説明

アンテナ取り付け装置

【課題】水平面に対して角度を有する場所においても、パッチアンテナの面(パッチアンテナの形成される基板表面)を、所定の角度に向かせることが可能なアンテナ取り付け装置を提供する。
【解決手段】本発明のアンテナ取り付け装置は、容器と、この容器に収容された液体と、液体より比重の軽い材料で形成され、液体に浮かべられた板部材と、板部材の表面に設けられ、上部面が液体の表面に対して設定された角度を有するアンテナ基板と、上部面に設けられた平面アンテナとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ITS(Intelligent Transport Systems:高度道路交通システム)機器のアンテナを車体に取り付けるアンテナ取り付け装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ITSにより、情報通信技術を用いて人と道路と車両とを情報をやり取りすることにより、交通事故、渋滞などといった道路交通問題を解決しようとしている。
例えば、有料高速道路の料金を収集するETC(Electronic Toll
Collection System)/DSRC(Dedicated Short Range
Communication)システム、渋滞や交通規制などの道路交通情報をリアルタイムに送信するVICS(Vehicle
Information and Communication System)などがある。
【0003】
上記システムの無線通信端末において用いられる車載アンテナとして、パッチアンテナが使用されている。
パッチアンテナは、平板状の基板表面に、基板より小さな面積で形成されており、車載状態においては、電波を車両前方に放射したり、車両前方からの電波を受信したりする。
また、ETC/DSCR、VICSにおいて、パッチアンテナは、アンテナ角度が水平を0度とすると、20度となるように設置する必要がある。
【0004】
このため、パッチアンテナが形成された基板表面が水平に対して20度の角度を有し、車載するための治具がある(例えば、特許文献1参照)。
また、設置したパッチアンテナが20度の角度を有するか否かを検出するため、パッチアンテナに水準器を設けることも可能である(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3088386号
【特許文献2】特開平10−239053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示す治具にあっては、水平面(地球の重力の方向と直角な面)に平行な平地を車両が走行している場合、水平面に対して20度の角度を有する。
しかしながら、坂道などを走行している場合、水平面に対する坂道の角度が20度に対して加わる。
このため、特許文献1に示す治具は、水平面に対して角度を有する場所において、水平面に対して20度の角度にパッチアンテナの面を向けることができない。
【0007】
本発明は、上記の課題を考慮してなされたものであって、水平面に対して角度を有する場所においても、パッチアンテナの面(パッチアンテナの形成される基板表面)を、所定の角度に向かせることが可能なアンテナ取り付け装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明のアンテナ取り付け装置は、容器と、前記容器に収容された液体と、前記液体より比重の軽い材料で形成され、当該液体に浮かべられた板部材と、前記板部材の表面に設けられ、上部面が前記液面に対して設定された角度を有するアンテナ基板と、前記上部面に設けられた平面アンテナとを有することを特徴とする。
【0009】
本発明のアンテナ取り付け装置は、前記板部材が、前記アンテナ基板が設けられる前記上面と逆の裏面に、前記アンテナ基板より重い負荷が設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明のアンテナ取り付け装置は、前記アンテナ基板の上面と、前記液面とが前記設定された角度となるように、前記重りの配置位置を調整することを特徴とする。
【0011】
本発明のアンテナ取り付け装置は、前記液体がエチルアルコール及び蒸留水の混合液、またはダンパーオイルを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、液体の液面が水平面に対して平行となるため、水平面に対して角度のある道を走行している場合や、水平でない場所にアンテナを設置した時でも、この液体に浮かべられている板部材上面に固定された平面アンテナが形成されたアンテナ基板の面を、水平面に対して設定された角度に向けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の第1の実施形態によるアンテナ取り付け装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の液面に対して垂直な上部方向から見たアンテナ取り付け装置の平面図である。
【図3】この発明の第2の実施形態によるアンテナ取り付け装置の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。図1は、この発明の第1の実施形態によるアンテナ取り付け装置の構成例を示す概略ブロック図である。ここで、取り付けるアンテナは、ETC/DSCR及びVICSなどのITS機器のアンテナを想定している。
アンテナ取り付け装置は、容器1、液体2、板部材3、重り4、アンテナ基板6、平面アンテナ7、軸部材12及び固定部材13を有している。
【0015】
容器1は、本実施形態において球殻の形状で構成されているが、この球殻の形状にこだわらずに、三角形、四角形または多角形の殻で構成された容器を用いても良い。殻の厚さは特にこだわらず、場所によって厚さが異なるように構成されてもよい。
液体2は、エタノールと純水との混合溶液、あるいはダンパーオイルなどの腐食しない液体、または電解液でない絶縁性の液体(または流動性のあるゲル状の物質)が用いられている。ここで、容器1において空洞11が形成される量が、容器1に入れられている(収容されている)。
この空洞11は、板部材3の上面に搭載されたアンテナ基板6が球殻の内周面に触れない、液面10とこの液面10に対して垂直方向の球殻の内面との距離を有している。
【0016】
板部材3は、液体2に比較して比重が軽い材料、例えば発泡スチロール、スチロールなどが用いられており、アンテナ基板6及び重り4を取り付けた状態において、液体2に浮く厚さに形成されている。
また、板部材3は、上面(図の上側)にアンテナ基板6が配置され、下面(図の下側)に重り4が装着されている。
次に、板部材3の平面視の形状を説明する。図2は図1のアンテナ取り付け装置における液体2の液面10に対して垂直方向の上部から平面視した図である。この図2から判るように、板部材3は、平面視において、円形、または円形に近い多角形の形状にて形成されている。
【0017】
図1に戻り、重り4は、アンテナ基板6が配置されることにより、板部材3の重心がアンテナ基板6側に移行し、板部材3が反転して、アンテナ基板6の配置された面が液体2と接触しないように、アンテナ基板6の重心を板部材3の下部方向に移動させ、アンテナ基板6が安定して液体2に浮かぶようにするために設けられている。
【0018】
アンテナ基板6は、車載されたETC/DSRCの送受信装置の平面アンテナ7が上面6Sに配置され、下面6Bが板部材3に固定、例えば貼着されている。
また、アンテナ基板6は、液体2の液面10に対して平行な面8と、上面6Sとの成す角度が角度θ(例えば、20度)となるよう、上面6Sと下面6Bとの距離が設定されている。すなわち、液面10に対して、時計と逆回りに角度θの角度を有する構成の場合、図1において、右側が左側よりも、上面6Sと下面6Bとの距離が大きく設定されている。
【0019】
このため、アンテナ基板6に平面的な位置において重さのバラツキが発生し、このアンテナ基板6が搭載されることにより、板部材3における重心がずれる。
結果として、板部材3の上面が液面10に対して平行とならなくなり、アンテナ基板6の上面6Sと液面10とのなす角度が20度からずれてしまう場合がある。
この対策として、アンテナ基板6を搭載した状態で、板部材3の重心が平面視にて板部材3の中央となる、板部材3の下面の位置に重り4を配置し、アンテナ基板6の上面6Sと液面10とのなす角度を20度に設定する。
【0020】
平面アンテナ7は、高速道路の料金所近傍に設置されている外部送受信機100との間で電波101の送受信に用いられる。
また、この平面アンテナ7に対する給電は、RFID(Radio Frequency IDentification)などで用いられている容量性結合及び誘導性結合などの非接触給電を行う。すなわち、アンテナ基板6には図示しない受信制御部が設けられており、この受信制御部が平面アンテナ7と異なる給電アンテナを用いて給電処理を行う。
【0021】
例えば、図示しない車載されたETC/DSRCの送受信装置から所定の周波数により、受信制御部による給電処理が行われる。受信制御部は、この給電により平面アンテナ7に給電するとともに、平面アンテナ7によって受信した受信データを、給電アンテナ等を介して、車載のETC/DSRCの送受信装置へ送信する。
【0022】
容器1は、外周面に接触する平面に対して垂直となる、この接触点において軸部材12の一端に接続されている。軸部材12は、他端が固定部材13に接続されている。
また、固定部材13は、車両のダッシュボード等の固定面200に装着される。
上述した構成により、本実施形態によるアンテナ取り付け装置は、どのような角度を有する位置に固定部材13によって固定されても、また車両が坂道を走行することで傾いたとしても、常に液体2の液面10が水平面に対して平行となるため、アンテナ基板6の上面が水平面と成す角度を、予め設定した上面6Sと下面6Bとの成す角度(例えば20度)に固定する(保つ)ことができる。この結果、平面アンテナ7の電波の送受信の指向方向を、水平面と20度の角度をなすアンテナ基板6の上面6Sに対して垂直方向に保つことができ、道路側等に配置された外部送受信機100との効率の良い通信が可能となる。
【0023】
<第2の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図3は本発明の第2の実施形態によるアンテナ取り付け装置の構成例を示す概略ブロック図である。
第1の実施形態と同様の構成には同一の符号を付して、この説明を省略する。本第2の実施形態と第1の実施形態との違いは、第2の実施形態が第1の実施形態における軸部材12及び固定部材13とを有していない点である。
容器1Bは、球の外周面の一部が平面で切断された形状をしており、切断面が固定面1Sとされる。
【0024】
そして、容器1Bは、固定面1Sが車両のダッシュボード等の固定面200に対して装着される。
効果については、第1の実施形態と同様であり、平面アンテナ7の電波の送受信の指向方向を、水平面と20度の角度をなすアンテナ基板6の上面6Sに対して垂直方向に保つことができ、道路側等に配置された外部送受信機100との効率の良い通信が可能となる。
【0025】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0026】
1,1B…容器
1S…固定面
2…液体
3…板部材
4…重り
6…アンテナ基板
6S…上面
6B…下面
7…平面アンテナ
8…面
10…液面
11…空洞
12…軸部材
13…固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器に収容された液体と、
前記液体より比重の軽い材料で形成され、前記液体に浮かべられた板部材と、
前記板部材の表面に設けられ、上部面が前記液体の表面に対して設定された角度を有するアンテナ基板と、
前記上部面に設けられた平面アンテナと
を有することを特徴とするアンテナ取り付け装置。
【請求項2】
前記板部材が、前記アンテナ基板が設けられる前記上部面と逆の裏面に、前記アンテナ基板より重い負荷が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ取り付け装置。
【請求項3】
前記アンテナ基の板上面と、前記液体の表面とが前記設定された角度となるように、前記重い負荷の配置位置を調整することを特徴とする請求項2に記載のアンテナ取り付け装置。
【請求項4】
前記液体がエチルアルコール及び蒸留水の混合液、またはダンパーオイルを用いることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のアンテナ取り付け装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−195740(P2012−195740A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−57815(P2011−57815)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004330)日本無線株式会社 (1,186)
【Fターム(参考)】