説明

オフセット印刷用のコート剤および印刷物

【課題】 オフセット印刷におけるこすれ汚れ防止、静電気除去、滑り助長を可能とするコート剤と、こすれ汚れが防止され、静電気発生が抑制され、作業性が良好な印刷物を提供する。
【解決手段】 コート剤原液を、水溶媒中にエマルション型樹脂、粒状ワックス、非シリコーン系界面活性剤を含有するものとし、上記のエマルション型樹脂のガラス転移温度を0〜80℃の範囲とし、粒状ワックスの平均粒子径を2〜10μmの範囲とし、非シリコーン系界面活性剤の含有量を6〜20重量%の範囲とし、このコート剤原液を水で希釈して固形分含有量を0.6〜4重量%の範囲としてコート剤とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷用、特にオフセット商業印刷用のコート剤と、このコート剤を用いて印刷した印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
オフセット印刷による商業印刷では、こすれ汚れの防止や静電気除去を目的として、オフセット印刷とインラインでコート剤を塗布することが行われている。
印刷面の保護を目的としたコート剤として、例えば、反応性樹脂に無機粒子を含有させたコート剤(特許文献1)、あるいは、シリコン系のコート剤が使用されている。
また、従来から紙器製品に用いられているコート剤として、感光性樹脂を用いたコート剤(特許文献2)が使用されている。
【特許文献1】特開2001−335752号公報
【特許文献2】特開平8−132594号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述の反応性樹脂に無機粒子を含有させたコート剤は、コート剤の固形分含有量が30重量%以上であり、オフセット印刷による商業印刷には適用できないものであった。
また、シリコン系のコート剤は、こすれ汚れ防止の効果が低く、さらに、飛散し易いため、作業環境の空気浄化装置の触媒の劣化を引き起こすという問題があった。
一方、上述の紙器製品用のコート剤は、紙面に十分な平滑性と光沢を付与することが目的であり、このためコート剤の固形分含有量が30重量%以上であり、オフセット印刷による商業印刷には適用できないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、従来のシリコンを使用したコート剤に代わる新規なコート剤を種々検討してなされたものである。すなわち、本発明は、オフセット印刷用のコート剤において、水溶媒中にエマルション型樹脂、粒状ワックス、非シリコーン系界面活性剤を含有し、前記エマルション型樹脂のガラス転移温度は0〜80℃の範囲であり、前記粒状ワックスの平均粒子径は2〜10μmの範囲であり、前記非シリコーン系界面活性剤の含有量は6〜20重量%の範囲であるコート剤原液を、水で希釈して固形分含有量を0.6〜4重量%の範囲にするような構成とした。
本発明の他の態様として、前記エマルション型樹脂と前記粒状ワックスの含有比は、80:20〜50:50(重量比)の範囲であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記エマルション型樹脂は、アクリル樹脂、スチレン/アクリル共重合樹脂、エチレン/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂の少なくとも1種であるような構成とした。
【0005】
本発明の他の態様として、前記粒状ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアマイドワックス、アクリルワックス、シリコンワックス、エポキシワックス、パラフィンワックスの少なくとも1種であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記非シリコーン系界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系重合物系界面活性剤の少なくとも1種であるような構成とした。
本発明の他の態様として、消泡剤として、アセチレングリコール系、アクリル系重合物系、ポリエーテル系、金属石鹸系、鉱物油系の非シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を0.01〜2重量%の範囲で前記コート剤原液中に含有するような構成とした。
【0006】
本発明の他の態様として、沈降防止剤として、ポリエーテル系、ウレタン変性ポリエーテル系、変性ポリアクリル酸系の粘弾性調整剤の少なくとも1種を1〜10重量%の範囲で前記コート剤原液中に含有するような構成とした。
また、本発明の印刷物は、基材上にオフセット印刷により印刷されたインキ層と、該インキ層を被覆するように前記基材上に形成されたコート剤層とを少なくとも有し、該コート剤層は上述のいずれかのコート剤を塗布し乾燥して形成したものであるような構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明のコート剤は、オフセット印刷におけるこすれ汚れを防止し、静電気を除去して印刷物どうしの付着を防止し、さらに、印刷物に適度の滑り性を付与して、印刷物の取り扱い作業性や、製本加工等の加工作業性を向上させる効果を奏するとともに、従来のシリコンを使用したコート剤に比べて飛散が生じ難く、作業環境の空気浄化装置の触媒の劣化防止が可能である。
また、本発明の印刷物は、オフセット印刷により印刷されたインキ層を被覆するように基材上にコート剤層を備え、このコート剤層が本発明のコート剤を塗布、乾燥して形成したものであるため、インキ層と基材の両方にコート剤層が形成されており、このコート剤層によって、こすれ汚れが防止され、静電気発生が抑制され、また、作業性が良好なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の最適な実施形態について説明する。
[コート剤]
本発明のコート剤は、水溶媒中にエマルション型樹脂、粒状ワックス、非シリコーン系界面活性剤を含有するコート剤原液を水で希釈して、固形分含有量を0.6〜4重量%、好ましくは1〜2重量%の範囲としたものである。そして、エマルション型樹脂のガラス転移温度は0〜80℃、好ましくは15〜60℃の範囲である。また、粒状ワックスの平均粒子径は、2〜10μm、好ましくは2〜6μmの範囲である。さらに、コート剤原液に含有される非シリコーン系界面活性剤の含有量は6〜20重量%、好ましくは6〜10重量%の範囲である。
【0009】
本発明のコート剤を構成するエマルション型樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、スチレン・アクリル共重合樹脂、エチレン・アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂、スチレン・ブタジエン共重合樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン共重合樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂等を挙げることができ、その平均粒子径が0.01〜0.20μm、好ましくは0.05〜0.15μmの範囲であり、分子量が200,000以上であることが好ましい。エマルション型樹脂のガラス転移温度が0℃未満であると、印刷物のブロッキング発生を防止する効果が不十分となり、一方、80℃を超えると、造膜性が低下して良好なコート剤層を形成することが困難となる。尚、本発明のおけるガラス転移温度は、示差走査熱量計およびFTレオメーターにより測定する。
【0010】
本発明のコート剤を構成する粒状ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアマイドワックス、アクリルワックス、シリコンワックス、エポキシワックス、パラフィンワックス、ポリカーボネートワックス、カルナバワックス、エチレン・酢酸ビニル共重合体、四フッ化エチレンワックス等を挙げることができる。粒状ワックスの平均粒子径が2μm未満、あるいは、10μmを超えると、造膜されたコート剤層の耐摩耗性が低下して、こすれ汚れ防止が不十分となる。尚、本発明のおける平均粒子径は、コールターカウンター法により測定する。
【0011】
本発明のコート剤を構成する非シリコーン系界面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系重合物系界面活性剤等を挙げることができ、より具体的には、エアープロダクツ社製のオルフィンPD−001等を挙げることができる。コート剤原液における非シリコーン系界面活性剤の含有量が6重量%未満であると、造膜されたコート剤層のレベリング性が不十分となり、本発明の効果が得られず、また、20重量%を超えると、印刷物のブロッキングが生じ易く、また滑り性を悪化させることとなり好ましくない。
【0012】
本発明のコート剤では、固形分含有量が0.6重量%未満であると、造膜されたコート剤層の滑り性が不十分となり、印刷物の取り扱い作業性や、製本加工等の加工作業性を向上させる効果が得られない。一方、4重量%を超えると、造膜されたコート剤層の滑り性が過大となり、印刷物の取り扱い作業性や、製本加工等の加工作業性が低下するとともに、コート剤のコストが増大して好ましくない。
【0013】
上述のような本発明のコート剤では、エマルション型樹脂と粒状ワックスの含有比を、80:20〜50:50、好ましくは70:30〜50:50、更に好ましくは70:30〜60:40の範囲(重量比)とすることができる。粒状ワックスに対するエマルション型樹脂の含有比が上記の範囲を超えると、造膜されたコート剤層の耐摩耗性が低下して、こすれ汚れ防止が不十分となるとともに、コート剤層の滑り性が不十分となり、印刷物の取り扱い作業性や、製本加工等の加工作業性を向上させる効果が得られない場合がある。また、粒状ワックスに対するエマルション型樹脂の含有比が上記の範囲未満であると、造膜されたコート剤層の滑り性が大きくなりすぎ、印刷物の取り扱い作業性や、製本加工等の加工作業性が低下して好ましくない。
尚、本発明のコート剤は、上述の必須成分の他に、必要に応じて、消泡剤、沈降防止剤、スリップ剤、造膜助剤、分散剤、ブロッキング防止剤等の添加剤を含有するものであってもよい。
【0014】
消泡剤としては、例えば、アセチレングリコール系、アクリル系重合物系、ポリエーテル系、金属石鹸系、鉱物油系等の非シリコーン系界面活性剤、より具体的には、旭電化工業(株)製アデカネート B−940等を挙げることができる。このような消泡剤のコート剤原液における含有量は、0.01〜2重量%、好ましくは0.5〜1重量%の範囲で適宜設定することができる。
また、沈降防止剤として、例えば、ポリエーテル系、ウレタン変性ポリエーテル系、変性ポリアクリル酸系等の粘弾性調整剤、より具体的には、サンノプコ(株)製SNシックナー618等を挙げることができる。このような沈降防止層のコート剤原液における含有量は、1〜10重量%、好ましくは2〜5重量%の範囲で適宜設定することができる。
【0015】
本発明のコート剤に使用するコート剤原液は、水に上述の必須の成分、および必要に応じて他の成分を分散溶解して調製することができる。コート剤原液の調製やコート剤原液の希釈に使用する水は、軟水、イオン交換水、純水、水道水、井戸水等であってよく、特に制限はない。
本発明のコート剤を印刷物に塗布する方法は特に制限はなく、ロールコート法、スプレー法等を用いることができる。
【0016】
[印刷物]
本発明の印刷物は、基材上にオフセット印刷により印刷されたインキ層と、このインキ層を被覆するように基材上に形成されたコート剤層とを少なくとも有するものであり、コート剤層は上述の本発明のコート剤を塗布し乾燥して形成したものである。
本発明の印刷物を構成する基材は特に制限はなく、上質紙、コート紙、アート紙、マットコート紙等であってよい。
インキ層は、オフセット印刷により形成された層であり、使用する平版インキの種類、色には特に制限はない。
【0017】
コート剤層は、上述の本発明のコート剤を、例えば、ロールコート法、スプレー法等により塗布し乾燥したものである。このコート剤層は、従来のシリコン系のコート剤を使用した場合と異なり、インキ層と基材の両方に形成されており、このコート剤層によって、こすれ汚れが防止され、静電気発生が抑制される。また、本発明の印刷物は、取り扱い作業性や、製本加工等の加工作業性が良好なものである。
【実施例】
【0018】
次に、実施例を示して本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
<コート剤の調製>
エマルション型樹脂として、ガラス転移温度(Tg)が異なる下記の7種のスチレン・アクリル共重合体の樹脂A〜Gを準備した。
・樹脂A : ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7100
ガラス転移温度:−10℃、平均粒子径:0.10μm
・樹脂B : ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル711
ガラス転移温度:0℃、平均粒子径:0.09μm
・樹脂C : ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル741
ガラス転移温度:15℃、平均粒子径:0.10μm
・樹脂D : ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7600
ガラス転移温度:35℃、平均粒子径:0.09μm
・樹脂E : ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル352
ガラス転移温度:60℃、平均粒子径:0.10μm
・樹脂F : ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7640
ガラス転移温度:80℃、平均粒子径:0.12μm
・樹脂G : ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7610
ガラス転移温度:95℃、平均粒子径:0.13μm
【0019】
上記の7種の樹脂A〜Gを用いて、下記組成で7種のコート剤原液を調製した。次いで、これらの7種のコート剤原液を水で希釈して固形分含有量が1重量%のコート剤(試料A1〜G1)とした。
(コート剤原液の組成)
・エマルション型樹脂(樹脂A〜Gのいずれか) … 21重量部
・ポリエチレンワックス(平均粒子径:3μm) … 9重量部
(三井化学(株)製 ケミパール W−300)
・レベリング剤(非シリコーン系界面活性剤) … 10重量部
(エアープロダクツ社製 オルフィンPD−001)
・消泡剤(鉱物油) … 1重量部
(旭電化工業(株)製 アデカネート B−940)
・沈降防止剤(変性ポリアクリル酸ナトリウム系) … 5重量部
(サンノプコ(株)製 SNシックナー618)
・水 … 54重量部
【0020】
<印刷物の作製>
上質紙(坪量:81.4g/m2)の片面に下記の条件でオフセット印刷を行い、この印刷面上にインラインで上述の7種のコート剤(試料A1〜G1)を用いてロールコート法によりコート剤層を形成し、7種の印刷物(試料1−1〜1−7)を得た。
(オフセット印刷条件)
・印刷機 : 三菱重工業(株)製 LITHOPIA NEO
・平版インキ : ザ・インクテック(株)製 WEB SHINE WSL SOYBI
・印刷速度 : 450m/分
(ロールコート条件)
・金属ロール : 直径100mm
【0021】
<評 価>
上述のように作製した7種の印刷物(試料1−1〜1−7)について、下記の条件で耐摩耗性、ブロッキング性を試験して、結果を下記の表1に示した。
【0022】
(耐摩耗性試験の条件)
印刷物のインキ層部位を2.7cm×22.0cmの大きさに切り出して20℃、65%RHの環境に2時間放置し、その後、学振型摩耗試験機((株)テスター産業製)の本体に取り付け、一方、模造紙(坪量64g/m2)を2.2cm×7.0cmの大きさに切り出して20℃、65%RHの環境に2時間放置し、その後、スレッド(摺動片)に取り付ける。次いで、スレッドに重りを載置して200gの重量とした状態で本体上を10往復させ、印刷物に対して模造紙を摺動させる。その後、下記の評価基準で印刷面を評価する。評価結果が「3」以上を実用上問題のないレベルとする。
(評価基準)
5 : インキ取られ無し、傷付き無し。
4 : インキ取られ一部有り、傷付き無し。
3 : インキ取られ一部有り、傷付き5本以下で有り。
2 : インキ取られが有り、傷付き6〜9本の範囲で有り。
1 : インキ取られが有り、傷付き10本以上有り。
0 : 全面インキ取られが有り、帯状の傷付き有り。
【0023】
(ブロッキング性試験の条件)
印刷物のインキ層部位を5cm×4cmの大きさに切り出した試験片を、印刷面と非印刷面が接触するようにして2枚重ね合わせ、これを試験片よりも大きい1組のステンレス板で挟持し、ステンレス板に重りを載置して0.03MPaの荷重とした状態で、50℃、80%RHの恒温恒湿機内に24時間放置し、その後、恒温恒湿機から取り出し室温で1時間放置した後、試験片を剥がしてブロッキング性を下記の評価基準で評価する。評価結果が「△」以上を実用上問題のないレベルとする。
(評価基準)
◎ : 試験片の付着なし。
○ : 点々とした付着がみられる。
○〜△ : 試験片の20%未満の面積で付着がみられる。
△ : 試験片の20〜50%未満の面積で付着がみられる。
× : 試験片の50%以上の面積で付着がみられる。
【0024】
【表1】

【0025】
[実施例2]
<コート剤の調製>
粒状ワックスとして、平均粒子径が異なる下記の8種のポリエチレン(PE)ワックスA〜H(三井化学(株)製、および(株)岐阜セラック製造所製)を準備した。
・PEワックスA : 平均粒子径:1μm
・PEワックスB : 平均粒子径:2μm
・PEワックスC : 平均粒子径:3μm
・PEワックスD : 平均粒子径:4μm
・PEワックスE : 平均粒子径:6μm
・PEワックスF : 平均粒子径:8μm
・PEワックスG : 平均粒子径:10μm
・PEワックスH : 平均粒子径:12μm
【0026】
上記の8種のPEワックスA〜Hを用いて、下記組成で8種のコート剤原液を調製した。次いで、これらの8種のコート剤原液を水で希釈して固形分含有量が1重量%のコート剤(試料A2〜H2)とした。
(コート剤原液の組成)
・エマルション型樹脂 … 21重量部
(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7600)
ガラス転移温度:35℃、平均粒子径:0.09μm
・ポリエチレンワックス(PEワックスA〜Hのいずれか)… 9重量部
(三井化学(株)製、および(株)岐阜セラック製造所製)
・レベリング剤(非シリコーン系界面活性剤) … 10重量部
(エアープロダクツ社製 オルフィンPD−001)
・消泡剤(鉱物油) … 1重量部
(旭電化工業(株)製 アデカネート B−940)
・沈降防止剤(変性ポリアクリル酸ナトリウム系) … 5重量部
(サンノプコ(株)製 SNシックナー618)
・水 … 54重量部
【0027】
<印刷物の作製>
実施例1と同様にして、上質紙(坪量:81.4g/m2)の片面にオフセット印刷を行い、この印刷面上にインラインで上述の8種のコート剤(試料A2〜H2)を用いて、実施例1と同様の条件でコート剤層を形成し、8種の印刷物(試料2−1〜2−8)を得た。
【0028】
<評 価>
上述のように作製した8種の印刷物(試料2−1〜2−8)について、実施例1と同様の条件で耐摩耗性、ブロッキング性を試験して、結果を下記の表2に示した。
【0029】
【表2】

【0030】
[実施例3]
<コート剤の調製>
粒状ワックスとして、平均粒子径が異なる下記の8種のポリプロピレン(PP)ワックスA〜H(SHAMROCK社製、およびMICROPOWDERS社製)を準備した。
・PPワックスA : 平均粒子径:1μm
・PPワックスB : 平均粒子径:2μm
・PPワックスC : 平均粒子径:3μm
・PPワックスD : 平均粒子径:4μm
・PPワックスE : 平均粒子径:6μm
・PPワックスF : 平均粒子径:8μm
・PPワックスG : 平均粒子径:10μm
・PPワックスH : 平均粒子径:12μm
【0031】
上記の8種のPPワックスA〜Hを用いて、下記組成の8種のコート剤原液を調製した。次いで、これらの8種のコート剤原液を水で希釈して固形分含有量が1重量%のコート剤(試料A3〜H3)とした。
(コート剤原液の組成)
・エマルション型樹脂 … 21重量部
(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7600)
ガラス転移温度:35℃、平均粒子径:0.09μm
・ポリエチレンワックス(PEワックスA〜Hのいずれか)… 9重量部
(SHAMROCK社製、およびMICROPOWDERS社製)
・レベリング剤(非シリコーン系界面活性剤) … 10重量部
(エアープロダクツ社製 オルフィンPD−001)
・消泡剤(鉱物油) … 1重量部
(旭電化工業(株)製 アデカネート B−940)
・沈降防止剤(変性ポリアクリル酸ナトリウム系) … 5重量部
(サンノプコ(株)製 SNシックナー618)
・水 … 54重量部
【0032】
<印刷物の作製>
実施例1と同様にして、上質紙(坪量:81.4g/m2)の片面にオフセット印刷を行い、この印刷面上にインラインで上述の8種のコート剤(試料A3〜H3)を用いて、実施例1と同様の条件でコート剤層を形成し、8種の印刷物(試料3−1〜3−8)を得た。
【0033】
<評 価>
上述のように作製した8種の印刷物(試料3−1〜3−8)について、実施例1と同様の条件で耐摩耗性、ブロッキング性を試験して、結果を下記の表3に示した。
【0034】
【表3】

【0035】
[実施例4]
<コート剤の調製>
エマルション型樹脂として、実施例1で使用したスチレン・アクリル共重合体の樹脂D(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7600、ガラス転移温度:35℃、平均粒子径:0.09μm)を準備した。
また、粒状ワックスとして、実施例2で使用したPEワックスC(三井化学(株)製 ケミパール W−300、平均粒子径:3μm)を準備した。
【0036】
上記の樹脂DとPEワックスCを使用し、下記組成の6種のコート剤原液を調製した。次いで、これらの6種のコート剤原液をそれぞれ水により希釈して、固形分含有量が下記の表4に示される6種(0.2〜6重量%)であるコート剤(試料A4〜F4)とした。
(コート剤原液の組成)
・エマルション型樹脂D … 21重量部
・PEワックスC … 9重量部
・レベリング剤(非シリコーン系界面活性剤) … 10重量部
(エアープロダクツ社製 オルフィンPD−001)
・消泡剤(鉱物油) … 1重量部
(旭電化工業(株)製 アデカネート B−940)
・沈降防止剤(変性ポリアクリル酸ナトリウム系) … 5重量部
(サンノプコ(株)製 SNシックナー618)
・水 … 54重量部
【0037】
<印刷物の作製>
実施例1と同様にして、上質紙(坪量:81.4g/m2)の片面にオフセット印刷を行い、この印刷面上にインラインで上述の6種のコート剤(試料A4〜F4)を用いて、実施例1と同様の条件でコート剤層を形成し、6種の印刷物(試料4−1〜4−6)を得た。
【0038】
<評 価>
上述のように作製した6種の印刷物(試料4−1〜4−6)について、実施例1と同様の条件で耐摩耗性、ブロッキング性を試験して、結果を下記の表4に示した。
また、6種の印刷物(試料4−1〜4−6)について、下記の条件で滑り角度を測定し、結果を下記の表4に示した。
【0039】
(滑り角度測定の条件)
印刷物のインキ層部位から、スレッド(滑り片(重量1000g))に取り付ける試料(6.5cm×11.5cm)と、傾斜角度測定機(テスター産業(株)製)の本体に取り付ける試料(10cm×20cm)を切り出し、20℃、65%RHの環境に2時間放置し、その後、印刷面が当接するように各試料をスレッドと本体に取り付け、傾斜台を傾斜させ、スレッドが自然滑走し始めた傾斜角度を測定する。この測定を3回繰り返し、平均値を滑り角度とする。滑り角度が20〜30°の範囲を実用上問題のないレベルとする。
【0040】
【表4】

【0041】
[実施例5]
<コート剤の調製>
エマルション型樹脂として、実施例1で使用したスチレン・アクリル共重合体の樹脂D(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7600、ガラス転移温度:35℃、平均粒子径:0.09μm)を準備した。
また、粒状ワックスとして、実施例2で使用したPEワックスC(三井化学(株)製 ケミパール W−300、平均粒子径:3μm)を準備した。
【0042】
上記の樹脂DとPEワックスCを使用し、下記組成の7種のコート剤原液を調製した。但し、この7種のコート剤原液のレベリング剤含有量は、下記の表5に示されるもの(4〜25%)とした。次いで、これらの7種のコート剤原液を水で希釈して、固形分含有量が1重量%のコート剤(試料A5〜G5)とした。
(コート剤の組成)
・エマルション型樹脂D … 21重量部
・PEワックスC … 9重量部
・レベリング剤(非シリコーン系界面活性剤) … 表5に示される含
(エアープロダクツ社製 オルフィンPD−001) 有量を達成する量
・消泡剤(鉱物油) … 1重量部
(旭電化工業(株)製 アデカネート B−940)
・沈降防止剤(変性ポリアクリル酸ナトリウム系) … 5重量部
(サンノプコ(株)製 SNシックナー618)
・水 … 39〜60重量部
【0043】
<印刷物の作製>
実施例1と同様にして、上質紙(坪量:81.4g/m2)の片面にオフセット印刷を行い、この印刷面上にインラインで上述の7種のコート剤(試料A5〜G5)を用いて、実施例1と同様の条件でコート剤層を形成し、7種の印刷物(試料5−1〜5−7)を得た。
【0044】
<評 価>
上述のように作製した7種の印刷物(試料5−1〜5−7)について、実施例1と同様の条件で耐摩耗性、ブロッキング性を試験して、結果を下記の表5に示した。
また、7種の印刷物(試料5−1〜5−7)について、実施例4と同様の条件で滑り角度を測定し、結果を下記の表5に示した。
【0045】
【表5】

【0046】
[実施例6]
<コート剤の調製>
エマルション型樹脂として、実施例1で使用したスチレン・アクリル共重合体の樹脂D(ジョンソンポリマー(株)製 ジョンクリル7600、ガラス転移温度:35℃、平均粒子径:0.09μm)を準備した。
また、粒状ワックスとして、実施例2で使用したPEワックスC(三井化学(株)製 ケミパール W−300、平均粒子径:3μm)を準備した。
【0047】
上記の樹脂DとPEワックスCを使用し、樹脂Dの含有量(X重量部)とPEワックスCの含有量(Y重量部)が、下記表6となるように、下記組成の6種のコート剤原液を調製した。次いで、これらの6種のコート剤原液を水で希釈して固形分含有量が1重量%のコート剤(試料A6〜F6)とした。
(コート剤原液の組成)
・エマルション型樹脂D … X重量部
(Xは表6に示される値)
・PEワックスC … Y重量部
(Yは表6に示される値)
・レベリング剤(非シリコーン系界面活性剤) … 10重量部
(エアープロダクツ社製 オルフィンPD−001)
・消泡剤(鉱物油) … 1重量部
(旭電化工業(株)製 アデカネート B−940)
・沈降防止剤(変性ポリアクリル酸ナトリウム系) … 5重量部
(サンノプコ(株)製 SNシックナー618)
・水 … 54重量部
【0048】
<印刷物の作製>
実施例1と同様にして、上質紙(坪量:81.4g/m2)の片面にオフセット印刷を行い、この印刷面上にインラインで上述の6種のコート剤(試料A6〜F6)を用いて、実施例1と同様の条件でコート剤層を形成し、6種の印刷物(試料6−1〜6−6)を得た。
【0049】
<評 価>
上述のように作製した6種の印刷物(試料6−1〜6−6)について、実施例1と同様の条件で耐摩耗性、ブロッキング性を試験して、結果を下記の表6に示した。
また、6種の印刷物(試料6−1〜6−6)について、実施例4と同様の条件で滑り角度を測定し、結果を下記の表6に示した。
【0050】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0051】
輪転、あるいは枚葉のオフセット印刷、特にオフセット商業印刷において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフセット印刷用のコート剤において、
水溶媒中にエマルション型樹脂、粒状ワックス、非シリコーン系界面活性剤を含有し、前記エマルション型樹脂のガラス転移温度は0〜80℃の範囲であり、前記粒状ワックスの平均粒子径は2〜10μmの範囲であり、前記非シリコーン系界面活性剤の含有量は6〜20重量%の範囲であるコート剤原液を、水で希釈して固形分含有量を0.6〜4重量%の範囲としたことを特徴とするコート剤。
【請求項2】
前記エマルション型樹脂と前記粒状ワックスの含有比は、80:20〜50:50(重量比)の範囲であることを特徴とする請求項1に記載のコート剤。
【請求項3】
前記エマルション型樹脂は、アクリル樹脂、スチレン/アクリル共重合樹脂、エチレン/アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、エチレン/酢酸ビニル共重合樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコート剤。
【請求項4】
前記粒状ワックスは、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリアマイドワックス、アクリルワックス、シリコンワックス、エポキシワックス、パラフィンワックスの少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のコート剤。
【請求項5】
前記非シリコーン系界面活性剤は、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アクリル系重合物系界面活性剤の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のコート剤。
【請求項6】
消泡剤として、アセチレングリコール系、アクリル系重合物系、ポリエーテル系、金属石鹸系、鉱物油系の非シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を0.01〜2重量%の範囲で前記コート剤原液中に含有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のコート剤。
【請求項7】
沈降防止剤として、ポリエーテル系、ウレタン変性ポリエーテル系、変性ポリアクリル酸系の粘弾性調整剤の少なくとも1種を1〜10重量%の範囲で前記コート剤原液中に含有することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のコート剤。
【請求項8】
基材上にオフセット印刷により印刷されたインキ層と、該インキ層を被覆するように前記基材上に形成されたコート剤層とを少なくとも有し、該コート剤層は請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のコート剤を塗布し乾燥して形成したものであることを特徴とする印刷物。

【公開番号】特開2007−296637(P2007−296637A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123758(P2006−123758)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【出願人】(591163650)日本化工塗料株式会社 (4)
【Fターム(参考)】