説明

非常用照明装置

【課題】避難経路として適切な方向を、二次電池の電力を無駄に消費することなく長時間照明できる非常用照明装置を提供する。
【解決手段】非常用照明装置Aは、点灯部(発光ダイオード11、12、13、14)と、二次電池32と、充電回路部31と、点灯回路部33と、火災を感知する火災感知部21、22とを備える。充電回路部31は、外部電源5からの電力供給により二次電池32を充電する。点灯回路部33は、外部電源5からの電力供給が遮断されると二次電池32からの電力供給により点灯部を点灯させる。そして、火災感知部21又は22が火災を感知すると、点灯部が、火災感知部21又は22によって火災が感知された方向と異なる方向を照明光L2又はL1にて照明する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常用照明装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、発光ダイオードと、二次電池と、周囲温度を検知する周囲温度検知手段と、充放電回路とを備えた非常用照明装置があった(特許文献1参照)。充放電回路は、外部電源から非常用照明装置に電力が供給される時に、二次電池を充電する。また、充放電回路は、非常時に二次電池を電源として、周囲温度検知手段が検知する周囲温度に応じた値の電流を発光ダイオードに供給することで、所定の光出力で発光ダイオードを点灯させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−210238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるような非常用照明装置では、予め設定された領域が照明されるため、火災が発生している箇所も照明される場合もある。しかしながら、火災の発生している箇所が照明されても避難誘導の効果は低く、避難経路の選択を避難者が誤る可能性があった。また、火災が発生している箇所も照明されるため、二次電池の電力が無駄に消費され、照明時間が短くなっていた。
【0005】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、避難経路として適切な方向を、二次電池の電力を無駄に消費することなく長時間照明できる非常用照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明の非常用照明装置は、点灯部と、二次電池と、充電回路部と、点灯回路部と、火災を感知する火災感知部とを備える。前記充電回路部は、外部電源からの電力供給により前記二次電池を充電する。前記点灯回路部は、前記外部電源からの電力供給が遮断されると前記二次電池からの電力供給により前記点灯部を点灯させる。そして、前記火災感知部が火災を感知すると、前記点灯部が、前記火災感知部によって火災が感知された方向と異なる方向を照明することを特徴とする。
【0007】
この非常用照明装置において、前記点灯部と前記火災感知部は複数あり、複数の前記点灯部の各々が照明する方向と同じ側に、前記火災感知部が配置されたことが好ましい。
【0008】
この非常用照明装置において、何れかの前記火災感知部が火災を感知すると、前記点灯回路部は、火災を感知していない前記火災感知部が設置されている側を照明する前記点灯部を所定の明るさで点灯させる。そして、火災を感知した前記火災感知部が設置されている側を照明する前記点灯部を消灯又は前記所定の明るさよりも減光させることが好ましい。
【0009】
この非常用照明装置において、前記点灯回路部は、前記火災感知部が火災を感知していない時に比べて、前記火災感知部が火災を感知した時に、火災を感知していない前記火災感知部が設置されている側の前記点灯部の光出力を増加させることが好ましい。
【0010】
この非常用照明装置において、前記点灯部が発光ダイオードからなることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、避難経路として適切な方向を、二次電池の電力を無駄に消費することなく長時間照明できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は実施形態1の非常用照明装置の適用例で、(b)は(a)を下から見た図である。
【図2】(a)(b)(c)(d)は同上における非常用照明装置の照明パターンである。
【図3】同上における非常用照明装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
(実施形態1)
実施形態1の非常用照明装置Aを図1〜図3に基づいて説明する。
【0015】
非常用照明装置Aは図1、図2に示すように、例えば通路Pの天井Rに設けられ、非常時に通路Pを照明する。
【0016】
非常用照明装置Aは、図1〜図3に示すように、天井Rに設置された本体1と、本体1とは別体に設けられた火災感知部21、22とを備える。本体1は、発光ダイオード11、12、13、14と、制御部2と、充電回路部31と、二次電池32と、点灯回路部33と、スイッチ素子41、42、43とを備える。
【0017】
火災感知部21、22は、熱を感知するサーミスタ等の熱感知部と、煙を感知する光学式の煙感知部とを備え、熱、又は、煙、又は、熱と煙の両方を感知すると、制御部2に火災感知信号を送る。尚、火災感知部21、22は、熱感知部及び煙感知部の何れか一方のみを備えたものでもよい。
【0018】
二次電池32は、例えばリチウムイオン電池やニッケル水素電池であり、外部電源5からの電力供給がある間は、外部電源5からの電力を受けた充電回路部31によって充電される。
【0019】
充電回路部31は、外部電源5からの電力供給がある場合は、トランジスタのようなスイッチ素子41をオンにして二次電池32を充電する。充電回路部31は、外部電源5の停電を監視し、停電発生を感知すると、スイッチ素子41をオンにして、二次電池32から点灯回路部33及び制御部2に電力を供給する。
【0020】
点灯回路部33は、停電発生時に、二次電池32からの電力供給を受けて、発光ダイオード11、12、13、14に電力を供給する。
【0021】
発光ダイオード11、12、13、14は、図1、図2に示すように、本体1の下面に照射面が通路P側に向くように配置される。
【0022】
発光ダイオード11、12は、通路Pの幅方向に並べて配置され、通路Pの通路方向に沿った一方向(図2(a)の左方向)を照明するように配光されている。そして、火災感知部22は、発光ダイオード13、14よりも他方向側(図2(a)の右方向側)の天井Rに設置され、発光ダイオード13、14の照明領域で火災Fの発生を監視する。同様に、発光ダイオード13、14は、通路Pの幅方向に並べて配置され、通路Pの通路方向に沿った他方向(図2(b)の右方向)を照明するように配光されている。そして、火災感知部21は、発光ダイオード11、12よりも一方向側(図2(b)の左方向側)の天井Rに設置され、発光ダイオード11、12の照明領域で火災Fの発生を監視する。
【0023】
尚、発光ダイオード11、12、13、14は、各々の照明光L1、L2の方向が上記と同じであれば、本体1への配置は上記に限定されるものではなく、通路Pの幅方向に1列に配置されていても構わない。
【0024】
発光ダイオード11、12はスイッチ素子42を介して点灯回路部33の出力端子と回路のグランドとの間に接続されている。発光ダイオード13、14はスイッチ素子43を介して点灯回路部33の出力端子と回路のグランドとの間に接続されている。
【0025】
スイッチ素子42、43は、制御部2によってオン/オフが制御され、火災感知部21、22が火災を感知していない時は、オンになっている。火災感知部21が火災を感知すると、制御部2は、火災感知部21と同じ側を照明する発光ダイオード11、12に接続されたスイッチ素子42をオフにする。火災感知部22が火災を感知すると、制御部2は、火災感知部22と同じ側を照明する発光ダイオード13、14に接続されたスイッチ素子43をオフにする。
【0026】
次に非常用照明装置Aの動作の説明をする。外部電源5から電力が供給されている場合は、発光ダイオード11、12、13、14は全て消灯している。停電が発生すると、充電回路部31がスイッチ素子41をオンにし、二次電池32から電力供給を受けた点灯回路部33が、発光ダイオード11、12、13、14へ電力を供給して、発光ダイオード11、12、13、14を点灯させる。その後、図2(a)に示すように、非常用照明装置Aに対して図中右側で火災Fが発生すると、火災感知部22のみが火災Fを感知し、火災感知部21は火災Fを感知しない。制御部2は、火災感知部22のみから火災感知信号が入力されると、スイッチ素子43をオフにする。この時、発光ダイオード11、12は、点灯回路部33から電力が供給されて通路Pの左側を照明光L1にて照明し、発光ダイオード13、14は消灯するので、火災が発生した方向と異なる方向が照明される。
【0027】
同様に、停電発生時に、図2(b)に示すように、非常用照明装置Aに対して図中左側で火災Fが発生すると、火災感知部21のみが火災Fを感知し、火災感知部22は火災Fを感知しない。制御部2は、火災感知部21のみから火災感知信号が入力されると、スイッチ素子42をオフにする。この時、発光ダイオード13、14は点灯回路部33から電力を供給されて通路Pの右側を照明光L2にて照明し、発光ダイオード11、12は消灯するので、火災が発生した方向と異なる方向が照明される。なお、停電発生と同時に、火災感知部21、22の何れかで火災が感知された場合は、全ての発光ダイオードが点灯することなく、火災を感知していない火災感知部が設置されている側を照明する発光ダイオードのみが点灯することになる。
【0028】
また、停電発生後に、火災感知部21、22がともに火災を感知した場合は、制御部2はスイッチ素子42、43をオンのままとし、点灯回路部33からの電力供給を受けて、全ての発光ダイオードが点灯する。もしくは、制御部2がスイッチ素子42、43をともにオフにして、発光ダイオード11、12、13、14がともに消灯しても構わない。
【0029】
また、本実施形態では、停電発生時のみ発光ダイオードを点灯させているが、外部電源5からの電力供給が継続している間でも、火災が感知された場合は、発光ダイオードを点灯させても構わない。
【0030】
尚、図1(a)に示すように、発光ダイオード11、12の照明光L1の照明範囲と、発光ダイオード13、14の照明光L2の照明範囲とが一部重なるように、発光ダイオード11、12、13、14の配光が設定されているが、照明範囲が重ならないように配光が設定されていてもよい。
【0031】
上述のように、非常用照明装置Aは、点灯部(発光ダイオード11、12、13、14)と、二次電池32と、充電回路部31と、点灯回路部33と、火災Fを感知する火災感知部21、22とを備える。充電回路部31は、外部電源5からの電力供給により二次電池32を充電する。点灯回路部33は、停電が発生すると、二次電池32からの電力供給により点灯部を点灯させる。そして、火災感知部21又は22によって火災が感知されると、火災が感知された方向と異なる方向を照明する。
【0032】
これにより、点灯部が、避難経路として適切な方向を照明するため、二次電池32の電力を無駄に消費することなく避難経路として適切な方向を長時間照明できるという効果がある。
【0033】
この非常用照明装置Aにおいて、点灯部と火災感知部は複数あり、複数の点灯部の各々が照明する方向と同じ側に、火災感知部が配置されたことが好ましい。
【0034】
これにより、点灯部が、火災Fが発生していない避難経路として適切な方向を、より的確に照明できる。
【0035】
この非常用照明装置Aにおいて、何れかの火災感知部が火災Fを感知すると、点灯回路部33は、火災Fを感知していない火災感知部が設置されている側を照明する点灯部を所定の明るさで点灯させる。そして、火災Fを感知した火災感知部が設置されている側を照明する点灯部を消灯又は所定の明るさよりも減光させることが好ましい。点灯部を減光させる方法としては、例えば制御部2がスイッチ素子42、43をPWM制御する方法がある。その他の方法として、点灯回路部33が、発光ダイオード11、12に流れる電流と、発光ダイオード13、14に流れる電流とを個別に調整し、減光させる発光ダイオードに流れる電流の値を下げる方法等がある。
【0036】
これにより、点灯部のうち、避難経路として不適切な経路を照明する点灯部が消灯又は減光されて、二次電池32の電力の消費が抑えられることができるため、避難経路として適切な経路を長時間照明できる。
【0037】
この非常用照明装置Aにおいて、点灯部が発光ダイオードからなることが好ましい。
【0038】
これにより、例えば蛍光灯のような電子管を光源とした場合よりも、発光ダイオードを光源とした方が、照明光の指向性が高いため、避難経路として適切な方向を的確に照明することができる。また、光源の経年劣化による故障や照度の低下の虞が少なくなるため、非常用照明装置としての信頼性が高くなる。
【0039】
尚、図1〜図3では、一つの方向を照明する発光ダイオードの数は2つであるが、照度や照明範囲を増やしたい等の場合は、3つ以上直列に接続されてもよいし、点灯回路部33とスイッチ素子42、43の間に発光ダイオードが並列に接続されていてもよい。
【0040】
また、非常用照明装置Aは、3つ以上の通路が交差する交差箇所に設置されていてもよく、その場合は、交差箇所につながる各通路に光を照射する点灯部と、点灯部の光が照射される領域で火災を感知する火災感知部が設けられていればよい。そして、火災が感知された場合は、感知されていない通路Pを点灯部にて照明すればよい。
【0041】
(実施形態2)
実施形態2の非常用照明装置Aの構成は実施形態1と同じなのでその説明は省略し、実施形態1と異なる動作のみを説明をする。
【0042】
本実施形態の非常用照明装置Aでは、停電発生時に火災が感知されると、火災Fを感知していない火災感知部が設置されている側を照明する点灯部を、より高い照度で照明させる。また、図2(c)(d)に示すように、火炎Fが発生している方向を照明する点灯部を減光させても構わない。尚、点灯部の照度を増減する方法としては、例えば制御部2がスイッチ素子42、43をPWM制御する方法がある。その他の方法として、点灯回路部33が、各々の発光ダイオードに流れる電流を個別に調整し、照度を上げる点灯部の発光ダイオードに流れる電流の値を増やし、照度を下げる点灯部の発光ダイオードに流れる電流の値を減らす方法等がある。
【0043】
上述のように、この非常用照明装置Aにおいて、点灯回路部33は、火災感知部が火災Fを感知した時に、火災Fを感知していない火災感知部が設置されている側の点灯部の光出力を、火災感知部が火災Fを感知していない時に比べて、増加させることが好ましい。
【0044】
これにより、周囲の温度上昇による発光ダイオードの照度低下の虞がなくなる。更に、火災発生時には通路Pに煙が発生するため、煙によって光が遮られるが、光出力が増加することで光が見えやすくなるため、より適切に避難経路が避難者に誘導される。
【0045】
以上に述べた実施形態1、実施形態2での点灯部は、発光ダイオードに限るものではなく、蛍光灯等の電子管や白熱灯であってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 本体
11、12、13、14 発光ダイオード(点灯部)
2 制御部
21、22 火災感知部
31 充電回路部
32 二次電池
33 点灯回路部
41、42、43 スイッチ素子
5 外部電源
L1、L2 照明光
R 天井
P 通路
F 火災


【特許請求の範囲】
【請求項1】
点灯部と、二次電池と、外部電源からの電力供給により前記二次電池を充電する充電回路部と、前記外部電源からの電力供給が遮断されると前記二次電池からの電力供給により前記点灯部を点灯させる点灯回路部と、火災を感知する火災感知部とを備え、
前記火災感知部が火災を感知すると、前記点灯部が、前記火災感知部によって火災が感知された方向と異なる方向を照明することを特徴とする非常用照明装置。
【請求項2】
前記点灯部と前記火災感知部は複数あり、複数の前記点灯部の各々が照明する方向と同じ側に、前記火災感知部が配置されたことを特徴とする請求項1記載の非常用照明装置。
【請求項3】
何れかの前記火災感知部が火災を感知すると、前記点灯回路部は、火災を感知していない前記火災感知部が設置されている側を照明する前記点灯部を所定の明るさで点灯させ、火災を感知した前記火災感知部が設置されている側を照明する前記点灯部を消灯又は前記所定の明るさよりも減光させることを特徴とする請求項2記載の非常用照明装置。
【請求項4】
前記点灯回路部は、前記火災感知部が火災を感知していない時に比べて、前記火災感知部が火災を感知した時に、火災を感知していない前記火災感知部が設置されている側の前記点灯部の光出力を増加させることを特徴とする請求項3記載の非常用照明装置。
【請求項5】
前記点灯部が発光ダイオードからなることを特徴とする請求項1乃至4の何れか記載の非常用照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−25996(P2013−25996A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−159108(P2011−159108)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】