説明

面実装インダクタおよびその製造方法

【課題】
熱圧着方式は、ヒーターチップを1000℃程度に加熱して、接合する端末を電極に押し付けて圧着する。溶接強度はヒーターチップの先端の状態により変動するため、常にヒーターチップの先端を研磨等により清掃して状態を一定にする必要がある。また、コイルの線が太くなるほど、ヒータチップを高温にして加える圧力を高めなければならず、コアの破損やクラックの原因や、端末の劣化の原因となっていた。
【解決手段】
空芯コイルと、上面に開口端を有し前記空芯コイルを収納する底面が四角形状のポット状コアと、前記ポット状コアの開口部に蓋をする板状コアからなる面実装コイル部品において、
前記ポット状コアの角部に、前記コイルの端末を引き出すための引出溝を設けた複数の面取り部を備えた面実装インダクタとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話等の電子機器に用いられる面実装インダクタとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、断面がE字状のEコア(ポットコア)の中足に空芯コイルに配置し、該空芯コイルの端末をEのコアの外側に引出し、そして引き出された空芯コイルの端末をEコアの側面に設けられた電極に接続するタイプの面実装インダクタが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
従来の面実装インダクタの構成を示す斜視図を図3に示す。従来の面実装インダクタは、平角線の端末61が最外周から取り出されるように巻回(外外巻き)された空芯コイル60と、断面がE字状のEコア70と、Eコア70の開放端を閉塞するIコア(板コア)80からなる。
Eコア70は、有底略四角形状で、対向する角部が面取りされた平面72と、側面にEコア70の外足に引出溝73が設けられ、さらに前記平面72に、電極90が形成されている。
空芯コイル60は、Eコア70の中足に配置され、空芯コイルの端末61は、引出溝73から外側に引き出される。そして、空芯コイルの端末61は熱圧着方式で電極90に接続され、最後に、Iコア80がEコア70の中足71に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−96181
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、熱圧着方式ではヒーターチップを1000℃程度に加熱して空芯コイルの端末をコアの電極部に押し付けて圧着する。そのため、溶接強度はヒーターチップの先端の状態により変動する。また、ヒーターチップの先端を研磨等により清掃して常に圧着の条件を一定にする必要がある。
さらにまた、コイルの線が太くなるほど、ヒータチップを高温にして、加える圧力を高くしなければならないので、コアの破損やクラック、空芯コイルの端末の劣化の原因となっていた。
最近では、部品の小型化により、接合部と空芯コイルの距離が接近しているので、熱による空芯コイルへのダメージが大きく、また、コアの肉厚が薄くなっているので圧力に対して脆弱になっている。
【0006】
本発明の面実装インダクタは、空芯コイルの端末と電極の接続にディップ方式を用いることにより、安価で信頼性の高いインダクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の面実装インダクタは、EコアとIコアを組み合わせ、前期Eコアの中足に空芯コイルを配置する面実装コイル部品において、
前記Eコアは、有底略四角形状で、対向する角部が面取りされた平面を有し、前記平面に転写方式で形成された電極と、前記電極の略中央に前記空芯コイルの端末を引き出すための引出溝を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の面実装インダクタとその製造方法によれば、空芯コイルの端末と電極の接続にディップ法を用いたので、熱圧着のようにヒーターチップの状態による溶接強度のばらつきや、温度による巻線とコアへのダメージや、コアのクラックの虞がない。したがって、信頼性の高い面実装インダクタとすることができる。
また、ポットコアの角部を面取りした平面に、空芯コイルの端末の引出溝を設けたので、空芯コイルの端末を電極に接続する際のディップ付けが容易である。さらに、前記面取り部にのみ電極を作製したので、ディップのハンダ付けにより面実装インダクタの外形が大きくなることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の面実装インダクタの構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の面実装インダクタの電極の製造方法を説明する図である。
【図3】従来の面実装インダクタの構成を示す図である。
【実施例】
【0010】
図1は、本発明の面実装インダクタの構成を示す斜視図である。面実装インダクタは、空芯コイル10とEコア20とIコア30で構成される。
空芯コイル10は、自己溶着線からなる導線を、空芯コイルの両端末11が最外周から取り出されるように巻固められ、空芯コイルの端末11は巻回部から反対方向に突出している。
Eコア20はフェライトからなり、有底略四角状で、断面は、中足21が外足より長いE字状である。そして、側面の角部は面取りされていて、平面22が形成されている。さらに、対向する平面22の略中央に、引出溝23が形成され、平面22に電極25が形成されている。
Eコア20の中足21に、前記空芯コイル10が配置され、空芯コイルの端末11は引出溝23からEコア20の外側に引き出される。
そして、空芯コイルの端末11と電極40がディップ法により接続された後に、Iコア30が中足21に接着される。
【0011】
次に、ディップ法により空芯コイルの端末と電極の接続方法を図2を用いて説明する。図2(a)に示すように、Eコア20の中足に空芯コイル10を配置し、引出溝23から、空芯コイルの端末11が引き出されている。
次に、図2(b)の示すように、ディップする空芯コイルの端末11を下にして、半田槽60に浸漬すると、空芯コイルの端末11の先端部の絶縁被覆がハンダ熱で除去され、図2(c)に示すように、電極40から空芯コイルの端末11にフィレット42が形成されて、空芯コイルの端末11と電極40が強固に接続される。
図2(c)において、点線29は、インダクタの外形を示す。フィレット42は、空芯コイルの端末11の両側の、外形線29で示した内側に形成されるので、外形が大きくなることがなく、空芯コイルの端末11は電極40に強固に固定され、電極と空芯コイルの端末間の抵抗値も低く抑えることができる。
【0012】
ディップ法は、半田槽の温度が400〜450℃程度と、熱圧着法に比べて低温であり、空芯コイルの端末を加圧する必要がない。また、空芯コイルの端末の絶縁被覆を刃物等で削ぎ落さずに接続することができる。したがって、ディップ法は、熱圧着法よりもインダクタへのダメージが少ない。また、製造装置も安価で、複数のインダクタを一列に並べてディップすることができるので、製造コストを低く抑えることができる。
【0013】
上記実施例では、空芯コイルに断面が円形の導線を用いたが、従来例で説明したように、断面が矩形状の平角線を用いてもよい。なお、Eコアの下面にも電極が必要な場合は、別の転写工程で、電極を作製すればよい。
【符号の説明】
【0014】
10、60 コイル
11、61 空芯コイルの端末
20、70 Eコア
21、71 中足
22、72 平面
23、73 引出溝
29 インダクタの外形線
30、80 Iコア
40 電極
42 フィレット
50 半田槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EコアとIコアを組み合わせ、前期Eコアの中足に空芯コイルを配置する面実装コイル部品において、
前記Eコアは、有底略四角形状で、対向する角部が面取りされた平面を有し、前記平面に転写方式で形成された電極と、前記電極の略中央に前記空芯コイルの端末を引き出すための引出溝を設けたことを特徴とする、
面実装インダクタ。
【請求項2】
前記空芯コイルの端末は、ディップ方式で前記電極に接続することを特徴とする請求項1に記載の面実装インダクタの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−245472(P2010−245472A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95581(P2009−95581)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】