説明

LED発光装置及びLED発光装置を備えたカメラ付き携帯電話。

【課題】 従来のカメラ付き携帯電話等にフラッシュとして使用されているLED発光装置では、少ない光量を集光しているため放射角度の設定が難しかった。すなわち放射角度を大きくすると近接撮影においては良好なフラッシュ効果があるが、遠くの被写体を撮影するときには光量が不足して露光不足となり、また放射角度を小さくすると遠景撮影においては良好なフラッシュ効果があるが、近い被写体を撮影するときには照明範囲が狭くなって良好なフラッシュ効果が得られないという問題があった。
【解決手段】 光源としてのLED素子と、該LED素子の発光を前方に反射させるための反射部材を有する発光装置において、前記LED素子と反射部材との相対位置を移動させるための相対位置可変手段を設け、前記相対位置可変手段により前記反射部材とLED素子との相対位置を可変することにより、前記反射部材からの光の放射角度を可変とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は反射部材からの放射光の指向性を可変としたLED発光装置及び、そのLED発光装置をフラッシュ装置として備えたカメラ付き携帯電話に関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりキセノン管を用いた照明用フラッシュライトを備えたカメラ付き携帯電話が公知であり、例えば特開2003−219062号公報や特開2003−274333号公報に記載されている。
また近年白色のLEDが開発されたことを受けてLEDを用いた照明用フラッシュライトを備えたカメラ付き携帯電話も提案されており、例えば特開2003−333155号公報に記載されている。この特開2003−333155号公報に開示されているLEDを用いた照明用フラッシュライトはR,G,Bの3色発光LEDを用いており、LED発光部からの放射光を集光して指向特性を調整するために前記LED発光部の前方にレンズを配設している。
【0003】
さらに、本出願人はカメラ付き携帯電話に搭載可能な、LEDを用いたフラッシュ光源を特開2004−327955号公報に記載しており、その構成は回路基板に実装されたLED光源の周囲を反射枠体で覆い、その反射枠体の出口にレンズ体を設けることで、反射枠体による集光作用とレンズによる集光作用とによって放射光量の増加を提案している。
上記のごとく従来のカメラ付き携帯電話に採用されているLEDを用いた照明用フラッシュライトでは、キセノン管を用いた照明用フラッシュライトに比較して光量が少ないことを解決するために、反射枠体による集光作用やレンズによる集光作用によって放射光量の増加を行なうことの改良がなされている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−219062号公報
【特許文献2】特開2003−274333号公報
【特許文献3】特開2003−333155号公報
【特許文献4】特開2004−327955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の改良されたLED照明用フラッシュライトでも、少ない光量を集光しているため放射角度の設定が難しかった。すなわち放射角度を大きくすると近接撮影においては良好なフラッシュ効果があるが、遠くの被写体を撮影するときには光量が不足して露光不足となり、また放射角度を小さくすると遠景撮影においては良好なフラッシュ効果があるが、近い被写体を撮影するときには照明範囲が狭くなって良好なフラッシュ効果が得られないという問題があった。
【0006】
本発明の目的は、LEDが発光する光の放射角度を可変にすることにより、光量が少ないLEDの発光を有効に利用することによって、写真撮影の照明として満足のできるLED発光装置を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明においては光源としてのLED素子と、該LED素子の発光を前方に反射させるための反射部材を有する発光装置において、前記LED素子と反射部材との相対位置を移動させるための相対位置可変手段を設け、前記相対位置可変手段により前記反射部材とLED素子との相対位置を可変することにより、前記反射部材からの光の放射角度を可変とすることを特徴とする。
【0008】
前記相対位置可変手段は反射部材を移動させる反射部材移動手段やLED素子を移動させるLED素子移動手段である。
【0009】
前記LED発光装置をフラッシュ装置として備えたカメラ付き携帯電話であり、前記カメラ付き携帯電話に前記相対位置可変手段を制御するための外部操作可能な発光装置制御部材を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
LEDが発光する光の放射角度を可変にすることにより、光量の少ないLEDの発光を有効に利用することによって、写真撮影の照明として満足できるLED発光装置及びカメラ付き携帯電話のフラッシュライトを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1、図2は本発明の第1の実施形態における反射部材移動型のLED発光装置の断面を示し、図1はLEDが発光する光の放射角度を最小にした状態を示す断面図であり、図2はLEDが発光する光の放射角度を最大にした状態を示す断面図である。
図3、図4は本発明の第2の実施形態における光源移動型のLED発光装置の断面を示し、図3はLEDが発光する光の放射角度を最小にした状態を示す断面図であり、図4はLEDが発光する光の放射角度を最大にした状態を示す断面図である。
【0012】
図1、図2により本発明の第1の実施形態における反射部材移動型のLED発光装置の構成について説明する。図1において1は反射部材移動型のLED発光装置、2は全体を支持する支持基板であり、該支持基板2の上面側にはスペーサ3を介して光源4が取り付けられている。
前記光源4は青色発光を行なうLED5をYAG(Yttrium Aluminium Garnet)系の蛍光材料を含有させた透明な樹脂6で被覆する事によって白色光を発光する光源となっており、前記LED5は図示を省略したが配線パターンによって駆動回路に接続されている。
【0013】
また、前記支持基板2の上面側には複数の送りネジ支柱8が植設されており、該送りネジ支柱8に勘合される構成で前記反射部材7が設けられ、この反射部材7は反射面が方物線カーブのカップ形状を有し、前記光源4を囲むように設けられている。さらに支持基板2の下面側には前記反射部材7を送りネジ支柱8の軸方向に往復移動させるための反射部材移動手段9が取り付けられている。
前記反射部材移動手段9と反射部材7の構成は、例えば反射部材移動手段9には駆動用モータ9aが設けられ、該駆動用モータ9aの出力軸に前記送りネジ支柱8が取り付けられており、前記反射部材7には送りネジ支柱8に勘合するための雌ネジが形成されている。そして前記駆動用モータ9aの出力軸によって送りネジ支柱8を回転させることにより、反射部材7をLED5に対して近接離間移動させることができるように構成されている。前記駆動用モータ9aはステッピングモータを用いているが、DCモータ、圧電モータ、あるいは振動モータや電磁ソレノイド等のアクチュエータを用いてもよい。
【0014】
次に、図1、および図2を用いて、LED発光装置1の動作について説明する。図1は、前記LED発光装置1を、遠く離れた位置にある被写体を撮影するためのフラッシュとして動作させる場合の状態を示す。この状態はまず図示しない操作手段によって前記駆動用モータ9aを動作させることにより、前記送りネジ支柱8を回転させて反射部材7を支持基板2の表面の位置から距離d1の位置に移動させることにより、遠く離れた位置にある被写体を撮影するために適した照明状態にセットされる。すなわち図1の状態においては前記光源4に搭載されたLED5が反射部材7における放物線反射面の焦点の位置にセットされた状態になっており、この状態においては前記LED発光装置1がLED5の発光を反射部材7の放物線カーブの反射面によって、すべて前方への平行光とする発光装置として機能しており、この状態を図1に放射光Bnとして図示している。
この状態においては放射光Bnの光束が絞られることによって鋭い指向性の光となり、遠く離れた被写体を光量が不足することなく明るく照明することができる。
【0015】
図2は、前記LED発光装置1を、近接した被写体を撮影するためのフラッシュとして動作させる場合の状態を示す。
図1の状態から、図示しない操作手段によって前記駆動用モータ9aを動作させることにより、前記送りネジ支柱8を回転させて反射部材7を支持基板2の表面の位置から距離d2の位置に移動させることにより、近接した被写体を撮影するために適した照明状態にセットされる。すなわち図2の状態は前記光源4に搭載されたLED5が反射部材7の焦点より下方の位置にセットされた状態になっており、この状態ではLED5が反射部材7に近接した位置にあるため、LED5の発光は反射部材7で広角に反射されて光束が広げられ、広い指向性の光となる。この結果放射光が遠方にはとどかないが近接部分を広く照明できるため、近接した被写体を広くカバーして明る過ぎることなく適切な光量で照明する発光装置として機能しており、この状態を図2に放射光Bwとして図示している。
【0016】
図3、図4により本発明の第2の実施形態における光源移動型のLED発光装置の構成について説明する。なお図3、図4において前記図1、図2のLED発光装置1と同一要素には同一番号を付し、重複する説明を省略する。
図3、図4において10は光源移動型のLED発光装置であり、図1に示すLED発光装置1と異なるところは支持基板2に対して反射部材7が固定されており、逆に光源4が往復移動可能に構成されているところである。
すなわち、LED発光装置10では前記支持基板2の下面側には、LED素子移動手段である光源移動手段19が設けられ、該光源移動手段19に設けた駆動用モータ19aの出力軸に前記送りネジ支柱8が取り付けられており、前記光源4を載置したスペーサ3には送りネジ支柱8に勘合するための雌ネジが形成されている。そして前記駆動用モータ19aの出力軸によって送りネジ支柱8を回転させて前記スペーサ3を移動させることにより光源4、すなわちLED5を反射部材7に対して近接離間移動させることができるように構成されている。その他の構成に付いてはLED発光装置1と同様である。
【0017】
次に、図3、図4を用いて、本発明の第2の実施形態における光源移動型のLED発光装置10の動作について説明する。図3は前記LED発光装置10を、遠く離れた位置にある被写体を撮影するためのフラッシュとして動作させる場合の状態を示す。
この状態ではまず図示しない操作手段によって前記駆動用モータ19aを動作させることにより、前記送りネジ支柱8を回転させて光源4を支持基板2の表面の位置から距離D1の位置に移動させることにより、遠く離れた位置にある被写体を撮影するために適した照明状態にセットされる。すなわち図3の状態においては前記光源4に搭載されたLED5が反射部材7の焦点の位置にセットされた状態になっており、この状態においては前記LED発光装置10がLED5の発光を反射部材7の方物線カーブの反射面によって、すべて前方への平行光とする発光装置として機能しており、この状態を図3に放射光Bnとして図示している。この状態においては放射光Bnの光束が絞られて鋭い指向性の光となり、遠く離れた被写体を光量が不足することなく明るく照明することができる。
【0018】
図4は、前記LED発光装置10を、近接した被写体を撮影するためのフラッシュとして動作させる場合の状態を示す。
図3の状態から、図示しない操作手段によって前記駆動用モータ19aを動作させることにより、前記送りネジ支柱8を回転させて光源4を支持基板2の表面の位置から距離D2の位置に移動させることにより、近接した被写体を撮影するために適した照明状態にセットされる。すなわち図4の状態は前記光源4が反射部材7の焦点より下方の位置にセットされた状態になっており、この状態では光源4に搭載されたLED5が反射部材7に近接した位置にあるため、LED5の発光は反射部材7で広角に反射されて光束が広げられ、広い指向性の光となる。この結果放射光が遠方にはとどかないが近接部分を広く照明できるため、近接した被写体を広くカバーして明る過ぎることなく適切な光量で照明する発光装置として機能しており、この状態を図4に放射光Bwとして図示している。
【0019】
図5、図6、図7は本発明の第3の実施形態におけるカメラ付き携帯電話を示すものであり、図5は前記LED発光装置1をフラッシュとして備えているカメラ付き携帯電話20の正面図、図6はカメラ付き携帯電話20の裏面図、図7はカメラ付き携帯電話20のフラッシュ発光状態を示す側面図である。
図5においてカメラ付き携帯電話20は、電話機能を使用する開放状態にあり、開放された蓋部21には表示部22、送話用のマイク23があり、また本体側25にはキーボード部26、カメラのシャッターボタンにも使用される円型ボタン27、サイドボタン28に加えて発光装置制御部材である遠距離ボタン30aと近接ボタン30bが設けられている。
また図6においてカメラ付き携帯電話20は、カメラ機能を使用する開放状態にあり、開放された蓋部21の裏面側にはカメラ部31と発光部32とが近接して設けられており、前記発光部32には図1に示すLED発光装置1が内蔵されている。
【0020】
次に一例として前記LED発光装置1を内蔵したカメラ付き携帯電話20の構成を説明する。前述のごとくカメラ付き携帯電話20の発光部32にはLED発光装置1が内蔵されており、図5に示す遠距離ボタン30aを操作すると、その操作信号が図1に示すLED発光装置1の反射部移動手段9の駆動用モータ9aを制御して図1の状態、すなわち鋭い指向性の放射光Bnを発光するフラッシュ状態に設定される。
また、図5に示す近接ボタン30bを操作すると、その操作信号が図1に示すLED発光装置1の反射部移動手段9の駆動用モータ9aを制御して図2の状態、すなわち広い指向性の放射光Bwを発光するフラッシュ状態に設定される。
【0021】
次にカメラ付き携帯電話20のフラッシュ動作を説明する。カメラ機能としての動作は図6に示す裏面側にあるカメラ部31を被写体に向けた状態で、図5に示す表示部22をモニターとして見ながらシャッターボタンとなる円形ボタン27を操作する事によって写真撮影がおこなわれる。
この撮影時にフラシュが必要な場合には、被写体の位置が遠いか近いかによって前記遠距離ボタン30aと近接ボタン30bとを操作してフラッシュ条件を設定した後、円型ボタン27を操作するとカメラ部31のシャッターが動作すると同時に前記LED発光装置1が発光し、その放射光が発光部32から発光されてフラッシュ動作を行なう。
【0022】
図7はカメラ付き携帯電話20のフラッシュ動作を示すもので、図7(イ)は前記遠距離ボタン30aの操作によって前記LED発光装置1が図1の状態に設定されたもので、鋭い指向性の放射光Bnを発光している。
また図7(ロ)は前記近接ボタン30bの操作によって前記LED発光装置1が図2の状態に設定されたもので、広い指向性の放射光Bwを発光している。すなわち撮影時に被写体の位置に合せて前記遠距離ボタン30aと近接ボタン30bとを選択的に操作する事によってフラッシュを適切に選択することが出来る。
【0023】
図8は本発明の第4の実施の形態であるカメラ付き携帯電話40の裏面図を示すものであり、図6のカメラ付き携帯電話20と同一要素には同じ番号を付し説明を省略する。
カメラ付き携帯電話40が前記カメラ付き携帯電話20と異なるところは、カメラ付き携帯電話20が発光装置制御部材として遠距離ボタン30aと近接ボタン30bにより、相対位置可変手段の駆動用モータを制御して反射部材7の放射角度を可変しているのに対し、カメラ付き携帯電話40では発光装置制御部材として外部操作が可能なダイヤル41を備えており、このダイヤル41の回転操作により反射部材7の放射角度を可変していることである。
【0024】
すなわち、前記カメラ付き携帯電話40では内蔵されているLED発光装置の相対位置可変手段には駆動用モータを設けず、前記ダイヤル41の操作によって前記送りネジ支柱8を直接回転させることにより反射部材7の放射角度を可変している。
また、前記送りネジ支柱8を直接回転させる発光装置制御部材としては、この実施形態に示したダイヤル41に代えて外部操作が可能なレバーやスライド部材を使用する事が出来る。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明における、LED発光装置は簡単な構成で遠方を照明できる鋭い指向性の発光と、近接部分を広く照明できる広い指向性の発光を切り替えることが出来るため、カメラのフラッシュだけではなく、一般の懐中電灯としても実施する事が出来るし、またヘッドランプとしても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態における反射部材移動型のLED発光装置の断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における反射部材移動型のLED発光装置の断面図である。
【図3】本発明の第2の実施形態における光源移動型のLED発光装置の断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態における光源移動型のLED発光装置の断面図である。
【図5】本発明の第3の実施形態におけるカメラ付き携帯電話の正面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態におけるカメラ付き携帯電話の裏面図である。
【図7】本発明の第3の実施形態におけるカメラ付き携帯電話の側面図である。
【図8】本発明の第4の実施形態におけるカメラ付き携帯電話の裏面図である。
【符号の説明】
【0027】
1、10 LED発光装置
2 支持基板
3 スペーサ
4 光源
5 LED
6 樹脂
7 反射部材
8 送りネジ支柱
9 反射部材移動手段
9a、19a 駆動用モータ
19 光源移動手段
20,40 カメラ付き携帯電話
21 蓋部
22 表示部
25 本体部
30a 遠距離ボタン
30b 近接ボタン
31 カメラ部
32 発光部




【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源としてのLED素子と、該LED素子の発光を前方に反射させるための反射部材を有する発光装置において、前記LED素子と反射部材との相対位置を移動させるための相対位置可変手段を設け、前記相対位置可変手段により前記反射部材とLED素子との相対位置を可変することにより、前記反射部材からの光の放射角度を可変としたことを特徴とするLED発光装置。
【請求項2】
前記相対位置可変手段は前記反射部材を移動させる反射部材移動手段である請求項1記載のLED発光装置。
【請求項3】
前記相対位置可変手段は前記LED素子を移動させるLED素子移動手段である請求項1記載のLED発光装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項記載のLED発光装置をフラッシュ装置として備えたカメラ付き携帯電話。
【請求項5】
前記カメラ付き携帯電話に、前記相対位置可変手段を制御するための外部操作可能な発光装置制御部材を設けた請求項4記載のカメラ付き携帯電話。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−84600(P2008−84600A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−261230(P2006−261230)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000131430)シチズン電子株式会社 (798)
【Fターム(参考)】