説明

靴中敷

【課題】 防臭または消臭効果を効果的に発揮できるとともに、履き心地を向上でき、しかも安価に製造できる靴中敷を提供する。
【解決手段】 平板状に形成された薄厚の本体部分10と、本体部分10の底面11から下方へ膨出した膨出部分20とから構成される。本体部分10と膨出部分20とは、セラミック粉体を混入されたシリコン樹脂により一体成形され、膨出部分20の頂部21は各足指の第1関節J1と第2関節J2の間近傍に位置するように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は靴中敷、特に防臭効果を備えるとともに履き心地のよい靴中敷に関する。
【0002】
本発明の説明において、「セラミック粉体」の用語は、トルマリン、シリカ、蛇紋岩などのセラミックの粉体を意味し、「シリコン樹脂」の用語は、シリコンゴムまたはシリコンゴムのような弾性を有するシリコン樹脂を意味する。
【背景技術】
【0003】
周知の如く、セラミック粉体を靴中敷に適用して防臭または消臭効果を企図するものは数多く提案されている。例えば、特開2002−51805号「トルマリン含有中敷き」公報では、トルマリンを混入したポリプロピレン樹脂発泡体を中底インソールと表層の間に積層した靴中敷が提案されている。また、特開2001−70008号「靴底の中敷」公報では、トルマリンの回りに空気の層を作るために綿状層にトルマリンの粒子や粉末を含有させた靴中敷が提案されている。
【0004】
前者の積層タイプの靴中敷は、素材の製造コストが高くなるため、結果的に高価な靴中敷となってしまい、消費者に受け入れられ難いものであった。また、後者のトルマリンの粒子や粉末を含有した綿状層を使用する靴中敷は、使用時の足の動きによって綿状層が変形してしまうのを回避するために、靴のつま先部分にのみ使用され、そのため、トルマリンによる防臭または消臭効果を必ずしも効果的に発揮できないものであった。
【0005】
一方、履き心地の観点から見ると、例えば、特開2001−206号「靴等履物の指圧用中敷」公報に見られるような、指圧のツボ位置に突起物を設けたものが提案されている。しかしながら、これは必ずしも履き心地を向上するものではなく、場合によっては使用者に苦痛さえ感じさせてしまうものであった。
【特許文献1】特開2002−51805号公開公報
【特許文献2】特開2001−70008号公開公報
【特許文献2】特開2001−206号公開公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、防臭または消臭効果を効果的に発揮できるとともに、履き心地を向上でき、しかも安価に製造できる靴中敷を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による靴中敷は、平板状に形成された薄厚の本体部分と、この本体部分の底面から下方へ膨出した膨出部分とから構成される。本体部分と膨出部分は、前述のセラミック粉体を混入されたシリコン樹脂により一体成形され、膨出部分の頂部は各足指の第1関節と第2関節の間近傍に位置するように形成される。
【0008】
セラミック粉体の粒子径は1000メッシュ以下、好ましくは、1000〜2000メッシュであり、そして、シリコン樹脂へのセラミック粉体の混合率は5〜30%であるのが望ましく、また、膨出部分は足の親指が位置する部分に比較して小指が位置する部分が大きく形成されるのが望ましい。さらに、靴中敷の膨出部分の頂部よりも前方の部分に通気用開口を設けるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
悪臭の原因となるムレは、主として各足指の第1関節と第2関節の間で発生する。このため、膨出部分の頂部を各足指の第1関節と第2関節の間近傍に位置することにより、防臭または消臭効果をより効率的に発揮することができる。また、膨出部分を本体部分の底面から下方へ膨出させていることは、靴を履いたとき、膨出部分に隣接する本体部分を各指先と横足弓とにより靴の中底へと押し下げることになる。このため、シリコン樹脂の弾性反発が生じ、歩く際に脚に対してクッション効果を発揮することができ、それにより、履き心地をよくすることができ、疲れを感じることなく使用できる。また、圧縮成形、射出成形等の成形技術を用いて形成できるため、安価に製造することができる。
【0010】
セラミック粉体の粒子径については、1000メッシュよりも大きい粒子径であると、シリコン樹脂の表面のセラミック粉体が使用者の足裏に当接してザラツキ感を与えてしまうだけでなく、成形時に成形用鋳型表面に傷をつけて使用できなくなってしまう虞が大きい。このため、セラミック粉体の粒子径は細かければ細かいほどよいのであるが、2000メッシュよりも細かいセラミック粉体は高価であり、商業的観点から2000メッシュまでのものを使用するのが好ましい。一方、セラミック粉体の混合率は、5%よりも少ないと所期の防臭または消臭効果を得ることが難しく、30%よりも多いと、シリコン樹脂の弾性を損なうことになる。
【0011】
悪臭の原因となるムレの発生が親指側よりも小指側の方が生じ易い。このため、足の親指が位置する部分に比較して小指が位置する部分が大きくなるように膨出部分を形成することは、より大量のセラミック粉体を小指側に配置することができ、それにより、防臭または消臭効果をより効率的に発揮することができる。
【0012】
靴の内部は横足弓の位置よりもつま先側の部分が密閉された状態となる。このため、ムレの主要な発生場所となる横足弓の位置よりもつま先側の部分に通気用開口を設けることで、セラミック粉体による防臭または消臭効果をより効率的に発揮させることができる。
【0013】
本体部分の厚さおよび膨出部分の厚さは使用時に適度なクッション効果を発揮できるとともに、違和感や段差を感じることのない厚さに選定されるべきである。この本体部分と膨出部分の厚さについては、膨出部分の断面方向における張出形状をどのように形成するかによっても左右される。一例として、本体部分からなだらかに張り出している場合、本体部分の厚さを1mm、膨出部分における最大の厚さを2.5mm程度に選定することにより、如上の作用効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例による靴中敷を底面側から見た図で、左足用の靴中敷を示しており、図2は、図1に示す靴中敷の縦断面を示している。なお、図示の靴中敷は、総体的に横足弓Aの位置よりもつま先側の部分のみの形態となっているが、これは、前述したように、ムレの主要な発生場所となる横足弓Aの位置よりもつま先側の部分において防臭または消臭効果を発揮させることができれば、ほぼ完全に防臭または消臭作用を行わせることができ、また、歩行時のみならず静止時においても、体重はほとんどつま先側にかかるため、クッション効果をつま先側で現出できればよい等の観点から形成されている。しかしながら、必要ならば、周知慣用の靴中敷のように靴の中底B全体を覆うような形態にも形成できることに留意されたい。
【0015】
本発明の実施例による靴中敷は、平板状に形成された薄厚の本体部分10と、本体部分10の底面11から下方へ膨出した膨出部分20とから構成される。本体部分10と膨出部分20は、セラミック粉体を混入されたシリコン樹脂により一体に成形される。膨出部分20の頂部21は各足指の第1関節J1と第2関節J2の間近傍に位置するようにアーチ状に形成される。
【0016】
シリコン樹脂に混入されるセラミック粉体の粒子径は1000メッシュ以下、好ましくは、1000〜2000メッシュであり、そして、シリコン樹脂へのセラミック粉体の混合率は5〜30%である。膨出部分20は足の親指T1が位置する側の部分に比較して小指T2が位置する側の部分が大きくなるように形成される。膨出部分20の頂部21よりも前方の部分には複数の通気用開口30が適当に分散して設けられる。
【0017】
横足弓Aの位置よりもつま先側の靴の内部空間Sは実質的に閉鎖された状態になる。一方、発汗等により生じるムレは、主として、各足指の第1関節J1と第2関節J2の間で発生する。このため、靴のつま先側の内部空間Sは悪臭が充満することになる。各足指の第1関節と第2関節の間近傍に位置する膨出部分の頂部は第1関節J1と第2関節J2の間の足指の凹みR内に入り込むような状態になるため、足指の凹みRにより大量のセラミック粉体を配置できることになり、悪臭を積極的かつ効率的に取り除くことができる。
【0018】
本体部分10の底面11から下方へ膨出した膨出部分20は、靴を履いたとき、図2に破線で示すように、膨出部分20に隣接する本体部分10を各指先と横足弓A部分とにより靴の中底Bへと押し下げることになる。このため、シリコン樹脂の弾性反発が生じ、歩く際に脚に対してクッション効果を発揮することができ、それにより、履き心地をよくすることができる。
【0019】
セラミック粉体の粒子径については、1000メッシュよりも大きいと、セラミック粉体がシリコン樹脂の表面に塊状となって現れ、使用者の足裏に当接してザラツキ感を与えてしまうだけでなく、成形時に成形用鋳型の内表面に傷をつけてしまい、高価な成形用鋳型が使用できなくなる。一方、セラミック粉体の粒子径はできるだけ細かい方がよいと言えるが、2000メッシュよりも細かいセラミック粉体は相対的に高価なものとなってしまうため、商業的観点から2000メッシュまでのものを使用するのが好ましい。セラミック粉体の混合率は、極論すれば、混入されていさえすれば防臭または消臭効果を期待できるが、各種の実験から所期の防臭または消臭効果を得るためには、5%よりも多く混入する必要がある。一方、セラミック粉体はより多く混入されていれば、より大きな防臭または消臭効果を得ることができるが、30%を超えると、シリコン樹脂の弾性を損なって前述のクッション効果を発揮することができなくなる。
【0020】
膨出部分20は、足の親指T1が位置する部分に比較して小指T2が位置する部分が大きくなるように形成される。これは、悪臭の原因となるムレの発生が親指側よりも小指側の方が生じ易いため、より大量のセラミック粉体を小指側に配置することができ、それにより、防臭または消臭効果をより効率的に発揮することを意味する。
【0021】
本体部分10の厚さおよび膨出部分20の厚さについては、使用時に適度なクッション効果を発揮できるとともに、違和感や段差を感じることのない厚さに選定される必要がある。膨出部分20の断面方向における張出形状が本体部分10からなだらかに張り出している場合、本体部分10の厚さを1mm、膨出部分20における最大の厚さを2.5mm程度に選定することにより、所期の作用効果を得ることができる。
【0022】
本発明の靴中敷には、横足弓Aの位置よりもつま先側の部分に通気用開口30が設けられる。靴の内部は横足弓Aの位置で実質的に閉鎖されるため、横足弓Aの位置よりもつま先側の空間Sが実質的に密閉された空間となる。セラミック粉体による防臭または消臭効果はこのムレの主要な発生場所となる空間Sにおいて発揮されるとともに、通気用開口30を介して靴自体に付着した悪臭をもより効率的に発揮させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の靴中敷は、周知慣用の靴中敷と同様な靴中底全体に敷けるように形成することもできる。また、靴の大きさや種類に応じて靴中敷を切断するための案内線を設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施例による靴中敷を示す図で、左足用のものを底面側から見た図である。
【図2】図1に示す靴中敷の縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 本体部分
11 底面
20 膨出部分
21 膨出部分の頂部
30 通気用開口
A 横足弓
B 靴中底
J1 足指の第1関節
J2 足指の第2関節
R 足指の凹み
S 靴の内部空間
T1 足の親指
T2 足の小指

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状に形成された薄厚の本体部分と、該本体部分の底面から下方へ膨出した膨出部分とから構成され、前記本体部分と膨出部分とはセラミック粉体を混入されたシリコン樹脂により一体成形され、前記膨出部分の頂部は各足指の第1関節と第2関節の間近傍に位置するように形成される、靴中敷。
【請求項2】
前記セラミック粉体の粒子径は1000メッシュ以下であり、シリコン樹脂へのセラミック粉体の混合率は5〜30%である、請求項1に記載の靴中敷。
【請求項3】
前記膨出部分は足の親指が位置する部分に比較して小指が位置する部分が大きく形成される、請求項1または2に記載の靴中敷。
【請求項4】
前記膨出部分の頂部よりも前方の本体部分には通気用開口が設けられる、請求項1、2または3に記載の靴中敷。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−254(P2006−254A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−177816(P2004−177816)
【出願日】平成16年6月16日(2004.6.16)
【出願人】(502112751)
【出願人】(504232099)
【Fターム(参考)】