説明

食品保存方法および食品保存装置

【課題】従来、野菜の貯蔵について、劣化の原因の一つであるエチレンガスの除去が難しい、また、食品保存空間内のガス成分についてコントロールしにくいため、低酸素濃度で維持することが難しいといった課題がある。
【解決手段】不活性ガス手順として、不活性ガスタンクから不活性ガスが食品保存空間に充填され、一定の時間を経過後、再び不活性ガスタンクに戻り、酸素ガス手順として、酸素ガスタンクから酸素ガスが食品保存空間に充填され、一定の時間を経過後、酸素ガスが酸素ガスタンクに戻る。これを繰り返し行う循環システムである。不活性ガスにより、野菜などの自然呼吸を抑え、オゾン及び高濃度酸素により、エチレンが分解される。更に、高濃度酸素による嫌気性細菌に対する抑制作用とオゾンによる微生物に対する不活性化作用より、食品の長期保存ができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生鮮物を貯蔵する食品保存方法および食品保存装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜の貯蔵方法について、CA貯蔵(Controlled Atmosphere Storage)方法がある。CA貯蔵法は主に酸素(O)濃度2%、二酸化炭素(CO)濃度2%、窒素濃度96%の割合でコントロールし、低温貯蔵する方法である。例えば冷蔵室内に不活性ガスなどを送ることで、室内の酸素量を減らし、酸素と窒素の比率をコントロールし、低温との併用で貯蔵効果を高めようとする方法がある(例えば、非特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
またCA貯蔵法の貯蔵装置での応用として、純度の高い炭素を固形燃料として燃焼させ、二酸化炭素を発生させて充填する方法のものもある(例えば、特許文献4参照)。
【0004】
またCA貯蔵法を応用した例として、酸素除去手段である酸素透過膜(酸素モジュール)を使用し、野菜保存室内酸素濃度を低下させることにより、低酸素濃度と低温且つ高湿度にすることで野菜の長期保存を活用した食品保存方法および食品保存装置もある(例えば、特許文献1、特許文献3参照)。
【0005】
通常大気中の酸素含量は20.9%であり、二酸化炭素の濃度は0.03%である。上記のCA貯蔵法では低温貯蔵の基礎上、食品保存空間(保存庫や冷蔵庫の庫内)の空気成分である酸素、二酸化炭素の濃度を調節することで、貯蔵環境の空気成分を変更させる。酸素濃度を2%〜5%まで低下させ、二酸化炭素の濃度を0〜5%までに上げることで、野菜、果物の鮮度を保持し、水分などの損失を減少させる(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照)。このCA貯蔵方法は単なる低温冷蔵と比べて優れている。
【特許文献1】特開平6−18152号公報
【特許文献2】特開平1−273515号公報
【特許文献3】特開平1−95759号公報
【特許文献4】特開昭63−129922号公報
【非特許文献1】Mecit Hakan Ozerなど著 「園芸学会雑誌(J.Japan.Soc.Hort.Sci)」園芸学会出版、2006年2月Vol.75 No.1P.85−90
【非特許文献2】中田隆行など著 「松下電工技報」松下電工株式会社出版 2008年3月Vol.56No.P46−50
【非特許文献3】瀬尾拓史等著、技術開発ニュースNo.118、2006−1
【非特許文献4】宋大軍等著、分析機械 2003、03
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の非特許文献1に記載されている従来のCA貯蔵法では、エチレン(C)ガスなどを積極的に除去する作用がなかった。エチレンは一般的に植物ホルモンのひとつといわれ、果実の「色づき」「軟化」といった成熟にも関与している。また、エチレンは病原菌の感染や組織が傷害を受けた時にも生成される。更に、エチレンは気体であるため、病害を受けた植物に隣接する他の植物に対しても作用し、防御応答を誘導すると考えられる。すなわち、エチレンは野菜や果実の成熟劣化や鮮度保持機能に関与し、表面の変色や萎びた状態に至る。
【0007】
エチレンの除去は通常はエチレン吸着剤が用いられることが多いが、吸着剤が飽和状態になると効力が減少するという欠点がある。
【0008】
また、前記の特許文献2に記載の従来方法では、エチレンガスが含まれるガスを排出することにしているが、エチレンを他のガス成分から分離することが難しいという課題を有していた。また、エチレンを含むガスを排出する際に周囲環境への影響も懸念される。
【0009】
また、前記の特許文献4に記載されている従来の方法では、高純度の炭素を燃焼させることで二酸化炭素を発生させ、食品保存空間(保存庫や冷蔵庫の庫内)の酸素を低濃度で維持するが、炭素の燃焼で熱が生じるし、食品保存空間(保存庫や冷蔵庫の庫内)内ガス成分をコントロールし難いという課題を有していた。
【0010】
本発明では、前記従来の課題を解決するもので、野菜など生鮮物の鮮度を保持し貯蔵する食品保存方法および食品保存装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記従来の課題を解決するために、本発明の食品保存方法および食品保存装置では、窒素及び酸素の循環システムを用いる。本循環システムは、不活性ガスと酸素ガスを交互に循環させる方法である。不活性ガス例えば窒素(N)は濃度96%〜98%含まれる。酸素ガスにはオゾン(O)が人体に安全である濃度0.01ppm〜0.1ppmが含まれ、酸素(O)が濃度96%〜98%含まれる。また、湿度調整装置により食品保存空間内の相対湿度を90%〜95%なるように保持する。
【0012】
不活性ガス手順として、本循環システムは食品保存空間にある酸素センサー及びマクロコンピュータ、駆動電路からなる感知コントロールシステムによって制御される。次に、食品保存空間のドアが閉まった状態では、不活性ガスタンクから、Nガスが食品保存空間内に入る。その後、食品保存空間内のガス成分はNが96%以上になるように起動される。更に食品保存空間内の相対湿度を90%〜95%なるように湿度調整装置が起動される。不活性ガスを充填させることで、食品特に野菜果物に関して、食品保存空間内を低温、低酸素濃度状況に維持し、野菜などの自然呼吸を抑え、休眠状態を保つことで、鮮度保持できる。
【0013】
酸素ガス手順として、一定時間を経た後に、酸素ガスタンクから、O(0.1ppm以下Oを含む)が食品保存空間内に入り、Nは不活性ガスタンクに吸い込まれる。次に、オゾンを含む酸素ガスを食品保存空間内に充填することで、野菜などから生じるエチレン(C)を酸化させ、野菜などの自己成熟を抑えることができる。その後、オゾンによる微生物不活性化作用及び高濃度酸素の嫌気性微生物に対する抑制効果により食品保存空間内の微生物を死滅することができる。また、本システムでは食品保存空間のドアの開閉状態を自動的に感知し、ガスの入れ替え(循環)が自動的にしかもドアの開閉と連動してコントロールされる。食品保存空間のドアが開かれた場合では、既に酸素と不活性ガスは元のタンクに吸い込まれ、通常の空気に入れ替わるので、殺菌性の高いオゾンの残留や窒素など不活性ガスによる酸素不足状態になることなく安全性が高い。
【発明の効果】
【0014】
本発明の食品保存方法および食品保存装置は、不活性ガスと酸素ガスを交互に循環させること、すなわち不活性ガス手順と酸素ガス手順とを交互に繰り返すことにより、食品特に野菜の鮮度を保持することができる。食品特に野菜や果物に関して、不活性ガスを充填することで、低温、低酸素濃度状況を維持し、野菜などの自然呼吸を抑え、休眠状態を保つことで、鮮度保持をする。また、オゾン(濃度0.01ppm〜0.1ppm)を含む酸素ガスを食品保存空間内に入れることで、野菜などから生じるエチレン(C)を
酸化(分解)させることができ、野菜などの自己成熟を抑えることができる。また、オゾンの微生物に対する不活性化作用及び高濃度酸素の嫌気性微生物に対する抑制効果により食品保存空間(保存庫や冷蔵庫の庫内)内の微生物を抑制することから、食品特に野菜及び果物の鮮度を長期間保持することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
請求項1に記載の発明は、不活性ガスタンクから不活性ガスを冷蔵空間に充填し、一定の時間を経た後に、不活性ガスを前記不活性ガスタンクに戻す不活性ガス手順と、酸素ガスタンクから酸素ガスを冷蔵空間に充填し、一定の時間を経た後に、酸素ガスを前記酸素ガスタンクに戻す酸素ガス手順とを順次繰り返し、不活性ガスと酸素ガスとを前記冷蔵空間へ交互に充填して食品保存環境を制御することにより、不活性ガスとオゾン(濃度0.01ppm〜0.1ppm )を含む酸素ガスを循環させる方法で、野菜から生じるエチレンを酸化し、野菜自身の熟成を抑えることができる。また、次のステップでNを充填することで低酸素状態を維持し、食品特に野菜の呼吸を抑えることができる。更に、高湿度、低温保存を合わせる事で、食品及び野菜、果物を長期保存することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明は、請求項1の記載の発明の前記不活性ガスタンクはガス分離膜と気体排出用ポンプ及び気体吸い込み用ポンプより構成することにより、選択的に窒素を透過させる方法で食品保存空間に高濃度窒素を提供し、食品保存空間の低酸素状態を維持し、食品特に野菜の呼吸を抑えることができる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、請求項1の記載の発明の前記酸素ガスタンクは酸素分離膜と気体排出用ポンプ及び気体吸い込み用ポンプより構成することにより、選択的に酸素を透過させる方法で食品保存空間にオゾン(濃度0.01ppm〜0.1ppm )を含む高濃度酸素を提供し、野菜などから生じるエチレン(C)を酸化させることができ、野菜などの自己成熟を抑えることができる。
【0018】
請求項4に記載の発明は、請求項1の記載の発明の前記制御手段は、酸素濃度センサーあるいは不活性ガス濃度センサーの感知手段に基づいて制御することにより、不活性ガス及び酸素ガスの循環システムを交互に実行する段階で、酸素センサーなどの感知手段によりマイクロコンピュータでコントロールし、システム全体を自動コントロールすることができる。
【0019】
請求項5に記載の発明は、請求項1の記載の発明の冷蔵空間と不活性ガスタンクあるいは酸素ガスタンクの間に除菌手段を設け、通過する気体を前記除菌フィルターで除菌処理することにより、食品保存空間におけるガスの中に浮遊する微生物を除去することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明は、請求項1の記載の発明の湿度制御装置を設け前記冷蔵空間の相対湿度を90%〜95%なるように保持することにより、食品保存空間内の湿度をコントロールする方法で、食品特に野菜などの水分補給あるいは水分の損失を防ぐことができる。
【0021】
請求項7に記載の発明は、請求項2の記載の発明の前記不活性ガスについて、Nが96%〜98%になるように設定することにより、食品特に野菜や果物に関して、低酸素濃度状況を維持し、野菜などの自然呼吸を抑え、休眠状態を保つことで、鮮度保持をする。
【0022】
請求項8に記載の発明は、請求項3の記載の発明の前記酸素ガスについてその成分にはオゾン(O)が0.01ppm〜0.1ppm含まれ、酸素(O)が96%〜98%含まれることにより、食品保存空間内の野菜などから生じるエチレン(C)を酸化
(分解)させ、野菜などの自己成熟を抑え、更に、オゾン及び高濃度酸素により食品保存空間内の微生物を抑制することができる。
【0023】
請求項9に記載の発明は、請求項5に記載の発明の前記除菌フィルターについて、表面に銀、銅など抗菌金属をコーティンーグあるいは内部に前記抗菌金属を含有させたことにより、ガス中に浮遊する微生物を死滅させることで、微生物増殖抑制効果と抗菌効果とを発揮することができる。
【0024】
請求項10に記載の発明は、冷蔵空間と、不活性ガスタンクと、酸素ガスタンクと、制御手段と、前記不活性ガスタンクから前記冷蔵空間への不活性ガスの充填、回収と、前記酸素ガスタンクから前記冷蔵空間への酸素ガスの充填,回収とを交互に繰り返す制御手段と、前記冷蔵空間と前記不活性ガスタンクあるいは前記酸素ガスタンクとの間に設けた除菌手段と、前記冷蔵空間内の湿度を制御する湿度制御装置とを備えたことにより、食品特に野菜や果物に関して、不活性ガスを充填することで、低温、低酸素濃度状況を維持し、野菜などの自然呼吸を抑え、休眠状態を保つことで、鮮度保持をする。また、オゾン(濃度0.01ppm〜0.1ppm)を含む酸素ガスを食品保存空間内に入れることで、野菜などから生じるエチレン(C)を酸化(分解)させることができ、野菜などの自己成熟を抑えることができる。また、オゾンの微生物に対する不活性化作用及び高濃度酸素の嫌気性微生物に対する抑制効果により食品保存空間(保存庫や冷蔵庫の庫内)内の微生物を抑制することから、食品特に野菜及び果物の鮮度を長期間保持することが可能である。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参考しながら説明するが、従来例または先に説明した実施の形態と同一構成については同一の符号を付けして、その詳細な説明は略する。なお、本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における縦断面図である。なお、冷却システムは省略する。
【0027】
図1において、本発明の食品保存方法および食品保存装置での循環システムは、窒素分離膜3aと気体排出用ポンプ3c及び気体吸い込み用ポンプ3dより構成される不活性ガスタンク3と、酸素分離膜4aと気体排出用ポンプ4c及び気体吸い込み用ポンプ4dより構成される酸素ガスタンク4と、除菌フィルター(3b、4b)による除菌手段と、酸素濃度センサー5に依存するコントロール制御手段7と湿度制御装置6とにより構成させる。
【0028】
不活性ガスタンク内ガスは、NあるいはCOから構成される。ガス濃度が96%以上になるように設定する。 酸素ガスタンクのガスはO及びOから構成される。 O濃度は0.1ppm以下(人体に影響がないオゾン濃度は0.1ppm以下である。)で、O濃度は96%以上になるように設定する。
【0029】
以上のように構成された食品保存方法および食品保存装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0030】
不活性ガス手順として、食品保存空間1には果物、野菜2及び他の食品が保存される。食品保存空間のドアが閉まった状態で、冷却が始まると、次に気体排出用ポンプ3cが起動し、不活性ガスタンクから、Nの不活性ガスが食品保存空間1に入る。また、酸素ガスタンク内の気体吸い込み用ポンプ4dの起動により、酸素ガスは酸素ガスタンク4に戻る。
【0031】
次に、冷蔵空間1に設置されている酸素濃度を感知できる酸素濃度センサーの起動により、食品保存空間1内の酸素濃度を4%以下になるまでシステムが循環され、最終的に、食品保存空間1のガスは不活性化ガスになる。更に、その濃度はNが96%〜98%になるように設定される。
【0032】
また、次の手順として、食品保存空間内の相対湿度を90%〜95%なるように湿度制御装置が起動される。
【0033】
尚、コントロール制御における感知手段に関しては、酸素濃度センサーの代わりに不活性ガス濃度センサーを使用することもできる。すなわち、不活性化ガス充填のための気体排出用ポンプ3cと酸素ガスの気体吸い込み用ポンプ4dの運転と停止の判定は酸素濃度センサーで行い、その判定基準は酸素濃度4%以下(不活性ガス濃度96%を超える)の場合は停止、酸素濃度4%を超える(不活性ガス濃度96%以下)場合は運転継続となる。
【0034】
酸素ガス手順として、酸素ガス充填のための気体排出用ポンプ4cと酸素ガスの気体吸い込み用ポンプ3dの運転と停止の判断は酸素濃度センサー(不活性ガス濃度センサー)で行い、その判断基準は酸素濃度96%以上(不活性ガス濃度4%未満)である場合は停止、酸素濃度96%未満(不活性ガス濃度4%以上)の場合は運転継続となる。
【0035】
不活性化ガスが充満された状態が一定時間(2〜5h)を続いた後は、気体排出用ポンプ4cの起動により酸素ガスタンクから、O(0.1ppm以下Oを含む)が食品保存空間1に入り、次の手順として、N及びCOは不活性ガスタンク3に吸い込まれる。また、食品保存空間1内の酸素ガスの充填継続時間は短時間(10分以下)に設定する。
【0036】
次の手順として、食品保存空間のドアが開かれる時では、充填されている不活性ガスは元の不活性ガスタンクに吸い込まれ、酸素ガスに置換される。また、ドアを開けるとき、ドアのハンドルの所のボタン型スイッチを押して点滅が消えるまで待機すると、感知スイッチが起動され、次に気体吸い込み用ポンプ4dが起動された後、酸素ガスも酸素ガスタンクに戻る。食品保存空間内のガス成分は通常の空気成分に置換されるので高い安全性がある。
【0037】
次に、酸素ガスタンクの濃度維持に関して、酸素分離膜4aが使用されることで、酸素濃度を維持することが可能である。その酸素分離膜4aとして、日本ガイシ株式会社電力技術研究所が開発したもの(非特許文献3参照)等がある。酸素分子は、分離膜表面で膜の反対から移動してきた電子と結合して酸素イオンを生成し、生成した酸素イオンは、化学ポテンシャルに従い膜の反対側に移動し、膜の反対側で電子を放出し、再び酸素分子となる。このようにして、混合ガス中から高純度酸素を得ることが出来る。
【0038】
窒素タンクの濃度維持に関して、ガス分離膜(窒素分離膜)3aが使用されることで、窒素濃度を維持することが可能である。その膜式窒素分離装置として、宇部興産等が開発したもの(非特許文献4参照)等がある。この溶解拡散膜の特性として、膜に溶解しやすい酸素は窒素と比較して2.2〜5倍の速度で膜を通過する。この通過する速度の差を利用して酸素と窒素を分離する。
【0039】
本循環システムの不活性ガスあるいは酸素ガスの充填に関するコントロール制御手段7について、以下、図2あるいは図3を図1と合わして説明する。図2で示したように扉スイッチオフ(閉)或は不活性ガス充填開始されると、マイクロコンピュータの指令信号よ
り駆動電路が起動され、気体排出用ポンプ3cが起動される。その後、気体吸い込み用ポンプ4dも起動され、順次酸素濃度センサーも起動される。
【0040】
次に、酸素濃度センサーの起動により、感知された酸素濃度が4%以下になると、図2に点線で示したように、その信号がマイクロコンピュータに到達され、マイクロコンピュータから駆動電路を経て、気体排出用ポンプ3cが止まり、更に気体吸い込み用ポンプ4dも止まる。
【0041】
逆に、酸素濃度センサーより、感知された酸素濃度が4%以下にならなかった場合、実線で示したように、引き続きその信号がマイクロコンピュータに到達され、前記と同じく、気体排出用ポンプ3c及び気体吸い込み用ポンプ4dが回転を続ける。このような方法を用いることで、食品保存空間1における不活性ガスの充填を自動的にコントロールすることができる。
【0042】
前記に述べたように、図1の食品保存空間1に不活性ガスが充填され一定の時間を経た後に、マイクロコンピュータの指令信号より駆動電路が起動され、気体吸い込み用ポンプ3dが起動される。その後、気体排出用ポンプ4cも起動され、順次酸素センサーも起動される。
【0043】
酸素センサーの起動により、感知された酸素濃度が96%であれば、図3に点線で示したように、その信号がマイクロコンピュータに到達され、マイクロコンピュータから駆動電路を経て、気体吸い込み用ポンプ3dが止まり、更に気体排出用ポンプ4cも止まる。
【0044】
逆に、酸素センサーより、感知された酸素濃度が96%にならなかった場合、図3に実線で示したように、その信号がマイクロコンピュータに到達され、前記と同じく、気体吸い込み用ポンプ3d及び気体排出用ポンプ4cが回転を続ける。このような方法で、食品保存空間1における酸素ガスの充填を自動的にコントロールできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
以上のように本発明にかかる食品保存方法および食品保存装置は不活性ガス及び酸素ガスを循環させることで、低温、低酸素保存及びエチレンガスの分解と微生物抑制作用を発揮し、食品特に野菜及び果物の鮮度を長時間保持することが可能となるので、一般家庭用の冷蔵庫のみならず、業務用冷蔵庫や貯蔵庫、大型野菜果実倉庫などにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】主要部の縦断面図
【図2】不活性ガス手順の充填に関するコントロール制御手段の説明用フローチャート
【図3】酸素ガス手順の充填に関するコントロール制御手段の説明用フローチャート
【符号の説明】
【0047】
1 食品保存空間
2 果物、野菜
3 不活性ガスタンク
3a ガス分離膜(窒素分離膜)
3b 除菌手段(除菌フィルター)
3c 気体排出用ポンプ
3d 気体吸い込み用ポンプ
4 酸素ガスタンク
4a 酸素分離膜
4b 除菌手段(除菌フィルター)
4c 気体排出用ポンプ
4d 気体吸い込み用ポンプ
5 酸素濃度センサー
6 湿度制御装置
7 コントロール制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスタンクから不活性ガスを冷蔵空間に充填し、一定の時間を経た後に、不活性ガスを前記不活性ガスタンクに戻す不活性ガス手順と、酸素ガスタンクから酸素ガスを冷蔵空間に充填し、一定の時間を経た後に、酸素ガスを前記酸素ガスタンクに戻す酸素ガス手順とを順次繰り返し、不活性ガスと酸素ガスとを前記冷蔵空間へ交互に充填して食品保存環境を制御する食品保存方法。
【請求項2】
前記不活性ガスタンクはガス分離膜と気体排出用ポンプ及び気体吸い込み用ポンプより構成した請求項1に記載の食品保存方法。
【請求項3】
前記酸素ガスタンクは酸素分離膜と気体排出用ポンプ及び気体吸い込み用ポンプより構成した請求項1に記載の食品保存方法。
【請求項4】
前記制御手段は、酸素濃度センサーあるいは不活性ガス濃度センサーの感知手段に基づいて制御する請求項1に記載の食品保存方法。
【請求項5】
冷蔵空間と不活性ガスタンクあるいは酸素ガスタンクの間に除菌手段を設け、通過する気体を前記除菌フィルターで除菌処理する請求項1に記載の食品保存方法。
【請求項6】
湿度制御装置を設け前記冷蔵空間の相対湿度を90%〜95%なるように保持する請求項1に記載の食品保存方法。
【請求項7】
前記不活性ガスについて、Nが96%〜98%になるように設定する請求項2に記載の食品保存方法。
【請求項8】
前記酸素ガスについてその成分にはオゾン(O)が0.01ppm〜0.1ppm含まれ、酸素(O)が96%〜98%含まれる請求項3に記載の食品保存方法。
【請求項9】
前記除菌フィルターについて、表面に銀、銅など抗菌金属をコーティンーグあるいは内部に前記抗菌金属を含有させた請求項5に記載の食品保存方法。
【請求項10】
冷蔵空間と、不活性ガスタンクと、酸素ガスタンクと、制御手段と、前記不活性ガスタンクから前記冷蔵空間への不活性ガスの充填,回収と、前記酸素ガスタンクから前記冷蔵空間への酸素ガスの充填,回収とを交互に繰り返す制御手段と、前記冷蔵空間と前記不活性ガスタンクあるいは前記酸素ガスタンクとの間に設けた除菌手段と、前記冷蔵空間内の湿度を制御する湿度制御装置とを備えた食品保存装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−213600(P2010−213600A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62335(P2009−62335)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】