音声再生装置
【課題】音声再生装置に関し、特にマグネシウム基複合材料を利用した音声再生装置を提供する。
【解決手段】音声再生装置は、筺体及び音声装置を備える。前記筺体の前部12及び後部16の少なくとも一つは、マグネシウム基複合材料からなる。該マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料を含む。該ナノ材料は、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化チタン、炭化ホウ素、黒鉛のいずれか一種又はその多種の混合物である。
【解決手段】音声再生装置は、筺体及び音声装置を備える。前記筺体の前部12及び後部16の少なくとも一つは、マグネシウム基複合材料からなる。該マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料を含む。該ナノ材料は、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化チタン、炭化ホウ素、黒鉛のいずれか一種又はその多種の混合物である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声再生装置に関し、特にマグネシウム基複合材料を利用した音声再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日まで、音声再生装置の音質を高める研究が益々進められている。しかし、一般に、音声再生装置の音声素子に対しての研究が多いが、音声再生装置の筺体に対しての研究は注目されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のイヤフォンを例として、その筐体は一般に、プラスチック又は樹脂からなるので、残響が強すぎ、筺体に強い共振が生じ、元音と干渉して音場が濁りがちになり、音を忠実に再現できないという欠点がある。また、プラスチックの耐用性が悪いので、プラスチックからなるイヤフォンの使用時間が短い。
【0004】
従って、本発明は、従来の問題を解決するために、軽量及び耐用性が良い材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の音声装置の筺体は、マグネシウム基複合材料からなる音声装置の筺体である。前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなる。
【0006】
本発明の音声再生装置は、筺体及び音声装置を備える。前記筺体は、マグネシウム基複合材料からなり、前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなる。
【発明の効果】
【0007】
従来技術と比べて、本願発明の音声再生装置は次の優れた点がある。第一に、マグネシウム基複合材料の音声再生装置に生じる残響が強くなく、音質が良くなる。第二に、プラスチックと比べて、マグネシウム基複合材料の強度及び耐用性が高い。従って、マグネシウム基複合材料を利用する場合、音声再生装置の筺体の壁が薄くても、音声再生装置の強度が高いため、音声再生装置の軽型化が実現できる。第三に、マグネシウム基複合材料の熱伝導性が良いので、音声再生装置の放熱性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係るイヤフォンの構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るAZ91Dマグネシウム材料の50倍SEM写真である。
【図3】本発明の実施例に係る、質量パーセントが0.5%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の50倍SEM写真である。
【図4】本発明の実施例に係る、質量パーセントが1%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の50倍SEM写真である。
【図5】本発明の実施例に係る、質量パーセントが1.5%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の50倍SEM写真である。
【図6】本発明の実施例に係るマグネシウム基複合材料において、SiCとMgとの間の界面を示す写真である。
【図7】本発明の実施例に係る、異なる質量パーセントのナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の抗張力のグラフである。
【図8】本発明の実施例に係る、異なる質量パーセントのナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の伸長率のグラフである。
【図9】本発明の実施例に係る、異なる材料からなるイヤフォンの全高調波歪みのグラフである。
【図10】プラスチック製のイヤフォンの瀑状プロット(waterfall plot)である。
【図11】AZ91Dタイプのマグネシウム合金製のイヤフォンの瀑状プロットである。
【図12】マグネシウム基複合材料製のイヤフォンの瀑状プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本実施例の音声再生装置は、筺体及び該筺体の中に内蔵された音声装置を備える。該音声装置は、イヤフォン、音響装置、携帯電話、ノートブック又はテレビである。本実施例において、前記音声装置は、イヤフォンである。
【0011】
図1を参照すると、本実施例のイヤフォン10は、中空の筺体(図示せず)と、該筺体に内蔵されたスピーカー14と、を備えている。構造により、該イヤフォン10は、インナーイヤー型、カナル型、ヘッドバンド型、ネックバンド型又は耳掛け型である。駆動方式により、該イヤフォン10は、ダイナミック型、圧電型、静電型、バランスド・アーマチュア型、マグネティック型又はクリスタル型である。
【0012】
前記スピーカー14は、電気信号をオーディオ信号に転換できる。前記スピーカー14は、ダイナミック型、コンデンサ型(静電型)、リボン型、イオン型(放電型)、マグネティック型又は圧電型である。本実施例において、前記スピーカー14は、ダイナミック型である。
【0013】
前記筺体の壁の厚さは、0.01mm〜2mmである。前記筺体は、前部12及び後部16を備えている。前記筺体の前部12は、使用者の耳に接触し、複数の孔(図示せず)を有する。前記筺体の後部16は、前記前部12に対向している。本実施例において、前記筺体の前部12は、円形のカバーであり、前記筺体の後部16は、前記筺体の前部12に対応して係合するはち状の基部である。
【0014】
前記筺体の前部12及び後部16の少なくとも一つは、マグネシウム基複合材料からなる。本実施例において、前記筺体の前部12及び後部16は、いずれもマグネシウム基複合材料からなる。該マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料を含む。該ナノ材料は、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化チタン、炭化ホウ素、黒鉛のいずれか一種又はその多種の混合物であるが、カーボンナノチューブ又は炭化ケイ素であることが好ましい。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。前記マグネシウム基複合材料において、前記ナノ材料の質量パーセントは、0.01%〜10%であり、0.5%〜2%であることが好ましい。前記ナノ材料は、粉末状、ファイバー状又は単結晶ファイバーである。前記ナノ材料はファイバー状である場合、その長さが1nm〜100nmであり、30nmであることが好ましい。前記マグネシウム基材料は、純なマグネシウム又はマグネシウム合金である。ここで、前記マグネシウム合金は、マグネシウムと、Zn、Mn、Al、Zr、Th、Ag、Ca、Liのいずれか一種又は多種の金属とからなることができる。該マグネシウム合金において、マグネシウムの質量パーセントは、80%であり、他の金属の質量パーセントは20%以下である。前記マグネシウム合金のタイプは、AZ91D、AM60、AS41、AS21又はAE42であり、AZ91Dであることが好ましい。
【0015】
前記マグネシウム基複合材料にナノ材料を添加することにより、前記マグネシウム基材料の細化を高め、前記筺体の抗張力及び伸長率を高めることができる。本実施例において、前記マグネシウム基材料は、AZ91Dタイプのマグネシウム合金である。前記マグネシウム基材料に添加したナノ材料は、カーボンナノチューブ又は炭化ケイ素である。図2〜図5には、それぞれ質量パーセントが0.5%、1%、1.5%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の結晶状態が示されている。この結果から、ナノ材料の質量パーセントが0.5%〜1.5%である範囲において、ナノ材料の質量パーセントが高くなるほど、マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法が小さくなることが分かる。前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子は、前記マグネシウム基複合材料を構成するためのマグネシウム基材料の結晶粒子と比べて、その寸法が60%〜75%より小さくなる。前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法は、100μm〜150μmである。本実施例において、前記マグネシウム基複合材料において、前記ナノ材料はカーボンナノチューブであり、その質量パーセントが0.5%〜2%である。前記マグネシウム基複合材料は、AZ91Dタイプのマグネシウム合金と比べて、その結晶粒子の寸法が60%〜75%より小さくなる。図6を参照すると、前記マグネシウム基複合材料において、前記ナノ材料は炭化ケイ素である場合、マグネシウム粒子と炭化ケイ素粒子との間に明晰な界面が形成されている。
【0016】
図7に示すように、質量パーセントが0.5%、1%、1.5%、2%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料に対して、それぞれ抗張力の実験を行うと、前記ナノ材料の質量パーセントが1.5%である場合、前記マグネシウム基複合材料の抗張力が最大である。図8に示すように、質量パーセントが0.5%、1%、1.5%、2%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料に対して、それぞれ伸長率の実験を行うと、前記ナノ材料の質量パーセントが1.5%である場合、前記マグネシウム基複合材料の伸長率が最大である。従って、前記ナノ材料を添加することにより、前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法を小さくさせ、前記マグネシウム基複合材料の抗張力及び伸長率を高めることができるので、前記ナノ材料を添加したマグネシウム基複合材料を利用して製造したイヤフォンの筺体は、強い強度及び良好な耐用性を有する。
【0017】
以下の表1には、質量パーセントが0%、0.01%、0.5%、1%、1.5%、2%のカーボンナノチューブを含むマグネシウム基複合材料の抗張力及び伸長率が示されている。
【0018】
【表1】
【0019】
前記マグネシウム基複合材料の製造方法は、マグネシウム基材料及びナノ材料を提供する第一ステップと、前記マグネシウム基材料を460℃〜580℃まで加熱して、溶融状態の前記マグネシウム基材料の中に前記ナノ材料を添加して混合物を形成する第二ステップと、前記混合物を620℃〜650℃まで加熱して、前記混合物を超音波処理して、前記ナノ材料を均一に分散させる第三ステップと、前記混合物を650℃〜680℃まで加熱して、成型処理を行う第四ステップと、を含む。前記第二ステップから前記第四ステップまで、温度を次第に高めることにより、前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法を小さくさせることができる。マグネシウム基材料の酸化を防止するために、全ての前記製造工程を不活性ガス又は窒素である保護ガスの雰囲気において行うことが必要である。本実施例において、窒素を利用する。
【0020】
本実施例において、前記第一ステップのマグネシウム基材料はAZ91D合金であり、前記ナノ材料は、カーボンナノチューブ又は炭化ケイ素である。前記第二ステップにおいて、前記溶融状態のマグネシウム基材料を、保護ガスが充満した容器に置く。機械攪拌装置を利用して、前記溶融状態のマグネシウム基材料を攪拌しながら、前記ナノ材料を添加することができる。前記第三ステップにおいて、前記超音波の周波数は、15KHz〜20KHzであり、15KHzであることが好ましい。前記超音波処理の時間は、5分間〜40分間であり、30分間が好ましい。一般に、低い周波数ほどエネルギーが大きくなるので、従来の周波数が48KHzである超音波処理と比べて、本実施例に周波数が15KHz〜20KHzの高エネルギー超音波を利用することにより、前記溶融状態のマグネシウム基材料を強く攪拌し、前記溶融状態のマグネシウム基材料における粒子を激しく運動させることが出来る。従って、前記ナノ材料は、前記溶融状態のマグネシウム基材料の中に均一に分散されることができる。前記第四ステップにおいて、第三ステップで得た混合物を、金型に注入して固化させて、マグネシウム基複合材料の予備体を得ることができる。さらに、該マグネシウム基複合材料の予備体をプレス加工することにより、前記ナノ材料を更に均一に分散させ、優れた強度及び靭性を有するマグネシウム基複合材料を製造することができる。さらに、前記マグネシウム基複合材料をダイカスト加工して、イヤフォンの筺体を製造することができる。
【0021】
以下の表2は、プラスチック製の筺体とマグネシウム基複合材料製の筺体との対比表である。ここで、カーボンナノチューブを前記ナノ材料として、AZ91Dを前記マグネシウム基材料として利用し、前記カーボンナノチューブの質量パーセントを1.5%に設定する。該表2から、AZ91Dを利用したマグネシウム基複合材料製の筺体は、プラスチック製の筺体と比べて、抗張力が高く、密度が高くなるという優れた点がある。
【0022】
【表2】
【0023】
筺体の形状が同じである場合、プラスチック製の筺体、AZ91Dマグネシウム合金製の筺体及びマグネシウム基複合材料製の筺体に対して音響測定すると、この三種の周波応答曲線及び抵抗曲線が大体同じである。しかし、図9に示すように、マグネシウム基複合材料製の筺体の全高調波歪みが一番小さい。詳しく、周波数が20Hz〜50Hzである場合、マグネシウム合金製の筺体と比べて、マグネシウム基複合材料製の筺体の全高調波歪みが10%より小さくなる。
【0024】
図10〜12を参照すると、周波数が20Hz〜30Hzである場合、マグネシウム基複合材料製の筺体のオーディオ振幅が最小であるので、その全高調波歪みが最小である。周波数が100Hz〜600Hzである場合、マグネシウム基複合材料製の筺体の波形は、一番安定であるので、マグネシウム基複合材料製の筺体を利用したイヤフォンの音質が良い。
【符号の説明】
【0025】
10 イヤフォン
12 前部
14 スピーカー
16 後部
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声再生装置に関し、特にマグネシウム基複合材料を利用した音声再生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日まで、音声再生装置の音質を高める研究が益々進められている。しかし、一般に、音声再生装置の音声素子に対しての研究が多いが、音声再生装置の筺体に対しての研究は注目されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のイヤフォンを例として、その筐体は一般に、プラスチック又は樹脂からなるので、残響が強すぎ、筺体に強い共振が生じ、元音と干渉して音場が濁りがちになり、音を忠実に再現できないという欠点がある。また、プラスチックの耐用性が悪いので、プラスチックからなるイヤフォンの使用時間が短い。
【0004】
従って、本発明は、従来の問題を解決するために、軽量及び耐用性が良い材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の音声装置の筺体は、マグネシウム基複合材料からなる音声装置の筺体である。前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなる。
【0006】
本発明の音声再生装置は、筺体及び音声装置を備える。前記筺体は、マグネシウム基複合材料からなり、前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなる。
【発明の効果】
【0007】
従来技術と比べて、本願発明の音声再生装置は次の優れた点がある。第一に、マグネシウム基複合材料の音声再生装置に生じる残響が強くなく、音質が良くなる。第二に、プラスチックと比べて、マグネシウム基複合材料の強度及び耐用性が高い。従って、マグネシウム基複合材料を利用する場合、音声再生装置の筺体の壁が薄くても、音声再生装置の強度が高いため、音声再生装置の軽型化が実現できる。第三に、マグネシウム基複合材料の熱伝導性が良いので、音声再生装置の放熱性が優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例に係るイヤフォンの構造を示す図である。
【図2】本発明の実施例に係るAZ91Dマグネシウム材料の50倍SEM写真である。
【図3】本発明の実施例に係る、質量パーセントが0.5%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の50倍SEM写真である。
【図4】本発明の実施例に係る、質量パーセントが1%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の50倍SEM写真である。
【図5】本発明の実施例に係る、質量パーセントが1.5%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の50倍SEM写真である。
【図6】本発明の実施例に係るマグネシウム基複合材料において、SiCとMgとの間の界面を示す写真である。
【図7】本発明の実施例に係る、異なる質量パーセントのナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の抗張力のグラフである。
【図8】本発明の実施例に係る、異なる質量パーセントのナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の伸長率のグラフである。
【図9】本発明の実施例に係る、異なる材料からなるイヤフォンの全高調波歪みのグラフである。
【図10】プラスチック製のイヤフォンの瀑状プロット(waterfall plot)である。
【図11】AZ91Dタイプのマグネシウム合金製のイヤフォンの瀑状プロットである。
【図12】マグネシウム基複合材料製のイヤフォンの瀑状プロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
本実施例の音声再生装置は、筺体及び該筺体の中に内蔵された音声装置を備える。該音声装置は、イヤフォン、音響装置、携帯電話、ノートブック又はテレビである。本実施例において、前記音声装置は、イヤフォンである。
【0011】
図1を参照すると、本実施例のイヤフォン10は、中空の筺体(図示せず)と、該筺体に内蔵されたスピーカー14と、を備えている。構造により、該イヤフォン10は、インナーイヤー型、カナル型、ヘッドバンド型、ネックバンド型又は耳掛け型である。駆動方式により、該イヤフォン10は、ダイナミック型、圧電型、静電型、バランスド・アーマチュア型、マグネティック型又はクリスタル型である。
【0012】
前記スピーカー14は、電気信号をオーディオ信号に転換できる。前記スピーカー14は、ダイナミック型、コンデンサ型(静電型)、リボン型、イオン型(放電型)、マグネティック型又は圧電型である。本実施例において、前記スピーカー14は、ダイナミック型である。
【0013】
前記筺体の壁の厚さは、0.01mm〜2mmである。前記筺体は、前部12及び後部16を備えている。前記筺体の前部12は、使用者の耳に接触し、複数の孔(図示せず)を有する。前記筺体の後部16は、前記前部12に対向している。本実施例において、前記筺体の前部12は、円形のカバーであり、前記筺体の後部16は、前記筺体の前部12に対応して係合するはち状の基部である。
【0014】
前記筺体の前部12及び後部16の少なくとも一つは、マグネシウム基複合材料からなる。本実施例において、前記筺体の前部12及び後部16は、いずれもマグネシウム基複合材料からなる。該マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料を含む。該ナノ材料は、カーボンナノチューブ、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、炭化チタン、炭化ホウ素、黒鉛のいずれか一種又はその多種の混合物であるが、カーボンナノチューブ又は炭化ケイ素であることが好ましい。前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ又は多層カーボンナノチューブである。前記カーボンナノチューブが単層カーボンナノチューブである場合、直径は0.5nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが二層カーボンナノチューブである場合、直径は1nm〜50nmに設定され、前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである場合、直径は1.5nm〜50nmに設定される。前記マグネシウム基複合材料において、前記ナノ材料の質量パーセントは、0.01%〜10%であり、0.5%〜2%であることが好ましい。前記ナノ材料は、粉末状、ファイバー状又は単結晶ファイバーである。前記ナノ材料はファイバー状である場合、その長さが1nm〜100nmであり、30nmであることが好ましい。前記マグネシウム基材料は、純なマグネシウム又はマグネシウム合金である。ここで、前記マグネシウム合金は、マグネシウムと、Zn、Mn、Al、Zr、Th、Ag、Ca、Liのいずれか一種又は多種の金属とからなることができる。該マグネシウム合金において、マグネシウムの質量パーセントは、80%であり、他の金属の質量パーセントは20%以下である。前記マグネシウム合金のタイプは、AZ91D、AM60、AS41、AS21又はAE42であり、AZ91Dであることが好ましい。
【0015】
前記マグネシウム基複合材料にナノ材料を添加することにより、前記マグネシウム基材料の細化を高め、前記筺体の抗張力及び伸長率を高めることができる。本実施例において、前記マグネシウム基材料は、AZ91Dタイプのマグネシウム合金である。前記マグネシウム基材料に添加したナノ材料は、カーボンナノチューブ又は炭化ケイ素である。図2〜図5には、それぞれ質量パーセントが0.5%、1%、1.5%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料の結晶状態が示されている。この結果から、ナノ材料の質量パーセントが0.5%〜1.5%である範囲において、ナノ材料の質量パーセントが高くなるほど、マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法が小さくなることが分かる。前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子は、前記マグネシウム基複合材料を構成するためのマグネシウム基材料の結晶粒子と比べて、その寸法が60%〜75%より小さくなる。前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法は、100μm〜150μmである。本実施例において、前記マグネシウム基複合材料において、前記ナノ材料はカーボンナノチューブであり、その質量パーセントが0.5%〜2%である。前記マグネシウム基複合材料は、AZ91Dタイプのマグネシウム合金と比べて、その結晶粒子の寸法が60%〜75%より小さくなる。図6を参照すると、前記マグネシウム基複合材料において、前記ナノ材料は炭化ケイ素である場合、マグネシウム粒子と炭化ケイ素粒子との間に明晰な界面が形成されている。
【0016】
図7に示すように、質量パーセントが0.5%、1%、1.5%、2%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料に対して、それぞれ抗張力の実験を行うと、前記ナノ材料の質量パーセントが1.5%である場合、前記マグネシウム基複合材料の抗張力が最大である。図8に示すように、質量パーセントが0.5%、1%、1.5%、2%のナノ材料を含むマグネシウム基複合材料に対して、それぞれ伸長率の実験を行うと、前記ナノ材料の質量パーセントが1.5%である場合、前記マグネシウム基複合材料の伸長率が最大である。従って、前記ナノ材料を添加することにより、前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法を小さくさせ、前記マグネシウム基複合材料の抗張力及び伸長率を高めることができるので、前記ナノ材料を添加したマグネシウム基複合材料を利用して製造したイヤフォンの筺体は、強い強度及び良好な耐用性を有する。
【0017】
以下の表1には、質量パーセントが0%、0.01%、0.5%、1%、1.5%、2%のカーボンナノチューブを含むマグネシウム基複合材料の抗張力及び伸長率が示されている。
【0018】
【表1】
【0019】
前記マグネシウム基複合材料の製造方法は、マグネシウム基材料及びナノ材料を提供する第一ステップと、前記マグネシウム基材料を460℃〜580℃まで加熱して、溶融状態の前記マグネシウム基材料の中に前記ナノ材料を添加して混合物を形成する第二ステップと、前記混合物を620℃〜650℃まで加熱して、前記混合物を超音波処理して、前記ナノ材料を均一に分散させる第三ステップと、前記混合物を650℃〜680℃まで加熱して、成型処理を行う第四ステップと、を含む。前記第二ステップから前記第四ステップまで、温度を次第に高めることにより、前記マグネシウム基複合材料の結晶粒子の寸法を小さくさせることができる。マグネシウム基材料の酸化を防止するために、全ての前記製造工程を不活性ガス又は窒素である保護ガスの雰囲気において行うことが必要である。本実施例において、窒素を利用する。
【0020】
本実施例において、前記第一ステップのマグネシウム基材料はAZ91D合金であり、前記ナノ材料は、カーボンナノチューブ又は炭化ケイ素である。前記第二ステップにおいて、前記溶融状態のマグネシウム基材料を、保護ガスが充満した容器に置く。機械攪拌装置を利用して、前記溶融状態のマグネシウム基材料を攪拌しながら、前記ナノ材料を添加することができる。前記第三ステップにおいて、前記超音波の周波数は、15KHz〜20KHzであり、15KHzであることが好ましい。前記超音波処理の時間は、5分間〜40分間であり、30分間が好ましい。一般に、低い周波数ほどエネルギーが大きくなるので、従来の周波数が48KHzである超音波処理と比べて、本実施例に周波数が15KHz〜20KHzの高エネルギー超音波を利用することにより、前記溶融状態のマグネシウム基材料を強く攪拌し、前記溶融状態のマグネシウム基材料における粒子を激しく運動させることが出来る。従って、前記ナノ材料は、前記溶融状態のマグネシウム基材料の中に均一に分散されることができる。前記第四ステップにおいて、第三ステップで得た混合物を、金型に注入して固化させて、マグネシウム基複合材料の予備体を得ることができる。さらに、該マグネシウム基複合材料の予備体をプレス加工することにより、前記ナノ材料を更に均一に分散させ、優れた強度及び靭性を有するマグネシウム基複合材料を製造することができる。さらに、前記マグネシウム基複合材料をダイカスト加工して、イヤフォンの筺体を製造することができる。
【0021】
以下の表2は、プラスチック製の筺体とマグネシウム基複合材料製の筺体との対比表である。ここで、カーボンナノチューブを前記ナノ材料として、AZ91Dを前記マグネシウム基材料として利用し、前記カーボンナノチューブの質量パーセントを1.5%に設定する。該表2から、AZ91Dを利用したマグネシウム基複合材料製の筺体は、プラスチック製の筺体と比べて、抗張力が高く、密度が高くなるという優れた点がある。
【0022】
【表2】
【0023】
筺体の形状が同じである場合、プラスチック製の筺体、AZ91Dマグネシウム合金製の筺体及びマグネシウム基複合材料製の筺体に対して音響測定すると、この三種の周波応答曲線及び抵抗曲線が大体同じである。しかし、図9に示すように、マグネシウム基複合材料製の筺体の全高調波歪みが一番小さい。詳しく、周波数が20Hz〜50Hzである場合、マグネシウム合金製の筺体と比べて、マグネシウム基複合材料製の筺体の全高調波歪みが10%より小さくなる。
【0024】
図10〜12を参照すると、周波数が20Hz〜30Hzである場合、マグネシウム基複合材料製の筺体のオーディオ振幅が最小であるので、その全高調波歪みが最小である。周波数が100Hz〜600Hzである場合、マグネシウム基複合材料製の筺体の波形は、一番安定であるので、マグネシウム基複合材料製の筺体を利用したイヤフォンの音質が良い。
【符号の説明】
【0025】
10 イヤフォン
12 前部
14 スピーカー
16 後部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネシウム基複合材料からなる音声装置の筺体であり、
前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなることを特徴とする音声装置の筺体。
【請求項2】
筺体及び音声装置を備える音声再生装置において、
前記筺体は、マグネシウム基複合材料からなり、
前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなることを特徴とする音声再生装置。
【請求項1】
マグネシウム基複合材料からなる音声装置の筺体であり、
前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなることを特徴とする音声装置の筺体。
【請求項2】
筺体及び音声装置を備える音声再生装置において、
前記筺体は、マグネシウム基複合材料からなり、
前記マグネシウム基複合材料は、マグネシウム基材料及び該マグネシウム基材料の中に分散したナノ材料からなることを特徴とする音声再生装置。
【図1】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図9】
【公開番号】特開2012−5103(P2012−5103A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279323(P2010−279323)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(598098331)ツィンファ ユニバーシティ (534)
【出願人】(500080546)鴻海精密工業股▲ふん▼有限公司 (1,018)
【Fターム(参考)】
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