非接触保持・搬送装置
【課題】ワーク等保持対象物の旋回流による回転を防止した状態で非接触保持することができる低騒音で運転コストが低くかつ設計・製作が簡略化される安価な非接触保持装置を提供する。
【解決手段】流体供給口4から放射方向へ流体を吐出する流体吐出部ユニット2と流体を噴出させる噴出口6およびこの噴出口6に向けて漸次拡開する噴出凹部を形成するスカート部ユニット3の2つの独立した機能を持つユニットで構成している。
【解決手段】流体供給口4から放射方向へ流体を吐出する流体吐出部ユニット2と流体を噴出させる噴出口6およびこの噴出口6に向けて漸次拡開する噴出凹部を形成するスカート部ユニット3の2つの独立した機能を持つユニットで構成している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1個でもワーク等保持対象物の回転を防止した状態で非接触保持することが
できる低騒音で運転コストが低くかつ設計と製作が簡略化できる安価な非接触保持装置
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の保持装置は、シリコンウェハやサファイアウェハ等をその製造段階にお
いて同一工程内もしくは次工程へ搬送する場合、ワークへの塵埃の付着や損傷の防止の
ため、またはワークの大形化や薄形化に伴って機械的かつ直接的な保持が著しく困難に
なっている。
【0003】
そこで、従来からワークにエアー等の流体を吹き付けて流体力学的効果を利用して保持
力を発生し非接触で保持する非接触保持装置が提案されている(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開 2005−51260
【特許文献2】特許 第4437415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の非接触保持装置では、ワークへ吹き付けるエアー等の
流体の噴出流が施回流であるために1個の非接触保持装置によりワークを非接触保持す
る場合は、ワークがエアーの施回流に伴って少しずつ回転し静止状態で保持できないと
いう不具合がある。
【0006】
一方、放射流による非接触保持装置では、ワークへ吹き付けるエアー等の流体の流れか
ら施回流成分を除き完全な放射流を発生するための複雑な構造を持つ立体流路を用いる
ためにその設計の煩雑さと内部流路の立体加工に高度な技術が要求されるという課題が
ある。(特許文献2参照)
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、1個でもワークの回
転を防止した状態で非接触保持することができる低騒音で安価な放射流を用いた非接触
保持装置でありながら設計と製造の簡略化と共にあらゆる形状のワークへ対応できる柔
軟な設計可能性を持つ非接触保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保持装置は、流体供給口からその反対側の放射方向へ流体を吐出する流体吐出
部とワークに対向し吐出された流体を噴出口へ向けて放射方向にガイドするスカート部
の2つのパートで構成することを特徴とする。
【0009】
この構成において、流体吐出部とスカート部をそれぞれ完全に独立したユニットとして
設計・製作を行う。
【0010】
このようにして、同じ吐出部ユニットを使用して、ワークに応じたスカート部のみを設計・製作することができる。
【0011】
同一の流体吐出部ユニットとスカート部の組み合せで使用する場合でも、その相対的固
定位置の調整により異なるワークに対応できる場合も有り得る。
【0012】
また、同一の流体吐出部ユニットとスカート部の組み合せでその相対的固定位置の調整
のみで非接触動作と接触動作を切替えて使用することも可能である。
【0013】
流体吐出部ユニットの吐出口の穴を小さく絞ることで吐出口近傍における吐出流体の流
速を速め流体消費量を押さえる。
【0014】
この保持装置の吐出口の穴の大きさは一定である必要は無く、分布ならびにスカート部
の形状も対称もしくは円形である必要はないので、異形のワークに対して適切な形状等
を組合せて最適化する設計を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放射方向へ流体を吐出する流体吐出部と流体を噴出させる噴出凹部を形成するスカート部の2つの独立した機能を持つユニットに分離した構造とすることで設計が簡略化されると共に構造もシンプルになることでの設計およびコストの削減、またユニットを共通化できることによるコスト削減等のメリットを享受しつつ、高性能の放射流方式非接触保持装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は図2の断面図で、図2は本発明の実施形態に係る非接触保持装置の鳥瞰図である。
【0017】
これらの図に示すように非接触保持装置1は、エアー等の流体を吐出口5より放射方向に吐出する流体吐出部2とワーク8と対向し吐出されたエアー等の流体を噴出口6に向かってガイドするスカート部3の2つのユニットで構成している。
【0018】
流体吐出部ユニット2は柱状の構造体の一方よりエアー等の流体を供給し、もう一方の端部付近の周上にあけられた吐出口穴5より放射方向にエアー等の流体を吐出する。
【0019】
スカート部ユニット3は、流体吐出部ユニット2より吐出されるエアー等の流体をワーク8と対向しながら平坦状端面を有する噴出部6に向かって案内する通風ガイド7を有する噴出凹部を構成している。
【0020】
スカート部ユニット3の中央部には流体吐出部ユニット2をスライド挿入するための流体吐出部ユニット外形と同一形状でわずかに大きい挿入穴が穿設されている。
【0021】
スカート部ユニット3には、スライド挿入された流体吐出部ユニット2を任意の軸方向位置でスカート部ユニット3に対して固定するための固定機構9が設けられている。
【0022】
スカート部ユニット3の流体吐出口穴5より吐出された流体をフラットの噴出口6へ向けて拡開するテーパー状面には、流体吐出口穴5に連通して各吐出口穴に応じた深さと幅を有し、噴出口フラット部6へ向け末広状に漸次拡幅しつつ漸次深さが浅くなり噴出口フラット部6で深さがゼロとなる放射状通風ガイド溝7が形成されている。
【0023】
図1の流体吐出部ユニット2の流体供給口4から供給されたエアーは、流体吐出穴5より吐出して放射状通風ガイド溝7に沿って流れることで吸引力を発生しワーク8と対向する噴出口フラット部6とのギャップから放射方向に噴出することにより旋回方向分の力を発生することなく非接触で安定にワークを保持することができる。
【0024】
流体吐出部ユニット2とスカート部ユニット3は、必ずしも円形である必要はなく、ワークの形状に応じて図3のような長方形や、更に不規則な平面形状であっても、それぞれの形状に応じた吐出穴口径と分布および通風ガイド溝の寸法形状のデザインにより対応することができる。
【0025】
また、設計によってはユニット分離構造とするメリットがなく、かつ加工コストが抑えられるときは、一体構造として設計・製作することがありうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図2の断面を表す図である。
【図2】非接触保持装置の鳥瞰図である。
【図3】長方形状のスカート部パターンの図である。
【符号の説明】
【0027】
1. 非接触保持装置
2. 流体吐出部ユニット
3. スカート部ユニット
4. 供給口
5. 吐出口穴
6. 噴出口
7. 通風ガイド
8. ワーク
9. 固定機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、1個でもワーク等保持対象物の回転を防止した状態で非接触保持することが
できる低騒音で運転コストが低くかつ設計と製作が簡略化できる安価な非接触保持装置
に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の保持装置は、シリコンウェハやサファイアウェハ等をその製造段階にお
いて同一工程内もしくは次工程へ搬送する場合、ワークへの塵埃の付着や損傷の防止の
ため、またはワークの大形化や薄形化に伴って機械的かつ直接的な保持が著しく困難に
なっている。
【0003】
そこで、従来からワークにエアー等の流体を吹き付けて流体力学的効果を利用して保持
力を発生し非接触で保持する非接触保持装置が提案されている(例えば特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開 2005−51260
【特許文献2】特許 第4437415号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の非接触保持装置では、ワークへ吹き付けるエアー等の
流体の噴出流が施回流であるために1個の非接触保持装置によりワークを非接触保持す
る場合は、ワークがエアーの施回流に伴って少しずつ回転し静止状態で保持できないと
いう不具合がある。
【0006】
一方、放射流による非接触保持装置では、ワークへ吹き付けるエアー等の流体の流れか
ら施回流成分を除き完全な放射流を発生するための複雑な構造を持つ立体流路を用いる
ためにその設計の煩雑さと内部流路の立体加工に高度な技術が要求されるという課題が
ある。(特許文献2参照)
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、その目的は、1個でもワークの回
転を防止した状態で非接触保持することができる低騒音で安価な放射流を用いた非接触
保持装置でありながら設計と製造の簡略化と共にあらゆる形状のワークへ対応できる柔
軟な設計可能性を持つ非接触保持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の保持装置は、流体供給口からその反対側の放射方向へ流体を吐出する流体吐出
部とワークに対向し吐出された流体を噴出口へ向けて放射方向にガイドするスカート部
の2つのパートで構成することを特徴とする。
【0009】
この構成において、流体吐出部とスカート部をそれぞれ完全に独立したユニットとして
設計・製作を行う。
【0010】
このようにして、同じ吐出部ユニットを使用して、ワークに応じたスカート部のみを設計・製作することができる。
【0011】
同一の流体吐出部ユニットとスカート部の組み合せで使用する場合でも、その相対的固
定位置の調整により異なるワークに対応できる場合も有り得る。
【0012】
また、同一の流体吐出部ユニットとスカート部の組み合せでその相対的固定位置の調整
のみで非接触動作と接触動作を切替えて使用することも可能である。
【0013】
流体吐出部ユニットの吐出口の穴を小さく絞ることで吐出口近傍における吐出流体の流
速を速め流体消費量を押さえる。
【0014】
この保持装置の吐出口の穴の大きさは一定である必要は無く、分布ならびにスカート部
の形状も対称もしくは円形である必要はないので、異形のワークに対して適切な形状等
を組合せて最適化する設計を行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、放射方向へ流体を吐出する流体吐出部と流体を噴出させる噴出凹部を形成するスカート部の2つの独立した機能を持つユニットに分離した構造とすることで設計が簡略化されると共に構造もシンプルになることでの設計およびコストの削減、またユニットを共通化できることによるコスト削減等のメリットを享受しつつ、高性能の放射流方式非接触保持装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は図2の断面図で、図2は本発明の実施形態に係る非接触保持装置の鳥瞰図である。
【0017】
これらの図に示すように非接触保持装置1は、エアー等の流体を吐出口5より放射方向に吐出する流体吐出部2とワーク8と対向し吐出されたエアー等の流体を噴出口6に向かってガイドするスカート部3の2つのユニットで構成している。
【0018】
流体吐出部ユニット2は柱状の構造体の一方よりエアー等の流体を供給し、もう一方の端部付近の周上にあけられた吐出口穴5より放射方向にエアー等の流体を吐出する。
【0019】
スカート部ユニット3は、流体吐出部ユニット2より吐出されるエアー等の流体をワーク8と対向しながら平坦状端面を有する噴出部6に向かって案内する通風ガイド7を有する噴出凹部を構成している。
【0020】
スカート部ユニット3の中央部には流体吐出部ユニット2をスライド挿入するための流体吐出部ユニット外形と同一形状でわずかに大きい挿入穴が穿設されている。
【0021】
スカート部ユニット3には、スライド挿入された流体吐出部ユニット2を任意の軸方向位置でスカート部ユニット3に対して固定するための固定機構9が設けられている。
【0022】
スカート部ユニット3の流体吐出口穴5より吐出された流体をフラットの噴出口6へ向けて拡開するテーパー状面には、流体吐出口穴5に連通して各吐出口穴に応じた深さと幅を有し、噴出口フラット部6へ向け末広状に漸次拡幅しつつ漸次深さが浅くなり噴出口フラット部6で深さがゼロとなる放射状通風ガイド溝7が形成されている。
【0023】
図1の流体吐出部ユニット2の流体供給口4から供給されたエアーは、流体吐出穴5より吐出して放射状通風ガイド溝7に沿って流れることで吸引力を発生しワーク8と対向する噴出口フラット部6とのギャップから放射方向に噴出することにより旋回方向分の力を発生することなく非接触で安定にワークを保持することができる。
【0024】
流体吐出部ユニット2とスカート部ユニット3は、必ずしも円形である必要はなく、ワークの形状に応じて図3のような長方形や、更に不規則な平面形状であっても、それぞれの形状に応じた吐出穴口径と分布および通風ガイド溝の寸法形状のデザインにより対応することができる。
【0025】
また、設計によってはユニット分離構造とするメリットがなく、かつ加工コストが抑えられるときは、一体構造として設計・製作することがありうる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図2の断面を表す図である。
【図2】非接触保持装置の鳥瞰図である。
【図3】長方形状のスカート部パターンの図である。
【符号の説明】
【0027】
1. 非接触保持装置
2. 流体吐出部ユニット
3. スカート部ユニット
4. 供給口
5. 吐出口穴
6. 噴出口
7. 通風ガイド
8. ワーク
9. 固定機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の端部付近に流体供給口を有し、ワーク側のもう一方の端部に流体供給口端部からワーク側の端部に向かう軸方向に対して放射方向に流体を吐出するための吐出口を有する柱状の流体吐出部と流体を噴出させる噴出口およびこの噴出口に向けて漸次拡開する側面を有し噴出口の外縁部に一体に連成されて、この噴出口に対向するワークの対向面と対向し、このワークの対向面方向への流体の流れを案内する平坦状端面を有する噴出凹部を形成するスカート部の2つのパートで構成することを特徴とする非接触保持装置。
【請求項2】
前記、流体吐出部とスカート部がそれぞれ完全に独立したユニットとして構成されてい
るいことを特徴とする請求項1記載の非接触保持装置。
【請求項3】
同一の前記流体吐出部ユニットに対して複数種類のワークに対応した設計のスカート部
ユニットを組合せることを特徴とする請求項2記載の非接触保持装置。
【請求項4】
前記流体吐出部ユニットとスカート部ユニットの相対的位置を調整可能とした固定機構
を具備することを特徴とする請求項2または請求項3の非接触保持装置。
【請求項5】
上記流体吐出部ユニットとスカート部ユニットの相対的位置調整・固定機構を用いて固 定位置調整のみで接触動作に切替ることを特徴とする請求項4に記載の非接触保持装置。
【請求項6】
上記流体吐出部ユニットの吐出口の穴を絞ることにより吐出口近傍における流体の流速
を速めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【請求項7】
上記吐出口の穴の大きさおよび分布を調節すると共に適切な形状のスカート部と組合せ
ることにより異形のワークに対応することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の非接触または準非接触保持装置。
【請求項8】
上記の請求項2〜5に記載の流体吐出部とスカート部を完全に独立ユニットとした点とその相対的位置調整に係る特徴を除き、全くの同一構造が一体構造ものとして作られていることを特徴とする請求項1、請求項6、請求項7のいずれか一項に記載の非接触保持装置または準非接触保持装置。
【請求項1】
一方の端部付近に流体供給口を有し、ワーク側のもう一方の端部に流体供給口端部からワーク側の端部に向かう軸方向に対して放射方向に流体を吐出するための吐出口を有する柱状の流体吐出部と流体を噴出させる噴出口およびこの噴出口に向けて漸次拡開する側面を有し噴出口の外縁部に一体に連成されて、この噴出口に対向するワークの対向面と対向し、このワークの対向面方向への流体の流れを案内する平坦状端面を有する噴出凹部を形成するスカート部の2つのパートで構成することを特徴とする非接触保持装置。
【請求項2】
前記、流体吐出部とスカート部がそれぞれ完全に独立したユニットとして構成されてい
るいことを特徴とする請求項1記載の非接触保持装置。
【請求項3】
同一の前記流体吐出部ユニットに対して複数種類のワークに対応した設計のスカート部
ユニットを組合せることを特徴とする請求項2記載の非接触保持装置。
【請求項4】
前記流体吐出部ユニットとスカート部ユニットの相対的位置を調整可能とした固定機構
を具備することを特徴とする請求項2または請求項3の非接触保持装置。
【請求項5】
上記流体吐出部ユニットとスカート部ユニットの相対的位置調整・固定機構を用いて固 定位置調整のみで接触動作に切替ることを特徴とする請求項4に記載の非接触保持装置。
【請求項6】
上記流体吐出部ユニットの吐出口の穴を絞ることにより吐出口近傍における流体の流速
を速めることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の非接触保持装置。
【請求項7】
上記吐出口の穴の大きさおよび分布を調節すると共に適切な形状のスカート部と組合せ
ることにより異形のワークに対応することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の非接触または準非接触保持装置。
【請求項8】
上記の請求項2〜5に記載の流体吐出部とスカート部を完全に独立ユニットとした点とその相対的位置調整に係る特徴を除き、全くの同一構造が一体構造ものとして作られていることを特徴とする請求項1、請求項6、請求項7のいずれか一項に記載の非接触保持装置または準非接触保持装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2013−94949(P2013−94949A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−242949(P2011−242949)
【出願日】平成23年11月6日(2011.11.6)
【出願人】(307006527)リンク・パワー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月6日(2011.11.6)
【出願人】(307006527)リンク・パワー株式会社 (3)
【Fターム(参考)】
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