説明

E型肝炎ウイルスのポリペプチド断片、それを含むワクチン組成物及び診断キット、並びにその使用

【課題】ワクチン組成物、およびHEVポリペプチドを含むHEV感染診断用キット、ならびにIgG、IgM、および全抗体を含む診断キット、およびHEV感染を予防、診断、および/または治療するためのその使用方法の提供。
【解決手段】特定のアミノ酸配列を有する、E型肝炎ウイルスORF−2のアミノ酸配列を含むn量体(nは2〜180の整数)のポリペプチド、またはその断片。また、前記断片をインフルエンザウイルスの赤血球凝集素の保存断片と融合させたキメラポリペプチド、および前記断片とE型肝炎ウイルスORF3のエピトープポリペプチドもしくはその免疫原性活性断片との共有結合、および上記のポリペプチドをコードするDNA分子を含む発現ベクター、発現ベクターを含む発現宿主。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、N重合体ポリペプチド(Nは1〜180の整数である)の形の、配列番号1で示す、E型肝炎ウイルスのORF2のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその断片;本発明のポリペプチドとインフルエンザウイルス由来赤血球凝集素抗原の保存断片とからなるキメラタンパク質;E型肝炎ウイルスORF3由来のエピトープを含むポリペプチド又はその免疫原性断片に結合した本発明のポリペプチド;上記のポリペプチドをコードするDNA分子を含む組換え発現ベクター、及び本発明のポリペプチドを発現させることのできる、前記組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞に関する。
【0002】
本発明はさらに、上述のポリペプチドを含む、E型肝炎ウイルスに対処するワクチン組成物、又はE型肝炎ウイルス用のIgG、IgM、もしくは全抗体診断キットを含めて、上述のポリペプチドを含むE型肝炎ウイルス感染用診断キット、並びにE型肝炎ウイルス感染の予防、診断、及び/もしくは治療のための、ワクチン組成物及び診断キットの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
E型肝炎ウイルス(HEV)は、経腸的に伝染した非A非B型肝炎の病原体として1983年に最初に確認された(Balayan等、1983年、Intervirology第20巻:23ページ、)。E型肝炎は、主に、アジア、アフリカ、中央アメリカの開発途上国に特有である。先進国でのE型肝炎の症例は、ほとんど外国からの移民又は旅行者に見られた。散発性の症例も大規模な流行も報告されている。1950年代から1990年代の期間に、飲料水の汚染のために、E型肝炎の数件の大発生が連続して起こった(Visvanathan、1957年、Indian J.Med.Res.Suppl.第45巻:1〜30ページ;Wong等、1980年、Lancet.第2巻:882〜885ページ;Myint等、1985年、Am J Trop Med Hyg.第34:1183〜1189ページ;Belabbes等、1985年、J Med Virol.第16巻:257〜263ページ;Hau等、1999年、Am J Trop Med Hyg.第60巻:277〜280ページ)。大部分のE型肝炎感染は、自己制限的であり、慢性に発展することはほとんどないが、妊婦については予後が重く、死亡率が17%を上回る。(Tsega等、1992年、Clin.Infec Dis.第14巻:961〜965ページ;Dilawari等、1994年、Indian J Gastroenterol.第13巻:44〜48ページ;Hussaini等、1997年、J Viral Hepat.第4巻:51〜54ページ)。
【0004】
1991年に、研究者等は、エンベロープをもたない1本鎖のプラスRNAウイルスであるHEVの最初の完全なゲノム配列を得た(Tam等、1991年、Virology第185巻:120〜131ページ)。配列分析によって、ゲノムが7.2kbであり、3つのオープンリーディングフレームを有することが示された。5’末端に位置するORF1は、ウイルスの非構造タンパク質をコードし、3’末端に位置するORF2は、ウイルスの主要な構造タンパク質をコードする。ORF3 5’末端には、ORF1 3’末端と重複した1bpが存在する。ORF3 3’末端には、ORF2末端と重複した339bpが存在する。ORF3が未知の機能を備えた別の構造タンパク質をコードすることが認められている(Tam等、1991年、Virology第185巻:120〜131ページ;Aye等、1992年、Nucleic Acids Res.第20巻:3512ページ;Aye等、1993年、Virus Genes.第7巻:95〜109ページ;Huang等、1992年、Virology第191巻:550〜558ページ;Reyes等、1993年、Arch Virol Suppl.第7巻:15〜25ページ)。
【0005】
HEV感染の検出は、長い間、主に免疫電子顕微鏡法(IEM)又は免疫蛍光技術に頼っていたが、このような技術は非常に複雑で高価であり、多くの研究所では実施しにくいものである。HEVゲノムがクローン化され、配列決定された後、ERISA、ウェスタンブロット、PCRなどのようなより感度のよい技術が開発されて、HEV感染の検出に使用されている。
【0006】
血清HEV抗体キットの開発が絶対的に必要であることは十分に認知されているが、感染したヒト又は動物が分泌するHEVウイルスの濃度が非常に低いために、血清を抗原の供給源として使用することは不可能である。現在もなお、HEV細胞培養の効率は非常に低く、これがHEVを検出するために十分な抗原を利用できる可能性を制限した。したがって、HEV抗体の検出は、依然として合成のポリペプチド又は組換え抗原に頼っている。残念なことに、多くの血清学的研究によって、合成ポリペプチド類又は異なるHEVゲノム領域に由来する組換え抗原での整合性が大幅にずれていることが示された。たとえば、Goldsmith等(1992年、Lancet、第399巻:328〜331ページ)は、ORF2 3−2(M)抗原(a.a.613〜660、Mexico株)を使用して、院内のE型肝炎ウイルス感染の症例を検出した。IgGの検出率は91%であり、6〜12カ月後には27〜50%に下がった。彼が3−2(B)(Burma株由来の同じORF2断片)を検出に使用したとき、検出率はほんの64%であり、6〜12カ月後には陽性の結果が見られなかった。それどころか、3−2(M)は、パキスタン人の対象の回復期血清と反応しないが、3−2(B)は、4.5年後に同じ症例の血清と反応した。このようなタンパク質では、抗体が陰性に逆転する場合もあれば、依然として力価が高いままである場合もあった。大腸菌中に発現したいくつかの線状エピトープを有するモザイクタンパク質を使用した場合の結果は類似していた。良好なHEV抗体キットがないことは、HEVに感染している間の抗体の動態を深くまで研究する制約になった。一般に、HEVに感染している間、特定のIgG抗体が初期の段階で検出可能になり、2〜4週間後に最高点に達し、急速に降下する。大部分は9カ月後に陰性に逆転するが、何年も後に陽性のままである患者もいる。最近では、急性相と回復期相の両方に由来する血清とも強く反応する、数種の組換え抗原がバキュロウイルス及び大腸菌中に発現されている。原則として、血清疫学調査にはこのような抗原がより適している。血清HEV IgGの力価が、急性段階の後急速に降下するものの、なお検出可能なレベルに保たれるからである。抗体が、疾患の流行中に感染を防御することに関係しているということは特筆に価する。
【0007】
他の手段では、現在のところ利用できる検出法が間接的な方法だけであるために、確立されたHEV IgMキットは、世界中で未だ開発されていない。間接的方法については、一方では検出結果が様々な要因によって影響されるので再現しにくく、他方では偽陽性の可能性が高く、陰性の値がより高く、又は感度が低いために結果の信頼性が低い。最近の報告によると、臨床サンプルを検出する際、IgMの結果が陽性であった場合、一般にIgGも陽性であり、したがって、早期に診断されたその値は、限界があるものの、急性感染の診断特異性の向上において役立つといえる。
【0008】
報告されているところでは、いくつかの合成ペプチド及び何らかの組換え抗原に対する抗体は、多くの感染対象において急速に消失するので、急性E型肝炎ウイルス感染の臨床的診断は、一般に臨床的な一致が高いIgG抗体に基づいているが、この方法の最も重大な欠陥は、過去の感染を最近の感染と区別できないことであり、これは、E型肝炎ウイルスが多く発生している区域においても、疫学的研究の際にE型肝炎ウイルス感染の有病率を評価する上でも、誤った診断をもたらすことになる。したがって、回復期血清に対する感度が高いことを特徴とする、信頼性があり、かつ感度のよい抗μ鎖IgM診断キット及びIgG診断キットを開発することが早急に求められている。
【0009】
近年では、高感度のIgG診断キットの開発に若干の進歩があった。Mast等(1998年、Hepatology第27巻:857〜861ページ)は、世界中の10種の主要なIgG抗体EIAの包括的評価を提示している。既知の陽性血清の検出では多くのキットが実によく一致していたが、アメリカ人血液供与者の検出では、異なるキットで大きな相違があった。これは、非発生地域でのHEV有病率研究における結果の信頼性が低いことを示唆している。このようなキットの大部分の抗原は、HEVの線状エピトープを素材としていたが、2種のキットは、立体配座のエピトープを抗原として使用していた。1種目はORF2.1(aa394〜660)であり、他方はバキュロウイルス中で発現させたVLP(aa112〜607)である。どちらの抗原も回復期抗体を検出できるが、これら2種の抗原の一致を比較した直接のデータは、今もまだ得られていない。これら2種の抗原が異なる抗体を識別することは可能である。さらに、VLPキットを使用して、流行のないアメリカで20%近い有病率が報告され、これによってその特異性に疑いが生じたこともあった。しかし、ブタ、ヤギ、ウシ、ニワトリ、ラット、野生のサル、及び飼われているサルでの陽性のHEV感染の報告、並びにメリーランド州の野生ラットとルイジアナ州の野生ラットの抗体有病率が、相違する77%と44%であることから、動物のHEVは、その病原性による臨床疾患を引き起こし得ないものの、アメリカ人集団の抗体有病率が過小評価されている可能性はある。(Kabrane−Lazizi等、1999年、Am J Tropic Medicine第61巻:331〜335ページ)。さらに、ORF2.1キットは、CMV感染及び自己免疫疾患においてより高い陽性率を検出することができる。さらに、報告されているORF2.1ポリペプチドは、GSTとのキメラタンパク質又はポリアルギニンとのキメラタンパク質であるが、実際には偽陽性の結果をもたらすことになる。
【0010】
HEVでは細胞培養も組織培養も成功しておらず、大量のウイルスを得るための実際的な方法が未だ得られないので、遺伝子工学を通じて、旧来の死菌ワクチン又は弱毒ワクチンからサブユニットワクチン又はDNAワクチンへと転換を図ることが唯一の研究手段である。
【0011】
HEV ORF2は、5147に位置する塩基から始まって、1980個のヌクレオチドを有するものであり、主要な構造タンパク質であると推定されているアミノ酸660個のポリペプチドをコードするものであり、ウイルスのキャプシドを構成している。ORF2タンパク質のN末端には、古典的なシグナル配列の後に、正の電荷を大量に帯びた領域であり、かつウイルス構築中にゲノムRNAのキャプシド形成に関与すると考えられているアルギニン高含有領域が存在する。翻訳プロセスの間、ORF2は、シグナルペプチド認識タンパク質(SRP)の機構によって小胞体(ER)に侵入し、さらにグリコシル化され、ER内に蓄積し、次いでおそらくは揃ってキャプシドのキャプソメアを形成する。3箇所のN−グリコシル化部位、Asn−137、Asn−310、及びAsn−562が、ORF2に位置している。これらは、異なるウイルス株間でも高度に保存されており、Asn−310は、主要なグリコシル化部位である。ORF2を形質移入した哺乳動物細胞COS、ヒト肝細胞癌Huh−7、HepG2は、それによって、細胞質にも膜にも見出される88kDの糖タンパク質を発現させることができる。これらのグリコシル化部位での突然変異は、PORF2の細胞膜上への配置には影響を及ぼさない。しかし、シグナルペプチド配列がそこから除去された後では、細胞質中でしかPORF2を見出すことができない。これは、タンパク質の細胞膜上への配置にはグリコシル化でないPORF2の変化が必要なことを示唆している。HBVのMSタンパク質のように、PORF2も、ゴルジ体の代わりにERを介して細胞膜に直接分泌される可能性がある。形質移入した細胞の表面では、gpORF2はランダムに分布しておらず、あるゾーンに集中しているが、これはタンパク質サブユニットの合同プロセスが活性であることを示唆しており、ことによると凝集して、さらに指令された何らかの前進した形になる。ウイルスの最終的な構築/成熟には、ゲノムRNAのキャプシド形成が必要であるので、ERの外の細胞質又は細胞膜の壁面内でこれを起こさなければならない。膜内のgpORF2の蓄積は、ウイルス構築を示唆するといえる。同時に、膜上のキャプシドタンパク質の配置は、成熟したウイルスが出芽を経て細胞外へ分泌する可能性を示唆する。さらに記載すべき注目される点は、翻訳及び修飾機能を備えたin−vitro翻訳系を使用する、in vitroでのPORF2の転写及び翻訳によって、88kDのgpORF2を単量体と二量体の両方の形で産生できることである。gpORF2が相同的な二量体を形成する傾向があり、前記の相同的なgpORF2二量体によってキャプシドのキャプソメアが構成されることが例示されている(Jameel等、1996年、J.Virol.第70巻:207〜216ページ)。Li等は、Frost Etching election顕微鏡によって、バキュロウイルスによって発現した組換えHEV VLPが、直径22〜23nmの60個のp50サブユニットでできた正二重面体の対称ビリオン(T=1)を有することを発見した。この大きさの粒子の内腔は、約1kbのRNAを含むことができ、HEVゲノムは、長さ7.5kbであるので、自然のHEVは、T3の結晶格子構造であると推測されるが、キャプソメアの形態上の構造は類似している。T=3サブユニットの総数は、90個のキャプソメアである(Li等、1999年、virology第265巻:35〜45ページ)。
【0012】
上記のことによると、HEVは、エンベロープをもたないウイルスである。ウイルスのキャプシドは、ORF2によってコードされたタンパク質でできている。このタンパク質には、主要な免疫エピトープおよび一部の中和性エピトープが組み込まれており、サブユニットワクチンを研究する際、最も好都合な断片となる。
【0013】
米国特許第5,885,768号のReyes等の最初の報告では、4匹のカニクイザルに、HEV Burma株ORF2 C末端2/3(aa225〜660)を含む大腸菌中に発現させた組換えタンパク質trpE−C2にミョウバンアジュバントを配合したものを、0、30日で50μg/1回分を投与することによって筋肉内注射した。別の2匹のサルを対照として使用し、アジュバントのみを与えた。4週間後、収集血液の抗体の増加に関する陽性の結果で、ウェスタンブロット法によって見出されたものはなかった。80μgのアジュバント未配合不溶性組換えタンパク質を投与することによる、そのうちの2匹のサルでの3回目の免疫化。4週間後、どちらのサルも陽性であった(WB)。次いで、6匹のサルを、各々が3匹のサルを含む第一群と第二群に分けたが、そのうちの2匹が3回又は2回の接種によって免疫化されており、1匹が対照である。第一群にはBurmaHEVを接種し、第二群にはMexicoHEVを接種した。結果は、(1)免疫化した群ではALTが常に正常であったが、対照では免疫化前よりも6〜10倍高く上昇した。(2)免疫蛍光法によって肝臓生検試料で検出を行った。3回の投与で免疫化し、Burma株を接種したものを除くすべてのサルで抗原が発見された。(3)3回の投与で免疫化し、Burma株を接種したものを除くすべてのサルで、糞便中へのウイルスの排泄が連続的に見出された。この研究の検体は少ないが、ORF2由来の組換えタンパク質が、ウイルス肝炎の生化学指数を出さないようにし、サルが野生のHEVを接種された場合には、感染から完全に防御したことを示唆している。
【0014】
Tsarev等(1994年、Proc.Nat.Acad.Sci.USA.第91巻:10198〜10202ページ;Tsarev等、1993年、J.Infect.Dis.第168巻:369〜378ページ;Tsarev等、1997年、Vaccine第15巻:1834〜1838ページ)は、昆虫(SF細胞)中のバキュロウイルスを使用して、HEV ORF2を発現させ、細胞溶液中に20nm〜30nmの様々な大きさのタンパク質粒子を得た。感染細胞の分裂後期には、より小さい粒子の百分率が実質的に増大する。WB法を使用して、バキュロウイルスによって発現させたORF2を検出すると、25kD、29kD、35kD、40〜45kD、55〜70kD、72kDに大きさの異なる多数の特定のバンドが検出された。イオン交換法及び分子スクリーニング法を使用して、HEVに特異的なタンパク質を精製した。細胞に組換えウイルスを感染させた後1日目に、72kDの全ORF2ペプチドが最初に出現し、次いで徐々に消失した。2日目には、63kD及び55kDのペプチドが出現した。53kDのペプチドは、初日に大量に細胞溶液中に出現し、3日目に最高点に達した。これは、最初の72kDのタンパク質がランダムに切断されて、55kD(細胞溶解溶液中)及び/又は53kD(細胞溶液)のHEVタンパク質となることを示唆している。これら2種のタンパク質の配列決定によって、55kDがORF2のaa112〜607に位置することが示されたが、53kDがaa112〜578に位置し、63kDがaa112〜660に位置することも示された。ELISAの結果は、55kDの活性が53kDよりも明らかに強いことを示した。昆虫内のバキュロウイルス中にaa112〜660断片が発現した場合、63kDに加え、55kDの組換えHEVタンパク質も見出される。
【0015】
細胞を感染させてから7日目にSF9細胞を収集した。タンパク質を一次精製し、ミョウバンアジュバントと併せた。次いで、1回に50μgのタンパク質の筋肉内注射によってカニクイザルを免疫化した。4匹には1回分を与え、他の4匹には2回分を与えた(0d、28d)。最終投与の後、同じHEV系統(SAR−55、パキスタン人患者由来)の1000〜10000CID50の投与量ですべてのサルに静脈内接種をした。15週間以内の、肝臓生検材料、血清、及び大便を毎週収集した。1回投与のサルでのウイルス接種前の抗体の力価は、1:100〜1:10000であったが、2回投与群では、すべて1:10000であった(精製された55kDでコートされていた)。1回投与群では、ウイルス接種後9週間で1匹のサルが麻酔事故のために死亡した(結果では計算されている)。2回投与群では、ウイルス接種後すぐに2匹のサルが原因不明で死亡した(結果では計算せず)。免疫化後の6匹のサルに、ALTの上昇もしくは肝臓生検の病理学的変化は見受けられず、ウイルス血症もなかった。1回投与群の4匹のサルでは、3匹がウイルスを排泄したが、2回投与群の2匹のサルでは、ウイルスの排泄が見られなかった。
【0016】
イオン交換法及び分子篩法によってバキュロウイルス系に発現させた55kDのタンパク質をさらに精製して、精製が99%超に到達するようにした。ミョウバンアジュバントと併せた後、1回分が50μg、10μg、2μg、0.4μg、0μg(対照)のタンパク質を4匹のアカゲザルにそれぞれ注射し、0及び28日投与した。最終投与後の4週間目に、同じウイルス(SAR−55)をサルに接種した。免疫化群の16匹のサルは、すべて正常であり、2μg投与の1匹のサル及び0.4μg投与の他のサルだけに、非常に軽度の病理学的変化が現われた。免疫化されたサルは、感染したが、肝炎を予防することができた。50μg投与の1匹のサル及び10μg投与の他のサルを除き、免疫化したすべてのサルにウイルスの排泄、及びウイルス血症も見られた。ほとんどのサルのウイルス量が制限されたが、期間は短縮されなかった。別の4匹のサルは、2×50μgで免疫化し、最終投与後4週間目に100,000MID50の他のHEVを接種した。結果は同様であった。4匹のサルがすべて、ALTの上昇及び病理学的変化を示したわけではなかったが、1匹のサルだけはウイルス排泄及びウイルス血症を示さなかった。ウイルス量は、明らかに減少したが、期間は短縮されなかった。著者の意見によると、これらのサルでの全面的な防御の効果は、前回よりも悪かった。接種に使用したウイルス量が一因である可能性がある。この実験でのウイルス量は、300,000に達したが、前回は1000〜10000MID50であった。さらに、0.4μg〜50μg群の抗体の力価は、接種前には差を示さなかった。
【0017】
Genelabs companyのスタッフは、同じ昆虫内バキュロウイルスを使用してORF2aa112〜660を発現させ、大量の可溶性組換え62kDタンパク質を得た。精製した後、カニクイザルに免疫化を施すと、投与量1000CID50のウイルス(Mexico株)接種から防御された(20μgで免疫化した3匹のサルは、罹患しなかった。2匹のサルではウイルスの排泄が見られず、1匹のサルでウイルス排泄量が減少した)。(Zhang等、1997年、Clin Diagn Lab Immunol.第4巻:423〜8ページ。)
【0018】
McAtee等(1996年、Protein Expr.Purif第8巻:262〜270ページ)は、組換えバキュロウイルス中に発現させたBurmaORF2の62kD二量体を調製した。HPLC−MSによって、この二量体を別々に分離して、56.5kDと58.1kDの2本のペプチドにした。ペプチド集合体のフィンガープリント解析では、この2本のペプチドのN末端が同じaa112であり、C末端がaa637及びaa652で異なっていることが示された。さらに、56.5kDのタンパク質は、非常に良好な免疫原であった。
【0019】
オーストラリアのAnderson group(Anderson等、1999年、J.Virol.Methods.第81巻:131〜142ページ;Li等、1994年、J Clin Microbio.第32巻:2060〜2066ページ;Li等、1997年、J.Med.Virol.、第52巻:289〜300ページ;Li等、2000年、J.Med.Virol.第60巻:379〜386ページ)は、大腸菌中に発現させたORF2のaa394〜660(ORF2.1)を使用した。この産物は、GSTとのキメラタンパク質又はポリアルギニンタンパク質であり、高次構造の回復期エピトープを形成し得る。このエピトープは、回復期血清を非常に高率で検出できるが、断片のN末端側に伸長又は切断があった場合に消失する。ラットを組換えORF2.1タンパク質で免疫化した後30週目の血清を使用して、バキュロウイルス中に発現させたVLPを被覆抗原として有する回復期の患者からの血清にブロッキングをかけた。阻止率は、81%〜86%に達することになる。ORF2.1タンパク質で単クローン抗体を調製すると、ORF2.1の立体配座エピトープを識別できる2種の単クローン抗体2E2及び4B2と、識別可能な5種の単クローン抗体らしいものを得た。抗原としてVLPを有する回復期血清に2E2又は4B2のどちらを使用してブロッキングをかけても、阻止率は、60%に達し得る。これは、これら2種の単クローン抗体が、エピトープを識別でき、回復期血清中で抗体によって識別されるエピトープの主要な構成要素であることを示唆している。別のデータによって、ORIF2.1が、VLPにかなり類似した主要なエピトープ構造を有することが示された。このエピトープへの抗体は、HEV感染血清中に長期間存在し得る。このエピトープは、重要な防御エピトープであるが、ORF2.1についての動物の防御実験は、今までに報告されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,885,768号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Balayan等、1983年、Intervirology第20巻:23ページ
【非特許文献2】Visvanathan、1957年、Indian J.Med.Res.Suppl.第45巻:1〜30ページ
【非特許文献3】Wong等、1980年、Lancet.第2巻:882〜885ページ
【非特許文献4】Myint等、1985年、Am J Trop Med Hyg.第34:1183〜1189ページ
【非特許文献5】Belabbes等、1985年、J Med Virol.第16巻:257〜263ページ
【非特許文献6】Hau等、1999年、Am J Trop Med Hyg.第60巻:277〜280ページ
【非特許文献7】Tsega等、1992年、Clin.Infec Dis.第14巻:961〜965ページ
【非特許文献8】Dilawari等、1994年、Indian J Gastroenterol.第13巻:44〜48ページ
【非特許文献9】Hussaini等、1997年、J Viral Hepat.第4巻:51〜54ページ
【非特許文献10】Tam等、1991年、Virology第185巻:120〜131ページ
【非特許文献11】Aye等、1992年、Nucleic Acids Res.第20巻:3512ページ
【非特許文献12】Aye等、1993年、Virus Genes.第7巻:95〜109ページ
【非特許文献13】Huang等、1992年、Virology第191巻:550〜558ページ
【非特許文献14】Reyes等、1993年、Arch Virol Suppl.第7巻:15〜25ページ
【非特許文献15】Goldsmith等、1992年、Lancet、第399巻:328〜331ページ
【非特許文献16】Mast等、1998年、Hepatology第27巻:857〜861ページ
【非特許文献17】Kabrane−Lazizi等、1999年、Am J Tropic Medicine第61巻:331〜335ページ
【非特許文献18】Jameel等、1996年、J.Virol.第70巻:207〜216ページ
【非特許文献19】Li等、1999年、virology第265巻:35〜45ページ
【非特許文献20】Tsarev等(1994年、Proc.Nat.Acad.Sci.USA.第91巻:10198〜10202ページ
【非特許文献21】Tsarev等、1993年、J.Infect.Dis.第168巻:369〜378ページ
【非特許文献22】Tsarev等、1997年、Vaccine第15巻:1834〜1838ページ
【非特許文献23】Zhang等、1997年、Clin Diagn Lab Immunol.第4巻:423〜8ページ
【非特許文献24】McAtee等、1996年、Protein Expr.Purif第8巻:262〜270ページ
【非特許文献25】Anderson等、1999年、J.Virol.Methods.第81巻:131〜142ページ
【非特許文献26】Li等、1994年、J Clin Microbio.第32巻:2060〜2066ページ
【非特許文献27】Li等、1997年、J.Med.Virol.、第52巻:289〜300ページ
【非特許文献28】Li等、2000年、J.Med.Virol.第60巻:379〜386ページ
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0022】
(発明の概要)
本発明の一態様では、n重合体ポリペプチド(nは1〜180の整数である)の形の、E型肝炎ウイルスのオープンリーディングフレーム(ORF)2(配列番号1で示す)のアミノ酸配列を含むポリペプチド又はその断片であって、前記の配列番号1で示すE型肝炎ウイルスORF2又はその断片のアミノ酸を含むポリペプチドが、
1)アミノ末端がアミノ酸残基113と469の間から出発し、カルボキシル末端がアミノ酸残基596と660の間で終結しているポリペプチド、
2)アミノ末端がアミノ酸残基370と469の間から出発し、カルボニル末端がアミノ酸残基601と628の間で終結しているポリペプチド、
3)アミノ末端がアミノ酸残基390と459の間から出発し、カルボキシル末端がアミノ酸残基601と610の間で終結しているポリペプチド、
4)配列番号1のアミノ酸残基414〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド247、
5)配列番号1のアミノ酸残基429〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド232、
6)配列番号1のアミノ酸残基439〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド222、
7)配列番号1のアミノ酸残基459〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド201、
8)配列番号1のアミノ酸残基394〜628のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド235N、
9)配列番号1のアミノ酸残基394〜618のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド225N、
10)配列番号1のアミノ酸残基394〜602のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド209N、
11)配列番号1のアミノ酸残基394〜601のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド208N、
12)配列番号1のアミノ酸残基394〜606のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチドNE2I、
13)配列番号1のアミノ酸残基390〜603のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド217D、
14)配列番号1のアミノ酸残基374〜618のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド205、
15)配列番号1のアミノ酸残基414〜602のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド189、
16)配列番号1のアミノ酸残基414〜601のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド188、
17)配列番号1のアミノ酸残基459〜628のアミノ酸配列を有するポリペプチド、及び
18)N末端にMetが付加され、C末端の3’末端上のアミノ酸残基603のProにおいて、5’〜3’方向にアミノ酸配列−Pro−Pro−Argが付加されてC末端が修飾されている、配列番号1のアミノ酸残基X〜603のアミノ酸配列を有するポリペプチドであって、
a)Xがアミノ酸残基394である場合の、配列番号2で示す前記ポリペプチド、すなわちNE2、
b)Xがアミノ酸残基414である場合の、配列番号3で示す前記ポリペプチド、すなわち193C、
c)Xがアミノ酸残基429である場合の、配列番号4で示す前記ポリペプチド、すなわち178C、
d)Xがアミノ酸残基439である場合の、配列番号7で示す前記ポリペプチド、すなわち168C、
e)Xがアミノ酸残基449である場合の、配列番号8で示す前記ポリペプチド、すなわち158C、
f)Xがアミノ酸残基459である場合の、配列番号9で示す前記ポリペプチド、すなわち148C、
g)Xがアミノ酸残基469である場合の、配列番号10で示す前記ポリペプチド、すなわち138Cが含まれるもの
からなる群から選択されているポリペプチドを提供する
本発明の別の態様では、上の1)から18)で表される前述のポリペプチドのいずれか1つとの相同性が少なくとも80%であり、抗原性や免疫原性など、生物学的特性がほぼ同一であるポリペプチドをさらに提供する。
【0023】
別の態様では、本発明はさらに、上述の本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターも提供する。もう1つの態様では、本発明はさらに、本発明のポリペプチドを発現させることのできる、上記の組換え発現ベクターのいずれか1種で形質転換した宿主細胞も提供する。
【0024】
本発明の別の態様では、少なくとも1種の本発明のポリペプチドもしくはその任意の組合せ、及び場合により薬剤として許容される賦形剤及び/もしくはアジュバントを含む、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するためのワクチン組成物をさらに提供する。
【0025】
本発明の別の態様では、本発明のポリペプチド及びインフルエンザウイルス由来の赤血球凝集素抗原の保存断片を含むキメラタンパク質をさらに提供する。
【0026】
別の態様では、本発明はさらに、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するためのワクチン組成物であって、本発明のポリペプチドの1種とインフルエンザウイルス由来赤血球凝集素抗原の保存断片とからなるキメラタンパク質、並びに任意選択の薬剤として許容される賦形剤及び/又はアジュバントを含む組成物も提供する。
【0027】
別の態様では、本発明はさらに、哺乳動物にワクチン接種を施してE型肝炎ウイルス感染を予防するための、上述のワクチン組成物の使用を提供する。
【0028】
別の態様では、本発明はさらに、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するための方法であって、対象に、予防及び/もしくは治療有効量の少なくとも1種の上述のポリペプチド、又は上述のポリペプチドの少なくとも1種及びインフルエンザウイルス由来赤血球凝集素抗原の保存断片からなるキメラタンパク質を投与することを含む方法も提供する。
【0029】
別の態様では、本発明はさらに、診断に有効な量の少なくとも1種の本発明のポリペプチド又はその何らかの併用物を含む、生物検体のE型肝炎ウイルス感染を診断するための診断キットも提供する。
【0030】
別の態様では、本発明はさらに、生物検体のE型肝炎ウイルス感染を診断するための診断キットであって、診断に有効な量の少なくとも1種の本発明のポリペプチド又はその何らかの併用物を含み、さらにE型肝炎ウイルスORF3由来免疫原性エピトープを含有するポリペプチド又はその免疫原性断片も含み、前記のE型肝炎ウイルスORF3由来免疫原性エピトープを含有するポリペプチド又はその免疫原性断片が、任意選択で前記ポリペプチドに共有結合しているキットも提供する。
【0031】
別の態様では、本発明はさらに、生物検体のE型肝炎ウイルス感染を診断する方法であって、抗原と抗体の相互作用に適する条件下、上述の診断キットと検出対称の検体とを接触させることを含む方法も提供する。
【0032】
別の態様では、本発明はさらに、生物検体において、E型肝炎ウイルスに対する全抗体を検出する方法、E型肝炎ウイルスに対するIgG抗体を検出する方法、及びE型肝炎ウイルスに対するIgM抗体を検出する方法も提供する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】ポリペプチド201を発現するプラスミドpTO−T7−ORF2−201の作製を示す略図である。
【図2】発現ベクターpTO−T7−ORF2−201で形質転換した誘導大腸菌の培養物可溶化液(培地を遠心分離にかけるステップ、沈殿した細胞を収集するステップ、次いでペレットを0.1%のSDSを含む供給液で再懸濁させるステップ、これを沸騰湯中で10分間さらに処理するステップ、次いで10分間12,000rpmで遠心分離するステップ、上清を取り出して測定するステップを経た)に関して、12%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)(クーマシーブリリアントブルーR250で染色)によって分析した結果を示す図である。レーン1および2は、それぞれ2種の異なる細菌培養物可溶化液を含む。Uviゲル画像処理システム(UVItec,ltd.、型式DBT−08)によって解析すると、発現された産物は総タンパク質のほぼ35%までになる。
【図3】4回分のポリペプチド201からの精製ポリペプチド201の封入体の2Mおよび4M尿素溶液に関する、クーマシーブルーR250で染色を行った12%ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル(SDS−PAGE)の解析結果を示す図であり、前記試料は、発現ベクターpTO−T7−ORF2−201が組み入れられている組換え大腸菌から得る。この結果は、二量体ポリペプチドの割合が10%〜60%に変動しており、再生を経て二量体ポリペプチドを形成したポリペプチド201が若干あることを示している。再生割合は、1×PBS(20×PBS(1L):Na2HPO4−12H2O、73.344g;KH2PO4、4g;NaCl、163.632g;KCl、4.024g、pH7.45)中で再生した試料よりも低い。図4で示すように、二量体の百分率は99%である。
【図4】ポリペプチド201とHEV感染患者からの血清のウェスタンブロット分析結果を示す図である。レーン1〜3は、SDS−PAGE対照であり、レーン1はタンパク質分子量マーカーであり、レーン2は、1×PBS中の再生ポリペプチド201試料であり、レーン3は、沸騰湯浴中で10分間処理した再生ポリペプチド201であり、レーン4および5は、それぞれレーン2および3の試料に対応するウェスタンブロット結果である。
【図5】前述のポリペプチド201の、動的光散乱計による水和状態の動的半径から得た結果を示す図であり、ポリペプチド201は、ゲル濾過HPLCによって予め精製し、10分間20000gで遠心分離し、0.1umの濾過膜で濾過してある。
【図6】ポリペプチド208N、209N、および225Nと、マウスのMab1F6、2C9、および3F5との反応のウェスタンブロット結果を示す図である。レーン1、2、3はそれぞれ、ポリペプチド208Nの、沸騰湯浴中で10分間処理した再生試料、再生試料、および沈殿させた再生試料に対応し、レーン4、5、6はそれぞれ、ポリペプチド209Nの、沸騰湯浴中で10分間処理した再生試料、再生試料、および沈殿させた再生試料に対応し、レーン7、8、9はそれぞれ、ポリペプチド225Nの、沸騰湯浴中で10分間処理した再生試料、再生試料、および沈殿させた再生試料に対応し、レーン10は、対照としての単量体ポリペプチド201である。
【図7】様々な投与量の(フロイントアジュバントを含有する)ポリペプチド201ワクチンで免疫化した後のマウスの血清中に産生されたHEV抗体のプロフィールを示すグラフである。水平座標は、最初の免疫化からの日数である。垂直座標は、ELISAによって測定したOD450nm/620nmである。
【図8】様々な投与量の(アジュバントを含まない)ポリペプチド201ワクチンで免疫化した後のマウスの血清中に産生されたHEV抗体のプロフィールを示すグラフである。水平座標は、最初の免疫化からの日数である。垂直座標は、ELISAによって測定したOD450nm/620nmである。
【図9】様々な投与量の(アジュバントとして水酸化アルミニウムを含有する)ポリペプチド201ワクチンで免疫化した後のマウスの血清中に産生されたHEV抗体のプロフィールを示すグラフである。水平座標は、最初の免疫化からの日数である。垂直座標は、ELISAによって測定したOD450nm/620nmである。
【図10】図10A、10B、10C、および10Dは、それぞれNo.1、No.2、No.3、およびNo.13にグループ分けしたアカゲザルの血清中に産生されたHEV抗体のプロフィールを示すグラフである。これらの対象動物にはすべて、静脈内注射によってHEVを接種している。水平座標は、最初の免疫化からの日数である。垂直座標は、ELISAによって測定したOD450nm/620nmである。この結果は、No.1、No.2、およびNo.3の群のサル血清中に、抗NE2I−IgGがGENELABS−IgGおよびWANTAI抗HEV−IgGより5〜10日早く存在していること、ならびにNo.13のサルの血清において抗NE2I−IgGは検出可能であるが、Genelabs抗HEV−IgGおよびWANTAI抗HEV−IgGは、NO.13のサル血清中に検出されないことを例示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(好ましい実施形態の詳細な説明)
別段の指示がない限り、本明細書で使用する用語又は術語は、当技術分野で通常使用されているものと同じである。細胞培養、分子遺伝学、核酸化学、及び免疫学的手順における通常の製造が、当技術分野で定型化した技術として実施される。本発明では、別段の指示がない限り、本明細書で使用するこれらの用語は、以下のような意味である。
【0035】
「E型肝炎ウイルス」又は「HEV」は、i)水系感染による肝炎を引き起こし、ii)血清学的特性に関して、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、又はD型肝炎ウイルス(HDV)と区別し、iii)pTZKF1(ET1.1)に挿入された1.33kbのcDNAに相同的なゲノム領域を含むウイルス、ウイルスの型、又はウイルスのクラスを指し、前記プラスミドは、American Type Culture Collection(ATCC)に目録番号67717で保管されている大腸菌株の中に含まれている。
【0036】
本発明のポリペプチド
一態様では、本発明は、驚くべきことに、抗体との十分な反応性及び/又は免疫原性を有する一連のHEVポリペプチド断片であり、配列番号1で示すHEV ORF2のアミノ酸配列中に含まる断片を提供する。個々の断片の名称は、実施例6の表1に出ている。
【0037】
本発明における、アミノ酸配列内の配置によるアミノ酸残基の番号付けは、国際純正及び応用化学連合及び国際生化学連合、Joint commission on biochemical Nomenclature、「アミノ酸及びペプチドの命名及び記号表示(Nomenclature and symbolism for Amino Acids and Peptides)」、Pure Appl.Chem.第56巻、595〜624ページ(1984年)の発番方式に従う。具体的には、配列番号1のコード出発部位Metを1位と示し、5’から3’の方向に大きくなる。
【0038】
本発明の一態様では、n−重合体ポリペプチド(nは1〜180の整数である)の形の、配列番号1で示す、E型肝炎ウイルスORF2のアミノ酸配列又はその断片を含むポリペプチドを提供する。nが2であるとき、前記ポリペプチドは二量体ポリペプチドであり、nが3であるとき、前記ポリペプチドは三量体ポリペプチドであり、nが4であるとき、前記ポリペプチドは四量体ポリペプチドであり、以下同様である。
【0039】
本発明では、配列番号1で示すアミノ酸配列を含む前記ポリペプチド断片のアミノ末端(5’末端)は、アミノ酸残基113と469の間、好ましくはアミノ酸残基370と469の間、より好ましくはアミノ酸残基390と459の間から出発し、前記ポリペプチドのカルボキシル末端(3’末端)は、アミノ酸残基596と660の間、好ましくはアミノ酸残基601と628の間、より好ましくはアミノ酸残基601と610の間で終結する。具体的には、本発明の好ましいポリペプチドは、ポリペプチド247、ポリペプチド232、ポリペプチド222、ポリペプチド201、ポリペプチド235N、ポリペプチド225N、ポリペプチド209N、ポリペプチド208N、ポリペプチドNE2I、ポリペプチド217D、ポリペプチド205、ポリペプチド189、ポリペプチド188、及び配列番号1のアミノ酸残基459〜628のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0040】
本発明はさらに、N末端にMetが付加され、C末端の3’末端上のアミノ酸残基603のProにおいて、5’〜3’方向にアミノ酸配列−Pro−Pro−Argが付加されてC末端が修飾されている、配列番号1のアミノ酸残基X〜603のアミノ酸配列を有するポリペプチドに関するものであり、これには、a)NE2、b)193C、c)178C、d)168C、e)158C、f)148C、g)138Cが含まれる。
【0041】
別の態様では、本発明はさらに、前述のポリペプチドのいずれか1種との相同性が少なくとも80%であり、抗原性や免疫原性など、生物学的特性がほぼ同一であるポリペプチド、すなわち、本発明のポリペプチドの派生物に関する。具体的には、このポリペプチドは、前記ポリペプチドのアミノ酸が、前記ポリペプチドのアミノ酸配列と共に、当該ポリペプチドのN末端及び/又はC末端に隣接する、自然配列でないアミノ酸を含むが、それでも抗原性や免疫原性など、生物学的特性が当該ポリペプチドとほとんど類似したままであるという条件の本発明のポリペプチド派生物であると考えられる。したがって、同じ物に相当するDNA断片を本発明の派生DNAと称する。たとえば、発現及び/又は精製の目的のために、そのN末端に開始アミノ酸(メチオニン)又は他のリーディングペプチド及び/もしくはシグナルペプチドを加える、あるいはそのC末端にいくつかのヒスチジンを加えることによってその精製が促進される。
【0042】
本発明はさらに、抗原性及び/もしくは免疫原性など、生物学的特性が前述のポリペプチドのいずれか1種と同一であるポリペプチド、又は前述のポリペプチドのいずれか1種との配列同一性が少なくとも80%であるポリペプチドも考えている。用語「同一性百分率」は、最適に並べ合わせて得た2種の比較しようとする配列間で一致するヌクレオチド又はアミノ酸残基の百分率を表すものとし、この百分率は単に統計的なものであり、2配列間の相違は、ランダムに、かつその全長にわたって分布している。2種のヌクレオチド配列又はアミノ酸配列の配列比較は、その各配列を最適に並べ合わせた後にこれらの配列を比較することによって従来どおりに実施し、局所領域の配列類似性を特定及び比較するためには、区分又は「比較のウィンドウ(window of comparison)」によって前記の比較を行う。比較のための最適な配列の並べ合わせは、手作業でなく、Smith及びWaterman(1981年)のAd.App.Math.第2巻:482ページの局所相同性アルゴリズム、Neddleman及びWunsch(1970年)のJ.Mol.Biol.第48巻:443ページの局所相同性アルゴリズム、Pearson及びLipman(1988年)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第85巻:2444ページの類似性検索法、並びにこれらのアルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(米国ウィスコンシン州マディソン575、Science Drive、Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer GroupのGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N、及びTFASTA)によって生じさせる。
【0043】
2種の核酸配列又はアミノ酸配列の同一性百分率は、最適に並べ合わせたその2種の配列を比較することによって決定するが、その2種の配列の最適な並べ合わせでも、比較対象の核酸配列又はアミノ酸配列が基準配列に対して付加又は欠失を含んでいるかもしれない。同一性百分率は、2種の配列間でヌクレオチド又はアミノ酸残基が一致する同一位置の数を決定し、これを比較する位置数で割り、得られた結果を100倍することによって計算して、この2種の配列間の同一性百分率を得る。
【0044】
たとえば、ウェブサイトhttp://www.ncbi.nlm.nih.gov/gorf/bl2.htmlから入手できるプログラムBLAST「BLAST2配列」が使用できるが、これでは、パラメータはデフォルト(特に、空のギャップペナルティーは5、伸長のギャップペナルティーは2であり、行列はプログラム「blosum62」などによって得る)であり、並べ合わせる2種の配列間の同一性百分率は、このプログラムによって直接に計算される。
【0045】
本発明のポリペプチドの調製
本発明のポリペプチドは、化学的合成方法や組換えDNA技術など、当技術分野で知られている方法によって調製できる。好ましくは、本発明のポリペプチドの調製方法は、組換えDNAを発現させることによって行うことができる。組換えタンパク質を調製する方法は、当技術分野でよく知られており、本明細書で詳細に述べる必要はないが、実施例中の方法を参照することもできる。組換えタンパク質の産生に使用できる細胞に関して言及すべきものとしては、細菌細胞(P.O.Olins及びS.C.Lee、1993年、Curr.Opi.Biotechnology第4巻:520〜525ページ)、酵母細胞(R.G.buckholz、1993年、Curr.Opi.Biotechnology第4巻:538〜542ページ)、動物細胞、特に哺乳動物細胞培養物(C.P.Edwards及びA.Aruffo、1993年、Curr.Opi.Biotechnology第4巻:558〜563ページ)、及び昆虫細胞がある。昆虫細胞での方法については、たとえば、バキュロウイルス(V.A.Luckow、1993年、Curr.Opi.Biotechnology第4巻:564〜572ページ)を参照されたい。これに関して、本発明はさらに、上述のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む組換え発現ベクターも提供する。本発明はさらに、そこに含まれるヌクレオチド配列によってコードされる前記ポリペプチドを発現させることのできる、上述の組換え発現ベクターで形質転換した宿主細胞も提供する。
【0046】
本発明の一実施形態では、大腸菌を使用して、次の本発明のポリペプチド、すなわち、ポリペプチド247、ポリペプチド232、ポリペプチド222、ポリペプチド201、ポリペプチド235N、ポリペプチド225N、ポリペプチド209N、ポリペプチド208N、ポリペプチドNE2I、ポリペプチド217D、ポリペプチド205、ポリペプチド189、ポリペプチド188、及びポリペプチドa)NE2、b)193Cを個々に発現させる。
【0047】
前記ポリペプチドの単量体と二量体の比、重合体ポリペプチドの生成量、及びその個々のラジウムを測定する(詳細は実施例6を参照のこと)。結果として、発現した産物は、リフォールディングされる傾向があることが示されている。リフォールディング後に溶液中に安定な重合体が自己生成する能力によって、HEVを予防及び/又は治療するためのワクチンとして使用するのに特に適する本発明のポリペプチドができる。本発明の実施形態の1つでは、ある試験で、二量体、三量体、及び四量体を含む重合体が検出されている。現在の方法では限度があるが、推定上の三量体は、実際には二量体と四量体の適切な比の混合物でできている可能性がある。方法論が向上することによって、本発明のポリペプチドがより大きなポリペプチドを生成し得ることも想定できる。刊行された参照文献(Jameel等、1996年、J.Virology第70巻:207〜216ページ;Li等、1999年、Virology第265巻:35〜45ページ)から推論すると、自然のHEVは90個の小粒子からなり、各小粒子がORF2ポリペプチドの二量体である可能性が高い。したがって、本発明のポリペプチドは、最高で180重合体のポリペプチドである重合体、又はそれよりも長い重合体を形成し得ると予想するのが妥当であり、ウイルスの構造を知る上での進展となる。
【0048】
本発明の別の好ましい実施形態では、封入体の形のポリペプチド201が大腸菌によって高い収率で発現されるが、発明者は、驚くべきことに、前記封入体がpH7.45のPBS緩衝液中で自発的に自己再生でき、これによって、塩酸グアニジンを加え、次いで多段階の透析にかけるステップを含めて、実質的に回収率を低下させる、時間がかかりかつ冗長な従来の変性/再生プロセスが回避されることを発見した。その上、大腸菌によって同時に発現される他の望ましくないタンパク質封入体は、自発的に自己再生できないので、単に遠心分離し、上清を回収することによって、本発明の問題のタンパク質が実質的に精製できる。
【0049】
本発明のポリペプチドとインフルエンザウイルス由来赤結集凝集素抗原の保存断片からなるキメラタンパク質
本発明の別の態様では、上述のポリペプチドのいずれか1種とインフルエンザウイルス由来赤血球凝集素抗原の保存断片とからなるキメラタンパク質も提供する。赤血球凝集素抗原(以下ではHAと示す)は、2種のインフルエンザウイルス表面抗原の1つであり、対象血清中のインフルエンザウイルスに対する抗体を特異的に検出する際に使用される最もよく導入される抗原である。動物にHAをワクチン接種して産生させた抗体によって、レシート(receipt)がインフルエンザウイルスに再感染するのを有効に予防できることは知られている。したがって、HAに対する抗体が集団の大部分に与えられていると考えるのが妥当である。これまでの報告(McEwen J.等、Vaccine、1992年;第10巻(6):405〜11ページ)によると、エピトープ91〜108aaは、A型インフルエンザウイルスのH3株すべてのHA遺伝子中にある保存アミノ配列である。本発明の好ましい一実施形態ではまず、遺伝子工学によって、Gly−Gly−Serなど、免疫原性の高い本発明のHEV ORF2遺伝子のポリペプチド断片に、HA遺伝子(91〜108aa)を柔軟に連結して、原核生物発現系、特に大腸菌中でのキメラ発現を確立させる。次いで、予めインフルエンザウイルスを感染させることによって産生させたHA抗体で追加免疫を行って、力価の高い防御的な抗HEV抗体を得る。この方法では、本発明のポリペプチドのORF2断片だけを含むワクチンに優るHEVワクチンが得られる。
【0050】
本発明での教示を考えて、当分野の技術者は、HA遺伝子中の他の保存断片から、本発明のワクチン組成物に有用なエピトープを選沢することもできる。HAの特定のエピトープと本発明のポリペプチドを連結する特定の柔軟なリンカーについては、適切なペプチド断片又はその類似体からなっていてよいが、ただし、本発明のポリペプチドと選択されたHA断片の連結を助長し、哺乳動物のHEV感染の予防/治療に関して本発明のポリペプチドの使用にほとんど影響を及ぼさないものとする。本発明のポリペプチドとHAを連結するリンカーの選択が、主として選択された本発明のポリペプチドの特性に応じて決まることは理解されるはずである。たとえば、HAに連結することにした選択された本発明のポリペプチドに応じて、異なるリンカーを選択すればよい。本発明では、使用するHAの保存断片がアミノ酸残基91〜108からの断片であることが好ましい。
【0051】
免疫原としての本発明のポリペプチドと選択したHA断片を連結するリンカーは、化学合成技術など、従来の合成技術によって望ましく合成することができる。さらに、当分野の技術者には、自動ペプチド合成装置によるt−BOC法など、標準の化学的方法に従ってペプチドを合成することもできる(たとえば、L.A.Carpino、J.Am.Chem.Soc.第79巻:4427ページ、1957年を参照のこと)。しかし、ペプチドは、タンパク質を化学的に加水分解しても、他の知られている方法によっても産生できる。
【0052】
あるいは、本発明のポリペプチドとHAのキメラタンパク質は、HA断片及び本発明のポリペプチドをコードする配列を含むDNA分子の核酸配列で形質転換した宿主細胞によって産生させることができ、前記DNA分子は組換えDNA技術など、従来の遺伝子工学的方法によって宿主微生物又は宿主細胞中でクローン化することによって得られる。形質転換した細胞での組換え技術によって生成させる場合、得られる組換えキメラタンパク質は、型通りの方法によって培地もしくは宿主細胞、又はその両方から精製及び回収できる。組換え法によって産生された前記キメラタンパク質は、組換えDNA技術による組換え産生の際、得られるペプチドを細胞体又は培地からほとんど分離できる程度に単離される。さらに、得られるペプチドのためのコード配列は、合成によって、あるいは知られている方法に従ってウイルスRNAを使用し、又はそのcDNAを含む入手可能なプラスミドを使用することによって調製できる。
【0053】
この方法における使用では、上述のキメラタンパク質は、その産生を増大させ、又はその精製を促進する目的で、一般に知られている作製物向けにも他の作製物向けにも設計できる。適切な系及びベクターは知られており、公的に入手でき、又は大腸菌、バチルス、ストレプトマイセス、サッカロミケス(Saccharomyces)、哺乳動物、酵母、昆虫細胞、及び植物細胞など、様々な微生物及び細胞中のクローン化及び発現キメラペプチドが市販されている。
【0054】
組換え又は合成によって産生されたキメラタンパク質は、型通りの精製方法によって精製できる。当分野の技術者には、問題の用途に合致するポリペプチドの所望の純度が容易に決定できる。
【0055】
ワクチン組成物
別の態様では、本発明はさらに、少なくとも1種の本発明のポリペプチドもしくはその何らかの併用物と、任意選択の薬剤として許容される賦形剤及び/もしくはアジュバントとを含む、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するためのワクチン組成物も提供する。
【0056】
さらに別の態様では、本発明はさらに、本発明のポリペプチド及びインフルエンザウイルスの赤血球凝集素抗原由来保存断片を含有するキメラタンパク質と、任意選択の薬剤として許容される賦形剤及び/もしくはアジュバントとを含む、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するためのワクチン組成物も提供する。
【0057】
本発明のさらに別の態様では、哺乳動物にワクチン接種を施してE型肝炎ウイルス感染を予防する、上記のワクチン組成物の使用も提供する。
【0058】
本発明では、接種又は治療の対象となる哺乳動物には、それだけに限らないが、ヒト、及びヒヒ、類人猿、サルなど、他の霊長類、ウシ、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウスなど、実用動物、並びにネコ、イヌなど、ペット類が含まれる。前記ワクチン組成物は、治療及び/又は予防に有効な量の少なくとも1種の本発明のポリペプチドを含有し、前記の有効量は、ある期間投与した後、HEVに感染した対象を有効に治療し、又は対象のHEV感染を予防するのに十分な量である。
【0059】
本発明のワクチン組成物は、単独で使用することも、医薬用又は予防法向け処方の成分として使用することもでき、任意選択で、放出制御剤を含む、薬剤として許容される賦形剤を含有する。前記賦形剤はさらに、HEV感染を治療及び/又は予防するための投与に適する薬剤として許容される媒介物又は希釈剤を含んでもよい。薬剤として許容される適切な媒介物とは、生物学的に不活性かつ/又は非毒性のものを指す。所望の用途に従って、当技術分野で知られている様々な媒介物が選択できる。通常、前記媒介物は、それだけに限らないが、無菌食塩水、ラクトース、スクロース、オルトリン酸カルシウム、ゼラチン、デキストリン、寒天、ミョウバン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、及び水からなる群から選択できる。さらに、媒介物又は希釈剤は、単独又はパラフィンとの併用で、モノステアリン酸グリセリル/ジステアリン酸グリセリルなど、放出制御性物質をさらに含んでよい。さらに、可溶性ガラスを含む従来の徐放性重合体製剤も使用できる。
【0060】
さらにまた、所望時には、少なくとも1種の本発明のポリペプチド又はその何らかの併用物を含む本発明のワクチン組成物は、他の治療/予防薬をさらに含んでもよい。たとえば、前記組成物は、HEV感染の治療又は予防で有用な様々な薬品の「カクテル混合物」を含んでよい。このようなカクテル混合物は、インターフェロン、ヌクレオチド類似体、及び/又はN−アセチル−システインなど、他の薬品をさらに含んでよい。
【0061】
少なくとも1種の本発明のポリペプチドを含む本発明のワクチン組成物は、任意選択で、アジュバントやサイトカインなど、対象における抗体及びT細胞の応答をさらに誘導するのに有用な免疫系調節薬をさらに含んでもよい。前記調節薬には、従来のミョウバンを主体としたアジュバント、ムラミルジペプチド、保存剤、化学安定剤、又は他の抗原タンパク質が含まれる。一般に、安定剤、アジュバント、又は保存剤などは、所望の適用例での効果が最高の処方を最も効果的に決定する。適切な保存剤には、クロリルブチノール(chlorylbutynol)、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸、二酸化硫黄、没食子酸プロピル、パラベン、グリセリン、及びフェノールが含まれる。
【0062】
本発明のワクチン組成物を使用して哺乳動物のHEV感染を予防及び/又は治療する方法
別の態様では、本発明は、対象に予防及び/又は治療に有効な量の本発明のポリペプチド、又は少なくとも1種の本発明のポリペプチド及びインフルエンザウイルス赤血球凝集素の保存断片からなるキメラタンパク質を投与することを含む、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療する方法を提供する。特に、前記方法は、対象に本発明のワクチン組成物を投与するステップを含む。本発明が選択する保存断片は、91〜108個のアミノ酸残基からのアミノ酸断片であることが好ましい。
【0063】
これらの組成物の適量は、所望の応答レベルに基づいて決定してよい。一般に、本発明のポリペプチドを含む組成物は、約5ugと約200ugの間の粒子を含有してよい。このような組成物は、1回又は一続きの接種、たとえば、2〜6カ月間隔で3回の接種として投与してよい。また適切な投与量は、単剤治療として投与する場合、患者の健康状態、体重、又は年齢、並びに免疫原成分の従来の投与量などの要因を考慮に入れて、治療を行う医師の判断によって決定してよい。患者の状態が改善し、又は所定の病原体への暴露の増加が見込まれれば、本発明のポリペプチドを含む維持量の組成物を必要に応じて投与すればよい。その後、投与量、投与頻度、又はその両方を、所望の効果が保たれるレベルに減らせばよい。その時に、治療を止めるべきである。しかし、所定の好ましくない状態が再発すれば、各個体に長期間の断続的な治療が求められることもある。
【0064】
本発明のポリペプチドを含む組成物は、たとえば非経口投与、特に筋肉内又は皮下、並びに経口投与など、何らかの適切な経路によって投与してよい。経肺、経鼻、点耳、経肛門、経皮、点眼、静脈内、動脈内、腹腔内、経粘膜、舌下、皮下、脳内など、他の経路を使用してもよい。
【0065】
本発明のワクチン組成物の調製をして、液状の溶液又は懸濁液としての注射用組成物又はワクチンを製剤すればよい。注射の前に液体になる溶液又は懸濁液に適する固体剤形を調製してもよい。ある実施形態では、製剤が、放出を制御し、かつ/又は送達を長引かせるために、乳化されていても、リポソーム又は可溶性ガラスに封入されていてもよい。あるいは、製剤は、エアロゾル又はスプレーの形でもよい。製剤は、経皮パッチに含まれていてもよい。活性成分は、薬剤として許容され、活性成分と適合するいくらかの医薬添加物と混合してよい。医薬添加物には、たとえば、フロイント不完全アジュバント、細菌性のリポ多糖体、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、ムラミルジペプチド、レシチン、緩衝物質、セルロースを素材とした物質、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0066】
生物検体においてHEVに対する抗体IgG、IgM、又は全抗体を検出する診断キット及び方法
本発明のポリペプチドは、生物検体においてHEVに対する抗体IgG、IgM、又は全抗体の存在を検出するために使用でき、既存の検出キット又は検出法より感度及び特異性が高いことが特徴である。したがって、本発明は、抗体/抗原相互作用に適する条件下、検出すべき検体と検出に有効な量の本発明のポリペプチドを接触させるステップを含む、生物検体におけるHEV感染の存在を判定する方法を提供する。
【0067】
本発明で検出対象となる生物検体を供与するものには、それだけに限らないが、ヒト、及びヒヒ、類人猿、サルなど、他の霊長類、ウシ、ヤギ、ブタ、ウサギ、マウスなど、実用動物、並びにネコ、イヌなど、ペット類が含まれる。
【0068】
本発明の別の態様では、生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgGを判定する診断キットであって、少なくとも1種の本発明のポリペプチドを含み、望むなら、前記ポリペプチドは、適切な支持体の表面に予め塗布されており;さらに、検出対象の生物検体のIgGに指向性のある、市販又は型通りに生成された検出可能な標識抗体抗IgG、及び前記の検出可能な標識に合致する検出剤を含み;望むなら、適切な緩衝系をさらに含むキットを提供する。
【0069】
本発明の一実施形態では、検出対象となる前記生物検体はヒト由来であり、抗体は抗ヒトIgG抗体である。より具体的には、本発明のIgG抗体用検出キットは、HEV ORF3内免疫原性エピトープを有するポリペプチド又はその免疫原性断片をさらに含み、前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片が、任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合している。
【0070】
前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片が任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合した状態にするには、遺伝子組換え法によってキメラポリペプチドを産生させることが好ましい。化学的方法を使用して、前述のポリペプチドに前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片を共有結合させることもできる。
【0071】
本発明の別の態様では、生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgMを判定する診断キットであって、検出対象の生物検体に由来するIgMに指向性のある捕捉抗体としての、市販又は型通りに生成された検出可能な標識抗体抗IgMを含み、望むなら、前記捕捉抗体は、適切な支持体の表面に予め塗布されており;さらに、検出可能に標識された少なくとも1種の本発明のポリペプチド、及び前記の検出可能な標識に合致する検出剤を含み;望むなら、適切な緩衝系をさらに含むキットを提供する。
【0072】
本発明の一実施形態では、検出対象となる前記生物検体はヒト由来であり、抗体は抗ヒトIgM抗体である。より具体的には、本発明のIgM抗体用診断キットは、HEV ORF3内免疫原性エピトープを有するポリペプチド又はその免疫原性断片をさらに含み、前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片は、任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合している。
【0073】
前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片が任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合した状態にするには、遺伝子組換え法によってキメラポリペプチドを産生させることが好ましい。化学的方法を使用して、前述のポリペプチドに前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片を共有結合させることもできる。
【0074】
本発明の別の態様では、生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgMを判定する診断キットであって、検出対象の生物検体に由来するIgMに指向性のある捕捉抗体としての、市販又は型通りに生成された検出可能な標識抗体抗IgMを含み、望むなら、前記捕捉抗体は、適切な支持体の表面に予め塗布されており;さらに、検出可能に標識された少なくとも1種の本発明のポリペプチド、及び前記の検出可能な標識に合致する検出剤を含み;望むなら、適切な緩衝系をさらに含むキットを提供する。
【0075】
本発明の一実施形態では、検出対象の前記生物検体はヒト由来であり、抗体は抗ヒトIgM抗体である。より具体的には、本発明のIgM抗体用診断キットは、HEV ORF3内免疫原性エピトープを有するポリペプチド又はその免疫原性断片をさらに含み、前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片は、任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合している。
【0076】
前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片が任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合した状態にするには、遺伝子組換え法によってキメラポリペプチドを産生させることが好ましい。化学的方法を使用して、前述のポリペプチドに前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片を共有結合させることもできる。
【0077】
本発明のさらにまた別の態様では、生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する全抗体を判定する診断キットであって、少なくとも1種の本発明のポリペプチドを含み、望むなら、前記ポリペプチドは、適切な支持体の表面に予め塗布されており;さらに、検出可能に標識された少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド、及び前記の検出可能な標識に合致する検出剤を含み;請求項1に記載のポリペプチドから選択された、支持体表面に予め塗布するための前記ポリペプチド、及び請求項1に記載のポリペプチドから選択された検出可能な標識ポリペプチドが同じポリペプチドでも異なるものでもよいキットを提供する。
【0078】
より具体的には、本発明の全抗体用診断キットは、HEV ORF3内免疫原性エピトープを有するポリペプチド又はその免疫原性断片をさらに含み、前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片は、任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合している。
【0079】
前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片が任意選択で本発明のポリペプチドに共有結合した状態にするには、遺伝子組換え法によってキメラポリペプチドを産生させることが好ましい。化学的方法を使用して、前述のポリペプチドに前記のHEV ORF3内免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片を共有結合させることもできる。
【0080】
当技術分野では、前述の診断キットにおいて、様々な市販品を得ることも、様々な動物を利用する方法によって型通りに産生することもできる抗ヒトIgG又は抗ヒトIgMを使用することが知られている。あるいは、検出対象の生物検体を供与する特定の動物に対する抗IgG又は抗IgMを使用するが、これは、関係のある動物を利用することによって生成できる。抗体を調製する目的では、選択される動物には、それだけに限らないが、ヤギ、ヒツジ、ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ブタなどが含まれる。標識化のための前記の検出可能な標識を単独又は他の組成物もしくは化合物との併用で使用すると、検出可能なシグナルが得られて、検体中の問題の物質の存在を視覚化できる。前記の検出可能な標識は、検出の技術分野で知られており、かつ容易に入手できる材料でよく、それには、これだけに限らないが、酵素マーカー、蛍光マーカー、放射性マーカーなどが含まれる。したがって、本発明は、検出標識を特定の選択に限定するものではなく、当技術分野で知られている検出法がすべて含まれるものと考える。利便性を考えて、前記検出剤は、キットの形で提供できる。
【0081】
前記キットは、任意選択で、本発明のポリペプチドを予め塗布したマイクロタイタープレート、適切に処方された様々な希釈剤及び/もしくは緩衝剤、標識物質、又は酵素基質、補因子、発色団など、特異的に結合した抗原/抗体複合体を検出するためのシグナルを発生する他の薬品をさらに含む。その中の他の構成要素は、当分野の技術者に容易に選択できる。
【0082】
さらに、生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgGを検出する方法であって、支持体表面上に少なくとも1種の本発明のポリペプチドを固定化するステップ;次いで、適切な緩衝液で洗浄するステップ;抗原と抗体の相互作用に適する条件下、これに検出対象の検体を接触させるステップ;適切な緩衝液で再度洗浄するステップ;次いで、市販又は型通りに生成された検出可能な標識抗IgG抗体と共に、抗原/抗体が十分に相互作用する一定の時間インキュベートするステップであって、前記抗IgGが、検出対象の生物検体を供与した動物に対するものであるステップ;並びに、その後、前記検出標識に合致する検出剤を使用して、支持体表面上の抗原/抗体複合体を検出し、検体中の抗体IgGの量を算出するステップを含む方法も提供する。
【0083】
本発明の一実施形態では、検出対象となる前記生物検体はヒト由来であり、使用する前記抗体は抗ヒトIgGである。
【0084】
本発明の別の実施形態では、前もって決められた支持体の表面に抗原としてのポリペプチドNE2Iを予め塗布する。本発明の別の実施形態では、特定の支持体表面を予め塗布する抗原として、HEV ORF3内エピトープと結合したポリペプチド247を使用する。
【0085】
本発明の別の態様では、生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgMを検出する方法であって、支持体表面上に、市販又は型通りに生成された抗体抗IgMを固定化するステップであって、前記抗IgMが、検出対象の生物検体を供与した動物に対するものであるステップ;適切に洗浄するステップ;抗原と抗体の相互作用に適する条件下、これに検出対象の検体、好ましくは血清を接触させるステップ;適切な緩衝液で再度洗浄するステップ;次いで少なくとも1種の検出可能に標識された本発明のポリペプチドと共に、抗原と抗体が相互作用するのに十分な時間インキュベートするステップ;並びに、その後、前記の検出可能な標識に合致する検出剤を使用して、支持体表面上の抗原/抗体複合体を検出し、検体中の抗体IgMの量を算出するステップを含む方法を提供する。
【0086】
本発明の一実施形態では、検出対象となる前記生物検体はヒト由来であり、使用する前記抗体は抗ヒトIgMである。
【0087】
本発明の別の実施形態では、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合させたポリペプチド225Nによって、検体中の前記IgM抗体を検出する。本発明のさらにまた別の実施形態では、HEV IRF3のエピトープと結合させたポリペプチド247を、さらに西洋ワサビペルオキシダーゼと結合させて、検体中に含まれるIgMを検出する。
【0088】
さらに、生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する全抗体を検出する方法であって、支持体表面上に少なくとも1種の本発明のポリペプチドを固定化するステップ;適切な緩衝液で洗浄するステップ;抗原と抗体の相互作用に適する条件下、これに検出対象の生物検体を接触させるステップ;任意選択で、適切な緩衝液で再度洗浄するステップ;検出可能な標識された当該ポリペプチドの1つと共に、抗原と抗体が相互作用するのに十分な時間インキュベートするステップ;並びに、検出可能な標識を有するE型肝炎ウイルス抗原及び合致する検出剤を使用して、支持体表面上の抗原/抗体複合体を検出し、検体中の全抗体の量を算出するステップを含む方法も提供する。
【0089】
本発明の一実施形態では、支持体表面上にNE2Iを予め塗布し、西洋ワサビペルオキシダーゼと予め結合させたポリペプチド225によって、検体中の全抗体を検出する。本発明の別の実施形態では、支持体表面上に、HEV ORF3からのエピトープと結合させたNE2Iを予め塗布し、HEV ORF3からのエピトープと前もって結合させてある、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合させたポリペプチド225によって、検体中の全抗体を検出する。
【0090】
以下の図面及び実施例の記載に関して、本発明の詳細をさらに説明するが、これは、いかようにも本発明の保護範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0091】
(実施例)
別段の指示がない限り、本発明の分子生物学の実験方法およびイムノアッセイはすべて、「分子クローニング:実験室必携(Molecular Cloning:a Laboratory Manual)」第2版、Joseph Sambrook、David W.Russell著、Cold Spring Harbor Laboratory Press、および「分子生物学におけるショートプロトコル(Short Protocols in Molecular Biology)」、第3版、John Wiley & Sons,Inc.、1995年の基本的な記載事項に従う。制限エンドヌクレアーゼの使用は、提供者が提示するプロトコルに従う。
【実施例1】
【0092】
実施例1 本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の調製、およびそれを含む発現ベクターの作製
鋳型としてのHEV ORF2画分の調製
問題の遺伝子を調製するにあたり、中国新疆省のHEV感染患者からクローン化した、鋳型としての全長HEV遺伝子(Aye,T.T.、Uchida等、Nucleic Acids Research第20巻(13)3512ページ(1992年);遺伝子銀行受入れ番号D11092)、ならびに上方のプライマーとしてのORF2 FP:5’−atgcgccctcggcca−3’および下方のプライマーとしてのORF2 RP:5’−aaataaactataactcccga−3’の2種のプライマーを用いるポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)を利用する。PCR反応は、PCRサーマルサイクラー(BIOMETRAt3)において、94℃で5分間;次いで94℃で50秒間、57℃で50秒間、および72℃で2.5分間を25サイクル;最後に72℃で10分間という条件下で実施する。本発明のポリペプチドを調製する鋳型としてのHEV ORF2からのDNA断片約2kbが得られる。先述のPCR産物を市販のベクターpMD18−T(TAKARA社)にさらに連結し、次いでORF2遺伝子が挿入された陽性クローンが識別されるようにBamHI/HindIIIで消化する。M13(+)/(−)をプライマーとして使用して、得られたものの配列を決定し、それによって本発明のポリペプチドを調製する鋳型として使用する2本のHEV ORF2DNA断片、すなわち一方が保存配列(鋳型1、配列番号5)、他方が変異配列(鋳型2、配列番号6)を識別する。
【0093】
配列を並べ合わせ、ORFを解析することによって、本発明のポリペプチドを調製する鋳型としてのHEV ORF2の変異配列(配列番号6)は、保存配列(配列番号5)に対して塩基Aが欠落しており、これがORF2内のアミノ酸残基604〜605がHis−Ser−ValからPro−Pro−Argに変異するシフト変異をもたらし、さらにこのために、この変異によって生成した終止コードタグによって前記ポリペプチドへの翻訳が停止することが判明している。
【0094】
以下では本発明のポリペプチド201を使用する実施例によって、ポリペプチド201をコードする核酸およびそれを含む発現ベクターの調製を例示する。
【0095】
本発明のポリペプチド201をコードするポリヌクレオチドおよびそれを含む発現ベクターの調製
ポリメラーゼ連鎖反応法(PCR)において、上記で得た配列の配列番号5を鋳型として使用し、ならびにBamHI部位、NdeI部位(CAT ATG)、および大腸菌系の翻訳開始コドンとしてのATGを導入した前方向プライマー201FP:5’−ggatcccatatggttattcaggattatgac−3’(表1を参照のこと)と、終止コドンおよびEcoRI部位を導入した逆方向プライマーとしての201RP:5’−ctcgagaaataaactataactcccga−3’(表1を参照のこと)とを使用するものを利用して遺伝子を合成する。PCRは、サーモサイクラーにおいて、94℃で5分間熱変性させ、次いで94℃で50秒間、57℃で40秒間、および72℃で40秒間のサイクルを30回、さらに最後に72℃で10分間増幅させて実施する。得られた〜600bpのPCR産物が本発明のポリペプチド201をコードするヌクレオチド配列であることを確認する。
【0096】
本発明のポリペプチドを発現する発現ベクターpTO−T7の作製は、参照文献のLUO Wen−Xin等、Chinese Journal of Biotechnology、2000年、第16巻:53〜57ページにある方法に従うものである。前記方法は、前述のPCR産物を市販のpMD18−Tベクター(TAKARA社)にクローン化するステップ;BamHI/HindIIIで消化して、ヌクレオチドによってコードされたポリペプチド201が挿入された陽性サブクローンを識別し、これを得るステップ;前記陽性サブクローンをNdeIおよびEcoRlでさらに消化して、ポリペプチド201の遺伝子を含むヌクレオチド配列を得るステップ;次いでNdeI/EcoRIで消化したpTO−T7にクローン化するステップを含む。NdeI/EcoRIで消化することによって、ポリペプチド201のコード化配列が組み入れられている陽性クローンpTO−T7−ORF2−201を識別する。図1に、ORF201ポリペプチドの発現ベクターを作製するための方策を例示する。
【0097】
同様に、カルボキシル末端がPro−Pro−Argでない他方の本発明のポリペプチドも、配列番号6の配列を鋳型として使用し、個々の問題のポリペプチド向けに特別に設計された表中の各プライマーを使用することによって、上記の方法に従って得ることができる。
【0098】
カルボキシル末端がPro−Pro−Argである本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド、およびそれを含む発現ベクター
カルボキシル末端がPro−Pro−Argである本発明のポリペプチドは、上述のORF2−201の発現ベクターでの方法に従って得た発現ベクターで大腸菌ERR2566を形質転換することによって発現される。具体的には、上述のHEV ORF2変異配列の配列番号6を鋳型とし、本発明の個々のポリペプチド向けに特別に設計された個々の前方向/逆方向プライマー(表1を参照のこと)を使用して、ポリペプチド201の発現ベクターを作製するのと同様の条件下でのPCRによって対応する発現ベクターを得る。この方法では、免疫原性および免疫反応性の良好な一連の本発明のポリペプチドが得られ、得られるポリペプチドは、そのN末端にMetが付加され、カルボキシル末端のアミノ酸603のProである3’末端において、5’から3’の方向にアミノ酸配列−Pro−Pro−Argが付加されている。
【0099】
【表1−1】


【表1−2】


【表1−3】

【実施例2】
【0100】
実施例2 ポリペプチド201の発現
形質転換用の(塩化カルシウム法で発生させた)大腸菌ERR2566コンピテント細胞40uLにプラスミドpTO−T7−ORF2−201(0.15mg/mL)1uLを加えた。次いで、混合物をカナマイシンLBプレートにスクロールし、個々のクローンが得られるまでプレートを37℃で10〜12時間インキュベートした。個々のクローンを選び取り、さらに管中LB培地4mLに接種し、培養物のOD550nm値が約1.5になるまで、37℃で10時間、220rpmで振とうした。次いで、1mLの培地を後の使用に備えて4℃で保管し、残りの3mlの培地(最終濃度は0.3mM)に0.5MのIPTG2uLを加えた。IPTG含有培地を220rpmで振とうしながら37℃で4時間インキュベートを続けて、問題のポリペプチドの発現を誘導した。誘導を行った培地1.5mLを30秒間12000gでの遠心分離にかけた。沈殿した細胞を100uLのタンパク質添加液(50mMのトリスClpH6.8、100mMのDTT、2%のSDS、0.1%のブロモフェノールブルー、10%のグリセロール)に再懸濁させ、さらに10分間煮沸し、次いで10分間12000gでの遠心分離にかけた。10ulの上清を12%SDS−PAGEにかけて、ポリペプチド201の発現を解析した。高い収率で発現したクローンをさらなる発酵に使用した。
【0101】
LB培地500mLを含む1L容エルレンマイヤーフラスコにシーク培地200uLを加えた。培養物のOD550nm値が2.0に達するまで、190rpmで振とうしながら37℃で約11時間インキュベートした後、0.5MのIPTG300uLを加えて、最終含有量を0.3mMとした。前述の条件下、この混合物をさらに4時間インキュベートした。誘導を行った1.5mLの培養物を30秒間12000gでの遠心分離にかけた。細胞を100uLのタンパク質添加液に再懸濁させ、10分間煮沸し、次いで10分間12000gでの遠心分離にかけた。10ulの上清を12%SDS−PAGEにかけて、ポリペプチド201の発現を解析した。UVIゲル画像処理器(U−VItech、DBT−08モデル)によって示された(クーマシーブリリアントブルーR250で染色を行う)SDS−PAGEでの解析結果は、ポリペプチド201の発現が、発現した総細胞タンパク質の約35%であることを示した。
【実施例3】
【0102】
実施例3 大腸菌中に発現させたポリペプチド201封入体の精製
実施例2で得た組換えポリペプチド201を含有する大腸菌の培地を15分間4000rpmでの遠心分離にかけ、培養物の沈殿各500mLを15mLの溶解緩衝液(dH2O中50mMのトリスCl、10mMのEDTA、および300mMのNaCl、pH7.2)に再懸濁させた。超音波処理器において細胞を超音波処理した(Uilbra−CellVCX500、SONICS & MATERIALS company、パワー70%、40秒間オン、60秒間オフ、合計20分間の超音波処理)。超音波処理した混合物を4℃で10分間12000rpmでの遠心分離にかけ、ペレットを2%のトリトンX100を含む緩衝液I溶液(200mMのトリスCl、pH8.5;5mMのEDTA;100mMのNaCl)に再懸濁させ、最終体積は、元の溶解液と同じである。混合物を37℃で30分間、200rpmで振とうし、次いで4℃で10分間10000rpmでの遠心分離にかけた。ペレットを等しい体積の緩衝液Iに再懸濁させ、混合物を超音波処理した(40秒間オン、60秒間オフ、パワー70%、合計で3分間の超音波処理)。その後、混合物を4℃で10分間遠心分離した(10000rpm)。ペレットを2%のトリトンX100を含む緩衝液Iに再懸濁させて、最終体積を前と同じにした。混合物を37℃で30分間振とう(200rpm)した後、4℃で10分間遠心分離した(10000rpm)。ペレットを37℃で30分間振とう(200rpm)して、等しい体積の緩衝液Iに再懸濁させた。次いで、混合物を4℃で10分間、10000rpmで遠心分離した。ペレットを2Mの尿素を含む緩衝液Iに再懸濁させて、最終体積を元の混合物と同じにした。37℃で30分間、200rpmで振とうした後、混合物を4℃で10分間、10000rpmで遠心分離した。この上清に201−2Mと印をつけた。ペレットは、4Mの尿素を含む緩衝液Iに再懸濁させて、最終体積を前と同じにした。37℃で1時間振とう(200rpm)した後、混合物を一晩4℃で保管し、次いでこれを4℃で10分間、12000rpmで遠心分離した。この上清に201−4Mと印をつけた。上記の試料の純度はすべて、12%SDS−PAGEによって解析した。図3に結果を示す。
【実施例4】
【0103】
実施例4 組換えポリペプチド201の再生
実施例3に従って調製した試料201−4M100mlを2袋の透析バッグ(36DM、保持MW:8000〜10000、米国United Carbon Compound)に装入し、1×PBS(Na2HPO4.12H2O 73.344g、KH2PO4 4g、NaCl 163、632g、KCl 4.024gを含有する20×PBS(1L)、pH7.45)900mlを含む1L容ビーカー中で攪拌しながら、25℃で終夜(10時間)透析を行うと、透析バッグ中に白色の沈殿が認められた。透析液を補給し、透析を続け、次いで透析液を3時間毎に4回補給した。原則として、透析が済んだときの試料中の尿素含有量は、4×10−6Mである。透析した試料を25℃で10分間、12000rpmで遠心分離し、上清を0.22μmの濾過膜で濾過してさらに精製し;4Mの尿素/緩衝液Iに懸濁させたペレットを新しい透析で使用して、その間に沈殿を出現させることもできるが、得られるタンパク質試料の濃度が最初に得たものより低くなる。
【実施例5】
【0104】
実施例5 ゲル濾過HPLCによる組換えポリペプチド201の精製
実施例4の方法に従って調製した再生201の試料を以下のようなHPLC、すなわち、
機器:Beckman System Gold Nouveau 125NMP/166NMP HPLC、
カラム:TSK GEL SW3000 21.5mm×60cm、
溶離:1×PBS pH7.45、
流速:4ml/分、
検出:280nmのUV、
試料:4MのNE2(8mg/ml)2ml、
収集:ウィンドウ式自動頂角収集(automatic apex collection of window mode)、
収集時間:1チューブ/20秒、
収集遅延:6秒によって精製した。
【0105】
クロマトグラムの結果は、分子の濾過が非常に有効であることを示したが、頂角の成分は、単量体および二量体、ならびにこれらの間に均等に分布するタンパク質を含んでいる。試料タンパク質を沸騰湯中で10分間処理した後、最高で95%を越える目的のタンパク質ピークの単量体純度について12%アクリルアミドのSDS−PAGEによって解析した。それによって、ORF2−201単量体が、自己凝集に加えて他の小さいタンパク質とも凝集し、クロマトグラムの際に一緒に溶離した多量体の間で相互作用が生じることも示されている。
【実施例6】
【0106】
実施例6 本発明の組換えポリペプチド産物の特徴づけ
実施例1〜5の方法に従って、本発明の組換えポリペプチドを作製し、発現させた。さらに、各々の組換えペプチドを洗浄し、実施例3〜4の方法に従って透析にかけた。表2に、各組換えペプチドのE型肝炎ウイルスにおける対応するアミノ酸配置、発現された組換え産物の再生特性、SDS−PAGEでの単量体および二量体の比率、ならびに多量体の生成を示す。
【0107】
【表2−1】


【表2−2】

【0108】
表2で示したとおり、HEV ORF2の配列番号1のアミノ酸配列に含まれる本発明のポリペプチドは、そのカルボキシル末端が配列番号1のaa601(Leu)とaa660の間に位置する場合、よく再生する能力を有し、これによって自然のHEVタンパク質に近い次元構造を示すようになる。具体的には、ペプチド247、232、222、201、235N、225N、209N、NE2I、217D、205、189、188、NE2(配列番号2)、および193C(配列番号3)は、単量体分子量および2倍の単量体分子量に相当する位置に発現バンドを有するが、二量体の量が明らかに単量体を上回っていることが判明した。NE2および193Cが、より大きい分子量の位置にはっきりとしたバンドを有することが判明し、前記ペプチドが自発的に多量体化することを示唆した。
【0109】
表2の再生可能な組換えペプチド193C、201、208N、209N、NE2、222、225N、232、および247をゲル濾過HPLCによってさらに精製し、それぞれを10分間20000gで遠心分離し、0.1μmのAl23濾過膜で濾過した後、動的光散乱計(DYNAPR099−D−50動的光散乱計、PROTEIN SOLUTIONS製)によってこれらのペプチドの動的半径を測定し、表3ではその構築状態を推測してある。得られた各々の組換えペプチドの分子半径は、その単量体の予想半径よりも明らかに大きい。推定上の分子量に従うと、このようなペプチドの形状が、溶液中に少なくとも二量体を形成し、その大部分が高次の多量体を形成すると結論付けることができるが、これはSDS−PAGEでの挙動と同調している。実際、上記の方法で調製した本発明のポリペプチドは、最高で180個以上の単量体の多量体を形成し得る。さらに、発明のポリペプチドが予想外の特性、すなわち大腸菌系によって発現された上記の前記組換えペプチドが、変性剤を含まないPBS溶液中で自発的に多量体化するので、そのワクチンとしての免疫原性を増強するのに有利であることも実証された。
【0110】
【表3】

【実施例7】
【0111】
実施例7 ポリペプチドの物理化学的特性
封入体からの再生
実施例1〜3で記載したとおりに調製した組換えポリペプチドの封入体を4Mの尿素で変性させ、次いで実施例4で記載したとおりに、100を超える量のPBSでの透析にかけた。透析したものを10分間12,000rpmで遠心分離した。上清は、若干またはすべての組換えポリペプチドを含んでおり、それによって前記組換えポリペプチドに再生能力があることを実証する。
【0112】
組換えペプチドの重合
従来のSDS−PAGEを利用する上清の解析において、それぞれ単量体、二量体、および多量体に対応するバンドを識別した。従来のウェスタンブロット法によって前記バンドの特異性をさらに確かめ、それによって組換えポリペプチド201が再生後に重合体を形成することを実証した(図4を参照のこと)。
【0113】
光走査法によるポリペプチド201の分子サイズの決定
実施例6に従って、ポリペプチド201をHPLCによって精製した後、10分間20,000rpmで遠心分離し、次いで0.1umのアルミナ製ミリポア膜で濾過した。濾液を動的光走査計(DYNA−POR99−D−50、米国PROTEIN SOLUTION Com.Ltd.)による824.0nmでの測定にかけた。算出には制御アルゴリズムを使用し、数多くの標準試料によってその実用性を確かめた。分子の半径は、%ピーク強度に対応する動的半径から算出した。溶媒は、試料緩衝液PBSとした。図5に示す測定結果は、変性剤を含まない溶液中のポリペプチド201の平均半径が3.08nmであったことを示唆し、(三量体に相当する)MW62.7KDが算出された。本発明の技術者には、前記の本発明のポリペプチドが実際に180個以上の単量体の重合体を形成したことが知られている。
【実施例8】
【0114】
実施例8 マウス抗NE2単クローン抗体の調製
ハイブリドーマ細胞系の確立
第一次の免疫化では、各々のBalb/C雌性マウス(生後6〜8週間)に5ugの組換え抗原NE2で乳化したフロイント不完全アジュバント(総体積50uL)で免疫化を施した。15日後、マウスにフロイント不完全アジュバント中に乳化された同じ量のNE2を筋肉内投与して2回目の免疫化を施した。30日後、アジュバントなしの抗原5ugを(尾の静脈を通して)静脈内投与してマウスに追加免疫を施した。追加免疫の後72〜96時間でマウスを屠殺した。次いで血液を採取し、脾臓を切除して、(RPMI1640培地に懸濁させて)脾細胞懸濁液を調製した。脾細胞を細胞計数器でカウントした。次いで、6:1の比で脾細胞をSP2/0マウス黒色腫細胞と混合し、遠心分離した。細胞をPEG(PEG1500)で融合し、次いで等しい量の支持細胞と混合し、96穴プレート(200uL/ウェル)に移した。5%のCO2雰囲気において、96穴プレートを恒温器(ESPEC BNA−31)において37℃でインキュベートした。3日後、培地の半分を新鮮なHT培地(RPMI1640培地(GIBCO Int.)を加えて100mLとし、約45〜50℃で溶解させ、濾過して滅菌した1.361mgのヒポキサンチンおよび0.388mgのチミジン)に入れ替えた。7日後、96穴プレートにNE2を塗布し、以下に述べるようにハイブリドーマ細胞培養物についてのELISAアッセイを実施した。ELISAアッセイで陽性であった細胞を限界希釈法によってクローン化した。
【0115】
ELISAアッセイ
実施例5で述べたHPLCによって100uLのNE2を37℃で精製し、次いで0.05モル/LのCB(ddH2Oを加えて1Lとした20.02gのNa2CO3および2.52gのNaHCO3、pH9.5)に溶解させて、最終濃度を0.3ug/mLとした。96穴ポリビニルマイクロタイタープレートを、37℃で2時間、次いで4℃で一晩かけて、得られた溶液で処理した。マイクロタイタープレートをPBST(ddH2Oを加えて1Lとした8.0gのNaCl、0.2gのKH2PO4、2.9gのNa2HPO4 12H2O、0.2gのKCl、および0.5mLのTween−20、pH7.4)で洗浄して、吸収されていない抗原を除去した。次いで、ウェル毎に200uLのブロッキング用緩衝液(1×PBS中2%のグルチン、0.2%のカゼイン、および2%のスクロース)を加え、2時間インキュベートした。次いで溶液を流し、ウェルを乾燥させ、真空中に4℃で保管した。
【0116】
アッセイのために、100uLの細胞培養物を各ウェルに加え、各プレートに1陽性対照(1:100に希釈した多クローン性抗NE2血清100uLを加えたもの)および1陰性対照(HT培地100uLを加えたもの)を設けた。37℃で30分間インキュベートした後、プレートをPBSTで5回洗浄し、次いで乾燥させた。HRP−GAM Ig(DAKO社)を加え、37℃でさらに30分間インキュベートした。プレートを再度PBS−Tween−20で5回洗浄し、乾燥させた。プレートに50uLの基質溶液A(ddH2Oを加えて700mLとした13.42gのNa2HPO4 12H2O、4.2gのクエン酸H2O、および0.3gのH22)および50uLの基質溶液B(ddH2Oを加えて700mLとした0.2gのTMDおよび20mLのジメチルホルムアミド)を加え、37℃で10分間インキュベートした。50uLの停止溶液を使用して、反応を停止した。各ウェルのOD450値をELISAリーダーで読み取った。一般に、OD450値が陰性対象より少なくとも20倍高いと、陽性であるとみなすことができる。
【0117】
腹水の調製および単クローン抗体の精製
生後10週間のBalb/Cマウス各々に0.5mLのフロイント不完全アジュバントを腹腔内接種した。2〜7日後、ハイブリドーマ細胞を収集し、遠心分離した。次いで上清を捨て、細胞群に血清を含まない培地を加えて、最終濃度を2×105〜2×106細胞/mLとした。得られた細胞懸濁液0.5mLを使用して、各マウスに接種した。マウスの腹部が膨張してから7〜10日目に腹水を採取し、次いで15分間3,000rpmで遠心分離した。管中間部の透明の液体をピペットで取り出し、0.45umのミリポア膜で濾過して滅菌した。濾液を−20℃で保管した。
【0118】
処理した腹水を等しい体積のPBS(通常の食塩水を加えて100mLとした0.2モル/LのNa2HPO481mLおよび0.2モル/LのNaH2PO419mL)で希釈した。次いで50%飽和になるまで、穏やかに攪拌しながら(NH42SO4を滴下し、終夜4℃に保った。溶液を4℃で15分間遠心分離(12,000rpm)し、上清を捨てた。ペレットを(2の量の腹水を使用した)PBSに溶解させた。33%飽和になるまで、得られた溶液に攪拌しながら再度(NH42SO4を滴下し、終夜4℃に保った。溶液を4℃で15分間遠心分離(12,000rpm)し、上清を捨てた。ペレットを(2の量の腹水を使用した)PBSに溶解させた。50%飽和になるまで、穏やかに攪拌しながら(NH42SO4を滴下し、終夜4℃に保った。溶液を4℃で15分間遠心分離(12,000rpm)し、上清を捨てた。次いでペレットを透析バッグ中の適量のPBSに溶解させ、50〜100の量の、120ミリモル/LのトリスHCl緩衝液(20ミリモル/LのNaCl含有、pH7.8)において4℃で約12時間攪拌しながら透析した。緩衝液は3回より頻繁に入れ替えた。透析したものを−20℃で保管した。
【0119】
上記で述べた方法に従い、本発明のポリペプチドNE2でBalb/Cマウスに免疫化を施すことによって単クローン抗体を調製し、8種の抗NE2単クローン抗体(1F6、2C9、3F5、8C11、8H3、13D8、15B2、および16D7)が識別された。前記8種の抗体をエッペンドルフ管にそれぞれ塗布し、捕捉RT−PCR(実施例9を参照のこと)によって、前記抗体が自然のHEVを結合する能力を試験した。その結果、8C11、8H3、および13D8が、顕著なHEV結合活性を示し、その認識部位がウイルス外皮表面上の自然のエピトープであることを示唆した。前記の3種の抗体を実施例10で使用した。
【実施例9】
【0120】
実施例9 抗体捕捉RT−PCRによるmAbのHEV結合能試験
1.5mL容エッペンドルフ管に30分間紫外線を照射し、次いでCB(ddH2Oを加えて1Lとした20.02gのNa2CO3および2.52gのNaHCO3、pH9.5)中に1:1000で希釈したmAb500uLを加えた。37℃で終夜インキュベートした後、緩衝液を流し、1.5mLのブロッキング用緩衝液(2%アルブミン添加1×PBS、pH7.4)を加えて、37℃で2時間ブロッキングした。次いでブロッキング用緩衝液を流し、滅菌した通常食塩水中10%のHEV陽性排泄物500uLを加えた。37℃で2時間反応させた後、エッペンドルフ管をPESTで6回洗浄し、次いで各エッペンドルフ管に250uLのddH2Oを加えた。次いで実施例14に従ってRT−PCRアッセイを実施した。その結果、8C11、8H3、および13D8の単クローン抗体はHEVを結合できたが、1F6、2C9、3F5、15B2、および16D7はHEVを結合できなかった。
【実施例10】
【0121】
実施例10 本発明のポリペプチドと、陽性アカゲザル由来血清、ヒト由来血清、およびマウス由来単クローン抗体とのELISA、ならびに本発明のポリペプチドとマウス由来単クローン抗体のドットブロット
組換えポリペプチドと、陽性アカゲザル由来血清、ヒト由来血清、およびマウス由来単クローン抗体とのELISA
実施例1〜6で述べた方法に従って、表2で示した本発明のポリペプチドを作製し、精製した。得られた濃度1mg/mlの精製組換えタンパク質の試料をPBS緩衝液(20Mm、pH7.4)で1:500に希釈し、96穴マイクロタイタープレートに100μl/ウェルを塗布し、次の条件下、すなわち37℃で2時間インキュベートし、次いで4℃で終夜約12時間インキュベートする条件下に置いた。自動洗浄器(TECAN、M12/4R Columbus plus)においてPBS−Tween20洗浄溶液(非イオン性H2Oを加えて最終濃度1Lとしてある8.0gのNaCl、0.2gのKH2PO4、2.9gのNa2HPO4・12H2O、0.2gのKCl、および0.5mlのTween20、pH7.4)で洗浄し、乾燥させた後、ブロッキング用緩衝液(PBS中2%のグルチン、0.2%のカゼイン、および2%のスクロース)を200μl/ウェル加え、37℃で30分間インキュベートした。次いで適宜希釈した抗血清または単クローン抗体を37℃で30分間かけて加えた。自動洗浄器において20秒間隔で5回、PBS−Tween20洗浄溶液で洗浄し、乾燥させた後、適宜希釈したHRP標識二次抗体(ヤギ抗ヒト、マウスIgG抗体)を37℃で30分間かけて加えた。自動洗浄器において20秒間隔で5回、PBS−Tween20洗浄溶液で洗浄し、乾燥させた後、色素産生性薬品AおよびB(A:非イオン水で体積を700mlに調整してある13.42gのNa2HPO4・12H2O、4.2gのクエン酸・H2O、および0.3gのH22;B:非イオン水で体積を700mlに調整してある0.2gのTMB、20mlのジメチルホルムアミド)をそれぞれ1滴加えて、37℃で10分間かけて発色させた。停止溶液(2MのH2SO4)を1滴加えた。マイクロプレートリーダー(TECAN、Sunrise Remote/Touch Screen)で(620nmの波長を基準として)OD450nmを測定した。陰性対象の3回の平均値を陽性閾値と定めてあり、結果のOD値が閾値より高い場合が陽性である。
【0122】
本発明のポリペプチドと様々なマウス由来単クローン抗体のドットブロット
実施例1〜5の方法に従って得、HPLCゲル濾過によって精製した、表2に載せたポリペプチド各10μl(1mg/ml)を、ニトロセルロース膜にそれぞれをゆっくりとスポットし、風乾した。5%の脱脂乳によって室温で1.5時間ブロッキングした後、実施例8で述べたように得た様々なマウス由来単クローン抗体(5%の脱脂乳で1:100に希釈した、単クローン性Bリンパ球によって分泌された細胞上清)を加えて、室温で1時間反応させた。次いで、TNT(10mMのトリスCl、pH8.0、150MmのNaCl、0.05%のTween20)を使用して膜を5分間隔で3回洗浄した。HRP標識ヤギ抗マウスIgG(JINGMEI Biological社製、5%の脱脂乳で1:1000に希釈したもの)を加え、室温で1時間反応させた。5分間隔で3回、TNTで洗浄した後、NBT/BCIP(C4030106Cl2/C86BrClNO4P.C79N)を加えて発色させた。ドットをゲル画像処理システムでスキャンし、黒色度の値に転用し、++++、+++、++、+、+−の5陽性段階および−の陰性段階に分類した。古典的なウェスタンブロットに比べ、この方法は、SDSでの変性にかけないために変性剤の存在なしで、免疫反応性をより如実に反映できる。
【0123】
【表4−1】


【表4−2】

【0124】
結果
表4に載せた精製組換えポリペプチドをそれぞれ、マイクロタイタープレートに塗布し、実施例8で述べた3種のマウス由来単クローン抗体8C11、8H3、13D8、回復相のHEV患者の血清、および急性相のHEV感染アカゲザル由来血清に対するその反応性をELISAによって調べ、使用した3種の単クローン抗体に対するその反応性をドットブロットアッセイによって調べた。その結果は、ポリペプチドNE2、193C、178C、NE2I、235N、225N、209N、247、232、222、および201が各々の血清/単クローン抗体に対してより反応性であることを示した。これは、これらのポリペプチドが自然のHEVエピトープをより多く有しており、HEVの診断キットおよび/またはワクチンに使用できることを示唆している。
【0125】
ポリペプチド138C、C160、150、142、および134は、様々な抗体に対する反応性が弱かった。これによって、主要な自然のエピトープORF2の形成には、少なくともaa469〜aa600の断片が関与することが示された。
【0126】
ポリペプチド170、C160、N160、150、144、142、および134の配列は、ORF2のaa459〜aa628、aa469〜aa628、aa459〜aa618、aa469〜aa6l8、aa459〜aa602、aa459〜aa600の配列がそれぞれ開始アミノ酸(Met)に結合したものである。
【実施例11】
【0127】
実施例11 本発明のポリペプチドとマウス由来単クローン抗体のウェスタンブロット
実施例1〜5で述べたようにして得た本発明のポリペプチド208N、209N、および225Nと、実施例8で得たマウス由来単クローン抗体1F6、2C9、3F5のウェスタンブロットを実施した。前記ポリペプチドをSDS−PAGEによって分離し、次いで従来の方法に従ってニトロセルロース膜に移し、5%の脱脂乳を加えて1.5時間ブロッキングし、様々なマウス由来単クローン抗体(5%の脱脂乳で1:100に希釈した、単クローン性Bリンパ球によって分泌された細胞上清)を加えて、室温で1時間反応させ、5分間隔で3回洗浄した後、(5%の脱脂乳で1:1000に希釈した)HRP標識抗マウスIgGを室温で1時間かけて加え、5分間隔で3回、TNTで洗浄し、NBT/BCIPを加えて発色させた。図6にウェスタンブロットの結果を示す。その結果は、特にレーン8の、クーマシーブリリアントブルーR250での染色では観察できない重合体バンドが、ウェスタンブロットアッセイの酵素に関連した増幅効果によって観察できることを示している。さらに、本発明の組換えポリペプチド208Nが12%SDS−PAGE中には重合体にならないこと、ならびに209Nおよび225Nに対する単クローン抗体1F6の活性が、単クローン抗体2C9および3F5より強いことも確かである。
【実施例12】
【0128】
実施例12 ポリペプチド201を含むワクチンの調製およびそれによるマウスの免疫化アッセイ
フロイントアジュバントと併せたポリペプチド201含有ワクチンの調製
上述のようにして得、HPLCによって精製した本発明のポリペプチド201(純度>95%およびタンパク質濃度1.02mg/ml)をPBSで希釈し、等価な体積の(BCGを含有する)フロイント完全アジュバントを加えて、ポリペプチド201が所望の最終濃度に達するようにした(たとえば、各マウスを100μl、5μgで免疫化することが望まれれば、ポリペプチド201の濃度を0.05mg/mlに調製することになる)。この溶液を混合し、30分間動かさずにした後分離する液体相が現われなくなるまで30分間かけて乳化した。
【0129】
フロイントアジュバントをワクチンアジュバントとして使用して、0、7、28日の免疫化スケジュールに従い、4グループの各々のマウス(各群に3匹のKunming白色マウス)に100μl中0.5、1、2、5μg/マウスを筋肉内注射した。図7に結果を示す。その結果は、2μgを超える用量のフロイントアジュバントを加えて調製したORF2−201ワクチンが非常に強い免疫原性を有しており、免疫化後2週間目に抗原が産生され始め、4週間目には力価が最高に達したことを示唆した。免疫学についての一般の書籍および文献によると、30〜70μg/マウスの用量のタンパク質抗原で免疫化したマウスにおいてのみ力価のより高い抗体が産生できると考えられている。したがって、この結果は、このワクチン、すなわちフロイントアジュバントと併せた本発明のポリペプチド201が、入手可能なワクチンに比べて著しく高い免疫原性効果を有することを示している。
【0130】
アルミニウムアジュバントと併せたポリペプチド201含有ワクチンの調製
Lanzhou Biological Product Institute of Chinaからの所望の量の原物アルミニウムアジュバント(Al3+13.68%、Na+3.36%、pH5.55)を沈殿が生じるまで1NのNaOHで調整した。完全に混合した後、1×PBSを加えて体積を2倍にした。次いで、1分間10,000で遠心分離し、上清を捨てた。沈殿を1×PBSで再懸濁させて、再度体積を2倍にし、1分間10,000で遠心分離し、上清を捨てた。pHが7〜7.4に達するまで、このプロセスを数回繰り返した。最後に、沈殿を等しい体積の1×PBSで再懸濁させ、溶液を滅菌し、4℃で保管し、9倍の保存溶液として使用した。
【0131】
同様に、上述のようにして得、HPLCによって精製したポリペプチド201(純度>95%およびタンパク質濃度1.02mg/ml)をPBSで希釈し、1/9の量のアルミニウムアジュバントを加えて、ポリペプチド201が所望の最終濃度に到達するようにし、4℃で終夜混合した。免疫化用量は、100μl/マウスである。アルミニウムアジュバントをワクチンアジュバントとして使用して、0、7、28日の免疫化スケジュールに従い、各群の3匹のBal b/cマウス各々に2、5、10μg/マウスを筋肉内注射した。図9に結果を示す。その結果は、5、10μg/マウスの用量の免疫原生効果がより高いことを示唆したが、これは、粒子抗原であり、単量体抗原より免疫原性が高いと考えられている最近の入手可能なHBV表面抗原ワクチンに匹敵する。したがって、この結果は、本発明の重合体がワクチンに有用であることを示している。
【0132】
アジュバントなしのポリペプチド201の免疫アッセイ
上述のようにして得たポリペプチド201を4Mの尿素に溶かし、上清をPBS(pH7.45)での透析にかけて再生させ、純度を約95%とした。フロイントアジュバントをワクチンアジュバントとして使用して、0、7、28日の免疫化スケジュールに従い、各群の3匹のKunming白色マウス各々に5、25、50μg/マウス(対照群には5μg/マウス)を筋肉内注射した。図8に結果を示す。その結果は、アジュバントなしのORF2−201ワクチンで免疫化したマウスにおいて抗体が顕著に産生されたことを示し、その使用した投与量は、フロイントアジュバントを加えてある従来の抗原の投与量と同等であった。本発明の重合体ポリペプチドの免疫原性が従来の抗原よりも高いことをさらに示している。
【0133】
上記の結果から、フロイントアジュバントまたはアルミニウムアジュバントの配合にかかわらず、組換えポリペプチド201とNE2(5μg/マウス)の両方で免疫化した場合も、Balb/cマウスによる特定の抗体の産生が誘発できると結論付けられる。フロイントアジュバントを配合した他の再生可能なポリペプチドも、マウスによる特定の抗体の産生を誘発し得る。したがって、本発明のポリペプチドは、ワクチンとしての使用に好適な特性を有する。
【実施例13】
【0134】
実施例13 本発明の組換えポリペプチドを含むワクチンによるアカゲザルの免疫化
ALTが正常であり、HEV陰性のアカゲザル6匹を選択し、2つの群に分け、一方の群をHF1、HF2、およびHF3と称し、他方の群をHF4、HF5、およびHF6と称した。実施例1〜5および12で記載したとおりに調製した、投与量20μgのアルミニウムアジュバント含有ポリペプチドNE2Iワクチンおよびポリペプチド201ワクチンを三角筋内注射することによって、対象アカゲザルの2つの群にそれぞれワクチン接種を施した。このワクチン接種をそれぞれ0、10、および30日目に行った。最後のワクチン接種から3週間目に、この動物からの抗NE2IIgG抗体の力価を間接ELISAによって試験すると、結果は次のとおり、すなわちHF1(1:16000)、HF2(1:4000)、HF3(1:8000)、HF4(1:2000)、HF5(1:3000)、およびHF6(1:5000)であった。
【0135】
ポリペプチドNE2Iおよび201によって例示された上記の結果は、本発明の組換えポリペプチドが、米国特許第5885768号で免疫原として使用されたHEV ORF2ポリペプチドtrpE−C2(配列番号1のアミノ酸225〜660)よりも高い免疫原性を有することを示唆している。Reyes等の米国特許第5885768号では、大腸菌から発現させたHEV ORF2ポリペプチドtrpE−C2と改良アルミニウムアジュバントの併用物50ugをそれぞれ0および30日目に静脈内注射することによって、4匹のカニクイザルにワクチン接種を施している。アジュバントのみを注射した2匹のカニクイザルが対照として使用されている。2回目のワクチン接種後4週間目には、ワクチン接種したサルの群においてHEVに対する抗体が検出されなかった。ワクチン接種したサルの2匹を選択して、58日目に不溶性のアジュバントを含まないtrpE−C2ポリペプチド80ugによる3回目のワクチン接種を施したが、抗HEV抗体が検出されたのは4週間後までだけであった。
【実施例14】
【0136】
実施例14 本発明の組換えポリペプチドを含むワクチンで免疫化したアカゲザルへのHEV接種
E型肝炎ウイルス(HEV)の調製および定量化
中国新疆省出身のHEV患者からの糞便を無菌生理食塩水中10%懸濁液に調製した。この懸濁液を4℃で20分間、12000gで遠心分離し、上清を0.2μmの無菌フィルター(NALGENE(登録商標)カタログ番号190−2520)での濾過によって滅菌した。PCRでの検出が可能な量のHEVを感染投与量として使用した。
【0137】
糞便由来HEV RNAの抽出、逆転写、およびPCR:その操作指示に従ってTrizol試薬(GIBCOL)を使用し、10%の糞便懸濁液からHEV RNAを抽出し、さらにAMV逆転写酵素を使用して、20μlの反応体積で、42℃で40分間、特定のプライマーA3(4566〜4586、5’−ggctcaccggagtgtttcttc−3’)をRTプライマーとして用いる、それの逆転写を行った。次いで、2ulのRT産物を鋳型として使用し、A3プライマーおよびA5プライマー(4341〜4362、5’−ctttgatgacaccgtcttctcg−3’)を使用して、次の反応条件下、すなわち94℃で5分間の予備変性;94℃で40秒間の変性および68℃で40秒間の伸長を35サイクル;75℃で5分間の伸長によって、1回目のRT−PCRを実施して、最終体積を20ulにした。1回目の反応産物2ulを鋳型として使用し、プライマーB5(4372〜7392、5’−gccgcagcaaaggcatccatg−3’)およびB3(4554〜4575、5’−gtgtttcttccaaaaccctcgc−3’)を使用して、次の反応条件下、すなわち94℃で5分間の予備変性;94℃で40秒間の変性、56℃で40秒間のアニーリング、および72℃で1分20秒間の伸長を35サイクル;75℃で5分間の伸長によって、2回目のPCRを実施して、最終体積を20ulとした。
【0138】
この実験で扱うアカゲザルのグループ分け:免疫化群1は、それぞれ実施例2のHF1、HF2、およびHF3の動物に対応するアカゲザルV10、V11、およびV12を含み;免疫化群2は、それぞれ実施例2のHF4、HF5、およびHF6に対応するアカゲザルV13、V14、およびV15を含み;対照群は、V16、V17、およびV18と称した3匹の非免疫化アカゲザルを含む。
【0139】
HEV接種
PCRで検出できる量のHEVを1感染投与量として用いた。実施例13で記載した、本発明の組換えポリペプチドを含むワクチンをアカゲザルHF1〜6に最後に接種してから3週間目に、1,000感染投与量のHEVを上記のサルに接種した。HEV接種後、どのサルのALTも上昇しなかった。4週間目にV16およびV17の動物で抗NE2I−IgGが検出され、5週間目にV18の動物で抗NE2−IgGが検出された。V10〜15の動物では1〜37日目までHEV排泄物が検出されず;V16の動物では5日目にHEVの排泄が始まり30日目に終わり;V17およびV18の動物ではこれも5日目にHEVの排泄が始まったが、37日目になっても止まらなかった。これらの結果は、ワクチンとしての本発明のポリペプチドが米国特許第5885768号のHEV ORF2のポリペプチドtrpE−C2よりも高い免疫原性を有し、強い防御をもたらすことを示唆している。
【0140】
これらの結果から、少ない投与量の本発明のワクチンを使用してサルにワクチン接種を施した場合、ワクチン接種を受けたサルは、HEVに応答して優れた抗体を産生できるので、HEVを接種後、異常なALTおよび糞便中のウイルス排泄が認められなかったことがわかる。したがって、HEV ORF2からのポリペプチドtrpE−C2を使用して調製したワクチン(米国特許第5885768号)およびTsarev等が調製したポリペプチドを含むワクチンについての報告されているワクチン接種結果に比べて、より優れた免疫防御がもたらされた。さらに、Tsarev and Genelabs co.が利用したバキュロウイルス発現系は、人体に有害である可能性があるので、この系によって発現された組換えタンパク質が、ヒトに使用する市販薬または市販ワクチンとして認可されたことはこれまで報告されていない。対照的に、本発明による大腸菌発現系によって発現されたいくつかの組換えタンパク質は、ヒトに使用するin vivo市販薬として認可されており、安全性がより確かである。
【実施例15】
【0141】
実施例15 HEV ORF3内エピトープに結合させた本発明のポリペプチド247を含むキメラポリペプチドの調製
その5’末端に制限エンドヌクレアーゼ部位BamHIおよびNdeIを導入する前方向プライマーの372FP(5’−ggatcccatatgaataacatgtcttttgct−3’)と、その5’末端に制限エンドヌクレアーゼ部位BamHIを導入する逆方向プライマーの372BRP(5’−ggatcctcggcgcggcc−3’)を使用して、次の反応条件下、すなわち94℃で5分間;94℃で50秒間、56℃で50秒間、および72℃で30秒間を30サイクル;および70℃で10分間の反応条件下において、中国新疆省のHEV患者から単離したE型肝炎ウイルス(HEV)の全長ゲノム(Aye,T.T.、Uchida等のNucleic Acids Research第20巻(13)3512ページ(1992年);遺伝子銀行受入れ番号GI221701)を鋳型とするPCR反応を行った。HEV ORF3内エピトープをコードする、大きさ約370bpの特定のDNA断片を得た。上記の得られたPCR産物を市販のpMD18−Tプラスミド(TAKARA社)に連結した。BamHIでの消化によって、HEV ORF3内のエピトープ遺伝子が挿入された陽性サブクローンを識別した。DNAの配列決定によって、クローン中に変異がないことが示され、それによって配列番号11で示す、HEV ORF3内エピトープ遺伝子のアミノ酸配列が得られた。
【0142】
BamHIでの消化によってHEV−ORF3の遺伝子断片を得、BamHIで消化した(実施例1に記載の方法に従って調製した)pTO−T7−ORF2−247発現プラスミドベクターに連結した。BamHIで消化して、HEV ORF3の遺伝子断片が挿入された陽性発現クローンpTO−T7−ORF3−247を識別した。このクローンを大腸菌ERR2566株に形質転換し、これをORF3−247キメラポリペプチドの発現に使用した。
【実施例16】
【0143】
実施例16 NE2Dをインフルエンザ由来赤血球凝集素抗原に結合させたキメラポリペプチドの調製
対のプライマーHAFP/E2RDを使用する、実施例1で調製したHEV−ORF2変異配列(配列番号6)を鋳型とするPCRで増幅することによって、キメラペプチドのヌクレオチド配列を得た。PCR反応は、94℃で5分間の予備加熱;94℃で50秒間の変性、56℃で50秒間のアニーリング、72℃で70秒間の伸長を30サイクル;および最後に72℃で10分間の伸長という条件下で実施する。得られたPCR産物は、インフルエンザウイルス由来HAおよび本発明のポリペプチドNE2Dを含むキメラポリペプチドをコードする、約800bpのDNA断片である。前方向プライマーHAFPは、BamHIおよびNdeI制限部位を含む。逆方向プライマーE2RDは、EcoRI制限部位および翻訳終止コドンTAAを含む。NdeIに対する配列はCAT ATGであり、ATGは翻訳開始コドンである。さらに、2種のペプチドHAおよびNE2Dの立体配座を厳密に維持するために、HAペプチドとNE2Dペプチドの間にそれぞれ、CAG CTG TTCによってコードされる柔軟なリンカーGly−Gly−を導入した。したがって、キメラポリペプチドHA−NE2Dは、HEVワクチンに適切に使用できる。一対のプライマーの配列は、以下のとおりである。
HAFP:5’−AGA TCT CAT ATG TCT AAA
BglII NdeI 91 Ser Lys
GCT TTC TCT AAC TGC TAC CCT TAC
Ala Phe Ser Asn Cys Tyr Pro Tyr
GAC GTT CCG GAC TAC GCT TCT
Asp Val Pro Asp Tyr Ala Ser
TTA GGT GGA TCC
Leu108 Gly Gly Ser
CAG CTG TTC TAC TCT CGT CC−3’
E2RD:5’−gaattcttagggggctaaaacagc−3’
【0144】
得られたキメラポリペプチドをコードする核酸構築物を含む発現ベクターの調製
前述のPCR産物を市販のプラスミドpMD18−T(TAKARA社)中にクローン化した。次いで、BamHI/EcoRIでの消化によってpMD18−T−HA−ORF2−NE2Dプラスミドから問題の配列を得、BamHI/EcoRIでの消化および連結によって発現ベクターに組み込んだ。pTO−T7−HA−ORF2−NE2D発現プラスミドで形質転換した大腸菌ERR2566宿主細胞から、HA−ORF2−NE2Dキメラペプチドを単離した。このアミノ酸配列を配列番号12と称した。
【実施例17】
【0145】
実施例17 本発明のポリペプチドNE2Iを主体とした間接Elisaキットよる生物検体中の対HEVIgGの検出
HEVに対するIgGを本発明のポリペプチドNE2Iで検出するキットは、組換えポリペプチドNE2Iを塗布し、ブロッキング用緩衝液(20mMかつpH7.2のPB、0.5%のカゼイン、2%のゼラチン)でブロッキングしたマイクロタイタープレート;検体希釈剤(20mMかつpH7.2のPB、1%のカゼイン);作用コンジュゲート(酵素希釈剤(20mMかつpH7.2のPB、0.5%のカゼイン、10%のNBS)で希釈したHRPで標識したヤギ抗ヒトIgG(DAKO));20×PBST、色素原A、色素原B、および停止溶液(Beijing wantai)など、生物活性のない材料を含む。
【0146】
NE2Iに基く抗HEV IgGキットで一連のサル血清を検出し、Beijing wantaiおよびSingapore Genelabsから得た2種の市販抗HEV IgGキットと比較した。これらのサル血清は、静脈内接種後0〜18週(w)までに得た、HEVに自然感染したサルを模倣したサルNo1、No2、No3、およびNo13の血清であった。
【0147】
操作手順は以下のとおり、すなわち、各マイクロタイターに検体溶媒100ulを加え;マイクロタイターに検体10ulを加え;マイクロプレートのすべての側面を穏やかに叩くことによって十分に混合し;37℃で30分間インキュベートし;マイクロプレートを1回、PBSTで5回洗浄し;マイクロプレートを逆さにし、吸収性の紙にしっかりと軽く叩くことによってブロットドライし;すべてのウェルに作用コンジュゲート100ulを加え、マイクロプレートを37℃で30分間インキュベートし;マイクロプレートを再度5回洗浄してブロットドライし;色素原A50ulおよび色素原B50ulを加えて、穏やかに叩いて十分に混合し;暗所においてそのマイクロプレートを37℃で10分間インキュベートし;各ウェルに停止溶液50ulを加え、プレートを軽く叩くことによって穏やかに混合し;各ウェルの450nm/620nmの吸光度を測定するものである。2種の市販の抗HEV IgGキットでも、各々のアッセイ手順に従って厳密なアッセイを行った。
【0148】
結果は以下のとおり、すなわち、NE2Iを主体としたキットは、7〜14日目までにWantaiおよびSingapore Genelabsからの2種の市販のキットよりも早く抗体陽転を検出し;抗NE2I−IgGの持続時間は、Genelabsの抗HEV−IgGおよびWantaiの抗HEV−IgGより長く;抗NE2I−IgGの検出率は、2種の市販の抗HEV−IgGキットより高かった(図10を参照のこと。表5に未処理データを示す)。無作為の34件の健常者血清を検出した場合、抗NE2I−IgGおよびGenelabs抗HEV−IgGの陽性率は、それぞれ35%および11%であり、後者は、完全に前者に含まれていた。肝炎患者の263件の臨床血清では、抗NE2I−IgGおよびWantai抗HEV−IgGの陽性率は、それぞれ27.2%および10.6%であった。非A、非B、非C型肝炎患者の91件の血清では、抗NE2I−IgGおよびGenelabs抗HEV−IgGの陽性率は、それぞれ69.2%および24.2%であった。一言で言えば、本発明のNE2Iを素材とした抗HEV−IgGは、市販の抗HEV−IgGキットよりも感度がよい。
【0149】
【表5】

【実施例18】
【0150】
実施例18 本発明の組換えタンパク質をHRPで標識する方法
超純粋(UPW)にそれぞれ1mgのHRP(BiozymeR/Z>3)およびNaIO4を溶解させ;攪拌しながらNaIO4溶液を滴下し;この混合溶液を室温で30分間暗所に静置し;混合しながら1%のエチレングリコール溶液100ulを段階的に加え;それを4℃で30分間暗所に静置する。組換えタンパク質を3時間炭酸緩衝液(10mM、pH9.6)での透析にかけ;適度に透析した組換えタンパク質を酸素添加したHRPに加え、炭酸緩衝液(10mM、pH9.5)中、穏やかに攪拌しながら室温(または4℃)で6時間透析し;上述の混合物に新しく調製した0.1MのNaBH4溶液20ulを加え;暗所に4℃で2時間静置し、30分間ずつ1回穏やかにボルテックス(vortex)し;これをPBS(10mM、pH7.2)中、4℃で終夜透析にかける。
【実施例19】
【0151】
実施例19 生物検体においてHEVに対する抗体IgMを検出する診断キット、および生物検体においてHEVに対する抗体IgMを検出する捕捉アッセイ
実施例18で記載した方法に従って、ポリペプチド225NをHRPで標識した。
【0152】
HRPで標識した本発明のポリペプチドNE2Iを含有する、HEVに対する抗体IgMを検出する診断キットは、マウス抗ヒトIgMμ鎖多クローン抗体(デンマークDako社)を予め塗布し、ブロッキング用緩衝液でブロッキングしたマイクロタイターストリップ;検体希釈剤(20mM、pH7.2のPB、1%のカゼイン);作用コンジュゲート(酵素希釈剤(20mM、pH7.2のPB、0.5%のカゼイン、10%のNBS)で適切に希釈したHRP標識ポリペプチド225N);20×PBST、色素原薬品A、色素原薬品B、および停止溶液(WANTAI社、Beijing)など、生物活性のない材料を含む。
【0153】
この診断キットを使用する捕捉アッセイを以下のようにして、すなわち、マウス抗ヒトIgMμ鎖多クローン抗体を予め塗布した各ウェルに希釈緩衝液100ulを加え;希釈緩衝液に検出対象の検体1ulを加え;穏やかに叩くことによって十分に混合し;37℃で30分間インキュベートし;PBSTで5回洗浄し;マイクロプレートを逆さにし、ティッシュペーパー上にしっかりと軽く叩くことによってブロットドライし;各ウェルに作用コンジュゲート(適切に希釈したHRP標識ポリペプチド225N)100ulを加え、マイクロプレートを37℃で30分間インキュベートし;再度5回洗浄し、ブロットドライし;次いで色素原A50ulおよび色素原B50ulを加え、穏やかに叩くことによって十分に混合し;暗所において37℃で10分間インキュベートし;各ウェルに停止溶液50ulを加え、プレートを穏やかに叩くことによって混合し;各ウェルの吸光度をOD450nm/620nmで測定することによって実施する。
【0154】
本発明に従って調製した抗HEV−IgM診断キットを使用して、前述の捕捉アッセイによって、肝炎患者の263件の臨床血清を検出にかけると、陽性率は11%であり;また前記捕捉アッセイによって非A、非B、非C型肝炎患者の91件の血清を検出にかけると、陽性率は48.4%であった。一方、Genelabsの抗HEV−IgG診断キットによって検出したこの91件の血清検体の陽性率は、24.2%に過ぎなかった。上記の結果が示すように、捕捉アッセイを利用して本発明の抗HEV−IgM診断キットによって検出された陽性検体は、臨床的な診断とよく一致している。さらに、Genelabs抗HEV−IgGキットによって検出された陽性検体の大部分も、この捕捉アッセイにおいて陽性である。すなわち、本発明の抗HEV−IgMキット、ならびに前記捕捉アッセイは、臨床上のHEV診断において現存する市販のキットよりも感度および特異性が高い。
【実施例20】
【0155】
実施例20 生物検定においてHEVに対する全抗体を検出する診断キット、および生物検体においてHEVに対する全抗体を検出する方法
実施例18で記載した方法に従って、ポリペプチド225Nを西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)で標識した。
【0156】
本発明のポリペプチドNE2Iおよび225Nを含有する、HEVに対する全抗体を検出するキットは、組換えポリペプチドNE2Iを予め塗布し、ブロッキング用緩衝液(20mMかつpH7.2のPB、0.5%のカゼイン、2%のゼラチン)でブロッキングしたマイクロタイターストリップ;作用コンジュゲート(酵素希釈剤(20mMかつpH7.2のPB、0.5%のカゼイン、10%のNBS)で希釈したHRPで標識したポリペプチド225N);20×PBST、色素原薬品A、色素原薬品B、および停止溶液(北京WANTAI社)など、生物活性のない材料を含む。
【0157】
当該キットの検出プロトコルは、以下のとおり、すなわち、予めポリペプチドNE2Iを塗布した前記ストリップのマイクロタイターに血清50ulおよび適切に希釈した組換えポリペプチド225NをHRPで標識したもの50ulを加え;マイクロプレートのすべての側面を穏やかに叩いて混合し;37℃で60分間インキュベートし;マイクロプレートをPBSTで5回洗浄し;マイクロプレート逆さにすることによってブロットドライし;色素原A50ulおよび色素原B50ulを加え;次いでマイクロプレートを37℃で15分間インキュベートし;最後に各ウェルに停止溶液50ulを加え、プレートを穏やかに叩いて混合し;各ウェルのOD450nm/620nmの吸光度を測定するものである。
【0158】
得られた検出結果は、次のとおり、すなわち、本発明のポリペプチドNE2Iおよび225Nを主体とするサンドウィッチ式全抗HEV抗体キットでの検出では、肝炎患者からの263件の臨床血清が陽性率52%で検出されたが、WANTAI抗HEV−IgGキットでの検出では、10.6%しか判定されなかった。さらに、同じサンドウィッチ式キットを使用して、非A、非B、非C型肝炎患者の91件の血清を検出すると、陽性率は54.9%であった。しかし、この91件の血清において、Genelabs抗HEV−IgGによって検出された陽性率は、24.2%に過ぎなかった。上記のデータが示すように、臨床的な診断において、当該診断キットでの検出は、現存する市販のキットに優っている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
E型肝炎ウイルスORF2の配列番号1に記載されたアミノ酸配列の断片からなるポリペプチドであって、該断片は:
1)配列番号1におけるアミノ末端がアミノ酸残基414と459の間から出発して、カルボキシル末端がアミノ酸残基660で終結するポリペプチド;
2)配列番号1のアミノ酸残基414〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド247;
3)配列番号1のアミノ酸残基429〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド232;
4)配列番号1のアミノ酸残基439〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド222;
5)配列番号1のアミノ酸残基459〜660のアミノ酸配列を有するポリペプチド、すなわちポリペプチド201;
6)上の1)から5)の前述のポリペプチドのいずれか1つとの相同性が少なくとも80%であり、抗原性又は免疫原性が実質的に同一であるポリペプチド;
からなる群から選ばれるものである、上記ポリペプチド。
【請求項2】
精製した単量体ポリペプチドの多量体であって、該多量体は2〜180の精製した単量体ポリペプチドが自己凝集によって形成し、各々の該精製した単量体ポリペプチドは請求項1に記載のポリペプチドである、上記多量体。
【請求項3】
少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチドもしくは請求項2に記載の多量体もしくはその任意の組合せもしくは少なくとも1種の請求項2に記載の多量体もしくはその任意の組み合わせ、及び場合により薬剤として許容される賦形剤及び/もしくはアジュバントを含む、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するためのワクチン組成物。
【請求項4】
請求項1に記載のポリペプチド及びインフルエンザウイルス由来の赤血球凝集素抗原の保存断片を含むキメラタンパク質。
【請求項5】
精製した単量体ポリペプチドの多量体であって、該多量体は2〜180の精製した単量体ポリペプチドが自己凝集によって形成し、各々の該精製した単量体ポリペプチドは請求項4に記載のキメラタンパク質である、上記多量体。
【請求項6】
請求項4に記載のキメラタンパク質又は請求項5に記載の多量体、及び任意選択で薬剤として許容される賦形剤及び/もしくはアジュバントを含む、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するためのワクチン組成物。
【請求項7】
請求項1に記載のポリペプチド及びE型肝炎ウイルスORF3からの免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片を含む、キメラタンパク質。
【請求項8】
精製した単量体ポリペプチドの多量体であって、該多量体は2〜180の精製した単量体ポリペプチドが自己凝集によって形成し、各々の該精製した単量体ポリペプチドは請求項1に記載のポリペプチド及びE型肝炎ウイルスORF3からの免疫原性エピトープ又はその免疫原性断片を含むキメラタンパク質である、上記多量体。
【請求項9】
請求項7に記載のキメラタンパク質又は請求項8に記載の多量体、及び場合によって、薬剤として許容される賦形剤及び/もしくはアジュバントを含む、哺乳動物のE型肝炎ウイルス感染を予防及び/又は治療するためのワクチン組成物。
【請求項10】
請求項1に記載のポリペプチド、請求項4に記載のキメラタンパク質又は請求項7に記載のキメラタンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む、組み換え発現ベクター。
【請求項11】
それぞれ請求項1に記載のポリペプチド、請求項4に記載のキメラタンパク質又は請求項7に記載のキメラタンパク質を発現することができる、請求項10に記載の組み換え発現ベクターで形質転換した、宿主細胞。
【請求項12】
診断に有効な量の少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド若しくはその任意の組合せ、又は少なくとも1種の請求項2に記載の多量体若しくはその任意の組み合わせを含む、生物検体のE型肝炎ウイルス感染を診断する診断キット。
【請求項13】
E型肝炎ウイルスORF3からの免疫原性エピトープを含むポリペプチド又はその免疫原性断片をさらに含み、E型肝炎ウイルスORF3由来の免疫原性エピトープを含む該ポリペプチド又はその免疫原性断片が、場合により請求項1に記載の選択されたポリペプチドに共有結合している、請求項12に記載の診断キット。
【請求項14】
少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド又は請求項2に記載の多量体を含み、所望であれば、前記ポリペプチドが適切な支持体の表面に予め塗布されており;さらに、検出対象の生物検体のIgGに指向性のある検出可能に標識された抗体抗IgG、及び前記の検出可能な標識に合致する検出剤を含み;所望であれば、適切な緩衝系をさらに含む、生物検体中のE型肝炎ウイルスに対する抗体IgGを判定するための、請求項12又は請求項13に記載の診断キット。
【請求項15】
検出対象の生物検体のIgMに指向性のある捕捉抗体としての、検出可能に標識した抗体抗IgMを含み、所望であれば、前記捕捉抗体が、適切な支持体の表面に予め塗布されており;さらに、検出可能に標識された少なくとも1種の請求項1又は請求項2に記載の多量体に記載のポリペプチド、及び前記の検出可能な標識に合致する検出剤を含み;所望であれば、適切な緩衝系をさらに含む、生物検体中のE型肝炎ウイルスに対する抗体IgMを判定するための請求項12又は請求項13に記載の診断キット。
【請求項16】
少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド又は請求項2に記載の多量体を含み、望むなら、前記ポリペプチドが、適切な支持体の表面に予め塗布されており;さらに、検出可能に標識された少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド又は請求項2に記載の多量体、及び前記の検出可能な標識に合致する検出剤を含み;支持体表面に予め塗布するための前記ポリペプチド又は多量体、及び検出可能な標識ポリペプチド又は多量体が同じでも異なるものでもよい、生物検体中のE型肝炎ウイルスに対する全抗体を判定するための請求項12又は請求項13に記載の診断キット。
【請求項17】
生物検体中のE型肝炎ウイルスに対する全抗体を検出する方法であって、支持体表面上に少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド又は請求項2に記載の多量体を固定化するステップ;抗原と抗体の相互作用に適する条件下、これに検出対象の検体を接触させるステップ;適切な緩衝液で洗浄するステップ;及び検出可能な標識を有するE型肝炎ウイルス抗原及び対応する検出剤を使用して、支持体表面上の抗原/抗体複合体を検出するステップを含む方法。
【請求項18】
生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgGを検出する方法であって、支持体表面上に少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド又は請求項2に記載の多量体を固定化するステップ;抗原と抗体の相互作用に適する条件下、これに検出対象の検体を接触させるステップ;適切な緩衝液で洗浄するステップ;及びE型肝炎ウイルスに対する検出可能に標識した抗体抗IgG及び対応する検出剤を使用して、支持体表面上の抗原/抗体複合体を検出するステップを含む方法。
【請求項19】
生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgMを検出する方法であって、支持体表面上に抗体抗IgMを固定化するステップ;抗原と抗体の相互作用に適する条件下、これに検出対象の検体を接触させるステップ;適切な緩衝液で洗浄するステップ;及び検出可能に標識した少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド又は請求項2に記載の多量体及び対応する検出剤を使用して、支持体表面上の抗IgM/IgM複合体を検出するステップを含む方法。
【請求項20】
生物検体においてE型肝炎ウイルスに対する抗体IgMを検出する方法であって、支持体表面上に抗体抗IgMを固定化するステップ;抗原と抗体の相互作用に適する条件下、これに検出対象の検体を接触させるステップ;適切な緩衝液で洗浄するステップ;次いで抗原と抗体の相互作用に適する条件下、少なくとも1種の請求項1に記載のポリペプチド又は請求項2に記載の多量体を接触させるステップ;適切な緩衝液で洗浄するステップ;及び、次いで検出可能に標識した抗HEV多クローンもしくは単クローン抗体及び対応する検出剤を使用して、支持体表面上の抗原/抗体複合体を検出するステップを含む方法。
【請求項21】
請求項4に記載のキメラタンパク質又は請求項5に記載の多量体を含む、生物検体におけるE型肝炎ウイルス感染の診断のため、又は生物検体におけるE型肝炎ウイルスに対する抗体IgG、抗体IgM、全抗体の判定のための診断キット。
【請求項22】
請求項7に記載のキメラタンパク質又は請求項8に記載の多量体を含む、生物検体におけるE型肝炎ウイルス感染の診断のため、又は生物検体におけるE型肝炎ウイルスに対する抗体IgG、抗体IgM、全抗体の判定のための診断キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【公開番号】特開2011−201881(P2011−201881A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−88810(P2011−88810)
【出願日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【分割の表示】特願2002−542994(P2002−542994)の分割
【原出願日】平成13年9月30日(2001.9.30)
【出願人】(508198258)ベイジン ワンタイ バイオロジカル ファーマシー エンタープライズ カンパニー, リミテッド (3)
【出願人】(510183280)シャアメン ユニバーシティ (2)
【Fターム(参考)】