説明

コンバインの収量計測装置、収量計測方法

【課題】 比較的安価な装備で、既存のコンバインに対して付加的に装備することが可能であって、収穫作業を行う作業者に手間を掛けることなく収穫区域単位の収量を精度良く計測することができる。
【解決手段】 コンバインに装備される排出機構7の排出口7d内に排出センサ10と停滞センサ11を取り付け、排出機構7から連続的に排出される収穫物の排出時間を、停滞センサ11の出力がOFFで排出センサ10の出力がONの検出時間データとしてデータ記録手段に記録する。データ記録手段に記録された検出時間データを基にコンバインの収量を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインを対象にした収量計測装置,収量計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
穀物等の収穫に用いられるコンバインは、刈り取り部、脱穀・選別部、収容部を備えると共に、収容部に溜められた収穫物を排出する排出機構を備えたものが多い。また、排出機構としては、収容部の底部に設けられる横送スクリューコンベヤと揚送スクリューコンベヤを組み合わせたアンローダと呼ばれる機構が一般に採用されており、これによると、横送スクリューコンベヤと揚送スクリューコンベヤの駆動によって連続的な排出が可能な機構になっている。
【0003】
このようなコンバインによる収穫作業は、農業生産の低コスト化の要求から、1台のコンバインで複数の圃場(収穫区域)の収穫を行うことがなされており、複数収穫区域の収穫物をカントリーエレベータやライスセンターといった共同施設に集めて乾燥・調整・貯蔵を行うことがなされているが、収穫区域毎の公平な収量分配や収穫区域毎の生産能力を把握するために、収穫区域毎の収穫作業で得られる収量をある程度正確に計測することが求められている。
【0004】
これに対して、収量計測が可能なコンバインは各種提案されている。下記特許文献1には、穀粒タンク内に流入する穀粒の流量をモニタリングする穀粒流量センサと穀粒タンク内部に取り付けたロードセルとを併用して、穀粒タンクの流入穀粒量を計測するものが記載されている。また、下記特許文献2には、コンバインにGPSセンサと収量センサを搭載させ、圃場内の区画毎の収量を計測することで、収量マップを作成することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−47号公報
【特許文献2】特開2004−24056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のコンバインに装備される収量センサは、前述した特許文献1に記載されるように、収容部となるタンクに流入する収穫物の流量を計測するものであるか、或いはタンクに流入された収穫物の重量を計測するものであり、何れの場合もコンバイン本体に対して高度な技術を用いる改良が必要になり、装置費用或いは改良費用が高価になるので農業経営体が簡易に導入することできない問題がある。また、既存のコンバインに対して付加的に装備することができないものであるから、経営規模に拘わらず広く普及させることが難しい。
【0007】
一方、前述した特許文献2に記載されるもののように、収量センサとGPSセンサとを搭載して圃場内の区画毎の収量を計測するものでは、圃場内の局部的な収量を把握する際には適するが、圃場全体の収量を収穫区域毎に求めるには適さず、前述したように収量センサが高価になるので装備がオーバースペックにならざるを得ない。
【0008】
また、アンローダ等の排出機構を備えるコンバインは、収容部に溜めた収穫物を排出機構からトラックの荷台に排出するので、トラックスケールで収量計測を行い、何処の圃場で収穫されたものであるかを記録するようにすれば、収穫区域毎の収量を把握することは可能であるが、各収穫区域での収穫時期が集中すると共に収穫に適した時間帯や天気が限られているので、複数収穫区域での収穫作業を短時間で効率よく終了する必要があり、トラックスケール等による収量計測を行うことが困難な状況にある。
【0009】
本発明は、このような問題に対処して、比較的安価な装備で、既存のコンバインに対して付加的に装備することが可能であって、収穫作業を行う作業者に手間を掛けることなく収穫区域単位の収量を精度良く計測することができるコンバインの収量計測装置、収量計測方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は以下の特徴を具備するものである。
【0011】
一つには、収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインに設置される収量計測装置であって、前記排出機構における排出口の内側に取り付けられ前記収穫物の連続排出を検出する排出センサと、該排出センサの検出時間データが記録されるデータ記録手段とを備え、記録された前記検出時間データから収量を求めることを特徴とする。
【0012】
また、前述の特徴を有するコンバインの収量計測装置において、現在時刻データを出力可能な時刻出力手段を備え、前記排出センサの検出時に前記時刻出力手段から出力される現在時刻データによって前記検出時間データが記録されることを特徴とする。
【0013】
また、前述の特徴を有するコンバインの収量計測装置において、前記排出口における前記排出センサの下流側に設けられ、前記排出口からの排出停滞を検出する停滞センサを備え、前記排出センサの検出時且つ前記停滞センサの非検出時に前記検出時間データが記録されることを特徴とする。
【0014】
また、前述の特徴を有するコンバインの収量計測装置において、前記排出センサの検出時における現在位置データを出力する現在位置データ出力手段を備え、前記検出時間データと前記現在位置データを併せて前記データ記録手段に記録することを特徴とする。
【0015】
また、前述の特徴を有するコンバインの収量計測装置において、前記時刻出力手段及び前記現在位置データ出力手段として時刻出力機能付きのGPSセンサを用い、前記排出センサ検出時の前記GPSセンサからの出力によって、前記検出時間データと前記現在位置データを併せて前記データ記録手段に記録させることを特徴とする。
【0016】
また、前述の特徴を有するコンバインの収量計測装置において、前記データ記録手段に記録されたデータを取得して演算処理する演算処理部と該演算処理部の演算結果を出力する出力部を備え、前記演算処理部は、前記検出時間データを収量に換算する収量換算手段を有することを特徴とする。
【0017】
また、前述の特徴を有するコンバインの収量計測装置において、前記出力部は、コンバインの操作部に設けられた表示部に形成されることを特徴とする。
【0018】
また一つには、収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインの収量計測装置であって、前記コンバインの排出機構における排出口の内側に取り付けられ前記収穫物の連続排出を検出する排出センサと、前記コンバインに搭載され、当該コンバインの現在位置データと現在時刻データを出力可能なGPSセンサと、該GPSセンサから出力されるデータを記録するデータ記録手段とを備えると共に、前記データ記録手段に記録されたデータを取得して演算処理する演算処理部と、該演算処理部の演算結果を出力する出力部とを備え、前記排出センサの検出時に、前記GPSセンサから出力される現在時刻データよって前記排出センサの検出時間データを前記データ記録手段に記録すると共に、該検出時間データに併せて前記GPSセンサから出力される現在位置データを前記データ記録手段に記録し、前記演算処理部は、前記現在位置データに基づいて前記検出時間データを特定収穫区域内の収量に換算する収量換算手段を有することを特徴とする。
【0019】
また、前述した収量計測装置において、前記演算処理部は、収穫区域の地図情報を記憶する記憶手段を備え、前記収量換算手段は、前記地図情報に基づいて、特定収穫区域内の前記現在位置データに対応する前記検出時間データを総和し、該総和した検出時間データを前記特定収穫区域内の収量に換算することを特徴とする。
【0020】
また一つには、収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインの収量計測方法であって、前記収穫物が前記排出機構の排出口から連続的に排出される排出時間を検出する工程と、前記排出時間の検出時間データを検出時の現在位置データと併せて記録するデータ記録工程と、特定収穫区域内の前記現在位置データに対応する前記検出時間データを収量に換算する収量換算工程とを有することを特徴とする。
【0021】
このような特徴を有する本発明によると、以下の作用を得ることができる。
【0022】
先ず、本発明は、収穫部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えるコンバインを対象としており、この排出機構から排出される収穫物の排出時間を検出することで収量計測を可能にしている。前記の排出機構からの排出は、駆動源の定格出力付近で行われるので、排出時間と排出量との関係は高い相関を示す。これに着目して、簡易に計測可能な排出時間を検出することで収量計測を可能にするものである。
【0023】
排出時間の検出は、排出機構の排出口の内側に排出センサを取り付けて排出される収穫物の連続排出を検出し、この排出センサの検出時間データをデータ記録手段に記録する。これによって、コンバインの作業者は収量の計測を意識することなく収穫作業を進めるだけで、収量計測の基になる検出時間データが随時データ記録手段に記録されることになる。排出センサは排出口の内側に取り付けるので、コンバインの内部構造に影響なく設置することができると共に、既存のコンバインに付加的に後付けすることも可能である。
【0024】
また、本発明の収量計測装置は、現在時刻データを出力可能な時刻出力手段からの出力を前述した排出センサの検出時にデータ記録手段に記録することで前述の検出時間データを得ている。これによると、排出時間に加えて排出の開始又は終了時刻をデータ記録手段のデータから把握することできるので、コンバインの収穫作業計画に対応させて各収穫区域での収量を把握することができる。また、コンバインの収穫作業の進捗をデータ記録手段に記録されたデータによって管理することができる。
【0025】
また、排出口からの排出停滞を検出する停滞センサを排出口における排出センサの下流側に設け、排出センサの検出時且つ停滞センサの非検出時に検出時間データが記録されるようにすることで、排出口が詰まった状態を排出時間から外すことができ、連続的に排出している状態を適正に検出することができる。
【0026】
また、現在位置データ出力手段を備え、排出センサの検出時における現在位置データを検出時間データと併せて記録することで、収穫位置情報と収量とを併せて取得することができる。コンバインの収容部内の収穫物を排出機構によって排出する作業は、圃場内で圃場に近接したトラック等に対して行われるので、排出センサの検出時に記録される現在位置データによって収穫作業を行っている圃場(収穫区域)の位置を把握することができる。これによって、データ記録手段に記録されたデータによって収穫区域毎の収量を把握することができる。
【0027】
時刻出力機能付きGPSセンサによって時刻出力手段と現在位置データ出力手段とを兼用することによって、より安価に前述した作用を得ることができる。
【0028】
また、データ記録手段に記録されたデータを取得して演算処理する演算処理部に、検出時間データを収量に換算する収量換算手段を設けて、換算された収量を出力部に出力させることで、計測された収量を即座に把握することができる。
【0029】
出力部をコンバインの操作部に設けられた表示部に形成することで、コンバインの収穫作業を進行させながら随時収量を把握することが可能になる。
【0030】
そして、前述した排出センサ,GPSセンサ,データ記録手段をコンバイン側に装備させ、データ記録手段に記録されたデータをコンバインとは切り離した演算処理部に取り込み、演算結果を出力部に出力させるシステムを構築することができる。
【0031】
これによると、演算処理部に収穫区の地図情報を記憶させ、この地図情報に基づいて特定収穫区域内の現在位置データに対応する件時間データを総和して、この総和した検出時間データによって収量を求めることで、特定収穫区域内で複数回の連続排出を行った場合にも、特定収穫区域全体の収量を演算処理の結果として把握することが可能になる。
【発明の効果】
【0032】
このような特徴によると、本発明は、比較的安価な装備で、既存のコンバインに対して付加的に装備することが可能であって、収穫作業を行う作業者に手間を掛けることなく収穫区域単位の収量を精度良く計測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下本発明の実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に特に限定されるものではない。
【0034】
[適用可能なコンバイン]本発明の実施形態に係るコンバインの収量計測装置、収量計測方法は、収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインに適用されるものである。
【0035】
図1は、その排出機構としてアンローダを備えたコンバインの形態例を示したものである。コンバイン1は、刈り取り部2、走行部3、操作部4、脱穀・選別部5、収容部6、排出機構7を備えており、収穫作物の条列に沿って走行しながら刈り取り,脱穀作業を行う農作業機である。米,麦等の収穫作業においては、刈り取り部2で刈り取られた穀稈が脱穀・選別部5に搬送され、脱穀選別された穀粒が収容部6内に収容されることになる。
【0036】
排出機構7について説明すると、収容部6の底部に横送スクリューコンベヤ7aが装備され、連続的に収容部6のタンク内に溜められた収穫物を後方に搬送する機構が設けられている。そして、収容部6の後方底部に連結された揚送スクリューコンベヤ7bによって、排出される収穫物が揚送され、更に横送スクリューコンベヤ7cによって排出される収穫物が搬送されて、排出口7dから排出する機構になっている。これによると、横送スクリューコンベヤ7a,7c及び揚送スクリューコンベヤ7bの連続駆動によって、収容部6に溜められた収穫物を連続的に排出することが可能になっている。
【0037】
本発明の実施形態に係る収量計測装置が装備されるコンバインは、収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を備えるものであればよく、排出機構の形態等は前述のものに特に限定されるものではない。
【0038】
[排出センサ及び停滞センサの装備例]図2は、排出機構7の排出端の構造例を示した部分断面図である。ここでは、横送スクリューコンベヤ7cの排出端に下向きに開口する排出部7c1が設けられており、この排出部7c1の開口部に排出案内部7d1が設けられ、その下端に排出口7dが形成されている。
【0039】
本発明の実施形態に係る収量計測装置の構成要素である排出センサ10と停滞センサ11は、この排出口7dの内側(排出案内部7d1の内壁)に取り付けられる。停滞センサ11は計測精度を高めるための付加的な構成要素であって、高い計測精度を要求しない場合は省くこともできる。また、コンバイン1の排出機構7に標準装備されている停滞センサを代用することもできる。
【0040】
排出センサ10の機能は、排出口7dから排出される収穫物の連続排出を検出するものであって、連続的に収穫物が排出されている間に出力がONになり、連続排出が止まると出力がOFFになるものであればよい。具体的には、収穫物である穀粒が近接(数cm)するとセンサ出力がONになる拡散反射形の光電センサ等を用いることができる。ここでは、排出センサ10は排出口7dの前方側の内壁に取り付けられており、センサ前を穀粒が通過することを検出している。
【0041】
また、停滞センサ11の機能は、排出口7dが塞がれて収穫物の流れが止められた排出停滞の状態を検出するものであって、排出口7dにおける排出センサ10の下流側に設けられ、停滞センサ11の前で収穫物が停滞している場合に出力がONになり、それ以外の場合には出力がOFFになるものであればよい。具体的には、比較的感度の低い拡散反射形の光電センサを用いることができ、排出口7dの後方側内壁に取り付けて、極近接して停滞している収穫物にのみ反応して出力がONになるもの等を採用することができる。
【0042】
排出機構7の排出口7dは通常トラックの荷台等に向けられ、排出された収穫物が山積みされることが多いので、山積みされた収穫物が排出口7dを塞ぐことがある。この場合には、排出センサ10の出力がONになっているにも拘わらず、連続的な排出が行われていない事態が生じるので、これに対応するために停滞センサ11を設け、停滞センサ11がOFFの場合のみ排出センサ10の出力から排出時間をカウントする。
【0043】
[収量計測装置の構成例]図3は、本発明の実施形態に係る収量計測装置の構成例を示した説明図である。同図(a)は、排出センサ10のみで停滞センサ11を省いたものの構成例を示したものである。本発明の実施形態に係る収量計測装置は、前述したコンバイン1に設置されるものであって、基本構成としては、前述した排出センサ10と、この排出センサ10の検出時間データが記録されるデータ記録手段20を備えるものである。
【0044】
本発明の実施形態に係る収量計測装置では、排出機構7の排出口7dから連続排出される収穫物の排出時間を記録して、その記録を基にして収量を計測することが主要な特徴になっている。これによると、コンバイン1の機体外から簡易に設置可能な排出口7dの内側に排出センサ10を取り付けて、この排出センサ10の検出時間データを記録することで、コンバイン1の機体内部に何らの改良を施すことなく、収量の基になる搬出時間のデータ(検出時間データ)を記録することができる。そして、排出時間を検出した検出時間データは、通常排出機構の駆動が定格出力で行われることから、排出量との間に極めて高い相関が得られるデータであり、これを基にして精度の高い収量計測を行うことが可能になる。
【0045】
このような基本構成に対して、同図(a)の実施形態では、現在時刻データを出力可能な時刻出力手段31を備えている。時刻出力手段31は、基準値の設定によって現在時刻データを時々刻々出力可能なものであればよく、電子時計等に用いられている水晶発振器等を用いることができる。そして、時刻出力手段31は、排出センサ10の出力がONとなる間の現在時間データをデータ記録手段20にシリアルデータとして記録するものである。
【0046】
この実施形態によると、データ記録手段20には、排出機構7によって収穫物の排出が行われた時刻(排出開始時刻或いは排出終了時刻)と排出時間に係るデータが逐次記録されることになり、このデータを基にすると、前述したように収量を計測することができると共に、記録された排出時の時刻によってコンバイン1の収穫作業履歴を把握することができる。したがって、この実施形態によると、コンバインの収穫作業手順を把握することで、収穫作業が行われた区域と収量の関係を把握することが可能になる。
【0047】
同図(b)に示す実施形態は、前述した停滞センサ11を備えたものである。停滞センサ11を備えて、排出センサ10の検出時且つ停滞センサ11の非検出時に検出時間データが記録される論理回路40を構成する。これにより、排出口7dが塞がれて排出停滞が生じた場合を排出センサ10による検出時間データから外すことができ、排出口7dから連続的に排出される排出時間のみを検出時間データとして記録することができ、精度の良い収量計測が可能になる。
【0048】
また、同図(b)の実施形態では、排出センサ10の検出時における現在位置データを出力する現在位置データ出力手段32を備えており、排出センサ10によって検出される検出時間データと現在位置データを併せてデータ記録手段20にシリアルデータとして記録できるようにしている。
【0049】
これによると、論理回路40からの出力が得られた場合、つまり、排出センサ10の検出時且つ停滞センサ11の非検出時に、時刻出力手段31からの現在時刻データがデータ記録手段20に記録される共に、この現在時刻データと併せて現在位置データ出力手段32から出力される現在位置データがデータ記録手段20に記録されることになる。
【0050】
この実施形態によると、データ記録手段20には、排出機構7によって収穫物の排出が行われた時刻(排出開始時刻或いは排出終了時刻)と排出時間、更には排出が行われた位置(圃場内の位置)に係るデータが逐次記録されることになり、このデータを基にすると、前述したように収量を計測することができると共に、コンバイン1の収穫作業履歴を記録された排出時の時刻と位置によって把握することができる。したがって、この実施形態によると、コンバインの収穫作業手順や収穫区域の地図情報を把握することで、収穫作業が行われた収穫区域と収量の関係を正確に把握することが可能になる。
【0051】
そして、前述の時刻出力手段31及び現在位置データ出力手段32としては、時刻出力機能付きのGPSセンサ30を採用することができる。これによると、排出センサ10検出時のGPSセンサ30からの出力によって、排出時間に係る検出時間データとその排出が行われている位置に係る現在位置データが併せてデータ記録手段20に記録されることになる。
【0052】
GPSセンサ30としては、比較的安価に入手可能な単独測位GPSセンサを採用することができる。これによると、比較的安価な装備で、既存のコンバインに対して収穫区域単位の収量を精度良く計測することができる。
【0053】
また、同図(b)に示した実施形態によると、データ記録手段20に記録されたデータを取得して演算処理する演算処理部50とこの演算処理部50の演算結果を出力する出力部60を備え、演算処理部50は、検出時間データを収量に換算する収量換算手段51を有する。
【0054】
演算処理部50の収量換算手段51では、データ記録手段20に記録された検出時間データを基にしてコンバイン1で収穫された収穫物の収量が計算される。前述したように、検出時間データ(排出時間)と排出量との間には高い相関があるので、検出時間データにコンバイン1特有の係数を乗じることで複雑な計算を要することなく収量を求めることができる。
【0055】
そして、この演算結果から求められる収量をコンバイン1の操作部4に設けられた表示部(出力部60)に表示させることで、収穫作業を進行しながら、収穫作業が終わった区域の収量を速やかに把握することが可能になる。
【0056】
このような本発明の実施形態に係る収量計測装置は、一つには、排出センサ10,停滞センサ11,GPSセンサ30(時刻出力手段31及び現在位置データ出力手段32),データ記録手段20,演算処理部50,出力部60を全てコンバイン1に搭載させてコンバイン毎の装置を構成することができる。この場合にも前述した全ての構成要素は既存のコンバイン1に外付けすることが可能であり、コンバイン内部を改良することなく、コンバイン1に収量計測装置を装備することが可能になる。
【0057】
また、前述の排出センサ10,停滞センサ11,GPSセンサ30(時刻出力手段31及び現在位置データ出力手段32),データ記録手段20をコンバイン1に搭載させて、それ以外の演算処理部50と出力部60はコンバイン1とは切り離して集中管理することで、複数のコンバインを対象にした収量計測装置のシステムを構築することも可能である。
【0058】
この場合には、演算処理部50に記憶手段52を設けて、各コンバイン1から取得されるデータをコンバイン毎に記憶させて処理することで、複数コンバインの収量管理が可能になる。
【0059】
また、記憶手段52に収穫区域の地図情報を記憶させておき、前述した収量換算手段51では、記憶させた地図情報に基づいて、特定収穫区域内の現在位置データに対応する検出時間データを総和する演算処理を行い、この総和した検出時間データを特定収穫区域内の収量に換算する処理を行うことも可能である。
【0060】
これによると、各コンバイン1が複数の収穫区域の収穫作業を行った場合にも、データ記録手段20に記録されたデータを基にして、収穫区域毎の収量を正確に割り出すことが可能になる。
【0061】
[収量計測方法について]図4は、本発明の実施形態に係る収量計測方法であって、特に、1台のコンバインで複数の収穫区域の収穫作業を行う場合の収量計測方法を説明する説明図である。
【0062】
本発明の実施形態に係るコンバインの収量計測方法は、収穫物が排出機構(7)の排出口(7d)から連続的に排出される排出時間を検出する工程と、この排出時間の検出時間データを検出時の現在位置データと併せて記録するデータ記録工程と、特定収穫区域内の前記現在位置データに対応する前記検出時間データを収量に換算する収量換算工程とを基本構成として備えるものであるが、複数収穫区域を1台のコンバインで収穫作業する場合の収穫区域毎の収量計測は以下のように行う。
【0063】
図4(a)に示すように、複数の収穫区域(圃場)A,B,Cに対して、1台のコンバイン1によって収穫作業を行う場合を想定する。この際に、収穫区域A内では、圃場の端部から収穫作業を行って、一旦その中間地点A1で作業を停止し、排出機構を作動させて収容部内の収穫物を畦に停めているトラック70の荷台に排出したとする。また、更に収穫作業を進めて収穫区域A内の端である地点A2で前述と同様の排出を行ったとする。そして、これと同様の収穫作業を収穫区域B,Cに対しても行い、それぞれ地点B1,地点B2、更には地点C1,地点C2で、前述と同様の排出を行ったとする。
【0064】
同図(b)は、この場合にデータ記録手段20に記録されたデータの構成例を示した説明図である。シリアルデータで、地点A1,A2,B1,B2,C1,C2の位置情報A1,A2,B1,B2,C1,C2とその地点での排出時間を示す検出時間データT1,T2,T3,T4,T5,T6が交互に併せて記録されることになる。
【0065】
このようなデータ記録手段20に記録されたデータを基に収穫区域毎の収量を求めるには、記憶手段52に記憶されている地図情報を基にして、地点A1と地点A2、地点B1と地点B2、地点C1と地点C2の位置情報が、それぞれ同一収穫区域内の地点であることを認識する。
【0066】
そして、その同一収穫区域であると認識された位置情報と併せて記録されている検出時間データを同一収穫区域毎に足し併せて総和を求める。すなわち、収穫区域A内での排出時間に係る検出時間データは(T1+T2)で求め、収穫区域B内での排出時間に係る検出時間データは(T3+T4)で求め、収穫区域C内の排出時間に係る検出時間データは(T5+T6)で求める。
【0067】
そして、その後は、求めた収穫区域毎の検出時間データ(T1+T2),(T3+T4),(T5+T6)にそれぞれ換算係数を掛けて、収穫区域毎の収量を求める。
【0068】
以上説明した本発明の実施形態に係るコンバインの収量計測装置及び収量計測方法によると、比較的安価な装備で、既存のコンバインに対して付加的に装備することが可能であって、収穫作業を行う作業者に手間を掛けることなく収穫区域単位の収量を精度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態が適用可能なコンバインの説明図である。
【図2】本発明の実施形態を適用可能なコンバインにおける排出機構の排出端構造を示した部分断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る収量計測装置の構成例を示した説明図である(同図(a)は、排出センサのみで停滞センサを省いたものの構成例、同図(b)は、停滞センサを備えたもの)。
【図4】本発明の実施形態に係る収量計測方法であって、特に、1台のコンバインで複数の収穫区域の収穫作業を行う場合の収量計測方法を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0070】
1 コンバイン
2 刈り取り部
3 走行部
4 操作部
5 脱穀・選別部
6 収容部
7 排出機構
7a,7c 横送スクリューコンベヤ
7b 揚送スクリューコンベヤ
7c1 排出部
7d 排出口
7d1 排出案内部
10 排出センサ
11 停滞センサ
20 データ記録手段
30 GPSセンサ
31 時刻出力手段
32 現在位置データ出力手段
50 演算処理部
51 収量換算手段
52 記憶手段
60 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインに設置される収量計測装置であって、
前記排出機構における排出口の内側に取り付けられ前記収穫物の連続排出を検出する排出センサと、該排出センサの検出時間データが記録されるデータ記録手段とを備え、
記録された前記検出時間データから収量を求めることを特徴とするコンバインの収量計測装置。
【請求項2】
現在時刻データを出力可能な時刻出力手段を備え、
前記排出センサの検出時に前記時刻出力手段から出力される現在時刻データによって前記検出時間データが記録されることを特徴とする請求項1に記載されたコンバインの収量計測装置。
【請求項3】
前記排出口における前記排出センサの下流側に設けられ、前記排出口からの排出停滞を検出する停滞センサを備え、
前記排出センサの検出時且つ前記停滞センサの非検出時に前記検出時間データが記録されることを特徴とする請求項1又は2に記載されたコンバインの収量計測装置。
【請求項4】
前記排出センサの検出時における現在位置データを出力する現在位置データ出力手段を備え、
前記検出時間データと前記現在位置データを併せて前記データ記録手段に記録することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載されたコンバインの収量計測装置。
【請求項5】
前記時刻出力手段及び前記現在位置データ出力手段として時刻出力機能付きのGPSセンサを用い、前記排出センサ検出時の前記GPSセンサからの出力によって、前記検出時間データと前記現在位置データを併せて前記データ記録手段に記録させることを特徴とする請求項4に記載されたコンバインの収量計測装置。
【請求項6】
前記データ記録手段に記録されたデータを取得して演算処理する演算処理部と該演算処理部の演算結果を出力する出力部を備え、
前記演算処理部は、前記検出時間データを収量に換算する収量換算手段を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載されたコンバインの収量計測装置。
【請求項7】
前記出力部は、コンバインの操作部に設けられた表示部に形成されることを特徴とする請求項6に記載されたコンバインの収量計測装置。
【請求項8】
収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインの収量計測装置であって、
前記コンバインの排出機構における排出口の内側に取り付けられ前記収穫物の連続排出を検出する排出センサと、前記コンバインに搭載され、当該コンバインの現在位置データと現在時刻データを出力可能なGPSセンサと、該GPSセンサから出力されるデータを記録するデータ記録手段とを備えると共に、
前記データ記録手段に記録されたデータを取得して演算処理する演算処理部と、該演算処理部の演算結果を出力する出力部とを備え、
前記排出センサの検出時に、前記GPSセンサから出力される現在時刻データよって前記排出センサの検出時間データを前記データ記録手段に記録すると共に、該検出時間データに併せて前記GPSセンサから出力される現在位置データを前記データ記録手段に記録し、
前記演算処理部は、前記現在位置データに基づいて前記検出時間データを特定収穫区域内の収量に換算する収量換算手段を有することを特徴とするコンバインの収量計測装置。
【請求項9】
前記演算処理部は、収穫区域の地図情報を記憶する記憶手段を備え、前記収量換算手段は、前記地図情報に基づいて、特定収穫区域内の前記現在位置データに対応する前記検出時間データを総和し、該総和した検出時間データを前記特定収穫区域内の収量に換算することを特徴とする請求項7に記載されたコンバインの収量計測装置。
【請求項10】
収穫物を収容する収容部と該収容部に溜められた収穫物を連続的に排出可能な排出機構を少なくとも備えたコンバインの収量計測方法であって、
前記収穫物が前記排出機構の排出口から連続的に排出される排出時間を検出する工程と、
前記排出時間の検出時間データを検出時の現在位置データと併せて記録するデータ記録工程と、
特定収穫区域内の前記現在位置データに対応する前記検出時間データを収量に換算する収量換算工程とを有することを特徴とするコンバインの収量計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−75056(P2007−75056A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−270018(P2005−270018)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】