説明

非水系二次電池用電極群の製造方法およびその製造装置

【課題】高効率回収が可能な異物除去手段で異物混入の防止が可能な非水系二次電池用電極群の製造方法および装置を提供することを目的とする。
【解決手段】正極集電体に正極活物質を塗布した帯状の正極板2と負極集電体に負極活物質を塗布した帯状の負極板3とそれらの間に帯状のセパレータ4a,4bを介在させた状態で複数個のガイドローラを経由して渦巻状に巻回してなる非水系二次電池用電極群の製造方法であって、電極群1を構成する正極板2、負極板3あるいはセパレータ4a,4bの少なくとも一つがガイドローラを通過する前に非接触状態で電極群1の構成シートに付着した異物を連続的に除去しながら巻回する非水系二次電池用電極群の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は正極板や負極板、セパレータからなる電極群の構成シートに付着した異物を磁気手段と集塵手段を用いて非接触状態で連続搬送しながら除去する非水系二次電池用電極群の製造方法及びその製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯用電子機器の電源として利用が広がっているリチウム二次電池は、負極にリチウムの吸蔵および放出が可能な炭素質材料等を用い、正極にコバルト酸リチウム(LiCoO2)等の金属とリチウムの複合酸化物を活物質として用いており、これによって高電位で高放電容量のある二次電池を実現している。さらに、電子機器および通信機器の多機能化に伴って、ますます高容量化が進む中で二次電池の安全性に対する要望も高くなっている。
【0003】
放電可能なリチウム二次電池の内部に金属異物が混入した場合、金属異物(Fe,SUS,Cu,Zn,Sn,または前記Fe,SUS,Cu,Zn,Snの化合物)がリチウム二次電池内で化学的に溶出し、デントライト形成により正極板および負極板がリチウム二次電池の内部で微小でありながらも内部短絡を起こし、電圧低下が発生するという課題が生じる。
【0004】
従来の異物の除去には、図8に示されるように、磁気ローラ104はガイドローラ106とマグネット105で構成されており、ガイドローラ106に対して外周方向に正極板101、負極板102、セパレータ103が搬送され、正極板101、負極板102、セパレータ103の各々ガイドローラ106と接触する面に付着した磁性金属異物を前記磁気ローラ104で吸着し、その後吸着した磁性金属異物は掃き取りブラシ107で掃き取られ、ケース108内へ堆積させる捕集方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
また、その他の異物の除去には、図9に示されるように、ガイドローラ120a,120bに対して外周方向に正極板109が搬送され、磁石118,119を使用した除去方法やブラシ112,116とノズル111,115およびチャンバー110,114から構成された吸引装置113,117による除去方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−171836号公報
【特許文献2】特開2004−73944号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の従来技術では、図8に示すように正極板101、負極板102、セパレータ103に付着した異物は磁気ローラ104と正極板101、負極板102、セパレータ103の間に挟まれて、正極板101、負極板102、セパレータ103にめり込んでしまうことにより異物の除去が困難となる課題を有していた。
【0007】
一方特許文献2の従来技術では、図9に示すようにガイドローラ120a,120bを通過した後に磁石118と吸引119で異物を取る構成であるために、正極板109に付着している異物はガイドローラ120a,120bと前記正極板109の間に挟まれて、正極板109にめり込んでしまうことにより異物の除去が困難となる課題を有していた。
【0008】
また、ブラシ112,116を用いて正極板109に付着している異物を掻き取る方法では、正極板109にブラシ112,116が接触して異物を掻き取ってしまうとともに活物質が脱落し易くなるといった課題を有していた。
【0009】
本発明は上記従来の課題を鑑みてなされたもので、正極板、負極板、セパレータからなる電極群の構成シートに付着した異物を構成シートが非接触状態で構成シートに付着した異物を連続的に除去する非水系二次電池用電極群の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明の非水系二次電池用電極群の製造方法は、正極集電体に正極活物質を塗布した帯状の正極板と負極集電体に負極活物質を塗布した帯状の負極板とそれらの間に帯状のセパレータを介在させた状態で複数個のガイドローラを経由して渦巻状に巻回してなる非水系二次電池用電極群の製造方法であって、前記電極群を構成する正極板、負極板あるいはセパレータからなる構成シートの少なくとも一つが非接触状態で構成シートに付着した異物を連続的に除去しながら巻回することを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電極群の構成シートに付着した異物を非接触除去することにより、構成シートにダメージを与えることなく異物を確実に除去することが可能で、異物が非水系二次電池内で化学的に溶出しデントライト形成により、正極板および負極板が非水系二次電池の内部で微小でありながらも内部短絡を起こし、電圧低下が発生するという課題を解決する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の第1の発明においては、正極集電体に正極活物質を塗布した帯状の正極板と負極集電体に負極活物質を塗布した帯状の負極板とそれらの間に帯状のセパレータを介在させた状態で複数個のガイドロールを経由して渦巻状に巻回してなる非水系二次電池用電極群の製造方法であって、電極群を構成する正極板、負極板あるいはセパレータからなる構成シートの少なくとも一つが非接触状態で構成シートに付着した異物を連続的に除去しながら巻回することにより、異物の除去が容易となり非水系二次電池の内部短絡による電圧低下が発生するという課題を解決できる。
【0013】
本発明の第2の発明においては、電極群を構成する正極板、負極板あるいはセパレータからなる構成シートの少なくとも一つがガイドローラを通過する前に非接触状態で構成シートに付着した異物を連続的に除去することにより、電極群の構成シートに付着したが異物がガイドローラと構成シートの間に挟まれ、めり込む前に容易に除去が可能となる。
【0014】
本発明の第3の発明においては、異物除去として磁気手段と集塵手段により正極板または負極板に付着した異物を連続的に除去することにより、Fe,SUS等の磁性金属異物は磁気手段で除去し、Cu,Zn,Sn等の非磁性金属異物は集塵手段により除去が可能となる。
【0015】
本発明の第4の発明においては、異物除去として磁気手段、集塵手段および静電気除去手段によりセパレータに付着した異物を連続的に除去することにより、異物を容易に除去することが可能となる。すなわち、セパレータの巻き出し時にセパレータの剥がれ作用で発生した静電気により異物がセパレータに付着し易くなる一方で、異物を除去し難くなる。これらを解消するために静電気除去手段によりセパレータの静電気を除去し、集塵手段で異物を容易に除去することが可能となる。
【0016】
本発明の第5の発明においては、電極群の構成シートの近傍で磁束密度が2.0テスラ以上の磁気を帯びた磁気手段により電極群の構成シートに付着した異物を連続搬送しながら吸着して除去することにより、Fe,SUS等の磁性金属異物を確実に除去することが可能である。
【0017】
本発明の第6の発明においては、電極群の構成シートの近傍で風速が10m/秒以上の集塵手段により電極群の構成シートに付着した異物を集塵して除去することにより、異物を確実に除去することが可能である。
【0018】
本発明の第7の発明においては、帯状の正極板と帯状の負極板とそれらの間に帯状のセパレータを介在させて渦巻状に巻回する非水系二次電池用電極群の製造装置であって、電極群を構成している正極板と負極板およびセパレータからなる構成シートをそれぞれ連続して巻き出す巻出し部と、電極群の構成シートの搬送経路にあるガイドローラと、電極群の構成シートを連続して渦巻状に巻回する巻取部からなり、構成シートと非接触状態で異物を除去する除去部を設置したことにより、異物の除去が容易となり、非水系二次電池の内部短絡による電圧低下が発生するという課題を解決できる。
【0019】
本発明の第8の発明においては、除去部として、磁気手段と集塵手段および静電気除去手段を設置して構成したことにより、磁気手段ではFe,SUS等の磁性金属異物を除去し、静電気を帯びて異物が付着し易くなったセパレータを静電気除去することで集塵手段での磁性金属異物以外の異物を容易に除去することが可能である。
【0020】
本発明の第9の発明においては、電極群の構成シートの近傍に配置する磁束密度が2.0テスラ以上の磁気を帯びた磁気手段として永久磁石または電磁石で構成したことにより、Fe、SUSの微小磁性金属異物を確実に除去することが可能である。永久磁石の材質としては、高磁束密度を発生することが可能な希土類磁石を用いることが好ましく、その中でも特に80℃以下での使用条件であれば、ネオジウム鉄ボロンが好ましい。
【0021】
本発明の第10の発明においては、集塵手段を、集塵ノズル、真空源、フィルター、真空系、バルブおよび配管で構成したことにより、異物の除去が可能となる。集塵ノズルは少なくとも群構成シート幅よりも大きく、幅方向に集塵能力が均等に保てる構造にする必要がある。また、集塵ノズルは電極群の構成シートに対して2mm以下の間隔に設置することが好ましい。
【0022】
本発明の第11の発明においては、静電気除去手段を、高圧電源、イオン発生部、イオン検出部、イオン制御部、圧縮エアーおよびバルブで構成したことにより、異物の除去が可能となる。静電気を除去するためのイオン発生部は、正の電荷に帯電したセパレータには負の電荷を与え、負の電荷にセパレータに帯電したセパレータには正の電荷を与えることで、セパレータの静電気を除去するものであることが好ましい。
【0023】
以下、本発明の一実施の形態について、図を参照しながら説明する。例えば、図1は本発明の一実施の形態を示す非水系二次電池用電極群の製造装置の模式図1である。正極板2と負極板3およびセパレータ4からなる電極群の構成シートを渦巻状に巻回して電極群1を形成する製造装置である。
【0024】
ロール状正極板24は正極板巻出し部20から自動的に捲き出され、正極板2の表裏に付着した異物を除去するために非接触状態で設置した集塵手段としての集塵ノズル14a,14bおよび非接触状態で設置した磁気手段としての磁石10a,10bを通過後にガイドローラ5a,5b,5cを経由してニップローラ9a,9bを経て負極板3、セパレータ4aおよびセパレータ4bと共に巻回される。
【0025】
ロール状負極板25は負極板巻出し部21から自動的に捲き出され、負極板3の表裏に付着した異物を除去するために非接触状態で設置した集塵手段としての集塵ノズル11a,11bおよび非接触状態で設置した磁石手段としての磁石15a,15bを通過後にガイドローラ6a,6bを経由してニップローラ9a,9bを経て正極板2、セパレータ4aおよびセパレータ4bと共に巻回される。
【0026】
また、ロール状セパレータ26aはセパレータ巻出し部22から自動的に捲き出され、セパレータ4aの表裏に付着した異物を除去するために非接触状態で設置した静電気除去手段18a,18bと非接触状態で設置した集塵ノズル16a,16bおよび非接触状態で設置した磁石12a,12bを通過後にガイドローラ7a,7bを経由してニップローラ9a,9bを経て正極板2および負極板3と共に巻回される。
【0027】
また、ロール状セパレータ26bはセパレータ巻出し部23から自動的に捲き出され、セパレータ4bの表裏に付着した異物を除去するために非接触状態で設置した静電気除去手段19a,19bと非接触状態で設置した集塵ノズル17a,17bおよび非接触状態で設置した磁石13a,13bを通過後にガイドローラ8を経由してニップローラ9a,9bを経て正極板2および負極板3と共に巻回される。正極板2、負極板3およびセパレータ4a,4bはニップローラ9a,9bを通過して、例えば速いものでは500mm/秒の走行スピードで搬送され、電極群1を形成する。
【0028】
セパレータ4a,4bはポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)を素材とした絶縁シートであるため、静電気を帯びて異物が付着しやすいために静電気除去としての静電気除去手段18a,18b,19a,19bを設置する。
【0029】
図2は本発明の別の実施の形態を示す非水系二次電池用電極群の製造装置の模式図である。正極板2と負極板3およびセパレータ4a,4bからなる電極群の構成シートを渦巻状に巻回して電極群1を形成する製造装置である。電極群の製造方法は図1と同様であるが、図1で示す製造装置よりも異物除去をより良くするためにガイドローラを通過後に磁石を付けた例を示しており、例えばガイドローラ通過後に、製造装置の部品の磨耗や他から進入して正極板2に新たに付着した磁性金属異物は磁石36で除去し、負極板3に付着した磁性金属異物は磁石37で除去し、セパレータ4a,4bに付着した磁性金属異物は磁石38a,38bで除去し、また、渦巻状に巻回して電極群1を形成する直前に、磁石39,40で除去することが可能となる。
【0030】
図3(a)は本発明の一実施の形態を示す正極板の模式図である。図3(a)に示すように正極板は、アルミニウム箔材49に正極活物質50を塗布した塗工部51と塗布しない未塗工部52,53をもち、未塗工部52,53にアルミニウム素材の正極集電端子54を貼り付け、正極集電端子54に対して正極絶縁テープ55を上下から挟み込むように貼り付けたものである。正極活物質50は、例えばコバルト酸リチウム、結着剤、導電剤、界面活性剤、純水をペースト状にした非水系二次電池の材料である。
【0031】
図3(b)は本発明の一実施の形態を示す負極板の模式図である。図3(b)に示すように負極板は、銅箔材56に負極活物質57を塗布した塗工部58と塗布しない未塗工部59をもち、未塗工部59にニッケル素材の負極集電端子60を貼り付け、負極集電端子58に対して負極絶縁テープ61を上下から挟み込むように貼り付けたものである。負極活物質57は、例えばカーボン、結着剤、増粘剤、純水をペースト状にした二次電池の材料である。
【0032】
図4は本発明の実施の形態を示す渦巻状の電極群の概略図である。図3(a)に示す正
極板と図3(b)負極板およびセパレータを図1の電極群の製造装置を使用して製作した渦巻状の電極群62である。
【0033】
図5は本発明の一実施の形態を示す磁石取付け状態の部分模式図である。例えば、ロール状正極板65から自動的に捲き出された正極板64に付着した異物を捕集する部分の模式図である。正極板64に付着している異物は、ガイドローラ70を通過する前に、正極板64の近傍に0.2テスラ以上の磁束密度をもつ正極板外周側磁石68と正極板内周側磁石69を設置することにより前記正極板64に付着した異物を捕集することが可能である。
【0034】
図6は本発明の実施の形態を示す集塵ノズル取付け状態の部分模式図である。例えば、ロール状正極板65から自動的に捲き出された正極板64に付着した異物を捕集する部分の模式図を示す。ガイドローラ70を通過する前に、正極板64の近傍に集塵ノズルの吸引口の集塵風速が10m/秒以上の集塵ノズル66および集塵ノズル67で異物を捕集する。
【0035】
図7は本発明の実施の形態を示す静電気除去手段、および集塵ノズル取付け状態の部分模式図である。例えば、セパレータ71に付着した異物を捕集する部分の模式図を示す。ガイドローラ70を通過する前に、ロール状セパレータ72の捲き出し時にセパレータ71の剥がれ作用で発生した静電気により異物がセパレータ71に付着し易くなる一方で、静電気で除去し難くなった異物を静電気除去手段73,74によりセパレータ71の静電気を除去し、その直後にセパレータ71の近傍に集塵ノズル66,67の吸引口の集塵風速が10m/秒以上の正極板外周側集塵ノズル66および正極板内周側集塵ノズル67を設置することによりセパレータ71に付着した異物を捕集することが可能である。
各の磁石および集塵ノズルで捕集した異物は定期的に清掃除去することにより異物除去能力を確保することが可能である。
【0036】
以下、具体的な実施の形態を用いて、さらに詳しく説明する。
【実施例1】
【0037】
本発明における実施例1として、正極板の走行ライン中に非接触式の磁石を設置し、この磁石の磁束密度による磁性異物の除去能力を検討した。図5に示すようにロール状正極65から巻出される正極板64の巻出し部とガイドローラ70および正極板内外周側磁石68,69を設置し、正極板64を500mm/秒の走行スピードで搬送した。ここで、磁束密度を2.0テスラに設定したものを実施例1とした。
【実施例2】
【0038】
実施例1と同様に搬送し、磁石の磁束密度を0.8テスラに設定したものを実施例2とした。
【0039】
(比較例1)
実施例との比較のために非接触式の磁石を用い、磁束密度を1.5テラスに設定したものを比較例1とした。
【0040】
(比較例2)
実施例1と同様に正極板を搬送し、接触式の磁石を用い、磁束密度を0.8テスラに設定したものを比較例2とした。
【0041】
さらに、正極板内外周側磁石68,69を通過する前の正極板64に44μm以上から106μm以下の磁性金属異物を一定個数ばら撒き、正極板内外周側磁石68,69を通
過する前と通過した後の磁性金属個数の差で除去能力を求めた。(表1)は磁石を使用したときの磁性金属異物の除去能力と活物質脱落の有無を表す。
【0042】
【表1】

【0043】
実施例1は磁石磁束密度2.0テスラで、磁石は正極板64に対して非接触状態である場合の結果を示す。磁性金属異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では100%、ガイドローラ70を通過した後では85%であり、正極板64の活物質脱落発生は無かった。実施例2は磁石磁束密度0.8テスラで、磁石は正極板64に対して非接触状態である場合の結果を示す。磁性金属異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では62%、ガイドローラ70を通過した後では33%であり、正極板64の活物質脱落発生は無かった。
【0044】
一方、比較例1は磁石磁束密度1.5テスラで、磁石は正極板64に対して非接触状態である場合の結果を示す。磁性金属異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では91%、ガイドローラ70を通過した後では77%であり、正極板64の活物質脱落発生は無かった。
【0045】
比較例2は磁石磁束密度0.8テスラで、磁石は正極板64に対して接触状態である場合の結果を示す。磁性金属異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では100%であったが、ガイドローラ70を通過した後では35%であり、前記正極板64の活物質脱落が発生した。
【0046】
(表1)より明らかなように、正極板64に付着している金属異物を完全に除去し、尚且つ正極板64の活物質脱落を防止するためには、磁束密度は2.0テスラ以上で、非接触状態に設置した磁石手段を使用し、前記磁石手段はガイドローラ70を通過する前に設置することが好ましい。
【実施例3】
【0047】
本発明における実施例3として、正極板の走行ライン中に集塵ノズルを設置し、この集塵のノズルの吸引速度による磁性異物の除去能力を検討した。図6に示すように正極板64の巻出し部とガイドローラ70および集塵ノズル66,67を設置し、正極板64を500mm/秒の走行スピードで搬送した。ここで、吸引速度を10m/秒に設定したものを実施例3とした。
【実施例4】
【0048】
実施例3と同様に正極板を搬送し、吸引速度を20m/秒に設定したものを実施例4とした。
【0049】
(比較例3)
実施例3および実施例4との比較のために非接触式の集塵ノズルを用い、吸引速度を5m/秒に設定したものを比較例3とした。
【0050】
(比較例4)
実施例3と同様に正極板を搬送し、接触式の集塵ノズルを用い、吸引速度を20m/秒に設定したものを比較例4とした。
【0051】
さらに、集塵ノズル66,67を通過する前の正極板64に44μm以上から106μm以下の金属異物を一定個数ばら撒き、集塵ノズル66,67を通過する前と通過した後の金属異物個数の差で除去能力を求めた。(表2)は集塵を使用したときの金属異物の除去能力と活物質脱落の有無を表す。
【0052】
【表2】

【0053】
実施例3は集塵風速10m/秒で、集塵は正極板64に対して非接触状態である場合の結果を示す。異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では100%、ガイドローラ70を通過した後では35%であり、正極板64の活物質脱落発生は無かった。
【0054】
実施例4は集塵風速20m/秒で、集塵は正極板64に対して非接触状態である場合の結果を示す。異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では100%、ガイドローラ70を通過した後では80%であり、正極板64の活物質脱落発生は無かった。
【0055】
一方、比較例3は集塵風速5m/秒で、集塵は正極板64に対して非接触状態である場合の結果を示す。異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では10%、ガイドローラ70を通過した後では0%であり、前期正極板64の活物質脱落発生は無かった。
【0056】
比較例3は集塵風速20m/秒で、集塵は正極板64に対して接触状態である場合の結果を示す。異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では100%であったが、ガイドローラ70を通過した後では80%であり、正極板64の活物質脱落が発生した。
【0057】
(表2)より明らかなように、正極板64に付着している金属異物を完全に除去し、尚且つ正極板64の活物質脱落を防止するためには、集塵風速は10m/秒以上で、非接触状態に設置した集塵手段を使用し、集塵手段はガイドローラ70を通過する前に設置することが好ましい。
【実施例5】
【0058】
本発明における実施例5として、セパレータの走行ライン中に静電気除去手段を設置し、この静電除去の有無による磁性異物の除去能力を検討した。図7に示すようにセパレータ71の巻出し部とガイドローラ70、静電気除去手段73,74および集塵ノズル66,67を具備しており、セパレータ71を500mm/秒の走行スピードで搬送した。ここで、静電気除去手段73、74が有の場合を実施例5とした。
【0059】
(比較例5)
実施例5との比較のために静電気除去手段73、74が無い場合を比較例5とした。
【0060】
さらに、静電気除去手段73、74を通過する前のセパレータ71に44μm以上から106μm以下の磁性金属異物を一定個数ばら撒き、静電気除去手段73、74を使用した場合と使用しないときの、集塵ノズル66,67を通過する前と通過した後の金属個数の差で除去能力を求めた。(表3)はセパレータ4に静電気除去手段73,74を有したときの金属異物の除去能力を表す。
【0061】
【表3】

【0062】
実施例5は静電気除去手段73,74が有る場合の結果を示す。異物除去能力はガイドローラ70を通過する前では100%、ガイドローラ70を通過した後では30%であった。
【0063】
一方、比較例5は静電気除去手段73、74が有る場合の結果を示す。除去能力はガイドローラ70を通過する前では65%であり、ガイドローラ70を通過した後では25%であった。
【0064】
(表3)より明らかなように、セパレータ71に付着している金属異物を完全に除去するためには、絶縁体であるセパレータ71の静電気を除去した後に集塵手段を使用し、さらに前記集塵手段はガイドローラ70を通過する前に設置することが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、電極群の構成シートに付着した異物を非接触状態で保持された磁気手段を用いて吸着して除去することにより非水系二次電池の充電状態での発熱および非水系二次電池内部短絡の課題解決が可能であるので、製造工程中で構成シート状の部材として取り扱われる正極板や負極板、セパレータ、アルミニウム箔や銅箔に付着した磁性金属異物の吸着除去として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施例の形態を示す非水系二次電池用電極群の製造装置の模式図
【図2】本発明の別実施例の形態を示す非水系二次電池用電極群の製造装置の模式図
【図3】(a)本発明の一実施形態を示す正極板の模式図、(b)本発明の一実施形態を示す負極板の模式図
【図4】本発明の実施の形態を示す渦巻状の電極群の斜視図
【図5】本発明の実施例の形態を示す磁石取付け状態の部分模式図
【図6】本発明の実施例の形態を示す集塵ノズル取付け状態の模式図
【図7】本発明の実施例の形態を示す静電気除去部および集塵ノズル取付け状態の模式図
【図8】従来例における巻回装置の磁気ローラの模式図
【図9】従来例における電極板表面の異物除去装置の模式図
【符号の説明】
【0067】
1 電極群
2 正極板
3 負極板
4a セパレータ
4b セパレータ
5a ガイドローラ
5b ガイドローラ
5c ガイドローラ
6a ガイドローラ
6b ガイドローラ
7a ガイドローラ
7b ガイドローラ
8 ガイドローラ
9a ニップローラ
9b ニップローラ
10a 磁石
10b 磁石
11a 磁石
11b 磁石
12a 磁石
12b 磁石
13a 磁石
13b 磁石
14a 集塵ノズル
14b 集塵ノズル
15a 集塵ノズル
15b 集塵ノズル
16a 集塵ノズル
16b 集塵ノズル
17a 集塵ノズル
17b 集塵ノズル
18a 静電気除去手段
18b 静電気除去手段
19a 静電気除去手段
19b 静電気除去手段
20 正極板巻出し部
21 負極板巻出し部
22 セパレータ巻出し部
23 セパレータ巻出し部
24 ロール状正極板
25 ロール状負極板
26a ロール状セパレータ
26b ロール状セパレータ
36 磁石
37 磁石
38a 磁石
38b 磁石
39 磁石
40 磁石
49 アルミニウム箔材
50 正極活物質
51 塗工部
52 未塗工部
53 正極未塗工部
54 正極集電端子
55 正極絶縁テープ
56 銅箔材
57 負極活物質
58 塗工部
59 未塗工部
60 負極集電端子
61 負極絶縁テープ
62 渦巻状の電極群
64 正極板
65 ロール状正極板
66 集塵ノズル
67 集塵ノズル
68 正極板外周側磁石
69 正極板内周側磁石
70 ガイドローラ
71 セパレータ
72 ロール状セパレータ
73 静電気除去手段
74 静電気除去手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極集電体に正極活物質を塗布した帯状の正極板と負極集電体に負極活物質を塗布した帯状の負極板とそれらの間に帯状のセパレータを介在させた状態で複数個のガイドローラを経由して渦巻状に巻回してなる非水系二次電池用電極群の製造方法であって、前記電極群を構成する正極板、負極板あるいはセパレータからなる構成シートの少なくとも一つが非接触状態で構成シートに付着した異物を連続的に除去しながら巻回することを特徴とする非水系二次電池用電極群の製造方法。
【請求項2】
前記電極群を構成する正極板、負極板あるいはセパレータからなる構成シートの少なくとも一つがガイドローラを通過する前に非接触状態で構成シートに付着した異物を連続的に除去することを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群製造方法。
【請求項3】
前記異物除去として磁気手段と集塵手段により前記正極板または負極板に付着した異物を連続的に除去することを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群の製造方法。
【請求項4】
前記異物除去として磁気手段、集塵手段および静電気除去手段によりセパレータに付着した異物を連続的に除去することを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群の製造方法。
【請求項5】
前記電極群の構成シートの近傍で磁束密度が2.0テスラ以上の磁気を帯びた磁気手段により前記電極群の構成シートに付着した異物を連続搬送しながら吸着して除去することを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群の製造方法。
【請求項6】
前記電極群の構成シートの近傍で風速が10m/秒以上の集塵手段により前記電極群の構成シートに付着した異物を集塵して除去することを特徴とする請求項1に記載の非水系二次電池用電極群の製造方法。
【請求項7】
帯状の正極板と帯状の負極板とそれらの間に帯状のセパレータを介在させて渦巻状に巻回する非水系二次電池用電極群の製造装置であって、電極群を構成している正極板と負極板およびセパレータからなる構成シートをそれぞれ連続して巻き出す巻出し部と、前記電極群の構成シートの搬送経路にあるガイドローラと、前記電極群の構成シートを連続して渦巻状に巻回する巻取部からなり、前記少なくとも1つの構成シートと非接触状態で異物を除去する除去部を設置したことを特徴とする非水系二次電池用電極群の製造装置。
【請求項8】
前記除去部を、磁気手段と集塵手段および静電気除去手段で構成したことを特徴とする請求項7に記載の非水系二次電池用電極群の製造装置。
【請求項9】
前記電極群の構成シートの近傍に配置する磁気手段を磁束密度が2.0テスラ以上の磁気を帯びた磁気手段として永久磁石または電磁石で構成したことを特徴とする請求項7に記載の非水系二次電池用電極群の製造装置。
【請求項10】
前記集塵手段を、集塵ノズル、真空源、フィルター、真空系、バルブおよび配管で構成したことを特徴とする請求項6に記載の非水系二次電池用電極群の製造装置。
【請求項11】
前記静電気除去手段を、高圧電源、イオン発生部、イオン検出部、イオン制御部、圧縮エアーおよびバルブで構成したことを特徴とする請求項6に記載の非水系二次電池用電極群の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−152946(P2008−152946A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−336835(P2006−336835)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】