脂パッドであることを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項8】
前記基板をロードおよびアンロードするロード/アンロード部と、
前記基板を前記ロード/アンロード部と前記電解加工ユニットとの間で搬送するキャリアと、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項9】
前記キャリアは、
前記基板ホルダを支持するサポートブロックと、
前記サポートブロックを水平に移動する水平移動機構と、
前記基板ホルダを垂直に移動する垂直移動機構と、
を備えたことを特徴とする請求項8に記載の電解加工装置。
【請求項10】
前記基板を洗浄する洗浄ユニットをさらに備えたことを特徴とする請求項8に記載の電解加工装置。
【請求項11】
前記洗浄ユニットは、前記基板に対して洗浄液と清浄ガスの少なくとも一方を噴射するノズルを備えたことを特徴とする請求項10に記載の電解加工装置。
【請求項12】
前記基板ホルダは、
ハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記基板の周縁部に接触する給電端子と、
前記給電端子の径方向内側に配置されたシールと、
前記給電端子および前記シール上に載置された基板を前記ハウジングに対して押圧するプレートと、
前記電源と前記給電端子とを接続する電線と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項13】
前記基板ホルダは、前記基板を吸着するプレートを備え、
前記電解加工ユニットは、
前記プレートに吸着された基板の周縁部の前記研磨パッドが接触していない部分に給電する給電コンタクトと、
前記電源と前記給電コンタクトとを接続する電線と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の電解加工装置。
【請求項14】
前記給電コンタクトは、
前記基板の周縁部の前記研磨パッドが接触していない部分に接触する導電性ボールと、
前記ボールを支持するロッドと、
前記ロッドを付勢するスプリングと、
頂部から前記ボールの一部が露出するように前記ボールを収容したケースと、
前記ボール、前記ロッド、および前記スプリングを前記ケース内に保持するホルダと、
を備えたことを特徴とする請求項13に記載の電解加工装置。
【請求項15】
前記ロッドおよび前記ホルダは、前記ボールに電解液を供給する流路を備えたことを特徴とする請求項14に記載の電解加工装置。
【請求項16】
前記電解液は前記電解加工液と同一種類の液体であることを特徴とする請求項15に記載の電解加工装置。
【請求項17】
前記ボールは黒鉛からなることを特徴とする請求項14に記載の電解加工装置。
【請求項18】
前記給電コンタクトは、
前記基板の周縁部の前記研磨パッドが接触していない部分に接触する導電面を有し、前記基板の回転軸とは垂直な軸を中心として回転可能なローラと、
前記ローラを支持するホルダと、
前記ホルダ内に収容され、前記ローラの導電面に接触する給電端子と、
を備えたことを特徴とする請求項13に記載の電解加工装置。
【請求項19】
前記給電コンタクトは、前記ローラの回転を前記基板の回転と同期させる同期機構をさらに備えたことを特徴とする請求項18に記載の電解加工装置。
【請求項20】
前記給電コンタクトは、
前記基板の周縁部の前記研磨パッドが接触していない部分に接触する導電面を有し、前記基板の回転軸とは垂直な軸を中心として回転可能なローラと、
前記ローラを支持するホルダと、
前記ホルダ内に保持された電解液を介して前記ローラの導電面に給電する給電端子と、
を備えたことを特徴とする請求項13に記載の電解加工装置。
【請求項21】
前記給電コンタクトは、
前記基板のベベル部に接触する導電面を有し、前記基板の回転軸と平行な軸を中心として回転可能なローラと、
前記ローラを前記基板のベベル部に押圧するリテーナと、
を備えたことを特徴とする請求項13に記載の電解加工装置。
【請求項22】
前記給電コンタクトは、
前記電源に接続される給電端子と、
前記基板の金属膜と前記給電端子との間に電解液を満たすホルダと、
前記ホルダに前記電解液を供給する液供給管と、
を備えたことを特徴とする請求項13に記載の電解加工装置。
【請求項23】
前記給電コンタクトは、前記基板に接触する弾性パッドをさらに備えたことを特徴とする請求項22に記載の電解加工装置。
【請求項24】
表面に金属膜が形成された基板を保持しつつ、該基板を回転させ、
加工電極に取り付けられた研磨パッドを回転させ、
電解加工液を前記基板と前記加工電極との間に供給し、
前記加工電極がカソード、前記基板の金属膜がアノードとなるように、前記加工電極と前記基板の金属膜との間に電圧を印加し、
前記研磨パッドを前記基板に押圧し、
前記基板と前記加工電極および前記研磨パッドとを前記基板の径方向に相対移動させることを特徴とする電解加工方法。
【請求項25】
前記相対移動における相対移動距離は、前記基板の径と前記加工電極の径の合計値以上あることを特徴とする請求項24に記載の電解加工方法。
【請求項26】
前記相対移動は、前記基板を固定しつつ、前記加工電極を移動させることを特徴とする請求項24に記載の電解加工方法。
【請求項27】
前記相対移動は、直径方向に分割した基板の領域ごとに設定された相対移動速度で前記基板と前記加工電極とを相対移動させることを特徴とする請求項24に記載の電解加工方法。
【請求項28】
前記相対移動速度の設定は、前記加工電極が前記基板に対向する時間の総和が各領域で略等しくなるように設定することを特徴とする請求項27に記載の電解加工方法。
【請求項29】
前記相対移動は、設定された相対移動速度の一番小さい領域から開始することを特徴とする請求項27に記載の電解加工方法。
【請求項30】
前記相対移動は、設定された相対移動速度の一番小さい領域で終了することを特徴とする請求項27に記載の電解加工方法。
【請求項31】
前記加工電極がアノードとなるように前記加工電極に電圧を印加し、前記加工電極の表面に生成した金属を電解エッチングすることを特徴とする請求項24に記載の電解加工方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【公開番号】特開2007−50505(P2007−50505A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219805(P2006−219805)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】