説明

3種類の密度のゲルのヒール・カップ

一体壁のヒール部分から、使用時に人の足の土踏まず領域の一部の下に位置するように構成された前縁まで延びる長さを有する全体的にヒール形の基部を備える、3種類の密度のヒール・カップが開示される。ヒール形基部は、足受容面と靴側面を有する構造ゲル層を備える。足受容面の全体的に平らな部分は、使用時に着用者の足の裏に隣接して位置することになる。使用時に着用者のヒールの後部および側部の一部に隣接して位置するようにされる一体壁は、最大高さの頂部を有し、その高さは前記頂部から前記前縁に向かって次第に減少する。靴側面は、補強構成要素を受けるように構成された、前記構造ゲル内に形成される溝を画成する。補強構成要素は、前記溝内で前記構造ゲルに固定され、前記構造ゲルよりも高密度の材料で作製される。補強構成要素は、ヒール・カップと足に支持をもたらす。ヒール・クッションは、ヒール・カップの裏面の、構造ゲルにより画成されるヒール・クッション領域内で前記構造ゲルに固定される。好ましい一実施形態では、ヒール・クッションは、緩衝性およびエネルギー・リターンの増大をもたらすハニカム技術を利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2008年1月16日出願の米国仮特許出願第61/021,535号の利得を請求する。
【0002】
連邦政府支援の研究または開発に関する記述
該当なし
【0003】
本発明は、靴の内部に装着されるヒール支持体の分野に関する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【図1】好ましい実施形態の上面図である。
【図2】好ましい実施形態の裏面図である。
【図3】好ましい実施形態の斜視図である。
【図4】好ましい実施形態の分解図である。
【図5】図2の5−5に沿った、好ましい実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
有利には衝撃を吸収し、足のヒール領域に支持をもたらす、3種類の密度のヒール・カップすなわち支持体(「TDヒール・カップ」)が開示される。上面図から、TDヒール・カップは、後方ヒール壁から前縁まで延びる。使用時には、後方ヒール壁は、踵骨または腓側足根骨(os tarsi fibulare)により形成される着用者のヒールの後部に隣接して位置することになる。前縁は、着用者の足の裏の本質的に土踏まず領域内またはその付近に隣接して位置することになる。着用者の足は靴下類で覆われ得ると企図され、本明細書で足について言及するとき、特別の定めがない限り、靴下類、ソックスなどで覆われた足を含むもとする。
【0006】
TDヒール・カップは、使用時に着用者の足の裏に接触することになる全体的に平らな領域を備える。平らな領域と一体でありそこから上方向に延びるのは、ヒール・カップの後方中央で最大高さになる壁部である。壁は、高さが、ヒール・カップの後方中央でのその最大高さ部分から、ヒール・カップの前縁での平らな領域の高さまたはほぼその高さまで次第に減少する。ヒール・カップの内側部分は、着用者の足を受けるようになされ、使用時にそれに隣接して位置する。ヒール・カップの外側部分は、使用者の靴に隣接して位置するように構成される。内側部分は、ゲル材料を備える。外側部分は、ゲル材料、前記ゲル材料に取り付けられる補強構成要素およびヒール・クッションを備える。ヒール・クッションは、ゲルに一体に形成されるゲルの裏面のくぼみに挿入される。
【0007】
ゲル材料は、好ましくは、TPEゲルとしても知られる熱可塑性エラストマー・ゲルからなる。TPEゲルは、熱可塑性であることから弾力性がより大きいため、本発明での使用には、ポリウレタン(PU)ゲルよりも好ましい。TPEゲルは成形プロセスにおいて20〜30秒でセット・アップ可能であるのに対して、例えばPUゲルである他の材料は数分かかり得るので、TPEゲルが望ましい。ある材料がセット・アップに数分かかる場合、それは効率的なやり方での射出成形に適さない恐れがあり、ヒール・カップの様々な構成要素を分けて成形し次いで組み立てざるを得なくなるはずである。ゲルに使用される材料は、ヒール・カップが堅固なまま比較的薄くされ得るように、堅固であることが好ましい。薄い性質のヒール・カップは、ドレス・シューズなど、靴の足キャビティの空間がより小さく設計される靴においてより大きな足空間を可能にするのに好ましい。しかし、ヒール・カップは、運動競技用の靴など、足キャビティがより大きい靴での使用にも適する。
【0008】
市販のTPEゲルには様々なタイプがあり、そのうちの2つは、熱可塑性ポリウレタン・エラストマー(「TPU」)ゲルおよび熱可塑性ゴム(「TPR」)ゲルとして知られている。TPUゲルは、TPRゲルよりも優れた色特性をもたらすので、色特性がとても重要である場合に選ばれ得る。さらに、TPUは、TPRゲルよりも耐久性がありかつ成形しやすい。このように、TPUは、最終製品またはインソール作製プロセスにこれらの特性の付与が望まれる場合、本発明を作製するにあたって使用するのに好ましい。TPUの欠点は、これまで、TPRゲルなどの他のTPEゲルと比較してコストがより高いことであった。TPRもゲルに使用することができ、必要な諸特性を有する。他のゲルも使用可能であるが、使用ゲルは以下の段落で述べられる諸特性を有することが好ましい。
【0009】
好ましいゲルは圧縮歪みが小さい。圧縮歪みは、一定時間回復する間、特定の温度で定められた量の百分率(%)で圧縮後にサンプルが示す永久歪み量と定義される。好ましい一実施形態では、圧縮歪みは、ゲル層について、11±2%未満である。本発明での使用に適切なゲルを選ぶために、ゲルは、圧縮歪みすなわち衝撃の測定に使用される試験装置で、ASTMインターナショナルのASTM F1614−95「運動競技用履物の材料系の衝撃軽減特性の標準試験方法(Standard Test Method for Shock Attenuating Properties of Materials Systems for Athletic Footwear)」に従って試験され得る。例えば、Exeter Research社のCompITSすなわちコンピュータ衝撃試験システムは、ASTM F1614−95に従って衝撃を試験する標準的な機械である。
【0010】
引張強度および引裂強度:好ましい実施形態では、ゲル層の引張強度および引裂強度は、約1.2MPaおよび約12kN/mであると判明した。
【0011】
破断伸び率:好ましい実施形態では、ゲル層の破断伸び率は、900%であると判明した。
【0012】
ショア/アスカー硬度試験は硬さの尺度をもたらす。最も好ましい一実施形態では、ゲル層は、24±3アスカーCである。
【0013】
ショア/アスカー硬度は、市販のデュロメータで測定可能である。試験すべき材料は、硬質の平面上に配置される。アスカー試験機は、「C」スケールを装備し、適当な圧子タイプ、典型的には半球タイプである。アスカー試験機は、試験すべき材料上に追加圧力なしで配置される。針が曲がって示度をもたらす。
【0014】
補強構成要素は、ゲルよりも堅い密度の材料であり、ヒール・カップの靴側面について前記ゲル層に取り付けられる。好ましい一実施形態では、補強構成要素は、壁の頂部付近のヒール垂直壁の後部を全体にわたって延びる。次いで、補強構成要素は、ヒール・カップのベースに向かって下方向に曲がり、そしてヒール・カップの側部に沿って前縁の方に前方に延びる。
【0015】
補強構成要素は、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性加硫物(TPV)または熱可塑性ゴム(TPR)と同様の諸特性を有する任意の材料で作製され得る。好ましくは、補強構成要素は、TPR製である。好ましくは、補強構成要素の硬度は、約70±3アスカーである。
【0016】
好ましい実施形態のヒール・クッションは、ヒールの脂肪領域に対応するように設計される幅の広いベースを有する形にされ、全体的に、ヒール・カップのゲル材料により画成されるヒール開口に対応するU字形に次第に細くなる。上述の形は、ヒールのクレードリング(cradling)および緩衝性に効果的である。
【0017】
好ましい一実施形態では、圧縮歪みは、ヒール・クッションについて、11±2%未満である。本発明での使用に適切なゲルを選ぶために、ゲルは、圧縮歪みすなわち衝撃の測定に使用される試験装置で、ASTMインターナショナルのASTM F1614−95「運動競技用履物の材料系の衝撃軽減特性の標準試験方法」に従って試験され得る。例えば、Exeter Research社のCompITSすなわちコンピュータ衝撃試験システムは、ASTM F1614−95に従って衝撃を試験する標準的な機械である。
【0018】
引張強度および引裂強度:好ましい実施形態では、ヒール・クッションの引張強度および引裂強度は、約1.0MPaおよび約10.6kN/mであると判明した。
【0019】
破断伸び率:好ましい実施形態では、ヒール・クッションの破断伸び率は、950%であると判明した。
【0020】
ショア/アスカー硬度試験は硬さの尺度をもたらす。最も好ましい一実施形態では、ヒール・クッションは、20±3アスカーCである。
【0021】
ヒール・クッションは、好ましくは、TPRゲルとしても知られる熱可塑性ゴム・ゲルからなる。他のゲルも使用可能であるが、使用ゲルは以下の諸特性を有することが好ましい。
【0022】
ヒール・クッションの靴側面は、先進の緩衝機能を示す領域を備え得る。好ましい一実施形態にはハニカム技術が組み込まれ、それによってゲル層の一部がハニカム・パターンに成形される。ハニカム・パターンは、一時的に変形し次いで元の構造に戻ることにより力をそらすことで以前から知られている。「Recovery Systems Guide」Irvin Industries社、1978年、(Fisherに引用、Aerobraking and Impact Attenuation、1995年)を参照されたい。ハニカム・パターンに成形すべきゲル層部分は、本発明のヒールの高衝撃区域である。
【0023】
最も好ましい一実施形態では、硬度は、ベース層が24±3アスカーC、パッド層が20±3アスカーC、補強構成要素が70±3アスカーCである。
【0024】
ヒール・カップの全厚さ、高さ、長さおよび幅は、使用するヒール・カップの寸法に応じて変化可能である。ヒール・カップの寸法は、様々な靴の寸法または靴の寸法範囲に適合され得る。製品は、様々な寸法で製造され得る。製品の最も多い例では、全厚さは、ヒール領域の後部の頂部で、約20〜27mm、好ましくは約23.5〜26.5mmであってよい。長さは、約88〜108mm、好ましくは約90〜106.5mmである。幅は、ヒール領域の後部付近で、約60〜75mm、好ましくは約63〜72.5mm、前縁付近で、約53〜65mm、好ましくは約55.5〜63mmである。様々な靴の寸法の計算に使える幅/高さの比率はあるだろうか。
【0025】
ゲル材料、ヒール・クッションおよび補強構成要素は、好ましくは、射出成形プロセスにより成形され互いに固定される。好ましくは、ヒール・カップの作製に使用される鋳型は、両面に輪郭を有する。これによって、より迅速な組立てが可能になり、したがって射出成形プロセス中に鋳型が交換されなくてすむようになる。ゲル材料は、一方の側の鋳型で成形され、補強構成要素とヒール・クッションは反対側の鋳型で成形される。標準的な射出成形組立てライン・プロセスの利用が好ましいが、結果的に本明細書で開示される特性を有する構造になる任意の成形プロセスが使用され得ることは当技術分野で既知である。
【0026】
本発明の好ましい実施形態は3種類の密度のヒール・カップである。第1の密度は、構造のゲルの密度である。第2の密度は、ヒール・クッションのTPRゲルの密度である。第3の密度は、補強構成要素の密度である。3種類の密度のインソールは、ヒール区域にある2種類の密度のゲル層が、ヒールについての主な応力領域における緩衝性および快適さの増大をもたらすという利点をもたらす。TPR快適ゲルを備えるヒール・クッションは、好ましくは44±4%の範囲内である優れたエネルギー・リターンおよび緩衝性をもたらす。本発明のTPRまたはTPUゲルを備えるベース層は、エネルギー・リターン・プロセスを助ける働きをする。補強構成要素は、ヒールとヒール・カップに支持をもたらす。
【0027】
次に、本発明(1)の好ましい実施形態を示す図面を参照すると、図1は、ヒール・カップの上面(足側)の眺めを示す。図1を参照すると、構造ゲル層(structural gel layer)(1)は、平らな領域(2)、前縁(3)、および(5)で頂部に達する上方向に延びる一体壁(4)を有する。使用時に、頂部(5)は、本質的に、着用者のヒール後部の中間点に隣接することになる。
【0028】
ヒール・カップの裏面(靴側)の眺めは、図2で最も良く見ることができる。図2に示されるように、補強構成要素(6)が、さらに、構造ゲル層(1)の裏面(靴)側に両側に沿って固定され、前縁(3)まで延びる。やはりまた図2で見えるのは、好ましくは複数のハニカム領域(8)を備えるヒール・クッション(7)である。ヒール・クッション(7)は、ヒール・カップの裏側にあるゲルのくぼみに固定されるように示されている。
【0029】
図3の裏面斜視図を参照すると、構造ゲル層(1)および補強構成要素(6)、ならびにヒール・クッション(7)、上方向に延びる壁(4)、前縁(3)および後方ヒール端部(11)が見える。
【0030】
次に、図4の分解図を参照すると、構造ゲル層(1)により画成されるくぼんだヒール・クッション領域(9)および溝(10)を見ることができる。ヒール・クッション(7)は、ヒール・クッション領域(9)に嵌合し、かつヒール・カップの裏面上において全体的に平らな面の一部を形成するように形作られる。溝(10)は、突出の妨げなしに全体的に連続的な靴側面が形成されるように補強構成要素(6)を受けるように構成される。溝(10)および補強構成要素(6)は、本質的に、上方向に延びる壁(4)のヒール形湾曲部をたどる。補強構成要素(6)は、着用者の足のヒール後部の形に合致する安定化構造をもたらす。したがって、補強構成要素(6)は、ヒール、およびヒール受容領域後部から前縁(3)までの構造ゲル層に安定をもたらす。
【0031】
好ましい一実施形態では、補強構成要素(6)にはスコアリング・マーク(12)が設けられる。スコアリング・マークは、インソールに強度を与え、ヒール・カップの移動を防ぐ助けとなる。
【0032】
ヒール・クッション(7)は、ヒール・クッション領域(9)に配置され、それにはハニカム緩衝技術(8)が組み込まれるのが好ましい。この領域によって、使用者の足のヒールに掛かる重さのさらなる緩衝がもたらされる。
【0033】
好ましくは、図3に示されるように、ヒール・カップの後方ヒール端部(11)は前縁領域よりも厚い。これは図4で最も良く見られる。一般的に、靴の中にはヒール・カップ前方領域のためのより小さな空間しかなく、ヒール・クッションが配置される領域における緩衝の増大の必要性はより大きい。
【0034】
図5は、図2の線5−5からのヒール・カップの断面を示す。構造ゲル層(1)、溝(10)、補強構成要素(6)、上方向に延びる一体壁(4)、その頂部(5)、ヒール・クッション領域(7)および平らな領域(2)を見ることができる。
【0035】
好ましい製造プロセスでは、クレードルとヒール・パッドの組立体は別々に射出成形される。作製後、そのクレードルとヒール・パッドはベース鋳型内に配置され、そこでベース・ゲルが射出され、クレードルとヒール・パッドが本発明に接合される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3種類の密度のヒール・カップであって、
ヒール後方壁から、使用時に人の足の土踏まず領域の一部の下に位置するように構成された前縁まで延びる長さを有する、全体的にヒール形の基部を備え、
前記ヒール形基部が、足受容面および靴側面を有する構造ゲル層を備え、
前記足受容面が、使用時に着用者の足の裏の下に位置するように構成された平らな領域、ならびに使用時に着用者のヒールの後部および側部の一部に隣接して位置するように構成された上方向に延びる一体壁を有し、前記一体壁が最大高さの頂部を有し、前記壁の高さが前記頂部から前記前縁に向かって次第に減少し、
前記靴側面が、補強構成要素を受けるように構成された、前記構造ゲルに形成される溝を画成し、ヒール・カップはさらに
前記溝内で前記構造ゲルに固定され、前記構造ゲルよりも高密度の材料を含み、ヒールの後部の領域内において前記一体壁を補完する湾曲部を有し、前記前縁に向かってヒール・カップの側部/裏部の境界の線をたどるように傾斜する、補強構成要素を備え、
前記靴側面がヒール・クッション領域をさらに画成し、ヒール・カップはさらに
前記ヒール・クッション領域内で前記構造ゲルに固定されるヒール・クッション
を備える、ヒール・カップ。
【請求項2】
前記ヒール・クッションが、第2の密度のゲルを備える、請求項1に記載のヒール・カップ。
【請求項3】
前記第2の密度のゲルが、一体的に、ハニカム・パターンを形成する、請求項6に記載のヒール・カップ。
【請求項4】
前記構造ゲル構成要素が、TPUまたはTPRゲルのいずれかを備える、請求項1に記載のヒール・カップ。
【請求項5】
前記補強構成要素が、TPUまたはTPRゲルのいずれかを備える、請求項1に記載のヒール・カップ。
【請求項6】
前記補強構成要素が、スコアリング・マークをさらに備える、請求項10に記載のヒール・カップ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2011−509753(P2011−509753A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−543172(P2010−543172)
【出願日】平成21年1月12日(2009.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/030716
【国際公開番号】WO2009/091687
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(509347583)スペンコ、メディカル、コーパレイシャン (3)
【Fターム(参考)】