説明

駆動装置及びレンズ駆動装置

【課題】軸方向移動の駆動源とする電気―機械変換素子に電圧を供給するリード線を動作部と離れた箇所で接続が可能でシンプル化でき、被駆動部材の移動性を妨げないリード線の処理が容易で動作安定性の向上が図られ、組み立てが容易になり、コスト削減になる駆動装置を提供すること。
【解決手段】保持部材11に設けられた摩擦係合部材13により、駆動部材12の長手方向を該保持部材11に沿わせ該駆動部材12の一端を摩擦係合状態に支持し、駆動部材12の他端面に電気―機械変換素子14を固着し、電気―機械変換素子14の他端面に被駆動部材15を固着した。駆動部材12は、少なくとも外面が導電性を有し、かつ、少なくとも電気―機械変換素子14に対する固定端外面(周面又は端面)が一方の電極14aの設置面に近接し、固定端外面が該一方の電極14aに導電性接続手段16により電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気―機械変換素子をその伸縮方向に被駆動物体を移動させる駆動源とし、被駆動物体の慣性力と支持部の摩擦係合力の相対的な大きさをパルス制御して被駆動物体を軸方向に往復動させうる駆動装置及びレンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のレンズ駆動装置としては、レンズを保持するレンズ枠、レンズ枠を光軸方向にガイドするガイドシャフト、レンズ枠を光軸方向の一方向に付勢するスプリング、レンズ枠の一部に回転不能に保持された雌ネジを有するナット、ベースに固定されたモータ等からなる。このように、モータを駆動源とする構成では、部品点数が多く、構造が複雑になり、組み立てが難しく、高コストになり、レンズ駆動が遅れる、といった問題がある。
【0003】
そこで、レンズ駆動装置の駆動源として圧電素子を用いることが例えば特許文献1〜5に提案されている。従来の圧電素子を用いた駆動装置は、インパクト方式(IDM)やStic/Slip方式及びスムースインパクト方式(SIDM)等の方式で、一般的に知られている。
【0004】
特許文献1のレンズ駆動装置は、圧電素子に駆動部材を固着し、その駆動部材に被駆動部材を摩擦係合させて構成され、圧電素子に伸縮変位させる駆動パルスを入力し駆動部材を往復移動させて、駆動部材に対し被駆動部材を移動させる構成である。
【0005】
特許文献2のレンズ駆動装置は、圧電素子のリード線の接続作業の効率を向上する手段として、圧電素子に装着可能に構成される接続ソケットと、導電体で作製された配線基板の接続位置まで延出している接片を備えた構成である。
【0006】
特許文献3のレンズ駆動装置は、電気−機械変換素子の一端に固定された駆動軸と、圧接ばね及び摩擦板によって駆動軸に摩擦係合されたレンズ鏡筒とを備えている。電気−機械変換素子にパルス状の電圧を印加すると、電気−機械変換素子が伸縮し駆動軸が変化することで、駆動軸に摩擦係合されたレンズ鏡筒を移動させる構成である。
【0007】
特許文献4のレンズ駆動装置は、圧電素子に接続される配線部材の接続部分が圧電素子の動作に影響を低減する手段として、圧電素子の電極に接続され非伸縮部の位置に設けられる入力端子とを備えて構成されていて、プリント配線基板が非伸縮時の位置にある入力端子とハンダ付けされる構成である。
【0008】
上記の四例は、いずれも、圧電素子の伸縮方向の一方の端面が固定部材に固着され、他方の端面に、駆動部材が固定され、この駆動部材に被駆動部材が摩擦係合されている構造である。
【0009】
【特許文献1】特許第2633066号公報
【特許文献2】特開2007−267538号公報
【特許文献3】特開平7−274544号公報
【特許文献4】特開2007−274777号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1〜4の圧電素子を用いた駆動装置は、カメラモジュールの小型化に伴い、圧電素子に電圧を供給するリード線の処理が非常に難しいと考えられる。
【0011】
また、特許文献1に係る実施形態に記載された圧電素子を用いたレンズの駆動装置には、圧電素子の電気的な接続が難しく製造しにくいという問題点がある。駆動装置が小型化すると、圧電素子も小型のものを用いるようになり、この圧電素子から延びるリード線を接続するには、ピンセットを使用し圧電素子の正極・負極の2箇所をハンダ付けすることとなる。このような圧電素子のリード線の接続作業は、かなり細かな作業であって、非常に作業性が悪い。
【0012】
また、特許文献2に係る実施形態に記載された圧電素子を用いたレンズの駆動装置では、電気−機械変換素子への電圧供給手段は、接続ソケット・接片1・接片2・支持部材の少なくとも3種類4個の部品が必要とされるため、コスト的に優位性がなく、さらに小型化に対して逆行する構造となっている。
【0013】
また、特許文献3に係る実施形態に記載された圧電素子を用いたレンズの駆動装置には、電気−機械変換素子へ電圧を供給する2つのリード線を近接して並べて電気−機械変換素子の上面に取り付けているのでリード線の処理が非常に難しいと考えられる。
【0014】
また、特許文献4に係る実施形態に記載された圧電素子を用いたレンズの駆動装置では、装置が小型化されており、圧電素子がさらに小型化されており、圧電素子の全長に対する非伸縮部の占める割合が非常に微小であり、組立の作業性が悪いと共に、接点が微小なため、圧電素子の振動による影響により接触不良を招く危険性がある。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、電気―機械変換素子に電圧を供給する少なくとも一方のリード線を非動作部材に接続可能でリード線の処理の容易化・構造のシンプル化を達成でき、リード線の反力が被駆動部材の移動性を妨げることがなく動作安定性の向上が図られ、構造が簡易・組み立てが容易であり、コスト削減に繋がる駆動装置、及びレンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の駆動装置は、保持部材と、駆動部材と、前記保持部材に設けられていて前記駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材と、前記駆動部材の端面に伸縮方向の一端面を固着されている電気―機械変換素子と、前記電気―機械変換素子の他端面に固着された被駆動部材と、を備え、前記駆動部材は、少なくとも外面が導電性を有し、該外面が導電性接続手段により前記電気―機械変換素子の一方の電極に電気的に接続されている、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の駆動装置によれば、リード線に制御電圧が印加されると、電気―機械変換素子は制御電圧の印加により水平方向に伸縮し、急速伸長と緩速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材が摩擦係合部材の方向に微小ステップ移動し、緩速伸長と急速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材が摩擦係合部材から離隔する方向に微小ステップ移動する。
【0018】
また本発明の駆動装置によれば、一方の電極と駆動部材との電気的な接続はハンダをポイント付けすれば足り、ポイント状の導電性接続手段(例えば半田付け)による電気的な接続が実現され、リード線を設けない状態で駆動部材を摩擦係合部材に対して組み付けることができ、一方の電極へ電圧を供給するリード線の取り付けは、駆動部材のいずれかの部位において行うことができ、さらに、駆動部材に対して電気的な接続を取る部材に対して行うことが可能になるので、電気―機械変換素子から大きく離れた位置でリード線の接続作業が行えて一方の電極に対する電気的な接続が実現できる。
【0019】
上記構成の駆動装置において、前記摩擦係合部材は、前記駆動部材を摩擦係合支持する係合支持面の少なくとも一部が導電性を有していることにより、前記駆動部材を介して前記電気―機械変換素子の一方の電極と電気的に接続されていることが好ましい。
この構成によれば、リード線を固定部材(摩擦係合部材)へ取付けることができるから、リード線の反力による被駆動部材に対する移動性能を妨げにはならず動作安定性の向上に寄与し、また断線等の不具合が生じる懸念がない。
【0020】
上記構成の駆動装置において、前記摩擦係合部材は、前記保持部材に設けられ前記駆動部材を受承案内する凹部を有する係合固定部材と、前記係合固定部材に固定されるばね部材とからなり、前記係合固定部材と前記ばね部材の少なくともいずれか一方が導電性材料よりなることにより、前記駆動部材を介して前記電気―機械変換素子の一方の電極と電気的に接続されている。
この構成によれば、駆動部材と電気的に接続する摩擦係合部材を簡素に構成でき、リード線の接続作業を係合固定部材又はばね部材の上面に対して行えて、安定した電圧供給が行える。
【0021】
上記構成の駆動装置において、前記被駆動部材の少なくとも外面の一部が導電性を有しており、かつ、該外面の一部と前記電気―機械変換素子の他方の電極とが導電性接続手段により接続され、かつ、前記被駆動部材の前記外面の一部にリード線が導電性接続手段により接続されていることが好ましい。
この構成によれば、電気―機械変換素子から離れた部位でかつハンダ付けがやり易い部位でのリード線の取り付けが実現できる。
【0022】
上記構成の駆動装置において、前記被駆動部材の少なくとも外面の一部が導電性を有しており、該外面の一部と前記電気―機械変換素子の他方の電極とが導電性接続手段により接続され、さらに、前記被駆動部材に設けられ前記外面の一部と電気的に接続された導電性材料よりなるガイド部材と、少なくとも前記ガイド部材と接する前記保持部材の面を導電性として、電気的に接続されていることが好ましい。
この構成によれば、電気―機械変換素子から離れた部位でかつハンダ付けがやり易い部位でのリード線の取り付けが実現できる。
【0023】
本発明のレンズ駆動装置は、レンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動手段として、請求項1乃至5のいずれか一に記載の駆動装置を備えたことを特徴とする。
本発明のレンズ駆動装置によれば、リード線に制御電圧が印加されると、電気―機械変換素子は制御電圧の印加により水平方向に伸縮し、急速伸長と緩速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材が摩擦係合部材の方向に微小ステップ移動し、緩速伸長と急速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材が摩擦係合部材から離隔する方向に微小ステップ移動する。これによりレンズを光軸方向に駆動することができる。本発明のレンズ駆動装置によれば、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、レンズ(レンズ枠)の光軸方向への移動速度を高速化又は低速化でき、移動に要する時間を短縮でき、レンズの送り量(移動量)を微調整できる。
【発明の効果】
【0024】
上記構成をなす駆動装置及びレンズ駆動装置によれば、電気―機械変換素子に電圧を供給する少なくとも一方のリード線を非動作部材に接続可能でリード線の処理の容易化・構造のシンプル化を達成でき、リード線の反力が被駆動部材の移動性を妨げることがなく動作安定性の向上が図られ、構造が簡易・組み立てが容易であり、コスト削減に繋がる駆動装置、及びレンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態の駆動装置について、添付図面を参照しつつ説明する。
【0026】
(第1の実施形態)
図1〜図4は、本発明の第1の実施形態に係る駆動装置を示す図である。
駆動装置1Aは、保持部材11上に摩擦係合部材13が固設される一方、電気―機械変換素子14の伸縮方向の一方の端面に駆動部材12が固着されると共に他方の端面に被駆動部材15が固着された組立体とされ、この組立体が保持部材11に沿うように横軸とされ、かつ、駆動部材12の基端寄り部分が摩擦係合部材13で摩擦係合状態に支持され、電気―機械変換素子14の上下面の電極14a,14bに制御電圧を供給する2本のリード線17、19を備えてなる。
【0027】
駆動装置1Aの動作の概略を説明する(詳細は後述する)。
リード線17、19にパルス状の制御電圧が印加され、電気―機械変換素子14が制御電圧の印加により水平方向に伸縮し、急速伸長と緩速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材15が摩擦係合部材13の方向に微小ステップ移動し、また緩速伸長と急速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材15が摩擦係合部材13から離隔する方向に微小ステップ移動する。
【0028】
保持部材11は、いわゆるベースであり、この実施形態では導電性材料と非導電性材料のいずれを用いて構成されても良い。
駆動部材12は、いわゆる水平スライド軸であり、慣性力を高めるために質量が小さいCFRP(炭素繊維複合材料)、又は炭素系焼結体、或いはその軸材料に適する他質量が小さい導電性材料が選択され、丸棒状に形成されている。
摩擦係合部材13は、駆動部材12に対するいわゆるリニアガイドブラケットであり、駆動部材12を摩擦係合状態に水平に支持する。摩擦係合部材13は、この実施形態では、係合固定部材13aと、ばね部材13bとからなる。係合固定部材13aは、保持部材11の上面に固定されていて、駆動部材12を受承し案内する凹部(V字状凹部あるいは半円筒凹面部)13a’を有している。ばね部材13bは、凹部(V字状凹部あるいは半円筒凹面部)13a’に受承される駆動部材12に被さり係合固定部材13aに止着具(子ねじ)24により固定され駆動部材12に摩擦係合力を与える。
電気―機械変換素子14は、電圧を加えると微小に伸縮する圧電素子であり、ここでは直方体形状であり、上下面に電極14a、14bを有する。電極14a、14bのいずれか一方が正極で他方が負極となる。電気―機械変換素子14は、電極14a、14b間に制御電圧を印加されると、伸縮する機能を有する。
被駆動部材15は、移動対象部材であり、駆動部材12及び電気―機械変換素子14に比べ、大きく形成されるか又は質量が大きい材料により形成され、慣性力を利用した動作原理を実現できるようにするために、駆動部材12及び電気―機械変換素子14を合計した重量よりもかなり大きいものとして形成される。
【0029】
一方の電極(下面側の電極)14aとリード線17との電気的接続構造として、この実施形態では、導電性材料よりなる駆動部材12と電気―機械変換素子14の一方の電極14aとが導電性接続手段(ハンダ付け又は導電性接着材)16により電気的に接続され、ばね部材13bが弾性及び導電性を備えた金属材料よりなり、このばね部材13bの上面にリード線17が導電性接続手段(ハンダ付け又は導電性接着材)18により取り付けられている。導電性接続手段16は、駆動部材12と電気―機械変換素子14とを固着する時に設けられる。
従って、リード線17を取り付けることが難しい電気―機械変換素子14の下面の電極14aにはリード線17を取り付けず、該電極14aから大きく離れていて、かつ、取り付け易い位置にリード線17を取り付けているが、電極14aとリード線17とが電気的に接続されている。これにより、電気−機械変換素子14の伸縮によりリード線17も同時に移動するためにリード線の反力による動作の妨げやリード線の断線等の不具合が生じるという懸念は解消される。
【0030】
電気―機械変換素子14の他方の電極(上面側の電極)14bとリード線19との電気的接続構造として、この実施形態では、上面に位置される該他方の電極14bにリード線19が導電性接続手段20により接続されている。
【0031】
駆動装置1Aの動作を説明する。
リード線17、19に印加されるパルス状の制御電圧の立ち上がりが一瞬に行われ、これにより、電気―機械変換素子14が水平方向に瞬速伸長するときは、被駆動物体15の慣性力が摩擦係合部材13による摩擦係合力よりも大きくなるので、被駆動部材15が静止位置に止まるから、このとき摩擦係合部材13の駆動部材12を保持する位置は、電気―機械変換素子14に接近する方向に微小ステップ移動した状態にずれる。そして、リード線17、19に印加されるパルス状の制御電圧の立ち下がりが緩やかに時間を掛けて行われ、これにより、電気―機械変換素子14が水平方向に緩速収縮するときは、被駆動物体15の慣性力が摩擦係合部材13による摩擦係合力よりも小さくなるので、被駆動部材15が電気―機械変換素子14の収縮分の寸法だけ摩擦係合部材13の方向に移動する。
従って、リード線17、19に印加される制御電圧が、電気―機械変換素子14が水平方向に瞬速伸長と緩速収縮とを交番して行うものであるときは、被駆動部材15が摩擦係合部材13の方向に移動していく。
【0032】
また、リード線17、19に印加されるパルス状の制御電圧の立ち上がりが緩やかに時間を掛けて行われ、これにより、電気―機械変換素子14が水平方向に緩速伸長するときは、被駆動物体15の慣性力が摩擦係合部材13による摩擦係合力よりも小さくなるので、被駆動部材15が電気―機械変換素子14の伸長分の寸法だけ移動し、このとき摩擦係合部材13の駆動部材12を保持する位置は変わらない。そして、リード線17、19に印加されるパルス状の制御電圧の立ち下がりが一瞬に行われ、これにより、電気―機械変換素子14が水平方向に瞬速収縮するときは、被駆動物体15の慣性力が摩擦係合部材13による摩擦係合力よりも大きくなるので、被駆動部材15が静止位置に止まるから、このとき摩擦係合部材13の駆動部材12を保持する位置は、駆動部材12が摩擦係合部材13から離隔する方向に微小ステップ移動する状態にずれる。
従って、リード線17、19に印加される制御電圧が、電気―機械変換素子14が水平方向に緩速伸長と瞬速収縮とを交番して行うものであるときは、被駆動部材15が摩擦係合部材13から離隔する方向に微小ステップ移動していく。
なお、電気―機械変換素子14の電極14a、14bの正負が逆転した場合には、上記リード線17、19に印加される制御電圧が負の値になる。
【0033】
この実施形態の駆動装置1Aによれば、電気―機械変換素子14をその伸縮方向に被駆動物体15を移動させる駆動源とし、被駆動物体15の慣性力と摩擦係合部材13の摩擦係合力の相対的な大きさをパルス制御して被駆動物体15を軸方向に往復動させうる。
【0034】
この実施形態の駆動装置1Aによれば、電気―機械変換素子14の対面に設けられた一方の電極14aと、駆動部材12の導電性を有する外面とが近接している構成であるから、一方の電極14aと駆動部材12との電気的な接続はハンダをポイント付けすれば足り、ポイント状の導電性接続手段(例えば半田付け)16による電気的な接続が実現される。この導電性接続手段(例えば半田付け)16の設置は、駆動部材12の摩擦係合部材13への組み付け前に行うことができる。このため、リード線17を設けない状態で駆動部材12を摩擦係合部材13に対して組み付けることができ、組み付けが容易になる。該組み付け後は、該一方の電極14aへ電圧を供給するリード線17の取り付けは、駆動部材12に対して電気的な接続を取る部材(この実施形態ではばね部材13b)に対して行うことが可能になるので、電気―機械変換素子14から大きく離れた位置でリード線の接続作業が行えて一方の電極14aに対する電気的な接続が実現できる。電気―機械変換素子14が、直方体でありかつ上下の対面に分配して2つの電極が設けられている場合、リード線を設け難い方の下側の電極を前記一方の電極14aとして選択すれば、他方の電極14bに対するリード線19の接続作業は、駆動部材12の上面で容易に行うことができる。
【0035】
この実施形態の駆動装置によれば、電気―機械変換素子14から大きく離れた位置で移動しない部材13の上面位置にリード線17の接続作業が行えて、一方の電極14aに対する電気的な接続が実現できて、移動しない部材13への取付けであるから、リード線17の反力による被駆動部材15に対する移動性能を妨げにはならず動作安定性の向上に寄与し、また断線等の不具合が生じる懸念がない。
【0036】
この実施形態の駆動装置によれば、駆動部材12と電気的に接続する摩擦係合部材13を簡素に構成でき、リード線17の接続作業を係合固定部材13a又はばね部材13bの上面に対して行えて、安定した電圧供給が行える。
【0037】
この実施形態の駆動装置によれば、一方の電極14aとして下面側の電極14aを選択しポイント状のハンダ付けにより摩擦係合部材13と接続処理するから、電気―機械変換素子14が微小であっても、電気―機械変換素子14の上面側の電極を他方の電極14aとして選択できるので、リード線19の導電性接続手段20による接続が容易に行える。
【0038】
(第2の実施形態)
図5、図6は、本発明の第2の実施形態に係る動装置を示す図である。駆動装置1Bは、保持部材11と、駆動部材12と、摩擦係合部材13と、電気―機械変換素子14と、被駆動部材15とからなる組立体が、第1の実施形態の駆動装置1Aと同一である。また、一方の電極(下面側の電極)14aとリード線17との電気的接続構造として、第1の実施形態の駆動装置1Aの場合と同一である。さらに、リード線17、19に制御電圧を印加されると、電気―機械変換素子14が伸縮し、このときの被駆動物体の慣性力と摩擦係合部材による摩擦係合力との相対的な大きさを制御して被駆動物体を軸方向に往復動させうる動作原理も第1の実施形態の駆動装置1Aの場合と同一である。従って、これら構成部材の詳細説明は省略する。
【0039】
駆動装置1Bでは、他方の電極(上面側の電極)14bとリード線17との電気的接続構造として、被駆動部材15が導電性材料からなり、かつ、該上面と前記電気―機械変換素子14の他方の電極14bに近接していて導電性接続手段21により接続され、かつ、前記被駆動部材15にリード線19が導電性接続手段20により接続されている点が、第1の実施形態の駆動装置1Aの場合と相違している。なお、この実施形態では、被駆動部材15は少なくとも上面(外面の一部)が導電性を有していれば足りる。
【0040】
第2の実施形態の駆動装置1Bによれば、ポイント状の導電性接続手段21により電気―機械変換素子14の他方の電極14bと被駆動部材15との電気的な接続が行えて、さらに、他方の電極14bに電圧を供給するためのリード線19を、微小部材である電気―機械変換素子14に対してではなく、十分に大きな被駆動部材15の上面にハンダ付けにより取り付けることができる。もって、電気―機械変換素子14から離れた部位でかつハンダ付けがやり易い部位でのリード線の取り付けが実現できる。
【0041】
(第3の実施形態)
図7、図8は、本発明の第3の実施形態に係る駆動装置を示す図である。この駆動装置1Cは、保持部材11と、駆動部材12と、摩擦係合部材13と、電気―機械変換素子14と、被駆動部材15とからなる組立体が、第1の実施形態の駆動装置1Aと同一である。また、一方の電極(下面側の電極)14aとリード線17との電気的接続構造として、第1の実施形態の駆動装置1Aの場合と同一である。さらに、リード線17、19に制御電圧を印加されると、電気―機械変換素子14が伸縮し、このときの被駆動物体の慣性力と摩擦係合部材による摩擦係合力との相対的な大きさを制御して被駆動物体を軸方向に往復動させうる動作原理も第1の実施形態の駆動装置1Aの場合と同一である。従って、これら構成部材の詳細説明は省略する。
【0042】
駆動装置1Cでは、他方の電極(上面側の電極)14bとリード線17との電気的接続構造として、被駆動部材15の少なくとも外面が導電性を有しており、該外面と電気―機械変換素子14の他方の電極14bとが導電性接続手段21により接続され、さらに、保持部材11の少なくとも被駆動部材15と対応するエリア面に導電性を有する敷板23が設けられ、敷板23の上に設けられた導電性材料よりなるガイド部材22で前記被駆動部材15の下面が相対スライド可能に受承されたことにより、敷板23と他方の電極14bとが電気的に接続され、さらに、敷板23に導電性接続手段20によりリード線19が接続されている。なお、敷板23に換えて同エリア面を導電性のメッキや塗装をしても良い。
【0043】
第3の実施形態の駆動装置1Cによれば、電気―機械変換素子14の他方の電極14bと被駆動部材15との間の電気的な接続が行われ、さらに、被駆動部材15と保持部材11の少なくとも被駆動部材15と対応するエリア面との間の電気的な接続が行われ、他方の電極14bに電圧を供給するためのリード線19を、微小部材である電気―機械変換素子14に対してではなく、十分に大きな保持部材11の上面にハンダ付けにより取り付けることができる。もって、電気―機械変換素子14から離れた部位でかつハンダ付けがやり易い部位でのリード線の取り付けが実現できる。そして、電気−機械変換素子14の伸縮によりリード線19も同時に移動するためにリード線の反力による動作の妨げやリード線の断線等の不具合が生じるという懸念は解消される。
【実施例】
【0044】
図9は、レンズ保持案内装置30と第1の実施形態の駆動装置1Aとを組み合わせてなるレンズ駆動装置2を示す図である。レンズ保持案内装置30は、レンズGを保持して光軸L方向に案内するレンズホルダ31を浮動的な状態に備えている。すなわち、レンズホルダ31より両側に突出する一対のガイドブラケット32,33は、ガイドコラム34,35に係合案内され、かつ、ブラケット36より立設されたガイドピン37の周りに遊嵌するコイルばね38が上方の押圧部材(不図示)により圧縮され下方へ付勢されている。レンズ保持案内装置30には、一側面より張り出した連節ピン39が光軸Lに関して垂直面内に位置し、この連節ピン39の下側に、駆動装置1Aが備えられている。
駆動装置1Aは、駆動部材12と電気―機械変換素子14と被駆動部材15との組立体の軸線が、光軸Lに関し垂直面内に存在しかつ連節ピン39の下側に直角にすれ違うように備えられている。
この実施例では、駆動装置1Aの被駆動部材15の上面が張出端に向かって下降する傾斜面15aとなっていて、この傾斜面15aに連接ピン39が載っている。
【0045】
この実施例のレンズ駆動装置2によれば、リード線17、19に制御電圧が印加されることにより、電気―機械変換素子14が急速伸長と緩速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材15が摩擦係合部材13の方向に移動していき、傾斜面15aの連接ピン接触レベルが下がるので、レンズホルダ31の重量及びコイルばね38の付勢によりレンズホルダ31が下降する。
また、電気―機械変換素子14が緩速伸長と急速収縮とを交番して行うときは、被駆動部材15が摩擦係合部材13から離隔する方向に移動していき、傾斜面15aの連接ピン接触レベルが上がる方向に変位することになるが、このとき、傾斜面15aが楔作用を生起しレンズホルダ31の重量及びコイルばね38の付勢に抗して連接ピン39を持ち上げる。従って、レンズホルダ31が上昇する。
【0046】
この実施例のレンズ駆動装置2によれば、第1の実施形態の駆動装置1Aを用いたから、該駆動装置1Aの作用効果を奏し、これに加え、構造が簡易・組み立てが容易であり、コスト削減になる等の効果を奏するレンズ駆動装置を提供することができる。
【0047】
(その他の実施の形態、変形例)
以上、本発明に係る第1〜第3の実施形態及び実施例について図面を参照し説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない限度で種々の設計変更や工程の変更が可能であり、そのような変更を技術的範囲に含むものである。
【0048】
(駆動部材12について)
駆動部材12は、上記実施形態では丸棒状に形成されているが、回転軸の機能を必要としない構成要素であるから角棒状等に構成されても良い。また駆動部材12は、上記実施形態では質量が小さい導電性材料であるCFRP等により構成されているが、少なくとも外面が導電性を有している構成であればよい。例えば、軸材料に適する質量が小さい非導電性材料より棒状に形成され外面をめっきされた構成であっても良い。
【0049】
(摩擦係合部材13について)
摩擦係合部材13は、駆動部材12を介して電気―機械変換素子14の一方の電極14aと電気的に接続される構成であれば良く、最も大きい考え方として、駆動部材12を摩擦係合支持する係合支持面(貫通孔内面部)の少なくとも一部が導電性を有していることにより電気的に接続されていれば良い。上記実施形態では、ばね部材13bが導電性材料より構成され、係合固定部材13aが非導電性材料より構成され、リード線17の取り付けがばね部材13bに対して行われているが、これとは逆に、ばね部材13bが非導電性材料より構成され、係合固定部材13aが導電性材料より構成され、リード線17の取り付けが係合固定部材13aに対して行われてもよい。さらに両者とも導電性材料より構成されても良い。
【0050】
(被駆動部材15について)
第3の実施形態では、電気―機械変換素子14の他方の電極14bと敷板23とが被駆動部材15を介して電気的に接続されていれば良い。従って、被駆動部材15は、少なくとも外面が導電性を有していれば良い。また、被駆動部材15は、質量が大きい導電性金属材料(例えば銅系合金)から構成することが好ましいが、質量が大きい非導電性材料の外面に導電性メッキを付けたものであっても良い。
【0051】
(保持部材11について)
第3の実施形態では、保持部材11を導電性材料で構成して敷板23を無くしても良い。この場合、係合固定部材13aを導電性材料で構成するときは、保持部材11と係合固定部材13aとの絶縁を行って、リード線17とリード線19との短絡を防止する。
第3の実施形態では、被駆動部材15の少なくとも外面が導電性を有しており、該外面と前記電気―機械変換素子14の他方の電極14bとが導電性接続手段21により接続され、さらに、前記保持部材11の少なくとも前記被駆動部材15と対応するエリア面の敷板23が導電性を有し、
該敷板23に設けられた導電性材料よりなるガイド部材22で前記被駆動部材15の下面が相対スライド可能に受承されたことにより、前記敷板23と前記他方の電極14bとが電気的に接続され、さらに、該敷板23に導電性接続手段20によりリード線19が接続されている構成であれば良い。
【0052】
本発明の駆動装置及びレンズ駆動装置は、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、レンズ(レンズ枠)の光軸方向への移動速度を高速化又は低速化でき、移動に要する時間を短縮でき、レンズの送り量(移動量)を微調整できるため、デジタルカメラの駆動装置として適用できるのは勿論のこと、その他のレンズ光学系の駆動装置としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【図2】図1の駆動装置の正面図である。
【図3】図1の駆動装置の分解斜視図である。
【図4】図1の駆動装置の要部の電気―機械変換素子である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【図6】図5の駆動装置の正面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態に係る駆動装置の斜視図である。
【図8】図7の駆動装置の正面図である。
【図9】レンズ保持案内装置と第1の実施形態の駆動装置とを組み合わせてなるレンズ駆動装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
1A,1B,1C 駆動装置(レンズ駆動手段)
2 レンズ駆動装置
11 保持部材
12 駆動部材
13 摩擦係合部材
13a 係合固定部材
13a’ 凹部
13b ばね部材
14 電気―機械変換素子
14a 一方の電極
14b 他方の電極
15 被駆動部材
16 導電性接続手段(ハンダ付け又は導電性接着材)
17 リード線
18 導電性接続手段(ハンダ付け又は導電性接着材)
19 リード線
20 導電性接続手段(ハンダ付け又は導電性接着材)
21 導電性接続手段(ハンダ付け又は導電性接着材)
22 ガイド部材
23 敷板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材と、駆動部材と、前記保持部材に設けられていて前記駆動部材を摩擦係合状態に支持する摩擦係合部材と、前記駆動部材の端面に伸縮方向の一端面を固着されている電気―機械変換素子と、前記電気―機械変換素子の他端面に固着された被駆動部材と、を備え、
前記駆動部材は、少なくとも外面が導電性を有し、該外面が導電性接続手段により前記電気―機械変換素子の一方の電極に電気的に接続されている、
ことを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記摩擦係合部材は、前記駆動部材を摩擦係合支持する係合支持面の少なくとも一部が導電性を有していることにより、前記駆動部材を介して前記電気―機械変換素子の一方の電極と電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記摩擦係合部材は、前記保持部材に設けられ前記駆動部材を受承案内する凹部を有する係合固定部材と、前記係合固定部材に固定されるばね部材とからなり、前記係合固定部材と前記ばね部材の少なくともいずれか一方が導電性材料よりなることにより、前記駆動部材を介して前記電気―機械変換素子の一方の電極と電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記被駆動部材の少なくとも外面の一部が導電性を有しており、かつ、該外面の一部と前記電気―機械変換素子の他方の電極とが導電性接続手段により接続され、かつ、前記被駆動部材の前記外面の一部にリード線が導電性接続手段により接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記被駆動部材の少なくとも外面の一部が導電性を有しており、該外面の一部と前記電気―機械変換素子の他方の電極とが導電性接続手段により接続され、さらに、前記被駆動部材に設けられ前記外面の一部と電気的に接続された導電性材料よりなるガイド部材と、少なくとも前記ガイド部材と接する前記保持部材の面を導電性として、電気的に接続されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一に記載の駆動装置。
【請求項6】
レンズを光軸方向に駆動するレンズ駆動手段として、請求項1乃至5のいずれか一に記載の駆動装置を備えたことを特徴とするレンズ駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−247163(P2009−247163A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−92592(P2008−92592)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】