説明

オゾン供給装置

【課題】オゾン漏れの発生を抑え、オゾンを効率よく利用することが可能なオゾン供給装置を提供する。
【解決手段】上記のオゾン供給装置は、車両に搭載され、排気浄化装置にオゾンを供給するためのものである。オゾン供給装置は、放電手段、ガス供給手段、衝突検知手段及び制御手段を備える。放電手段は、例えば放電容器であり、排気浄化装置と通路を介して接続されるとともに、放電を生じさせる複数の電極を有する。衝突検知手段は、例えば乗員保護装置であり、車両が衝突したことを検知する。ガス供給手段は、例えばコンプレッサであり、酸素を含むガスを放電手段に供給する。制御手段は、例えば電源制御部であり、放電手段及びガス供給手段を制御し、車両が衝突したことを衝突検知手段が検知した場合には、放電手段による放電を停止するとともに、ガス供給手段によるガス供給を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気浄化装置にオゾンを供給するオゾン供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、以下の特許文献1には、エンジンの始動時、低温状態において、排気浄化装置にオゾンを供給するオゾン供給装置が記載されている。また、特許文献2には、気体燃料タンクに貯蔵された気体燃料を燃焼させて駆動力を発生させる自動車において、衝突が予測されたときあるいは実際に衝突が生じたとき、気体燃料タンクの元弁を閉じる技術が記載されている。また、特許文献3にも本発明と関連のある技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−163887号公報
【特許文献2】特開2007−8255号公報
【特許文献3】特開2008−31927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の車両では、車両の衝突時においてオゾンを生成し続けると、オゾン漏れの発生によりオゾンを効率よく利用することができなくなる恐れがある。この点について、特許文献2、3にも何ら記載されていない。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、オゾン漏れの発生を抑え、オゾンを効率よく利用することが可能なオゾン供給装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点では、車両に搭載され、排気浄化装置にオゾンを供給するオゾン供給装置は、前記排気浄化装置と通路を介して接続されるとともに、放電を生じさせる複数の電極を有する放電手段と、酸素を含むガスを前記放電手段に供給するガス供給手段と、前記車両が衝突したことを検知する衝突検知手段と、前記放電手段及び前記ガス供給手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記車両が衝突したことを前記衝突検知手段が検知した場合には、前記放電手段による放電を停止するとともに、前記ガス供給手段によるガス供給を停止する。
【0007】
上記のオゾン供給装置は、車両に搭載され、排気浄化装置にオゾンを供給するためのものである。オゾン供給装置は、放電手段、ガス供給手段、衝突検知手段及び制御手段を備える。放電手段は、例えば放電容器であり、排気浄化装置と通路を介して接続されるとともに、放電を生じさせる複数の電極を有する。衝突検知手段は、例えば乗員保護装置であり、車両が衝突したことを検知する。ガス供給手段は、例えばコンプレッサであり、酸素を含むガスを放電手段に供給する。制御手段は、例えば電源制御部であり、放電手段及びガス供給手段を制御し、車両が衝突したことを衝突検知手段が検知した場合には、放電手段による放電を停止するとともに、ガス供給手段によるガス供給を停止する。これにより、車両の衝突時におけるオゾンの漏洩を抑えることができ、オゾンを効率良く利用することができる。
【0008】
上記のオゾン供給装置の他の一態様は、前記車両が衝突する危険性を検知する衝突危険性検知手段を備え、前記制御手段は、前記車両が衝突する危険性を前記衝突危険性検知手段が検知した場合には、前記放電手段による放電の放電量を制限するとともに、前記ガス供給手段により供給されるガスのガス流量を制限する。これにより、車両の衝突前において、装置内のオゾン量を減少させることができ、車両の衝突時におけるオゾンの漏洩をより確実に防止することができる。
【0009】
上記のオゾン供給装置の他の一態様は、前記制御手段は、前記車両が衝突するまでの時間が所定時間以内となった場合には、前記放電手段による放電を停止するとともに、前記ガス供給手段により供給されるガスのガス流量を最大にする。ここで、前記ガス供給手段のガス流量を最大にするとは、例えば、コンプレッサをフル回転させることである。これにより、装置内に残存しているオゾンを早期に掃気することができる。
【発明の効果】
【0010】
車両に搭載され、排気浄化装置にオゾンを供給するオゾン供給装置であって、前記排気浄化装置と通路を介して接続されるとともに、放電を生じさせる複数の電極を有する放電手段と、酸素を含むガスを前記放電手段に供給するガス供給手段と、前記車両が衝突したことを検知する衝突検知手段と、前記放電手段及び前記ガス供給手段を制御する制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記車両が衝突したことを前記衝突検知手段が検知した場合には、前記放電手段による放電を停止するとともに、前記ガス供給手段によるガス供給を停止する。これにより、車両の衝突時におけるオゾンの漏洩を抑えることができ、オゾンを効率良く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る車両の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】コンプレッサのガス流量及び放電電極間パルス電圧とオゾン要求量との関係を示す図。
【図3】車両の衝突の危険性が検知されてから車両の衝突が発生するまでのタイムチャート。
【図4】本実施形態に係るオゾン供給制御処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0013】
[装置構成]
図1は、本発明のオゾン供給装置が適用された車両100の全体構成を概略的に示している。図1において、実線矢印はガスの流れを示し、破線矢印は信号の流れを示している。
【0014】
車両100は、エンジン1、排気浄化装置2、オゾン生成器3、エンジンECU(Electronic Controlled Unit)4、プリクラッシュシステム5及び乗員保護装置6を備える。
【0015】
エンジン1には、排気浄化装置2が設けられた排気通路83が取り付けられている。エンジン1内で燃焼した混合気は、排気行程において排気バルブを介して排気通路83に排気ガスとして排出される。
【0016】
排気浄化装置2は、例えばNOx吸蔵還元触媒であり、ストイキよりもリーン、即ち、酸素過剰の酸化雰囲気において、排気ガス中のNOxを吸蔵し、ストイキよりもリッチ、即ち、燃料過剰の還元雰囲気又はストイキにおいて、吸蔵したNOxを放出するとともに、このNOxを還元浄化する。NOx吸蔵は、NOxを酸化して高次の窒素酸化物Ba(NOなどの硝酸塩としてNOx吸蔵物質に吸蔵することにより実現される。このため、NOx吸蔵還元反応を効率良く行うためには、排気ガス中のNOxが、NOよりも高次のNOやNなどの高次の窒素酸化物として存在することが望ましい。そこで、車両100には、排気浄化装置2に対してオゾンを供給するためのオゾン生成器3が設けられている。排気浄化装置2にオゾンが供給されることにより、排気ガス中のNOxとオゾンとが反応して、NOやNなどの高次の窒素酸化物の生成が促進される。
【0017】
オゾン生成器3は、コンプレッサ20、放電容器30、電源制御部11、コンプレッサ制御部12及び放電制御部13を有する。
【0018】
放電容器30は、不図示の複数の電極を有し、通路82を介して排気浄化装置2と接続されている。オゾン生成器3では、複数の電極間に放電を発生させることにより、酸素を含むガスが反応してオゾンが生成される。コンプレッサ20は、通路81を介して放電容器30と接続されており、通路81を介して、酸素を含むガスを放電容器30に供給する。コンプレッサ20は、当該ガスを圧縮して放電容器30に供給することが可能である。例えば、コンプレッサ20は、外界から取り込むとともに不図示のエアフィルタを介して清浄化した空気を放電容器30に圧縮供給する。コンプレッサ20により供給されたガスは、通路81を通過して放電容器30に達した後、生成されたオゾンとともに、通路82を通過して排気浄化装置2に達する。これにより、放電容器30で生成されたオゾンは排気浄化装置2に供給される。
【0019】
コンプレッサ制御部12は、コンプレッサ20の駆動装置である。コンプレッサ制御部12は、電源制御部11の制御を受けて、公知のPWM制御によりコンプレッサ20の駆動状態を制御するように構成されている。放電制御部13は、放電容器30の駆動装置であり、電源制御部11の制御を受けて、放電容器30の複数の電極間にパルス電圧を印加するように構成されている。このパルス電圧を以下では「放電電極間パルス電圧」と称することとする。
【0020】
コンプレッサ20のガス流量及び/又は放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数が変化することにより、オゾン生成器3に発生するオゾン量が変化する。具体的には、放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数が増加するほど、放電量が増加して、生成されるオゾン量が増加し、放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数が減少するほど、放電量が減少して、生成されるオゾン量が減少する。また、コンプレッサ20のガス流量が増加するほど、生成されるオゾン量が増加し、コンプレッサ20のガス流量が減少するほど、生成されるオゾン量が減少する。
【0021】
電源制御部11は、コンプレッサ制御部12及び放電制御部13を制御可能に構成された電子制御ユニットである。電源制御部11は、エンジンECU4、プリクラッシュシステム5及び乗員保護装置6からの信号に応じて、コンプレッサ制御部12及び放電制御部13を制御する。
【0022】
エンジンECU4は、CPU(Central Processing Unit)やメモリを有しており、クランク角センサや温度センサなどの不図示の各種センサからの検出信号に基づいて、エンジンの運転状態を求める。そして、エンジンECU4は、エンジンの運転状態に応じて、電源制御部11に対し、オゾンの供給を要求するオゾン供給要求を行う。具体的には、エンジンECU4は、エンジンの運転状態を基に、NOx吸蔵還元反応を効率良く行わせるのに適切なオゾン量(以下、「オゾン要求量」と称する)を求め、求められたオゾン要求量に対応する信号を電源制御部11に送信する。
【0023】
プリクラッシュシステム5は、ミリ波レーダセンサや画像センサなどのセンサを有しており、これらのセンサからの検出信号に基づいて、車両100の周囲の物体を検出するとともに当該物体との距離及び相対速度を求める。そして、プリクラッシュシステム5は、求められたこれらの情報に基づいて、車両100が当該物体に衝突する危険性があるか否かを示す衝突危険情報を求め、求められた衝突危険情報に対応する信号を電源制御部11に送信する。
【0024】
乗員保護装置6は、例えばエアバッグシステムであり、衝突の衝撃を検知するGセンサを有している。乗員保護装置6は、Gセンサからの検出信号に基づいて、車両100の衝突が発生したか否かを示す衝突情報を求め、求められた衝突情報に対応する信号を電源制御部11に送信する。
【0025】
なお、排気浄化装置2として、上述の例では、NOx吸蔵還元触媒であるとしているが、これに限られるものではないのは言うまでもない。例えば、エンジン1がディーゼルエンジンの場合には、排気浄化装置2として、NOx吸蔵還元触媒の代わりに、酸化触媒及びDPF(Diesel Particulate Filter)が用いられるとしても良い。酸化触媒は、排気中に含まれるCO、HC(主としてSOF)及びNO等を酸化可能に構成された触媒である。DPFは、排気ガス中のPM(粒子状物質)を捕捉可能に構成されたフィルタである。このような排気浄化装置2に対してオゾン供給器3よりオゾンを供給した場合にも、オゾンの酸化力が高いため、酸化触媒の機能を向上させることができる。
【0026】
[オゾン生成制御処理]
次に、本実施形態に係るオゾン生成制御処理について説明する。
【0027】
衝突の危険がない状態では、電源制御部11は、通常制御として、エンジンECU4から受け取ったオゾン要求量に応じて、コンプレッサ制御部12及び/又は放電制御部13を制御することにより、コンプレッサ20のガス流量及び/又は放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数を調整する。
【0028】
オゾン要求量と、コンプレッサ20のガス流量及び放電電極間パルス電圧との関係について図2を用いて説明する。図2において、破線201で示すグラフは、オゾン要求量とコンプレッサ20のガス流量との関係を示すグラフであり、実線202で示すグラフは、オゾン要求量と放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数との関係を示すグラフである。
【0029】
図2に示すように、電源制御部11は、オゾン要求量が増加した場合には、コンプレッサ20のガス流量及び/又は放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数を増加させて、生成されるオゾン量を増加させる。一方、電源制御部11は、オゾン要求量が減少した場合には、コンプレッサ20のガス流量及び/又は放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数を減少させて、生成されるオゾン量を減少させる。
【0030】
ここで、車両100の衝突が発生した場合には、排気浄化装置2やオゾン生成器3が衝突の衝撃により損傷を受けて、オゾンが放電容器30や通路82などからオゾンが漏れる可能性がある。従って、このような車両100の衝突時においてオゾンを生成し続けた場合には、オゾン漏れの発生によりオゾンを効率よく利用することができなくなる恐れがある。
【0031】
そこで、本実施形態では、電源制御部11は、車両100の衝突が発生したことを乗員保護装置6が検知した場合には、放電容器30内の放電を停止するとともに、コンプレッサ20による放電容器30へのガスの供給を停止することとする。以下、図3を用いて詳細に説明する。
【0032】
図3は、車両100の衝突の危険性が検知されてから車両100の衝突が発生するまでのタイムチャートを示している。
【0033】
図3において、衝突情報が「1」とは、車両100の衝突が発生していないことを示し、衝突情報が「0」とは、車両100の衝突が発生したことを示している。また、衝突危険情報が「1」とは、車両100の衝突が発生する危険性がないことを示しており、衝突危険情報が「0」とは、車両100の衝突が発生する危険性があることを示している。
【0034】
時刻t1になるまでは、衝突危険情報及び衝突情報はどちらも「1」となっている。従って、電源制御部11は、衝突の発生も衝突の危険性もないとして通常制御を行う。即ち、電源制御部11は、エンジンECU4から受け取ったオゾン要求量に応じて、コンプレッサ20のガス流量及び/又は放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数を調整する。
【0035】
プリクラッシュシステム5は、時刻t1において、車両100の衝突が発生する危険性を検知し、電源制御部11に送信する衝突危険情報を「1」から「0」に変化させる。電源制御部11は、衝突危険情報が「1」から「0」に変化したことを検知すると、衝突の危険性があるとして、コンプレッサ制御部12及び/又は放電制御部13を制御して、オゾンの生成量を制限する。具体的には、電源制御部11は、コンプレッサ20のガス流量を制限するとともに、放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数を制限して放電量を制限する。このようにすることで、オゾン生成量は制限され、放電容器30内のオゾン濃度は低下する。
【0036】
電源制御部11は、衝突危険情報が「1」から「0」に変化したことを検知した後、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内になったか否かを判定する。例えば、電源制御部11は、衝突危険情報が「1」から「0」に変化したことを検知してから一定時間経過したか否かを判定することにより、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内になったか否かを判定する。図3に示す例では、電源制御部11は、時刻t2において、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内となったと判定する。このとき、電源制御部11は、放電制御部13を制御して、放電容器30内の放電を停止させてオゾンの生成を中止するとともに、コンプレッサ制御部12を制御して、コンプレッサ20をフル回転させてガス流量を最大にする。これにより、放電容器30や通路82に残留しているオゾンを早期に掃気することができる。
【0037】
乗員保護装置6は、時刻t3において、車両100の衝突が発生したことを検知し、電源制御部11に送信する衝突危険情報を「1」から「0」に変化させる。電源制御部11は、衝突情報が「1」から「0」に変化したことを検知すると、コンプレッサ制御部12を制御して、コンプレッサ20を停止させる。このようにすることで、車両100の衝突時におけるオゾンの漏洩を抑えることができる。
【0038】
以上をまとめると、本実施形態に係るオゾン生成制御処理では、電源制御部11は、電源制御部11は、車両100の衝突が発生したことを乗員保護装置6が検知した場合には、放電容器30による放電を停止するとともに、コンプレッサ20による放電容器30へのガスの供給を停止する。これにより、車両100の衝突時におけるオゾンの漏洩を抑えることができ、オゾンを効率良く利用することができる。また、本実施形態に係るオゾン生成処理では、電源制御部11は、車両100の衝突前に、車両100が衝突する危険性をプリクラッシュシステム5が検知した場合には、放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数を制限して放電量を制限するとともに、コンプレッサ20のガス流量を制限する。これにより、車両100の衝突前において、生成されるオゾン量を減少させることができ、衝突時におけるオゾンの漏洩をより確実に抑えることができる。ここで、さらに、電源制御部11は、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内となったと判定した場合には、放電制御部13を制御して、放電容器30内の放電を停止させるとともに、コンプレッサ20をフル回転させてガス流量を最大にする。これにより、放電容器30や通路82に残留しているオゾンを早期に掃気することができる。
【0039】
次に、上述のオゾン生成制御処理について、図4に示すフローチャートを用いて説明する。図4に示すフローチャートでは、電源制御部11は、衝突危険情報及び衝突情報に応じて、コンプレッサ20のガス流量及び放電電極間パルス電圧を制御する。以下、具体的に説明する。
【0040】
まず、ステップS101において、電源制御部11は、エンジンECU4からの信号に基づいて、オゾン供給要求があるか否かについて判定する。ステップS101において、電源制御部11は、オゾン供給要求がないと判定した場合には(ステップS101:No)、ステップS112の処理へ進む。ステップS112において、電源制御部11は、放電電極間パルス電圧をオフにして放電容器30内の放電を停止する。続くステップS113において、電源制御部11は、コンプレッサ20を停止させた後、本制御処理をリターンする。
【0041】
一方、ステップS101において、電源制御部11は、オゾン供給要求があると判定した場合には(ステップS101:Yes)、ステップ102の処理へ進む。ステップS102において、電源制御部11は、プリクラッシュシステム5からの信号、具体的には衝突危険性情報に基づいて、衝突の危険性があるか否かについて判定する。ステップS102において、電源制御部11は、衝突の危険性があると判定した場合には(ステップS102:Yes)、ステップS108の処理へ進む。ステップS108において、電源制御部11は、オゾン生成量の制限を行う、具体的には、コンプレッサ20のガス流量を制限するとともに、放電電極間パルス電圧のパルス繰り返し数を制限して放電量を制限する。これにより、車両100の衝突前に、生成されるオゾン量を減少させることができ、衝突時におけるオゾンの漏洩をより確実に抑えることができる。この後、電源制御部11は、ステップS109の処理へ進む。
【0042】
ステップS109において、電源制御部11は、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内となったか否かについて判定する。ステップS109において、電源制御部11は、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内になっていないと判定した場合には(ステップS109:No)、ステップS102の処理へ戻る。一方、ステップS109において、電源制御部11は、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内になっていると判定した場合には(ステップS109:Yes)、ステップS110の処理へ進む。ステップS110において、電源制御部11は、放電電極間パルス電圧をオフにする。続くステップS112において、電源制御部11は、コンプレッサ20をフル回転させてガス流量を最大にする。これにより、放電容器30や通路82に残留しているオゾンを早期に掃気することができる。この後、電源制御部11は本制御処理をリターンする。
【0043】
先に述べたステップS102において、電源制御部11は、衝突の危険性がないと判定した場合には(ステップS102:No)、ステップS103の処理へ進む。ステップS103において、電源制御部11は、乗員保護装置6からの信号、具体的には、衝突情報に基づいて、衝突が発生したか否かについて判定する。ステップS103において、電源制御部11は、衝突が発生したと判定した場合には(ステップS103:Yes)、ステップS107の処理へ進み、コンプレッサ20を停止する。これにより、車両100の衝突時におけるオゾンの漏れを抑えることができる。この後、電源制御部11は、本制御処理をリターンする。
【0044】
一方、ステップS103において、電源制御部11は、衝突が発生していないと判定した場合には(ステップS103:No)、ステップS104の処理へ進み、通常制御を行う。即ち、電源制御部11は、エンジンECU4から受信したオゾン要求量に応じて、放電電極間パルス電圧を制御するとともに(ステップS104)、コンプレッサ20を制御して(ステップS105)、オゾン生成を行う。この後、電源制御部11は、本制御処理をリターンする。
【0045】
以上に述べたことから分かるように、本実施形態に係るオゾン生成制御では、電源制御部11は、車両100の衝突が発生したことを乗員保護装置6が検知した場合には、放電容器30による放電を停止するとともに、コンプレッサ20による放電容器30へのガスの供給を停止する。このようにすることで、車両100の衝突時におけるオゾンの漏れを抑えることができる。
【0046】
[変形例]
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。例えば、上述の実施形態では、電源制御部11は、車両100の衝突が発生するまでの時間がt秒以内になったと判定した場合に、放電容器30内の放電を停止させるとともに、コンプレッサ20をフル回転させてガス流量を最大にするとしているがこれに限られない。このようにする代わりに、電源制御部11は、車両100が衝突する危険性をプリクラッシュシステム5が検知した段階で、放電容器30内の放電を停止させるとともに、コンプレッサ20をフル回転させてガス流量を最大にするとしても良い。
【0047】
また、上述の実施形態では、電源制御部11は、車両100の衝突が発生したことを乗員保護装置6が検知した場合に、放電容器30による放電を停止するとともに、コンプレッサ20による放電容器30へのガスの供給を停止するとしているがこれに限られない。このようにする代わりに、又は、加えて、車両100は、車両が転覆したことを検知する車両転覆センサを有することとし、電源制御部11は車両転覆センサを用いて上述の制御を行うとしてもよい。つまり、電源制御部11は、車両が転覆したことを車両転覆センサが検知した場合にも、放電容器30による放電を停止するとともに、コンプレッサ20による放電容器30へのガスの供給を停止するとしても良い。これにより、車両100の転覆時においても、オゾンの漏洩を抑えることができる。
【符号の説明】
【0048】
1 エンジン
2 排気浄化装置
3 オゾン生成器
4 エンジンECU
5 プリクラッシュシステム
6 乗員保護装置
11 電源制御部
12 コンプレッサ制御部
13 放電制御部
20 コンプレッサ
30 放電容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、排気浄化装置にオゾンを供給するオゾン供給装置であって、
前記排気浄化装置と通路を介して接続されるとともに、放電を生じさせる複数の電極を有する放電手段と、
酸素を含むガスを前記放電手段に供給するガス供給手段と、
前記車両が衝突したことを検知する衝突検知手段と、
前記放電手段及び前記ガス供給手段を制御する制御手段と、を備え
前記制御手段は、前記車両が衝突したことを前記衝突検知手段が検知した場合には、前記放電手段による放電を停止するとともに、前記ガス供給手段によるガス供給を停止することを特徴とするオゾン供給装置。
【請求項2】
前記車両が衝突する危険性を検知する衝突危険性検知手段を備え、
前記制御手段は、前記車両が衝突する危険性を前記衝突危険性検知手段が検知した場合には、前記放電手段による放電の放電量を制限するとともに、前記ガス供給手段により供給されるガスのガス流量を制限する請求項1に記載のオゾン供給装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記車両が衝突するまでの時間が所定時間以内となった場合には、前記放電手段による放電を停止するとともに、前記ガス供給手段により供給されるガスのガス流量を最大にする請求項2に記載のオゾン供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−69238(P2011−69238A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218933(P2009−218933)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】