説明

ますの蓋枠

【課題】本発明の課題は、雨水経路に配置されるますの蓋枠と蓋体とを鎖で連結することが出来るようにすることにある。
【解決手段】ます1Aの点検筒6の上端に被嵌される蓋枠20の周壁の一部に膨出部22を設け、該膨出部22には周壁に食い込んだ状態で鎖係止穴23を設け、該鎖係止穴23に鎖24を通して蓋枠20と蓋体11とを鎖24で連結する。該膨出部22の突出量は小さくできるから、該ます1Aのバケツ12を地上へ取り出す場合に、該膨出部22が干渉しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は雨水経路に配設されるます(枡)、即ち雨水ます、あるいは雨水浸透ます(以下雨水(浸透)ますと略称する)の蓋枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の雨水(浸透)ますを図8に示す。
図に示す雨水(浸透)ます1Bは、ます本体1と、上記ます本体1の上端に設けられている点検筒接続部(受口部)2と、上記ます本体1の側面に設けられている流入管接続部(受口部)3および流出管接続部(受口部)4と、上記ます本体1の下端に設けられている泥溜め部接続部(受口部)5とからなり、上記ます本体1の点検筒接続部2には上端が地表GLに開口する点検筒6の下端部が接続され、上記ます本体1の流入管接続部3には流入管7が接続され、上記ます本体1の流出管接続部4には流出管8が接続され、上記ます本体1の泥溜め部接続部5には容器状泥溜め部9が接続されている。
更に上記点検筒6bの上端には蓋枠10が内側嵌合され、上記蓋枠10の上端には蓋体11が被着されており、上記泥溜め部9内には把手13を付した泥溜め容器(バケット)12が内挿されている。
【0003】
雨水ますの場合には、上記泥溜め部9および上記泥溜め容器12は無孔であり、雨水浸透ますの場合には、上記泥溜め部(浸透部)9および上記泥溜め容器12には多数の孔が設けられている。
【0004】
上記構成の雨水(浸透)ます1Bにあっては、上記泥溜め容器12内に蓄積した土砂等を取り除く場合には、蓋体11を取り外して泥溜め容器12をます本体1の上端から点検筒6を通過させ地上へ取り出す。
通常のますにあっては、点検筒上端に被着される蓋枠と、上記蓋枠の上端に被着される蓋体とを鎖で連結して蓋体の跳ね上がりや紛失を防止している(例えば特許文献1参照)。上記鎖は、一端が蓋体下面から差出されているブラケットに固定され、他端が蓋枠の内面から差出されているブラケットに固定されている。
【0005】
【特許文献1】実開平3−62133号公報
【特許文献2】特開平11−21989号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したように雨水(浸透)ますにあっては、通常のますと同様に蓋枠の周壁内面に鎖固定用ブラケットを突設すると、泥溜め容器(バケット)を上方へ取り出す場合には、該鎖固定用ブラケットが泥溜め容器(バケット)に干渉し、泥溜め容器(バケット)を取り出すことが出来ない。
例えば、特許文献2に開示された雨水枡は、点検筒に直接蓋枠を被着せず、点検筒よりも充分大径な蓋枠を点検筒の上端に被せ、上記蓋枠下端は地盤上に設置した台座上に支持させる構成とし、蓋枠と蓋体とを鎖で連結している。
このような構成では、蓋枠が点検筒よりも大径であるから蓋枠内面から鎖を固定するためのブラケットを差し出しても、泥溜め容器(バケット)は上記ブラケットに干渉されることなく取り出すことが出来る。
【0007】
しかし、この特許文献2のような構成は、蓋枠下端を支持する台座を地盤上に設置できるだけの設置スペース、設置深さ等が確保できるからこそ実現可能となっているのであり、点検筒の上端に蓋枠を被嵌する構成とした小径且つ小型の雨水ますに適用することは極めて困難である。また特許文献2の構成にあっては、地盤上に蓋枠を支持するための台座が必要であるし、点検筒と台座との間に雨水が浸入するので、それを防ぐためには、蓋枠と点検筒との間に弾性集水漏斗等を設定することが必要になる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するための手段として、雨水経路に配設され下端部には泥溜め容器12を収容した泥溜め部9が設定されているます1Aの上端に接続される点検筒6の上端に被嵌される蓋枠20であって、該蓋枠20上端には蓋体11が被着されており、該蓋枠20周壁の一部の肉厚を増すことによって上記泥溜め部9の泥溜め容器12を上方に取出す際に干渉しない程度に膨出せしめた膨出部を形成し、該膨出部22から周壁内部にかけて下端から内側面に開口する鎖係止穴23を貫設し、一端が該蓋体11に接続している鎖24を該蓋枠20周壁の膨出部22の鎖係止穴23に通し、該鎖24の他端は該蓋枠20に接続したます1Aの蓋枠20を提供するものである。
上記蓋枠20周壁の膨出部22は、該蓋枠20下縁から設けられていることが望ましい。また上記膨出部22の下面22aおよび/または上面22bは、上記蓋枠20周壁からの該膨出部22の膨出方向へ向かうに従い、下面22aであれば蓋枠20の上端へ向かうように高くなり、上面22bであれば蓋枠20の下端へ向かうように低くなるように傾斜して、泥溜め容器ガイド面とされていることが望ましい。
本発明にいう鎖24は、端部にフック26等の係止部品を組み付けることにより、鎖24の一部として該フック26を鎖係止穴23に通して蓋枠20および/または蓋体11に接続するものであってもよく、またフック26等の係止部品を組み付けることなく、鎖24の端部を鎖係止穴23に通して蓋枠20および/または蓋体11に接続するものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
〔作用〕
該蓋枠20と該蓋体11とを連結する鎖の鎖係止穴23は、該膨出部22から周壁に食い込ませた状態で設けられているので、その分膨出部22の突出量を減らすことが出来、該膨出部22がます1Aの泥溜め部(浸透部)9の泥溜め容器(バケット)12を地上へ取り出す際に干渉しない程度の突出量としても、充分鎖24を通すことが出来る口径の鎖係止穴23を貫設することが出来る。
【0010】
〔効果〕
したがって本発明にあっては、蓋体と蓋枠とを鎖で接続して該蓋体が跳ね上がったり紛失しないようにしても、該ますの泥溜め部(浸透部)の泥溜め容器(バケット)を支障なく地上に取り出すことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明を図1〜図4に示す一実施例によって以下に説明する。
図1に示すます1Aは雨水ますであって、ます本体1と、上記ます本体1の上端に設けられている点検筒接続部(受口部)2と、上記ます本体1の側面に設けられている流入管接続部(受口部)3および流出管接続部(受口部)4と、上記ます本体1の下端に設けられている泥溜め部接続部(受口部)5とからなる。上記ます本体1の点検筒接続部2には上端が地表GLに開口する点検筒6の下端が内側嵌合され、上記ます本体1の流入管接続部3には流入管7の接続端が内側嵌合され、上記ます本体1の流出管接続部4には流出管8の接続端が内側嵌合され、上記ます本体1の泥溜め部接続部5には容器状の泥溜め部9の上端接続部が内側嵌合されている。
更に上記点検筒6の上端には蓋枠20が内側嵌合され、上記蓋枠20の上端には蓋体11が被着されており、また上記泥溜め部9内には把手13を付した泥溜め容器12が内挿されている。
【0012】
上記蓋枠20においては、図4に詳記するように下縁凹段部21に膨出部22が形成されており、上記膨出部22の下面から側部上部にかけて該蓋体20周壁に食い込ませた状態で鎖係止穴23が設けられている。
図3及び図4に示すように、膨出部22の下面22aは、上記蓋枠20周壁からの該膨出部22の膨出方向へ向かうに従い、蓋枠20の上端へ向かって高くなるように傾斜させることによって、泥溜め容器ガイド面とされている。また膨出部22の上面22bは、上記蓋枠20周壁からの該膨出部22の膨出方向へ向かうに従い、蓋枠20の下端へ向かって低くなるように傾斜させることによって、泥溜め容器ガイド面とされている。
鎖24は両端にフック25,26が設けられており、上記鎖24の一端(上端)のフック25は蓋体11のブラケット27に係止され、他端(下端)のフック26は上記膨出部22の鎖係止穴23に通され、鎖係止穴23の周壁に係止される。この意味で、フック26は、鎖係止穴23に通されて蓋枠20に接続される、本発明に云う鎖の一部を構成している。本実施例では、鎖24の一端と他端にフック25,26を取り付けているが、フック25,26を用いず、鎖24の一端あるいは他端を加工してブラケット27あるいは鎖係止穴23に通したうえで、該一端をブラケット27に係止、あるいは該他端を鎖係止穴23の周壁に係止しても構わない。
【0013】
そして図2、3に示すように蓋枠20の内径をd、周壁肉厚をt、鎖係止穴23部分の周壁厚をt、膨出部22の膨出量をtとした場合、泥溜め容器12の最大径をdとすると、d−t≧dに設定する。
即ち鎖係止穴23の径dを鎖24が貫通するために充分な大きさに設定しても、該鎖係止穴23の位置をt−tだけ周壁に食い込ませているから、該鎖係止穴23を設けるための膨出部22の突出量はそれだけ小さくすることが出来、泥溜め容器12の最大径を従前のものと同一に設定しても、該泥溜め容器12は該蓋枠20の膨出部22に干渉されることなく、地上に取出すことが出来る。
また膨出部22の下面22aは、上記蓋枠20周壁からの該膨出部22の膨出方向へ向かうに従い、蓋枠20の上端へ向かって高くなるように傾斜された泥溜め容器ガイド面とされており、泥溜め容器12を泥溜め部9内から取り出すときの、該泥溜め容器12の膨出部22への干渉を好適に抑えることが出来る。さらに膨出部22の上面22bは、上記蓋枠20周壁からの該膨出部22の膨出方向へ向かうに従い、蓋枠20の下端へ向かって低くなるように傾斜された泥溜め容器ガイド面とされており、泥溜め容器12を泥溜め部9内に挿入して収容するときの、該泥溜め容器12の膨出部22への干渉を好適に抑えることが出来る。
【0014】
もし図5に示すように、鎖係止穴23Aの位置を周壁内部に寄せない場合には、周壁から鎖係止穴23Aよりも大きな突出量を有する膨出部である鎖取付けブラケット22Aを設けなければならない。
【0015】
上記雨水ます1Aにあっては、流入管7からます本体1内に流入した雨水は、上記ます本体1内に貯溜され、更に流出管8から流出する、この際、雨水に混合している土砂等は泥溜め部9のバケツ12内に沈積する。バケツ12内の土砂等の沈積量がある程度増大したら、蓋体11を開いて地上からバケツ12を引き上げて取り出し、バケツ12内に沈積している土砂等を除去した後、再びバケツ12をます1Aの泥溜め部9内に収納する。
【0016】
上記実施例以外、図6に示すように膨出部22Bを蓋体20の下縁から所定距離上方に離れた位置に設定してもよい。この場合には、膨出部22Bに設けた鎖係止穴23Bに連絡する鎖溝30を上記蓋体20の下端から設け、鎖24の下端のフック26は該膨出部22Bの鎖係止穴23Bの下端または該鎖溝30の下端に係止する。さらに上記実施例と同様に、膨出部22Bの下面22aを、上記蓋枠20周壁からの該膨出部22Bの膨出方向へ向かうに従い、蓋枠20の上端へ向かって高くなるように傾斜させ、上面22bを、上記蓋枠20周壁からの該膨出部22Bの膨出方向へ向かうに従い、蓋枠20の下端へ向かって低くなるように傾斜させることによって、泥溜め容器ガイド面としてもよい。
【0017】
上記実施例では雨水ますを取り上げたが、本発明は雨水浸透ますに適用してもよい。この場合には泥溜め部の周壁にはスリット91Aまたは孔を多数設けて浸透部9Aとし、バケツの周壁にスリット121Aまたは孔を多数設けてバスケット12Aとする。
このような雨水浸透ますにあっては、ます本体に貯溜した雨水はバスケット12Aを介して浸透部9Aから地盤中に浸透し、雨水中の土砂等はバスケット12A中に沈積する。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明では雨水経路に配設されるますの蓋枠と蓋体との間を鎖で連結して、該蓋体が跳ね上がったり、紛失したりすることを防止しても、該ますの底部に設置されているバケツ(バスケット)は該鎖の蓋枠における係止部には干渉せず容易に地上へ取り出すことができるから、産業上利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1〜図4は本発明の一実施例を説明する図である。
【図1】ます使用状態の側断面図
【図2】蓋枠とバケツとの寸法関係を示す説明図
【図3】蓋枠の一側端部拡大断面図
【図4】膨出部の斜視図
【図5】蓋枠周壁から鎖取付けブラケットを設けた場合の説明部分断面図
【図6】他の実施例の膨出部付近の説明斜視図
【図7】雨水浸透ますにおける浸透部およびバスケットの斜視図
【図8】従来のますの側断面図
【符号の説明】
【0020】
1 ます本体
10、20 蓋枠
11 蓋体
22、22A、22B 膨出部
23、23A、23B 鎖係止穴
30 鎖溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水経路に配設され下端部には泥溜め容器を収容した泥溜め部が設定されているますの上端に接続される点検筒の上端に被嵌される蓋枠であって、
該蓋枠上端には蓋体が被着されており、
該蓋枠周壁の一部の肉厚を増すことによって上記泥溜め部の泥溜め容器を上方に取出す際に干渉しない程度に膨出せしめた膨出部を形成し、
該膨出部から周壁内部にかけて下端から内側面に開口する鎖係止穴を貫設し、
一端が該蓋体に接続している鎖を該蓋枠周壁の膨出部の鎖係止穴に通し、
該鎖の他端は該蓋枠に接続した
ことを特徴とするますの蓋枠。
【請求項2】
上記蓋枠周壁の膨出部は、該蓋枠下縁から設けられている請求項1に記載のますの蓋枠。
【請求項3】
上記膨出部の下面および/または上面は、上記蓋枠周壁からの該膨出部の膨出方向へ向かうに従い、下面であれば蓋枠の上端へ向かうように高くなり、上面であれば蓋枠の下端へ向かうように低くなるように傾斜して、泥溜め容器ガイド面とされている請求項1又は請求項2に記載のますの蓋枠。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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