説明

LD差動駆動回路

【課題】レーザダイオードに流れる電流のジッタを低減する。
【解決手段】LD駆動電流が出力する差動形式の出力端子OUT1,OUT2およびLDバイアス電流が出力するLDバイアス端子BBを有するLDドライブ回路10と、レーザダイオードLDの一方の端子と出力端子OUT1との間に接続されるの伝送線路T1と、レーザダイオードLDの他方の端子と出力端子OUT2との間に接続されるの伝送線路T2と、レーザダイオードLDの一方の端子とLD電源端子VCC2との間に接続されるバイアス用インダクタL1と、レーザダイオードLDの他方の端子とLDバイアス端子BBとの間に接続されるバイアス抵抗R6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力するバーストデータに応じてレーザダイオード(LD)を差動駆動するLD差動駆動回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のLD差動駆動回路を図3に示す(例えば、非特許文献1参照)。レーザダイオードLDを差動駆動するLD差動駆動回路は、そのレーザダイオードLDとLD電源端子VCC2との間に接続されるバイアス用インダクタL1、レーザダイオードLDとLDバイアス端子BBとの間に接続されるバイアス用インダクタL2、伝送線路T1,T2、その伝送線路T1,T2とレーザダイオードLDとの間に接続される終端抵抗R4,R5、およびLDドライブ回路20からなる。
【0003】
LDドライブ回路20は、差動回路を構成するトランジスタQ1,Q2、そのトランジスタQ1,Q2のコレクタと電源端子VCC1との間に接続される負荷抵抗(送端抵抗)R1,R2、トランジスタQ1,Q2のエミッタにコレクタが共通接続されベースが電流制御端子VCS1に接続される電流源トランジスタQ3、トランジスタQ3のエミッタと接地端子GNDとの間に接続される電流安定化抵抗R3、およびレーザダイオードLDの出力を一定に制御するためそのレーザダイオードLDの後方光をモニタしてバイアス電流をフィードバックする自動光出力制御回路APCを備える。前記したトランジスタQ1,Q2のベースはバーストデータ信号が入力する差動入力端子IN1,IN2に接続され、コレクタはバーストデータ信号が出力する差動出力端子OUT1,OUT2に接続されている。そして、差動出力端子OUT1,OUT2が前記した伝送線路T1,T2に接続され、自動光出力制御回路APCがLDバイアス端子BBに接続されている。
【0004】
このLD差動駆動回路では、差動入力端子IN1,IN2に入力するバーストデータ信号が増幅されて差動出力端子OUT1,OUT2に出力し、レーザダイオードLDが差動駆動される。また、自動光出力制御回路APCによって、レーザダイオードLDの後方光がモニタされ、該モニタ結果に応じたバイアス電流がLDバイアス端子BBにフィードバックされ、レーザダイオードLDの出力が制御される。
【0005】
【非特許文献1】K.Sakai, et al."1.3-μm Unlooled DFB Laser-Diode Module With a Coupled Differential Feed for 10-Gb/s Ethernet Applications" I EEE Journal of Lightwave Technology,Vol.22,No.2,2004
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、この従来のLD差動駆動回路は、自動光出力制御回路APCを、LDバイアス端子BBからバイアス用インダクタL2を介して接続していた関係で、そのインダクタL2のインダクタンスによりジッタが大きくなっていた。図4(b)にそのレーザダイオードLDに流れる電流波形のアイパターン特性を示す。
【0007】
本発明の目的は、レーザダイオードに流れる電流のジッタを低減にしたLD差動駆動回路を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明のLD差動駆動回路は、LD駆動電流が出力する差動形式の第1および第2の出力端子およびLDバイアス電流が出力するLDバイアス端子を有するLDドライブ回路と、レーザダイオードの一方の端子と前記第1の出力端子との間に接続される第1の伝送線路と、前記レーザダイオードの他方の端子と前記第2の出力端子との間に接続される第2の伝送線路と、前記レーザダイオードの前記一方の端子とLD電源端子との間に接続されるインダクタと、前記レーザダイオードの前記他方の端子と前記LDバイアス端子との間に接続されるバイアス抵抗とを有することを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のLD差動駆動回路において、前記LDドライブ回路が、LDドライブ回路本体とLDバイアス回路とからなり、前記LDドライブ回路本体は、第1のトランジスタと第2のトランジスタからなる第1の差動回路と、前記第1のトランジスタのコレクタ又はドレインと第1の電源端子との間に接続される第1の負荷抵抗と、前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインと前記第1の電源端子との間に接続される第2の負荷抵抗と、前記第1および第2のトランジスタのエミッタ又はソースと第2の電源端子に接続された電流源と、前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に接続される少なくとも10pFの容量値をもつ第1の電源安定化容量とを備え、前記第1および第2のトランジスタのベース又はゲートが差動入力端子に接続され、前記第1および第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記第1および第2の出力端子に接続されてなり、前記LDバイアス回路が、第3のトランジスタと第4のトランジスタからなる第2の差動回路と、前記第3のトランジスタのコレクタ又はドレインと第3の電源端子との間に接続される第3の負荷抵抗と、前記第3および第4のトランジスタのエミッタ又はソースにコレクタ又はドレインが接続されベース又はゲートが自動光出力制御回路に接続されソースが第4の電源端子に接続される第5のトランジスタとを備え、前記第4のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記LDバイアス端子に接続され、前記第3および第4のトランジスタのベース又はゲートに制御信号が印加するようにしてなる、ことを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項2に記載のLD差動駆動回路において、前記第1の電源端子を第5の電源端子と第6の電源端子に分離し、前記第5の電源端子を前記第1の負荷抵抗に接続すると共に前記第6の電源端子を前記第2の負荷抵抗に接続し、前記第1の電源安定化容量に代えて、前記第5の電源端子と前記第2の電源端子との間に、少なくとも10pFの容量値をもつ第2の電源安定化容量を接続し、前記第6の電源端子と前記第2の電源端子との間に、少なくとも10pFの容量値をもつ第3の電源安定化容量を接続したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、レーザダイオードの一端と自動光出力制御回路の出力とをインダクタではなく、バイアス抵抗を介して接続したので、レーザダイオードに流れる電流のジッタが少ないLD差動駆動回路を実現することができる。また、LDドライブ回路本体の電源端子間に少なくとも10pFの電源安定化容量を接続することで、そのジッタをより少なくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の実施例のLD差動駆動回路の回路図である。本実施例のLD差動駆動回路は、レーザダイオードLDとLD電源端子VCC2との間に接続されるバイアス用インダクタL1、レーザダイオードLDとLDバイアス端子BBとの間に接続されるバイアス抵抗R6、伝送線路T1,T2、その伝送線路T1,T2とレーザダイオードLDとの間に接続される終端抵抗R4,R5、およびLDドライブ回路10からなる。LDドライブ回路10の差動出力端子OUT1,OUT2は、伝送線路T1,T2に接続されている。また、LDバイアス端子BBはLDドライブ回路10に接続されている。
【0011】
このように、本実施例では、レーザダイオードLDとLDバイアス端子BBとの間に、従来のインダクタL2に代えて、バイアス抵抗R6を接続している。このため、レーザダイオードLDを流れる電流のジッタを低減できる。図4(a)にその電流波形のアイパターン特性を示した。図4(b)のインダクタL1を使用した従来の場合に比べて、ジッタが大幅に低減している。
【0012】
図2は図1に示したLD差動駆動回路において、LDドライブ回路10の部分を具体化した回路図である。LDドライブ回路10は、LDドライブ回路本体11とLDバイアス回路12とからなる。
【0013】
LDドライブ回路本体11は、差動回路を構成するトランジスタQ1,Q2、そのトランジスタQ1,Q2のコレクタと電源端子VCC1との間に接続される負荷抵抗(送端抵抗)R1,R2、トランジスタQ1,Q2のエミッタにコレクタが共通接続されベースが電流制御端子VCS1に接続される電流源トランジスタQ3、トランジスタQ3と接地端子GNDとの間に接続される電流安定化抵抗R3、電源端子VCC1と接地端子GNDとの間に接続される電源安定化容量C1を有する。
【0014】
LDバイアス回路12は、差動回路を構成するトランジスタQ4,Q5、そのトランジスタQ4のコレクタと電源端子VCC3との間に接続される負荷抵抗R7、トランジスタQ4,Q5のエミッタにコレクタが共通接続されベースが電流制御端子VCS2を介して自動光出力制御回路APCに接続される電流源トランジスタQ6、トランジスタQ6と接地端子GNDとの間に接続される電流安定化抵抗R8を有する。そして、トランジスタQ5のコレクタがLDバイアス端子BBに接続されている。
【0015】
このLDドライブ回路10では、電源安定化容量C1の値を少なくとも10pF、好ましくは100pFに設定することにより、電源端子VCC1に電源を供給するパターン配線やワイヤ配線の寄生インダクタンス成分(通常では1nH程度)による悪影響を回避できる。すなわち、このLDドライバ回路10では、負荷抵抗R1,R2に40mA以上のLD駆動電流を流す必要があり、このとき、上記の寄生インダクタンスによっても、レーザダイオードLDに流れる電流にジッタが生じるが、上記電源安定化容量C1によって、その寄生インダクタンスによるジッタを低減できる。
【0016】
自動光出力制御回路APCの出力信号は、イネーブル時、すなわちバイアス制御端子IN3を“L”に、IN4を“H”に設定したとき、LDバイアス端子BBに電流として供給され、レーザダイオードLDの後方光のモニタ結果に応じたバイアス電流がLDバイアス端子BBにフィードバックされる。
【0017】
なお、以上ではトランジスタQ1〜Q6としてバイポーラトランジスタを使用した例で説明したが、MOSトランジスタを使用した場合でも同様に実施することができ、同様の作用効果を得ることができる。このようにMOSトランジスタを使用する場合は、電流源安定化抵抗R3,R8は削除することができる。また、LDドライブ回路本体11の電源端子VCC1と接地GND間に接続した電源安定化容量C1は、電源端子VCC1の配線をレイアウトの関係から2系統に形成する場合には、その各系統の電源端子と接地端子間に個々に接続することが好ましい。このとき、負荷抵抗R1,R2はその各系統の電源端子にそれぞれ接続する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例のLD差動駆動回路の回路図である。
【図2】図1のLD差動駆動回路の具体的回路図である。
【図3】従来のLD差動駆動回路の具体的回路図である。
【図4】本発明と従来のLD差動駆動回路のレーザダイオードの電流波形のアイパターン特性図である。
【符号の説明】
【0019】
Q1〜Q6:トランジスタ、R1、R2,R7:負荷抵抗、R4,R5:終端抵抗、R6:バイアス抵抗、R3,R8:電流安定化抵抗、L1,L2:バイアス用インダクタ、LD:レーザダイオード、VCC1,VCC3:電源端子、VCC2:LD電源端子、GND:接地端子、VCS1,VCS2:電流制御端子、IN1〜IN4:入力端子、OUT1,OUT2:出力端子、T1,T2:伝送線路、APC:自動光出力制御回路、BB:LDバイアス端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LD駆動電流が出力する差動形式の第1および第2の出力端子およびLDバイアス電流が出力するLDバイアス端子を有するLDドライブ回路と、レーザダイオードの一方の端子と前記第1の出力端子との間に接続される第1の伝送線路と、前記レーザダイオードの他方の端子と前記第2の出力端子との間に接続される第2の伝送線路と、前記レーザダイオードの前記一方の端子とLD電源端子との間に接続されるインダクタと、前記レーザダイオードの前記他方の端子と前記LDバイアス端子との間に接続されるバイアス抵抗とを有することを特徴とするLD差動駆動回路。
【請求項2】
請求項1に記載のLD差動駆動回路において、
前記LDドライブ回路は、LDドライブ回路本体とLDバイアス回路とからなり、
前記LDドライブ回路本体は、第1のトランジスタと第2のトランジスタからなる第1の差動回路と、前記第1のトランジスタのコレクタ又はドレインと第1の電源端子との間に接続される第1の負荷抵抗と、前記第2のトランジスタのコレクタ又はドレインと前記第1の電源端子との間に接続される第2の負荷抵抗と、前記第1および第2のトランジスタのエミッタ又はソースと第2の電源端子に接続された電流源と、前記第1の電源端子と前記第2の電源端子との間に接続される少なくとも10pFの容量値をもつ第1の電源安定化容量とを備え、前記第1および第2のトランジスタのベース又はゲートが差動入力端子に接続され、前記第1および第2のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記第1および第2の出力端子に接続されてなり、
前記LDバイアス回路は、第3のトランジスタと第4のトランジスタからなる第2の差動回路と、前記第3のトランジスタのコレクタ又はドレインと第3の電源端子との間に接続される第3の負荷抵抗と、前記第3および第4のトランジスタのエミッタ又はソースにコレクタ又はドレインが接続されベース又はゲートが自動光出力制御回路に接続されソースが第4の電源端子に接続される第5のトランジスタとを備え、前記第4のトランジスタのコレクタ又はドレインが前記LDバイアス端子に接続され、前記第3および第4のトランジスタのベース又はゲートに制御信号が印加するようにしてなる、
ことを特徴とするLD差動駆動回路。
【請求項3】
請求項2に記載のLD差動駆動回路において、
前記第1の電源端子を第5の電源端子と第6の電源端子に分離し、前記第5の電源端子を前記第1の負荷抵抗に接続すると共に前記第6の電源端子を前記第2の負荷抵抗に接続し、
前記第1の電源安定化容量に代えて、前記第5の電源端子と前記第2の電源端子との間に、少なくとも10pFの容量値をもつ第2の電源安定化容量を接続し、前記第6の電源端子と前記第2の電源端子との間に、少なくとも10pFの容量値をもつ第3の電源安定化容量を接続したことを特徴とするLD差動駆動回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−41907(P2008−41907A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213732(P2006−213732)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【出願人】(591230295)NTTエレクトロニクス株式会社 (565)
【Fターム(参考)】