説明

アンテナ装置およびIDタグ読取装置

【課題】広い空間の中央付近の複数のIDタグに対するIDの検出をより確実に行えるアンテナ装置およびIDタグ読取装置を提供すること。
【解決手段】IDタグ読取装置10は、ループをねじることによって形成された複数の小ループが連鎖した形状のループアンテナを複数個平面上にずらして配置したアンテナ装置と、複数のループアンテナをそれぞれ異なる位相で駆動し、かつ駆動する出力電力を制御可能なアンテナ駆動手段と、IDタグと通信し、IDタグに記憶された情報を読取る通信手段と、出力電力が段階的に増加または減少するように前記アンテナ駆動手段を制御ながら通信手段を制御してIDタグの読み取り動作を繰り返す制御手段とを備える。広い空間内をアンテナで仕切る必要がなく、本棚や陳列棚などの広い読取空間内に配置されたIDタグを読み取り可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ装置およびIDタグ読取装置に関するものであり、交流磁界や受信電波から動作電力を得て起動するIDタグと通信し、IDタグに記憶された情報を読取るRFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)システムにおいて、特に広い空間内の複数のIDタグに対するIDの検出をより高精度に行えるアンテナ装置およびIDタグ読取装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、「ISO/IEC15693」規格などで標準化されている公知の電磁誘導方式のIDタグがある。IDタグは交流磁場によって電力を供給されて動作する。しかし、磁束に対してIDタグのアンテナが傾斜している場合や、複数個のIDタグが同じ方向で近接して重なっていることによってIDタグの共振周波数がずれた場合など、IDタグに供給される電力が減少して検出し難くなる。従って交流磁場はある程度の強さが必要である。しかし、磁場が強すぎるとIDタグ内の回路が飽和して正常に通信できなくなってしまう。また、法律による規制があり、所定値以上の電界強度は発生できない。
【0003】
このIDタグへの電力供給および通信を行うためのアンテナ装置として各種の方式が提案されている。例えば、本出願人が出願した下記の特許文献には、任意の向きの複数のRFIDタグに対するID検出をより高精度に行えるIDタグ読取装置が開示されている。このIDタグ読取装置においては、2個のループアンテナを対面配置した対面アンテナを3組備え、軸が互いに直交するように配置した3軸直交対面アンテナを備える。
【特許文献1】特開2006−197513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記したようなIDタグ読み取り装置を図書館や書店の本棚やDVD、CDの陳列棚に適用しようとした場合には、下記のような問題点がある。即ち、本やDVDにIDタグを装着する場合には、タグのアンテナ面は本やDVDの面と並行であり、貼り付け位置は本やDVDのほぼ所定の範囲内の領域に収めることができる。しかし、本棚や陳列棚は横長の空間であり、多数のIDタグが重なって存在する可能性が高いので、棚の側面にループアンテナを配置しても棚の中央部分では磁束密度の低下または共振周波数のずれが生じて電力が十分供給されず、IDが読み取れないという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記した従来技術の課題を解決し、広い空間の中央付近の複数のIDタグに対するIDの検出をより確実に行えるアンテナ装置およびIDタグ読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のアンテナ装置は、ループをねじることによって形成された複数の小ループが連鎖した形状のループアンテナであることを主要な特徴とする。
また、前記したアンテナ装置において、前記したループアンテナ装置を複数個備え、それぞれのループアンテナを平面上にずらして配置した点にも特徴がある。
【0007】
また、前記したアンテナ装置において、前記ループアンテナは、略長方形に形成された前記小ループを直線状に並べて全体が長い長方形の形状をなし、各ループアンテナは前記長い長方形の長辺方向に等間隔にずらして配置されたものである点にも特徴がある。
また、前記したアンテナ装置において、前記ループアンテナは、任意の領域内に略長方形に形成された前記小ループを一筆書きで書ける形状に2次元的に配置した形状をなし、各ループアンテナは前記略長方形に対して斜めにずらして配置されたものである点にも特徴がある。
【0008】
本発明のIDタグ読取装置は、前記したアンテナ装置と、前記アンテナ装置の複数のループアンテナをそれぞれ異なる位相で駆動し、かつ駆動する出力電力を制御可能なアンテナ駆動手段と、交流磁界から動作電力を得て起動するIDタグと通信し、IDタグに記憶された情報を読取る通信手段と、出力電力が段階的に増加または減少するように前記アンテナ駆動手段を制御ながら通信手段を制御してIDタグの読み取り動作を繰り返す制御手段とを備えたことを主要な特徴とする。
【0009】
また、前記したIDタグ読取装置において、前記アンテナ装置は3個のループアンテナを備えた請求項3に記載されたアンテナ装置であり、前記アンテナ駆動手段は3個のループアンテナ装置をそれぞれ相対的な位相が0度、60度、120度となるように駆動する点にも特徴がある。
また、前記したIDタグ読取装置において、前記アンテナ装置は2個のループアンテナを備えた請求項3に記載されたアンテナ装置であり、前記アンテナ駆動手段は2個のループアンテナ装置をそれぞれ相対的な位相が0度、90度となるように駆動する点にも特徴がある。
【発明の効果】
【0010】
本発明のアンテナ装置およびIDタグ読取装置によれば、以下のような効果がある。
(1)1つのアンテナで広い面積にわたってアンテナ線からタグまでの距離を短くすることができ、広範囲のタグを読み取れる。
【0011】
(2)複数のループアンテナをずらして配置し、更に異なる位相で駆動することにより、広い面積にわたってIDタグに十分な電力が供給できるので、ID情報をより確実に検出可能となる。
(3)広い空間内をアンテナで仕切る必要がなく、中央付近においてもIDタグに十分な電力が供給できるので、本棚や陳列棚などの広い読取空間内に配置されたIDタグを読み取り可能となる。
(4)アンテナ線からタグまでの距離を短くすることができるので、タグが任意の方向を向いていても読み取る確率が高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下実施例について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
まず、本発明のIDタグ読み取り装置において読み取るIDタグについて説明する。図7は、公知のIDタグの構成例を示すブロック図である。IDタグ50はタグアンテナ51およびIC52から成っており、ICタグとも呼ばれる。ループ状のタグアンテナ51はキャリア周波数に共振するLC回路を構成している。そして、タグアンテナ51を貫通する交流磁束の変化に基づきタグアンテナ51に電力が励起される。従って、タグアンテナ51のループ平面が磁場の磁束と垂直な方向に向いている場合に最大電力が得られるが、並行である場合には電力は得られない。
【0014】
電源回路53はタグアンテナ51に励起した電力から直流電源を生成し、各回路に供給する。制御・演算用論理回路58は、電源回路53から電源が供給されると、パワーオンリセット回路によってリセットされ、受信信号からクロックを抽出するクロック抽出回路55から供給されるクロック信号に基づき、所定の動作を行う。
【0015】
データ復調回路56はIDタグ読み取り装置から送信される信号を受信、復調して制御・演算用論理回路58に出力する。制御・演算用論理回路58は例えばIDタグ読み取り装置から応答指示命令が受信された場合には、所定のタイミングで記憶回路59に予め記憶されている64ビットのユニークなID(識別)情報をマンチェスタ符号化してデータ変調回路57に出力する。
【0016】
データ変調回路57は、制御・演算用論理回路58から出力された送信データに基づき、タグアンテナ51の負荷を変化させることにより信号を送信する。なお、このIDタグの構成は一例であって、本発明のアンテナ駆動方式は電磁誘導方式であれば公知の任意の構成のIDタグに適用可能である。
【0017】
次に、本棚に本発明を適用し、本に貼り付けられているIDタグのIDを読み取る場合の実施例について説明する。
図1は、本発明のIDタグ読取装置を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。本棚13には、例えばIDタグ50が貼り付けられた本18が収納されている。横長の本棚13の底板14には複数のループアンテナからなるアンテナ装置が収納されており、同軸ケーブル12によってそれぞれIDタグ読取装置10に接続されている。IDタグ読取装置10は更にパソコン(PC)などの上位装置11に接続されている。
【0018】
収納されている本18に貼り付けられているIDタグ50は、本棚の側面と平行に配置されるので、底面14とは垂直となる。しかし、アンテナの導体の近傍や後述するような駆動方法による複数のアンテナによる合成磁界によって、底面14と平行した磁界が発生するので、底面14に配置されたアンテナによってIDタグ50の読み取りが可能となる。なお、本発明の駆動方法によれば本18が倒れていても読み取りは可能である。また、IDタグ50はなるべく本の下方に貼り付けた方が好ましい。
【0019】
図2は、本発明の実施例1のアンテナ装置の構成を示す平面図である。アンテナ装置(底板)14は、銅線あるいは銅板でできた3つのループアンテナ15、16、17を備えている。ループアンテナ15、16、17は、それぞれループを複数回途中でねじることによって形成された複数の小ループが連鎖した形状のループアンテナである。図2においては、連鎖する略長方形(正方形も含む。以下同じ)の小ループが直線状に6個形成され、全体が長い長方形の形状をなしている。
【0020】
アンテナ装置は、底板14内に3個のループアンテナ15、16、17それぞれの位置を棚の長手方向にずらして配置してある。アンテナの位置のずれは、底板14の長手方向における小ループの略長方形の幅を配置するアンテナの数で除算した長さに等しい。即ち、例えば底板14の長手方向における略長方形の幅が15センチメートルであり、アンテナの数が3個であれば、ずれの間隔は5センチメートルとする。このようにすれば、底板14の長手方向におけるアンテナの導体の分布が均一となる。
【0021】
なお、中央部分においては、ねじったアンテナの導体2本が1組となって配置されるのに対し、底板14の端部においては、1本の導体のみが配置され、磁界が中央部分よりも弱くなる。そこで、底板14の端部においては、底板14の長手方向における小さな長方形の幅を中央部分よりも短くしてもよい。
【0022】
図3は、本発明のIDタグ読取装置10の実施例のハードウェア構成を示すブロック図である。IDタグ読取装置10は大きくアンテナ駆動装置40と制御ブロック20に分かれており、図示しない電源部からそれぞれに電力が供給される。アンテナ駆動装置40は、複数のループアンテナ15、16、17のそれぞれと対応してアンテナ駆動回路41を備えている。発振器42は例えば前記規格に基づいた13.56MHzのキャリヤ信号(デジタル信号:矩形波、実際にはキャリヤ周波数の整数倍のクロック信号も)を生成する。
【0023】
アンテナ駆動回路41は、詳細は後述するが、発振器12から供給されるキャリヤ信号から複数の位相のキャリヤ信号を生成し、制御ブロック20の制御に基づき、それぞれのアンテナ15、16、17を所望の位相および電力のキャリヤ信号で駆動する。(実施例1においては、例えばアンテナ15、16、17をそれぞれ60度ずつ位相を変えて同時駆動する。)。
【0024】
制御ブロック20は、CPU21、ROM22、RAM23、IDタグとの送受信データを入出力するデータインターフェイス(I/F)回路24、アンテナ駆動装置40を制御するための制御インターフェイス(I/F)回路25、上位装置11との通信のための外部インターフェイス(I/F)回路26、内部回路を接続するバス等を備えている。CPU21はROM22に記憶されている制御プログラムに基づき、後述する処理を実行する。
【0025】
図4は、アンテナ駆動回路41の構成を示すブロック図である。アンテナ駆動回路41は、位相変換器60、位相切替器61、変調器62、D/A変換器63、出力増幅器64、受信増幅器65、復調器66を備えている。位相変換器60は発振器42から入力される例えば13.56MHzのキャリヤ信号の整数倍のクロック信号に基づき、例えば位相が0度、60度、120度などの複数位相のキャリヤ信号(デジタル信号:矩形波)を出力する。
【0026】
位相変換器60の内部構成は、例えばキャリヤの整数倍のクロック信号によってシフトされるシフトレジスタの直列入力にキャリヤ信号を入力し、出力としてシフトレジスタの所定段目の出力を取り出すものであってもよいし、クロック信号によって歩進するアドレスカウンタの値に従ってROMから各位相の波形情報を読み出すものであってもよい。
【0027】
位相切替器61はゲート群からなり、制御ブロック20からの位相制御情報に従って、位相変換器60から出力される複数種類の位相のキャリヤ信号の中からアンテナ15(16、17)に供給するキャリヤ信号を選択する。変調器62は制御ブロック20からの変調データに基づき、キャリヤ信号を10%〜100%の変調度で振幅変調する。
【0028】
D/A変換器63は、変調されたキャリヤ信号をアナログ信号に変換し、出力増幅器64はD/A変換器63から出力される信号を所望の電力に増幅し、アンテナ15(16、17)を駆動する。各アンテナ15、16、17の接続線はそれぞれのアンテナ15、16、17と対応する受信増幅器65にも接続されている。復調器66はIDタグからの信号の受信、復調、衝突検出を行い、受信データあるいは衝突検出信号を出力する。
【0029】
図5は、変調器62、出力増幅器64等の細部を示すブロック図である。変調器62はANDゲート73によって入力されたデジタルのキャリヤ信号と制御ブロック20から出力されるデジタルの変調データとの論理積を取り、4ビットのキャリヤ信号を出力する。D/A変換器63はこの4ビットキャリヤ信号をD/A変換し、所望の振幅の矩形波のキャリヤ信号を出力する。
【0030】
BPF70はキャリヤの基本周波数のみを通過させるバンドパスフィルタであり、BPF70を通すことにより、正弦波のキャリヤ信号が得られる。出力増幅器64は位相調整器71および電力増幅器72を備えている。位相調整器71は本発明の実施に必須の回路ではない。電力増幅器72は制御ブロック20からの出力制御信号に基づき、所望の電力でアンテナ13を駆動する。
【0031】
図9は、本発明のIDタグの読み取り方法を示す説明図である。図9においては、IDタグP、Q(50)および底板14の長手方向の垂直断面を示している。図中のA、B、Cはそれぞれアンテナ15、16、17の導体であり、棚の中央部分においては2本の導体の組に相当する。また、Aの上部にバーの付いた記号(以下Aバーと記す)を付した導体(図9においてはハッチングを施した○で示す)は導体Aと接続されており、Aと逆方向に電流が流れる導体を示している。
【0032】
導体A等の周囲に記載された矢印はある時点における磁界を示しており、図9の(b)、(c)は(a)の時点からそれぞれキャリヤの位相が60度および120度進んだ時点における磁界の状態を示している。導線Aの近傍にあるIDタグP(50)は底面14とは垂直となるが、導体Aの近傍においては図示するような底面14と平行し、IDタグPと直角な磁界が発生する。従って、底面14に配置された導体AによってIDタグPに電力が供給され、IDタグPの読み取りが可能となる。
【0033】
しかし、IDタグQのようにIDタグが導体AおよびAバーが形成する略長方形のちょうど中央付近にある場合には、導体Aによって発生する磁界はIDタグQと平行であり、導体AからIDタグQには電力は供給されない。また、導体B、Cからも距離があり、磁界の方向も直角ではないので供給される電力は少なくなる。
【0034】
そこで、本発明においては、位置をずらした3個の導体A、B、Cををそれぞれ60度ずつ位相を変えて同時駆動する。すると、(b)の時点においては、導体B、Cに同じ方向の磁界が発生し、これらの磁界の合成磁界によってIDタグQに十分な電力を供給可能となる。
【0035】
また、3個の導体A、B、Cを位相を60度ずつ変えて同時駆動することにより、合成磁界は図9(a)、(b)、(c)と時間と共に底板14上を長手方向に移動することになり、読み取り不能な位置が非常に減少すると共に読み取り可能な領域(底板14からの距離)が増加する。
【0036】
更に、本発明においては複数のアンテナを同時駆動することにより駆動するアンテナや駆動位相の切り替え時間が不要であり、ID検出の処理時間を短縮することができる。なお、検出距離や検出精度を向上させるために、必要に応じて、導体(アンテナ)を1個ずつあるいは2個ずつ同時に駆動するモードや複数の導体(アンテナ)を同相で駆動するモードを備えてもよい。
【0037】
次に、IDタグ読取装置における読み取り動作について説明する。
図8は、本発明のIDタグ読み取り処理の内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば周期的にCPU21により実行される。S10においては、それぞれ所望の位相のキャリヤ信号が発生するように位相切替器61を制御し、また駆動電力が最低となるように電力増幅器72を制御する。なお、実施例1においては3つのアンテナ15、16、17をそれぞれ60度ずつ位相を変えて同時駆動する。
【0038】
S11においては、公知のプロトコルに基づき、IDタグからIDを読み取るためのコマンドを送出する。コマンドは符号化されてデータI/F24を介して変調器62に入力され、キャリヤが変調される。各IDタグは例えば応答指示コマンドを受信すると、所定のタイミングでID情報を送信する。S12においては、IDタグ50からの応答が有ったか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS16に移行するが、肯定の場合にはS13に移行する。
【0039】
S13においては、複数のIDタグからの応答の衝突が有ったか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS15に移行するが、肯定の場合にはS14に移行する。なお、IDタグは応答として固有のID情報を送信するが、マンチェスタ符号を使用しているので、複数のIDタグから応答があった場合にはデータ中の論理値0と1が重なった場合に0でも1でもない符号が受信されることにより復調器66において衝突が検出できる。
【0040】
S14においては、衝突が検出されたビット位置に基づき、応答するIDタグを限定させるコマンド、例えばその衝突ビット位置の論理値が1のIDタグのみ応答するように指示するコマンドを送出し、S11に戻る。S15においては、受信したID情報を保存し、該当するIDタグに対して、応答を停止させるコマンドを送出してS11に戻る。
【0041】
S16においては、アンテナ駆動電力が予め定められた最大値に達しているか否かが判定され、判定結果が否定の場合にはS17に移行するが、肯定の場合にはS18に移行する。S17においては、アンテナ駆動電力が1ステップ増加するように電力増幅器72を制御し、S11に移行する。
【0042】
S19においては、検出された全てのID情報から重複するデータを排除する。S20においては、ID情報を上位装置へ出力する。以上のような処理によって、全てのID情報を読み取ることができる。
以上のように、最初は低電力でIDの読み取りを行い、読み取れたIDタグの応答を停止させ、段階的に電力を上げていくことにより、アンテナ近傍のIDタグが大電力によって通信不能となる問題を解決している。なお、最初に最大電力にて読み取りを開始し、段階的に電力を下げていってもよい。
【実施例2】
【0043】
実施例1においては、本発明を本棚に適用する例を開示したが、例えばIDタグが貼り付けられた文房具などの小箱が任意の向きで収納された広い正方形の箱の底板に第1実施例の構成を適用しようとすると、底板およびアンテナの導体の双方に垂直な方向を向いているIDタグが読み取れないという課題がある。実施例2はこの課題を解決するものであり、第1実施例のアンテナの組を、それぞれの向きが直角をなすように2組配置したものである。
【0044】
図6は、本発明の実施例2のアンテナ装置の構成を示す平面図である。図6において、長方形の底板90には、略長方形の小ループが横方向に連鎖する2個のループアンテナ93、94が長辺と平行な方向に略長方形の幅の半分だけ位置をずらして配置されている。また、略長方形の小ループが縦方向に連鎖する2個のループアンテナ91、92が短辺と平行な方向に略長方形の幅の半分だけ位置をずらして配置されている。
【0045】
実施例2におけるアンテナの第1の駆動方式について説明する。第1の駆動方式においては、アンテナ91、92の内の1つおよびアンテナ93、94の内の1つをそれぞれ選択し、選択された2つのアンテナを同相にて同時駆動する。アンテナの組み合わせは、[91,94][91,93][92,94][92,93]の4種類となり、それぞれの組み合わせについて、図8に示すように順次出力を増加させながら読み取りを行う。なお、駆動するアンテナの組み合わせ方や位相は任意に選択可能であり、それぞれの組み合わせで発生するヌル点(タグの読み出しが不能な位置)が異なるので、複数の組み合わせで読み取りを実施することにより相互に補完することができる。
【0046】
実施例2におけるアンテナの第2の駆動方式について説明する。第2の駆動方式は、実施例1と同様に、2個のループアンテナ93、94をそれぞれ相対位相が0度および90度となるような位相で同時駆動する。また、2個のループアンテナ91、92もそれぞれ相対位相が0度および90度となるような位相で同時駆動する。4個のアンテナを同時駆動してもよいし、2個のループアンテナ93、94のみを駆動し、その後2個のループアンテナ91、92のみを駆動するようにしてもよい。
【0047】
以上のような構成とすることにより、実施例2においては、底板から一定の距離内にあるIDタグであればIDタグが任意の方向を向いていても読み取ることができる。なお実施例2においては、縦方向および横方向にずらして配置するループアンテナの数をそれぞれ2個としているが、個数はそれぞれ2個以上の任意の整数個であってもかまわない。この場合、アンテナをずらす距離は略長方形の幅を個数で除算した距離とし、駆動位相は180度を個数で除算した角度ずつ位相をずらして駆動する。
【実施例3】
【0048】
図10は、本発明の実施例3のアンテナ装置の構成を示す平面図である。図10(a)は実施例1の変形例である。図2に示す実施例1においては、ループをねじった部分においては、2本のアンテナの導体が隣接して配置されていたが、図10(a)に示す例においては、底板の長辺に沿った部分においてループをねじり、底板の中央部分においては、例えばアンテナ95の導体が1本づつ等間隔で配置されている。なおこの例においては、2個のアンテナ95、96をずらして配置してあるが、個数は3個以上でもよい。このような形状とすることにより、実施例1と較べて単位面積当たりのアンテナ導体の密度が増加する。
【0049】
図10(b)は、連鎖する小ループを2次元的に配置したアンテナ97、98を斜めにずらして配置した例である。2個のループアンテナ97、98は、任意の形状(図10(b)では大きな長方形)の領域内に略長方形に形成された小ループを一筆書きで書ける任意の形状に2次元的に配置した形状をなし、各ループアンテナ97、98は略長方形に対して斜めにずらして配置されている。2個のループアンテナ97、98はそれぞれ相対位相が0度および90度となるような位相で同時駆動される。なおアンテナの個数は3個以上でもよい。このような形状とすることにより、任意の形状および広さの底板に一定の面密度でアンテナを張り巡らせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明のIDタグ読取装置を含むシステム全体の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施例1のアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【図3】本発明のIDタグ読取装置10の実施例のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図4】アンテナ駆動回路41の構成を示すブロック図である。
【図5】変調器62、出力増幅器64等の細部を示すブロック図である。
【図6】本発明の実施例2のアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【図7】公知のIDタグの構成例を示すブロック図である。
【図8】本発明のIDタグ読み取り処理の内容を示すフローチャートである。
【図9】本発明のIDタグの読み取り方法を示す説明図である。
【図10】本発明の実施例3のアンテナ装置の構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0051】
10…IDタグ読み取り装置
11…上位装置(PC)
12…伝送ケーブル
13…本棚
14…底板
18…本
50…IDタグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ループをねじることによって形成された複数の小ループが連鎖した形状のループアンテナであることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のループアンテナ装置を複数個備え、それぞれのループアンテナを平面上にずらして配置したことを特徴とするアンテナ装置。
【請求項3】
前記ループアンテナは、略長方形に形成された前記小ループを直線状に並べて全体が長い長方形の形状をなし、各ループアンテナは前記長い長方形の長辺方向に等間隔にずらして配置されたものであることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
前記ループアンテナは、任意の領域内に略長方形に形成された前記小ループを一筆書きで書ける形状に2次元的に配置した形状をなし、各ループアンテナは前記略長方形に対して斜めにずらして配置されたものであることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項5】
請求項2に記載のアンテナ装置と、
前記アンテナ装置の複数のループアンテナをそれぞれ異なる位相で駆動し、かつ駆動する出力電力を制御可能なアンテナ駆動手段と、
交流磁界から動作電力を得て起動するIDタグと通信し、IDタグに記憶された情報を読取る通信手段と、
出力電力が段階的に増加または減少するように前記アンテナ駆動手段を制御ながら通信手段を制御してIDタグの読み取り動作を繰り返す制御手段と
を備えたことを特徴とするIDタグ読取装置。
【請求項6】
前記アンテナ装置は3個のループアンテナを備えた請求項3に記載されたアンテナ装置であり、
前記アンテナ駆動手段は3個のループアンテナ装置をそれぞれ相対的な位相が0度、60度、120度となるように駆動することを特徴とする請求項5に記載のIDタグ読取装置。
【請求項7】
前記アンテナ装置は2個のループアンテナを備えた請求項3に記載されたアンテナ装置であり、
前記アンテナ駆動手段は2個のループアンテナ装置をそれぞれ相対的な位相が0度、90度となるように駆動することを特徴とする請求項5に記載のIDタグ読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−109317(P2008−109317A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−289299(P2006−289299)
【出願日】平成18年10月25日(2006.10.25)
【出願人】(397054303)セントラルエンジニアリング株式会社 (6)
【Fターム(参考)】