説明

骨吸収阻害剤

【課題】破骨細胞分化に関与する因子を新たに同定し、その因子を利用することにより骨粗鬆症や慢性関節リウマチなど破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の新たな治療剤等を提供すること。
【解決手段】プレイオトロフィンが破骨細胞分化を抑制および/または阻害するという知見に基づき、プレイオトロフィンを含む骨吸収の抑制剤および/または阻害剤、プレイオトロフィンを含む破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤、プレイオトロフィンを含む破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤、プレイオトロフィンを用いた破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤の同定方法などが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレイオトロフィン(pleiotrophin)(PTN)が破骨細胞分化を抑制および/または阻害するという知見に基づく、プレイオトロフィンを含有する骨吸収の抑制剤および/または阻害剤、プレイオトロフィンを含有する破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤、プレイオトロフィンを含有する破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤、あるいは、プレイオトロフィンを用いた破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防方法および/または治療方法に関する。
【0002】
さらに、本発明は、新規な破骨細胞分化抑制因子および/または阻害因子の同定におけるプレイオトロフィンの用途に関する。
【背景技術】
【0003】
骨は、密度の高い、特殊化した形の結合組織であるが、永久不変の組織ではない。骨組織は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収により、その形を変えることなく、新しい骨に置換される。骨のマトリクス表面に存在する骨芽細胞は、オステオイドと呼ばれるマトリクスを分泌し、オステオイドの石灰化とともに骨細胞に変化し、骨を形成する。破骨細胞は、大きな多核細胞で、マクロファージと同様に骨髄の造血幹細胞に由来する。破骨細胞は、骨芽細胞と同様に骨のマトリクス上に存在し、マトリクスを溶かす作用がある。
【0004】
骨形成と骨吸収のバランスがくずれると、様々な疾患が引き起こされる。例えば、不十分な骨形成は、骨折や骨が欠損した場合の回復の遅延につながる。また、骨粗鬆症や慢性関節リウマチは、破骨細胞が増勢して骨吸収が過剰になることが原因のひとつになっている。
【0005】
骨形成および/または骨吸収には種々の因子が関与することが知られている。骨破壊に関連する因子としては、破骨前駆細胞を破骨細胞に分化させる作用を有するReceptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)およびRANKLの受容体であるReceptor Activator of NFκB(RANK)が挙げられる(非特許文献1および非特許文献2)。RANKL/RANKによる破骨細胞分化には、Nuclear Factor−κB(NF−κB)活性化シグナル経路またはNuclear Factor of Activated T cells(c−Fos/NFATc)活性化シグナル経路が関与することが報告されている(非特許文献3)。
【0006】
近年、神経細胞の伸長に作用するタンパク質として知られているプレイオトロフィン(pleiotrophin)(PTN)(非特許文献4)が、骨形成に関与することが報告された(非特許文献5)。PTNは、ラットの脳で最初に同定された168アミノ酸残基からなるヘパリン結合型の増殖因子である(非特許文献6)。PTNは、168アミノ酸残基からなる前駆体として生成され、32アミノ酸残基が除かれて、136アミノ酸残基の活性化型タンパク質として細胞外に放出される。骨芽細胞刺激因子1(osteoblast stimulating factor−1)としても知られるPTNは、骨芽細胞の遊走性、分化、コロニー形成、アルカリフォスファターゼ産生を促進することが報告されている(非特許文献5)。最近では、PTNが単独で内因性の組織による骨または軟骨組織の修復を促進することが報告されている(特許文献1)。PTNは、神経細胞の伸長および骨形成の他にも血管新生等に関与することが知られている(非特許文献7)が、PTNが骨破壊に関与することは知られていない。
【0007】
【特許文献1】特開2001−122799
【非特許文献1】Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:3597−3602(1998)
【非特許文献2】Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:3540−3545(1999)
【非特許文献3】Nature 428:758−763(2004)
【非特許文献4】Mol.Biol.Cell 3:85−93(1992)
【非特許文献5】J.Bone Miner.Res.18:47−57(2003)
【非特許文献6】J.Biol.Chem.265:16721−4.(1990)
【非特許文献7】Biochem.Biophys.Res.Commun.332:1146−1153(2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
破骨細胞分化の機構の解明は、骨粗鬆症や慢性関節リウマチ等の破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の新たな治療剤および/または治療方法の開発につながるが、その機構はまだ十分に明らかにされているとはいえない。破骨細胞分化の詳細な機構を解明すること、特に、破骨細胞分化に関与する因子を新たに同定し、その因子を利用して破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の新たな治療剤および/または治療方法を開発することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、骨芽細胞に発現し骨形成に関与することが知られているPTNが骨吸収に及ぼす影響を調べたところ、驚くべきことに、RANKLによる破骨前駆細胞から破骨細胞への分化をPTNが抑制および/または阻害することを見出した。本発明者は、この知見に基づき、PTNを骨吸収の抑制剤および/または阻害剤として利用できることを見出し、本発明を完成させた。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に関する。
[1]プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤。
[2]プレイオトロフィンを含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤。
[3]次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[4]次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[5]プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
[6]プレイオトロフィンを含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
[7]次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[8]次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[9]プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
[10]プレイオトロフィンを含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
[11]次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[12]次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[13]プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤。
[14]プレイオトロフィンを含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤。
[15]次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[16]次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
[17]破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患が、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、または高カルシウム血症である、[13]〜[16]のいずれか1つに記載の予防剤および/または治療剤。
[18]次の(1)〜(3)の工程を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤の同定方法:
(1)プレイオトロフィンまたは試験化合物の存在下で、破骨前駆細胞に破骨細胞誘導物質を添加する工程;
(2)破骨前駆細胞の破骨細胞への分化の程度を測定する工程;および
(3)試験化合物を添加した破骨前駆細胞の破骨細胞への分化が、プレイオトロフィンを添加した破骨前駆細胞と同様に抑えられた場合、該試験化合物を破骨細胞への分化を抑制および/または阻害する試験化合物として選択する工程。
[19]破骨前駆細胞の破骨細胞への分化の程度を、細胞のTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性によって判断する、[18]に記載の方法。
[20]破骨前駆細胞が株化細胞である、[18]または[19]のいずれか1つに記載の方法。
[21]破骨細胞誘導物質が、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)である、[20]に記載の方法。
[22]破骨前駆細胞が初代培養細胞である、[18]または[19]のいずれか1つに記載の方法。
[23]破骨細胞誘導物質が、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)およびMacrophage−Colony Stimulating Factor(M−CSF)である、[22]に記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によって、骨粗鬆症や慢性関節リウマチ等の破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の新たな治療剤および/または治療方法が提供される。具体的には、本発明によって、PTNおよび/またはPTN誘導体を含む破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の新たな治療剤、あるいは、PTNおよび/またはPTN誘導体を用いた破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の新たな治療方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本明細書で用いる用語について説明する。
【0013】
本明細書において、単離したDNA、合成のDNA、単離したポリヌクレオチド、または合成のポリヌクレオチドを総称して「DNA」と称し、単離したタンパク質、合成のタンパク質、単離したポリペプチド、または合成のポリペプチドを総称して「タンパク質」と称する。
【0014】
本明細書において「プレイオトロフィン」、「pleiotrophin」、または「PTN」とは、天然に存在するプレイオトロフィンタンパク質、プレイオトロフィンをコードするDNAにより生成される組換えプレイオトロフィンタンパク質、またはプレイオトロフィンタンパク質のフラグメントをいう。天然に存在するプレイオトロフィンタンパク質としては、例えば、マウス、ヒト、ラット等の動物から精製されるプレイオトロフィンが挙げられる。天然に存在するプレイオトロフィンタンパク質には、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism)(SNP)と呼ばれる変異を起したプレイオトロフィンDNAによってコードされるタンパク質を含む。組換えプレイオトロフィンタンパク質としては、例えば、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質、または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質が挙げられる。
【0015】
PTNのDNAは、配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAであり得る。PTNのDNAは、1558塩基からなり、翻訳されて168アミノ酸(配列表の配列番号2)のタンパク質をコードする。
【0016】
PTNのDNAは、当業者に公知の遺伝子工学的手段(Sambrookら、モレキュラークローニング,ア ラボラトリーマニュアル 第2版、1989年、コールドスプリングハーバーラボラトリー)によって容易に得ることができる。PTNのDNAは、例えば、実施例に記載されるように、配列表の配列番号1に記載の塩基配列の配列情報をもとにプライマーを設計し、PTNを発現している組織または細胞由来のcDNAライブラリー等を鋳型としたPCRによって得ることができる。プライマーの設計、鋳型、およびPCR条件は、当業者によって適宜選択され得る。好ましくは、プライマーは、15〜30個、より好ましくは20個〜25個のヌクレオチドからなる。PCRによって得られたPTNのDNAは、当業者に公知の方法を用いてクローニングされ得る。クローニングされたPTNのDNAは、適切な発現ベクターに組み込まれ、PTNタンパク質の取得に用いられ得る。
【0017】
PTNのタンパク質は、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であり得る。PTNは、細胞外への分泌に必要なシグナル配列を含むN末端領域と、ヘパリン結合部位を含むC末端領域から構成される。N末端領域は、配列表の配列番号2の第1番目〜第96番目のアミノ酸配列(配列表の配列番号1の第364番目〜第651番目の塩基配列に相当)で構成され、C末端領域は、配列表の配列番号2の第97番目〜第168番目のアミノ酸配列(配列表の配列番号1の第652番目〜第867番目の塩基配列に相当)で構成される。細胞外への分泌に必要なシグナル配列は、配列表の配列番号2の第1番目〜第32番目のアミノ酸配列(配列表の配列番号1の第364番目〜第459番目の塩基配列に相当)で構成され、ヘパリン結合部位は、配列表の配列番号2の第102番目〜第142番目のアミノ酸配列(配列表の配列番号1の第667番目〜第789番目の塩基配列に相当)の範囲に含まれる3か所のドメインから構成される。PTNは、168アミノ酸残基からなる前駆体として生成され、プロセシングによりN末端ドメイン中の32アミノ酸残基からなるシグナル配列が除かれ、成熟タンパク質となる。PTNは血管新生や細胞増殖等に関与するミッドカイン(midkine)(MK)と約50%のアミノ酸配列の相同性を有する(J.Bone Miner.Res.18:47−57(2003))。
【0018】
PTNのタンパク質は、当業者に公知の遺伝子工学的手段(Sambrookら編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第2版、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press)によって容易に得ることができる。PTNのタンパク質は、例えば、実施例に記載されるように、PTNのDNAを発現ベクターに組み込み、このPTN発現ベクターを宿主(例えば、細胞)に導入し、その宿主自体またはその培養上清等から回収することによって得ることができる。
【0019】
PTNのDNAを組み込む発現ベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、宿主の種類および使用目的に応じて適宜選択され得る。PTNタンパク質を細胞で発現させて培養上清から回収する場合、回収率を上げるために、PTNの細胞外への分泌を促進するような配列(例えば、IgG Fc鎖をコードするDNA)をPTNのDNAの前または後ろに組み込んだPTN発現ベクターを用いることができる。
【0020】
宿主としては、原核生物であっても真核生物であってもよい。原核生物としては、例えば、大腸菌が挙げられる。真核生物としては、例えば、酵母、昆虫、ヒト、マウス、ラット、またはサル由来の細胞が挙げられ、ヒト、マウス、ラット、またはサル由来の細胞が好ましい。
【0021】
PTNのDNAを組み込んだPTN発現ベクターは、当業者に公知の手段によって宿主に導入され得る。導入した遺伝子の細胞での発現は、核外遺伝子を利用する自律複製系を利用するものであってもよいし、遺伝子発現の安定性を考慮して染色体内へPTNのDNAをインテグレートするものであってもよい。簡便には、自律複製系が好ましい。
【0022】
PTNタンパク質の宿主からの回収方法は、当業者に公知の方法に従い、細胞自体または細胞の培養上清から回収し得る。PTNタンパク質は、例えば、実施例に記載されるように、培養上清への分泌を促進する配列を連結したPTN発現ベクターを用いる場合、PTN発現ベクターを導入した細胞の培養上清からPTN画分として回収することができる。回収したPTN画分は、当業者に公知の方法、例えば、PTNに特異的な抗体を用いて精製することができる。
【0023】
PTNは、受容体を介して様々な生体機能に関与することが報告されている。PTNは、約50%のアミノ酸配列の相同性を有するMKと共通の受容体を介することが報告されている。このような受容体としては、例えば、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの一種である受容体型プロテインチロシンホスファターゼζ(receptor−type tyrosine phosphatase ζ)(PTPζ)が挙げられる(J.Biol.Chem.274:12474−12479(1999))。MKは神経細胞の細胞移動のシグナルを活性化し、PTNにも同様の作用を有することが示唆された。また、PTNは、PTPζのタンパク質部分に結合し、β−カテニンを経由して細胞運動を調節することが報告されている(Matrix Biology.19:377−387(2000))。
【0024】
PTNに対する別の受容体としては、Anaplastic Leukemia Kinase(ALK)が挙げられる。ALKもまた、PTNおよびMKに共通する受容体であることが報告されている(J.Biol.Chem.276:16772−16779(2001))。ALKは、PTNに対する受容体としてヒト胎児脳cDNAライブラリーから単離された。PTNはALKとその下流因子であるIRS−1、Shc、ホスホリパーゼC−γ(phospholipase C−γ)、ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ(phosphatidylinositol 3−kinase)をリン酸化する。また、PTNが増殖促進を引き起こす株はALKも連動して発現していることから、PTNが細胞増殖シグナルに関与することが示唆された。
【0025】
PTNに対する別の受容体としては、N−シンデカン(N−syndecan)が挙げられる。N−シンデカンもまた、PTNおよびMKに共通する受容体であり、PTNおよびMKは、固相アッセイにおいて、ヘパラン硫酸に依存してシンデカン−1に結合する(Matrix Biology.19:377−387(2000))。また、PTNは、神経細胞や骨芽様細胞において表面受容体N−シンデカンの糖鎖に結合し、細胞膜の直下に存在するCASK−コルタクチン(CASK−cortactin)複合体を介してsrc−ファミリーキナーゼ(src−family kinase)を活性化し、細胞運動性を調節する細胞骨格を制御するシグナルを発生させることが報告されている。
【0026】
本明細書において「プレイオトロフィン誘導体」または「PTN誘導体」とは、PTNの塩基配列に類似する塩基配列のDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質またはPTNのアミノ酸配列に類似するアミノ酸配列からなるタンパク質であれば特に限定されない。PTN誘導体としては、例えば、以下のタンパク質が挙げられる:
(1)配列表の配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTRAP活性を阻害するタンパク質;
(2)配列表の配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTRAP活性を阻害するタンパク質;
(3)配列表の配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列相同性を有するDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTRAP活性を阻害するタンパク質;
(4)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTRAP活性を阻害するタンパク質;
(5)配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%の配列相同性を有するアミノ酸配列からなり、かつTRAP活性を阻害するタンパク質。
これらのPTN誘導体は、天然に存在するPTN誘導体であってもよいし、配列表の配列番号1に記載の塩基配列および/または配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列をもとに、部位特異的変異誘発またはPCR法等の公知の遺伝子工学的方法等(Sambrookら編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第2版、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Press)を用いて作製したものであってもよい。
【0027】
PTN誘導体は、例えば、配列表の配列番号1に記載の塩基配列に公知の遺伝子工学的手法を用いて変異を導入し、得られたDNAを適切な発現ベクターに組み込み、得られた発現ベクターを適切な細胞に導入して発現させ、発現したタンパク質を細胞または培地から回収することによって得ることができる。塩基配列の変異とは、塩基の付加(挿入を含む)、欠失、または置換をいう。あるいは、PTN誘導体は、例えば、配列表の配列番号2に記載のアミノ酸配列に公知の蛋白質工学的手法を用いて変異を導入することによって作製することができる。アミノ酸配列の変異とは、アミノ酸の付加(挿入を含む)、欠失、または置換をいう。変異は、TRAP活性を阻害するという機能を損なわない部位に導入することが好ましく、具体的には、細胞外への分泌に必要なシグナル配列やヘパリンが結合する部位の立体構造または親和性等を大きく変えない変異であることが好ましい。
【0028】
本明細書において「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、例えば、Sambrookら編、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 第2版、1989年、Cold Spring Harbor Laboratory Pressに記載の条件が挙げられる。「ストリンジェントな条件下」とは、具体的には、例えば、6×SSC、0.5% SDS、および50% ホルムアミドの溶液中で42℃にて加温した後、0.1×SSC、0.5% SDSの溶液中で68℃にて洗浄する条件が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
本明細書において、「RANKL」とは、破骨前駆細胞を破骨細胞に分化させる作用を有するReceptor Activator of NFκB Ligandのことをいう。RANKLは、大腸菌組換え型のRANKLとして市販(例えば、CHEMICON)されている。RANKLは、単独、またはマクロファージコロニー刺激因子(Macrophage−Colony Stimulating Factor)(M−CSF)との共存下で、破骨前駆細胞を破骨細胞に分化させることが知られている(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.95:3597−3602(1998))。
【0030】
本明細書において、「TRAP」とは、酸性条件下でホスファターゼとして作用し、酒石酸存在下でもその活性を失わない、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(Tartrate Resistant Acidic Phosphatase)のことをいう。TRAPは、破骨細胞において強く発現し、破骨細胞のマーカーとして使用されている。
【0031】
本明細書において、「TRAP活性」とは、TRAPアッセイの際にTRAPタンパク質の発現が検出されることをいう。TRAPアッセイは、例えば、試験する細胞をマイクロプレートのウェルやスライドガラス上にホルムアルデヒド等で固定し、発光基質を溶解した酒石酸含有緩衝液を加え、37℃で数時間インキュベートすることによって検出することができる。TRAPアッセイについては、例えば、J.Biol.Chem.279:13984−13992(2004)に記載されている。
【0032】
本発明者らは、RANKLをマウスマクロファージ由来破骨前駆細胞RAW264.7細胞に作用させた場合に検出されるTRAPタンパク質の発現が、PTNによって阻害されることを見出した。これは、RANKLによって誘導される264.7細胞の破骨細胞への分化が、PTNによって阻害されたことを示す。さらに、本発明者らは、RANKLおよびM−CSFをラット骨髄由来破骨前駆細胞に作用させた場合に検出されるTRAPタンパク質の発現ならびに破骨細胞化が、PTNによって阻害されることを見出した。これは、RANKLおよびM−CSFによって誘導されるラット骨髄由来破骨前駆細胞の破骨細胞への分化が、PTNによって阻害されたことを示す。
【0033】
これらの知見に基づき、本発明者は、PTNを破骨前駆細胞から破骨細胞への分化の抑制剤および/または阻害剤として使用することができ、さらには破骨前駆細胞の破骨細胞への分化を抑制することによって骨吸収が抑えられるため、PTNを骨吸収の抑制剤および/または阻害剤として使用することができると考えた。
【0034】
骨は、絶えまない骨形成作用と骨吸収作用によって維持されており、骨形成作用と骨吸収作用のバランスが崩れると種々の骨の疾患が引き起こされる。破骨前駆細胞から破骨細胞への分化が過剰になると種々の疾患(例えば、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、または高カルシウム血症)を引き起こすことが知られている。PTNによって破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を抑えることができるので、PTNは破骨前駆細胞から破骨細胞への過剰な分化に起因する疾患(例えば、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、または高カルシウム血症)の予防剤および/または治療剤として使用することができる。
【0035】
本発明に係る破骨細胞分化抑制剤および/または阻害剤、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤、骨粗鬆症の予防剤および/または治療剤、慢性関節リウマチの予防剤および/または治療剤、変形性関節症の予防剤および/または治療剤、または高カルシウム血症の予防剤および/または治療剤は、PTNまたはPTN誘導体を有効成分とした医薬組成物として調製することができる。PTNまたはPTN誘導体を含む医薬組成物は、通常のタンパク質製剤と同様に調製することができる。
【0036】
医薬組成物の投与経路は特に限定されず、経口投与でも非経口投与でもよい。非経口投与としては、例えば、静脈内投与、経皮投与、皮下投与、筋肉内投与、または腹腔内投与が挙げられる。
【0037】
医薬組成物の剤型は特に限定されず、用途に応じて適宜選択され得、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤、もしくは坐剤等の固形製剤、または注射剤、懸濁剤、シロップ、エリキシル剤、もしくは乳剤等の液体製剤として投与され得る。液体製剤を使用する場合、溶液を凍結乾燥して固形製剤とし、用時調製の製剤として使用することもできる。
【0038】
医薬組成物の調製方法としては投与法に応じ適当な製剤を選択し、通常用いられている各種製剤の調製方法にて調製できる。医薬組成物中には、剤型に応じて、適宜、賦形剤、分散剤、崩壊剤、充填剤、結合剤、湿潤剤、滑沢剤、増量剤、安定剤、防腐剤、緩衝剤、等張化剤、キレート剤、pH調節剤等を使用してもよい。
【0039】
医薬組成物の投与量は特に限定されず、患者の身長、体重、年齢、性別、もしくは病歴、疾患の重篤度、投与経路、投与形態等に応じて担当医の判断によって適宜選択され、一般的には、有効成分としてPTNを0.001μg/kg/日〜100mg/kg/日、0.01μg/kg/日〜10mg/kg/日、または0.1μg/kg/日〜1mg/kg/日の範囲で投与することができる。投与期間は特に限定されず、数日〜数ヶ月または数日〜数週間にわたって投与することができる。投与間隔も特に限定されず、例えば、1日に1〜3回、または2〜3日に数回投与されてもよい。
【0040】
本発明はまた、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤の同定方法に関する。本発明の破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤の同定方法は、破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を誘導する条件下で試験化合物を添加し、破骨細胞への分化が抑制および/または阻害された場合に該試験化合物を破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤として同定する工程を包含する。具体的には、本発明の同定方法は、(1)プレイオトロフィンまたは試験化合物の存在下で、破骨前駆細胞に、破骨前駆細胞の破骨細胞への分化を誘導する物質(破骨細胞分化誘導物質)を添加する工程;(2)破骨前駆細胞の破骨細胞への分化の程度を測定する工程;(3)試験化合物を添加した破骨前駆細胞の破骨細胞への分化が、プレイオトロフィンを添加した破骨前駆細胞と同様に抑えられた場合、該試験化合物を破骨細胞への分化を抑制および/または阻害する試験化合物として選択する工程を包含する。
【0041】
上記試験化合物は、低分子化合物であってもよいし、プレイオトロフィンの誘導体からなるタンパク質であってもよい。上記試験化合物としては、例えば、化学ライブラリーや天然物由来の化合物、または、PTNの塩基配列、アミノ酸配列、もしくは立体構造に基づいてドラックデザインして得られた化合物またはタンパク質等が挙げられる。
【0042】
「破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を誘導する条件」とは、破骨前駆細胞に直接的または間接的に作用して破骨前駆細胞の破骨細胞への分化を誘導する物質(破骨細胞分化誘導物質)を破骨前駆細胞に添加することを意味する。破骨前駆細胞から破骨細胞への分化誘導方法としては、例えば、RANKLを破骨前駆細胞に添加すること、またはRANKLとM−CSFを破骨前駆細胞に添加することが挙げられる。本発明の実施例で用いたマウスマクロファージ由来破骨前駆細胞RAW264.7細胞は、RANKL依存的に容易に破骨細胞様細胞に誘導され、破骨細胞試験系を構築する際に骨芽細胞、ストローマ細胞、M−CSFのような外的要素が必要でないため、同種試験系のモデル細胞として頻用されている(J.Bone Miner.Res.18:47−57(2003))。また、本発明の実施例で用いたラット骨髄由来破骨前駆細胞は、RANKLおよびM−CSFの存在下で破骨細胞に分化することが知られている(Mol.Biol.Cell 3:85−93(1992))。
【0043】
破骨前駆細胞から破骨細胞への分化を確認する手段は特に限定されず、破骨細胞に分化したことを示す適切なマーカーまたは活性を測定してもよいし、形態学的に判断してもよい。破骨細胞の分化マーカーとしては、例えば、TRAPが挙げられる。例えば、破骨前駆細胞に破骨細胞分化誘導物質および試験化合物を添加して分化を誘導し、その後、TRAPの発現の程度を検出する。この細胞におけるTRAPの発現が、破骨細胞分化誘導物質とPTNを添加した細胞における場合と同様に抑制および/または阻害された場合、該試験化合物を、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤として同定することができる。TRAPの発現が破骨細胞分化誘導物質とPTNを添加した細胞と同様に抑制および/または阻害されたかどうかは、TRAPの発現量やTRAPの発現が減少するタイミングを測定することにより判断することができる。
【0044】
本発明の同定方法に用いられる破骨前駆細胞は、例えば、ヒト、サル、ラット、マウス、ウシ、ウマ由来の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の同定方法に用いられる破骨前駆細胞としては特に限定されず、株化細胞であっても初代培養細胞であってもよい。本発明の同定方法に用いられる株化細胞としては、例えば、本発明の実施例で用いたマウスマクロファージ由来破骨前駆細胞であるRAW264.7細胞が挙げられる。本発明の同定方法に用いられる初代培養細胞としては、例えば、本発明の実施例で用いたラット骨髄由来破骨前駆細胞が挙げられる。大規模な試験化合物のスクリーニングに本発明の同定方法を使用する場合、用いる細胞は、入手が容易であるので株化細胞が好ましい。また、本発明の同定方法において、最初に株化細胞を用いて数種類の試験化合物を選抜し、選抜された試験化合物の破骨細胞分化抑制作用および/または破骨細胞分化阻害作用を初代培養細胞で確認してもよい。本発明の同定方法に用いられる破骨前駆細胞の培地、培養時間、培養方法は、選択された細胞に応じて適宜変更され得る。本発明の同定方法において、破骨前駆細胞への破骨細胞分化誘導物質および/または試験化合物の添加は、細胞の播種と同時であっても細胞の播種後であってもよいが、破骨前駆細胞を播種して12〜24時間後に添加することが好ましい。試験化合物は、破骨細胞分化誘導物質の添加前に添加してもよいし、破骨細胞分化誘導物質と同時に添加してもよいし、破骨細胞分化誘導物質の添加後に添加してもよい。破骨細胞分化の初期段階を阻害する物質を同定する場合、試験化合物は、破骨細胞分化誘導物質の添加前または破骨細胞分化誘導物質と同時に添加することが好ましい。破骨細胞分化の後期段階を阻害する物質を同定する場合、試験化合物は、破骨細胞分化誘導物質の添加後に添加することが好ましい。
【0045】
本発明の同定方法によって同定された破骨細胞分化抑制作用および/または破骨細胞分化阻害作用を有する化合物またはタンパク質は、PTNまたはPTN誘導体を有効成分とする前述の破骨細胞分化抑制剤および/または阻害剤、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤、骨粗鬆症の予防剤および/または治療剤、慢性関節リウマチの予防剤および/または治療剤、変形性関節症の予防剤および/または治療剤、または高カルシウム血症の予防剤および/または治療剤と同様に、それら化合物またはタンパク質を有効成分とした医薬組成物として調製することができる。
【0046】
本発明の同定方法によって同定された化合物を有効成分とする医薬組成物の投与方法、調製方法、投与量等は、前述の医薬組成物のものと同様である。
【0047】
以下に示す実施例によって本願発明を具体的に説明するが、本願発明はこれらに限定されるものではなく、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されない。
【実施例】
【0048】
(実施例1:プレイオトロフィン発現ベクターの作成)
ヒトプレイオトロフィン(ヒトPTN)をcDNAライブラリーQUICK Clone(ベクトンディッキンソン バイオサイエンス社製)からクローニングした。クローニングには、プライマーとしてPTN−Forward(配列表の配列番号3)とPTN−Reverse(配列表の配列番号4)を用いた。プライマーはシグナル配列を除去するように設計し、かつ適切な制限酵素部位を配置した。PTN−ForwardはBamH I部位GGATCCの下流にコザック配列 GCCと開始コドンATGが並ぶように設計した。PTN−Reverseは、終止コドンTAAの直後にXho I部位CTCGAGが並ぶように設計した。
PTN−Forward:5’−GCGGATCCGCCATGCAGGCTCAACAGTACCAG−3’(配列表の配列番号3)
PTN−Reverse:5’−GCCTCGAGTTAATCCAGCATCTTCTCCTG−3’(配列表の配列番号4)
上記のcDNAライブラリー、PTN−Forward(配列表の配列番号3)、およびPTN−Reverse(配列表の配列番号4)を用いたPCR反応により、ヒトPTNのcDNAに対応する、約500bpのPCR産物を得た。得られたPCR産物をクローニング用ベクターpCR BluntII TOPO(インビトロジェン社製)に組込み、クローニングに用いた。得られた組換えクローンを制限酵素BamH IおよびXho Iで消化することによって、PTN cDNAを、pCR BluntII TOPOから分離した。
【0049】
次に、動物細胞発現用ベクターpCI(プロメガ社製)にヒトIgG1 Fc鎖の塩基配列(配列表の配列番号5)を挿入した動物細胞発現用ベクターpCI(Fc)を作製した。配列表の配列番号5で表される塩基配列によって316アミノ酸残基のタンパク質(配列表の配列番号6)がコードされる。このpCI(Fc)ベクターに目的のタンパク質を挿入すると、該タンパク質はFc鎖との融合タンパク質として発現され、細胞外に分泌する能力を獲得する。
【0050】
制限酵素認識配列をNhe I−Bam HI−Eco RV−Mlu I−Eco RI−Xho I−Kpn Iの順に含む下記のDNAオリゴマーを合成した。
センス:CTAGCGGATCCGATATCACGCGTGAATTCCTCGAGGGTACCATAAGAATGC(配列表の配列番号7)
アンチセンス:GGCCGCATTCTTATGGTACCCTCGAGGAATTCACGCGTGATATCGGATCCG(配列表の配列番号8)
これらの合成オリゴマーをアニーリングによって2重鎖化し、pCIのマルチクローニングサイト中のNhe I−Kpn I領域と置換した。ヒトIgG1 Fc鎖のDNA(配列表の配列番号5)は、Kpn I認識配列を含むFc−Forward:GGTACCCACACATGCCCACCGTGCCC(配列表の配列番号9)およびNot I認識配列を含むFc−Reverse:GCGGCCGCTCATTTACCCGGAGACAGGGAGAG(配列表の配列番号10)を用いて、ヒト胎盤cDNAライブラリー(ベクトンディッキンソン社製)を鋳型としたPCRにより得た。得られたFc断片を、上述のマルチクローニング部位を改変したpCIの、Kpn I−Not I間に組み込み、pCI(Fc)を得た。
【0051】
pCI(Fc)をBamHIおよびXhoIで消化し、これを上述のpCR BluntII TOPOから分離、精製したPTN cDNAと連結させ、Fc融合PTNを発現するpCI(Fc)/sPTNベクターを得た。
【0052】
2μgのpCI(Fc)またはpCI(Fc)/sPTNとトランスフェクション試薬FuGen6(Roche)6μlをOpti−MEMで100μlに調整し、この混合液を、6ウェルプレートに播種したHEK293T細胞(5×10個/2.5ml/ウェル)に加えた。24時間後、培養上清を回収し、Protein G Sepharose(アマシャム バイオサイエンス社製)を用いてPTN−Fc融合タンパク質を回収した。回収したPTN−Fc融合タンパク質の一部をSDS−PAGEに供試し、その後、抗ヒトIgG抗体を用いたウエスタンブロット解析を実施した(図1B)。また、Protein G Sepharose回収サンプルをSDS−PAGE後、銀染色した(図1A)。培養上清の免疫沈降により、ヒトPTNとヒトIgG1 Fc鎖と融合した、約50kDaのバンドが確認されたので、翻訳産物は遊離型として細胞外に放出されていることがわかった(図1B)。
【0053】
(実施例2:PTNの調整)
2μgのpCI(Fc)/sPTNを、実施例1の方法に従って、5×10個/2.5ml/ウェルで播種したHEK293T細胞に導入した。24時間後、培地を、ウシ胎児血清を含まないOpti−MEM培地(インビトロジェン社製)と交換した。さらに24時間後、培地上清を回収し、これを遊離型PTN画分とした。
【0054】
(実施例3:RAW264.7細胞におけるPTNの破骨細胞分化抑制作用)
RAW264.7細胞(マウスマクロファージ由来破骨前駆細胞)を10% FCS含有D−MEMに懸濁し、5×10個/500μl/ウェルの濃度で6ウェルプレートに播種した。RAW264.7細胞はRANKL依存的に容易に破骨細胞様細胞に誘導され、破骨細胞試験系を構築する際に骨芽細胞、ストローマ細胞、M−CSFのような外的要素を必要としない。従って、取扱いが簡便であり、破骨前駆細胞分化の研究において一般的に利用されている(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:3540−3545(1999))。
【0055】
播種の翌日、遊離型PTN画分を培地の1/4量になるように添加した。4時間後、RANKL(大腸菌組換え型、CHEMICON社製)を最終濃度100ng/mlになるように添加した。
【0056】
3日間の培養後、この細胞をTRAPアッセイに供試した。TRAPアッセイは、TRAP Assay Kit(セルガレージ)を用い、破骨細胞化マーカータンパク質であるTRAPで細胞を染色した。細胞をPBSで洗浄し、4%ホルムアルデヒドで10分間固定した。水で洗浄後、発色基質を溶解した酒石酸含有緩衝液を加え、37℃で1時間インキュベートして発色させた。次いで、細胞を光学顕微鏡にて観察した。
【0057】
RAW264.7をRANKLで処理すると、処理後3日で顕著にTRAP陽性細胞が認められ(図2−2)、破骨細胞への分化が促進された。PTNはこのRANKLによるTRAPの活性化を抑制し、破骨細胞への分化を阻害した(図2−3)。また、RANKLによるRAW264.7細胞の破骨細胞分化がPTNによって抑制されるときに、細胞の形態が類球形から紡錘形に変化し、コロニーを形成する細胞集団の間隔が空いて緩やかに広がる現象が観察された(図2−3)。
【0058】
(実施例4:ラット骨髄由来破骨前駆細胞におけるPTNの破骨細胞分化抑制作用)
ラット骨髄由来破骨前駆細胞(ホクドー社製)をOsteoclast Basal Medium(OBM)に懸濁し、5×10個/500μl/ウェルの濃度で6ウェルプレートに播種した。ラット骨髄由来破骨前駆細胞は、RANKLおよびM−CSFの存在下で、破骨細胞に分化する。
【0059】
播種の翌日、遊離型PTN画分を培地の1/4量になるように添加した。4時間後、RANKLを最終濃度100ng/ml、M−CSF(大腸菌組換え型、CHEMICON社製)を最終濃度10ng/mlになるように添加した。5日間培養した後、TRAPアッセイに供試した。TRAPアッセイは、実施例3と同様に実施し、染色した細胞を、光学顕微鏡にて観察した。
【0060】
M−CSFのみを添加した細胞(図3−1)およびRANKLのみを添加した細胞(図3−2)は、いずれも、TRAP活性を示さなかった。RANKLおよびM−CSFを添加した細胞は、顕著にTRAP活性を示した(図3−3)。このRANKLおよびM−CSFの両方を添加した細胞は、TRAP陽性細胞のみならず、破骨細胞を生じた(図3−3および図4)。これは、ラット骨髄由来破骨前駆細胞の破骨細胞への分化には、RANKLのみまたはM−CSFのみの作用では不十分であり、RANKLおよびM−CSFの両方を必要とすることを示す。
【0061】
PTNは、このようなRANKLおよびM−CSFによる破骨細胞化を阻止した(図3−6)。また、M−CSFおよびPTNを添加した細胞(図3−4)、RANKLおよびPTNを添加した細胞(図3−5)、ならびにRANKL、M−CSF、およびPTNのいずれも添加しなかった細胞(図は示さず。)は、破骨細胞に分化しなかった。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1は、プラスミドpCI(Fc)/sPTNまたはpCI(Fc)をHEK293T細胞に導入し、銀染色(A)またはウェスタンブロッティング(B)にて発現を確認した図である。ProteinG共沈画分をSDS−PAGEに供試し、銀染色した(A)(レーンの左側の数字は、タンパク質の大きさ(kDa)を示す)。ProteinG共沈画分をウェスタンブロッティングに供試し、抗ヒトIgG抗体を用いて検出した(B)(レーンの左側の数字は、タンパク質の大きさ(kDa)を示す)。PTN−Fc融合タンパク質は約50kDaである。pCI/PTN−Fcプラスミドを導入したHEK293T細胞は、PTN−Fc融合タンパク質を発現した。プラスミドpCI(Fc)は、Fc配列を含むがATGコドン配列を含まないので、Fcタンパク質を発現しない。
【図2】図2は、PTNが、RANKLによるRAW264.7の破骨細胞分化を阻害することを示す図である。本観察において、暗緑色に見えるのがTRAP陽性細胞である。図2−1は、RANKLもPTNも添加していない細胞である。図2−2は、RANKLのみを添加した細胞である。図2−3は、RANKLおよびPTNを添加した細胞である。
【図3】図3は、PTNが、RANKLおよびM−CSFによるラット破骨前駆細胞の破骨細胞化を阻害することを示す図である。本観察は、図2の場合とは異なるフィルターを用いて観察したので、TRAP陽性細胞は赤色に見える。図3−1〜図3−6は、それぞれ、ラット破骨前駆細胞に下記の組み合わせで化合物を添加したときのTRAP活性の結果を示す。図3−1:M−CSF。図3−2:RANKL。図3−3:RANKLおよびM−CSF。図3−4:M−CSFおよびPTN。図3−5:RANKLおよびPTN。図3−6:RANKL、M−CSF、およびPTN。
【図4】図4は、図3−3と同じ処理をしたの細胞のうち、成熟破骨細胞に特徴的な形態を示した細胞を示す図である。ラット破骨前駆細胞は、RANKL/M−CSF処理により多数の細胞が融合して形成された巨大多核細胞(成熟破骨細胞)を生じた。
【配列表フリーテキスト】
【0063】
配列番号1:ヒトプレイオトロフィン遺伝子。
配列番号2:ヒトプレイオトロフィン遺伝子(配列番号1)によってコードされるタンパク質。
配列番号3:ヒトプレイオトロフィンのForwardプライマー
配列番号4:ヒトプレイオトロフィンのReverseプライマー
配列番号5:ヒトイムノグロブリンG1 Fcフラグメント。
配列番号6:ヒトイムノグロブリンG1 Fcフラグメント(配列番号5)によってコードされるタンパク質。
配列番号7:発現ベクターpCI(Fc)の作製に用いたDNAオリゴマーのセンス鎖
配列番号8:発現ベクターpCI(Fc)の作製に用いたDNAオリゴマーのアンチセンス鎖
配列番号9:ヒトイムノグロブリンG1 FcフラグメントのForwardプライマー
配列番号10:ヒトイムノグロブリンG1 FcフラグメントのReverseプライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤。
【請求項2】
プレイオトロフィンを含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤。
【請求項3】
次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項4】
次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、骨吸収の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項5】
プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
【請求項6】
プレイオトロフィンを含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
【請求項7】
次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項8】
次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項9】
プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
【請求項10】
プレイオトロフィンを含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤。
【請求項11】
次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項12】
次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)による破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項13】
プレイオトロフィンおよび/またはプレイオトロフィン誘導体を含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤。
【請求項14】
プレイオトロフィンを含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤。
【請求項15】
次の(1)〜(4)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤:
(1)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号1に記載の塩基配列において1若しくは数個の塩基が欠失、置換、もしくは付加されたDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;
(3)配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(4)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも70%相同な塩基配列からなるDNAによってコードされるアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項16】
次の(1)〜(3)からなる群より選択されるタンパク質を含む、破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患の予防剤および/または治療剤:
(1)配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパク質;
(2)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換、もしくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質;および
(3)配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも70%相同なアミノ酸配列からなるタンパク質であって、かつTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性を抑制および/または阻害するタンパク質。
【請求項17】
破骨細胞の過剰な分化に起因する疾患が、骨粗鬆症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、または高カルシウム血症である、請求項13〜16のいずれか1項に記載の予防剤および/または治療剤。
【請求項18】
次の(1)〜(3)の工程を含む、破骨細胞分化の抑制剤および/または阻害剤の同定方法:
(1)プレイオトロフィンまたは試験化合物の存在下で、破骨前駆細胞に破骨細胞誘導物質を添加する工程;
(2)破骨前駆細胞の破骨細胞への分化の程度を測定する工程;および
(3)試験化合物を添加した破骨前駆細胞の破骨細胞への分化が、プレイオトロフィンを添加した破骨前駆細胞と同様に抑えられた場合、該試験化合物を破骨細胞への分化を抑制および/または阻害する試験化合物として選択する工程。
【請求項19】
破骨前駆細胞の破骨細胞への分化の程度を、細胞のTartrate Resistant Acidic Phosphatase(TRAP)活性によって判断する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
破骨前駆細胞が株化細胞である、請求項18または19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
破骨細胞誘導物質が、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
破骨前駆細胞が初代培養細胞である、請求項18または19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
破骨細胞誘導物質が、Receptor Activator of NFκB Ligand(RANKL)およびMacrophage−Colony Stimulating Factor(M−CSF)である、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−231001(P2007−231001A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17509(P2007−17509)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000002831)第一製薬株式会社 (129)
【Fターム(参考)】