説明

【課題】 踵の装飾性に優れる靴であって、歩くたびに装飾の立体模様が変化し、それによって外観が変化する靴を提供する。
【解決手段】 つま先側は相対的に低く、踵側は相対的に高くなるように傾斜した靴底11を備えた靴1であって、靴底11の下面には、踵側を相対的に高く支持する踵部材21が固定されており、踵部材21は、中空部23を有する少なくとも一部が透明な部材であり、中空部23には、複数の装飾部材31が可動自在に封入されており、装飾部材31が動き、その配置が変化することによって、装飾部材31によって構成される立体模様が変化し得ることを特徴とする靴1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踵部の装飾性に優れる靴に係り、特に、歩くたびに踵部の装飾の立体模様が変化する靴に係る。
【背景技術】
【0002】
従前、靴の装飾は甲部に施されることが多かった。その一方で、他のものとは外観の異なる独自性に優れたものを所望する消費者のニーズに鑑みて、踵部に装飾を有する靴類も提案されている。踵部に装飾を有する靴としては、例えば、特許文献1には、透明な踵部内に装飾品を封入した靴が開示されている。このような装飾は、踵部分に装飾品を作りつけたことにとどまっており、装飾自体の外観が変化するものではなかった。
【0003】
【特許文献1】実開平2−19302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明においては、踵の装飾性に優れる靴であって、靴を履いた人が歩くたびに装飾の立体模様が変化し、それによって外観が変化する靴を提供することを課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、つま先側は相対的に低く、踵側は相対的に高くなるように傾斜した靴底を備えた靴であって、前記靴底の下面には、踵側を相対的に高く支持する踵部材が固定されており、前記踵部材は、中空部を有する少なくとも一部が透明な部材であり、前記中空部には、複数の装飾部材が可動自在に封入されており、前記装飾部材が動き、その配置が変化することによって、前記装飾部材によって構成される立体模様が変化し得ることを特徴とする靴である。
ここで、靴とは、足を覆い包む形式のいわゆる靴だけでなく、足を覆い包まず甲の部分をバンドや紐で留める、サンダルやミュール等の履物も含む。靴底とは、足を直接支持する中底、及び、地面に接する本底を含み、さらに中底と本底との間に設けられる中間底材を含む。踵部材とは、靴底の踵側を相対的に高く支持するために靴底の下面に固定された部材を指す。
第1の発明によれば、踵部材の中空部に封入された複数の装飾部材によって立体模様が構成されており、靴が揺れると装飾部材が動き、その配置が変化することによって立体模様が変化する。踵部材は、少なくとも一部が透明であるから、装飾部材により構成される立体模様の変化を、踵部材の外部から透かして見ることができる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明に記載の靴であって、前記踵部材は、前記靴の前後方向に沿うように形成されており、前記踵部材のつま先側は相対的に薄く、踵側になるにしたがって相対的に厚くなっていることを特徴とする靴である。
第2の発明によれば、踵部材を靴の前後方向に沿うように形成することにより、より大きな踵部材を形成することができ、より大きな中空部を設けることが可能となる。その結果、装飾部材の可動範囲をより広く確保することができ、装飾部材によって構成される立体模様がより大きく変化し得る。あるいは、装飾部材をより多く封入することができ、装飾部材の配置パターンが豊富になることによって、立体模様がさまざまに変化し得る。
【0007】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明に記載の靴であって、前記踵部材の上部には、前記中空部に連続する開口部が設けられており、前記開口部の縁は、前記靴底の下面に接着されており、前記靴底により前記開口部が塞がれていることを特徴とする靴である。
第3の発明によれば、開口部から中空部に装飾部材を入れておき、開口部の縁を靴底の下面に接着して開口部を塞ぐことによって、容易に中空部に装飾部材を封じ込めることができる。
【0008】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明までのいずれか1項に記載の靴であって、前記装飾部材は、有色な芯部と、前記芯部を覆う透明な表皮部とからなる粒状体であることを特徴とする靴である。
第4の発明によれば、表皮部が透明であるから、有色な芯部が浮かび上がっているような装飾効果を奏する。
【0009】
第5の発明は、第4の発明に記載の靴であって、前記複数の装飾部材は、異なる色の芯部の装飾部材をも含むことを特徴とする靴である。
第5の発明によれば、芯部の色が異なる複数の装飾部材によって立体模様が構成されるため、その変化がはっきりと分かる。
【0010】
第6の発明は、第4の発明または第5の発明に記載の靴であって、前記表皮部の外形が多面体であることを特徴とする靴である。
第6の発明によれば、表皮部における光の反射や屈折により、見る角度によって装飾部材の見え方が変化し得る。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明の靴によれば、靴を履いた人が歩くたびに踵部材の中空部に封入された装飾部材が動き、その立体模様が変化する。それによって、靴の外観が変化する。
第2の発明の靴によれば、第1の発明の効果とともに、より大きな中空部を設けることができる。その結果、装飾部材の可動範囲をより広く確保することが可能となり、装飾部材によって構成される立体模様がより大きく変化し得る。あるいは、装飾部材をより多く封入することができ、装飾部材の配置パターンが豊富になることによって、立体模様がさまざまに変化し得る。
第3の発明の靴によれば、第1の発明または第2の発明の効果とともに、中空部に装飾部材を封じ込めるのが容易である。
第4の発明の靴によれば、第1の発明から第3の発明までのいずれか1項の効果とともに、芯部が浮かび上がっているような装飾効果を奏する。
第5の発明の靴によれば、第4の発明の効果とともに、装飾部材が構成する立体模様の変化がはっきりと分かる。
第6の発明の靴によれば、第4の発明または第5の発明の効果とともに、見る角度によって装飾部材の見え方が変化し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る靴の正面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係る靴の右側面図である。図3は、図1に示す靴のA−A断面図であり、図4は、図2に示す靴のB−B断面図である。図5(A)は、本発明の実施の形態に係る装飾部材の正面図であり、図5(B)は、図5(A)に示す装飾部材のC−C断面図である。ただし、図1から図4においては、装飾部材の外形は省略して球状で示している。
【0013】
靴1は、つま先側は相対的に低く、踵側は相対的に高くなるように傾斜した靴底11を備えており、靴底11の下面には、踵側を相対的に高く支持する踵部材21が固定されている。
【0014】
具体的には、本実施の形態において、「靴底」は中底11に対応しており、図4に示すように、中底11は、つま先側は相対的に低く、踵側は相対的に高くなるように傾斜が設けられている。中底11の踵側の下面には、踵部材21が固定されており、それによって、中底11は、踵側が相対的に高く支持されている。図1に示すように、靴1は、中底11の上方において、足の甲を引っ掛けるためのバンド3と、足首を固定するためのストラップ5とを備えた、いわゆるサンダルである。
【0015】
踵部材21は、中空部23を有する少なくとも一部が透明な部材であり、中空部23には、複数の装飾部材31が可動自在に封入されており、装飾部材31が動き、その配置が変化することによって、装飾部材31によって構成される立体模様が変化し得る。
【0016】
具体的には、踵部材21は、無色透明なプラスチックからなり、図3及び図4に示すように、踵部材21には中空部23が設けられている。中空部23には複数の装飾部材31が封入されており、装飾部材31は、その相互の位置関係により立体模様を構成している。踵部材21が透明であるから、中空部23に封入されている装飾部材31により構成される立体模様を、踵部材11の外部から透かして見ることができる(図1及び図2参照)。靴1が揺れると、装飾部材31が動き、その配置が変化することによって、立体模様が変化する。したがって、靴1を履いて歩くと、一歩毎に靴1が揺れて装飾部材31の構成する立体模様が変化する。また、装飾部材31が動くと、装飾部材31同士、あるいは、装飾部材31と踵部材11の内壁24とが接触することにより音が生じ、歩行に楽しみを添える。
尚、踵部材21は、少なくとも一部が透明であればよく、中空部23内を透かしてみることができれば、無色透明に限らず、有色透明あるいは半透明等でもよい。
【0017】
踵部材21は、靴1の前後方向に沿うように形成されており、踵部材21のつま先側は相対的に薄く、踵側になるにしたがって相対的に厚くなっている。
【0018】
具体的には、図1に示すように、踵部材21は、その底部22がほぼ平らであって、つま先側が相対的に薄く、踵側になるにしたがって相対的に厚く、上部は中底11の下面において前後方向に沿うように形成されている。踵部材21は、中底11の下面の踵側において、前後方向に渡って備え付けられている。踵部材21の底部22のつま先側には凹段部27が設けられており、中底11のつま先側の下面に滑らかに続いている。中底11のつま先側の下面と凹段部27を覆うように、ゴム製の薄板状の本底7が固定されている。踵部材21の底部22の踵側には、化粧革9を固定するための柱状の孔部28a,28b(図3参照),28cが設けられている。化粧革9は、突起10a,10b,10cを有する合成樹脂製の板片状の部材である。突起10a,10b,10cがそれぞれ孔部28a,28b,28cに嵌め込まれ、化粧革9が踵部材21の下面に固定されている。ここで、突起10a,10b,10cと孔部28a,28b,28cの数は限定されず、4組以上あってもよい。歩行時に地面に接するのは、本底7と化粧革9である。
尚、バンド3及びストラップ5は、中底11の上方において左右方向に渡って設けられており、末端が中底11の下面に固定されている。
【0019】
踵部材21に内設された中空部23は、踵部材21のほぼ外形に沿った形状である。踵部材21を靴1の前後方向に沿うように形成することにより、より大きな中空部を設けることが可能であり、装飾部材31の可動範囲がより広く確保される。そのため、装飾部材31によって構成される立体模様がより大きく変化し得る。あるいは、装飾部材31をより多く封入することができ、装飾部材31の配置パターンが豊富になることによって、立体模様がさまざまに変化し得る。
【0020】
図3および図4に示すように、踵部材21の上部には、中空部23に連続する開口部25が設けられており、開口部25の縁26は、中底11の下面に接着されており、中底11により開口部25が塞がれている。
【0021】
具体的には、開口部25から中空部23に装飾部材31を入れておき、開口部の縁26を中底11の下面に接着し、開口部25を塞ぐことができる。これにより、容易に中空部23に装飾部材31を封じ込めることができる。また、踵部材21に蓋を設けず、中底11が開口部25の蓋を兼ねているため、踵部材21により大きな中空部23を設けることができる。尚、踵部材21は、透明なプラスチックを用いて、射出成形法などの公知のプラスチック成形法にて成形することができる。
【0022】
装飾部材31は、有色な芯部33と、芯部33を覆う透明な表皮部35とからなる粒状体である。
【0023】
具体的には、図5(A)及び図5(B)に示すように、装飾部材31は、貫通孔37を有するプラスチック製のビーズ状の粒状体であり、芯部33と、芯部33を覆う表皮部35の二層構造となっている。芯部33は有色であり、表皮部35は無色透明であり、芯部33を透かして見ることができる。したがって、芯部33が浮き上がっているような装飾効果を奏する。尚、本発明において透明とは、芯部33を透かして見ることができればよく、無色透明の他に、有色透明、若しくは半透明でもよく、さらに、金属箔状の小片等の装飾を含有していてもよい。
【0024】
装飾部材31の各個の大きさは特に限定されるものではなく、中空部23に複数の装飾部材31を可動自在に封入することができる大きさであればよい。中空部23に封入される装飾部材31の数は、2個以上であれば特に限定されないが、10個以上であれば、装飾部材31の配置パターンが豊富であり立体模様がさまざまに変化するため、より好ましい。本実施の形態においては、13個の装飾部材31が封入されている。
【0025】
複数の装飾部材31は、異なる色の芯部33の装飾部材31をも含む。すなわち、装飾部材31のうち少なくとも1つは、芯部33の色が他の装飾部材31の芯部33の色と異なる。
本実施の形態においては、13個の装飾部材31の芯部33の色は全て異なっており、黄色、水色、黒色、紫色、濃桃色、淡桃色、青色、淡黄色、白色、橙色、赤色、黄緑色、茶色である。装飾部材31の芯部33の色が異なっていると、装飾部材31が構成する立体模様の変化がはっきりと分かる。芯部33の色は本実施の形態に限定されることなく、各種の色を使うことができ、単色に限らず、複数の色により模様が施されていてもよい。また、有色であれば、透明または半透明であってもよい。
【0026】
表皮部35の外形は、多面体である。
具体的には、図5に示すように、本実施の形態に係る装飾部材31は、芯部33が球状であり、表皮部35の外形は、六角形と略五角形とからなる多面体である。表皮部35において光の反射や屈折が生じることにより、見る角度によって装飾部材31の見え方が変化し得る。したがって、装飾部材31が動くことによって立体模様が変化するだけでなく、見る角度によって立体模様の見え方が変化し得る。
【0027】
以上の構成の靴1によれば、踵部材21の中空部23に封入された装飾部材31が歩くたびに動き、その立体模様が変化する。それによって、靴1の外観が変化する。
また、踵部材21が靴1の前後方向に沿うように形成されているから、より大きな踵部材21を形成することができ、より大きな中空部23を設けることができる。その結果、装飾部材31の可動範囲をより広く確保することが可能となり、装飾部材31によって構成される立体模様がより大きく変化し得る。あるいは、装飾部材31をより多く封入することができ、装飾部材31の配置パターンが豊富になることによって、立体模様がさまざまに変化し得る。
しかも、踵部材21の上部に開口部25が設けられているから、中空部23に装飾部材31を封じ込めるのは容易である。
装飾部材31においては、表皮部が透明であるから芯部が浮かび上がっているような装飾効果を奏しており、かつ、芯部33の色が異なる複数の装飾部材31によって立体模様が構成されるため、その立体模様の変化がはっきりと分かる。さらに、表皮部35の外形が多面体であるから、見る角度によって装飾部材31の見え方が変化し得る。
【0028】
尚、踵部材21は、一般にヒールと称されることもある。踵部材21の形状は、本実施の形態に限定されるものではなく、例えば、靴底11の後部に固定される略柱状のものであってもよい。
【0029】
また、本発明に係る装飾部材の形状及び材質は、特に限定されるものではない。形状は、例えば、球状、柱状、錘状、星型などいかなる形状でもよく、材質は、プラスチックの他、ゴム、ガラスなど、いかなる材質でもよい。
【0030】
靴底の厚さや材質は特に限定されるものではなない。例えば、中底としては、合成皮革、天然皮革、レザーボード、パルプボード等を使用することができ、本底としては、合成皮革、天然皮革、クレープ、合成ゴム、合成樹脂、スポンジ、ウレタン、ウッド、コルク、ジュート等を使用することができ、中間底材としては、合成皮革、天然皮革、ウレタン、合成樹脂等の公知の種々の材料を使用することができる。尚、一般に、中底はインソール、本底はアウトソール、中間底材はミッドソールと称されることもある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施の形態に係る靴の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る靴の右側面図である。
【図3】図1に示す靴のA−A断面図である。
【図4】図2に示す靴のB−B断面図である。
【図5】(A)は装飾部材の正面図であり、(B)は(A)に示す装飾部材のC−C断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 靴
11 中底(靴底)
21 踵部材
23 中空部
25 開口部
26 開口部の縁
31 装飾部材
33 芯部
35 表皮部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
つま先側は相対的に低く、踵側は相対的に高くなるように傾斜した靴底を備えた靴であって、
前記靴底の下面には、踵側を相対的に高く支持する踵部材が固定されており、
前記踵部材は、中空部を有する少なくとも一部が透明な部材であり、
前記中空部には、複数の装飾部材が可動自在に封入されており、
前記装飾部材が動き、その配置が変化することによって、前記装飾部材によって構成される立体模様が変化し得ることを特徴とする靴。
【請求項2】
請求項1に記載の靴であって、
前記踵部材は、前記靴の前後方向に沿うように形成されており、前記踵部材のつま先側は相対的に薄く、踵側になるにしたがって相対的に厚くなっていることを特徴とする靴。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の靴であって、
前記踵部材の上部には、前記中空部に連続する開口部が設けられており、
前記開口部の縁は、前記靴底の下面に接着されており、前記靴底により前記開口部が塞がれていることを特徴とする靴。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の靴であって、
前記装飾部材は、有色な芯部と、前記芯部を覆う透明な表皮部とからなる粒状体であることを特徴とする靴。
【請求項5】
請求項4に記載の靴であって、
前記複数の装飾部材は、異なる色の芯部の装飾部材をも含むことを特徴とする靴。
【請求項6】
請求項4または請求項5に記載の靴であって、
前記表皮部の外形が多面体であることを特徴とする靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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