説明

露光処理方法及び、半導体装置の製造方法

【課題】基板表面の段差が大きいような場合でも面位置の検出精度の低下を防止できるようにした露光処理方法及び半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】ウエーハの表面上に塗布されたフォトレジストにスキャン露光を行う際に、ウエーハの表面を走査して当該ウエーハ表面の面位置データを取得する(ステップA1)。また、ウエーハ表面の段差部の位置及びその大きさに関する段差情報をCADデータや膜厚設計値等から取得する(ステップA2)。次に、取得した段差情報に基づいて面位置データを補正し(ステップA3)、補正された面位置データに基づいてウエーハ表面の面位置を調整する(ステップA4)。そして、面位置が調整されたウエーハ表面上のフォトレジストに露光処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光処理方法及び、半導体装置の製造方法に関し、特に、基板表面の段差が大きいような場合でも面位置の検出精度の低下を防止できるようにした技術に関する。
【背景技術】
【0002】
露光装置には、ウエーハ上に塗布されたフォトレジストに対してフォトマスクのパターンをステップ&リピートで転写するタイプのステッパと、ウエーハを載せたステージとフォトマスクとを平面視で相対的に逆方向に移動させ、スリットを通した光(以下、「スリット光源」ともいう。)でフォトマスクのパターンを連続的に転写するタイプのスキャナと、がある。また、フォトレジスト表面の高さおよび面位置検出機構として、例えば斜入射光学系を用いて基板からの反射光をセンサ上の位置ずれとして検知する方法や、エアーマイクロセンサや静電容量センサなどのギャップセンサを用いる方法などが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、従来例に係るウエーハ表面の面位置の検出とその調整方法を示すフローチャートである。図4ではスキャナを用いた露光処理の場合について説明する。熱処理工程によってウエーハに軽度の歪みが生じている場合や、スキャナのステージ上にゴミが付着しているような場合には、ウエーハはステージ上で部分的に傾いてしまうことが多く、そのまま露光処理を行うと、デフォーカス(即ち、ピンボケ)となるおそれがある。
【0004】
そこで、図4のステップB1では、まずウエーハ表面の面位置の検出を行う。ここでは図5(A)に示すように、例えば斜入射光学系等を用いて、フォトレジスト95表面の複数箇所で、フォトレジスト95表面の基準面に対する高さを順次測定する。フォトレジスト95表面の各測定箇所にそれぞれ紐付けされた測定値の集まりが面位置データである。
次に、図4のステップB2では、オートフォーカシングやオートレベリングを行って、図5(B)に示すようにフォトレジスト95表面の高さができるだけ均一となるようにウエーハ91の高さや傾きを調整する。ここで、オートフォーカシングとは、ステージを高さ(Z方向)方向に動かす操作のことである。また、オートレベリングとは、ステージを
水平面(XY平面)に対して傾斜させる操作のことである。スキャナを用いた露光工程では、面位置の検出(ステップB1)とその調整(ステップB2)とを連続的に繰り返し行いながら、これと並行してスキャン露光を行う。
【特許文献1】特開平9−236425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来例に係る方法によれば、チップ領域に形成されるデバイスの中に、そのデバイス特有の急峻な段差(例えば、メモリセルと周辺回路との段差や、製品回路部とスクライブラインとの段差、配線部と非配線部との段差など)が存在する場合には、その段差が原因で面位置を適切に調整できない場合があった。
例えば、図5(A)に示したように、フォトレジスト95下に配線パターン93が形成されている場合には、スキャナが備える面位置検出機構は配線パターン93による段差部99も含めて面位置の検出(即ち、レジストパターン95の表面高さの測定)を行う。そして、図5(B)に示したように、スキャナは、レジストパターンの表面高さができるだけ均一となるように自動的にレベリング補正を行う。つまり、配線部と非配線部との段差を含めて面位置検出を行い、面位置の傾斜成分をできるだけキャンセルする(即ち、0に近づける)ように、レベリング補正を行う。
【0006】
ここで、配線パターンが薄く段差が小さい場合には、傾斜成分に含まれる段差の割合は小さいので、面位置検出精度に対する段差の影響はそれほど問題とはならない。しかしながら、例えば図5(B)に示したように、配線パターン93が厚く形成され、配線部と非配線部との段差が極めて大きい場合には、段差の分だけ傾斜成分が大きく検出されるので、傾斜成分が誤検出され、面位置の検出精度が大きく低下してしまうという問題があった。
【0007】
面位置検出精度が大きく低下してしまうとフォトマスクのパターンをフォトレジスト95に良好に結像させることができないおそれがあり、またその結果、転写されるパターンの精度が著しく低下してしまうおそれがある。
そこで、この発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、基板表面の段差が大きいような場合でも面位置の検出精度の低下を防止できるようにした露光処理方法及び半導体装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、発明1の露光処理方法は、基板の表面上に塗布されたフォトレジストに露光処理を行う露光処理方法であって、前記基板の表面を走査して当該基板表面の面位置データを取得する工程と、前記基板表面の段差部の位置及びその大きさに関する段差情報に基づいて前記面位置データを補正する工程と、補正された前記面位置データに基づいて前記基板表面の面位置を調整する工程と、前記面位置が調整された前記基板表面上の前記フォトレジストに前記露光処理を行う工程と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、「基板の表面を走査して当該基板表面の面位置データを取得する」とは、例えば、斜入射光学系等を用いて基板表面の複数の測定ポイントで基板表面の高さを測定することである。また「基板表面の面位置を調整する」とは、例えば、露光装置のステージを水平面に対して傾けたり、高さ方向に沿って移動させたりすることによって、ステージに固定された基板表面の面位置を調整することである。
【0010】
発明2の露光処理方法は、発明1の露光処理方法において、前記露光処理はスキャン方式の露光処理であり、前記基板表面の面位置を調整する工程と、前記フォトレジストに前記露光処理を行う工程とを並行して行うことを特徴とするものである。
発明3の露光処理方法は、発明1又は発明2の露光処理方法において、前記段差情報のうちの、前記段差部の位置及びその大きさの少なくとも一方に関する情報は設計値であることを特徴とするものである。
【0011】
発明4の露光処理方法は、発明1から発明3の何れか一の露光処理方法において、前記段差情報のうちの前記段差部の位置に関する情報を当該段差部の形成工程で使用されるフォトマスクのマスクデータから取得する工程、を含むことを特徴とするものである。
発明1から発明4の露光処理方法によれば、補正後の面位置データには段差部の位置とその大きさが反映されているので、たとえ段差が大きいような場合でも面位置の検出精度の低下を防止することができる。従って、露光処理工程のパターン転写精度の向上に貢献することができる。
【0012】
発明5の半導体装置の製造方法は、発明1から発明4の何れか一の露光処理方法を行って前記基板表面上の前記フォトレジストに前記露光処理を行う工程と、前記露光処理された前記フォトレジストを現像処理して前記基板表面上に所定のレジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とするものである。発明5の露光処理方法によれば、発明1から発明4の露光処理方法を応用しているので、レジストパターンの加工精度の向上に寄与することができる。
【0013】
本発明は、基板表面の面位置検出及びその調整と露光処理とを連続的に並行して行う、スキャン方式の露光処理に適用して極めて好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の実施の形態に係る露光処理方法を示すフローチャートである。この実施の形態では、ウエーハの表面上に塗布されたフォトレジストを、スキャナを用いて露光処理する場合について説明する。
まず図1のステップS1で、フォトレジストが表面に塗布されたウエーハをスキャナ内に搬入する。そして、搬入したウエーハをステージ上に配置し、チャック吸着によってステージに固定する。次に、図1のステップS2で、ウエーハ上のフォトレジストに対してスキャン方式の露光処理(即ち、スキャン露光)を行う。このステップS2では、ウエーハ表面の面位置検出とその調整とを連続的に繰り返し行いながら、これと並行してスキャン露光を行う。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係るウエーハ表面の面位置の検出とその調整方法を示すフローチャートである。まず図2のステップA1では、チップ領域毎、又はショット毎にウエーハ表面を走査してその面位置データを取得する。走査手段としては、例えば、スキャナが備える斜入射光学系や、エアーマイクロセンサ又は静電容量センサなどのギャップセンサ等を用いる。
【0016】
例えば図3(A)に示すように、フォトレジスト5表面の複数箇所で、フォトレジスト5表面の基準面に対する高さを順次測定する。フォトレジスト9表面の各測定箇所にそれぞれ紐付けされた測定値の集まりが面位置データである。説明の便宜上から、ここでは図3(A)に示すように、測定箇所a点におけるフォトレジスト5表面の基準面からの高さが「0」であり、測定箇所b点におけるフォトレジスト5表面の基準面からの高さが「7」である場合を想定する。
上述したように、フォトレジスト9の表面の高さは走査手段を用いた実測によって得られるものであり、その値は例えば高さ方向(即ち、Z方向)の座標で示される。なお、図3(A)及び(B)に示す基準面は、例えばスキャナが備える(スリット光源用の)スリットと略平行な仮想の平面である。
【0017】
次に図2のステップA2では、チップ領域における段差部の位置とその大きさとに関する情報(以下、「段差情報」という。)をスキャナに読み込ませる。ここで、段差部の位置は例えばX、Y方向の座標で示され、その位置に関する情報は例えばデバイスの設計図であるCADデータから取得する。或いは、段差部の位置に関する情報は、当該段差部を形成する工程で使用されたフォトマスクのマスクデータから取得しても良い。
【0018】
一例を挙げると、図3(A)に示したように、ウエーハ1表面の段差部9が配線パターン3の有無(即ち、配線部と非配線部の存在)によって生じている場合には、段差部9の位置は配線パターン3の外周とほぼ一致し、段差部9を境にした高低領域のうちの高い領域は配線パターン9の形成領域とほぼ一致する。従って、段差部9の位置に関する情報を、配線パターン3のCADデータから取得したり、配線パターン3形成用フォトマスクにおける光の透過率情報(マスクデータ)から取得したりすることが可能である。
【0019】
また、段差部(段差)の大きさはZ方向の座標で示され、その大きさに関する情報は当該段差を形成している膜の厚さに関する設計データから取得する。一例を挙げると、図3(A)に示したように、ウエーハ1表面の段差部9が配線パターン3によって生じている場合には、段差部9の大きさは配線パターン3の厚さにほぼ等しい。そこで、この配線パターン3の膜厚の設計値を段差部9の大きさとする。ここでは説明の便宜上から、配線パターン3の膜厚の設計値が「3」である場合を想定する。
【0020】
次に、図2のステップA3では、取得した段差情報に基づいて面位置データを補正する。例えば、図3(A)に示したように、a点におけるフォトレジスト5表面の高さ(測定値)は「0」であり、b点におけるフォトレジスト5表面の高さ(測定値)は「7」であった。また、段差部9の大きさは「3」であった。ここで、b点ではフォトレジスト5下に配線パターン3が形成されており、このb点におけるフォトレジスト5表面の高さ「7」には配線パターン3の厚さ(即ち、段差部9の大きさ「3」)が含まれている。即ち、b点において段差成分を除いた、実質的なフォトレジスト5表面の高さは「4」(=7−3)である。
【0021】
そこで、面位置データに含まれる、b点におけるフォトレジスト5表面の高さのデータを「7」から「4」に補正する。なお、a点ではフォトレジスト5下に配線パターン3が形成されていないので、その高さの測定値には段差成分は含まれていない。従って、a点におけるフォトレジスト5表面の高さのデータについては補正を行わないで「0」のままとする。
【0022】
次に、図2のステップA4では、補正された面位置データに基づいてオートフォーカシングやオートレベリングを行い、ウエーハ表面の面位置を調整する。即ち、補正後の面位置データから、図3(A)に示したb点の実質的な高さは「4」であることが分かっているので、ウエーハ1を固定しているステージを水平面に対して傾けたり、高さ方向に沿って移動させたりしてb点の高さを「4」だけ下げ、その高さを「3」(=7−4)にする。また、a点については高さ「0」をできるだけ動かさないようにする。
【0023】
これにより、図3(B)に示すように、ウエーハ1のa点からb点にかけての部分が基準面と平行になる(なお、図2のステップA2において、取得した段差情報から、段差の大きさが所定の値よりも小さいと判断される場合、即ち、傾斜成分に含まれる段差の割合が極めて小さいと判断される場合には、ステップA3の面位置データの補正を行わなくても良い。その場合には、未補正の面位置データに基づいてオートフォーカシングやオートレベリングを行って、ウエーハ表面の面位置を調整する。)。
【0024】
図1のステップS2では、上述したような面位置の検出とその調整を連続的に繰り返し行う。そして、このような連続的、繰り返しの処理と並行してスキャン露光を連続的に行う。スキャン露光が終了したら、図1のステップS3へ進む。ステップS3では、チャック吸着を解除してウエーハをステージから取り出し、スキャナ内から搬出する。その後、上記ウエーハに現像処理を施してその表面の各チップ領域上にレジストパターンをそれぞれ形成する。
【0025】
このように本発明の実施の形態によれば、図2のステップA3で得られた補正後の面位置データには、段差部9の位置とその大きさが反映されているので、たとえ段差部9が大きいような場合でも、ウエーハ1表面の面位置の検出精度の低下を防止することができる。従って、露光処理工程のパターン転写精度や、レジストパターンの加工精度の向上に貢献することができる。また、製品の要求によりCMP等の平坦化技術を適用できないものや、平坦化処理での十分な平坦化が望めないものにおけるパターン転写精度の向上にも大きく貢献することができる。この実施の形態では、ウエーハ1が本発明の「基板」に対応している。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態に係る露光処理方法を示すフローチャート。
【図2】実施の形態に係る面位置の検出とその調整方法を示すフローチャート。
【図3】実施の形態に係る面位置調整方法を示す概念図。
【図4】従来例に係る面位置の検出とその調整方法を示すフローチャート。
【図5】従来例に係る面位置調整方法を示す概念図。
【符号の説明】
【0027】
1 ウエーハ、3 配線パターン、5 フォトレジスト、9 段差部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に塗布されたフォトレジストに露光処理を行う露光処理方法であって、
前記基板の表面を走査して当該基板表面の面位置データを取得する工程と、
前記基板表面の段差部の位置及びその大きさに関する段差情報に基づいて前記面位置データを補正する工程と、
補正された前記面位置データに基づいて前記基板表面の面位置を調整する工程と、
前記面位置が調整された前記基板表面上の前記フォトレジストに前記露光処理を行う工程と、を含むことを特徴とする露光処理方法。
【請求項2】
前記露光処理はスキャン方式の露光処理であり、
前記基板表面の面位置を調整する工程と、前記フォトレジストに前記露光処理を行う工程とを並行して行うことを特徴とする請求項1に記載の露光処理方法。
【請求項3】
前記段差情報のうちの、前記段差部の位置及びその大きさの少なくとも一方に関する情報は設計値であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の露光処理方法。
【請求項4】
前記段差情報のうちの前記段差部の位置に関する情報を当該段差部の形成工程で使用されるフォトマスクのマスクデータから取得する工程、を含むことを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載の露光処理方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の露光処理方法を行って前記基板表面上の前記フォトレジストに前記露光処理を行う工程と、
前記露光処理された前記フォトレジストを現像処理して前記基板表面上に所定のレジストパターンを形成する工程と、を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−194419(P2007−194419A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−11388(P2006−11388)
【出願日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】