説明

ウィンドウレギュレータ装置

【課題】 ウィンドウガラスが全閉位置で完全に閉じきり、且つガラス割れの検出精度が良好なウィンドウレギュレータ装置を提供すること。
【解決手段】 駆動力伝達バネ62は、ウォームホイール61を介して第2ハウジング82に取り付けられる。このため駆動力伝達バネ62は第2ハウジング82内にて変形および復元する。第2ハウジング82内における駆動力伝達バネ62の変形および復元は、第2ハウジング82に対する変位として観測される。この変位が、同一のハウジング(第2ハウジング82)に取り付けられた検知スイッチ66により検知される。つまり、検知対象の変位領域と検知部材の位置が、同一のハウジング(第2ハウジング82)を基準として定められる。したがって、検知対象の変位領域と検知部材の位置関係がずれることはない。よって、検知スイッチ66による検知に基づいて、ガラス割れが精度良く検知される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のウィンドウガラスを電動モータや手動などの動力により開閉するウィンドウレギュレータ装置に係り、特に、ウィンドウガラスの割れ(ガラス割れ)を検知する機能を備えるウィンドウレギュレータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウィンドウガラス、特に開閉可能なウィンドウガラスの割れを検知する機能を有するウィンドウレギュレータ装置が知られている。例えば、特許文献1は、開閉可能なウィンドウガラスを支持するガラス支持部材と、このガラス支持部材をウィンドウガラスの開閉方向に駆動する駆動機構と、ウィンドウガラスの開閉位置が全閉位置であるときに、それ以上の閉方向への動きを規制する規制部材と、ウィンドウガラスの開閉位置が全閉位置であるときにガラス支持部材をウィンドウガラスの閉方向に付勢する付勢部材と、ガラス支持部材の変位を検知する検知部材とを備えたウィンドウレギュレータ装置を開示する。このウィンドウレギュレータ装置によれば、ガラス割れが発生した場合、規制部材によるウィンドウガラスの規制が解除されることでガラス支持部材が付勢部材により全閉位置よりも閉方向に変位する。このようなガラス支持部材の変位を検知部材により検知することにより、ガラス割れが検知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3531474号
【発明の概要】
【0004】
(発明が解決しようとする課題)
上記した特許文献1によれば、ウィンドウガラスの開閉位置が全閉位置であるときに発生するガラス割れが、そのガラス割れに起因したガラス支持部材の変位に基づいて検知される。上記変位は、例えばバネの弾性力によって作られる微小な変位である。したがって、この微小な変位に基づいて正確にガラス割れを検知するためには、ガラス割れに伴うガラス支持部材の変位領域と、ガラス支持部材の変位を検知する検知部材の位置との関係のずれが少ない方が好ましい。
【0005】
上記した関係のずれを少なくするために特許文献1では、ガラス支持部材がウィンドウガラスおよび規制部材(ストッパピン24および係止部25)を介してドアパネルに取り付けられるとともに、検知部材もドアパネルに取り付けられている。つまり、検知部材の位置と検知対象であるガラス支持部材の変位領域の関係が、同一の部材を基準として定められる。このため上記関係のずれは少ない。よって、ガラス割れの検知精度が良好に保たれる。
【0006】
しかし、ガラス支持部材の変位領域がドアパネルを基準として定められる場合、ガラス支持部材に支持されるウィンドウガラスの全閉位置もまたドアパネルを基準として定められる。この場合、ドアパネルと窓枠との組み付けのバラツキによって、ウィンドウガラスが完全に閉じきらないという不具合が起こり得る。また、ドアパネルと窓枠との位置関係の経年変化により、当初はウィンドウガラスが完全に閉じきっていたものの、やがて閉じきらなくなるという不具合も起こり得る。ウィンドウガラスが完全に閉じきらない場合、例えば雨天時などに雨水が車室内に進入する。つまり、ウィンドウガラスの本来の機能に支障を来たす。
【0007】
これに対し、ウィンドウガラスの全閉位置を、ウィンドウガラスと窓枠との接触を基準として定めた場合は、ウィンドウガラスが全閉位置にて確実に閉じきる。しかしこの場合、ウィンドウガラスが全閉位置にある場合におけるガラス支持部材の変位領域が窓枠を基準として定められるのに対して検知部材の取付位置がドアパネルを基準として定められる。つまり、検知部材の位置と検知対象の変位領域が異なる部材を基準として各々定められる。このため、窓枠とドアパネルの取付誤差や、窓枠とドアパネルの位置関係の経年変化などにより、検知部材の位置と検知対象の変位領域との関係がばらつく可能性が高い。その結果、ガラス割れの検知精度が悪化する。
【0008】
つまり、従来のウィンドウレギュレータ装置では、ウィンドウガラスが全閉位置で確実に閉じきることと、検知部材によるガラス割れの検知精度を良好に保つこととの両立は困難である。
【0009】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、ウィンドウガラスが全閉位置で完全に閉じきり、且つガラス割れの検知精度が良好なウィンドウレギュレータ装置を提供することを目的とする。
【0010】
(課題を解決するための手段)
本発明のウィンドウレギュレータ装置の特徴は、車両のウィンドウガラスを開閉するウィンドウレギュレータ装置において、電動または手動によって駆動力を発生する駆動機構と、車両のウィンドウガラスに連結され、前記駆動機構により発生された駆動力が伝達されることによって前記ウィンドウガラスを開閉する開閉機構と、前記駆動機構と前記開閉機構との間に介装され、前記駆動機構の駆動力を前記開閉機構に伝達するとともに、前記ウィンドウガラスの閉作動中に前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった場合に前記駆動機構から伝達される駆動力によって変形し、前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった状態であるときにガラス割れが発生した場合に前記変形が復元する弾性部材と、前記弾性部材の圧縮および変形を検知する検知部材と、内部に前記弾性部材および前記検知部材が取り付けられたハウジングと、を備えることにある。
【0011】
上記発明によれば、ウィンドウガラスの閉作動時にウィンドウガラスが窓枠に突き当たった場合、ウィンドウガラスはそれ以上閉作動できず、閉方向への動作が停止するので、ウィンドウガラスに連結された開閉機構の作動も規制される。一方、駆動機構は駆動力を発生しているので、この駆動機構の駆動力により駆動機構と開閉機構との間に介装されている弾性部材が変形(圧縮または伸張)する。検知部材はこの弾性部材の変形を検知する。検知部材により弾性部材の変形が検知された場合にウィンドウガラスの全閉位置が検知される。つまり、ウィンドウガラスの全閉位置は、ウィンドウガラスと窓枠との突き当てによって定められる。
【0012】
また、ウィンドウガラスの開閉位置が窓枠との突き当てにより定められる全閉位置であるときに、ガラス割れが発生した場合、ウィンドウガラスと窓枠との突き当てが解消されるので、開閉機構の作動規制が解除される。このため駆動機構と開閉機構との間に介在する弾性部材の復元力により開閉機構が作動するとともに、弾性部材の変形が復元する。検知部材はこの弾性部材の復元を検知する。検知部材により弾性部材の復元が検知された場合にガラス割れが検知される。
【0013】
また、弾性部材および検知部材はハウジング内に一体的に取り付けられる。弾性部材がハウジングに取り付けられているため、弾性部材はハウジング内で変形および復元する。ハウジング内における弾性部材の変形および復元は、ハウジングに対する変位として観測される。このハウジングに対する変位である弾性部材の変形および復元が、同一のハウジングに取り付けられた検知部材により検知される。つまり、検知対象の変位領域と検知部材の位置が、同一のハウジングを基準として定められる。したがって、検知対象の変位領域と検知部材の位置の関係が、それらを取り付ける部材が異なることによってずれることがない。よって、検知部材によりガラス割れが精度良く検知される。
【0014】
このように、本発明のウィンドウレギュレータ装置によれば、ウィンドウガラスの全閉位置がウィンドウガラスと窓枠との突き当てにより定められるので、全閉位置にてウィンドウガラスを確実に閉じきることができる。加えて、ハウジングを基準として検知対象の変位領域と検知部材の位置が定められるので、検知部材によるガラス割れの検知精度も良好に保たれる。
【0015】
前記検知部材により検知されるべき検知対象は、検知部材が結果的にハウジング内の弾性部材の変形および復元を検知するのであれば、弾性部材そのものであってもよく、また弾性部材の変形および復元に伴ってハウジング内で可動する可動部材であってもよい。つまり検知対象の変位領域と検知部材の位置との関係が、同一のハウジングを基準として定められていればよい。
【0016】
前記ハウジングには、駆動機構および/または開閉機構が組み付けられていても良い。特に、駆動機構がハウジングに一体的に取り付けられている場合、ウィンドウレギュレータ装置のコンパクト化を図ることができる。
【0017】
また、弾性部材は駆動機構の駆動力を開閉機構に伝達する機能を有するので、ウィンドウガラスの開閉作動中に駆動機構の駆動力により駆動される場合もある。この場合、ウィンドウガラスの開閉作動中、弾性部材は駆動機構の駆動力によりハウジング内を駆動(例えば回転駆動)するとともに、その駆動力を開閉機構に伝達するものであるのがよい。
【0018】
また、弾性部材は、直接的にハウジングに取り付けられていなくてもよい。例えば、ハウジングに駆動機構が固設されている場合、駆動機構内に弾性部材が取り付けられていてもよい。つまり、弾性部材を含む検知対象は、ハウジングに取り付けられた中間部材を介してハウジングに取り付けられていてもよい。
【0019】
前記弾性部材は、弾性変形するものであれば、ゴム、樹脂、バネなど、どのようなものでもよい。また、変形の態様は、圧縮変形でも伸張変形でもよい。なお、弾性部材の変形とは、ウィンドウガラスが窓枠に突き当たっていないときにおける弾性部材の形状を標準形状とした場合、その標準形状からの変形をいい、必ずしも自然状態からの変形を意味しない。
【0020】
また、前記駆動機構は、電動モータと、前記電動モータに連結され前記電動モータの回転駆動力を前記弾性部材に伝達するギヤ機構を有し、前記ハウジングは前記ギヤ機構を収納するギヤボックスを有し、前記ギヤボックス内に前記弾性部材と前記検知部材が配設されているのがよい。これによれば、弾性部材および検知部材が駆動機構の一部を構成するギヤ機構を収納するギヤボックスに内蔵されているので、開閉機構の開閉方式を問わず、ガラス割れを検知することができる。よって、本発明を様々な開閉方式のウィンドウレギュレータ装置(例えば、Xアーム式、あるいはケーブル式のウィンドウレギュレータ装置)に適用することができる。
【0021】
また、前記ギヤ機構は、回転可能に前記ハウジングに取り付けられ、前記電動モータの回転を減速する減速ギヤを有し、前記開閉機構は、回転可能に前記ハウジングに取り付けられ、前記減速ギヤの回転駆動力が前記弾性部材を介して伝達されることにより回転する出力ギヤを有し、前記検知部材は、前記減速ギヤと前記出力ギヤとの回転位相差の変化を検知することにより、前記弾性部材の変形および復元を検知するものであるとよい。
【0022】
これによれば、ウィンドウガラスの閉作動時にその開閉位置が全閉位置に達した場合は、ウィンドウガラスと窓枠との突き当てにより開閉機構の出力ギヤはその回転を停止するが、ギヤ機構の減速ギヤは回転を継続する。このため減速ギヤの回転駆動力によって弾性部材が変形し、その変形に伴って減速ギヤが出力ギヤに対して相対回転して減速ギヤと出力ギヤとの回転位相差が発生する。つまり弾性部材の変形前後で減速ギヤと出力ギヤとの回転位相差が変化する。検知部材は、弾性部材の変形に伴って発生する減速ギヤと出力ギヤとの回転位相差の変化を検知する。これにより、弾性部材の変形が確実に検知される。
【0023】
また、ウィンドウガラスの開閉位置が全閉位置であるときにガラス割れが発生した場合、ウィンドウガラスと窓枠との突き当てが解消されるので、弾性部材の変形が復元されるとともに、その復元力によって上記回転位相差を打ち消すように出力ギヤが減速ギヤに対して相対回転する。つまり、弾性部材の復元前後でも減速ギヤと出力ギヤの回転位相差が変化する。検知部材は、弾性部材の復元に伴って発生する減速ギヤと出力ギヤとの回転位相差の変化を検知する。これにより、弾性部材の復元が確実に検知される。
【0024】
また、本発明のウィンドウレギュレータ装置は、往復移動可能に前記ハウジングに取り付けられ、前記減速ギヤと前記出力ギヤとの回転位相差の変化が生じたときに、前記往復移動する方向に変位する変位プレートを備えるものであるのがよい。そして、前記検知部材は、前記変位プレートの変位を検知することにより、前記減速ギヤと前記出力ギヤとの回転位相差の変化を検知するものであるのがよい。この場合、前記変位プレートが往復移動する方向は、前記減速ギヤの軸方向であるとよい。また、前記変位プレートは、前記出力ギヤと一体回転するように前記出力ギヤに取り付けられているとよい。
【0025】
これによれば、変位プレートは、減速ギヤと出力ギヤとの回転位相差の変化に基づいて所定の方向(往復移動する方向)に変位する。また、変位プレートはハウジングに往復移動可能に取り付けられているので、変位プレートはハウジングに対して変位する。すなわち、弾性部材の変形および復元に伴って発生する減速ギヤと出力ギヤとの回転位相差の変化が、ハウジングに対する変位プレートの変化として表される。このハウジングに対する変位プレートの変位を、同一のハウジングに取り付けられている検知部材により検知することで、減速ギヤと出力ギヤの回転位置がどの位置であっても、減速ギヤと出力ギヤとの回転位相差が確実に検知される。
【0026】
また、本発明のウィンドウレギュレータ装置の他の特徴は、車両のウィンドウガラスを開閉するウィンドウレギュレータ装置において、電動または手動によって駆動力を発生する駆動機構と、車両のウィンドウガラスに連結されたキャリアプレートと、前記キャリアプレートが前記ウィンドウガラスの開閉方向に移動可能となるように前記キャリアプレートを案内するガイドレールが形成されたレール部材と、前記レール部材に移動可能に取り付けられた可動プーリーと、前記可動プーリーに取り回されるとともに前記駆動機構と前記キャリアプレートを連結し、前記キャリアプレートが前記ガイドレールに沿って前記ウィンドウガラスの開閉方向に移動するように、前記駆動機構により発生される駆動力を前記キャリアプレートに伝達するケーブルと、前記レール部材に取り付けられ、前記可動プーリーを弾性支持するとともに、前記ウィンドウガラスの閉作動中に前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった場合に前記可動プーリーを介して伝達される前記ケーブルの張力によって変形し、前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった状態であるときにガラス割れが発生した場合に前記変形が復元する弾性部材と、前記レール部材に取り付けられ、前記弾性部材の前記変形および前記復元に伴う前記レール部材に対する前記可動プーリーの移動を検知する検知部材と、を備えることにある。
【0027】
上記発明によれば、ウィンドウガラスの閉作動時にウィンドウガラスが窓枠に突き当たった場合、ウィンドウガラスはそれ以上閉作動できないので、ウィンドウガラスに連結されたキャリアプレートの移動が規制される。一方、駆動機構は駆動力を発生しているので、この駆動力によって駆動機構とキャリアプレートを連結するケーブルに張力が発生する。この張力が可動プーリーを介して弾性部材に伝達される。弾性部材はこの張力によって変形する。また弾性部材の変形に伴い、この弾性部材に弾性支持されている可動プーリーが移動する。検知部材は、弾性部材の変形に伴う可動プーリーの移動を検知する。検知部材が弾性部材の変形に伴う可動プーリーの移動を検知した場合にウィンドウガラスの全閉位置が検知される。つまり、ウィンドウガラスの全閉位置は、ウィンドウガラスと窓枠との突き当てによって定められる。
【0028】
また、ウィンドウガラスの開閉位置が窓枠との突き当てにより定められる全閉位置であるときに、ガラス割れが発生した場合、ウィンドウガラスと窓枠との突き当てが解消されるので、キャリアプレートの移動規制が解除される。このためキャリアプレートが移動し、駆動機構とキャリアプレートとを連結するケーブルの張力が減少する(または無くなる)。張力が減少することによって、弾性部材の変形が復元する。この変形の復元に伴い可動プーリーが移動する。検知部材は、弾性部材の復元に伴う可動プーリーの移動を検知する。検知部材が弾性部材の復元に伴う可動プーリーの移動を検知した場合にガラス割れが検知される。
【0029】
また、弾性部材および検知部材はレール部材に取り付けられる。弾性部材がレール部材に取り付けられているため、弾性部材はレール部材内で変形および復元する。このため可動プーリーは、弾性部材の変形および復元に伴いレール部材に対して移動する。このようなレール部材に対する移動が、同一のレール部材に取り付けられた検知部材により検知される。つまり、検知対象の移動領域(変位領域)と検知部材の位置が、同一のレール部材を基準として定められる。したがって、検知部材によるガラス割れの検知精度が向上する。
【0030】
このように、本発明のウィンドウレギュレータ装置によれば、ウィンドウガラスの全閉位置がウィンドウガラスと窓枠との突き当てにより定められるので、全閉位置にてウィンドウガラスを確実に閉じきることができる。加えて、レール部材を基準として検知対象の変位領域と検知部材の位置が定められるので、ガラス割れの検知精度も良好に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態に係るウィンドウレギュレータ装置の全体構成を示す正面図である。
【図2】ハウジング内に収容される各種部品の分解斜視図である。
【図3】検知スイッチの側面概略図である。
【図4】第2ハウジング内における各種部品の組み付け状態を示す正面図である。
【図5】ウォームホイールと上下変位プレートとの配置関係を表す側面図である。
【図6】駆動力伝達バネが圧縮変形した場合における、第2ハウジング内の各種部品の組み付け状態を示す正面図である。
【図7】互いの突片が干渉した場合における、ウォームホイールと上下変位プレートの配置関係を表す側面図である。
【図8】駆動力伝達バネが復元した場合における、第2ハウジング内の各種部品の組み付け状態を示す正面図である。
【図9】ガラス割れ時における、ウォームホイールと上下変位プレートとの配置関係を表す側面図である。
【図10】第2実施形態に係るウィンドウレギュレータ装置の全体構成を示す正面図である。
【図11】図10のA部詳細図である。
【図12】図11のB−B線の部分断面図である。
【図13】プーリー支持部材が下方に変位した場合にける、可動プーリーおよび検知スイッチ付近の詳細図である。
【図14】図13のC−C線の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係るウィンドウレギュレータ装置の全体構成を示す正面図である。このウィンドウレギュレータ装置は、車両のサイドウィンドウに設けられるウィンドウガラスを開閉するXアーム式のウィンドウレギュレータ装置である。図1に示されるようにウィンドウレギュレータ装置は、電動モータ2と、出力軸3と、駆動力伝達装置9と、電動モータ2に連結されたハウジング8と、ハウジング8に収容された各種部品とを備える。電動モータ2は例えば車載バッテリなどの電源に電気的に接続され、電源からの電力供給により回転駆動力を発生する。出力軸3は電動モータ2が発生する回転駆動力により回転する。駆動力伝達装置9は、出力軸3の回転駆動力によってウィンドウガラスWが図の矢印により示される上下方向に開閉作動するように、出力軸3の回転駆動力をウィンドウガラスWに伝達する。
【0033】
図1に示されるように、駆動力伝達装置9は、固定ブラケット91,セクタギヤ92,リフトアーム93,第1ガイドレール部材94,第2ガイドレール部材95およびイコライザアーム96を備える。固定ブラケット91は車両のドアパネルに固定されているとともにハウジング8を支持している。セクタギヤ92は図に示されるように円弧状の歯部921を備え、この歯部921の円弧中心にてピン97により回転可能に固定ブラケット91に連結される。
【0034】
リフトアーム93は長尺状の部材であり先端に向けて先細りに形成される。リフトアーム93はその基端側にてセクタギヤ92の回転中心位置に固定される。したがって、セクタギヤ92がピン97の軸周りに回転すると、それに伴ってリフトアーム93もピン97を中心として同方向に回転する。また、リフトアーム93の先端にはシュー93aが連結される。
【0035】
第1ガイドレール部材94はウィンドウガラスWの下部にほぼ水平に固定される。第1ガイドレール部材94には、その長手方向に沿ってガイド溝が形成される。このガイド溝内にシュー93aが摺動可能に配設される。第2ガイドレール部材95はドアパネルに固定される。第2ガイドレール部材95にも、その長手方向に沿ってガイド溝が形成される。
【0036】
イコライザアーム96は第1アーム961および第2アーム962を備える。第1アーム961および第2アーム962はいずれも長尺状の部材である。両アームの基端側同士がリフトアーム93の略中央付近にて結合される。第1アーム961および第2アーム962は結合状態にて図の方向から見て同一の軸を持つように直線状に各々固定され、かつリフトアーム93の中心付近で回転可能にリフトアーム93に連結される。また、第1アーム961の先端にはシュー961aが連結される。このシュー961aは第1ガイドレール部材94のガイド溝内に摺動可能に配設される。第2アーム962の先端にもシューが連結され、このシューは第2ガイドレール部材95のガイド溝内に摺動可能に配設される。したがって、第1ガイドレール部材94のガイド溝にはリフトアーム93の先端および第1アーム961の先端が、第2ガイドレール部材95のガイド溝には第2アーム962の先端が、それぞれシューを介して連結される。また、第1ガイドレール部材94と第2ガイドレール部材95が平行に配置するように、各アーム寸法が調整される。
【0037】
出力軸3はハウジング8に回転可能に支持される。この出力軸3は電動モータ2の回転駆動力を受けて回転する。また後述するように、出力軸3には出力ギヤが形成されており、この出力ギヤはセクタギヤ92の歯部921に噛み合う。
【0038】
このような構成において、出力軸3が図1において時計回り方向に回転すると、その回転はセクタギヤ92に伝達されて、セクタギヤ92がピン97を中心に反時計回り方向に回転する。これに伴いリフトアーム93もピン97を中心に反時計回り方向に回転する。リフトアーム93が反時計周り方向に回転すると、リフトアーム93の先端に取り付けられたシュー93aが図の一点鎖線で示されたような円弧状の軌跡を描くため、シュー93aが第1ガイドレール部材94のガイド溝内を摺動するとともに第1ガイドレール部材94が上方移動する。これに伴いウィンドウガラスWが上方移動する。つまりウィンドウガラスWが閉方向に作動(閉作動)する。ウィンドウガラスWの閉作動時には、イコライザアーム96がリフトアーム93,第1ガイドレール部材94および第2ガイドレール部材95との間の構造的配置関係を維持するように回転する。これにより第1ガイドレール部材94が第2ガイドレール部材95との間の平行状態を維持しながら上昇する。
【0039】
また、出力軸3が図1において反時計回り方向に回転すると、セクタギヤ92がピン97を中心として時計回り方向に回転する。これに伴いリフトアーム93もピン97を中心として時計回り方向に回転する。これによりシュー93aが第1ガイドレール部材94のガイド溝内を摺動するとともに第1ガイドレール部材94が下方移動する。第1ガイドレール部材94の下方移動によりウィンドウガラスWも下方移動する。つまりウィンドウガラスWが開方向に作動(開作動)する。ウィンドウガラスWの開作動時には、イコライザアーム96がリフトアーム93,第1ガイドレール部材94および第2ガイドレール部材95との間の構造的配置関係を維持するように回転する。これにより第1ガイドレール部材94が第2ガイドレール部材95との間の平行状態を維持しながら下降する。このようにしてウィンドウガラスWが開閉作動する。なお、図において実線で示されたウィンドウガラスWの開閉位置が全閉位置であり、二点鎖線で示されたウィンドウガラスWの開閉位置が全開位置である。
【0040】
図2は、ハウジング8内に収納される各種部品6の分解斜視図である。図に示されるように、電動モータ2が図示しない締結手段などによりハウジング8に連結される。ハウジング8は、第1ハウジング81と、第2ハウジング82と、蓋83を備える。第1ハウジング81は軸方向に長い円筒形状に形成されており、内部には電動モータ2のモータ軸に連結されたウォームWGが収納される。このウォームWGはモータ軸と同軸的に一体回転する。第2ハウジング82は第1ハウジング81の側周部に隣接し、第1ハウジング81の円筒軸と直交する軸を持つ円筒形状をなし、上端側が開口している。なお、第1ハウジング81の内部空間と第2ハウジング82の内部空間は、両ハウジングの隣接部位にて連通する。第1ハウジング81および第2ハウジング82が本発明のギヤボックスに相当する。蓋83は、第2ハウジング82の上端開口部分に載置され、図示しない締結手段によって第2ハウジング82に固定される。
【0041】
第2ハウジング82の底面中央部分には円筒状の軸受部82aが形成される。この軸受部82a内の円孔に出力軸3が挿通する。出力軸3は第2ハウジング82の内部空間に進入する。出力軸3は先端部31および基端部32を有し、基端部32から先端部31にかけて出力ギヤ33,軸部34,係合部35がこの順に形成されている。出力ギヤ33は上述したように駆動力伝達装置9のセクタギヤ92に噛み合い、回転駆動力を駆動力伝達装置9に伝達する。係合部35は断面略十字状に形成され、後述する被駆動プレート63に嵌合する。軸部34、係合部35および先端部31が第2ハウジング82の内部空間に進入する。先端部31が蓋83の内側面(ハウジング8の内部空間に向いた面)に形成されている凹部83aに挿入される。これにより出力軸3がハウジング8に回転可能且つ軸方向移動不能に支持される。
【0042】
第2ハウジング82内には、ウォームホイール61、駆動力伝達バネ62、被駆動プレート63、ワッシャ64、上下変位プレート65、検知スイッチ(検知部材)66および板バネ67が収納される。
【0043】
ウォームホイール61は、円筒形状をなし外周側に歯(例えばはすば歯)が形成された外周壁部61aと、内周に円孔61bが形成された円筒形状の内周壁部61cと、外周壁部61aの下端と内周壁部61cの下端とを連結するリング状の底面部61dを有する。第2ハウジング82の軸受部82aが円孔61bに嵌め込まれることにより、ウォームホイール61が第2ハウジング82内に回転可能に位置決め配置される。円孔61bには出力軸3が挿通される。また、外周壁部61aに形成された歯が第1ハウジング81内に収容されているウォームWGと噛み合う。このウォームホイール61とウォームWGによりギヤ機構が構成される。電動モータ2の回転駆動によってウォームWGが回転するとその回転がウォームホイール61に伝達されて、ウォームホイール61が出力軸3を中心軸として減速回転する。ウォームホイール61が本発明の減速ギヤに相当する。
【0044】
ウォームホイール61内に係止部611が形成される。この係止部611は底面部61dから立設される。係止部611の断面形状は、図に示されるように略扇状である。また、ウォームホイール61の外周壁部61aの上端面には周方向に沿って凸状に形成された複数個(本実施形態では4個)の突片612が等間隔に設けられる。各突片612は外周壁部61aに沿った円弧形状をなし、全て同一形状である。
【0045】
駆動力伝達バネ62は、ウォームホイール61の底面部61d上に配設される。駆動力伝達バネ62は底面部61dに沿うように円弧状に形成され、その一端にて係止部611に係止される。この駆動力伝達バネ62が本発明の弾性部材に相当する。
【0046】
被駆動プレート63は周方向の一部分が扇形状に切りかかれたような略円板形状をなし、切りかかれている部分を境にして径の大きい大径部63bおよび径の小さい小径部63cを有する。この被駆動プレート63の中央部に十字状の貫通孔63aが形成される。十字状の貫通孔63aに出力軸3の係合部35が嵌め込まれる。これにより被駆動プレート63は出力軸3に一体回転可能に連結される。また被駆動プレート63は、ワッシャ64により軸方向移動が規制される。このような形状を有する被駆動プレート63が第2ハウジング82内にてウォームホイール61上に同軸的に配設される。また、大径部63bの周方向端部(切り欠き端部)の一方から図において下方に延びた突片63dが形成される。突片63dにはウォームホイール61内に配設された駆動力伝達バネ62の他端が係止される。したがって、駆動力伝達バネ62は、その一端にてウォームホイール61の係止部611に、他端にて被駆動プレート63の突片63dに、それぞれ係止される。また、被駆動プレート63の大径部63bには、図に示されるように周方向に沿って延びた円弧状の長孔63eが形成される。
【0047】
上下変位プレート65は、段付き円板形状の回転板651と、回転板651の図において下面の外周縁付近に周方向に沿って凸状に形成され、等間隔に設けられた複数の突片652とを備える。回転板651の中央には出力軸3を挿通する円孔が形成される。また、回転板651の下面側に断面円弧状の凸部651aが形成される。この凸部651aは被駆動プレート63に形成された長孔63eと同形状の断面を有する。凸部651aが長孔63eに嵌め込まれるように上下変位プレート65が被駆動プレート63上に同軸的に載置される。これにより上下変位プレート65が被駆動プレート63の軸方向に相対的に往復移動可能に連結されるとともに、上下変位プレート65,被駆動プレート63および、被駆動プレート63に連結された出力軸3が一体的に回転する。
【0048】
複数の突片652は回転板651の中心からの径方向距離が同一となるように回転板651の周方向に沿って設けられる。各突片652は回転板651の周方向に沿った円弧形状をなし、全て同一形状である。突片652の個数はウォームホイール61の外周壁部61aに形成されている突片612の個数と同じ(本実施形態では4個)である。回転板651の中心から各突片652までの径方向距離は、ウォームホイール61の中心からその外周壁部61aに形成された各突片612までの径方向距離と同じである。したがって、上下変位プレート65と被駆動プレート63との組み付け体がウォームホイール61上に配置されたときに、各突片652はウォームホイール61の外周壁部61aの上端面に対面する。そして、ウォームホイール61と上下変位プレート65が出力軸3を中心に回転した場合には、突片652と突片612が同一円周上を回転する。
【0049】
図5は、ウォームホイール61と上下変位プレート65との配置関係を表す側面図である。図5に示されるように、上下変位プレート65は、ウォームホイール61に対面するように、ウォームホイール61と同軸的に配置されている。そして、ウォームホイール61の上下変位プレート65に対面する面(具体的にはウォームホイール61の外周壁部61aの上端面)に突片612が形成され、上下変位プレート65のウォームホイール61に対面する面(図示下面)に突片652が形成される。
【0050】
突片612にはテーパ面612aが形成される。このテーパ面612aは、図2においてウォームホイール61がX方向に回転するときに、突片612の回転方向の先頭側にあたる面に形成される。テーパ面612aは、突片612の底辺側が頂辺側よりも長くなるように、上記X方向に対して傾斜している。このテーパ面612aの存在により、突片612の形状が略台形状となる。
【0051】
また、突片652にはテーパ面652aが形成される。このテーパ面652aは、ウォームホイール61が上下変位プレート65に対してX方向に相対回転するときに、突片612が近づいてくる側の面、つまり突片612のテーパ面612aに対面する側の面に形成されている。テーパ面652aは、突片652の底部側が頂部側よりも長くなるように、上記X方向に対して傾斜している。このテーパ面652aの存在により、突片652の形状が略逆台形状となる。
【0052】
また、ウォームホイール61と上下変位プレート65が相対回転した場合には、突片612と突片652が干渉する。この場合において、ウォームホイール61が図2の矢印X方向に回転し、上下変位プレート65が回転していないときに両突片612,652が干渉した場合には、両突片612,652がテーパ面612a,652aにて係合する。係合時には両テーパ面612a,652aが面接触する。
【0053】
図2に示されるように、板バネ67はリング状の部分とこのリング状の部分から放射状に延びた板状の部分を有し、リング状の部分に出力軸3が挿通される。板バネ67は上下変位プレート65と蓋83との間に介在する。したがって上下変位プレート65は板バネ67の弾性力を受けてワッシャ64を介して被駆動プレート63に押し付けられ、第2ハウジング82内の所定の位置に位置決め配置される。
【0054】
図3は、検知スイッチ66の側面概略図である。図からわかるように検知スイッチ66は、基板661と、基板661上に形成された第1導電部662aおよび第2導電部662bと、基端側が第1導電部662aに接続された可動片663を有する。可動片663の先端が実線で示されているように基板661から離間しているときは、第1導電部662aと第2導電部662bが非導通状態である。一方、可動片663の先端が押圧されて破線で示されているように基板661上の第2導電部662bに接触した場合に可動片663を介して第1導電部662aと第2導電部662bが導通状態になる。第1導電部662aと第2導電部662bが非導通状態であるときは検知スイッチ66の切り換え状態がOFF状態であり、導通状態であるときは検知スイッチ66の切り換え状態がON状態である。
【0055】
検知スイッチ66は、その可動片663が上下変位プレート65に面するように図2において上下変位プレート65の直上に配置され、その位置が変化しないように、例えば図5に示されるように蓋83に取り付けられ、第2ハウジング82内の所定位置に位置決め配置されている。
【0056】
図4は、第2ハウジング8内における各種部品6の組み付け状態を示す正面図である。この図において上下変位プレート65は省略されている。図4からわかるように、ウォームホイール61は第1ハウジング81に収納されたウォームWGに噛み合っている。また、駆動力伝達バネ62はウォームホイール61内に配設され、その一端が係止部611に、他端が被駆動プレート63の突片63dに係止されている。
【0057】
このような構成において、電動モータ2の回転がウォームホイール61に伝達されてウォームホイール61が図2および図4の矢印X方向に回転駆動した場合、ウォームホイール61に形成された係止部611に一端が係止された駆動力伝達バネ62に回転駆動力が伝達され、この駆動力伝達バネ62もX方向に回転駆動する。駆動力伝達バネ62がX方向に回転駆動すると、突片63dにて駆動力伝達バネ62の他端を係止した被駆動プレート63に回転駆動力が伝達され、被駆動プレート63もX方向に回転駆動する。被駆動プレート63の回転に伴って上下変位プレート65および出力軸3に形成された出力ギヤ33がX方向に回転する。出力ギヤ33のX方向への回転は、図1から見て出力軸3の時計回り方向への回転である。したがって、駆動力伝達装置9のリフトアーム93が図1において反時計回り方向に回転する。これによりウィンドウガラスWが閉作動する。
【0058】
一方、ウォームホイール61が図2および図4の矢印X’方向に回転した場合、係止部611が駆動力伝達バネ62から離間する方向に移動し、被駆動プレート63の突片63dに係合する。この係合によりウォームホイール61の回転駆動力が駆動力伝達バネ62を介さずに直接被駆動プレート63に伝達される。これにより被駆動プレート63はX’方向に回転し、それに伴って上下変位プレート65および出力軸3に形成された出力ギヤ33がX’方向に回転する。出力ギヤ33のX’方向への回転は、図1から見て出力軸3の反時計回り方向への回転である。したがって、駆動力伝達装置9のリフトアーム93が図1において時計回り方向に回転する。これによりウィンドウガラスWが開作動する。
【0059】
本実施形態において、ウィンドウガラスWの閉作動時に駆動力伝達バネ62に駆動力を伝達する側の部材、すなわち電動モータ2,ウォームWGおよびウォームホイール61が、駆動力を発生する本発明の駆動機構に相当する。また、駆動力伝達バネ62とウィンドウガラスWとの間に介在する部材、すなわち、被駆動プレート63,出力軸3,駆動力伝達装置9が、本発明の開閉機構、つまりウィンドウガラスWに連結され、駆動機構により発生された駆動力が伝達されることによってウィンドウガラスWを開閉する開閉機構に相当する。駆動力伝達バネ62は、駆動機構と開閉機構との間に介装され、駆動機構の駆動力を開閉機構に伝達する。
【0060】
ウィンドウガラスWが閉作動している最中(未だ全閉位置に達していないとき)は、駆動力伝達バネ62がほとんど変形せずにウォームホイール61内を回転駆動するとともに、ウォームホイール61の回転駆動力を被駆動プレート63,上下変位プレート65および出力ギヤ33に伝達する。このときウォームホイール61と上下変位プレート65は、図5に示されるようにX方向に同一の速度で同期回転するため、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差は生じない。したがって、ウォームホイール61に形成された突片612と上下変位プレート65に形成された突片652との間の距離は変化せず、両突片612,652は干渉せずに一定の間隔を保った状態で同一円周上を回転する。またこのとき、上下変位プレート65の上部に配設されている検知スイッチ66の可動片663の先端部は上下変位プレート65に接触していない。したがって、可動片663には押圧力が加えられておらず、その先端部は第2導電部662bから離間している。すなわち、ウィンドウガラスWの開閉位置が全閉位置に達していないときには検知スイッチ66の切り換え状態はOFF状態である。
【0061】
一方、ウィンドウガラスWが閉作動してその上端辺が窓枠に突き当たった場合は、それ以上のウィンドウガラスWの閉作動(上昇)が妨げられるために出力ギヤ33の回転が規制される。出力ギヤ33の回転規制に伴って被駆動プレート63および上下変位プレート65の回転も停止する。しかし、ウォームホイール61は電動モータ2の回転駆動力を受けて、図2および図4のX方向に回転し続ける。このため、被駆動プレート63および上下変位プレート65に対してウォームホイール61がX方向に相対回転する。このとき被駆動プレート63に形成された突片63dは停止しているのに対してウォームホイール61に形成された係止部611は回転しているので、それらの間に挟まれた駆動力伝達バネ62はウォームホイール61から伝達される駆動力によって圧縮変形する。つまりウィンドウガラスWが窓枠に突き当たったときに駆動力伝達バネ62が圧縮変形する。図6は、駆動力伝達バネ62が圧縮された場合における、第2ハウジング82内の各種部品6の組み付け状態を示す正面図である。
【0062】
出力ギヤ33の回転規制によりウォームホイール61が上下変位プレート65に対してX方向に相対回転した場合、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差が発生する。つまり、駆動力伝達バネ62の圧縮変形の前後でウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差が増加する方向に変化する。また、ウォームホイール61に形成されている突片612と上下変位プレート65に形成されている突片652との間の距離が縮まり、やがて両突片は干渉する。図7は、両突片612,652が干渉した状態を示す側面図である。図に示されるように、両突片612,652はテーパ面612a,652a同士で係合する。この係合により上下変位プレート65の突片652がテーパ面612a上を滑るように移動して、ウォームホイール61の突片612に乗り上げる。これにより上下変位プレート65が板バネ67の付勢力に抗して第2ハウジング82内で図において上方、つまりウォームホイール61から離間する方向であって、且つウォームホイール61および出力軸3の軸方向に押し上げられる。このように上下変位プレート65は、駆動力伝達バネ62の圧縮変形に伴いウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化が生じたときに、その変化に基づいて、第2ハウジング82に対して上方向に変位する。なお、各突片652は各突片612に同時に乗り上げるので、上下変位プレート65は傾くことなく軸方向に変位する。
【0063】
上下変位プレート65が両突片612,652の係合によって上方に押し上げられた場合、図7に示されるように上下変位プレート65の上面が検知スイッチ66の可動片663を押圧する。これにより可動片663の先端部が基板661上に形成されている第2導電部662bに接触し、可動片663を介して第1導電部662aと第2導電部662bが導通状態になる。これにより検知スイッチ66の切り換え状態がON状態に変化する。切り換え状態がOFF状態からON状態に変化した場合に、検知スイッチ66は上下変位プレート65の上方への変位を検知する。検知スイッチ66により上下変位プレート65の上方への変位が検知された場合にウィンドウガラスWの全閉位置が検知される。
【0064】
検知スイッチ66の切り換え状態がOFF状態からON状態に変化した場合、つまりウィンドウガラスの全閉位置が検知された場合、電動モータ2の駆動が停止される。これによりウォームホイール61の回転も停止する。このとき駆動力伝達バネ62は圧縮変形されたままの状態を維持する。
【0065】
ウィンドウガラスWの開閉位置が全閉位置であるとき、つまり検知スイッチ66の切り換え状態がON状態であって且つ電動モータ2の駆動が停止されているときに、ガラス割れが発生した場合、例えばウィンドウガラスが粉々に割れてウィンドウガラスWの上端辺と窓枠との突き当てが解消するので、出力ギヤ33の回転規制が解除される。すると、駆動力伝達バネ62を抑えていた出力ギヤ側の規制荷重が無くなるので、駆動力伝達バネ62の圧縮変形が復元するとともに、この復元の際に発生する伸張力(復元力)によって、被駆動プレート63,上下変位プレート65および出力ギヤ33が、停止しているウォームホイール61に対して図2および図4のX方向に相対回転する。この相対回転によりウォームホイール61と出力ギヤ33の回転位相差が打ち消される。つまり、駆動力伝達バネ62の圧縮変形の復元の前後で、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差が減少する方向に変化する。図8は、ガラス割れによって駆動力伝達バネ62が復元したときにおける、第2ハウジング82内の各種部品6の組み付け状態を示す正面図、図9は、ガラス割れ時における、ウォームホイール61と上下変位プレート65との配置関係を表す側面図である。
【0066】
上下変位プレート65がウォームホイール61に対してX方向に相対回転した場合、上下変位プレート65の突片652がウォームホイール61の突片612から滑り降りる。このため上下変位プレート65は図9に示されるように、第2ハウジング82内で図において下方、すなわちウォームホイール61に近づく方向であって、且つウォームホイール61および出力軸3の軸方向に変位する。このように上下変位プレート65は、駆動力伝達バネ62の復元に伴いウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化が生じたときに、その変化に基づいて、第2ハウジング82に対して下方向に変位する。
【0067】
上下変位プレート65が下方に変位した場合、図9に示されるように上下変位プレート65の上面は検知スイッチ66の可動片663から離間し、検知スイッチ66の切り換え状態がOFF状態に変化する。検知スイッチ66の切り換え状態がON状態からOFF状態に変化した場合に、検知スイッチ66は上下変位プレート65の下方への変位を検知する。電動モータ2の停止時に検知スイッチ66により上下変位プレート65の下方への変位が検知された場合にガラス割れが検知される。
【0068】
以上の説明からわかるように、本実施形態のウィンドウレギュレータ装置によれば、検知スイッチ66は、その切り換え状態の変化に基づいて、上下変位プレート65の変位を検知する。上下変位プレート65は、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差が変化したときに変位する。つまり、検知スイッチ66は、上下変位プレート65の変位を検知することにより、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化を検知する。また、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差は、駆動力伝達バネ62が圧縮変形または復元したときに変化する。つまり、検知スイッチ66は、上下変位プレート65の変位を検知することにより、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化を検知し、さらにウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差を検知することにより、駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元を検知する。
【0069】
また、検知スイッチ66は、その切り換え状態がOFF状態からON状態に変化したことに基づいて、上下変位プレート65の上方(ウォームホイール61から離間する方向)への変位を検知する。検知スイッチ66が上下変位プレート65の上方への変位を検知したときに、ウィンドウガラスWの全閉位置が検知される。上下変位プレート65は、駆動力伝達バネ62が圧縮変形されたときに上方へ変位し、また駆動力伝達バネ62が圧縮変形される場合は、ウィンドウガラスWが窓枠に突き当たった場合である。したがって、本実施形態によれば、ウィンドウガラスWが窓枠に突き当たったときにウィンドウガラスWの全閉位置が検知される。
【0070】
また、検知スイッチ66は、その切り換え状態がON状態からOFF状態に変化したことに基づいて、上下変位プレート65の下方(ウォームホイール61に近づく方向)への変位を検知する。上下変位プレート65は、ガラス割れにより駆動力伝達バネ62の圧縮変形が復元したときに下方へ変位する。検知スイッチ66がこの上下変位プレート65の下方への変位、すなわち駆動力伝達バネ62の復元を検知したときに、ガラス割れが検知される。
【0071】
また、駆動力伝達バネ62は、第2ハウジング82内に位置決め配置されたウォームホイール61に取り付けられている。つまり駆動力伝達バネ62は、ウォームホイール61を介して第2ハウジング82に取り付けられる。このため駆動力伝達バネ62は第2ハウジング82内にて変形および復元する。第2ハウジング82内における駆動力伝達バネ62の変形および復元は、第2ハウジング82に対する変位として観測される。本実施形態では、駆動力伝達バネ62の変形および復元が、上下変位プレート65の変位として表される。この変位が、同一のハウジング(第2ハウジング82)に取り付けられた検知スイッチ66により検知される。つまり、検知対象の変位領域と検知部材の位置が、同一のハウジング(第2ハウジング82)を基準として定められる。したがって、検知対象の変位領域と検知部材の位置関係がずれることはない。よって、検知スイッチ66による検知(駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元の検知、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化の検知、上下変位プレート65の変位の検知)に基づいて、ガラス割れが精度良く検知される。
【0072】
このように、本実施形態によれば、ウィンドウガラスWの全閉位置がウィンドウガラスと窓枠との突き当てにより定められるので、全閉位置にてウィンドウガラスを確実に閉じきることができる。また、検知対象と検知部材とが同一のハウジング(第2ハウジング82)に取り付けられているので、検知対象を取り付ける部材と検知スイッチ66を取り付ける部材との組み付け誤差が発生することはない。よって、検知スイッチ66によるガラス割れの検知精度も良好に保たれる。
【0073】
また、ハウジング8はギヤ機構(ウォームWGおよびウォームホイール61)を収納する第1ハウジング81および第2ハウジング82を有し、第2ハウジング82内に駆動力伝達バネ62と検知スイッチ66が配設されている。したがって、出力軸3よりもウィンドウガラスW側に設けられる開閉機構の構成がどのようなタイプであってもよい。よって、本実施形態で示したようなXアーム式のウィンドウレギュレータ装置のみならず、例えばケーブル式のウィンドウレギュレータ装置にも、本実施形態を適用できる。
【0074】
また、駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元に伴い、第2ハウジング82に回転可能に取り付けられたウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差が変化する。この回転位相差の変化は第2ハウジング82に対する変位として観測される。本実施形態では、これらの回転位相差の変化が、第2ハウジング82に対する上下変位プレート65の変位として表される。つまり、検知スイッチ66は、上下変位プレート65の変位を検知することにより、ウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化を検知する。この変化を検知することにより、確実に駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元が検知される。
【0075】
また、上下変位プレート65は、出力軸3を介して第2ハウジング82に往復移動可能に取り付けられており、駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元に伴い発生するウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化に基づいて、第2ハウジング82に対して変位する。この上下変位プレート65の第2ハウジング82に対する変位が、同一のハウジング(第2ハウジング)に取り付けられている検知スイッチ66により検知される。これにより、ウォームホイール61と出力ギヤ33の回転位置がどの位置であっても確実にウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差が検知される。
【0076】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10は、本実施形態に係るウィンドウレギュレータ装置の全体構成を示す正面図である。このウィンドウレギュレータ装置は、前述のXアーム式ではなく、ケーブル式のウィンドウレギュレータ装置である。
【0077】
このウィンドウレギュレータ装置は、駆動装置110と、キャリアプレート120と、レール部材130と、可動プーリー140と、固定プーリー150と、ケーブル160と、検知スイッチ170とを備える。
【0078】
駆動装置110はドアパネルに固定される。駆動装置110は本発明の駆動機構に相当し、電動モータ111と、ウォーム112およびウォームホイール113からなるギヤ機構と、ウォームホイール113と同軸的に連結された駆動プーリー114とを備える。電動モータ111により駆動力が発生される。この駆動力はウォーム112に伝達される。ウォーム112が上記駆動力により回転すると、ウォーム112と噛み合っているウォームホイール113が減速回転する。ウォームホイール113の減速回転に連動して駆動プーリー114も回転する。
【0079】
キャリアプレート120は、ウィンドウガラスWの下端部に連結される。またレール部材130は上下に長尺状に形成され、ドアパネルに固定される。レール部材130には、図示上下方向に沿ったガイドレール131が形成される。ガイドレール131の形成方向はウィンドウガラスWの開閉方向と一致する。このガイドレール131にキャリアプレート120が移動可能に取り付けられる。したがって、キャリアプレート120は、ウィンドウガラスWの開閉方向に移動可能となるように、ガイドレール131に案内される。
【0080】
レール部材130の図示上端側に可動プーリー140が取り付けられる。また、レール部材130の図示下端側に固定プーリー150が取り付けられる。固定プーリー150はピン部材などによってレール部材130に回転可能に固定される。
【0081】
また、ケーブル160は、その一端にてキャリアプレート120に固設された第1支持ピン121に連結され、その他端にてキャリアプレート120に固設された第2支持ピン122に連結される。また、ケーブル160は、駆動プーリー114,可動プーリー140および固定プーリー150にそれぞれ取り回される。
【0082】
図11は、図10のA部詳細図、図12は図11のB−B線の部分断面図である。図11および図12に示されるように、レール部材130の上方部位には直方体形状の凹部132が形成される。凹部132を構成する左右の壁面には、上下方向に沿ってガイドレール134が形成される。また、凹部132内にプーリー支持部材133が配設される。プーリー支持部材133の図11において左右面には上下方向に沿って溝が形成される。この溝がガイドレール134に嵌め込まれることにより、凹部132内を上下方向に移動可能且つ前後左右方向に移動不能となるようにプーリー支持部材133がレール部材130に取り付けられる。また、図12からわかるように、プーリー支持部材133の厚み方向の長さ(図示左右方向の長さ)は、凹部132の深さ方向の長さ(図示左右方向の長さ)よりも長い。そのため、プーリー支持部材133は部分的に凹部132から突出する。その突出部分の前方面FRにピン135が穿設される。このピン135を介して可動プーリー140が回転可能にプーリー支持部材133に連結される。このような構成により、可動プーリー140は、レール部材130に上下方向(ウィンドウガラスWの開閉方向)に移動可能に取り付けられる。
【0083】
また、凹部132内には圧縮バネ180が配設される。圧縮バネ180の下端側が凹部132の下面に連結され、上端側がプーリー支持部材133に連結される。したがって、プーリー支持部材133は、圧縮バネ180により凹部132内で弾性支持されるとともに、この圧縮バネ180の弾性力によって上方へ押し上げられる。圧縮バネ180が本発明の弾性部材に相当する。
【0084】
また、検知スイッチ170がレール部材130に取り付けられる。この検知スイッチ170は、凹部132の下方に位置する。検知スイッチ170は筐体171および可動片172を有する。筐体171はガイドレール131の前面側(図11において手前側)に固定される。この筐体171の内部から可動片172が斜め上方に向かって延設される。可動片172の先端は、弾性力によって凹部132から突出したプーリー支持部材133の下面LOに押し付けられる。
【0085】
このような構成において、駆動装置110の駆動によって駆動プーリー114が例えば図10において時計回り方向に回転駆動すると、その回転駆動力がケーブル160を介してキャリアプレート120に伝達される。これによりケーブル160が図10の実線矢印で示される方向に送られるとともに、キャリアプレート120がガイドレール131に沿って上方に移動する。キャリアプレート120の上方移動に伴いウィンドウガラスWも上方移動(閉作動)する。
【0086】
一方、駆動装置110の駆動によって駆動プーリー114が例えば図10において反時計回り方向に回転駆動すると、その回転駆動力がケーブル160を介してキャリアプレート120に伝達される。これによりケーブル160が図の点線矢印で示される方向に送られるとともに、キャリアプレート120がガイドレール131に沿って下方に移動する。キャリアプレート120の下方移動に伴いウィンドウガラスWも下方移動(開作動)する。
【0087】
ウィンドウガラスWの閉作動中および開作動中は、キャリアプレート120が移動するため可動プーリー140にはケーブル160の張力はほとんど作用しない。このため可動プーリー140が取り付けられたプーリー支持部材133を弾性支持する圧縮バネ180は変形せず、プーリー支持部材133は変位しない。
【0088】
ウィンドウガラスWの閉作動によりウィンドウガラスWが窓枠に突き当たった場合、ウィンドウガラスWのそれ以上の上昇(閉作動)が停止される。これによりウィンドウガラスWに連結されたキャリアプレート120の移動も規制される。一方、駆動装置110は駆動を継続する。このため駆動装置110の駆動力によって発生するケーブル160の張力が可動プーリー140,プーリー支持部材133を介して圧縮バネ180に作用し、この張力が圧縮バネ180の反力よりも大きくなると、圧縮バネ180は圧縮変形される。また圧縮バネ180の圧縮変形に伴い、圧縮バネ180に弾性支持されたプーリー支持部材133が凹部132内を図において下方に移動する。図13は、プーリー支持部材133が下方に移動した場合における可動プーリー140および検知スイッチ170付近の詳細図、図14は図13におけるC−C線の部分断面図である。これらの図に示されるように、プーリー支持部材133の下方移動によって検知スイッチ170の可動片172が押し倒される。検知スイッチ170は、可動片172が押し倒されたときに、可動プーリー140が下方に移動したことを検知する。検知スイッチ170が可動プーリー140の下方移動を検知した場合にウィンドウガラスWの全閉位置が検知される。ウィンドウガラスの全閉位置が検知された場合、電動モータ111の駆動が停止される。
【0089】
ウィンドウガラスWの開閉位置が全閉位置であるとき、つまり検知スイッチ170の可動片172が押し倒されているときに、ガラス割れが発生した場合、ウィンドウガラスWの上端辺と窓枠との突き当てが解消するので、キャリアプレート120の移動規制が解除される。このためキャリアプレート120が上方に移動する。キャリアプレート120の移動によって、圧縮バネ180を抑えていたケーブル160の張力が減少する。これにより圧縮バネ180の圧縮変形が復元するとともに、復元力によってプーリー支持部材133および可動プーリー140が図13において上方に押し上げられる。プーリー支持部材133の上方への移動により、検知スイッチ170の可動片172が、押し倒される前の元の傾斜状態に復帰する。検知スイッチ170は、可動片172が元の傾斜状態に復帰したときに、可動プーリー140が上方に移動したことを検知する。電動モータ111の駆動停止中に検知スイッチ170が可動プーリー140の上方移動を検知した場合にガラス割れが検知される。
【0090】
以上の説明からわかるように、本実施形態のウィンドウレギュレータ装置によれば、検知スイッチ170は、可動片172が押し倒されたときに、可動プーリー140の下方移動を検知する。検知スイッチ170が可動プーリー140の下方移動を検知したときに、ウィンドウガラスWの全閉位置が検知される。また可動プーリー140は、ケーブル160の張力によって圧縮バネ180が圧縮変形されたときに、その圧縮変形に伴ってプーリー支持部材133とともに下方移動する。圧縮バネ180が圧縮変形される場合は、ウィンドウガラスWが窓枠に突き当たった場合である。したがって、ウィンドウガラスWが窓枠に突き当たったときにウィンドウガラスWの全閉位置が検知される。
【0091】
また、検知スイッチ170は、可動片172が押し倒された傾斜状態から元の傾斜状態に復帰したときに、可動プーリー140の上方移動を検知する。可動プーリー140は、ガラス割れにより圧縮バネの圧縮変形が復元されたときに、その復元に伴ってプーリー支持部材133とともに上方移動する。検知スイッチ170が可動プーリー140の上方移動、すなわち圧縮バネ180の復元を検知したときに、ガラス割れが検知される。
【0092】
また、圧縮バネ180および検知スイッチ170はレール部材130に一体的に取り付けられる。圧縮バネ180がレール部材130に取り付けられているため、圧縮バネ180はレール部材130内で変形および復元する。このためプーリー支持部材133および可動プーリー140は、圧縮バネ180の変形および復元に伴いレール部材130に対して移動する。このようなレール部材130に対する移動が、同一のレール部材130に取り付けられた検知スイッチ170により検知される。つまり、検知対象の移動領域(変位領域)と検知部材の位置が、同一のレール部材130を基準として定められる。したがって、検知スイッチ170による全閉位置の検知精度およびガラス割れの検知精度が向上する。
【0093】
また、本実施形態によれば、レール部材130に凹部132を形成し、凹部132内にプーリー支持部材133および圧縮バネ180を配設し、さらにレール部材130に検知スイッチ170を取り付けることにより、安価にウィンドウガラスWの全閉位置の検知およびガラス割れの検知を行うことができる。さらに、本実施形態は、ケーブル160にアウターチューブが被覆されたタイプのウィンドウレギュレータ装置にも適用できる。
【0094】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定して解釈されるべきものではない。例えば、上記第1実施形態において、検知スイッチ66は、駆動力伝達バネ62の圧縮変形に基づいてウィンドウガラスの開閉位置が全閉位置であるか否かを検知しているが、更に、駆動力伝達バネ62の圧縮変形に基づいてウィンドウガラスに異物が挟み込まれたか否かを検知する機能を持たせても良い。この場合、異物の挟み込みを判断する基準となる挟み込み検知荷重が、全閉位置を判断する基準となる全閉位置検知荷重よりも遙かに小さいことに着目し、駆動力伝達バネ62を、第1駆動力伝達バネおよび第2駆動力伝達バネにより構成し、これらのバネを直列に接続しておけばよい。そして、第1駆動力伝達バネの圧縮荷重が挟み込み検知荷重程度であるようにそのバネ定数を設定し、第2駆動力伝達バネの圧縮荷重が全閉位置検知荷重程度であるようにそのバネ定数を設定すればよい。これによれば、ウィンドウガラスに異物が挟み込まれたときは第1駆動力伝達バネのみが圧縮され、ウィンドウガラスが窓枠に突き当たったときは第1駆動力伝達バネおよび第2駆動力伝達バネが圧縮される。したがって、異物が挟み込まれた場合における駆動力伝達バネの全体の変位量と、ウィンドウガラスが全閉位置である場合における駆動力伝達バネの全体の変位量との差に基づいて、異物の挟み込みが生じているのか、ウィンドウガラスが全閉位置であるのかを区別することができる。また、一つのハウジング内に、ウィンドウガラスの全閉位置を検知する部品と、ガラス割れを検知する部品と、挟み込みを検知する部品が集約されているので、ウィンドウレギュレータ装置のコンパクト化に寄与する。
【0095】
また、上記第1実施形態では、駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元に伴って発生するウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化に基づく上下変位プレート65の変位を検知することにより、ウィンドウガラスの全閉位置およびガラス割れを検知した例を示したが、駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元に伴って発生するウォームホイール61と出力ギヤ33との回転位相差の変化を直接検知することにより、ウィンドウガラスWの全閉位置およびガラス割れを検知してもよい。つまり検知対象がウォームホイール61および出力ギヤ33でもよい。この場合、第2ハウジング82内における上記回転位相差の変化を直接検知することができる検知スイッチ(例えばホールICなど)を第2ハウジング82に取り付け、この検知スイッチにより上記回転位相差の変化を検知すればよい。また、駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元を直接検知することにより、ウィンドウガラスWの全閉位置およびガラス割れを検知してもよい。つまり検知対象が駆動力伝達バネ62自体でもよい。この場合、第2ハウジング82内における駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元を、例えば駆動力伝達バネ62の変位により直接検知することができる検知スイッチを第2ハウジング82に取り付け、この検知スイッチにより駆動力伝達バネ62の圧縮変形および復元を検知すればよい。
【0096】
また、上記実施形態では、ウィンドウガラスの開閉位置が全閉位置に達したときに駆動機構の駆動力によって弾性部材(駆動力伝達バネ62、圧縮バネ180)が圧縮する例を示したが、弾性部材が伸張するものであってもよい。また、弾性部材としては、バネ以外のもの(例えばゴム)を適用してもよい。また、ウィンドウガラスを開閉するための駆動源として、電動モータ以外のアクチュエータを用いてもよいし、さらに手動によりウィンドウガラスを開閉するものであってもよい。また、上記実施形態においては、ウィンドウガラスの全閉位置およびガラス割れの検知を一つの検知スイッチにより検知した例を示したが、同一の部材に取り付けられている別の検知スイッチによって検知してもよい。また、検知部材として、上記実施形態に示した接触式の検知スイッチの他に、非接触式の検知センサなどを適用することもできる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、変形可能である。
【符号の説明】
【0097】
2…電動モータ(駆動機構)、3…出力軸(開閉機構)、33…出力ギヤ、8…ハウジング、9…駆動力伝達装置(開閉機構)、WG…ウォーム(駆動機構)、61…ウォームホイール(駆動機構、減速ギヤ)、612…突片、62…駆動力伝達バネ(弾性部材)、63…被駆動プレート(開閉機構)、65…上下変位プレート、651…回転板、652…突片、66…検知スイッチ(検知部材)、661…基板、662a…第1導電部、662b…第2導電部、663…可動片、81…第1ハウジング(ギヤボックス)、82…第2ハウジング(ギヤボックス)、82a…軸受部、83…蓋、83a…凹部、110…駆動装置(駆動機構)、111…電動モータ、112…ウォーム、113…ウォームホイール、114…駆動プーリー、120…キャリアプレート、130…レール部材、131…ガイドレール、132…凹部、133…プーリー支持部材、140…可動プーリー、160…ケーブル、170…検知スイッチ(検知部材)、180…圧縮バネ(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のウィンドウガラスを開閉するウィンドウレギュレータ装置において、
電動または手動によって駆動力を発生する駆動機構と、
車両のウィンドウガラスに連結され、前記駆動機構により発生された駆動力が伝達されることによって前記ウィンドウガラスを開閉する開閉機構と、
前記駆動機構と前記開閉機構との間に介装され、前記駆動機構の駆動力を前記開閉機構に伝達するとともに、前記ウィンドウガラスの閉作動中に前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった場合に前記駆動機構から伝達される駆動力によって変形し、前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった状態であるときにガラス割れが発生した場合に前記変形が復元する弾性部材と、
前記弾性部材の変形および復元を検知する検知部材と、
内部に前記弾性部材および前記検知部材が取り付けられたハウジングと、を備えることを特徴とするウィンドウレギュレータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のウィンドウレギュレータ装置において、
前記駆動機構は、電動モータと、前記電動モータに連結され前記電動モータの回転駆動力を前記弾性部材に伝達するギヤ機構を有し、
前記ハウジングは前記ギヤ機構を収納するギヤボックスを有し、
前記ギヤボックス内に前記弾性部材と前記検知部材が配設されていることを特徴とする、ウィンドウレギュレータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のウィンドウレギュレータ装置において、
前記ギヤ機構は、回転可能に前記ハウジングに取り付けられ、前記電動モータの回転を減速する減速ギヤを有し、
前記開閉機構は、回転可能に前記ハウジングに取り付けられ、前記減速ギヤの回転駆動力が前記弾性部材を介して伝達されることにより回転する出力ギヤを有し、
前記検知部材は、前記減速ギヤと前記出力ギヤとの回転位相差の変化を検知することにより、前記弾性部材の変形および復元を検知することを特徴とする、ウィンドウレギュレータ装置。
【請求項4】
請求項3に記載のウィンドウレギュレータ装置において、
往復移動可能に前記ハウジングに取り付けられ、前記減速ギヤと前記出力ギヤとの回転位相差の変化が生じたときに、前記往復移動する方向に変位する変位プレートを備え、
前記検知部材は、前記変位プレートの変位を検知することにより、前記減速ギヤと前記出力ギヤとの回転位相差の変化を検知することを特徴とする、ウィンドウレギュレータ装置。
【請求項5】
車両のウィンドウガラスを開閉するウィンドウレギュレータ装置において、
電動または手動によって駆動力を発生する駆動機構と、
車両のウィンドウガラスに連結されたキャリアプレートと、
前記キャリアプレートが前記ウィンドウガラスの開閉方向に移動可能となるように前記キャリアプレートを案内するガイドレールが形成されたレール部材と、
前記レール部材に移動可能に取り付けられた可動プーリーと、
前記可動プーリーに取り回されるとともに前記駆動機構と前記キャリアプレートを連結し、前記キャリアプレートが前記ガイドレールに沿って前記ウィンドウガラスの開閉方向に移動するように、前記駆動機構により発生される駆動力を前記キャリアプレートに伝達するケーブルと、
前記レール部材に取り付けられ、前記可動プーリーを弾性支持するとともに、前記ウィンドウガラスの閉作動中に前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった場合に前記可動プーリーを介して伝達される前記ケーブルの張力によって変形し、前記ウィンドウガラスが窓枠に突き当たった状態であるときにガラス割れが発生した場合に前記変形が復元する弾性部材と、
前記レール部材に取り付けられ、前記弾性部材の前記変形および前記復元に伴う前記レール部材に対する前記可動プーリーの移動を検知する検知部材と、
を備えることを特徴とする、ウィンドウレギュレータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−105139(P2011−105139A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262243(P2009−262243)
【出願日】平成21年11月17日(2009.11.17)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】