説明

エンジン冷却装置付き収穫機

【課題】 組み付け作業性を向上する。
【解決手段】 エンジン冷却用のファン16を設けたエンジン冷却装置付き収穫機において、回転ボス部18に姿勢変更可能に装着された複数個の羽根19を、エンジン7の冷却を行う第1姿勢とこの第1姿勢における風に対し逆方向の風を発生させる第2姿勢とに切り換え操作可能に設けられ、アクチュエータ27の作動に基づいて前記回転ボス部18と回転部材22との回転駆動部17の軸芯方向の間隔を変更させることにより羽根操作部材を介して各羽根19が前記第1姿勢と第2姿勢との間で切り換え可能に構成した操作手段を設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン冷却用のファンを設け、冷却風取り入れ口に防塵網を張設してあるコンバインなど収穫機のエンジン冷却装置で、詳しくは、エンジンの出力軸にファンを連動させることによりファンを機械的に回転させるようにしてある装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の収穫機のエンジン冷却装置では、エンジン冷却用の冷却風の取り入れに伴い防塵網に藁屑などの塵埃が付着し、防塵網の目詰まりを誘発して冷却風の取り入れを阻害する。そこで、従来では、エンジン出力軸からファンへの伝動系に正逆転切り換え機構を設けて適宜ファンを逆転駆動することで防塵網に付着した塵埃を吹き飛ばし除去して防塵網の目詰まりを解消するようにしていた(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−47630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来の技術によるときは、ファンへの伝動系に正逆転切り換え機構を設けてファンの回転方向を正逆切り換えすることで冷却風と除塵風とを発生させていたから、伝動系が大型化して、スペース面で伝動系の組み付け作業性が悪いものであった。
【0005】
本発明の目的は、組み付け作業性を向上する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔第1発明の構成〕
本発明の第1の特徴(請求項1)は、エンジン冷却用のファンを設け、冷却風取り入れ口に防塵網を張設してある収穫機のエンジン冷却装置であって、前記ファンの羽根を、ファンの一方向への回転に伴い風が防塵網をエンジン冷却方向で通過するように風を発生させる冷却姿勢とファンの一方向への回転に伴い風が防塵網を前記とは逆方向で通過するように風を発生させる除塵姿勢とに切り換え自在に設け、この羽根を姿勢切り換えする操作手段を設けてある点にある。
【0007】
〔作用〕
上記第1の特徴によると、ファンの羽根の姿勢を切り換えることにより、ファンの回転方向を変更することなく風の向きを冷却方向と除塵方向とに切り換えることができるから、ファンの回転方向を正逆切り換えするための大掛かりな正逆転切り換え機構が不要である。
【0008】
〔発明の効果〕
上記第1の発明では、風の向きを正逆切り換えするための構成の組み付け作業性を向上できるようになった。
【0009】
〔第2発明の構成〕
本発明の第2の特徴(請求項2)は請求項1に係る発明による収穫機のエンジン冷却装置において、前記操作手段が、前記羽根が冷却姿勢にあるときの受風面の裏側の面を羽根が防塵姿勢にあるときの受風面とするように羽根の姿勢を切り換える手段としたものである。
【0010】
〔作用〕
上記第2の特徴によると、羽根の姿勢を切り換えるも、その切り換えに伴い羽根を回転方向に直交する姿勢(ファンの回転抵抗を増大させる姿勢)にさせることがないようにすることができるから、羽根の姿勢切り換えに起因したファン回転抵抗の増大を防止することができる。
【0011】
〔発明の効果〕
上記第2の発明では、ファンの回転性能を良好に維持しながらも、羽根の姿勢を切り換えることができるようになった。
【0012】
〔第3発明の構成〕
本発明の第3の特徴(請求項3)は請求項1に係る発明による収穫機のエンジン冷却装置において、前記操作手段が、前記羽根が冷却姿勢にあるときの受風面を羽根が防塵姿勢にあるときの受風面とするように羽根の姿勢を切り換える手段としたものである。
【0013】
〔作用〕
上記第3の特徴によると、冷却姿勢にあるときの受風面を防塵姿勢にあるときの受風面とするようにしてあるから、防塵時にも風を強力に発生させることができる。
【0014】
〔発明の効果〕
上記第3の発明では、羽根を姿勢切り換えしての防塵性能を優れたものにできるようになった。
【0015】
〔第4発明の構成〕
本発明の第4の特徴(請求項4)は請求項1乃至3のいずれかに係る発明による収穫機のエンジン冷却装置において、前記操作手段が、アクチュエータで羽根の姿勢を切り換える手段としたものである。
【0016】
〔作用〕
上記第4の特徴によると、羽根の姿勢切り換えをアクチュエータで行うから、羽根の姿勢切り換えの抵抗が大きくても、小さな人為操作力でその羽根の姿勢切り換えを確実に行うことができる。
【0017】
〔発明の効果〕
上記第4の発明では、羽根を姿勢切り換えしての除塵を操作性良く行うことができるようになった。
【0018】
〔第5発明の構成〕
本発明の第5の特徴(請求項5)は請求項1乃至4のいずれかに係る発明による収穫機のエンジン冷却装置において、前記操作手段が、ファンと一体に回転する回転部材の回転軸芯方向移動により、羽根の支軸に装着させたアームを揺動させて羽根の姿勢を切り換える手段としたものである。
【0019】
〔作用〕
上記第5の特徴によると、ファンと一体回転する回転部材を回転軸芯方向に移動させることにより、羽根の支軸に装着させたアームを揺動させて羽根の姿勢を切り換えるようにしてあるから、操作手段の羽根操作部をコンパクトでファンの付属物として構成できる。
【0020】
〔発明の効果〕
上記第5の発明では、操作手段の一部をファンとして扱えるから組み付け性を向上することができる。
【0021】
〔第6発明の構成〕
本発明の第6の特徴(請求項6)は請求項5に係る発明による収穫機のエンジン冷却装置において、前記ファンの回転ボス部に羽根の支軸を鍔付きブッシュを介して抜け止め支持させたものである。
【0022】
〔作用〕
上記第6の特徴によると、ファンの回転ボス部に羽根の支軸を鍔付きブッシュを介して抜け止め支持させてあるから、ブッシュの鍔で抜け止めすることで抜け止めのための面圧を小さくして支軸を回転を抵抗少なく円滑に行える。
【0023】
〔発明の効果〕
上記第6の発明では、羽根の姿勢切り換えを円滑良好に行うことができるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
収穫機の一例であるコンバインは、図1に示すように、クローラ走行装置1を備えた走行機体2の前部に、植立穀稈を刈り取って後方に搬送する刈取部3を昇降自在に連結し、前記走行機体2に、前記刈取部3からの穀稈を脱穀処理する脱穀装置4とこの脱穀装置4からの穀粒を貯溜するタンク5と搭乗運転部6とを、脱穀装置4の左右横脇にタンク5が位置しこのタンク5の前部に搭乗運転部6が位置する状態で搭載して構成されている。
【0025】
前記搭乗運転部6は、エンジン7を内装するボンネット8の上部に運転座席9を搭載支持させ、この運転座席の9の前方部に操縦塔10を配置した構造を備えている。
【0026】
前記ボンネット8の左右外側板部には、図2、図3にも示すように、防塵網11が張設された冷却風取り入れ口12が形成されており、この冷却風取り入れ口12と前記エンジン7との間には、ラジエータ13が配置され、前記エンジン7のうちこのラジエータ13に対向する部分には、図4にも示すように、エンジン7の出力軸7aにより伝動ベルト14を介してウォータポンプ15とともに駆動されるエンジン冷却用のファン16が取り付けられている。
【0027】
前記ファン16は、図5、図6にも示すように、前記伝動ベルト14を介して駆動される六角軸利用の駆動軸17と一体に回転する回転ボス部18に、回転に伴って起風する周方向複数の羽根19を装着して構成されている。前記各羽根19は、回転半径方向に沿った姿勢の回転ボス部18への取り付け用の支軸20とこの支軸20に固着した羽根体21とからなる。そして、羽根19は、図7の(イ)(ロ)、図8の(イ)(ロ)に示すように、支軸20のその軸芯周りでの回転により、ファン16の一方向への回転に伴い防塵網11・ラジエータ13とその記載順に風が通過することでラジエータ13を冷却するように風を発生させる冷却姿勢とファン16の一方向への回転に伴い前記とは逆方向でラジエータ13・防塵網11とその記載順に風が通過することで防塵網11に付着の藁屑などの塵埃を吹き飛ばし除去するように風を発生させる除塵姿勢とに切り換え自在なものである。前記羽根19は、図7の(イ)、図8の(イ)に示すように、冷却姿勢にあるときの受風面19aの裏側の面19bを図7の(ロ)、図8の(ロ)に示すように、防塵姿勢にあるときの受風面とするように姿勢を切り換えるものである。
【0028】
前記複数の羽根19を一括的に姿勢切り換えする操作手段は、図9にも示すように、前記回転ボス部18の凹部18aに入る状態で駆動軸17と一体に回転する回転部材22を軸芯方向に移動自在に設け、前記羽根19の支軸20に、ピン状の係合部23を先端に装着したアーム24を一体回転状態に装着し、軸芯方向に沿って設定範囲移動することにより前記係合部23に係合してアーム24を揺動させることにより羽根19を冷却姿勢と除塵姿勢との間で揺動させる二股状の操作部25を前記回転部材22に一体の状態で形成し、前記駆動軸17に対して直交する軸芯x周りに揺動することにより前記回転部材22を軸芯方向に移動させるシフトフォーク26を設け、このシフトフォーク26をピニオンギヤ31a及びセクタギヤ31bを介して揺動させるアクチュエータである電動モータ27を設け、この電動モータ27を正逆回転操作するスイッチ利用の操作具28と、前記羽根19が冷却姿勢に切り換わったときセクタギヤ31bに押圧操作されて電動モータ27を停止させる冷却姿勢固定用の停止スイッチ32と、前記羽根19が除塵姿勢に切り換わったときセクタギヤ31bに押圧操作されて電動モータ27を停止させる除塵姿勢固定用の停止スイッチ33とを設けて構成されている。30は、シフトフォーク26を介して回転部材22、つまり、羽根19を冷却姿勢に揺動付勢する揺動付勢手段の一例であるスプリングである。
【0029】
前記羽根19は、鍔付きブッシュ29を介して回転ボス部18に抜け止め支持されている。つまり、支軸20よりも径が大きいアーム24の軸芯部が鍔付きブッシュ29の鍔に摺動自在に接当することで回転ボス部18に対して抜け止めされるようになっている。
【0030】
また、前記羽根19は、付勢手段の一例であるスプリング30により冷却姿勢に揺動付勢されている。
【0031】
なお、前記電動モータ27の故障等の作動不良をセンサで検出し、検出時には報知装置を作動させるモニタ手段が組込まれている。
【0032】
〔別実施形態〕
上記実施の形態では、冷却姿勢にある羽根19の受風面19aの裏側の面19bが除塵姿勢のときの受風面19aとなるように羽根19を姿勢切り換えしたが、図10に示すように、冷却姿勢にある羽根19の受風面19aを除塵姿勢にあるときの受風面19aとするように羽根19を姿勢切り換えするようにしても良い。
【0033】
操作手段としては、羽根19、つまり、シフトフォーク26を手動力で操作する手動操作式のものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】コンバインの側面図
【図2】ボンネットの縦断背面図
【図3】ボンネットの横断平面図
【図4】エンジンの正面図
【図5】操作手段の切り欠き背面図
【図6】ファンの背面図
【図7】羽根の姿勢切り換えを示す要部の縦断背面図
【図8】羽根の姿勢切り換えを示す要部の平面図
【図9】操作手段要部の分解斜視図
【図10】別実施形態の羽根姿勢切り換えを示す要部の平面図
【符号の説明】
【0035】
16 ファン
12 冷却風取り入れ口
11 防塵網
19 羽根
19a 受風面
19b 裏側の面
27 アクチュエータ
22 回転部材
24 アーム
18 回転ボス部
29 鍔付きブッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能なファンによってエンジンの冷却を行うように構成されたエンジン冷却装置付き収穫機において、
前記ファンには、回転駆動部と一体回転可能に支持された回転ボス部と、この回転ボス部に姿勢変更可能に装着された複数個の羽根を備えると共に、ファンをその回転軸芯周りに一方向に回転させることによって、前記エンジンの冷却を行う第1姿勢とこの第1姿勢における風に対し逆方向の風を発生させる第2姿勢と間で、前記各羽根の姿勢を切り換え操作可能な姿勢変更手段が設けられ、
前記姿勢変更手段には、アクチュエータと、前記回転ボス部とともに一体回転する回転部材とを備えるとともに、前記回転部材と回転ボス部との間に羽根操作部が設けられ、
前記アクチュエータの作動に基づいて前記回転ボス部と前記回転部材との前記回転駆動部の軸芯方向の間隔を変更させることにより前記羽根操作部材を介して前記各羽根が前記第1姿勢と第2姿勢との間で切り換え可能に構成した操作手段を設けてあることを特徴とするエンジン冷却装置付き収穫機。
【請求項2】
前記羽根操作部は、前記回転ボス部に枢支された羽根の支軸と、この支軸に連結されて前記回転部材と回転ボス部との間隔変化に連動して揺動するアームを備え、このアームの揺動操作によって、前記羽根が前記第1姿勢と第2姿勢とに切り換え可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のエンジン冷却装置付き収穫機。
【請求項3】
前記回転ボス部の半径方向に穿設した孔に鍔付きブッシュを介して前記羽根の支軸を挿通し、支軸に取付けた前記アームにより抜け止めが施されていることを特徴とする請求項2記載のエンジン冷却装置付き収穫機。
【請求項4】
エンジン冷却装置が、前記エンジンとの間で熱交換を行うラジエータと、走行機体の外部から冷却用空気を取り込むための外気取り入れ口と、前記外気取り入れ口に張設された防塵網とを備え、
前記姿勢変更手段によって前記羽根が前記第1姿勢に切り換え操作された場合には、前記エンジンの出力軸に連動して前記ファンを一方向に回転させることによって、前記防塵網から前記エンジン又は前記ラジエータ或いはその両者に向かう冷却風が発生し、
前記姿勢変更手段によって前記羽根が前記第2姿勢に切り換え操作された場合には、前記エンジンの出力軸に連動して前記ファンを前記一方向に回転させることによって、前記エンジン又は前記ラジエータ或いはその両者から前記防塵網に向かう除塵風が発生するように構成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンジン冷却装置付き収穫機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−175059(P2007−175059A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39472(P2007−39472)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【分割の表示】特願2002−378164(P2002−378164)の分割
【原出願日】平成14年12月26日(2002.12.26)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】