首振機構構造体及び内視鏡
【課題】連結ワイヤが不要であり、短筒体の連結が容易な首振機構構造体及びそれを利用した内視鏡を提供する。
【解決手段】並列された2本のワイヤW,Wに、その長手方向に沿って複数個の短筒体10,10,…を挿通し、複数個の短筒体のうち先端にある短筒体のみをワイヤWに固定し、隣接する2つの短筒体のそれぞれの対向する端面11a,11bに、凹部13又は凸部12からなる相互に咬合う咬合構造を形成し、最後尾の短筒体の後方への移動が規制された状態で、2本のワイヤW,Wが、それぞれの隣接する2つの短筒体の咬合せを維持する程度に後方に引張られており、引張られた状態を維持しつつ2本のワイヤW,Wの一方を繰り寄せるとともに他方を繰り出して、それぞれの隣接する短筒体の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体10,10,…全体を首振動作させる。
【解決手段】並列された2本のワイヤW,Wに、その長手方向に沿って複数個の短筒体10,10,…を挿通し、複数個の短筒体のうち先端にある短筒体のみをワイヤWに固定し、隣接する2つの短筒体のそれぞれの対向する端面11a,11bに、凹部13又は凸部12からなる相互に咬合う咬合構造を形成し、最後尾の短筒体の後方への移動が規制された状態で、2本のワイヤW,Wが、それぞれの隣接する2つの短筒体の咬合せを維持する程度に後方に引張られており、引張られた状態を維持しつつ2本のワイヤW,Wの一方を繰り寄せるとともに他方を繰り出して、それぞれの隣接する短筒体の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体10,10,…全体を首振動作させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、首振機構構造体及びそれを利用した内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内視鏡には、隙間をもたして複数個の短筒体を連結ワイヤにより連結し、短筒体に挿通した首振りワイヤを引っ張ることによって首振り可能にした首振機構が設けられている。
特許文献1では、短筒体(首振節輪)の連結のために2本の連結ワイヤを設け、レーザー溶接にて連結ワイヤに連結している。
特許文献2では、短筒体(湾曲駒)の連結のために3本の連結ワイヤを設け、湾曲駒をリベットによって回動自在に連結している(段落0013〜0016)。
特許文献3では、短筒体(アングルリング)を形状記憶合金で形成し、ピン等で連結している(段落0026〜0027)。
特許文献4では、首振りワイヤ(アングル操作ワイヤ)を螺線状に複数回巻いて筒状体を形成し、この筒状体を内視鏡の先端硬性部の後部に嵌めて固着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−253387号公報
【特許文献2】特開平5−184526号公報
【特許文献3】特開平5−317236号公報
【特許文献4】特開平6−269399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、連結ワイヤが不要であり、短筒体の連結が容易な首振機構構造体及びそれを利用した内視鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、並列された2本のワイヤに、その長手方向に沿って複数個の短筒体を挿通し、前記複数個の短筒体のうち先端にある短筒体のみを前記ワイヤに固定し、隣接する2つの短筒体のそれぞれの対向する端面に、凹部又は凸部からなる相互に咬合う咬合構造を形成し、最後尾の短筒体の後方への移動が規制された状態で、前記2本のワイヤが、それぞれの隣接する2つの短筒体の咬合せを維持する程度に後方に引張られており、引張られた状態を維持しつつ前記2本のワイヤの一方を繰り寄せるとともに他方を繰り出して、それぞれの隣接する短筒体の中心軸どうしを相互に傾けることで、前記複数個の短筒体全体を首振動作させる首振機構構造体を提供する。
この首振機構構造体によれば、複数個の短筒体に形成した凹部又は凸部からなる咬合構造によって短筒体どうしの揺動の支点が設定されるので、短筒体どうしの接合に連結ワイヤ、ピン、レーザー溶接等が不要になり、ワイヤに短筒体を挿通するだけで容易に組み立てが可能になる。連結ワイヤ等を省略できるので、短筒体の構造をより単純にすることが可能であり、短筒体の内部に光ファイバ等の部材を挿通するスペースをより大きく確保することができる。隣接する短筒体間の距離が規制されることにより、咬合構造を維持することができ、繰り返しの揺動に耐久できる首振機構構造体を構成することができる。
【0006】
本発明の首振機構構造体は、前記短筒体の端面から突出する凸部の長さが、前記短筒体の端面から窪む凹部の深さより大きいことが好ましい。
この首振機構構造体によれば、隣接する2つの短筒体の内外径が同程度でも、ワイヤの長手方向に沿った凸部の長さと凹部の深さとの差に相当して、首振動作に必要な隙間を確保することができる。
【0007】
本発明の首振機構構造体は、前記複数の短筒体のそれぞれが、一つの端面に前記凸部を有し、その反対側の端面に前記凹部を有することが好ましい。
この首振機構構造体によれば、ワイヤに短筒体を挿通する際、先端から後方に向けて、凸部と凹部の向きを揃えて連結することができるので、組み立てが容易になる。凸部と凹部が各短筒体に設けられることにより、複数の短筒体の形状及び寸法を同一にして首振機構構造体を構成し、廉価にすることもできる。
【0008】
本発明の首振機構構造体は、前記凸部及び前記凹部の厚みを短筒体の厚みと同じにすることが好ましい。
この首振機構構造体によれば、咬合構造を短筒体の厚みの範囲内で形成することができ、短筒体の内部に光ファイバ等の部材を挿通するスペースを最大限確保することができる。
【0009】
本発明の首振機構構造体は、前記凸部の長さが、首振機構構造体の先端から後部に向けて段階的に小さくなっていることが好ましい。
この首振機構構造体によれば、ワイヤの操作による力が先端に伝わりやすくなり、首振機構構造体の先端部を曲げやすくすることができる。
【0010】
本発明の首振機構構造体は、前記凸部の形状が半円形または三角形であることが好ましい。
この首振機構構造体によれば、凸部を基本的な形状とすることで、短筒体の寸法が小さくても容易に凸部を形成することができる。
【0011】
また、本発明は、上記の首振機構構造体を備える内視鏡を提供する。
この内視鏡によれば、上記の首振機構構造体を先端部の首振に利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連結ワイヤが不要であり、短筒体の連結が容易な首振機構構造体及びそれを利用した内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図2】(a)は、図1(a)の短筒体を示す平面図であり、(b)は、図1(a)の短筒体を示す斜視図である。
【図3】(a)は、図1の首振機構構造体を利用した内視鏡の模式図であり、(b)は、内視鏡の先端部におけるアングル角の説明図である。
【図4】図3(a)のS−S線に沿う断面図である。
【図5】短筒体の凸部及び凹部の表面を平滑にする例の説明図である。
【図6】(a)〜(d)は、首振機構構造体における短筒体の組み合わせを例示する側面図である。
【図7】(a)は、本発明の第2実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図8】(a)は、本発明の第3実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図9】(a)は、本発明の第4実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図10】(a)は、図9(a)の短筒体を示す平面図であり、(b)は、図9(a)の短筒体を示す斜視図である。
【図11】短筒体の凸部の長さを先端から後部に向けて段階的に小さくした例を示す側面図である。
【図12】(a)〜(c)は、隣接する短筒体間における凸部と凹部との咬合構造を例示する説明図である。
【図13】首振機構構造体の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図3(a)に、本発明の首振機構構造体を用いた内視鏡の一例を示す。この内視鏡5は、操作部3と、操作部3から突設されて体内等に挿入される管状の挿入部2と、挿入部2の先端において観察対象物に向けられる先端部1aを首振り可能に支持する首振部1を備えている。首振部1の内部には、並列された2本のワイヤW,Wに、その長手方向に沿って複数個の短筒体10を挿通した構成の首振機構構造体4が設けられている。
【0015】
図2(a)に示すように、短筒体10の本体を構成する筒状本体部11は、略円筒状である。筒状本体部11の内面には、首振ワイヤWが挿通される孔15を有する膨出部14を複数個有する。図示例では、2本のワイヤWの挿通位置に対応する約180°の間隔で、2つの孔15,15が配置されている。ワイヤWの側面は、孔15の内面に固定されることなく、スライド移動可能に挿通される。短筒体10は、ステンレス等の金属や、成形可能な合成樹脂等、適宜の材質により構成可能である。
また、図4に示すように、短筒体10の内部には、例えばイメージファイバやライトガイド等の各種線状部材7,8,9が挿通される。各種線状部材7,8,9は、首振機構構造体4の長手方向に延在して配置されるので、これらを配置するスペースを確保する観点から、各短筒体10の内径(筒状本体部11の内径)は略一定であることが好ましい。
【0016】
図1(a)及び図2(b)に示すように、短筒体10は、筒状本体部11の一方の端面11aにその端面11aから突出する凸部12を、他方の端面11bにその端面11bから窪む凹部13を有する。これらの凸部12及び凹部13は、図1(b)に示すように、隣接する短筒体10,10が互いに対向する端面11a,11bにそれぞれ設けられ、凸部12と凹部13が相互に咬合う咬合構造を形成している。また、図1(c)に示すように、隣接する短筒体10,10どうしが、凸部12と凹部13による咬合構造を維持しながら相互に首振方向に揺動可能である。
【0017】
図3(a)に示すように、複数個の短筒体10のうち先端にある短筒体10aのみをワイヤWに固定し、最先端の短筒体10a以外の短筒体10は、ワイヤWに対して自由にされている。短筒体10aとワイヤWの固定方法は、特に限定されるものではなく、孔15の内部でワイヤWを接着剤、はんだ付け、溶接等により固定する方法、短筒体10aの先端面から突出するワイヤWに抜け止め加工を施したり、短筒体10aの先端側にワイヤ保持体(図示せず)を設けたりして、ワイヤWが孔15から抜けないようにする方法、図13に示すように、先端にある短筒体10aに挿通したワイヤWにおいて、短筒体10aの前に、ワイヤWに固定したコマ16を設け、ワイヤWの抜け止めとする方法などが挙げられる。コマ16は、短筒体10aの抜け止め部であればよく、ワイヤWへの固定方法も、接着、溶接、カシメなど、特に限定されない。
【0018】
ワイヤW,Wは、先端側では最先端の短筒体10aに固定されるとともに、後方では例えば滑車3bに掛けられている。最先端の短筒体10aから滑車3bまでの長さが、ワイヤWの通常の長さ(外力の加わっていない状態での長さ)より長くなるように短筒体10aや滑車3bが固定され、ワイヤWのテンションが維持され、最先端の短筒体10aが後方に引っ張られる。また、最後尾の短筒体10bは、その後方に導中管2aが存在することにより短筒体10bの後方への移動(先端にある短筒体10aからの距離)が規制されている。これにより、隣接する短筒体10,10間の距離が制限されるので、最先端の短筒体10aから最後尾の短筒体10bまで、すべての短筒体10,10,…の凸部12と凹部13の咬合構造が維持される。
【0019】
最後尾の短筒体10bの後方への移動を規制する構成としては、図13に示すように、ワイヤWにコマ17を固定し、このコマ17と最後尾の短筒体10bの後端面との間にバネ18を設ける構成を採用することも可能である。この場合、首振部1の後述する首振り角度αを大きくすることが可能となり、好ましい。コマ17は、短筒体10bを前方へ付勢するバネ18の圧力を受ける、バネ受け部であればよく、ワイヤWへの固定方法も、接着、溶接、カシメなど、特に限定されない。図示のバネ18は圧縮コイルバネであるが、短筒体を前方へ付勢可能であれば、他種のバネも制限なく使用可能である。
【0020】
導中管2aは、例えば金属や樹脂等からなる帯状または棒状の部材を螺旋状に曲げて形成することができる。導中管2aは、挿入部2の長手方向に対して交差する方向へ湾曲可能な可撓性を有することが好ましい。また、導中管2aがバネのような伸縮性を有して、短筒体10bを先端側へ付勢しても良い。挿入部2は、例えば血管や腸管等の周囲の形状に追随して任意に湾曲変形が可能である。首振機構構造体4や導中管2aの周囲は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド等の合成樹脂からなるチューブ状のシース6により被覆される。シース6内に首振機構構造体4を配置しやすい観点から、各短筒体10の外径(筒状本体部11の外径)は略一定であることが好ましい。
【0021】
首振部1の後方側では、2本のワイヤW,Wは並行して挿入部2の導中管2a内に挿通され、操作部3の滑車3bに接続される。首振部1及び導中管2aの内径に合わせて、ワイヤ支持部3cを通じてワイヤW,Wの間隔が変更される。
ワイヤW,Wは、滑車3bの周囲で接続されてもよい。あるいは1本に連続したワイヤを用いて、その中間部が滑車3bに掛けられ、該ワイヤの両端部がそれぞれ最先端の短筒体10aに固定されるように構成してもよい。これにより、一方のワイヤWを後方へ繰り寄せると、他方のワイヤWを前方に繰り出すことができる。
滑車3bの軸に連結された回転ハンドル3aにより、図3(a)に示す中立状態(首振部1が直線状である状態)からどちらか一方に揺動させれば、どちらか一方のワイヤWが操作部3に引っ張られ、図3(b)に示すように、首振部1が直線状態から挿入部2に対してどちらか一方側に湾曲して首振状態となる。首振状態の湾曲方向は、いずれのワイヤWを引っ張るかにより、左右いずれにも首振可能である。
例えば、図3(a)の滑車3bを時計回りに回すと、右側のワイヤWが滑車3bに向けて後方に引っ張られ、左側のワイヤWが滑車3bから先端側に押し出されることにより、最先端の短筒体10aのワイヤ固定部が右側では後方に引っ張られて、図3(b)の実線に示すように右側に首振り動作をする。また、滑車3bを反時計回りに回すと図3(b)の二点鎖線に示すように左側に首振り動作をする。
なお、ワイヤWの操作手段は、図示した手動ハンドルのほか、ボタン操作や機械制御等、特に限定されることなく、種々の手段を採用することが可能である。
図3(b)に示す首振り半径R、首振り角度α、首振部1の外径Dは、内視鏡5の観察対象部位の寸法や形状などにも依存して適宜設定でき、特に限定されるものではないが、例えば人体内に適用される医療用の内視鏡では、角度αは10〜150°、外径Dがφ1〜5mm程度とすることもできる。
【0022】
首振部1の首振状態は、図1(c)に示すように、隣接する短筒体10間に形成される凸部12と凹部13との咬合構造が支点を構成し、凹部13内で凸部12が揺動して、隣接する短筒体10の中心軸どうしを相互に傾けることにより、実現される。凹部13内で凸部12が揺動可能とするためには、凹部13がその内部で凸部12を揺動させる余裕を有する程度に大きく、かつ中立状態でも首振状態でも隣接する短筒体10間に隙間を有するように、凸部12の長さAが、凹部13の深さBより大きくされている(A>B)。
本実施形態では、凸部12は、突出部12aの先端に半円形に形成され、凹部13は凸部12を収容可能な半円形に形成され、凹部13の内径Rbが、凸部12の外径Raより大きくされている(Ra<Rb)。つまり、凸部12の先端部の曲率半径が、凹部13の曲率半径より若干小さくされている。また、半円形の代わりに、中心角が180°未満の円弧状とすることもできる。
揺動の際、半円形の凸部12の先端部は、凹部13内で一定位置に固定される必要はなく、力の関係により、円弧面に沿って横ズレしてもよい。
【0023】
本実施形態の首振機構構造体4は、個々の短筒体10をワイヤWに固定する必要がないので、ワイヤWに順次挿通した短筒体10の凸部12と凹部13とを咬合わせるだけで、容易に組み立てることができる。複数個の短筒体10に形成した凸部12と凹部13との咬合構造によって短筒体10どうしの揺動の支点が設定されるので、連結ワイヤなしで複数個の短筒体を容易に連結することが可能になる。
また、それぞれの短筒体10が、一つの端面11aに凸部12を、その反対側の端面11bに凹部13を有するので、先端から後方に向けて、凸部12と凹部13の向きを揃えて連結することができ、組み立てが容易になる。
【0024】
凸部12と凹部13の向きは、図6(a)または(c)に示すように、後側の短筒体10の凸部12と、前側の短筒体10の凹部13との咬合構造としてもよい。また、図6(b)または(d)に示すように、前側の短筒体10の凸部12と、後側の短筒体10の凹部13の咬合構造としてもよい。図6(a)または(b)に示すように、先端または最後尾にある短筒体としては、凸部12のみを有する短筒体10Aを用いたり、凹部13のみを有する短筒体10Bを用いたりしてもよい。
【0025】
図2に示すように、凸部12の厚みt2及び凹部13の厚みt3を短筒体10の筒状本体部11の厚みt1と同じにしている。これにより、凸部12と凹部13との咬合構造を短筒体10の厚みt1の範囲内で形成することができ、短筒体10の内部に光ファイバ等の部材を挿通するスペースを最大限確保することができる。
図5に示すように、咬合構造において凸部12と凹部13とが互いに接触する面は、平滑処理、耐摩耗処理などの表面処理を施すことが好ましい。これにより、凸部12と凹部13との咬合構造の耐久性が向上し、揺動が円滑になる。
【0026】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0027】
図7に示す首振機構構造体の短筒体20は、筒状本体部21の一つの端面21aに三角形状の凸部22を形成し、その反対側の端面21bに三角形状の凹部23を形成している。凹部23内で凸部22が揺動可能となるように、凹部23の角度θbが、凸部22の角度θaより大きくされている(θa<θb)。また、中立状態でも、首振状態でも、隣接する短筒体20どうしが隙間を有するように、凸部22を含む突出部22aの長さAが、凹部23の深さBより大きくされている(A>B)。上述したようにワイヤWを操作すると、図7(c)に示すように、隣接する短筒体20,20の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体20全体を首振動作させることができる。
凸部や凹部の形状が半円形や三角形などの単純な形状であると、寸法が小さくても容易に凸部や凹部を形成することができ、好ましい。
【0028】
図8に示す首振機構構造体の短筒体30は、筒状本体部31の一つの端面31aに形成された凸部32が半楕円形であり、その反対側の端面31bに形成された凹部33は半円形である。凸部32の半楕円形は、楕円(短半径a<長半径b)の長軸が凸部32の突出方向に延び、凹部33の半径cが、長半径bより大きくされている(a<b<c)。また、中立状態でも、首振状態でも、隣接する短筒体30どうしが隙間を有するように、凸部32を含む突出部32aの長さAが、凹部33の深さBより大きくされている(A>B)。上述したようにワイヤWを操作すると、図8(c)に示すように、隣接する短筒体30,30の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体30全体を首振動作させることができる。
楕円は、短軸の両端より長軸の両端で曲率が大きい(曲率半径が小さい)ため、本実施形態のように長軸方向の端部を凸部32の形状とすることにより、同程度の寸法の半円形に比べて凸部32の先端における曲率半径が小さく、揺動角度の大きい咬合構造を構成することができる。
【0029】
図9及び図10に示す首振機構構造体の短筒体100は、筒状本体部101の一つの端面101a全体が凸部102とされ、その反対側の端面101b全体が凹部103とされている。上述したようにワイヤWを操作すると、図9(c)に示すように、隣接する短筒体100,100の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体100全体を首振動作させることができる。
本実施形態の場合、凸部102及び凹部103は三角形状であり、凹部103内で凸部102が揺動可能となるように、凹部103の角度θbが、凸部102の角度θaより大きくされている(θa<θb)。また、図10に示すように、凸部102及び凹部103の稜線は、ワイヤWが挿通される膨出部104の孔105とは約90°ずれた位置に形成されている。この場合、凸部102が凹部103と咬合構造を構成するため、凸部を平面に突き合わせた場合に比べて、揺動時に支点の位置が安定するので、個々の短筒体100をワイヤWに固定しなくても、凸部102と凹部103の位置がずれるような捩れの発生を防止することができる。
【0030】
図11に示す首振機構構造体の短筒体10は、凸部12の長さA1、A2、A3、・・・が、首振機構構造体の先端から後部に向けて(図11では左から右に向かって)段階的に小さくなっている。この首振機構構造体によれば、揺動の支点となる凸部12の先端と、短筒体10の重心との距離が、先端側ほど大きくなることにより、ワイヤWの操作による力が先端側の短筒体に伝わりやすくなり、首振機構構造体の先端部を曲げやすくすることができる。すべての短筒体10の凸部12の長さを1個ずつ順に小さくしてもよい(A1>A2>A3>・・・)。また、先端側の1個または数個の短筒体10の凸部12の長さを他の短筒体10の凸部12の長さより大きくしてあれば、それより後ろ側にある他の短筒体10の凸部12の長さは一定にしてもよい。
【0031】
図12には、隣接する短筒体間における凸部と凹部との咬合構造の各種組み合わせを例示する。
図12(a)の場合、図1と同様に、凸部12と凹部13の向きがすべて同一である。
図12(b)の場合、両端面に凸部12を有する短筒体120と、両端面に凹部13を有する短筒体130とを交互に組み合わせている。
図12(c)の場合、先端側の端面に凸部12及び凹部13を有し、後方の端面にも凸部12及び凹部13を有する短筒体140を用いている。
【符号の説明】
【0032】
W…ワイヤ、1…首振部(アングル部)、2…挿入部、3…操作部、4…首振機構構造体、5…内視鏡、10,20,30,100…短筒体(リング)、11,21,31,101…筒状本体部、11a,21a,31a,101a…凸部を有する端面、11b,21b,31b,101b…凹部を有する端面、12,22,32,102…凸部、13,23,33,103…凹部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、首振機構構造体及びそれを利用した内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の内視鏡には、隙間をもたして複数個の短筒体を連結ワイヤにより連結し、短筒体に挿通した首振りワイヤを引っ張ることによって首振り可能にした首振機構が設けられている。
特許文献1では、短筒体(首振節輪)の連結のために2本の連結ワイヤを設け、レーザー溶接にて連結ワイヤに連結している。
特許文献2では、短筒体(湾曲駒)の連結のために3本の連結ワイヤを設け、湾曲駒をリベットによって回動自在に連結している(段落0013〜0016)。
特許文献3では、短筒体(アングルリング)を形状記憶合金で形成し、ピン等で連結している(段落0026〜0027)。
特許文献4では、首振りワイヤ(アングル操作ワイヤ)を螺線状に複数回巻いて筒状体を形成し、この筒状体を内視鏡の先端硬性部の後部に嵌めて固着させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−253387号公報
【特許文献2】特開平5−184526号公報
【特許文献3】特開平5−317236号公報
【特許文献4】特開平6−269399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、連結ワイヤが不要であり、短筒体の連結が容易な首振機構構造体及びそれを利用した内視鏡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するため、本発明は、並列された2本のワイヤに、その長手方向に沿って複数個の短筒体を挿通し、前記複数個の短筒体のうち先端にある短筒体のみを前記ワイヤに固定し、隣接する2つの短筒体のそれぞれの対向する端面に、凹部又は凸部からなる相互に咬合う咬合構造を形成し、最後尾の短筒体の後方への移動が規制された状態で、前記2本のワイヤが、それぞれの隣接する2つの短筒体の咬合せを維持する程度に後方に引張られており、引張られた状態を維持しつつ前記2本のワイヤの一方を繰り寄せるとともに他方を繰り出して、それぞれの隣接する短筒体の中心軸どうしを相互に傾けることで、前記複数個の短筒体全体を首振動作させる首振機構構造体を提供する。
この首振機構構造体によれば、複数個の短筒体に形成した凹部又は凸部からなる咬合構造によって短筒体どうしの揺動の支点が設定されるので、短筒体どうしの接合に連結ワイヤ、ピン、レーザー溶接等が不要になり、ワイヤに短筒体を挿通するだけで容易に組み立てが可能になる。連結ワイヤ等を省略できるので、短筒体の構造をより単純にすることが可能であり、短筒体の内部に光ファイバ等の部材を挿通するスペースをより大きく確保することができる。隣接する短筒体間の距離が規制されることにより、咬合構造を維持することができ、繰り返しの揺動に耐久できる首振機構構造体を構成することができる。
【0006】
本発明の首振機構構造体は、前記短筒体の端面から突出する凸部の長さが、前記短筒体の端面から窪む凹部の深さより大きいことが好ましい。
この首振機構構造体によれば、隣接する2つの短筒体の内外径が同程度でも、ワイヤの長手方向に沿った凸部の長さと凹部の深さとの差に相当して、首振動作に必要な隙間を確保することができる。
【0007】
本発明の首振機構構造体は、前記複数の短筒体のそれぞれが、一つの端面に前記凸部を有し、その反対側の端面に前記凹部を有することが好ましい。
この首振機構構造体によれば、ワイヤに短筒体を挿通する際、先端から後方に向けて、凸部と凹部の向きを揃えて連結することができるので、組み立てが容易になる。凸部と凹部が各短筒体に設けられることにより、複数の短筒体の形状及び寸法を同一にして首振機構構造体を構成し、廉価にすることもできる。
【0008】
本発明の首振機構構造体は、前記凸部及び前記凹部の厚みを短筒体の厚みと同じにすることが好ましい。
この首振機構構造体によれば、咬合構造を短筒体の厚みの範囲内で形成することができ、短筒体の内部に光ファイバ等の部材を挿通するスペースを最大限確保することができる。
【0009】
本発明の首振機構構造体は、前記凸部の長さが、首振機構構造体の先端から後部に向けて段階的に小さくなっていることが好ましい。
この首振機構構造体によれば、ワイヤの操作による力が先端に伝わりやすくなり、首振機構構造体の先端部を曲げやすくすることができる。
【0010】
本発明の首振機構構造体は、前記凸部の形状が半円形または三角形であることが好ましい。
この首振機構構造体によれば、凸部を基本的な形状とすることで、短筒体の寸法が小さくても容易に凸部を形成することができる。
【0011】
また、本発明は、上記の首振機構構造体を備える内視鏡を提供する。
この内視鏡によれば、上記の首振機構構造体を先端部の首振に利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、連結ワイヤが不要であり、短筒体の連結が容易な首振機構構造体及びそれを利用した内視鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)は、本発明の第1実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図2】(a)は、図1(a)の短筒体を示す平面図であり、(b)は、図1(a)の短筒体を示す斜視図である。
【図3】(a)は、図1の首振機構構造体を利用した内視鏡の模式図であり、(b)は、内視鏡の先端部におけるアングル角の説明図である。
【図4】図3(a)のS−S線に沿う断面図である。
【図5】短筒体の凸部及び凹部の表面を平滑にする例の説明図である。
【図6】(a)〜(d)は、首振機構構造体における短筒体の組み合わせを例示する側面図である。
【図7】(a)は、本発明の第2実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図8】(a)は、本発明の第3実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図9】(a)は、本発明の第4実施形態に係る首振機構構造体の短筒体を示す側面図であり、(b)は、(a)の首振機構構造体における短筒体の連結状態を示す側面図であり、(c)は、(a)の首振機構構造体を湾曲させた状態を示す側面図である。
【図10】(a)は、図9(a)の短筒体を示す平面図であり、(b)は、図9(a)の短筒体を示す斜視図である。
【図11】短筒体の凸部の長さを先端から後部に向けて段階的に小さくした例を示す側面図である。
【図12】(a)〜(c)は、隣接する短筒体間における凸部と凹部との咬合構造を例示する説明図である。
【図13】首振機構構造体の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、好適な実施の形態に基づき、図面を参照して本発明を説明する。
図3(a)に、本発明の首振機構構造体を用いた内視鏡の一例を示す。この内視鏡5は、操作部3と、操作部3から突設されて体内等に挿入される管状の挿入部2と、挿入部2の先端において観察対象物に向けられる先端部1aを首振り可能に支持する首振部1を備えている。首振部1の内部には、並列された2本のワイヤW,Wに、その長手方向に沿って複数個の短筒体10を挿通した構成の首振機構構造体4が設けられている。
【0015】
図2(a)に示すように、短筒体10の本体を構成する筒状本体部11は、略円筒状である。筒状本体部11の内面には、首振ワイヤWが挿通される孔15を有する膨出部14を複数個有する。図示例では、2本のワイヤWの挿通位置に対応する約180°の間隔で、2つの孔15,15が配置されている。ワイヤWの側面は、孔15の内面に固定されることなく、スライド移動可能に挿通される。短筒体10は、ステンレス等の金属や、成形可能な合成樹脂等、適宜の材質により構成可能である。
また、図4に示すように、短筒体10の内部には、例えばイメージファイバやライトガイド等の各種線状部材7,8,9が挿通される。各種線状部材7,8,9は、首振機構構造体4の長手方向に延在して配置されるので、これらを配置するスペースを確保する観点から、各短筒体10の内径(筒状本体部11の内径)は略一定であることが好ましい。
【0016】
図1(a)及び図2(b)に示すように、短筒体10は、筒状本体部11の一方の端面11aにその端面11aから突出する凸部12を、他方の端面11bにその端面11bから窪む凹部13を有する。これらの凸部12及び凹部13は、図1(b)に示すように、隣接する短筒体10,10が互いに対向する端面11a,11bにそれぞれ設けられ、凸部12と凹部13が相互に咬合う咬合構造を形成している。また、図1(c)に示すように、隣接する短筒体10,10どうしが、凸部12と凹部13による咬合構造を維持しながら相互に首振方向に揺動可能である。
【0017】
図3(a)に示すように、複数個の短筒体10のうち先端にある短筒体10aのみをワイヤWに固定し、最先端の短筒体10a以外の短筒体10は、ワイヤWに対して自由にされている。短筒体10aとワイヤWの固定方法は、特に限定されるものではなく、孔15の内部でワイヤWを接着剤、はんだ付け、溶接等により固定する方法、短筒体10aの先端面から突出するワイヤWに抜け止め加工を施したり、短筒体10aの先端側にワイヤ保持体(図示せず)を設けたりして、ワイヤWが孔15から抜けないようにする方法、図13に示すように、先端にある短筒体10aに挿通したワイヤWにおいて、短筒体10aの前に、ワイヤWに固定したコマ16を設け、ワイヤWの抜け止めとする方法などが挙げられる。コマ16は、短筒体10aの抜け止め部であればよく、ワイヤWへの固定方法も、接着、溶接、カシメなど、特に限定されない。
【0018】
ワイヤW,Wは、先端側では最先端の短筒体10aに固定されるとともに、後方では例えば滑車3bに掛けられている。最先端の短筒体10aから滑車3bまでの長さが、ワイヤWの通常の長さ(外力の加わっていない状態での長さ)より長くなるように短筒体10aや滑車3bが固定され、ワイヤWのテンションが維持され、最先端の短筒体10aが後方に引っ張られる。また、最後尾の短筒体10bは、その後方に導中管2aが存在することにより短筒体10bの後方への移動(先端にある短筒体10aからの距離)が規制されている。これにより、隣接する短筒体10,10間の距離が制限されるので、最先端の短筒体10aから最後尾の短筒体10bまで、すべての短筒体10,10,…の凸部12と凹部13の咬合構造が維持される。
【0019】
最後尾の短筒体10bの後方への移動を規制する構成としては、図13に示すように、ワイヤWにコマ17を固定し、このコマ17と最後尾の短筒体10bの後端面との間にバネ18を設ける構成を採用することも可能である。この場合、首振部1の後述する首振り角度αを大きくすることが可能となり、好ましい。コマ17は、短筒体10bを前方へ付勢するバネ18の圧力を受ける、バネ受け部であればよく、ワイヤWへの固定方法も、接着、溶接、カシメなど、特に限定されない。図示のバネ18は圧縮コイルバネであるが、短筒体を前方へ付勢可能であれば、他種のバネも制限なく使用可能である。
【0020】
導中管2aは、例えば金属や樹脂等からなる帯状または棒状の部材を螺旋状に曲げて形成することができる。導中管2aは、挿入部2の長手方向に対して交差する方向へ湾曲可能な可撓性を有することが好ましい。また、導中管2aがバネのような伸縮性を有して、短筒体10bを先端側へ付勢しても良い。挿入部2は、例えば血管や腸管等の周囲の形状に追随して任意に湾曲変形が可能である。首振機構構造体4や導中管2aの周囲は、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリアミド等の合成樹脂からなるチューブ状のシース6により被覆される。シース6内に首振機構構造体4を配置しやすい観点から、各短筒体10の外径(筒状本体部11の外径)は略一定であることが好ましい。
【0021】
首振部1の後方側では、2本のワイヤW,Wは並行して挿入部2の導中管2a内に挿通され、操作部3の滑車3bに接続される。首振部1及び導中管2aの内径に合わせて、ワイヤ支持部3cを通じてワイヤW,Wの間隔が変更される。
ワイヤW,Wは、滑車3bの周囲で接続されてもよい。あるいは1本に連続したワイヤを用いて、その中間部が滑車3bに掛けられ、該ワイヤの両端部がそれぞれ最先端の短筒体10aに固定されるように構成してもよい。これにより、一方のワイヤWを後方へ繰り寄せると、他方のワイヤWを前方に繰り出すことができる。
滑車3bの軸に連結された回転ハンドル3aにより、図3(a)に示す中立状態(首振部1が直線状である状態)からどちらか一方に揺動させれば、どちらか一方のワイヤWが操作部3に引っ張られ、図3(b)に示すように、首振部1が直線状態から挿入部2に対してどちらか一方側に湾曲して首振状態となる。首振状態の湾曲方向は、いずれのワイヤWを引っ張るかにより、左右いずれにも首振可能である。
例えば、図3(a)の滑車3bを時計回りに回すと、右側のワイヤWが滑車3bに向けて後方に引っ張られ、左側のワイヤWが滑車3bから先端側に押し出されることにより、最先端の短筒体10aのワイヤ固定部が右側では後方に引っ張られて、図3(b)の実線に示すように右側に首振り動作をする。また、滑車3bを反時計回りに回すと図3(b)の二点鎖線に示すように左側に首振り動作をする。
なお、ワイヤWの操作手段は、図示した手動ハンドルのほか、ボタン操作や機械制御等、特に限定されることなく、種々の手段を採用することが可能である。
図3(b)に示す首振り半径R、首振り角度α、首振部1の外径Dは、内視鏡5の観察対象部位の寸法や形状などにも依存して適宜設定でき、特に限定されるものではないが、例えば人体内に適用される医療用の内視鏡では、角度αは10〜150°、外径Dがφ1〜5mm程度とすることもできる。
【0022】
首振部1の首振状態は、図1(c)に示すように、隣接する短筒体10間に形成される凸部12と凹部13との咬合構造が支点を構成し、凹部13内で凸部12が揺動して、隣接する短筒体10の中心軸どうしを相互に傾けることにより、実現される。凹部13内で凸部12が揺動可能とするためには、凹部13がその内部で凸部12を揺動させる余裕を有する程度に大きく、かつ中立状態でも首振状態でも隣接する短筒体10間に隙間を有するように、凸部12の長さAが、凹部13の深さBより大きくされている(A>B)。
本実施形態では、凸部12は、突出部12aの先端に半円形に形成され、凹部13は凸部12を収容可能な半円形に形成され、凹部13の内径Rbが、凸部12の外径Raより大きくされている(Ra<Rb)。つまり、凸部12の先端部の曲率半径が、凹部13の曲率半径より若干小さくされている。また、半円形の代わりに、中心角が180°未満の円弧状とすることもできる。
揺動の際、半円形の凸部12の先端部は、凹部13内で一定位置に固定される必要はなく、力の関係により、円弧面に沿って横ズレしてもよい。
【0023】
本実施形態の首振機構構造体4は、個々の短筒体10をワイヤWに固定する必要がないので、ワイヤWに順次挿通した短筒体10の凸部12と凹部13とを咬合わせるだけで、容易に組み立てることができる。複数個の短筒体10に形成した凸部12と凹部13との咬合構造によって短筒体10どうしの揺動の支点が設定されるので、連結ワイヤなしで複数個の短筒体を容易に連結することが可能になる。
また、それぞれの短筒体10が、一つの端面11aに凸部12を、その反対側の端面11bに凹部13を有するので、先端から後方に向けて、凸部12と凹部13の向きを揃えて連結することができ、組み立てが容易になる。
【0024】
凸部12と凹部13の向きは、図6(a)または(c)に示すように、後側の短筒体10の凸部12と、前側の短筒体10の凹部13との咬合構造としてもよい。また、図6(b)または(d)に示すように、前側の短筒体10の凸部12と、後側の短筒体10の凹部13の咬合構造としてもよい。図6(a)または(b)に示すように、先端または最後尾にある短筒体としては、凸部12のみを有する短筒体10Aを用いたり、凹部13のみを有する短筒体10Bを用いたりしてもよい。
【0025】
図2に示すように、凸部12の厚みt2及び凹部13の厚みt3を短筒体10の筒状本体部11の厚みt1と同じにしている。これにより、凸部12と凹部13との咬合構造を短筒体10の厚みt1の範囲内で形成することができ、短筒体10の内部に光ファイバ等の部材を挿通するスペースを最大限確保することができる。
図5に示すように、咬合構造において凸部12と凹部13とが互いに接触する面は、平滑処理、耐摩耗処理などの表面処理を施すことが好ましい。これにより、凸部12と凹部13との咬合構造の耐久性が向上し、揺動が円滑になる。
【0026】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0027】
図7に示す首振機構構造体の短筒体20は、筒状本体部21の一つの端面21aに三角形状の凸部22を形成し、その反対側の端面21bに三角形状の凹部23を形成している。凹部23内で凸部22が揺動可能となるように、凹部23の角度θbが、凸部22の角度θaより大きくされている(θa<θb)。また、中立状態でも、首振状態でも、隣接する短筒体20どうしが隙間を有するように、凸部22を含む突出部22aの長さAが、凹部23の深さBより大きくされている(A>B)。上述したようにワイヤWを操作すると、図7(c)に示すように、隣接する短筒体20,20の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体20全体を首振動作させることができる。
凸部や凹部の形状が半円形や三角形などの単純な形状であると、寸法が小さくても容易に凸部や凹部を形成することができ、好ましい。
【0028】
図8に示す首振機構構造体の短筒体30は、筒状本体部31の一つの端面31aに形成された凸部32が半楕円形であり、その反対側の端面31bに形成された凹部33は半円形である。凸部32の半楕円形は、楕円(短半径a<長半径b)の長軸が凸部32の突出方向に延び、凹部33の半径cが、長半径bより大きくされている(a<b<c)。また、中立状態でも、首振状態でも、隣接する短筒体30どうしが隙間を有するように、凸部32を含む突出部32aの長さAが、凹部33の深さBより大きくされている(A>B)。上述したようにワイヤWを操作すると、図8(c)に示すように、隣接する短筒体30,30の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体30全体を首振動作させることができる。
楕円は、短軸の両端より長軸の両端で曲率が大きい(曲率半径が小さい)ため、本実施形態のように長軸方向の端部を凸部32の形状とすることにより、同程度の寸法の半円形に比べて凸部32の先端における曲率半径が小さく、揺動角度の大きい咬合構造を構成することができる。
【0029】
図9及び図10に示す首振機構構造体の短筒体100は、筒状本体部101の一つの端面101a全体が凸部102とされ、その反対側の端面101b全体が凹部103とされている。上述したようにワイヤWを操作すると、図9(c)に示すように、隣接する短筒体100,100の中心軸どうしを相互に傾けることで、複数個の短筒体100全体を首振動作させることができる。
本実施形態の場合、凸部102及び凹部103は三角形状であり、凹部103内で凸部102が揺動可能となるように、凹部103の角度θbが、凸部102の角度θaより大きくされている(θa<θb)。また、図10に示すように、凸部102及び凹部103の稜線は、ワイヤWが挿通される膨出部104の孔105とは約90°ずれた位置に形成されている。この場合、凸部102が凹部103と咬合構造を構成するため、凸部を平面に突き合わせた場合に比べて、揺動時に支点の位置が安定するので、個々の短筒体100をワイヤWに固定しなくても、凸部102と凹部103の位置がずれるような捩れの発生を防止することができる。
【0030】
図11に示す首振機構構造体の短筒体10は、凸部12の長さA1、A2、A3、・・・が、首振機構構造体の先端から後部に向けて(図11では左から右に向かって)段階的に小さくなっている。この首振機構構造体によれば、揺動の支点となる凸部12の先端と、短筒体10の重心との距離が、先端側ほど大きくなることにより、ワイヤWの操作による力が先端側の短筒体に伝わりやすくなり、首振機構構造体の先端部を曲げやすくすることができる。すべての短筒体10の凸部12の長さを1個ずつ順に小さくしてもよい(A1>A2>A3>・・・)。また、先端側の1個または数個の短筒体10の凸部12の長さを他の短筒体10の凸部12の長さより大きくしてあれば、それより後ろ側にある他の短筒体10の凸部12の長さは一定にしてもよい。
【0031】
図12には、隣接する短筒体間における凸部と凹部との咬合構造の各種組み合わせを例示する。
図12(a)の場合、図1と同様に、凸部12と凹部13の向きがすべて同一である。
図12(b)の場合、両端面に凸部12を有する短筒体120と、両端面に凹部13を有する短筒体130とを交互に組み合わせている。
図12(c)の場合、先端側の端面に凸部12及び凹部13を有し、後方の端面にも凸部12及び凹部13を有する短筒体140を用いている。
【符号の説明】
【0032】
W…ワイヤ、1…首振部(アングル部)、2…挿入部、3…操作部、4…首振機構構造体、5…内視鏡、10,20,30,100…短筒体(リング)、11,21,31,101…筒状本体部、11a,21a,31a,101a…凸部を有する端面、11b,21b,31b,101b…凹部を有する端面、12,22,32,102…凸部、13,23,33,103…凹部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列された2本のワイヤに、その長手方向に沿って複数個の短筒体を挿通し、
前記複数個の短筒体のうち先端にある短筒体のみを前記ワイヤに固定し、
隣接する2つの短筒体のそれぞれの対向する端面に、凹部又は凸部からなる相互に咬合う咬合構造を形成し、
最後尾の短筒体の後方への移動が規制された状態で、前記2本のワイヤが、それぞれの隣接する2つの短筒体の咬合せを維持する程度に後方に引張られており、
引張られた状態を維持しつつ前記2本のワイヤの一方を繰り寄せるとともに他方を繰り出して、それぞれの隣接する短筒体の中心軸どうしを相互に傾けることで、前記複数個の短筒体全体を首振動作させる首振機構構造体。
【請求項2】
前記短筒体の端面から突出する凸部の長さが、前記短筒体の端面から窪む凹部の深さより大きい請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項3】
前記複数の短筒体のそれぞれが、一つの端面に前記凸部を有し、その反対側の端面に前記凹部を有する請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項4】
前記凸部及び前記凹部の厚みを短筒体の厚みと同じにした請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項5】
前記凸部の長さが、首振機構構造体の先端から後部に向けて段階的に小さくなっている請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項6】
前記凸部の形状が半円形または三角形である請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の首振機構構造体を備える内視鏡。
【請求項1】
並列された2本のワイヤに、その長手方向に沿って複数個の短筒体を挿通し、
前記複数個の短筒体のうち先端にある短筒体のみを前記ワイヤに固定し、
隣接する2つの短筒体のそれぞれの対向する端面に、凹部又は凸部からなる相互に咬合う咬合構造を形成し、
最後尾の短筒体の後方への移動が規制された状態で、前記2本のワイヤが、それぞれの隣接する2つの短筒体の咬合せを維持する程度に後方に引張られており、
引張られた状態を維持しつつ前記2本のワイヤの一方を繰り寄せるとともに他方を繰り出して、それぞれの隣接する短筒体の中心軸どうしを相互に傾けることで、前記複数個の短筒体全体を首振動作させる首振機構構造体。
【請求項2】
前記短筒体の端面から突出する凸部の長さが、前記短筒体の端面から窪む凹部の深さより大きい請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項3】
前記複数の短筒体のそれぞれが、一つの端面に前記凸部を有し、その反対側の端面に前記凹部を有する請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項4】
前記凸部及び前記凹部の厚みを短筒体の厚みと同じにした請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項5】
前記凸部の長さが、首振機構構造体の先端から後部に向けて段階的に小さくなっている請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項6】
前記凸部の形状が半円形または三角形である請求項1に記載の首振機構構造体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の首振機構構造体を備える内視鏡。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−106905(P2013−106905A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−256407(P2011−256407)
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】
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