Bmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法
【課題】Bmal1遺伝子の発現を活性化することができるBmal1遺伝子の発現活性化剤などを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴としている。
【解決手段】本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴としている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の細胞に存在する「時計遺伝子」は、「概日リズム」と称される約24時間の周期性を生体において維持する機能を有していることが知られている。即ち、時計遺伝子は、地球の自転に伴って起こる明暗などの約24時間周期の環境サイクルに生体が適応できるように概日リズムを制御している。時計遺伝子としては、複数の種類が知られており、例えば、昼に発現が活性化されるPeriod、Cryや、夜に発現が活性化されるBmal1、Clockなどが知られている。
【0003】
また、時計遺伝子は、概日リズムを刻む生体現象を制御しており、該生体現象としては、睡眠及び覚醒、血圧及び体温の上下、副腎皮質ホルモン、メラトニン、若しくは成長ホルモン等の分泌量の変動等が知られている。
さらに、時計遺伝子は、全身の細胞の概日リズムを統括すべく中枢組織としての視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus : SCN)を制御するだけでなく、末梢組織の各細胞が概日リズムを刻むように末梢組織細胞をも直接的に制御する。
【0004】
近年、時計遺伝子が概日リズムを制御する機構が知られるようになり、該機構としては、例えば、上述したBmal1及びClockの遺伝子産物の2量体(BMAL/CLOCK複合体)が、E−box配列に結合してPeriod及びCryの転写を活性化し、該活性化によって増加したPERIOD及びCRYが複合体を形成して核内に移行し、BMAL/CLOCK複合体を抑制するため、Period及びCryの転写が減少するというフィードバック機構が知られている。そして、該フィードバック機構により、約24時間周期の概日リズムが生み出されることが知られている。従って、各時計遺伝子の発現を活性化又は抑制することにより、概日リズムを制御できると考えられている。
【0005】
従来、時計遺伝子の発現を活性化し得る時計遺伝子の発現活性化剤としては、具体的には、例えば、特定のアルキレンジオキシベンゼン誘導体を含むものが知られている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、光照射によって高められたPeriod1遺伝子の発現を維持するものであり、直接的にPeriod1遺伝子の発現を活性化できるものではない。
また、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、Period1遺伝子に作用するものであり、概日リズムに関わる時計遺伝子のフィードバック機構において最も中心的な役割を担うとされるBmal1遺伝子の発現を直接的に活性化するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−335669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、概日リズムを調整するために重要な役割を有するBmal1遺伝子の発現を活性化できるBmal1遺伝子の発現活性化剤が要望されている。
【0009】
本発明は、上記要望点等に鑑み、Bmal1遺伝子の発現を活性化することができるBmal1遺伝子の発現活性化剤を提供することを課題とする。また、本発明は、Bmal1遺伝子の発現を活性化することができるBmal1遺伝子の発現活性化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴としている。
【0011】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも2種を含むことが好ましい。
【0012】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化方法は、前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤によってBmal1遺伝子の発現を活性させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法は、Bmal1遺伝子の発現を活性化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1及び2のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図2】実施例3及び4のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図3】実施例5のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図4】実施例6〜8のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図5】実施例9〜11のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図6】実施例12〜15のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図7】比較例1のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図8】実施例16のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図9】実施例17及び18のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図10】実施例19及び20のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図11】実施例21及び22のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図12】実施例23及び24のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図13】実施例25〜27のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図14】比較例2及び3のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図15】比較例4及び5のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図16】比較例6及び7のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図17】実施例28〜31のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図18】実施例32〜35のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化剤の実施形態について以下に説明する。
【0016】
本実施形態のBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むものである。
【0017】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも2種を含むことが好ましい。
【0018】
前記ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、若しくはピリドキサミン、又は、これらの塩若しくはリン酸エステルである。
前記塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
前記ビタミンB6としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、ピリドキシン又はその塩が好ましく、ピリドキシン塩酸塩がより好ましい。
【0019】
前記ビタミンCは、L−アスコルビン酸又はその誘導体である。L−アスコルビン酸誘導体は、分子内にL−アスコルビン酸構造を有し、生体内においてL−アスコルビン酸を生成するものである。
【0020】
前記L−アスコルビン酸誘導体としては、水溶性L−アスコルビン酸誘導体、又は油溶性L−アスコルビン酸誘導体などが挙げられる。
【0021】
前記水溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、リン酸L−アスコルビン酸ナトリウムやリン酸L−アスコルビン酸マグネシウムなどのリン酸L−アスコルビン酸塩、アスコルビン酸グルコシドなどが挙げられる。
前記油溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、ステアリン酸L−アスコルビル、L−アスコルビン酸−2リン酸−6パルミチン酸などが挙げられる。
【0022】
前記ビタミンCとしては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、L−アスコルビン酸誘導体が好ましく、油溶性L−アスコルビン酸誘導体がより好ましく、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、又はジパルミチン酸L−アスコルビルがさらに好ましい。
【0023】
前記ビタミンDは、エルゴカルシフェロール、又は、コレカルシフェロールである。
【0024】
前記ビタミンDとしては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、エルゴカルシフェロールが好ましい。
【0025】
前記ビタミンEは、α−トコフェロール又はその誘導体である。α−トコフェロール誘導体は、分子内にα−トコフェロール構造を有し、生体内においてα−トコフェロールを生成するものである。なお、前記ビタミンEにおけるα−トコフェロールは、d体であってもl体であってもよい。
【0026】
前記α−トコフェロール誘導体としては、例えば、α−トコフェロール酢酸エステルなどのα−トコフェロールエステル誘導体が挙げられる。
【0027】
前記ビタミンEとしては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、α−トコフェロール誘導体が好ましく、α−トコフェロールエステル誘導体がより好ましく、α−トコフェロール酢酸エステルがさらに好ましい。
【0028】
前記発現活性化剤としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくともビタミンCを含むものが好ましい。同様の理由により、上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものが好ましい。また、少なくともビタミンCを含み且つ上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものがさらに好ましい。
【0029】
前記少なくとも2種のビタミンを含むBmal1遺伝子の発現活性化剤としては、具体的には例えば、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものが挙げられる。
また、例えば、ビタミンB6とビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むもの、又は、ビタミンB6とビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものなどが挙げられる。
【0030】
前記発現活性化剤としては、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがより好ましく、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、又はビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがさらに好ましい。
【0031】
前記発現活性化剤としては、Bmal1遺伝子の発現をさらに活性化できるという点で、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、又は、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むものがより好ましい。
【0032】
前記発現活性化剤においては、複数種のビタミンが含まれる場合、各ビタミンの含有量の比が、特に限定されず適宜設定されている。
【0033】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、及びポミフェリンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0034】
前記ゲニステインは、イソフラボン類の1種であり、下記式(1)で示される化合物である。
【0035】
【化1】
【0036】
前記ゲニスチンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(2)で示される化合物(ゲニステイン−7−O−グルコシド)である。なお、前記ゲニスチンは、アグリコンとしての前記ゲニステインとグルコースとからなる配糖体である。
【0037】
【化2】
【0038】
前記グリシテインは、イソフラボン類の1種であり、下記式(3)で示される化合物である。
【0039】
【化3】
【0040】
前記グリシチンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(4)で示される化合物(グリシテイン−7−O−グルコシド)である。なお、前記グリシチンは、アグリコンとしての前記グリシテインとグルコースとからなる配糖体である。
【0041】
【化4】
【0042】
前記イリゲニンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(5)で示される化合物である。
【0043】
【化5】
【0044】
前記イリジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(6)で示される化合物(イリゲニン−7−O−グルコシド)である。なお、前記イリジンは、アグリコンとしての前記イリゲニンとグルコースとからなる配糖体である。
【0045】
【化6】
【0046】
前記テクトリゲニンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(7)で示される化合物である。
【0047】
【化7】
【0048】
前記テクトリジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(6)で示される化合物(テクトリゲニン−7−O−グルコシド)である。なお、前記テクトリジンは、アグリコンとしての前記テクトリゲニンとグルコースとからなる配糖体である。
【0049】
【化8】
【0050】
前記クメステロールは、イソフラボン類の1種であり、下記式(9)で示される化合物である。
【0051】
【化9】
【0052】
前記ダイジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(10)で示される化合物(ダイゼイン−7−O−グルコシド)である。なお、前記ダイジンは、アグリコンとしての前記ダイゼインとグルコースとからなる配糖体である。
【0053】
【化10】
【0054】
前記オサジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(11)で示される化合物である。
【0055】
【化11】
【0056】
前記ポミフェリンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(12)で示される化合物である。
【0057】
【化12】
【0058】
上述したビタミン類、又はイソフラボン類としては、市販されているものを用いることができる。
【0059】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及びカカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい
【0060】
前記ヒオウギ抽出物は、アヤメ科のヒオウギ(Belamcanda chinensis De Candolle (Iridaceae))を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0061】
前記ヒオウギの抽出部位としては、特に限定されず、例えば、花、葉、種子、根茎などが挙げられる。なかでも、抽出される部位としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、根茎が好ましい。
【0062】
前記抽出溶媒としては、水、又は、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの脂肪族多価アルコール;アセトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;キシレン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類;クロロホルムなどハロゲン化アルキル類などの有機溶媒が挙げられる。
また、前記抽出溶媒としては、水酸化ナトリウムなどを加えることによりpH10以上の調整されたアルカリ性水溶液、又は、塩酸などを加えることによりpH4以下に調整された酸性水溶液が挙げられる。
これらの抽出溶媒は、1種が単独で、又は2種以上が混合されて用いられ得る。混合された抽出溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、適宜調整される。
【0063】
前記ヒオウギ抽出物における抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも水を含む抽出溶媒が好ましく、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒がより好ましい。
具体的には、該抽出溶媒としては、脂肪族1価アルコールとしてのエタノールと、脂肪族多価アルコールとしての1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒が好ましい。
【0064】
前記イリス根抽出物は、アヤメ科のイリス(Iris florentina Linne (Iridaceae))の根茎を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0065】
前記イリス根抽出物における抽出溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも水を含む抽出溶媒が好ましく、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒がより好ましく、脂肪族多価アルコールとしての1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒がさらに好ましい。
【0066】
前記プルーン抽出物は、バラ科のプルーン(Prunus domestica L.)の果肉を、水含有抽出溶媒で抽出し、さらに酵素処理したものを濾別することにより得られるものである。
【0067】
前記酵素処理前の抽出における水含有抽出溶媒としては、水が好ましい。
また、前記酵素処理においては、果肉細胞を分解する酵素を採用することができ、具体的には例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、又はペクチナーゼを採用することができる。なお、前記酵素処理の後には、通常、酵素を失活させるべく加熱処理が行われる。
【0068】
前記コメ種子抽出物は、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))の種子、即ち精白米を抽出溶媒で少なくとも抽出することにより得られるものである。
【0069】
前記コメ種子抽出物としては、抽出溶媒によって抽出処理のみを施したコメ種子溶媒抽出物、又は、抽出溶媒によって抽出処理を施した後に蛋白質分解酵素によって加水分解処理した加水分解コメ種子抽出物などが挙げられる。
【0070】
前記コメ種子溶媒抽出物は、上記の精白米を少なくとも水を含む抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0071】
該抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒が好ましく、エタノール、グリセリン又は1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒がより好ましい。
【0072】
前記加水分解コメ種子抽出物は、上記の精白米を抽出溶媒で抽出し、さらに、加水分解処理することにより得られるものである。
【0073】
前記加水分解コメ種子抽出物の抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液が好ましい。
なお、該pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液による抽出は、通常、15〜25℃の室温で行われる。
【0074】
前記加水分解コメ種子抽出物の製造における加水分解処理としては、蛋白質分解酵素による加水分解処理、酸による加水分解処理、アルカリによる加水分解処理などが採用され、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、蛋白質分解酵素による加水分解処理を採用することが好ましい。
【0075】
前記蛋白質分解酵素による加水分解処理としては、アクチナーゼ(至適pH8.0)、ペプシン(至適pH2.0)、又はトリプシン(至適pH8.0)等による加水分解処理が好ましい。
【0076】
前記酸による加水分解処理は、pH4以下の酸性水溶液により50℃以上に加温して行うものである。また、前記アルカリによる加水分解処理は、pH10以上のアルカリ性水溶液により50℃以上に加温して行うものである。
【0077】
前記加水分解コメヌカ抽出物は、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))のコメヌカ、即ち、イネの果皮、種皮、澱粉層、又は胚芽の少なくとも1種を抽出溶媒で抽出し、さらに加水分解処理したものである。
【0078】
前記加水分解コメヌカ抽出物の抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液が好ましい。
なお、該pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液による抽出は、通常、15〜25℃の室温で行われる。
【0079】
前記加水分解コメヌカ抽出物の製造における加水分解処理としては、上述した前記加水分解コメ種子抽出物において挙げたものを採用することができ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、蛋白質分解酵素による加水分解処理を採用することが好ましく、アクチナーゼ、ペプシン、又はトリプシンによる加水分解処理を採用することがより好ましい。
【0080】
前記褐藻抽出物は、褐藻類(Phaeohpyta)を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0081】
前記褐藻類としては、ウミウチワ(Padina arborescens Holmes)、コンブ(Laminaria angustata)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、ヒバマタ(Fucus distichus Linnaeus subsp. evanescens (C. Agardh) Powell)、ワカメ(Undaria pinnatifida)などが挙げられる。
【0082】
前記褐藻類の抽出部位は、特に限定されないが、該抽出部位としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも胞子葉(めかぶ)を含む全藻が好ましい。
【0083】
前記褐藻抽出物としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、上記のウミウチワ、コンブ、ヒジキ、ヒバマタ、及びワカメを混合したものを抽出したものが好ましい。
【0084】
前記褐藻抽出物における抽出溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、水が好ましい。
【0085】
前記カカオ種子殻抽出物は、カカオ(Theobroma cacao)の種子殻を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0086】
前記カカオ種子殻抽出物における抽出溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも水を含む抽出溶媒が好ましく、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒がより好ましく、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、又は1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒がさらに好ましい。
【0087】
上述した各抽出物は、通常、前記抽出溶媒による抽出液、その希釈液、その濃縮液、又はその抽出溶媒を除去した乾燥物の態様になり得る。具体的には、各抽出物は、例えば、液体状、ペースト状、ゲル状、粉末状などの態様になり得る。
【0088】
前記抽出の方法としては、特に制限されず、従来公知の一般的な抽出方法を採用することができる。抽出においては、抽出原料をそのまま若しくは乾燥させて用いることができる。また、通常、抽出溶媒量が抽出原料の1〜15倍量(質量比)であり、抽出温度が10℃〜90℃であり、抽出時間が1時間〜5日間である。抽出した後においては、必要に応じて、適宜、ろ過、脱臭、脱色などの精製処理を行うことができる。
【0089】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤に含まれる上記各抽出物の濃度としては、特に限定されず、例えば、乾燥物換算で0.01〜45.0質量%が挙げられる。
なお、乾燥物換算とは、抽出物から抽出溶媒を除いた残渣である乾燥物の質量に換算することである。
【0090】
なお、前記各抽出物としては、市販されているものを用いることができる。
【0091】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、上述したビタミン類、イソフラボン類、及び上述した抽出物のうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0092】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、必要に応じて、適宜、溶媒、界面活性剤等を含み得る。
また、前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品などに配合されて使用され得る。
【0093】
次に、本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化方法の実施形態について説明する。
【0094】
本実施形態のBmal1遺伝子の発現活性化方法は、前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤によってBmal1遺伝子の発現を活性化させるものである。
【0095】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法においては、例えば、生体外において、又は生体において前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤によりBmal1遺伝子の発現を活性化させることができる。
【0096】
具体的には、生体外でのBmal1遺伝子の発現活性化方法においては、例えば、生体組織の細胞が所定期間培養された培地に対して、前記発現活性化剤を添加し、細胞中のBmal1遺伝子の発現を活性化させる方法などを実施することができる。細胞におけるBmal1遺伝子発現の程度は、例えば、Bmal1遺伝子の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を含む細胞を用いて、リアルタイムリポーターアッセイ等を採用し、ルシフェラーゼ発光量を測定することにより評価できる。
このような生体外でのBmal1遺伝子の発現活性化方法は、比較的簡便に実施できることから、例えば、後述する生体でのBmal1遺伝子の発現活性化方法における発現活性化剤の最適濃度を決定する目的で予備実験的に実施することができる。
【0097】
一方、生体でのBmal1遺伝子の発現活性化方法においては、例えば、所定の体内組織に前記発現活性化剤を含有させる処置を施し、その組織における細胞のBmal1遺伝子の発現を活性化する方法などを実施することができる。より具体的には、例えば、皮膚の表皮組織に前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤を塗布などにより含有させて、表皮組織の細胞におけるBmal1遺伝子の発現を活性化する方法などを実施することができる。
【0098】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法は、脊柱動物の生体において実施することができる。
前記脊柱動物としては、Bmal1遺伝子の発現が夜に活性化する動物であれば、必ずしも昼行性の動物でなくてもよい。前記脊柱動物としては、例えば、魚類動物、は虫類動物、鳥類動物、哺乳類動物などが挙げられる。
前記哺乳類動物としては、例えば、昼行性哺乳類動物としてのヒト、チンパンジー、ローランドゴリラ、イエネコ、ニホンザル、ウサギ、ヤギ等が挙げられる。また、例えば、夜行性哺乳類動物としてのマウス、ラット等が挙げられる。
【0099】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法は、ヒトの生体において、具体的には例えば美容上の目的で、非治療的に実施することが好ましい。
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法は、ヒトへの医療行為を除くものであり、具体的には例えば、ヒトの皮膚に塗布して皮膚細胞のBmal1遺伝子の発現を活性化し、皮膚細胞の概日リズムを調整することによって、皮膚のくすみを抑制したり、皮膚のハリを維持したりする皮膚の美容方法に適用できる。
【0100】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法においては、希釈などによって前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤を適宜適当な濃度に調整して使用することができる。希釈するための液としては、特に限定されるものではなく、例えば、水、生理食塩水、細胞培養用液体培地などを用いることができる。
【0101】
具体的には、前記発現活性化方法においては、例えば、上述したビタミン類の合計量の濃度が0.0001〜10質量%となるように希釈等して使用することができる。また、例えば、前記式(1)〜(12)に示す化合物の濃度が1×10-7〜1×10-4質量%となるように希釈等して使用することができる。また、例えば、上記の抽出物の濃度が乾燥物換算で1×10-7〜5質量%となるように希釈等して使用することができる。
【0102】
本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般のBmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0103】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
[事前準備]
まず、下記に示す油溶性のビタミン類のそれぞれを予めエタノールに溶かして3質量%濃度のエタノール溶液を調製しておいた。
ビタミンC:ジパルミチン酸L−アスコルビル(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンC:テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル
(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンD:エルゴカルシフェロール
ビタミンE:酢酸dl−α−トコフェロール(α−トコフェロール誘導体)
ビタミンA:パルミチン酸レチノール
一方、ビタミンB6としてのピリドキシン塩酸塩を純水に溶解させて3質量%の水溶液を調製しておいた。
【0105】
(実施例1)
10%牛胎児血清(Gibco)を添加したDulbecco’s modification of Eagle’s medium (Gibco)培地(以下、「10%牛胎仔血清含有DMEM」という)を希釈用溶媒として用い、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液を0.1質量%濃度に希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0106】
(実施例2)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0107】
(実施例3)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のテトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0108】
(実施例4)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0109】
(実施例5)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0110】
(実施例6)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0111】
(実施例7)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0112】
(実施例8)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0113】
(実施例9)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、エルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0114】
(実施例10)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0115】
(実施例11)
上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0116】
(実施例12)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0117】
(実施例13)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0118】
(実施例14)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0119】
(実施例15)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0120】
(比較例1)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の比較サンプルを調製した。
【0121】
以下のイソフラボン類に関しては、それぞれを予めジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かして20mM濃度のDMSO溶液を調製しておいた。
【0122】
(実施例16)
試験研究用試薬として市販されているゲニステインを用いて上述のごとく調製したゲニステインのDMSO溶液を、ゲニステインが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0123】
(実施例17)
試験研究用試薬として市販されているゲニスチンを用いて上述のごとく調製したゲニスチンのDMSO溶液を、ゲニスチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0124】
(実施例18)
試験研究用試薬として市販されているグリシテインを用いて上述のごとく調製したグリシテインのDMSO溶液を、グリシテインが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0125】
(実施例19)
試験研究用試薬として市販されているグリシチンを用いて上述のごとく調製したグリシチンのDMSO溶液を、グリシチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0126】
(実施例20)
試験研究用試薬として市販されているイリゲニンを用いて上述のごとく調製したイリゲニンのDMSO溶液を、イリゲニンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0127】
(実施例21)
試験研究用試薬として市販されているイリジンを用いて上述のごとく調製したイリジンのDMSO溶液を、イリジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0128】
(実施例22)
試験研究用試薬として市販されているテクトリゲニンを用いて上述のごとく調製したテクトリゲニンのDMSO溶液を、テクトリゲニンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0129】
(実施例23)
試験研究用試薬として市販されているテクトリジンを用いて上述のごとく調製したテクトリジンのDMSO溶液を、テクトリジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0130】
(実施例24)
試験研究用試薬として市販されているクメステロールを用いて上述のごとく調製したクメステロールのDMSO溶液を、クメステロールが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0131】
(実施例25)
試験研究用試薬として市販されているダイジンを用いて上述のごとく調製したダイジンのDMSO溶液を、ダイジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0132】
(実施例26)
試験研究用試薬として市販されているオサジンを用いて上述のごとく調製したオサジンのDMSO溶液を、オサジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0133】
(実施例27)
試験研究用試薬として市販されているポミフェリンを用いて上述のごとく調製したポミフェリンのDMSO溶液を、ポミフェリンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0134】
(比較例2)
試験研究用試薬として市販されているダイゼイン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したダイゼインのDMSO溶液を、ダイゼインが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0135】
(比較例3)
試験研究用試薬として市販されているビオカニンA(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したビオカニンAのDMSO溶液を、ビオカニンAが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0136】
(比較例4)
試験研究用試薬として市販されているフォルモネチン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したフォルモネチンのDMSO溶液を、フォルモネチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0137】
(比較例5)
試験研究用試薬として市販されているプルネチン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したプルネチンのDMSO溶液を、プルネチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0138】
(比較例6)
試験研究用試薬として市販されているオノニン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したオノニンのDMSO溶液を、オノニンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0139】
(比較例7)
試験研究用試薬として市販されているプエラリン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したプエラリンのDMSO溶液を、プエラリンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0140】
(実施例28)
ヒオウギ抽出物として、1,3−ブチレングリコール、エタノール、及び水(1:1:3容積比)の混合抽出溶媒により、ヒオウギ(Belamcanda chinensis De Candolle (Iridaceae))の根茎100gを室温にて5日間抽出処理した液体状のヒオウギ抽出物(乾燥物換算0.5質量%)を製造した。
【0141】
(実施例29)
イリス根抽出物として、1,3−ブチレングリコール及び水の混合抽出溶媒(90%1,3−ブチレングリコール含有)でイリス(Iris florentina Linne (Iridaceae))の根茎を室温にて5日間抽出処理した液体状のイリス根抽出物(乾燥物換算2.8質量%)を製造した。
【0142】
(実施例30)
プルーン抽出物を以下のようにして製造した。即ち、プルーン(Prunus domestica L.)の果肉100gに水100mLを加え、90℃にて3時間静置した後、圧搾してスラリー状にした。さらにセルラーゼにより酵素分解処理し、加熱により酵素を失活させ、室温に冷却後、残存した固形物をろ過により取り除き、液体状のプルーン抽出物(乾燥物換算28.7質量%)を製造した。
【0143】
(実施例31)
コメ種子抽出物としてのコメ種子溶媒抽出物を製造した。即ち、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))の種子(精白米)を、1,3−ブチレングリコール及び水の混合抽出溶媒中に室温にて浸漬し、ろ過により固形物を取り除いた液体状のコメ種子溶媒抽出物を製造した。
【0144】
(実施例32)
コメ種子抽出物としての加水分解コメ種子抽出物を製造した。即ち、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))の種子100g(精白米)を室温にて、400gのアルカリ水溶液(NaOHでpH12に調整したもの)中に24時間浸漬し、アルカリ性水溶液による抽出処理を施し、液体状の抽出物を得た。
続いて、斯かる抽出物に対して、蛋白質分解酵素としてのアクチナーゼ、ペプシン、トリプシンをそれぞれ順番に5mg加えて、加水分解処理をそれぞれ40℃で2時間施した。さらに、得られた処理液を90℃に加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、ろ過により液体状の加水分解コメ種子抽出物(乾燥物換算1.2質量%)を製造した。
【0145】
(実施例33)
加水分解コメヌカ抽出物を以下のようにして製造した。即ち、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))のコメヌカ、即ち、イネの果皮、種皮、澱粉層、及び胚芽の合計100gを室温にて、400gのアルカリ水溶液(NaOHでpH12に調整したもの)中に24時間浸漬し、アルカリ性水溶液による抽出処理を施し、液体状の抽出物を得た。
続いて、斯かる抽出物に対して、蛋白質分解酵素としてのアクチナーゼ、ペプシン、トリプシンをそれぞれ順番に5mg加えて、加水分解処理をそれぞれ40℃で2時間施した。さらに、得られた処理液を90℃に加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、ろ過により液体状の加水分解コメヌカ抽出物(乾燥物換算4.1質量%)を製造した。
【0146】
(実施例34)
褐藻抽出物を以下のようにして製造した。即ち、抽出溶媒として、水1000mLを用い、ウミウチワ(Padina arborescens Holmes)、コンブ(Laminaria angustata)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、ヒバマタ(Fucus distichus Linnaeus subsp. evanescens (C. Agardh) Powell)、ワカメ(Undaria pinnatifida)それぞれの全藻(胞子葉の部分を含む乾燥物合計量100g)を80℃で5時間抽出処理し、液体状の褐藻抽出物(乾燥物換算0.67質量%)を製造した。
【0147】
(実施例35)
カカオ種子殻抽出物を以下のようにして製造した。即ち、70容量%の1,3−ブチレングリコール水溶液(500mL)を用い、カカオ(Theobroma cacao)の種子殻(100g)を80℃にて2時間抽出処理し、ろ過によって液体状のカカオ種子殻抽出物(乾燥物換算2.4質量%)を製造した。
【0148】
<Bmal1遺伝子の発現活性化剤のBmal1遺伝子の発現活性化性能の評価>
上記した各実施例のBmal1遺伝子の発現活性化剤、及び、各比較例の比較サンプルついて、下記のリアルタイムリポーターアッセイにより、Bmal1遺伝子の発現活性化性能を評価した。
【0149】
リアルタイムリポーターアッセイの詳細
マウスの時計遺伝子Bmal1プロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を安定的に発現するマウス由来繊維芽細胞NIH3T3(以下、「NIH3T3−Bmal−Luc」という)を、35mm培養ディシュに約2.5×105個 播種した。その後、上述した10%牛胎仔血清含有DMEM中にて2日間培養を行った。
そして、時計遺伝子Bmal1を同調させるべく培地中にデキサメタゾン(Sigma社製)を加え、100nM濃度デキサメタゾン/DMEMにおいて2時間培養した。その後、培地を、0.1mM濃度のD−Luciferin(TOYOBO社製)を含む10%牛胎仔血清含有DMEMに交換し、リアルタイムリポーターアッセイ用発光測定装置(製品名「Kronos Dio AB−2550」 ATTO社製)により、各発現活性化剤を用いたものについて遺伝子の発現を測定した。
測定条件は、測定時間1分、計測間隔10分とした。詳しくは、計測約24時間後のルシフェラーゼ発光量が下限ピークをむかえたタイミングで、各発現活性化剤を所定濃度となるように各ディシュに添加し、その後、ルシフェラーゼ発光量の経時変化を測定し、各発現活性化剤のBmal1遺伝子の発現活性化性能を調べた。
陰性対照(コントロール)においては、発現活性化剤を添加しない点以外は、上記と同様の操作を行った。
【0150】
上記測定においては、各実施例及び各比較例において製造した活性化剤を上述した10%牛胎仔血清含有DMEMにより希釈して使用した。また、上記測定における各発現活性化剤の濃度は、細胞毒性が認められない範囲に設定した。詳しくは、下記の通りに濃度を設定した。
ビタミン類:各0.005質量%(単独の場合は、0.010質量%濃度あり)
イソフラボン類:25μM、又は、2.5μM
各抽出物:それぞれ、表3に記載した濃度に設定
なお、実施例2(0.010%濃度)においては、細胞毒性が認められたため、上記の評価を実施できなかった。同様に、実施例26及び27における25μM濃度においても上記の評価を実施できなかった。
【0151】
実施例1〜15及び比較例1の評価結果をグラフに表したものを図1〜図7に示す。なお、図1〜図7における縦軸の値は、陰性対照(コントロール)におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたときのルシフェラーゼ発光量の相対値を示している。
同様に、実施例16〜27、及び比較例2〜7の評価結果をグラフに表したものを図8〜図16に示す。
また、同様に、実施例28〜35の評価結果をグラフに表したものを図17及び図18に示す。
【0152】
さらに、陰性対照(コントロール)のルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたとき、各実施例及び比較例におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を相対値で表した一覧表を表1〜表3に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
表1〜表3から、各実施例のBmal1遺伝子の発現活性化剤がBmal1遺伝子の発現を活性化できることが把握される。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤は、概日リズムを調整するために、Bmal1遺伝子の発現を活性化する用途において好適に使用できる。具体的には、例えば、皮膚表皮細胞などの外胚葉性の細胞、肝臓細胞などの内胚葉性の細胞、心臓細胞などの中胚葉性の細胞における概日リズムを調整するために好適に使用できる。より具体的には、例えば、皮膚外用剤に配合されて皮膚細胞の概日リズムを調整するために使用される。
なお、Bmal1遺伝子の発現が活性化すると、時計遺伝子としてのPeriod遺伝子やCry遺伝子の発現が活性化され得ることから、Bmal1遺伝子の発現を活性化することにより、時計遺伝子の発現リズムを調整でき、また、概日リズムを調整できると考えられる。
概日リズムを調製することにより、加齢、時差ぼけ、若しくは交代勤務などによる概日リズムの乱れ、又は、睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群といった睡眠障害を改善できることが期待できる。また、皮膚細胞の概日リズムを調整することにより、具体的には例えば、皮膚のハリを維持する、皮膚のくすみを抑制する、表皮におけるターンオーバーを正常化する、皮膚のシワを抑制する、又は、ニキビや目の下のくまを抑制すること等が期待できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、Bmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内の細胞に存在する「時計遺伝子」は、「概日リズム」と称される約24時間の周期性を生体において維持する機能を有していることが知られている。即ち、時計遺伝子は、地球の自転に伴って起こる明暗などの約24時間周期の環境サイクルに生体が適応できるように概日リズムを制御している。時計遺伝子としては、複数の種類が知られており、例えば、昼に発現が活性化されるPeriod、Cryや、夜に発現が活性化されるBmal1、Clockなどが知られている。
【0003】
また、時計遺伝子は、概日リズムを刻む生体現象を制御しており、該生体現象としては、睡眠及び覚醒、血圧及び体温の上下、副腎皮質ホルモン、メラトニン、若しくは成長ホルモン等の分泌量の変動等が知られている。
さらに、時計遺伝子は、全身の細胞の概日リズムを統括すべく中枢組織としての視床下部の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus : SCN)を制御するだけでなく、末梢組織の各細胞が概日リズムを刻むように末梢組織細胞をも直接的に制御する。
【0004】
近年、時計遺伝子が概日リズムを制御する機構が知られるようになり、該機構としては、例えば、上述したBmal1及びClockの遺伝子産物の2量体(BMAL/CLOCK複合体)が、E−box配列に結合してPeriod及びCryの転写を活性化し、該活性化によって増加したPERIOD及びCRYが複合体を形成して核内に移行し、BMAL/CLOCK複合体を抑制するため、Period及びCryの転写が減少するというフィードバック機構が知られている。そして、該フィードバック機構により、約24時間周期の概日リズムが生み出されることが知られている。従って、各時計遺伝子の発現を活性化又は抑制することにより、概日リズムを制御できると考えられている。
【0005】
従来、時計遺伝子の発現を活性化し得る時計遺伝子の発現活性化剤としては、具体的には、例えば、特定のアルキレンジオキシベンゼン誘導体を含むものが知られている(特許文献1)。
【0006】
しかしながら、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、光照射によって高められたPeriod1遺伝子の発現を維持するものであり、直接的にPeriod1遺伝子の発現を活性化できるものではない。
また、斯かる時計遺伝子の発現活性化剤は、Period1遺伝子に作用するものであり、概日リズムに関わる時計遺伝子のフィードバック機構において最も中心的な役割を担うとされるBmal1遺伝子の発現を直接的に活性化するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−335669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、概日リズムを調整するために重要な役割を有するBmal1遺伝子の発現を活性化できるBmal1遺伝子の発現活性化剤が要望されている。
【0009】
本発明は、上記要望点等に鑑み、Bmal1遺伝子の発現を活性化することができるBmal1遺伝子の発現活性化剤を提供することを課題とする。また、本発明は、Bmal1遺伝子の発現を活性化することができるBmal1遺伝子の発現活性化方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴としている。
【0011】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも2種を含むことが好ましい。
【0012】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化方法は、前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤によってBmal1遺伝子の発現を活性させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法は、Bmal1遺伝子の発現を活性化できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1及び2のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図2】実施例3及び4のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図3】実施例5のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図4】実施例6〜8のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図5】実施例9〜11のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図6】実施例12〜15のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図7】比較例1のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図8】実施例16のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図9】実施例17及び18のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図10】実施例19及び20のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図11】実施例21及び22のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図12】実施例23及び24のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図13】実施例25〜27のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図14】比較例2及び3のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図15】比較例4及び5のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図16】比較例6及び7のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図17】実施例28〜31のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【図18】実施例32〜35のBmal1遺伝子の発現活性化剤におけるルシフェラーゼ発光量の相対値を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化剤の実施形態について以下に説明する。
【0016】
本実施形態のBmal1遺伝子の発現活性化剤は、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むものである。
【0017】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも2種を含むことが好ましい。
【0018】
前記ビタミンB6は、ピリドキシン、ピリドキサール、若しくはピリドキサミン、又は、これらの塩若しくはリン酸エステルである。
前記塩としては、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩などが挙げられる。
前記ビタミンB6としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、ピリドキシン又はその塩が好ましく、ピリドキシン塩酸塩がより好ましい。
【0019】
前記ビタミンCは、L−アスコルビン酸又はその誘導体である。L−アスコルビン酸誘導体は、分子内にL−アスコルビン酸構造を有し、生体内においてL−アスコルビン酸を生成するものである。
【0020】
前記L−アスコルビン酸誘導体としては、水溶性L−アスコルビン酸誘導体、又は油溶性L−アスコルビン酸誘導体などが挙げられる。
【0021】
前記水溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、リン酸L−アスコルビン酸ナトリウムやリン酸L−アスコルビン酸マグネシウムなどのリン酸L−アスコルビン酸塩、アスコルビン酸グルコシドなどが挙げられる。
前記油溶性L−アスコルビン酸誘導体としては、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、ジパルミチン酸L−アスコルビル、ステアリン酸L−アスコルビル、L−アスコルビン酸−2リン酸−6パルミチン酸などが挙げられる。
【0022】
前記ビタミンCとしては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、L−アスコルビン酸誘導体が好ましく、油溶性L−アスコルビン酸誘導体がより好ましく、テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル、又はジパルミチン酸L−アスコルビルがさらに好ましい。
【0023】
前記ビタミンDは、エルゴカルシフェロール、又は、コレカルシフェロールである。
【0024】
前記ビタミンDとしては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、エルゴカルシフェロールが好ましい。
【0025】
前記ビタミンEは、α−トコフェロール又はその誘導体である。α−トコフェロール誘導体は、分子内にα−トコフェロール構造を有し、生体内においてα−トコフェロールを生成するものである。なお、前記ビタミンEにおけるα−トコフェロールは、d体であってもl体であってもよい。
【0026】
前記α−トコフェロール誘導体としては、例えば、α−トコフェロール酢酸エステルなどのα−トコフェロールエステル誘導体が挙げられる。
【0027】
前記ビタミンEとしては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、α−トコフェロール誘導体が好ましく、α−トコフェロールエステル誘導体がより好ましく、α−トコフェロール酢酸エステルがさらに好ましい。
【0028】
前記発現活性化剤としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくともビタミンCを含むものが好ましい。同様の理由により、上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものが好ましい。また、少なくともビタミンCを含み且つ上述したビタミンのうち少なくとも2種を含むものがさらに好ましい。
【0029】
前記少なくとも2種のビタミンを含むBmal1遺伝子の発現活性化剤としては、具体的には例えば、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものが挙げられる。
また、例えば、ビタミンB6とビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むもの、又は、ビタミンB6とビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものなどが挙げられる。
【0030】
前記発現活性化剤としては、ビタミンB6とビタミンCとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンB6とビタミンCとビタミンEとの混合物を含むもの、ビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがより好ましく、ビタミンCとビタミンDとの混合物を含むもの、又はビタミンCとビタミンDとビタミンEとの混合物を含むものがさらに好ましい。
【0031】
前記発現活性化剤としては、Bmal1遺伝子の発現をさらに活性化できるという点で、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)との混合物を含むもの、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、ピリドキシン又はその塩(ビタミンB6)と油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むもの、又は、油溶性L−アスコルビン酸誘導体(ビタミンC)とエルゴカルシフェロール(ビタミンD)とα−トコフェロール酢酸エステル(ビタミンE)との混合物を含むものがより好ましい。
【0032】
前記発現活性化剤においては、複数種のビタミンが含まれる場合、各ビタミンの含有量の比が、特に限定されず適宜設定されている。
【0033】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、及びポミフェリンからなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0034】
前記ゲニステインは、イソフラボン類の1種であり、下記式(1)で示される化合物である。
【0035】
【化1】
【0036】
前記ゲニスチンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(2)で示される化合物(ゲニステイン−7−O−グルコシド)である。なお、前記ゲニスチンは、アグリコンとしての前記ゲニステインとグルコースとからなる配糖体である。
【0037】
【化2】
【0038】
前記グリシテインは、イソフラボン類の1種であり、下記式(3)で示される化合物である。
【0039】
【化3】
【0040】
前記グリシチンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(4)で示される化合物(グリシテイン−7−O−グルコシド)である。なお、前記グリシチンは、アグリコンとしての前記グリシテインとグルコースとからなる配糖体である。
【0041】
【化4】
【0042】
前記イリゲニンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(5)で示される化合物である。
【0043】
【化5】
【0044】
前記イリジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(6)で示される化合物(イリゲニン−7−O−グルコシド)である。なお、前記イリジンは、アグリコンとしての前記イリゲニンとグルコースとからなる配糖体である。
【0045】
【化6】
【0046】
前記テクトリゲニンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(7)で示される化合物である。
【0047】
【化7】
【0048】
前記テクトリジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(6)で示される化合物(テクトリゲニン−7−O−グルコシド)である。なお、前記テクトリジンは、アグリコンとしての前記テクトリゲニンとグルコースとからなる配糖体である。
【0049】
【化8】
【0050】
前記クメステロールは、イソフラボン類の1種であり、下記式(9)で示される化合物である。
【0051】
【化9】
【0052】
前記ダイジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(10)で示される化合物(ダイゼイン−7−O−グルコシド)である。なお、前記ダイジンは、アグリコンとしての前記ダイゼインとグルコースとからなる配糖体である。
【0053】
【化10】
【0054】
前記オサジンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(11)で示される化合物である。
【0055】
【化11】
【0056】
前記ポミフェリンは、イソフラボン類の1種であり、下記式(12)で示される化合物である。
【0057】
【化12】
【0058】
上述したビタミン類、又はイソフラボン類としては、市販されているものを用いることができる。
【0059】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及びカカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むことが好ましい
【0060】
前記ヒオウギ抽出物は、アヤメ科のヒオウギ(Belamcanda chinensis De Candolle (Iridaceae))を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0061】
前記ヒオウギの抽出部位としては、特に限定されず、例えば、花、葉、種子、根茎などが挙げられる。なかでも、抽出される部位としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、根茎が好ましい。
【0062】
前記抽出溶媒としては、水、又は、メタノール、エタノール、プロパノールなどの脂肪族1価アルコール;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールなどの脂肪族多価アルコール;アセトンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジオキサン、アセトニトリル、酢酸エチルエステルなどのエステル類;キシレン、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類;クロロホルムなどハロゲン化アルキル類などの有機溶媒が挙げられる。
また、前記抽出溶媒としては、水酸化ナトリウムなどを加えることによりpH10以上の調整されたアルカリ性水溶液、又は、塩酸などを加えることによりpH4以下に調整された酸性水溶液が挙げられる。
これらの抽出溶媒は、1種が単独で、又は2種以上が混合されて用いられ得る。混合された抽出溶媒の混合比は、特に限定されるものではなく、適宜調整される。
【0063】
前記ヒオウギ抽出物における抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも水を含む抽出溶媒が好ましく、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒がより好ましい。
具体的には、該抽出溶媒としては、脂肪族1価アルコールとしてのエタノールと、脂肪族多価アルコールとしての1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒が好ましい。
【0064】
前記イリス根抽出物は、アヤメ科のイリス(Iris florentina Linne (Iridaceae))の根茎を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0065】
前記イリス根抽出物における抽出溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも水を含む抽出溶媒が好ましく、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒がより好ましく、脂肪族多価アルコールとしての1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒がさらに好ましい。
【0066】
前記プルーン抽出物は、バラ科のプルーン(Prunus domestica L.)の果肉を、水含有抽出溶媒で抽出し、さらに酵素処理したものを濾別することにより得られるものである。
【0067】
前記酵素処理前の抽出における水含有抽出溶媒としては、水が好ましい。
また、前記酵素処理においては、果肉細胞を分解する酵素を採用することができ、具体的には例えば、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、又はペクチナーゼを採用することができる。なお、前記酵素処理の後には、通常、酵素を失活させるべく加熱処理が行われる。
【0068】
前記コメ種子抽出物は、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))の種子、即ち精白米を抽出溶媒で少なくとも抽出することにより得られるものである。
【0069】
前記コメ種子抽出物としては、抽出溶媒によって抽出処理のみを施したコメ種子溶媒抽出物、又は、抽出溶媒によって抽出処理を施した後に蛋白質分解酵素によって加水分解処理した加水分解コメ種子抽出物などが挙げられる。
【0070】
前記コメ種子溶媒抽出物は、上記の精白米を少なくとも水を含む抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0071】
該抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒が好ましく、エタノール、グリセリン又は1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒がより好ましい。
【0072】
前記加水分解コメ種子抽出物は、上記の精白米を抽出溶媒で抽出し、さらに、加水分解処理することにより得られるものである。
【0073】
前記加水分解コメ種子抽出物の抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液が好ましい。
なお、該pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液による抽出は、通常、15〜25℃の室温で行われる。
【0074】
前記加水分解コメ種子抽出物の製造における加水分解処理としては、蛋白質分解酵素による加水分解処理、酸による加水分解処理、アルカリによる加水分解処理などが採用され、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、蛋白質分解酵素による加水分解処理を採用することが好ましい。
【0075】
前記蛋白質分解酵素による加水分解処理としては、アクチナーゼ(至適pH8.0)、ペプシン(至適pH2.0)、又はトリプシン(至適pH8.0)等による加水分解処理が好ましい。
【0076】
前記酸による加水分解処理は、pH4以下の酸性水溶液により50℃以上に加温して行うものである。また、前記アルカリによる加水分解処理は、pH10以上のアルカリ性水溶液により50℃以上に加温して行うものである。
【0077】
前記加水分解コメヌカ抽出物は、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))のコメヌカ、即ち、イネの果皮、種皮、澱粉層、又は胚芽の少なくとも1種を抽出溶媒で抽出し、さらに加水分解処理したものである。
【0078】
前記加水分解コメヌカ抽出物の抽出溶媒としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液が好ましい。
なお、該pH10以上に調整されたアルカリ性水溶液による抽出は、通常、15〜25℃の室温で行われる。
【0079】
前記加水分解コメヌカ抽出物の製造における加水分解処理としては、上述した前記加水分解コメ種子抽出物において挙げたものを採用することができ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、蛋白質分解酵素による加水分解処理を採用することが好ましく、アクチナーゼ、ペプシン、又はトリプシンによる加水分解処理を採用することがより好ましい。
【0080】
前記褐藻抽出物は、褐藻類(Phaeohpyta)を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0081】
前記褐藻類としては、ウミウチワ(Padina arborescens Holmes)、コンブ(Laminaria angustata)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、ヒバマタ(Fucus distichus Linnaeus subsp. evanescens (C. Agardh) Powell)、ワカメ(Undaria pinnatifida)などが挙げられる。
【0082】
前記褐藻類の抽出部位は、特に限定されないが、該抽出部位としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも胞子葉(めかぶ)を含む全藻が好ましい。
【0083】
前記褐藻抽出物としては、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、上記のウミウチワ、コンブ、ヒジキ、ヒバマタ、及びワカメを混合したものを抽出したものが好ましい。
【0084】
前記褐藻抽出物における抽出溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、水が好ましい。
【0085】
前記カカオ種子殻抽出物は、カカオ(Theobroma cacao)の種子殻を抽出溶媒で抽出することにより得られるものである。
【0086】
前記カカオ種子殻抽出物における抽出溶媒としては、上述したものと同様のものが挙げられ、Bmal1遺伝子の発現をより活性化できるという点で、少なくとも水を含む抽出溶媒が好ましく、脂肪族1価アルコール又は脂肪族多価アルコールなどの脂肪族アルコールと水とを含む抽出溶媒がより好ましく、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、又は1,3−ブチレングリコールと、水とを含む抽出溶媒がさらに好ましい。
【0087】
上述した各抽出物は、通常、前記抽出溶媒による抽出液、その希釈液、その濃縮液、又はその抽出溶媒を除去した乾燥物の態様になり得る。具体的には、各抽出物は、例えば、液体状、ペースト状、ゲル状、粉末状などの態様になり得る。
【0088】
前記抽出の方法としては、特に制限されず、従来公知の一般的な抽出方法を採用することができる。抽出においては、抽出原料をそのまま若しくは乾燥させて用いることができる。また、通常、抽出溶媒量が抽出原料の1〜15倍量(質量比)であり、抽出温度が10℃〜90℃であり、抽出時間が1時間〜5日間である。抽出した後においては、必要に応じて、適宜、ろ過、脱臭、脱色などの精製処理を行うことができる。
【0089】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤に含まれる上記各抽出物の濃度としては、特に限定されず、例えば、乾燥物換算で0.01〜45.0質量%が挙げられる。
なお、乾燥物換算とは、抽出物から抽出溶媒を除いた残渣である乾燥物の質量に換算することである。
【0090】
なお、前記各抽出物としては、市販されているものを用いることができる。
【0091】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、上述したビタミン類、イソフラボン類、及び上述した抽出物のうちの1種を単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0092】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、必要に応じて、適宜、溶媒、界面活性剤等を含み得る。
また、前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤は、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧料、食品などに配合されて使用され得る。
【0093】
次に、本発明に係るBmal1遺伝子の発現活性化方法の実施形態について説明する。
【0094】
本実施形態のBmal1遺伝子の発現活性化方法は、前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤によってBmal1遺伝子の発現を活性化させるものである。
【0095】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法においては、例えば、生体外において、又は生体において前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤によりBmal1遺伝子の発現を活性化させることができる。
【0096】
具体的には、生体外でのBmal1遺伝子の発現活性化方法においては、例えば、生体組織の細胞が所定期間培養された培地に対して、前記発現活性化剤を添加し、細胞中のBmal1遺伝子の発現を活性化させる方法などを実施することができる。細胞におけるBmal1遺伝子発現の程度は、例えば、Bmal1遺伝子の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を含む細胞を用いて、リアルタイムリポーターアッセイ等を採用し、ルシフェラーゼ発光量を測定することにより評価できる。
このような生体外でのBmal1遺伝子の発現活性化方法は、比較的簡便に実施できることから、例えば、後述する生体でのBmal1遺伝子の発現活性化方法における発現活性化剤の最適濃度を決定する目的で予備実験的に実施することができる。
【0097】
一方、生体でのBmal1遺伝子の発現活性化方法においては、例えば、所定の体内組織に前記発現活性化剤を含有させる処置を施し、その組織における細胞のBmal1遺伝子の発現を活性化する方法などを実施することができる。より具体的には、例えば、皮膚の表皮組織に前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤を塗布などにより含有させて、表皮組織の細胞におけるBmal1遺伝子の発現を活性化する方法などを実施することができる。
【0098】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法は、脊柱動物の生体において実施することができる。
前記脊柱動物としては、Bmal1遺伝子の発現が夜に活性化する動物であれば、必ずしも昼行性の動物でなくてもよい。前記脊柱動物としては、例えば、魚類動物、は虫類動物、鳥類動物、哺乳類動物などが挙げられる。
前記哺乳類動物としては、例えば、昼行性哺乳類動物としてのヒト、チンパンジー、ローランドゴリラ、イエネコ、ニホンザル、ウサギ、ヤギ等が挙げられる。また、例えば、夜行性哺乳類動物としてのマウス、ラット等が挙げられる。
【0099】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法は、ヒトの生体において、具体的には例えば美容上の目的で、非治療的に実施することが好ましい。
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法は、ヒトへの医療行為を除くものであり、具体的には例えば、ヒトの皮膚に塗布して皮膚細胞のBmal1遺伝子の発現を活性化し、皮膚細胞の概日リズムを調整することによって、皮膚のくすみを抑制したり、皮膚のハリを維持したりする皮膚の美容方法に適用できる。
【0100】
前記Bmal1遺伝子の発現活性化方法においては、希釈などによって前記Bmal1遺伝子の発現活性化剤を適宜適当な濃度に調整して使用することができる。希釈するための液としては、特に限定されるものではなく、例えば、水、生理食塩水、細胞培養用液体培地などを用いることができる。
【0101】
具体的には、前記発現活性化方法においては、例えば、上述したビタミン類の合計量の濃度が0.0001〜10質量%となるように希釈等して使用することができる。また、例えば、前記式(1)〜(12)に示す化合物の濃度が1×10-7〜1×10-4質量%となるように希釈等して使用することができる。また、例えば、上記の抽出物の濃度が乾燥物換算で1×10-7〜5質量%となるように希釈等して使用することができる。
【0102】
本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法は、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般のBmal1遺伝子の発現活性化剤及びBmal1遺伝子の発現活性化方法において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【実施例】
【0103】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0104】
[事前準備]
まず、下記に示す油溶性のビタミン類のそれぞれを予めエタノールに溶かして3質量%濃度のエタノール溶液を調製しておいた。
ビタミンC:ジパルミチン酸L−アスコルビル(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンC:テトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル
(L−アスコルビン酸誘導体)
ビタミンD:エルゴカルシフェロール
ビタミンE:酢酸dl−α−トコフェロール(α−トコフェロール誘導体)
ビタミンA:パルミチン酸レチノール
一方、ビタミンB6としてのピリドキシン塩酸塩を純水に溶解させて3質量%の水溶液を調製しておいた。
【0105】
(実施例1)
10%牛胎児血清(Gibco)を添加したDulbecco’s modification of Eagle’s medium (Gibco)培地(以下、「10%牛胎仔血清含有DMEM」という)を希釈用溶媒として用い、上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液を0.1質量%濃度に希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0106】
(実施例2)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0107】
(実施例3)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のテトラ2−ヘキシルデカン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0108】
(実施例4)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0109】
(実施例5)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度のBmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0110】
(実施例6)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0111】
(実施例7)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0112】
(実施例8)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0113】
(実施例9)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、エルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0114】
(実施例10)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0115】
(実施例11)
上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0116】
(実施例12)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0117】
(実施例13)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0118】
(実施例14)
上記のピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0119】
(実施例15)
上記のジパルミチン酸L−アスコルビル(ビタミンC)のエタノール溶液と、上記のエルゴカルシフェロール(ビタミンD)のエタノール溶液と、上記の酢酸dl−α−トコフェロール(ビタミンE)のエタノール溶液とを1:1:1の質量比で混合し、それぞれが0.1質量%濃度となるように実施例1と同様に希釈することにより、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0120】
(比較例1)
ピリドキシン塩酸塩(ビタミンB6)の水溶液に代えて、上記のパルミチン酸レチノール(ビタミンA)のエタノール溶液を用いた点以外は、実施例1と同様にして、0.1質量%濃度の比較サンプルを調製した。
【0121】
以下のイソフラボン類に関しては、それぞれを予めジメチルスルホキシド(DMSO)に溶かして20mM濃度のDMSO溶液を調製しておいた。
【0122】
(実施例16)
試験研究用試薬として市販されているゲニステインを用いて上述のごとく調製したゲニステインのDMSO溶液を、ゲニステインが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0123】
(実施例17)
試験研究用試薬として市販されているゲニスチンを用いて上述のごとく調製したゲニスチンのDMSO溶液を、ゲニスチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0124】
(実施例18)
試験研究用試薬として市販されているグリシテインを用いて上述のごとく調製したグリシテインのDMSO溶液を、グリシテインが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0125】
(実施例19)
試験研究用試薬として市販されているグリシチンを用いて上述のごとく調製したグリシチンのDMSO溶液を、グリシチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0126】
(実施例20)
試験研究用試薬として市販されているイリゲニンを用いて上述のごとく調製したイリゲニンのDMSO溶液を、イリゲニンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0127】
(実施例21)
試験研究用試薬として市販されているイリジンを用いて上述のごとく調製したイリジンのDMSO溶液を、イリジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0128】
(実施例22)
試験研究用試薬として市販されているテクトリゲニンを用いて上述のごとく調製したテクトリゲニンのDMSO溶液を、テクトリゲニンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0129】
(実施例23)
試験研究用試薬として市販されているテクトリジンを用いて上述のごとく調製したテクトリジンのDMSO溶液を、テクトリジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0130】
(実施例24)
試験研究用試薬として市販されているクメステロールを用いて上述のごとく調製したクメステロールのDMSO溶液を、クメステロールが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0131】
(実施例25)
試験研究用試薬として市販されているダイジンを用いて上述のごとく調製したダイジンのDMSO溶液を、ダイジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0132】
(実施例26)
試験研究用試薬として市販されているオサジンを用いて上述のごとく調製したオサジンのDMSO溶液を、オサジンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0133】
(実施例27)
試験研究用試薬として市販されているポミフェリンを用いて上述のごとく調製したポミフェリンのDMSO溶液を、ポミフェリンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、Bmal1遺伝子の発現活性化剤を製造した。
【0134】
(比較例2)
試験研究用試薬として市販されているダイゼイン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したダイゼインのDMSO溶液を、ダイゼインが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0135】
(比較例3)
試験研究用試薬として市販されているビオカニンA(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したビオカニンAのDMSO溶液を、ビオカニンAが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0136】
(比較例4)
試験研究用試薬として市販されているフォルモネチン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したフォルモネチンのDMSO溶液を、フォルモネチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0137】
(比較例5)
試験研究用試薬として市販されているプルネチン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したプルネチンのDMSO溶液を、プルネチンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0138】
(比較例6)
試験研究用試薬として市販されているオノニン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したオノニンのDMSO溶液を、オノニンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0139】
(比較例7)
試験研究用試薬として市販されているプエラリン(イソフラボン類の1種)を用いて上述のごとく調製したプエラリンのDMSO溶液を、プエラリンが0.05mM濃度となるように上記の10%牛胎仔血清含有DMEMで希釈し、比較サンプルを調製した。
【0140】
(実施例28)
ヒオウギ抽出物として、1,3−ブチレングリコール、エタノール、及び水(1:1:3容積比)の混合抽出溶媒により、ヒオウギ(Belamcanda chinensis De Candolle (Iridaceae))の根茎100gを室温にて5日間抽出処理した液体状のヒオウギ抽出物(乾燥物換算0.5質量%)を製造した。
【0141】
(実施例29)
イリス根抽出物として、1,3−ブチレングリコール及び水の混合抽出溶媒(90%1,3−ブチレングリコール含有)でイリス(Iris florentina Linne (Iridaceae))の根茎を室温にて5日間抽出処理した液体状のイリス根抽出物(乾燥物換算2.8質量%)を製造した。
【0142】
(実施例30)
プルーン抽出物を以下のようにして製造した。即ち、プルーン(Prunus domestica L.)の果肉100gに水100mLを加え、90℃にて3時間静置した後、圧搾してスラリー状にした。さらにセルラーゼにより酵素分解処理し、加熱により酵素を失活させ、室温に冷却後、残存した固形物をろ過により取り除き、液体状のプルーン抽出物(乾燥物換算28.7質量%)を製造した。
【0143】
(実施例31)
コメ種子抽出物としてのコメ種子溶媒抽出物を製造した。即ち、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))の種子(精白米)を、1,3−ブチレングリコール及び水の混合抽出溶媒中に室温にて浸漬し、ろ過により固形物を取り除いた液体状のコメ種子溶媒抽出物を製造した。
【0144】
(実施例32)
コメ種子抽出物としての加水分解コメ種子抽出物を製造した。即ち、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))の種子100g(精白米)を室温にて、400gのアルカリ水溶液(NaOHでpH12に調整したもの)中に24時間浸漬し、アルカリ性水溶液による抽出処理を施し、液体状の抽出物を得た。
続いて、斯かる抽出物に対して、蛋白質分解酵素としてのアクチナーゼ、ペプシン、トリプシンをそれぞれ順番に5mg加えて、加水分解処理をそれぞれ40℃で2時間施した。さらに、得られた処理液を90℃に加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、ろ過により液体状の加水分解コメ種子抽出物(乾燥物換算1.2質量%)を製造した。
【0145】
(実施例33)
加水分解コメヌカ抽出物を以下のようにして製造した。即ち、イネ(Oryza sativa Linne.(Gramineae))のコメヌカ、即ち、イネの果皮、種皮、澱粉層、及び胚芽の合計100gを室温にて、400gのアルカリ水溶液(NaOHでpH12に調整したもの)中に24時間浸漬し、アルカリ性水溶液による抽出処理を施し、液体状の抽出物を得た。
続いて、斯かる抽出物に対して、蛋白質分解酵素としてのアクチナーゼ、ペプシン、トリプシンをそれぞれ順番に5mg加えて、加水分解処理をそれぞれ40℃で2時間施した。さらに、得られた処理液を90℃に加熱して酵素を失活させ、室温に冷却し、ろ過により液体状の加水分解コメヌカ抽出物(乾燥物換算4.1質量%)を製造した。
【0146】
(実施例34)
褐藻抽出物を以下のようにして製造した。即ち、抽出溶媒として、水1000mLを用い、ウミウチワ(Padina arborescens Holmes)、コンブ(Laminaria angustata)、ヒジキ(Hizikia fusiforme)、ヒバマタ(Fucus distichus Linnaeus subsp. evanescens (C. Agardh) Powell)、ワカメ(Undaria pinnatifida)それぞれの全藻(胞子葉の部分を含む乾燥物合計量100g)を80℃で5時間抽出処理し、液体状の褐藻抽出物(乾燥物換算0.67質量%)を製造した。
【0147】
(実施例35)
カカオ種子殻抽出物を以下のようにして製造した。即ち、70容量%の1,3−ブチレングリコール水溶液(500mL)を用い、カカオ(Theobroma cacao)の種子殻(100g)を80℃にて2時間抽出処理し、ろ過によって液体状のカカオ種子殻抽出物(乾燥物換算2.4質量%)を製造した。
【0148】
<Bmal1遺伝子の発現活性化剤のBmal1遺伝子の発現活性化性能の評価>
上記した各実施例のBmal1遺伝子の発現活性化剤、及び、各比較例の比較サンプルついて、下記のリアルタイムリポーターアッセイにより、Bmal1遺伝子の発現活性化性能を評価した。
【0149】
リアルタイムリポーターアッセイの詳細
マウスの時計遺伝子Bmal1プロモーター領域の下流にルシフェラーゼ遺伝子が連結した遺伝子を安定的に発現するマウス由来繊維芽細胞NIH3T3(以下、「NIH3T3−Bmal−Luc」という)を、35mm培養ディシュに約2.5×105個 播種した。その後、上述した10%牛胎仔血清含有DMEM中にて2日間培養を行った。
そして、時計遺伝子Bmal1を同調させるべく培地中にデキサメタゾン(Sigma社製)を加え、100nM濃度デキサメタゾン/DMEMにおいて2時間培養した。その後、培地を、0.1mM濃度のD−Luciferin(TOYOBO社製)を含む10%牛胎仔血清含有DMEMに交換し、リアルタイムリポーターアッセイ用発光測定装置(製品名「Kronos Dio AB−2550」 ATTO社製)により、各発現活性化剤を用いたものについて遺伝子の発現を測定した。
測定条件は、測定時間1分、計測間隔10分とした。詳しくは、計測約24時間後のルシフェラーゼ発光量が下限ピークをむかえたタイミングで、各発現活性化剤を所定濃度となるように各ディシュに添加し、その後、ルシフェラーゼ発光量の経時変化を測定し、各発現活性化剤のBmal1遺伝子の発現活性化性能を調べた。
陰性対照(コントロール)においては、発現活性化剤を添加しない点以外は、上記と同様の操作を行った。
【0150】
上記測定においては、各実施例及び各比較例において製造した活性化剤を上述した10%牛胎仔血清含有DMEMにより希釈して使用した。また、上記測定における各発現活性化剤の濃度は、細胞毒性が認められない範囲に設定した。詳しくは、下記の通りに濃度を設定した。
ビタミン類:各0.005質量%(単独の場合は、0.010質量%濃度あり)
イソフラボン類:25μM、又は、2.5μM
各抽出物:それぞれ、表3に記載した濃度に設定
なお、実施例2(0.010%濃度)においては、細胞毒性が認められたため、上記の評価を実施できなかった。同様に、実施例26及び27における25μM濃度においても上記の評価を実施できなかった。
【0151】
実施例1〜15及び比較例1の評価結果をグラフに表したものを図1〜図7に示す。なお、図1〜図7における縦軸の値は、陰性対照(コントロール)におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたときのルシフェラーゼ発光量の相対値を示している。
同様に、実施例16〜27、及び比較例2〜7の評価結果をグラフに表したものを図8〜図16に示す。
また、同様に、実施例28〜35の評価結果をグラフに表したものを図17及び図18に示す。
【0152】
さらに、陰性対照(コントロール)のルシフェラーゼ発光量の最大値を1としたとき、各実施例及び比較例におけるルシフェラーゼ発光量の最大値を相対値で表した一覧表を表1〜表3に示す。
【0153】
【表1】
【0154】
【表2】
【0155】
【表3】
【0156】
表1〜表3から、各実施例のBmal1遺伝子の発現活性化剤がBmal1遺伝子の発現を活性化できることが把握される。
【産業上の利用可能性】
【0157】
本発明のBmal1遺伝子の発現活性化剤は、概日リズムを調整するために、Bmal1遺伝子の発現を活性化する用途において好適に使用できる。具体的には、例えば、皮膚表皮細胞などの外胚葉性の細胞、肝臓細胞などの内胚葉性の細胞、心臓細胞などの中胚葉性の細胞における概日リズムを調整するために好適に使用できる。より具体的には、例えば、皮膚外用剤に配合されて皮膚細胞の概日リズムを調整するために使用される。
なお、Bmal1遺伝子の発現が活性化すると、時計遺伝子としてのPeriod遺伝子やCry遺伝子の発現が活性化され得ることから、Bmal1遺伝子の発現を活性化することにより、時計遺伝子の発現リズムを調整でき、また、概日リズムを調整できると考えられる。
概日リズムを調製することにより、加齢、時差ぼけ、若しくは交代勤務などによる概日リズムの乱れ、又は、睡眠相後退症候群や非24時間睡眠覚醒症候群といった睡眠障害を改善できることが期待できる。また、皮膚細胞の概日リズムを調整することにより、具体的には例えば、皮膚のハリを維持する、皮膚のくすみを抑制する、表皮におけるターンオーバーを正常化する、皮膚のシワを抑制する、又は、ニキビや目の下のくまを抑制すること等が期待できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むBmal1遺伝子の発現活性化剤。
【請求項2】
ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも2種を含む請求項1記載のBmal1遺伝子の発現活性化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発現活性化剤によってBmal1遺伝子の発現を活性させるBmal1遺伝子の発現活性化方法。
【請求項1】
ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、ビタミンE、ゲニステイン、ゲニスチン、グリシテイン、グリシチン、イリゲニン、イリジン、テクトリゲニン、テクトリジン、クメステロール、ダイジン、オサジン、ポミフェリン、ヒオウギ抽出物、イリス根抽出物、プルーン抽出物、コメ種子抽出物、加水分解コメヌカ抽出物、褐藻抽出物、及び、カカオ種子殻抽出物からなる群より選ばれた少なくとも1種を含むBmal1遺伝子の発現活性化剤。
【請求項2】
ビタミンC、ビタミンB6、ビタミンD、及びビタミンEからなる群より選ばれた少なくとも2種を含む請求項1記載のBmal1遺伝子の発現活性化剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発現活性化剤によってBmal1遺伝子の発現を活性させるBmal1遺伝子の発現活性化方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−56866(P2013−56866A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−197368(P2011−197368)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(000112266)ピアス株式会社 (49)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]