説明

インバータ装置

【課題】インバータ装置を複数台備え、各インバータ装置の内部の整流出力端を並列接続し、複数台のインバータ装置それぞれを動作させる電動機電源システムとして好適なインバータ装置を提供する。
【解決手段】電動機電源システム2は複数K台(K=2、3・・・N)のインバータ装置の1台目インバータ装置10と、2台目インバータ装置20と、N台目インバータ装置30とから構成され、インバータ装置10,20,30には、商用交流電源1から印加される電圧を整流電圧に変換するコンバータ部11,21,31と、この整流電圧を平滑するための平滑回路部12,22,32として設けられるリアクトル13,23,33と、平滑コンデンサ14,24,34と、リアクトル15,25,35の直列接続回路と、平滑コンデンサの両端電圧を所望の周波数・振幅の交流電圧に変換しつつ電動機17,27,37に給電するインバータ部16,26,36とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、交流電源から印加される交流電圧を所望の周波数・振幅の交流電圧に変換しつつ電動機に給電するインバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、この種のインバータ装置として、下記特許文献1に記載の回路構成などの従来例を示す回路構成図である。
【0003】
このインバータ装置50には、商用電源などの交流電源1から印加される交流電圧を整流電圧に変換して出力する、例えば、ダイオードをブリッジ接続してなるコンバータ部51と、この整流電圧を平滑するための平滑回路部52として設けられるリアクトル53と平滑コンデンサ54の直列接続回路と、平滑コンデンサ54の両端電圧を所望の周波数・振幅の交流電圧に変換しつつ電動機56に給電する、例えば、絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ(IGBT)とダイオードの逆並列回路をブリッジ接続してなるインバータ部55とを備えている。
【0004】
図4に示した従来のインバータ装置50において、コンバータ部51の正側出力端にその一端が接続されるアクトル53は、交流電源1からコンバータ部51へのパルス的な入力電流のピーク値を抑制しつつ、平滑コンデンサ54の両端電圧を平滑するために設けられている。
【0005】
通常、リアクトル53の容量値は、インバータ装置50が1台ずつ単独で運転されることを前提条件にして設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−261973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図4に示した従来のインバータ装置50を複数台備え、それぞれのインバータ装置50に備えるコンバータ部51の出力の両端端子P0 ,N0 それぞれを互いに並列接続しつつ、この複数台のインバータ装置それぞれを動作させるようにした構成の電動機電源システム(以下、単に電動機電源システムと称する)は、例えば機械設備としての巻取機械を駆動する複数の電動機などに供される。
【0008】
このような電動機電源システムは、一方の前記インバータ装置の負荷としての電動機が駆動動作状態にあり、他方の前記インバータ装置の負荷としての電動機が制動動作状態になる用途に用いられると、この制動動作状態の電動機からの回生電力を、駆動動作状態の電動機への駆動電力として流用できることから、この電動機電源システムの全体の省エネが図れることを狙って採用されることが多い。
【0009】
しかしながら、上述のごとく、図4に示した従来のインバータ装置50のリアクトル53の容量値はインバータ装置50が1台ずつ単独で運転されることを前提条件にして設定されていることから、このリアクトル53の容量値では、前記電動機電源システムにおいて、負荷としての何れかの電動機の制動動作状態に起因する回生電流などにより、何れかのインバータ装置50のリアクトル55の容量値が不足し、その結果、この電動機電源システムの安定動作を阻害する要因になることがあった。
【0010】
また、前記電動機電源システムにおいて並列接続される各インバータ装置の定格出力容量が同一値でない構成のときに、小さい容量のインバータ装置50におけるリアクトル55の当初の容量値では不足し、その結果、この電動機電源システムの安定動作を阻害する要因になることもあった。
【0011】
この発明の目的は、上記問題点を解消するために、インバータ装置を複数台備えた電動機電源システムに好適なインバータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この第1の発明は、交流電源から印加される交流電圧を整流電圧に変換して出力するコンバータ部と、この整流電圧を平滑するための平滑回路部と、この平滑された電圧を所望の周波数・振幅の交流電圧に変換しつつ電動機に給電するインバータ部とから形成されるインバータ装置において、
前記平滑回路部は、前記コンバータ部の正側出力端に一端が接続される第1リアクトルと、この第1リアクトルの他端に一端が接続される平滑コンデンサと、この平滑コンデンサの他端と前記コンバータ部の負側出力端との間に接続される第2リアクトルとで形成すると共に、前記平滑コンデンサの両端電圧を前記インバータ部に印加するようにしたことを特徴とする。
【0013】
また第2の発明は、前記第1の発明のインバータ装置において、前記コンバータ部の出力の両端それぞれを互いに並列接続しつつ、この並列接続されたインバータ装置それぞれを動作させるようにしたことを特徴とする。
【0014】
さらに第3の発明は、前記第1または第2の発明のインバータ装置において、前記第2リアクトルを着脱可能にしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、それぞれのインバータ装置を構成する平滑回路部を第1リアクトルと平滑コンデンサと第2リアクトルの直列接続回路で形成し、第1リアクトルおよび第2リアクトルの容量値を適宜設定することにより、先述のようなリアクトルの容量不足に起因する電動機電源システムの安定動作を阻害する要因を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明の実施の形態を示す回路接続図
【図2】この発明の第1の実施例を示す回路構成図
【図3】この発明の第2の実施例を示す回路構成図
【図4】従来例を示す回路構成図
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、この発明のインバータ装置の実施の形態を示す電動機電源システムの回路接続図であり、この電動機電源システム2は複数(K)台(K=2、3・・・N)のインバータ装置の内の1台目のインバータ装置10と、2台目のインバータ装置20と、N台目のインバータ装置30とから構成されている。
【0018】
図1に示したインバータ装置10には、商用電源などの交流電源1から印加される交流電圧を整流電圧に変換して出力する、例えば、ダイオードをブリッジ接続してなるコンバータ部11と、この整流電圧を平滑するための平滑回路部12として設けられる第1リアクトルとしてのリアクトル13と、平滑コンデンサ14と、第2リアクトルとしてのリアクトル15の直列接続回路と、平滑コンデンサ14の両端電圧を所望の周波数・振幅の交流電圧に変換しつつ電動機17に給電する、例えば、絶縁ゲート・バイポーラトランジスタ(IGBT)とダイオードの逆並列回路をブリッジ接続してなるインバータ部16とを備えている。
【0019】
同様に、インバータ装置20には、交流電源1から印加される交流電圧を整流電圧に変換して出力するコンバータ部21と、この整流電圧を平滑するための平滑回路部22として設けられる第1リアクトルとしてのリアクトル23と、平滑コンデンサ24と、第2リアクトルとしてのリアクトル25の直列接続回路と、平滑コンデンサ24の両端電圧を所望の交流電圧に変換しつつ電動機27に給電するインバータ部26とを備えている。
【0020】
また同様に、インバータ装置30には、交流電源1から印加される交流電圧を整流電圧に変換して出力するコンバータ部31と、この整流電圧を平滑するための平滑回路部32として設けられる第1リアクトルとしてのリアクトル33と、平滑コンデンサ34と、第2リアクトルとしてのリアクトル35の直列接続回路と、平滑コンデンサ34の両端電圧を所望の交流電圧に変換しつつ電動機37に給電するインバータ部36とを備えている。
【0021】
すなわち、図1に示した電動機電源システム2の回路接続から明らかなように、コンバータ部11,コンバータ部21,コンバータ部31それぞれの出力端を互いに並列接続すると共に、平滑回路部12,22,32それぞれを2個のリアクトルと1個のコンデンサとからなる平衡型回路に形成し、平滑コンデンサ14,平滑コンデンサ24,平滑コンデンサ34それぞれの両端にインバータ部16,インバータ部26,インバータ部36それぞれを接続する回路構成にすることにより、インバータ装置10,インバータ装置20,インバータ装置30それぞれをほぼ対称の回路構成にしている。
【0022】
このような対称の回路構成によって、例えば、出力の1相が接地されることが多い交流電源1から各インバータ装置と各電動機とを介して流れる接地電流はリアクトル13(リアクトル23或いはリアクトル33)と、リアクトル15(リアクトル25或いはリアクトル35)とで抑制されるので、前記接地電流による各インバータ装置間の干渉動作を最小限にする配慮もなされている。
【0023】
図2は、この発明のインバータ装置の第1の実施例を示す電動機電源システムの回路構成図であり、この図において、図1に示した電動機電源システムの回路接続図と同一機能を有するものには同一符号を付して、ここではその説明を省略する。
【0024】
すなわち、1台目のインバータ装置10aに備えるコンバータ部11の出力の両端端子P1 ,N1 とし、2台目のインバータ装置20aに備えるコンバータ部21の出力の両端端子P2 ,N2 とし、端子P1 ,P2 ・・・PK それぞれを互いに並列接続し、端子N1 ,N2 ・・・NK それぞれを互いに並列接続する回路構成にしている。
【0025】
ここで、リアクトル13とリアクトル15(リアクトル23とリアクトル25或いはリアクトル33とリアクトル35)との合計容量値は、インバータ装置10a.インバータ装置20a,インバータ装置30aそれぞれが1台ずつ単独で運転されることを前提条件にして設定した先述の従来値の1.1〜1.3倍程度に設定される。
【0026】
ここで、リアクトル13とリアクトル15(リアクトル23とリアクトル25或いはリアクトル33とリアクトル35)とは、その容量値が互いにほぼ等しくても良く、互いに異なった値でも良い。
【0027】
図3は、この発明のインバータ装置の第2の実施例を示す電動機電源システムの回路構成図であり、この図において、図1に示した電動機電源システムの回路接続図と同一機能を有するものには同一符号を付して、ここではその説明を省略する。
【0028】
すなわち、1台目のインバータ装置10bに備えるコンバータ部11の出力の両端端子P1 ,N1 とし、2台目のインバータ装置20aに備えるコンバータ部21の出力の両端端子P2 ,N2 とし、端子P1 ,P2 ・・・PK それぞれを互いに並列接続し、端子N1 ,N2 ・・・NK それぞれを互いに並列接続する回路構成にしている。
【0029】
また、リアクトル13に代えてリアクトル18を備え、同様に、リアクトル23に代えてリアクトル28を備えている。
【0030】
さらに、1台目のインバータ装置10bに備える平滑コンデンサ14の負側を端子N11とし、2台目のインバータ装置20bに備える平滑コンデンサ24の負側を端子N21とすると共に、端子N1 と端子N11との間にリアクトル19をインバータ装置10bとは別置き状態で備え、同様に、端子N2 と端子N21との間にリアクトル29をインバータ装置20bとは別置き状態で備えている。
【0031】
すなわち、リアクトル19(リアクトル29或いはリアクトル39)はインバータ装置10b(インバータ装置20b或いはインバータ装置30b)から着脱可能にしている。
【0032】
ここで、リアクトル18(リアクトル28或いはリアクトル38)の容量値は、インバータ装置10b.インバータ装置20b,インバータ装置30bそれぞれが1台ずつ単独で運転されることを前提条件にして設定した先述の従来値とし、また、リアクトル19(リアクトル29或いはリアクトル39)の容量値は、前記従来値の0.1〜0.3倍程度に設定される。
【0033】
なお、図3に示した電動機電源システム2の回路構成から明らかなように、リアクトル19(リアクトル29或いはリアクトル39)を削除すると共に、端子N1 と端子N11との間および端子N2 と端子N21との間それぞれを短絡することにより、図4に示した従来のインバータ装置50と同様の回路構成のインバータ装置にすることができる。
【符号の説明】
【0034】
1…交流電源、2…電動機電源システム、10,10a,10b…インバータ装置、11…コンバータ部、12…平滑回路部、13,15,18,19…リアクトル、14…平滑コンデンサ、16…インバータ部、17…電動機、20,20a,20b…インバータ装置、21…コンバータ部、22…平滑回路部、23,25,28,29…リアクトル、24…平滑コンデンサ、26…インバータ部、27…電動機、30…インバータ装置、31…コンバータ部、32…平滑回路部、33,35…リアクトル、34…平滑コンデンサ、36…インバータ部、37…電動機、50…インバータ装置、51…コンバータ部、52…平滑回路部、33…リアクトル、54…平滑コンデンサ、55…インバータ部、56…電動機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源から印加される交流電圧を整流電圧に変換して出力するコンバータ部と、この整流電圧を平滑するための平滑回路部と、この平滑された電圧を所望の周波数・振幅の交流電圧に変換しつつ電動機に給電するインバータ部とから形成されるインバータ装置において、
前記平滑回路部は、前記コンバータ部の正側出力端に一端が接続される第1リアクトルと、この第1リアクトルの他端に一端が接続される平滑コンデンサと、この平滑コンデンサの他端と前記コンバータ部の負側出力端との間に接続される第2リアクトルとで形成すると共に、前記平滑コンデンサの両端電圧を前記インバータ部に印加するようにしたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインバータ装置において、
前記コンバータ部の出力の両端それぞれを互いに並列接続しつつ、この並列接続されたインバータ装置それぞれを動作させるようにしたことを特徴とするインバータ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインバータ装置において、
前記第2リアクトルを着脱可能にしたことを特徴とするインバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−116032(P2013−116032A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−263523(P2011−263523)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】