説明

鞍乗り型車両及びそれに用いられる導光体

【課題】フロントカバーのサイズを抑えつつ、視認性を高めることができる鞍乗り型車両を提供する。
【解決手段】光源となるポジションライト及び導光体37は、フロントカバーに配置される。導光体37は車体の幅方向に延び、ポジションライトから車体の幅方向に進む光を受ける。導光体37は、構造化面37Bと、出射面37U、37Fとを備える。構造化面37Bは、複数の光学構造体370を有する。出射面37Uは、構造化面37Bと反対側に配置され、構造化面37Bで反射した光を出射する。出射面37Fは、構造化面37Bで反射した光を出射する。光学構造体370は幅方向WDに対して傾斜する溝であって、光学構造体370の2つの端部のうち、前記出射面37F側に配置される一方の端部は、他方の端部よりもポジションライトから遠くに配置される、

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鞍乗り型車両及びそれに用いられる導光体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動二輪車に代表される鞍乗り型車両は、車体前部にフロントカバーを備える。フロントカバーには通常、ヘッドライトが取り付けられ、さらに、ポジションライトが取り付けられる場合がある。
【0003】
フロントカバーの後方には、スピードメータ、ハンドル及びフロントフォークが配置される。これらの部材が容易に回動できるように、フロントカバーの後方にはスペースを設ける必要がある。したがって、フロントカバーの前後方向のサイズはなるべく小さい方が好ましい。
【0004】
さらに、正面視におけるフロントカバーのサイズが小さければ、鞍乗り型車両の空力特性が向上する。フロントカバーの上方にはウインドスクリーンが配置され、フロントカバーの下方には、前輪が配置される。したがって、正面視においては特に、フロントカバーの上下方向のサイズがなるべく小さい方が好ましい。
【0005】
ヘッドライト又はポジションライト等の照明灯は、フロントカバーの中央部分に配置され、その配置領域は限られる。照明灯のサイズが小さい方が、フロントカバーの前後方向及び上下方向のサイズを小さくすることができる。しかしながら、照明灯が小さければ、発光面積が小さくなり、視認性が低下する。
【0006】
特開2007−62565号公報(特許文献1)は、このような問題を解決するための技術を提案する。特許文献1に開示された車両用照明装置は、一対のプロジェクタランプと、導光体と、第1及び第2リフレクタとを備える。導光体は、一対のプロジェクタランプの下方に配置される。導光体は、プロジェクタランプからの光を受け、導光体の前端面から光を出射する。第1及び第2リフレクタは、プロジェクタランプの上方に配置される。第1及び第2リフレクタは、互いに対向して配置され、プロジェクタランプからの光を上方に導く導光路を形成する。要するに、特許文献1の車両用照明装置は、導光体と、第1及び第2リフレクタとを利用して、プロジェクタランプの光を上方及び前方に出射する。これにより、一対のプロジェクタランプのみが配置された場合と比較して、車両照明装置は、発光面積を拡大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−62565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の車両照明装置では、プロジェクタランプの光を上方及び前方に出射するために、導光体と第1及び第2リフレクタとをフロントカバーに配置しなければならない。そのため、フロントカバーのサイズを抑制しにくい。
【0009】
本発明の目的は、フロントカバーのサイズを抑えつつ、視認性を高めることができる鞍乗り型車両を提供することである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0010】
本発明の実施の形態による鞍乗り型車両は、フロントカバーと、光源と、導光体とを備える。フロントカバーは、車体の前部に配置される。光源及び導光体は、フロントカバーに配置される。導光体は、車体の幅方向に延び、光源から車体の幅方向に進む光を受ける。導光体は、第1及び第2出射面を有する。第1出射面は、車体の上方又は下方を向き、光を出射する。第2出射面は、車体の前方を向き、光を出射する。車体の前後方向の導光体の長さと、第1出射面の法線方向の導光体の長さとは、車体の幅方向の導光体の長さよりも短い。

本発明の実施の形態による鞍乗り型車両は、フロントカバーのサイズを抑えつつ、視認性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の実施の形態による鞍乗り型車両の側面図である。
【図2】図2は、図1に示す鞍乗り型車両の正面図である。
【図3】図3は、図2中のライト部周辺の拡大図である。
【図4】図4は、図3中の発光部材の正面図である。
【図5】図5は、図4に示す発光部材の斜視図である。
【図6】図6は、図4に示す導光体の平面図である。
【図7】図7は、図6中の線分VII−VIIの断面図である。
【図8】図8は、図6に示す導光体のうち、図6中の領域300の部分の斜視図である。
【図9】図9は、図8中の光学構造体370の斜視図である。
【図10】図10は、平面視において、鞍乗り型車両の幅方向に進行する光の導光体内での軌跡を示す模式図である。
【図11】図11は、正面視において、鞍乗り型車両の幅方向に進行する光の導光体内での軌跡を示す模式図である。
【図12】図12は、図4中の領域Aの断面図である。
【図13】図13は、図4中の領域Bの断面図である。
【図14】図14は、図4中の領域Cの断面図である。
【図15】図15は、図4中の導光体の一部の正面図である。
【図16】図16は、比較例としての導光体の一部の正面図である。
【図17】図17は、図9と異なる、他の光学構造体の斜視図である。
【図18】図18は、図9及び図17と異なる、他の光学構造体の斜視図である。
【図19】図19は、図9、図17及び図18と異なる、他の光学構造体の斜視図である。
【図20】図20は、図4と異なる他の導光体の一部の斜視図である。
【図21】図21は、図3と異なる他の導光体の配置例を示す、鞍乗り型車両の正面図である。
【図22】図22は、図3及び図21と異なる他の導光体の配置例を示す、鞍乗り型車両の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態による鞍乗り型車両について説明する。本明細書でいう「鞍乗り型車両」は、自動二輪車や、不整地走行用車両(All-Terrain Vehicle)、スノーモービル等を含む。「自動二輪車」は、スクータやモペットを含む。図1に示す鞍乗り型車両1は、オンロード自動二輪車である。しかしながら、本実施の形態の鞍乗り型車両は、オンロード自動二輪車に限定されない。本実施の形態による鞍乗り型車両は、オフロード自動二輪車でもよい。明細書中において、前後左右は、鞍乗り型車両に乗ったライダから見た方向である。
【0013】
[鞍乗り型車両1の全体構成]
鞍乗り型車両1は、ヘッドパイプ11と、フレーム2と、フロントフォーク3と、前輪4と、ハンドル5と、リヤアーム7と、後輪8と、エンジン9とを備える。
【0014】
ヘッドパイプ11は、車体の前部に配置される。ヘッドパイプ11の上方には、ハンドル5が回転可能に取り付けられる。ヘッドパイプ11の下方には、フロントフォーク3が配置される。フロントフォーク3の下端部には、前輪4が回転可能に取り付けられる。
【0015】
ヘッドパイプ11にはフレーム2が接続される。フレーム2は、ヘッドパイプ11から鞍乗り型車両1の後方に延びる。フレーム2の後端部は、下方に湾曲している。フレーム2の後端部には、ピボット軸6が設けられる。リヤアーム7の前端部は、ピボット軸6に取り付けられ、リヤアーム7は、ピボット軸6回りを上下に回転可能に支持される。リヤアーム7の後端部には、後輪8が回転可能に取り付けられている。
【0016】
フレーム2の下方には、エンジン9が配置される。エンジン9は、支持プレートによりフレーム2に取り付けられる。フレーム2の上方には、燃料タンク12が配置される。燃料タンク12の後方には、座席シート13が配置される。
【0017】
[フロントカバー10の構成]
フロントカバー10は、車体の前部に配置される。図2は、鞍乗り型車両1の正面図である。図2を参照して、フロントカバー10は、上部にウインドスクリーン21を備える。フロントカバー10はさらに、一対の開口23を有する。各開口23は、正面視において、鞍乗り型車両1の中央を挟んで左右にそれぞれ配置される。
【0018】
ヘッドライトユニット30は、フロントカバー10の背面側に配置される。ヘッドライトユニット30は、前部に一対のライト部31を備える。一対のライト部31の各々は、一対の開口23の各々に配置される。
【0019】
図3は、一対のライト部31のうち、左側のライト部31の正面図である。以降、図3を用いて左側のライト部31の構成について説明する。右側のライト部31の構成も、左側のライト部31の構成と同じである。
【0020】
図3を参照して、ライト部31は、ヘッドライト32と、ポジションライト33と発光部材34とを備える。
【0021】
ヘッドライト32は、正面視において、鞍乗り型車両1の中央側に配置され、ポジションライト33は、鞍乗り型車両1の側面側に配置される。ポジションライト33は、ヘッドライト32から離れて配置され、ヘッドライト32に対して斜め上方に配置される。ヘッドライト32とポジションライト33との間には、貫通孔35が形成される。走行時において、貫通孔35は外気を導入し、エンジン9に供給する。
【0022】
図4は、図3中の発光部材34の正面図である。図3及び図4を参照して、発光部材34は、ライトカバー36と、導光体37とを備える。ライトカバー36は、ポジションライト33の前方に配置され、ポジションライト33を覆う。ライトカバー36は、ポジションライト33から出射した光を前方に透過する。ライトカバー36はさらに、ポジションライト33からの出射光を透過して導光体37の端部37E(図4参照)に導く。
【0023】
導光体37は、ポジションライト33の下方に配置され、鞍乗り型車両1の幅方向WDに延びる。より具体的には、導光体37は、ライトカバー36から鞍乗り型車両1の中央に向かって、斜め下方に延びる。図5は発光部材34の斜視図であり、図6は、発光部材34中の導光体37の平面図である。図4〜図6を参照して、導光体37は、板状である。つまり、導光体37は、幅方向WDに長く、車体前後方向及び上下方向に短い。そのため、導光体37を配置しても、フロントカバーの上下方向及び前後方向のサイズを抑制できる。
導光体37は、光源となるポジションライト33の出射光を受け、発光する。図6に示すとおり、導光体37の後縁には、複数の取付部材371が形成される。取付部材371により、導光体37はヘッドライトユニット30の本体に取り付けられる。
【0024】
[導光体37の構成]
図4〜図6を参照して、導光体37は、出射面37F及び37Uと、構造化面37Bとを有する。
【0025】
構造化面37Bは、出射面37Uと反対側に配置される。出射面37Uはなめらかな表面である。一方、構造化面37Bは、複数の光学構造体370を有する。本例では、出射面37Uは導光体37の上面に相当し、構造化面37Bは導光体37の下面に相当する。出射面37Fは導光体37の前面に相当し、なめらかな表面である。図7は、図6中の線分VII−VIIでの断面図である。図7を参照して、出射面37Fは、出射面37Uと隣接する。
【0026】
図8は、導光体37のうち、図6中の領域300の部分の斜視図である。図8を参照して、構造化面37Bは、複数の光学構造体370を有する。光学構造体370は、溝状であり、その横断形状の幅は、溝底に向かって小さくなる。本例では、光学構造体370はいわゆるプリズム溝である。複数の光学構造体370は、光学構造体370の幅方向に並んで配置される。図8では、複数の光学構造体370は2列に並んでいる。
【0027】
図9は、図8中の光学構造体370の斜視図である。図9を参照して、光学構造体370は、側面S1及びS2を有する。側面S1と側面S2とは、溝底SBでつながる。側面S2は、側面S1よりも、光源(ポジションライト33)の近くに配置される。
【0028】
図6及び図8を参照して、ポジションライト33から出射する光のうち、鞍乗り型車両1の幅方向に進む光R0(以下、幅方向光R0という)は、ライトカバー36を透過して、導光体37の端部37Eに入射する。導光体37は、幅方向光R0を構造化面37Bで全反射して出射面37Uから上方に出射する。導光体37はさらに、幅方向光R0を構造化面37Bで全反射して出射面37Fから前方に出射する。要するに、導光体37は、幅方向光R0を2つの方向(上方及び前方)に出射する。1つの部材(導光体37)により光源からの光を2つの方向に出射できるため、フロントカバー10のサイズを抑えつつ、発光面積を大きくすることができる。導光体37の構造の詳細は以下のとおりである。
【0029】
[幅方向光R0を出射面37Fから出射する仕組み]
図8に示すとおり、複数の光学構造体370は、光学構造体370の幅方向に配列される。さらに図6に示すとおり、光学構造体370は、鞍乗り型車両1の幅方向WD及び前後方向FBDと交差して延びる。つまり、光学構造体370は、幅方向WDに対して傾斜しており、かつ、前後方向FBDに対しても傾斜している。光学構造体370が幅方向WDに対して傾斜するため、導光体37は幅方向光R0を前方向に出射することができる。
【0030】
図10は、導光体37内を進行する幅方向光R0の軌跡を示す模式図であり、導光体37を平面視した模式図である。図10では説明のため、光学構造体370を線で示す。図10を参照して、光源(ポジションライト33)から出射した幅方向光R0は、ライトカバー36を透過して導光体37の端部37Eに入射する。幅方向光R0は導光体37内を幅方向WDに進行する。上述のとおり、光学構造体370は、幅方向WDに対して傾斜している。そのため、幅方向光R0が光学構造体370(の側面S2)に入射したとき、幅方向光R0は全反射する。図10に示すとおり、光学構造体370の端部370F及び370Rのうち、出射面37F側の端部370Fの方が、他方の端部370Rよりも光源(ポジションライト33)から遠くに配置されるように、光学構造体370は幅方向WDに対して傾斜している。そのため、光学構造体370で全反射した光R0は、出射面37F方向に進行する。その結果、幅方向光R0は、導光体37から前方に出射する。
【0031】
平面視において、光学構造体370に入射する幅方向光R0の入射角が臨界角以上となるように、光学構造体370は、幅方向WDに対して傾斜しているのが好ましい。この場合、より多くの幅方向光R0を全反射できるため、出射面37Fの輝度が向上する。
【0032】
しかしながら、幅方向光R0の光学構造体370への入射角が臨界角未満となった場合であっても、導光体37は、光源からの光をある程度上方に出射できる。光源からの光は、幅方向光R0以外の光であって、幅方向WDから多少ずれた光も含む。これらの光も、導光体37に入射され、導光体37内を全反射しながら進み、光学構造体370で全反射して上方に出射されるからである。
【0033】
[幅方向光R0を出射面37Uから出射する仕組み]
導光体37はさらに、幅方向光R0を出射面37Uからも出射する。つまり、導光体37は、幅方向光R0を前方に出射するだけでなく、上方にも出射する。
【0034】
図11は、導光体37を正面視した場合の、導光体37内を進行する幅方向光R0の軌跡を示す模式図である。上述のとおり、光学構造体370は溝状であり、その横断形状の幅は、溝底に向かって徐々に狭くなる。光学構造体370の側面S1及びS2は、平坦であり、側面S2は側面S1よりも光源(ポジションライト33)側に配置される。
【0035】
導光体37内において、幅方向光R0は、幅方向WDに進む。このとき、幅方向光R0は、光学構造体370の側面S2に入射し、全反射する。側面S2で全反射した光R0は、上方に進み、出射面37Uから外部に出射する。
【0036】
導光体37内を進む幅方向光R0の一部(R01、R02)は、出射面37Uに入射する。この場合、光R01及びR02の出射面37Uへの入射角は、臨界角を超える。そのため、光R01及びR02は出射面37Uで全反射し、導光体37内をさらに幅方向WDに進む。その結果、光R01及び光R02は光学構造体370の側面S2に入射する。このとき、光R01及び光R02は側面S2で全反射し、出射面37Uから上方に出射する。
【0037】
光学構造体370の横断面において、光学構造体370に入射する幅方向光R0の入射角が臨界角以上となるように、側面S2が傾斜して配置されるのが好ましい。この場合、幅方向光R0の多くが全反射し、出射面37Uから上方に出射する。そのため、出射面37Uの輝度が向上する。
【0038】
しかしながら、幅方向光R0の側面S2への入射角が臨界角未満となった場合であっても、導光体37は、光源(ポジションライト33)からの光をある程度前方に出射できる。光源からの光は、幅方向光R0以外の光であって、幅方向WDから多少ずれた光も含む。これらの光も、導光体37に入射され、導光体37内を全反射しながら進み、側面S2で全反射して上方に出射されるからである。
【0039】
以上のとおり、光学構造体370は、幅方向WDに対して傾斜し、かつ、光学構造体370の2つの端部のうち、出射面37F側の端部370Fが、反対側の端部370Rよりも光源(ポジションライト33)から遠くに配置される。そのため、導光体37内を進行する幅方向光R0は、光学構造体370で全反射して出射面37Fから前方に出射する。光学構造体370はさらに、溝底に向かって幅が狭くなる横断形状を有し、側面S1及びS2を有する。光学構造体370は、側面S2において幅方向光R0を全反射し、光R0を出射面37Uから上方に出射する。
【0040】
要するに、導光体37は、光源(ポジションライト33)から入射した幅方向光R0を、2方向(前方及び上方)に出射できる。したがって、鞍乗り型車両1は、1つの部材(導光体37)を用いることにより、発光面積を拡げることができる。さらに、図4及び図6を参照して、導光体37の前後方向FBDの長さと、出射面37Uの法線N37U方向の長さとは、導光体37の幅方向WDの長さよりも短い。そのため、そのため、鞍乗り型車両1は、フロントカバー10のサイズを抑制しつつ、視認性を向上できる。特に、フロントカバー10の前後方向及び上下方向のサイズを小さくできる。好ましくは、法線N37U方向の導光体37の長さは、前後方向FBDの導光体37の長さよりも短い方が好ましい。この場合、フロントカバー10の上下方向のサイズをより小さくすることができる。
【0041】
導光体37は、出射面37F及び37Uの輝度ムラを抑制するために、好ましくは、次の構成を有する。
【0042】
図12は、図4中の領域Aにおける導光体37の断面図(幅方向WDの断面図)である。図13は、図4中の領域Bにおける導光体37の断面図である。図12及び図13を参照して、複数の光学構造体370は、複数の光学構造体370Aと、複数の光学構造体370Bとを含む。複数の光学構造体370Aは、複数の光学構造体370Bよりも光源(ポジションライト33)の近くに配置される。光学構造体370Aの高さH370Aは、光学構造体370Bの高さH370Bよりも低い。
【0043】
仮に、光学構造体370Aが光学構造体370Bよりも高ければ、幅方向光R0のほとんどが光学構造体370Aで全反射し、幅方向光R0が光学構造体370Bまで到達しにくくなる。このような場合、出射面37Fで輝度ムラが発生する場合がある。具体的には、領域Aの出射面37F及び37Uの輝度が、領域Bの出射面37F及び37Uよりも高くなる。
【0044】
本実施の形態において、光学構造体370Aは、光学構造体370Bよりも低い。そのため、幅方向光R0の一部は、光学構造体370Aの上方を通過して導光体37内を幅方向WDに進み、光学構造体370Bに到達する。その結果、幅方向光R0は、光学構造体370Aだけでなく、光学構造体370Bでも全反射する。したがって、輝度ムラの発生が抑制される。
【0045】
図14は、図4中の領域Cにおける導光体37の断面図である。図12〜図14を参照して、複数の光学構造体370はさらに、領域Cに複数の光学構造体370Cを含む。光学構造体370Cは、光学構造体370Bよりも光源から遠くに配置され、光学構造体370Bよりも高い。要するに、複数の光学構造体370は、光源(ポジションライト33)に近い方が低くなるように形成される。この場合、出射面37F及び37Uの輝度ムラが抑制される。
【0046】
さらに好ましくは、隣り合う光学構造体370A及び370Bは、互いに離れて配置され、隣り合う光学構造体370Aの間の距離D370A(図12参照)は、隣り合う光学構造体370Bの間の距離D370B(図13参照)よりも長い。要するに、光源に近い場合、隣り合う光学構造体370の間の距離が大きくなるように、光学構造体370は形成される。この場合、出射面37F及び37Uの輝度ムラの発生がさらに抑制される。
【0047】
複数の光学構造体370はいずれも同じ高さであってもよいし、隣り合う光学構造体370間の距離が同じであってもよい。隣り合う光学構造体370同士が接触していてもよい。この場合でも、導光体37は、幅方向光R0を2方向(上方及び前方)に出射できる。
【0048】
好ましくはさらに、図15に示すとおり、正面視において、隣り合う光学構造体370は互いに重複する。より具体的には、隣り合う光学構造体370の側面S2は互いに重複する。図16に示すとおり、仮に、隣り合う光学構造体370の側面S2が重複しない場合、出射面37Fのうち、側面S2の輝度が、その他の部分の領域の輝度よりも明るくなる。つまり、輝度ムラが発生する。図15に示すとおり、正面視において隣り合う側面S2が互いに重複すれば、出射面37F全体が帯状に発光する。そのため、輝度ムラが抑制される。
【0049】
上述の実施の形態では、構造化面37Bは導光体37の下面に相当し、出射面37Uが導光体37の上面に相当する。導光体37の下面が構造化面37Bであるため、光学構造体370に水滴や埃が溜まりにくい。
【0050】
上述の実施の形態では、光学構造体370はプリズム溝であって、側面S1及びS2を有する。好ましくは、側面S2の面積は側面S1よりも大きい。側面S1及びS2のうち、前方及び上方に光を出射する役割を果たすのは、側面S2である。側面S2が側面S1よりも大きければ、より多くの光を前方及び上方に出射することができる。
【0051】
上述の実施の形態では、図9に示すとおり、光学構造体370はプリズム溝である。しかしながら、光学構造体370の形状はこれに限定されない。たとえば、図17に示すとおり、光学構造体370は、横断形状が台形状の溝であってもよい。また、図18に示すように、光学構造体370の側面S2は、凸状に湾曲していてもよい。図示していないが、側面S2は凹状に湾曲していてもよい。さらに、図19に示すように、光学構造体370は、シリンドリカル状の溝であってもよい。要するに、光学構造体370は、溝底に向かって幅が狭くなる横断形状を有していれば、その形状は特に限定されない。
【0052】
図6及び図8では、導光体37内において、複数の光学構造体370は2列に並んでいる。しかしながら、光学構造体370の列数は特に限定されない。複数の光学構造体370は一列に並んでも良いし、図20に示すとおり、3列以上に並んでも良い。
【0053】
上述の実施の形態では、ポジションライト33を光源とする。ポジションライト33は、発光素子が封入された通常の電球であってもよいし、LED(Light Emitting Diode)素子であってもよい。光源としてポジションライト33を利用すれば、導光体37用に新たな光源を設ける必要がない。したがって、新たな光源を設けることによるフロントカバー10のサイズの増大を抑制できる。
【0054】
しかしながら、ポジションライト33以外の他の光源を、導光体37用の光源として利用してもよい。たとえば、ポジションライト33の下方に、新たなLED素子を設け、そのLED素子を光源としてもよい。この場合であっても、1つの導光体37により2つの方向に光を出射する。そのため、フロントカバー10のサイズをある程度抑制できる。
【0055】
また、図21に示すように、ポジションライト33に代えて、ヘッドライト32を光源として利用してもよい。この場合、発光部材34のライトカバー36は、ヘッドライト32を覆う。そして、導光体37は、ヘッドライト32を覆うライトカバ−36から、鞍乗り型車両1の側面に向かって(つまり、ポジションライト33に向かって)、幅方向WDに延びる。この場合、光学構造体370は、その端部370F(出射面37F側の端部、図10参照)が他方の端部370Rよりもヘッドライト32から遠くなるように、幅方向WDに対して傾斜する。つまり、光学構造体370は、ポジションライト33を光源とした場合と逆側に傾斜する。これにより、ヘッドライト32からの光を前方及び上方に出射できる。
【0056】
さらに、図22に示すように、導光体37が、ポジションライト33を光源として、ポジションライト33及びヘッドライト32の上方に配置されてもよい。この場合、導光体37の上面に構造化面37Bが配置され、導光体37の下面に出射面37Uが配置される。そのため、導光体37は、幅方向光R0を前方及び下方に出射する。この場合であっても、導光体37により、フロントカバー10のサイズを抑制しつつ、発光面積を大きくすることができ、視認性が向上する。
【0057】
以上のとおり、本実施の形態による鞍乗り型車両は、フロントカバーと、光源と、導光体とを備える。フロントカバーは、車体の前部に配置される。光源及び導光体は、フロントカバーに配置される。導光体はさらに、車体の幅方向に延在し、光源から車体の幅方向に進む光を受ける。導光体は、第1及び第2出射面を有する。第1出射面は、車体の上方又は下方を向き、光を出射する。第2出射面は、車体の前方を向き、光を出射する。車体の前後方向の導光体の長さと、第1出射面の法線方向の導光体の長さとは、車体の幅方向の導光体の長さよりも短い。
【0058】
本実施の形態による鞍乗り型車両において、導光体は、上方又は下方と、前方とに光を出射する。そして、車体の前後方向の導光体の長さと、第1出射面の法線方向の導光体の長さとは、車体の幅方向の導光体の長さよりも短い。したがって、導光体によりフロントカバーの上下方向及び前後方向のサイズが大きくなるのを抑制しつつ、発光面積を大きくでき、視認性を向上できる。
【0059】
好ましくは、第1出射面の法線方向の導光体の長さは、車体の前後方向の導光体の長さよりも短い。
【0060】
この場合、フロントカバーの上下方向のサイズをより小さくすることができる。
【0061】
好ましくは、導光体はさらに、構造化面を備える。構造化面は、第1出射面と反対側に配置され、互いに並んで配置される複数の光学構造体を有する。光学構造体は、車体の幅方向に対して傾斜した溝であって、溝底に向かって幅が狭くなる横断形状を有し、光学構造体の2つの端部のうち、第2出射面側に配置される一方の端部は、他方の端部よりも光源から遠くに配置される。
【0062】
この場合、導光体は、複数の光学構造体により、光源から鞍乗り型車両の幅方向に進む光を、2つの方向(第1出射面側及び第2出射面側)に出射することができる。したがって、1つの導光体で発光面積を大きくでき、フロントカバーの大きさを抑えることができる。
【0063】
好ましくは、平面視において、光源から車両の幅方向に進む光の光学構造体に対する入射角は臨界角以上である。
【0064】
この場合、第1出射面側の輝度が向上する。
【0065】
好ましくは、光学構造体は、第1側面と、第1側面よりも光源に近い第2側面とを備える。正面視において、光源から車両の幅方向に進む光の第2側面に対する入射角は、臨界角以上である。
【0066】
この場合、第2出射面側の輝度が向上する。
【0067】
好ましくは、複数の光学構造体は、複数の第1及び第2光学構造体を含む。第2光学構造体は、第1光学構造体よりも光源側に配置され、第1光学構造体よりも低い。
【0068】
この場合、第1及び第2出射面の輝度ムラが低減する。
【0069】
好ましくは、構造化面は第1出射面よりも下方に配置される。
【0070】
この場合、構造化面内の複数の光学構造体に水滴や埃が溜まりにくい。
【0071】
好ましくは、正面視において、隣り合う前記光学構造体は互いに重複する。
【0072】
この場合、第1出射面における輝度ムラが低減する。
【0073】
好ましくは、光源はポジションライトであり、鞍乗り型車両はさらに、ポジションライトから離れてフロントカバーに配置されるヘッドライトを備える。
【0074】
この場合、導光体用に新たな光源を設ける必要がない。そのため、フロントカバーのサイズを抑えつつ、発光面積を大きくすることができる。
【0075】
本実施の形態による導光体は、上述の鞍乗り型車両に利用される。
【0076】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 鞍乗り型車両
10 フロントカバー
21 カバー本体
22 ウインドスクリーン
23 ヘッドライト
30 ヘッドライトユニット
31 ライト部
32 ヘッドライト
33 ポジションライト
34 発光部材
36 ライトカバー
37 導光体
37B 構造化面
37F,37U 出射面
100 車体
370 光学構造体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体の前部に配置されるフロントカバーと、
前記フロントカバーに配置される光源と、
前記フロントカバーに配置され、前記車体の幅方向に延び、前記光源から前記車体の幅方向に進む光を受ける導光体とを備え、
前記導光体は、
前記車体の上方又は下方を向き、光を出射する第1出射面と、
前記車体の前方を向き、光を出射する第2出射面とを備え、
前記車体の前後方向の前記導光体の長さと、前記第1出射面の法線方向の前記導光体の長さとは、前記車体の幅方向の前記導光体の長さよりも短い、鞍乗り型車両。
【請求項2】
請求項1に記載の鞍乗り型車両であって、
前記第1出射面の法線方向の前記導光体の長さは、前記車体の前後方向の前記導光体の長さよりも短い、鞍乗り型車両。
【請求項3】
請求項2に記載の鞍乗り型車両であって、
前記導光体はさらに、
前記第1出射面と反対側に配置され、互いに並んで配置される複数の光学構造体を有する構造化面を備え、
前記光学構造体は、前記車体の幅方向に対して傾斜した溝であって、溝底に向かって幅が狭くなる横断形状を有し、前記光学構造体の2つの端部のうち、前記第2出射面側に配置される一方の端部は、他方の端部よりも光源から遠くに配置される、鞍乗り型車両。
【請求項4】
請求項3に記載の鞍乗り型車両であって、
平面視において、前記光源から前記車両の幅方向に進む光の前記光学構造体に対する入射角は臨界角以上である、鞍乗り型車両。
【請求項5】
請求項4に記載の鞍乗り型車両であって、
前記光学構造体は、
第1側面と、
前記第1側面よりも前記光源に近い第2側面とを備え、
正面視において、前記光源から前記車両の幅方向に進む光の前記第2側面に対する入射角は、臨界角以上である、鞍乗り型車両。
【請求項6】
請求項3〜請求項5のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両であって、
正面視において、隣り合う前記光学構造体は互いに重複する、鞍乗り型車両。
【請求項7】
請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両であって、
前記複数の光学構造体は、
複数の第1光学構造体と、
前記第1光学構造体よりも光源側に配置され、前記第1光学構造体よりも低い複数の第2光学構造体とを含む、鞍乗り型車両。
【請求項8】
請求項3〜請求項7のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両であって、
前記構造化面は前記第1出射面よりも下方に配置される、鞍乗り型車両。
【請求項9】
請求項3〜請求項8のいずれか1項に記載の鞍乗り型車両であって、
前記光源はポジションライトであり、
前記鞍乗り型車両はさらに、
前記ポジションライトから離れて前記フロントカバーに配置されるヘッドライトを備える、鞍乗り型車両。
【請求項10】
フロントカバーと、前記フロントカバーに配置される光源とを備える鞍乗り型車両に用いられ、前記光源から車体の幅方向に進む光を受ける導光体であって、
前記車体の上方又は下方を向き、光を出射する第1出射面と、
前記車体の前方を向き、光を出射する第2出射面とを備え、
前記車体の前後方向の前記導光体の長さと、前記第1出射面の法線方向の前記導光体の長さとは、前記車体の幅方向の前記導光体の長さよりも短い、導光体。
【請求項11】
請求項10に記載の導光体であって、
前記第1出射面の法線方向の前記導光体の長さは、前記車体の前後方向の前記導光体の長さよりも短い、導光体。
【請求項12】
請求項11に記載の導光体であってさらに、
前記第1出射面と反対側に配置され、互いに並んで配置される複数の光学構造体を有する構造化面を備え、
前記光学構造体は、前記車体の幅方向に対して傾斜した溝であって、溝底に向かって幅が狭くなる横断形状を有し、前記光学構造体の2つの端部のうち、前記第2出射面側に配置される一方の端部は、他方の端部よりも光源から遠くに配置される、導光体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−56603(P2013−56603A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−195581(P2011−195581)
【出願日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】