説明

インサート部品及びこれを用いた樹脂成形品

【課題】樹脂成形時に電子部品の損傷を防ぐことが可能なインサート部品及びこれを用いた樹脂成形品の提供を目的とする。
【解決手段】少なくとも、センサ素子17と、センサ素子17に接続される端子14と、センサ素子17及び端子14の端部を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成されるパッケージ樹脂部13とを有する電子部品12と、端子14により電子部品12と接続される回路基板15と、回路基板15が設置される基台16と、を有し、基台16には、少なくともパッケージ樹脂部13から端子14が出ている側の面13aの反対側の面13bが当接する壁部16aが設けられていることを特徴とするインサート部品11を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート部品及びこれを用いた樹脂成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6に従来のインサート部品31の斜視図を示し、図7に従来のインサート部品31の外周を樹脂モールドした従来の樹脂成形品41の断面図を示す。図6、7に示すように、インサート部品31は、センサ素子32と、センサ素子32に接続された端子33と、センサ素子32と端子33の端部を一体的にエポキシ樹脂により樹脂モールドすることにより成型されたパッケージ樹脂部34とからなる電子部品35と、電子部品35と接続される回路基板36と、回路基板36が設置される基台37とからなる。また、従来の樹脂成形品41は、インサート部品31の外周を溶融樹脂により樹脂モールドし、インサート部品31の外周に樹脂部38が形成されることにより樹脂成形される。
【0003】
このようにインサート部品31の外周を溶融樹脂により樹脂モールドすることにより、電子部品35及び回路基板36の保護をすることや、電子部品35及び回路基板36への水の流入を防ぐことが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−12633号公報
【特許文献2】特開2009−90577号公報
【特許文献3】特開2007−331330号公報
【特許文献4】特開2006−216856号公報
【特許文献5】特開2004−237508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の樹脂成形品41を樹脂成形するためにインサート部品31の外周を溶融樹脂により樹脂モールドする際に、図7に示すように、パッケージ樹脂部34から端子33が出ている側の面39と、この端子33が出ている側の面39の反対側の面40との間に圧力差(fj1−fj2)が生じ、端子33とパッケージ樹脂部34との間に牽引力fhが発生する場合がある。このとき、牽引力fhによって、電子部品35が、パッケージ樹脂部34内で接続されているセンサ素子32と端子33とが外れてしまうなどの損傷を受け、樹脂成形品41の樹脂成形後に電子部品35の出力が著しく低減又は出力が0になってしまう問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、樹脂成形時に電子部品の損傷を防ぐことが可能なインサート部品及びこれを用いた樹脂成形品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、少なくとも、センサ素子と、前記センサ素子に接続される端子と、前記センサ素子及び前記端子の端部を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成されるパッケージ樹脂部とを有する電子部品と、前記端子により前記電子部品と接続される回路基板と、前記回路基板が設置される基台と、を有し、前記基台には、前記電子部品の前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面の反対側の面が当接する壁部が設けられていることを特徴とするインサート部品を提供するものである。
【0008】
前記壁部は、更に、前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面以外の面に当接するように形成されていてもよい。
【0009】
前記回路基板は、一つの辺を共有する一組の角をそれぞれ矩形状に切り取るように形成された一組の切り欠き部を有し、前記基台は、前記回路基板に形成された前記切り欠き部の一部が側面に当接する第一突起部を有していてもよい。
【0010】
前記回路基板は、前記回路基板を貫通するように形成された貫通孔を有し、前記基台は、前記回路基板に形成された前記貫通孔に挿通される第二突起部を有していてもよい。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために成されたものであり、少なくとも、センサ素子と、前記センサ素子に接続される端子と、前記センサ素子及び前記端子の端部を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成されるパッケージ樹脂部とを有する電子部品と、前記端子により前記電子部品と接続される回路基板と、前記回路基板が設置される基台と、前記電子部品、前記回路基板及び前記基台を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成される樹脂部と、を有し、前記基台には、前記電子部品の前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面の反対側の面が当接する壁部が設けられていることを特徴とする樹脂成形品を提供するものである。
【0012】
前記壁部は、更に、前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面以外の面に当接するように形成されていてもよい。
【0013】
前記回路基板は、一つの辺を共有する一組の角をそれぞれ矩形状に切り取るように形成された一組の切り欠き部を有し、前記基台は、前記回路基板に形成された前記切り欠き部の一部が側面に当接する第一突起部を有していてもよい。
【0014】
前記回路基板は、前記回路基板を貫通するように形成された貫通孔を有し、
前記基台は、前記回路基板に形成された前記貫通孔に挿通される第二突起部を有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、樹脂成形時に電子部品の損傷を防ぐことが可能なインサート部品及びこれを用いた樹脂成形品の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るインサート部品11の斜視図。
【図2】本発明の実施形態に係るインサート部品11のX−X’断面図。
【図3】本発明の実施形態に係るインサート部品11のパッケージ樹脂部13の形状及び寸法を説明する説明図。
【図4】本発明の実施形態に係る樹脂成形品21の側断面図。
【図5】本発明の実施形態に係るインサート部品11及び樹脂成形品21の作用を説明する説明図。
【図6】従来のインサート部品31の斜視図。
【図7】従来の樹脂成形品41の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の好適な実施形態に係るインサート部品11及びこれを用いた樹脂成形品21について添付図に従って説明する。
【0018】
(インサート部品11及び樹脂成形品21の構成)
図1は、本発明の実施形態に係るインサート部品11の斜視図である。また、図2は、本発明の実施形態に係るインサート部品11のX−X’断面図である。
【0019】
本発明の好適な実施形態に係るインサート部品11は、図1及び図2に示すように、例えば回転センサに用いられるインサート部品11であって、少なくとも、センサ素子17と、センサ素子17に接続される端子14と、センサ素子17及び端子14の端部を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成されるパッケージ樹脂部13とを有する電子部品12と、電子部品12と接続される回路基板15と、回路基板15が設置される基台16と、を有し、基台16には、少なくともパッケージ樹脂部13から端子14が出ている側の面である第一面13aの反対側の面である第二面13bが当接する壁部16aが設けられているものである。
【0020】
センサ素子17は、例えば、ホール素子、MR(Magneto−Resistive:磁気抵抗効果)素子又はGMR(Giant Magneto−Resistive:巨大磁気抵抗効果)素子等を用いることができる。
【0021】
端子14は、導体からなり、センサ素子17と接続される。端子14は、本実施形態において、断面矩形状に形成される。端子14を断面矩形状に形成することで、回路基板15と接続する際に回路基板15と接触する面積が広くなるため端子14と回路基板15との接続を強くすることができる。また、インサート部品11の外周を樹脂モールドする際、回路基板15と端子14との接続が外れるという損傷を低減することが可能である。なお、端子14の断面形状は、これに限定されず、断面円形状等に形成することも可能である。
【0022】
パッケージ樹脂部13は、センサ素子17及び端子14の端部を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成される。また、パッケージ樹脂部13は、センサ素子17及び端子14の端部の外周全体を被うように形成される。パッケージ樹脂部13は、耐水性や良好な電気絶縁性を有していることが好ましく、例えば、エポキシ樹脂等からなるものとしてもよい。
【0023】
回路基板15は、端子14を介して電子部品12内のセンサ素子17と接続される。回路基板15は、はんだ付けにより端子14と接続される。回路基板15は、本実施形態において、切り欠き部15b及び貫通孔15cが形成される。
【0024】
切り欠き部15bは、回路基板15の一つの辺を共有する一組の角をそれぞれ矩形状に切り取るように形成される。これにより、回路基板15は、略凸字状に形成される。切り欠き部15bは、後述する基台16に形成された第一突起部16bの側面の一部に接する位置に形成される。
【0025】
貫通孔15cは、回路基板15の切り欠き部15bが形成された反対側の一部に回路基板15を貫通するように形成される。貫通孔15cには、後述する基台16に形成された第二突起部16cが挿通される。
【0026】
基台16には、回路基板15が設置される。このとき、電子部品12のパッケージ樹脂部13の下面13eは、図2に示すように基台16に接触させる。これにより、インサート部品11の外周を樹脂モールドする際、溶融樹脂により生じるパッケージ樹脂部13の上下方向の圧力差を低減又は0とすることができる。これにより、端子14の上下方向の曲げを低減又は防止することができ、端子14の上下方向の曲げによる端子14に働く牽引力を低減又は0とすることが可能である。基台16は、絶縁体からなるものであればよいが、本実施形態においては、インサート部品11の軽量化を考慮してナイロン(PA)等の樹脂からなるものとした。基台16には、少なくともパッケージ樹脂部13から端子14が出ている面である第一面13aの反対側の面である第二面13bが当接する壁部16aが設けられている。壁部16aは、本実施形態においては、基台16から垂直方向(図2で言えば、上下方向)に立ち上がるように形成される。壁部16aは、本実施形態においては、基台16の一部であるものとしたが、別部材を用いて壁部16aを形成してもよい。
【0027】
また、基台16には、更に回路基板15に形成された切り欠き部15bの一部が側面に当接する円柱状の第一突起部16bが形成され、回路基板15に形成された貫通孔15cに挿通される円柱状の第二突起部16cが形成される。
【0028】
ここで、パッケージ樹脂部13の形状及び寸法について図3を用いて説明する。図3は、本発明の実施形態に係るインサート部品11のパッケージ樹脂部13の形状及び寸法を説明する説明図である。図3は、パッケージ樹脂部13から端子14が出ている側の面である第一面13a側から電子部品12を見たときの図である。パッケージ樹脂部13は、本実施形態において、樹脂モールドの際に略六角柱状に形成される。パッケージ樹脂部13の第一面13a及び第二面13bは、図3に示すように、長方形(以下、パッケージ樹脂部13の寸法を説明する際に、長方形状部とする)の上に該長方形の横の長さに等しい下底を有する等脚台形(以下、パッケージ樹脂部13の寸法を説明する際に、台形状部とする)を載せたような六角形を形成している。本実施形態におけるパッケージ樹脂部13の寸法は、長方形状部の縦の長さcを0.54mm、横の長さbを4.1mmとし、台形状部の縦の長さdを0.75mm、下底の長さを長方形状部の横の長さと等しく4.1mm、上底の長さaを2.6mmとした。また、本実施形態における略六角形状のパッケージ樹脂部13の第1面13aと第2面13bとの間の距離(図4における、横方向の長さ)は3.9mmとした。
【0029】
(インサート部品11及び樹脂成形品21の作用・効果)
本発明の作用・効果を添付図に従って説明する。
【0030】
図5は、本発明の実施形態に係るインサート部品11及び樹脂成形品21の作用を説明する説明図である。
【0031】
インサート部品11の基台16に少なくともパッケージ樹脂部13から端子14が出ている側の面である第一面13aの反対側の第二面13bが当接する壁部16aが設けられていることにより、インサート部品11の外周を溶融樹脂により樹脂モールドする際に、第一面13aが溶融樹脂から受ける力Fjと第二面13bが壁部16aから受ける力Fkが釣り合うため、溶融樹脂によって生じる第一面13a、第二面13bの間に生じる圧力差による端子14の牽引力を低減又は0にすることができる。これにより、端子14とセンサ素子17との接続が外れるのを低減又は防止することができ、樹脂成形時に電子部品12の損傷を防ぐことが可能となる。
【0032】
また、切り欠き部15bの一部を第一突起部16bの側面に当接させ、貫通孔15cに第二突起部16cを挿通させることにより、インサート部品11の外周を溶融樹脂により樹脂モールドする際、回路基板15がずれるのを防ぐとともに、回路基板15を基台16に設置するときの位置決めを容易にすることができる。これにより、樹脂成形品21の樹脂成形後、電子部品12を所望の正確な位置に配置することができるという効果がある。
【0033】
(その他の実施形態)
また、本発明の実施形態は、上記に限定されず種々の変更が可能である。
【0034】
まず、例えば、壁部16aは、本実施形態において、第二面13bにのみ当接するものとしたが、第二面13bの他に更に、第一面13a以外の面である側面13c、13dにも当接するように壁部16aを形成してもよい。
【0035】
側面13c、13dにも当接するように壁部を形成することにより、インサート部品11の外周を溶融樹脂により樹脂モールドする際、側面13c、13dに働く圧力差を低減又は0にすることができ、端子14と交叉する方向の端子14の曲げを低減又は防止することが可能である。これにより、端子14の曲げによる端子14に働く牽引力を低減又は防止することができるという効果を奏する。
【0036】
更に、本実施形態において、パッケージ樹脂部13の第二面13bが基台16に対する垂直方向(図2で言えば、上下方向)に平行であるため、壁部16aは、基台16に対して垂直方向に立ち上がるように形成したが、第二面13bが基台16に対して垂直方向に平行でない場合は、斜め方向に立ち上がったり、又は斜め方向に立ち下がるように形成してもよい。
【0037】
また、壁部16aは、本実施形態において、第二面13bの全部に当接するものとしたが、第二面13bの一部のみに当接するものとしてもよい。
【0038】
また、パッケージ樹脂部13の第二面13bの形状は、三角形や四角形、更には少なくとも一部に曲面を有する形状であってもよい。これに伴って、第二面13bに当接する壁部16aの形状を変更することも可能である。
【0039】
また、本実施形態において、パッケージ樹脂部13は、第一面13aと第二面13bとを同一形状とし、且つ第一面13aと第二面13bとが平行となるように形成したが、第一面13aと第二面13bとを同一形状としなくても、また第一面13aと第二面13bとが平行となるように形成しなくてもよい。
【符号の説明】
【0040】
11、31 インサート部品
21、41 樹脂成形品
12、35 電子部品
13、34 パッケージ樹脂部
13a 第一面
13b 第二面
14、33 端子
15、36 回路基板
15b 切り欠き部
15c 貫通孔
16、37 基台
17、32 センサ素子
16a 壁部
16b 第一突起部
16c 第二突起部
22、38 樹脂部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、センサ素子と、前記センサ素子に接続される端子と、前記センサ素子及び前記端子の端部を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成されるパッケージ樹脂部とを有する電子部品と、
前記端子により前記電子部品と接続される回路基板と、
前記回路基板が設置される基台と、
を有し、
前記基台には、前記電子部品の前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面の反対側の面が当接する壁部が設けられていることを特徴とするインサート部品。
【請求項2】
前記壁部は、更に、前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面以外の面に当接するように形成されていることを特徴とする請求項1記載のインサート部品。
【請求項3】
前記回路基板は、一つの辺を共有する一組の角をそれぞれ矩形状に切り取るように形成された一組の切り欠き部を有し、
前記基台は、前記回路基板に形成された前記切り欠き部の一部が側面に当接する第一突起部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインサート部品。
【請求項4】
前記回路基板は、前記回路基板を貫通するように形成された貫通孔を有し、
前記基台は、前記回路基板に形成された前記貫通孔に挿通される第二突起部を有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインサート部品。
【請求項5】
少なくとも、センサ素子と、前記センサ素子に接続される端子と、前記センサ素子及び前記端子の端部を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成されるパッケージ樹脂部とを有する電子部品と、
前記端子により前記電子部品と接続される回路基板と、
前記回路基板が設置される基台と、
前記電子部品、前記回路基板及び前記基台を樹脂により一体的に樹脂モールドすることにより形成される樹脂部と、
を有し、
前記基台には、前記電子部品の前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面の反対側の面が当接する壁部が設けられていることを特徴とする樹脂成形品。
【請求項6】
前記壁部は、更に、前記パッケージ樹脂部から前記端子が出ている側の面以外の面に当接するように形成されていることを特徴とする請求項5記載の樹脂成形品。
【請求項7】
前記回路基板は、一つの辺を共有する一組の角をそれぞれ矩形状に切り取るように形成された一組の切り欠き部を有し、
前記基台は、前記回路基板に形成された前記切り欠き部の一部が側面に当接する第一突起部を有することを特徴とする請求項5又は6記載の樹脂成形品。
【請求項8】
前記回路基板は、前記回路基板を貫通するように形成された貫通孔を有し、
前記基台は、前記回路基板に形成された前記貫通孔に挿通される第二突起部を有することを特徴とする請求項5〜7の何れかに記載の樹脂成形品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−25086(P2012−25086A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−167657(P2010−167657)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000005120)日立電線株式会社 (3,358)
【Fターム(参考)】