説明

キャスタ装置、及び車輪式ロボット

【課題】接地点からの床反力を検出する構造を、キャスタ装置に適用する。
【解決手段】支持枠22と基体10との間に介挿され、車輪21が受ける床反力を検出する感圧センサ31と、基体10に向けて支持枠22を付勢する付勢構造32と、備える。この付勢構造32は、上板22cの四隅に設けられており、夫々、上板22cに形成された貫通穴33と、この貫通穴33に挿通した状態で上端が基体10の下面に螺合され下端に拡径した頭部34aが形成されたストリッパボルト34と、このストリッパボルト34に挿通され頭部34aと上板22cとの間で弾発力を発生するコイルばね35と、このコイルばね35と上板22cとの間に介在するようにストリッパボルト34に外嵌されたリニアブッシュ36と、で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスタ装置、及びこれを備えた車輪式ロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒューマノイド型の脚式移動ロボットとして、上体と、この上体に第1の関節を介して連結される複数本の脚部と、この脚部の先端に第2の関節を介して連結される足部と、第2の関節と足部の接地端との間に配設された弾性体の内部及び弾性体の付近の少なくとも何れかに設けられ、第2の関節に対する足部の接地端の変位を検出する変位センサと、この変位センサの出力に基づいて足部に作用する床反力を算出する床反力算出部と、を備えたものがある(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3726058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の特許文献1に記載された従来技術は、接地点からの床反力を検出する構造が、脚式移動ロボットに限定されているため、キャスタによって移動する車輪式ロボットへの適用が難しい。
本発明の課題は、接地点からの床反力を検出する構造を、キャスタ装置に適用することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
〔発明1〕 この発明1に係るキャスタ装置は、車輪と、該車輪を回転可能に支持する支持部材とを備え、前記支持部材が所定の被取付部材に固定されるキャスタ装置であって、前記支持部材と前記被取付部材との間に介挿され、前記車輪が受ける床反力を検出する検出手段と、前記被取付部材に向けて前記支持部材を付勢する付勢構造と、を備える。
このような構成であれば、車輪が接地点から受ける床反力が支持部材を介して検出手段に伝達されるので確実に検出される。また、車輪が非接地状態にあるとしても、被取付部材に対する支持部材のガタつきが抑制され、検出手段に所定の予圧が与えられるので、検出誤差が抑制される。
なおここで、キャスタ装置とは、自由に方向が変わる車輪だけではなく、方向が固定された車輪をも含むものである。
【0005】
〔発明2〕 この発明2に係るキャスタ装置は、発明1において、前記付勢構造は、前記支持部材に形成される貫通穴と、該貫通穴に挿通した状態で一端が前記被取付部材に固定され他端側に拡径部が形成された軸部材と、該軸部材に挿通され前記拡径部と前記支持部材との間で弾発力を発生する弾性部材と、を備える。
このような構成であれば、被取付部材に対する支持部材のガタつきが確実に抑制される。また、弾性部材の種類や数量の選定次第で、検出手段に対して任意の予圧を与えることが可能となる。
【0006】
〔発明3〕 この発明3に係るキャスタ装置は、発明2において、前記付勢構造は、前記支持部材と前記弾性部材との間に介在するように前記軸部材に外嵌されたリニアブッシュを備える。
このような構成であれば、軸部材の傾き、及び軸部材に対する支持部材のガタつきが抑制されるので、車輪の安定した支持が可能となる。
【0007】
〔発明4〕 この発明4に係る車輪式ロボットは、発明1〜3の何れか一つに記載のキャスタ装置を備える。
【発明の効果】
【0008】
発明1に係るキャスタ装置によれば、車輪が接地点から受ける床反力が支持部材を介して検出手段に伝達されるので確実に検出することができる。また、車輪が非接地状態にあるとしても、被取付部材に対する支持部材のガタつきが抑制され、検出手段に所定の予圧が与えられるので、検出誤差を抑制することができる。
【0009】
発明2に係るキャスタ装置によれば、被取付部材に対する支持部材のガタつきを確実に抑制することができる。また、弾性部材の種類や数量の選定次第で、検出手段に対して任意の予圧を与えることができる。
【0010】
発明3に係るキャスタ装置によれば、軸部材の傾き、及び軸部材に対する支持部材のガタつきを抑制することができるので、車輪を安定して支持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔一実施形態〕
先ず、本実施形態の構成について説明する。
図1は、車輪式ロボットの正面図であり、図2は、その側面図である。
車輪式ロボット100は、略直方体の基体10と、この基体10の下面に回転可能な状態で設けられた駆動キャスタ20及び従動キャスタ40と、基体10の背面上部に設けられたハンドル60と、を備えている。駆動キャスタ20は、前後方向の略中央で、左右の両端側に配設され、従動キャスタ40は、左右方向の略中央で、前後の両端側に配設されており、車輪式ロボット100は、計4輪で接地している。
【0012】
図3は、駆動キャスタ20の正面図である。
駆動キャスタ20は、車輪21と、この車輪21を回転可能に支持する支持枠22と、を備えており、この支持枠22が基体10の下面に固定されている。
支持枠22は、車輪21を挟んで対向する略垂直な一対の側板22a、22bと、これら一対の側板22a、22bの上端同士を連結した略水平な上板22cと、で構成されている。一対の側板22a、22bには、車輪21と共に回転する車軸23が軸支されており、この車軸23には、基体内側の側板22bと車輪23との間に、従動プーリ24が固定されている。一方、基体内側の側板22bには、車軸23と略平行な回転軸25aを有する電動モータ25が固定されており、その回転軸25aには、従動プーリ24と周方向に対向する駆動プーリ26が固定されている。これら従動プーリ24と駆動プーリ26とに、図示しないタイミングベルトやVベルトを掛けることで、電動モータ25の動力を車輪21に伝達する。なお、動力伝達は、歯車やチェーンであってもよい。
【0013】
図4は、駆動キャスタ20の床反力検出構造を示す概略図である。
図5は、上板22cの平面図である。
支持枠22の上板22cと基体10との間には、車輪21が受ける床反力を検出する感圧センサ31が介挿されている。例えば、圧力の増加に伴って、電気的抵抗値が減少する高分子厚膜フィルム(PTF:Polymer Thick Film)などである。
【0014】
駆動キャスタ20は、感圧センサ31に対して予圧を与えるために、基体10に向けて支持枠22を付勢する付勢構造32を備えている。
付勢構造32は、上板22cの四隅に設けられており(図5参照)、夫々、上板22cに形成された貫通穴33と、この貫通穴33に挿通した状態で上端が基体10の下面に螺合され下端に拡径した頭部34aが形成されたストリッパボルト34と、このストリッパボルト34に挿通され頭部34aと上板22cとの間で弾発力を発生するコイルばね35と、このコイルばね35と上板22cとの間に介在するようにストリッパボルト34に外嵌されたリニアブッシュ36と、で構成される。すなわち、支持枠22は、上板22cがリニアブッシュ36及びワッシャ38を介してコイルばね35の上端に支持され、コイルばね35は、下端がストリッパボルト34の頭部34aに支持され、ストリッパボルト34は、上端が基体10に支持されている。リニアブッシュ36は、フランジを介して上板22cに固定されており、ストリッパボルト34を軸方向に摺動自在の状態で保持している。
【0015】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
車輪式ロボット100は、電動モータ25が駆動されると、その動力が駆動キャスタ20に伝達され、車輪21の回転に応じて走行することができる。ところで、スロープや小さな段差のある環境で走行するには、車輪21が受ける床反力を検出し、車輪式ロボット100の重心を特定する必要がある。
【0016】
本実施形態では、支持枠22と基体10との間に、感圧センサ31が介挿されているので、車輪21が接地点から受ける床反力が支持枠22を介して感圧センサ31に伝達されるので確実に検出することができる。
また、付勢構造32によって基体10に対して支持枠22を付勢しているので、車輪21が非接触状態にあるとしても、基体10に対する支持枠22のガタつきが抑制され、感圧センサ31に所定の予圧が与えられるので、検出誤差を抑制することができる。
【0017】
また、付勢構造32は、上板22cに形成された貫通穴33と、この貫通穴33に挿通した状態で上端が基体10の下面に螺合され下端に拡径した頭部34aが形成されたストリッパボルト34と、このストリッパボルト34に挿通され頭部34aと上板22cとの間で弾発力を発生するコイルばね35と、で構成されている。これにより、コイルばね35の弾発力に応じて、基体10に対する支持枠22のガタつきを確実に抑制することができる。また、コイルばね35の弾発力次第で、感圧センサ31に対して任意の予圧を与えることができる。
【0018】
また、コイルばね35と上板22cとの間に介在するようにストリッパボルト34に外嵌されたリニアブッシュ36を備えたことで、ストリッパボルト34の傾き、及びストリッパボルト34に対する支持枠22のガタつきを抑制することができるので、車輪を安定して支持することができる。
以上より、支持枠22が「支持部材」に対応し、基体10が「被取付部材」に対応し、感圧センサ31が「検出手段」に対応し、ストリッパボルト34が「軸部材」に対応し、頭部34aが「拡径部」に対応し、コイルばね35が「弾性部材」に対応している。
【0019】
〔他の変形例〕
なお、本実施形態では、リニアブッシュ36を備えているが、これに限定されるものではなく、コイルばね35の上端を支持枠22の上板22cに当接させれば、リニアブッシュ36を省略してもよい。
また、本実施形態では、駆動キャスタ20を基体10に固定しているが、これに限定されるものではなく、基体10に支持された脚部があれば、この脚部に固定してもよい。すなわち、駆動キャスタ20は、基体10の本体であれ肢体であれ、被取付部材に固定されるものであれば、如何なる構造にも適用することができる。
【0020】
また、本実施形態では、感圧センサ31で床反力を検出しているが、これに限定されるものではなく、ロードセルや歪ゲージなど、任意の検出手段を採用してもよい。
また、本実施形態では、コイルばね35によって支持枠22を付勢しているが、これに限定されるものではなく、皿ばねによって支持枠22を付勢してもよい。これによれば、皿ばねの枚数や重ね方向によって、弾発力の調整を容易に行うことができる。さらに、ウレタンスプリングのような、ある程度のばね性を有する弾性体によって、支持枠22を付勢してもよい。
【0021】
また、支持枠22やストリッパボルト34についても、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、他の形状に変更してもよい。
また、本実施形態では、接地点から受ける床反力を、駆動キャスタ20だけで検出しているが、これに限定されるものではなく、勿論、従動キャスタ40で検出してもよい。
また、本実施形態では、駆動キャスタ20を備えた車輪式ロボット100について説明したが、これに限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、如何なる構造にも適用することができる。例えば、台車、荷台、椅子、自転車、車椅子などのキャスタとして適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】車輪式ロボットの正面図である。
【図2】車輪式ロボットの側面図である。
【図3】駆動キャスタの正面図である。
【図4】駆動キャスタの床反力検出構造を示す概略図である。
【図5】上板の平面図である。
【符号の説明】
【0023】
100 車輪式ロボット
10 基体
20 駆動キャスタ
21 車輪
22 支持枠
22a 上板
23 車軸
24 従動プーリ
25 電動モータ
26 駆動プーリ
31 感圧センサ
32 付勢構造
33 貫通穴
34 ストリッパボルト
35 コイルばね
36 リニアブッシュ
38 ワッシャ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と、該車輪を回転可能に支持する支持部材とを備え、
前記支持部材が所定の被取付部材に固定されるキャスタ装置であって、
前記支持部材と前記被取付部材との間に介挿され、前記車輪が受ける床反力を検出する検出手段と、前記被取付部材に向けて前記支持部材を付勢する付勢構造と、を備えることを特徴とするキャスタ装置。
【請求項2】
前記付勢構造は、前記支持部材に形成される貫通穴と、該貫通穴に挿通した状態で一端が前記被取付部材に固定され他端側に拡径部が形成された軸部材と、該軸部材に挿通され前記拡径部と前記支持部材との間で弾発力を発生する弾性部材と、を備えることを特徴とする請求項1に記載のキャスタ装置。
【請求項3】
前記付勢構造は、前記支持部材と前記弾性部材との間に介在するように前記軸部材に外嵌されたリニアブッシュを備えることを特徴とする請求項2に記載のキャスタ装置。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載のキャスタ装置を備えることを特徴とする車輪式ロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−6157(P2010−6157A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−165711(P2008−165711)
【出願日】平成20年6月25日(2008.6.25)
【出願人】(000004204)日本精工株式会社 (8,378)
【Fターム(参考)】