コンバイン
【課題】左右一対のクローラ走行装置に備える水平制御装置を利用して、機体の後進操作に連動させて機体を上昇させることができる自動バックアップ制御手段を備えたコンバインにおいて、機体の水平制御を主として必要とする収穫材料である稲の場合のみ、自動バックアップ制御が確実に行なわれるようにする。
【解決手段】選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段48による選別条件の設定が稲を対象とする設定Eにあれば、機体の後進時に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段48による選別条件の設定が麦を対象とする設定Mにあれば、機体の後進時に水平制御装置21を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段41を設けた。
【解決手段】選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段48による選別条件の設定が稲を対象とする設定Eにあれば、機体の後進時に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段48による選別条件の設定が麦を対象とする設定Mにあれば、機体の後進時に水平制御装置21を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段41を設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラを掛け回した左右一対の走行フレームを、機体フレームに対して独立して昇降させることによって機体を自動的に水平制御する水平制御装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫するコンバインにおいては、湿田や軟弱な畦際等で機体を後進させると、その駆動反力によって機体が前に傾くことがあり、この場合は、機体の前部に配置されている前処理部先端の分草体や方向自動センサ等が圃場に没入して破損するといった不具合が起こり易い。
【0003】
そこで、この不具合を解消するために、機体を左右何れかに傾斜させながら機体の水平を保つローリング手段を機体上昇手段として利用することによって、機体の後進操作に連動させて機体を上昇させることができる自動バックアップ制御手段を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−205667号公報(第3−4頁、図8−図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した自動バックアップ制御手段は、自動バックアップモード設定スイッチである湿田モード選択スイッチが入り状態の時だけ作動すると共に、車速が低速の場合には、機体の後進操作が行なわれても自動バックアップ制御手段が作動しないようになっており、コンバインのオペレータが当該湿田モード選択スイッチを入れ忘れた時は、機体を後進させても必要とする自動バックアップ制御が実行されないといった欠点を有していた。また湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込んだ場合は、機体の後進操作に連動して速やかに機体を上昇させることができないので湿田や軟弱な畦際等における脱出性能について改善する余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、収穫材料を刈取って後方に搬送する前処理部と、該前処理部で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を選別処理する選別部と、該選別部で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段と、クローラを掛け回した左右一対のクローラ走行装置と、この左右一対のクローラ走行装置を機体フレームに対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置を備えたコンバインにおいて、前記選別条件設定手段による選別条件の設定が稲を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段による選別条件の設定が麦を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段を設けたことを第1の特徴としている。
また、機体の後進操作に水平制御装置を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置による機体の水平制御が制御範囲の上限側で行われていたならば、水平制御装置による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御が制御範囲の下限側で行われていたならば、水平制御装置を機体の前進操作に連動させて制御範囲の下限側に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置による機体の水平制御を実行状態とすることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、前処理部で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を選別処理する選別部と、該選別部で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段と、クローラを掛け回した左右一対のクローラ走行装置と、この左右一対のクローラ走行装置を機体フレームに対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置を備えたコンバインにおいて、前記選別条件設定手段による選別条件の設定が稲を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段による選別条件の設定が麦を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段を設けたことによって、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら刈取り作業を行っているコンバインを後進させる場合、その駆動反力によって機体が前に傾くことがあっても機体の後進操作に連動して機体が設定上昇位置(例えば上昇限)まで自動上昇するので、機体の前部に配置されている前処理部先端の分草体や方向自動センサ等が圃場に没入して破損するといった不具合が起こり難くなると共に、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一方の側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込んだ場合には、機体の後進操作に連動して速やかに機体を自動上昇させることにより最低地上高を高く保つことができるので、湿田や軟弱な畦際等における脱出性能も向上する。更に、機体の水平制御を主として必要とする収穫材料である稲の場合のみ、選別条件設定手段を介して機体の後進操作に連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇させることができる。即ち、機体の後進時に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめる制御を実行するか実行するか、或いは前記制御を実行しないかを切換えることができる特別な切換スイッチ等を設けなくても、選別条件設定手段を介して必要な時だけ機体の後進操作に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめることができるので、従来のようなオペレータの湿田モード選択スイッチの入れ忘れによって、機体を後進させても必要とする自動バックアップ制御が実行されないといった不具合が起こらない。
また、請求項2の発明によれば、機体の後進操作に水平制御装置を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置による機体の水平制御が制御範囲の上限側で行われていたならば、水平制御装置による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御が制御範囲の下限側で行われていたならば、水平制御装置を機体の前進操作に連動させて制御範囲の下限側に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置による機体の水平制御を実行状態とすることによって、前記後進操作前の水平制御装置による機体の水平制御が行われていた状態に近い制御高さまで、当該水平制御装置を速やかに自動復帰させることができるので作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の右側面図、そして図2は、一部破断したコンバイン1の左側面図、また図3は、操縦部14の平面図であって、コンバイン1は、収穫材料である稲や麦等の穀稈を圃場から刈取って後方に搬送する前処理部2と、この前処理部2から搬送される穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部3と、該脱穀部3で脱穀された穀粒を選別処理する選別部(揺動選別装置)4と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク5と、該穀粒タンク5内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ6と、脱穀部3で脱穀した後の排稈を機体後部まで搬送する排藁搬送部7と、機体後部において排稈を排出処理するカッター8を備えた後処理部9と、オペレータが着座する座席11や操向操作具であるマルチステアリングレバー12、及び主変速レバー13等の各種操作具を備える操縦部14を備えている。
【0008】
そして、コンバイン1は、クローラ15を掛け回した左右一対のクローラ走行装置16L,16Rに機体フレーム17を支持すると共に、この機体フレーム17の前部に前処理部2を図2にA矢印で示す如く昇降自在に連結している。即ち、前処理部2のフレームを兼ねる縦伝動筒18の上端を機体フレーム17の前部に設けた支点Pに軸支すると共に、縦伝動筒18の下面と機体フレーム17との間に油圧シリンダ19を介装し、この油圧シリンダ19を伸縮作動させることによって支点Pを回動中心とする前処理部2の昇降を可能にしている。尚、機体フレーム17上の左側前部に脱穀部3を配設する一方、機体フレーム17上の右側前部に操縦部14を配設し、更にその後方に穀粒タンク5と排藁搬送部7を設けている。
【0009】
また、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rは、図4及び図5に示すように、両クローラ走行装置16L,16Rを機体フレーム17に対して独立して昇降させることによって、機体を自動的に水平制御することができる水平制御装置21を備えている。そして、両クローラ走行装置16L,16Rは、機体フレーム17の下方にクローラ15を掛け回すための複数の転輪22、及びアイドラ23を支持した左右一対の走行フレーム24L,24Rを備えており、両走行フレーム24L,24Rと機体フレーム17とを前後一対の前側支持アーム25と後側支持アーム26を介して連結している。
【0010】
更に詳しくは、機体フレーム17の左右両側に前後一対の支軸(横軸)27,28を回動自在に支持し、両支持軸27,28の外側端に機体後向きの前側支持アーム25と後側支持アーム26とをそれぞれ固設すると共に、この前側支持アーム25の後端を走行フレーム24L,24Rの前側に枢支し、一方後側支持アーム26の後端を走行フレーム24L,24Rの略中間部に枢支している。尚、後側支持アーム26は、前側支持アーム25よりもアーム長を長く設定してある。
【0011】
そして、前後一対の支持軸27,28の内側端には、機体上向きの前側操作アーム31と後側操作アーム32とをそれぞれ固設してあり、これら前後一対の操作アーム31,32と支持アーム25,26とが共通の横軸心回りに一体揺動するように構成している。また、水平制御用のアクチュエータである油圧シリンダ35の基端部を機体フレーム17に連結すると共に、この油圧シリンダ35のピストンロッド35aの先端を後側操作アーム32の先端(上端)に連結し、更に前側操作アーム31の先端(上端)と後側操作アーム32の略中間部とを連結ロッド36を介して連結することによって、上述した水平制御装置21を構成している。
【0012】
尚、図4は、水平制御装置21を構成する油圧シリンダ35のピストンロッド35aを、縮側ストロークエンドまで縮作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面からクローラ走行装置16L,16Rの駆動スプロケット37を駆動させる駆動軸38の軸心までの高さはh1となる。一方、図5は、油圧シリンダ35のピストンロッド35aを伸側ストロークエンドまで伸作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面から駆動スプロケット37の駆動軸38の軸心までの高さはh2となる。つまり、機体フレーム17に対する左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの独立した昇降高さの自動調整は、上述のh2−h1(h2>h1)範囲で調節可能であり、この調節可能範囲(h2−h1)は、図6に示す如く水平制御装置21によって昇降制御される両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hに相当する。
【0013】
ところで、上述した水平制御装置21によるコンバイン1(機体)の水平制御は、作業を行う圃場の状態に適した制御を行っており、例えば、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図7にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側のクローラ走行装置(16L,16R)を自動上昇させる制御を行っている。そして、この場合の水平制御装置21による機体の水平制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hの上限側a(図6参照)で行うことにより機体の水平を保ち、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込むことを可及的に防止できるようにしてある。
【0014】
一方、湿田や軟弱な圃場以外の比較的硬い圃場(乾田)を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図8にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側とは反対のクローラ走行装置(16L,16R)を自動下降させる制御を行っている。そして、この場合の水平制御装置21による機体の水平制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hの下限側b(図6参照)で行うことにより機体の水平を保ち、当該コンバイン1の安定した作業走行を可能にしている。
【0015】
また、コンバイン1は、図9に示すブロック図の如くマイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM等を含む)を用いて構成される制御手段41を備えており、この制御手段41の入力側には、水平制御装置21による機体の水平制御を入りまたは切り状態とする水平自動スイッチ42、脱穀・刈取クラッチレバー40による脱穀クラッチの入り状態を検出する脱穀クラッチスイッチ43、主変速レバー13の操作位置を検出する主変速レバーポテンショメータ44、後述する複数の水平制御バルブ(53〜56)を操作する手動操作レバー45の操作状態を検出する水平手動スイッチ46、前記水平自動スイッチ42を兼ねながら機体の左右傾斜角を一定の角度に設定することができる水平ダイヤル47、選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別ダイヤル48、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する左側シリンダポテンショメータ49L、右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する右側シリンダポテンショメータ49R、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ51を所定の入力インターフェイス回路を介して接続する一方、制御手段41の出力側には、上述の水平制御が入り状態(自動作業状態)にあることを表示する水平自動ランプ52、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35を縮作動させる左下げ水平制御バルブ53、同じくこの油圧シリンダ35を伸作動させる左上げ水平制御バルブ54、また右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35を縮作動させる右下げ水平制御バルブ55、同じくこの油圧シリンダ35を伸作動させる右上げ水平制御バルブ56を所定の出力インターフェイス回路を介して接続している。尚、上述した脱穀・刈取クラッチレバー40、水平自動スイッチ42(水平ダイヤル47)、手動操作レバー45、及び選別ダイヤル48は、図3に示す如く座席11左側の操作パネル61に設けられている。
【0016】
そして、図10は、上述した制御手段41を介して実行する機体の水平制御を示すメインフローチャートであって、以下このフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、機体の後進操作に水平制御装置21を連動させて機体を上昇限まで自動上昇せしめる制御、即ち車高アップ制御を実行してステップS2に進む。ステップS2では、車高アップフラグが立っているか否か、即ち車高アップフラグが「0」であるか、「0」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「0」以外であれば元に戻り、一方車高アップフラグが「0」であればステップS3に進んで通常の水平制御を実行して元に戻る。
【0017】
尚、前記ステップS3において実行する通常の水平制御は、上述の手動操作レバー45を介して何れかの水平制御バルブ53〜56を操作し、それに対応する水平制御装置21の油圧シリンダ35を伸縮作動させることによって、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降高さを所望の高さに調整する手動制御と、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ51の検出結果に基づいて水平制御バルブ53〜56を作動させ、それに対応する水平制御装置21の油圧シリンダ35を伸縮作動させることによって機体の水平を自動的に保つ自動制御を含んでいる。
【0018】
次に、上述した車高アップ制御を図11に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、手動操作レバー45による水平制御バルブ53〜56の操作(手動操作)がなされたか否かを判断し、手動操作レバー45による前記操作(手動操作)がなされていなければステップS2に進み、手動操作レバー45による何らかの操作(手動操作)がなされたのであればステップS9に進む。
【0019】
ステップS2では、水平自動スイッチ42を介して水平制御が「入り」または「切り」状態となっているか否かを判断し、「入り」状態であればステップS3に進み、「切り」状態であればステップS4に進む。
【0020】
ステップS3では、脱穀クラッチスイッチ43を介して脱穀クラッチが入り状態になっているか否かを判断し、切り状態であればステップS4に進んで車高アップフラグを「0」として元に戻る。一方、脱穀クラッチが入り状態であれば、ステップS5の車高アップスタート制御、ステップS6の車高アップ上昇制御、ステップS7の車高アップ復帰チェック制御、ステップS8の車高アップ復帰制御を順次実行して元に戻る。
【0021】
また、ステップS9では、車高アップフラグが「1」であるか、「1」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「1」であればステップS10に進み、車高アップフラグが「1」以外であればステップS11に進む。
【0022】
ステップS10では、車高アップフラグを「4」としてステップS11に進み、このステップS11では、車高アップフラグが「2」であるか、「2」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「2」であればステップS12に進み、車高アップフラグが「2」以外であればステップS13に進む。
【0023】
ステップS12では、車高アップフラグを「4」としてステップS13に進み、このステップS13では、車高アップフラグが「3」であるか、「3」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「3」であればステップS14に進み、車高アップフラグが「3」以外であれば元に戻る。そして、ステップS14では、車高アップフラグを「0」として元に戻る制御を実行する。
【0024】
次に、上述した車高アップスタート制御を図12に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「0」であるか、「0」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「0」であればステップS2に進み、車高アップフラグが「0」以外であれば元に戻る。
【0025】
ステップS2では、選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段である選別ダイヤル48の設定が、図13に示す平面図のように、稲を対象とする設定(範囲)Eにあるか麦を対象とする設定(範囲)Mにあるかを判断し、稲を対象とする設定EにあればステップS3に進み、麦を対象とする設定Mにあれば元に戻る。
【0026】
ステップS3では、主変速レバーポテンショメータ44による主変速レバー13の操作位置が、「後進位置」にあるか否かを判断し、「後進位置」以外なら元に戻り、「後進位置」にあればステップS4に進んで車高アップフラグを「1」として元に戻る制御を実行する。
【0027】
次に、上述した車高アップ上昇制御を図14に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「1」であるか、「1」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「1」以外であればステップS2に進み、車高アップフラグが「1」であればステップS4に進む。
【0028】
ステップS2では、左上昇済みフラグを「0」としてステップS3に進み、このステップS3では、右上昇済みフラグを「0」として元に戻る。
【0029】
また、ステップS4では、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する左側シリンダポテンショメータ49Lの検出値が、当該クローラ走行装置16Lの「上昇リミット位置(図6におけるh2に相当)」よりも小さい値であるか否かを判断し、「上昇リミット位置」よりも小さい値であればステップS5に進み、それ以外であればステップS6に進む。
【0030】
ステップS5では、前記ステップS4の油圧シリンダ35を伸作動させる左上げ水平制御バルブ54に上昇(ON)出力してステップS7に進み、またステップS6では、左上昇済みフラグを「1」としてステップS7に進む。
【0031】
そして、ステップS7では、右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する右側シリンダポテンショメータ49Rの検出値が、当該クローラ走行装置16Rの「上昇リミット位置(図6におけるh2に相当)」よりも小さい値であるか否かを判断し、「上昇リミット位置」よりも小さい値であればステップS8に進み、それ以外であればステップS9に進む。
【0032】
ステップS8では、前記ステップS7の油圧シリンダ35を伸作動させる右上げ水平制御バルブ56に上昇(ON)出力してステップS10に進み、またステップS9では、右上昇済みフラグを「1」としてステップS10に進む。
【0033】
S10では、左上昇済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS11に進む。同様に、ステップS11でも右上昇済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS12に進む。
【0034】
S12では、左右のクローラ走行装置16L,16Rに備える水平制御装置21によってなされる機体の水平制御が、図6に示す如く、左右のクローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hの「上限側a」で行われているか「下限側b」で行われているかを判断し、制御範囲Hの「下限側b」で行われていればS13に進み、制御範囲Hの「上限側a」で行われていればS14に進む。
【0035】
そして、ステップS13では、車高アップフラグを「2」として元に戻り、またステップS14では、車高アップフラグを「4」として元に戻る制御を実行する。
【0036】
次に、上述した車高アップ復帰チェック制御を図15に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「3」であるか、「3」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「3」以外であればステップS2に進み、車高アップフラグが「3」であれば元に戻る。
【0037】
ステップS2では、主変速レバーポテンショメータ44による主変速レバー13の操作位置が、「前進V1以上」、即ち前進走行中にあるか否かを判断し、「前進V1以上」にあればステップS3に進み、「前進V1以上」以外のニュートラルまたは後進走行位置にあれば元に戻る。
【0038】
ステップS3では、車高アップフラグが「2」であるか、「2」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「2」であればステップS4に進み、車高アップフラグが「2」以外であればステップS5に進む。
【0039】
そして、ステップS4では、車高アップフラグを「3」として元に戻り、またステップS5では、車高アップフラグを「0」として元に戻る制御を実行する。
【0040】
次に、上述した車高アップ復帰制御を図16に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「3」であるか、「3」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「3」以外であればステップS2に進み、車高アップフラグが「3」であればステップS4に進む。
【0041】
ステップS2では、左下降済みフラグを「0」としてステップS3に進み、このステップS3では、右下降済みフラグを「0」として元に戻る。
【0042】
また、ステップS4では、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する左側シリンダポテンショメータ49Lの検出値が、図6に示す如く水平制御装置21による制御範囲Hの「上限側a」と「下限側b」の切替点Cよりも大きい値であるか否かを判断し、切替点Cよりも大きい値であればステップS5に進み、それ以外であればステップS6に進む。
【0043】
ステップS5では、前記ステップS4の油圧シリンダ35を縮作動させる左下げ水平制御バルブ53に下降(ON)出力してステップS7に進み、またステップS6では、左下降済みフラグを「1」としてステップS7に進む。
【0044】
そして、ステップS7では、右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する右側シリンダポテンショメータ49Rの検出値が、図6に示す如く水平制御装置21による制御範囲Hの「上限側a」と「下限側b」の切替点Cよりも大きい値であるか否かを判断し、切替点Cよりも大きい値であればステップS8に進み、それ以外であればステップS9に進む。
【0045】
ステップS8では、前記ステップS7の油圧シリンダ35を縮作動させる右下げ水平制御バルブ55に下降(ON)出力してステップS10に進み、またステップS9では、右下降済みフラグを「1」としてステップS10に進む。
【0046】
ステップS10では、左下降済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS11に進む。同様に、ステップS11でも右下降済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS12に進み、このステップS12では、車高アップフラグを「0」として元に戻る制御を実行する。
【0047】
以上説明したコンバイン1の車高アップ制御によれば、前処理部2で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部3と、該脱穀部3で脱穀した穀粒を選別処理する選別部4と、該選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段である選別ダイヤル48と、クローラ15を掛け回した左右一対のクローラ走行装置16L,16Rと、この左右一対のクローラ走行装置16L,16Rを機体フレーム17に対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置21を備えたコンバイン1において、前記選別ダイヤル48による選別条件の設定が稲を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別ダイヤル48による選別条件の設定が麦を対象とする設定にあれば、機体の後時に水平制御装置21を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段41を設けたことによって、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら刈取り作業を行っているコンバイン1を後進させる場合、その駆動反力によって機体が前に傾くことがあっても機体の後進操作に連動して機体が設定上昇位置(例えば上昇限)まで自動上昇するので、機体の前部に配置されている前処理部2先端の分草体61や方向自動センサ62等が圃場に没入して破損するといった不具合が起こり難くなると共に、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一方の側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込んだ場合には、機体の後進操作に連動して速やかに機体を自動上昇させることにより最低地上高を高く保つことができるので、湿田や軟弱な畦際等における脱出性能も向上する。
【0048】
そして、機体の水平制御を主として必要とする収穫材料である稲の場合のみ、選別ダイヤル48を介して機体の後進操作に連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇させることができる。即ち、機体の後進時に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめる制御を実行するか、或いは前記制御を実行しないかを切換えることができる特別な切換スイッチ等を設けなくても、選別ダイヤル48を介して必要な時だけ機体の後進操作に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめることができるので、従来のようなオペレータの湿田モード選択スイッチの入れ忘れによって、機体を後進させても必要とする自動バックアップ制御が実行されないといった不具合が起こらない。
【0049】
更に、機体の後進操作に水平制御装置21を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置21による機体の水平制御が制御範囲Hの上限側(a)で行われていたならば、水平制御装置21による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御21が制御範囲Hの下限側(b)で行われていたならば、水平制御装置21を機体の前進操作に連動させて制御範囲Hの下限側(b)に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置21による機体の水平制御を実行状態とすることによって、前記後進操作前の水平制御装置21による機体の水平制御が行われていた状態に近い制御高さまで、当該水平制御装置21を速やかに自動復帰させることができるので作業性が向上する。
【0050】
尚、上述したコンバイン1の車高アップ制御中に主変速レバー13がニュートラルまたは後進走行位置にある時は、通常の水平制御を停止して手動操作レバー45により何れかの水平制御バルブ53〜56の操作のみを有効とし、それに対応する水平制御装置21の油圧シリンダ35を伸縮作動させることによって、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降高さを所望の高さに調整した後、当該主変速レバー13を前進走行位置へ操作すると通常の水平制御に自動復帰するように構成すれば、作業性を損なうことなくスムーズなコンバイン1の運転操作が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】コンバインの一部省略左側断面図。
【図3】操縦部の平面図。
【図4】作用状態(下降限)にある水平制御装置の要部側面図。
【図5】作用状態(上昇限)にある水平制御装置の要部側面図。
【図6】水平制御装置によるクローラ走行装置の昇降制御範囲を示す概略図。
【図7】水平制御装置によるクローラ走行装置の上限側制御を示す概略図。
【図8】水平制御装置によるクローラ走行装置の下限側制御を示す概略図。
【図9】制御手段のブロック図。
【図10】水平制御の制御手順を示すメインフローチャート。
【図11】車高アップ制御を示すフローチャート。
【図12】車高アップスタート制御を示すフローチャート。
【図13】選別ダイヤルの平面図。
【図14】車高アップ上昇制御を示すフローチャート。
【図15】車高アップ復帰チェック制御を示すフローチャート。
【図16】車高アップ復帰制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
2 前処理部
3 脱穀部
4 選別部
15 クローラ
16L クローラ走行装置(左側)
16R クローラ走行装置(右側)
17 機体フレーム
21 水平制御装置
41 制御手段
48 選別条件設定手段
a 上限側
b 下限側
E 稲を対象とする選別条件設定手段による設定(範囲)
M 麦を対象とする選別条件設定手段による設定(範囲)
H 制御範囲
【技術分野】
【0001】
本発明は、クローラを掛け回した左右一対の走行フレームを、機体フレームに対して独立して昇降させることによって機体を自動的に水平制御する水平制御装置を備えたコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫するコンバインにおいては、湿田や軟弱な畦際等で機体を後進させると、その駆動反力によって機体が前に傾くことがあり、この場合は、機体の前部に配置されている前処理部先端の分草体や方向自動センサ等が圃場に没入して破損するといった不具合が起こり易い。
【0003】
そこで、この不具合を解消するために、機体を左右何れかに傾斜させながら機体の水平を保つローリング手段を機体上昇手段として利用することによって、機体の後進操作に連動させて機体を上昇させることができる自動バックアップ制御手段を設けたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−205667号公報(第3−4頁、図8−図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上述した自動バックアップ制御手段は、自動バックアップモード設定スイッチである湿田モード選択スイッチが入り状態の時だけ作動すると共に、車速が低速の場合には、機体の後進操作が行なわれても自動バックアップ制御手段が作動しないようになっており、コンバインのオペレータが当該湿田モード選択スイッチを入れ忘れた時は、機体を後進させても必要とする自動バックアップ制御が実行されないといった欠点を有していた。また湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込んだ場合は、機体の後進操作に連動して速やかに機体を上昇させることができないので湿田や軟弱な畦際等における脱出性能について改善する余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的としたものであって、収穫材料を刈取って後方に搬送する前処理部と、該前処理部で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を選別処理する選別部と、該選別部で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段と、クローラを掛け回した左右一対のクローラ走行装置と、この左右一対のクローラ走行装置を機体フレームに対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置を備えたコンバインにおいて、前記選別条件設定手段による選別条件の設定が稲を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段による選別条件の設定が麦を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段を設けたことを第1の特徴としている。
また、機体の後進操作に水平制御装置を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置による機体の水平制御が制御範囲の上限側で行われていたならば、水平制御装置による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御が制御範囲の下限側で行われていたならば、水平制御装置を機体の前進操作に連動させて制御範囲の下限側に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置による機体の水平制御を実行状態とすることを第2の特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、前処理部で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部と、該脱穀部で脱穀した穀粒を選別処理する選別部と、該選別部で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段と、クローラを掛け回した左右一対のクローラ走行装置と、この左右一対のクローラ走行装置を機体フレームに対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置を備えたコンバインにおいて、前記選別条件設定手段による選別条件の設定が稲を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段による選別条件の設定が麦を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段を設けたことによって、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら刈取り作業を行っているコンバインを後進させる場合、その駆動反力によって機体が前に傾くことがあっても機体の後進操作に連動して機体が設定上昇位置(例えば上昇限)まで自動上昇するので、機体の前部に配置されている前処理部先端の分草体や方向自動センサ等が圃場に没入して破損するといった不具合が起こり難くなると共に、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一方の側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込んだ場合には、機体の後進操作に連動して速やかに機体を自動上昇させることにより最低地上高を高く保つことができるので、湿田や軟弱な畦際等における脱出性能も向上する。更に、機体の水平制御を主として必要とする収穫材料である稲の場合のみ、選別条件設定手段を介して機体の後進操作に連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇させることができる。即ち、機体の後進時に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめる制御を実行するか実行するか、或いは前記制御を実行しないかを切換えることができる特別な切換スイッチ等を設けなくても、選別条件設定手段を介して必要な時だけ機体の後進操作に水平制御装置を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめることができるので、従来のようなオペレータの湿田モード選択スイッチの入れ忘れによって、機体を後進させても必要とする自動バックアップ制御が実行されないといった不具合が起こらない。
また、請求項2の発明によれば、機体の後進操作に水平制御装置を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置による機体の水平制御が制御範囲の上限側で行われていたならば、水平制御装置による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御が制御範囲の下限側で行われていたならば、水平制御装置を機体の前進操作に連動させて制御範囲の下限側に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置による機体の水平制御を実行状態とすることによって、前記後進操作前の水平制御装置による機体の水平制御が行われていた状態に近い制御高さまで、当該水平制御装置を速やかに自動復帰させることができるので作業性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、コンバイン1の右側面図、そして図2は、一部破断したコンバイン1の左側面図、また図3は、操縦部14の平面図であって、コンバイン1は、収穫材料である稲や麦等の穀稈を圃場から刈取って後方に搬送する前処理部2と、この前処理部2から搬送される穀稈から穀粒を脱穀する脱穀部3と、該脱穀部3で脱穀された穀粒を選別処理する選別部(揺動選別装置)4と、選別済みの穀粒を一時的に貯留する穀粒タンク5と、該穀粒タンク5内の穀粒を機外へ搬出する穀粒排出オーガ6と、脱穀部3で脱穀した後の排稈を機体後部まで搬送する排藁搬送部7と、機体後部において排稈を排出処理するカッター8を備えた後処理部9と、オペレータが着座する座席11や操向操作具であるマルチステアリングレバー12、及び主変速レバー13等の各種操作具を備える操縦部14を備えている。
【0008】
そして、コンバイン1は、クローラ15を掛け回した左右一対のクローラ走行装置16L,16Rに機体フレーム17を支持すると共に、この機体フレーム17の前部に前処理部2を図2にA矢印で示す如く昇降自在に連結している。即ち、前処理部2のフレームを兼ねる縦伝動筒18の上端を機体フレーム17の前部に設けた支点Pに軸支すると共に、縦伝動筒18の下面と機体フレーム17との間に油圧シリンダ19を介装し、この油圧シリンダ19を伸縮作動させることによって支点Pを回動中心とする前処理部2の昇降を可能にしている。尚、機体フレーム17上の左側前部に脱穀部3を配設する一方、機体フレーム17上の右側前部に操縦部14を配設し、更にその後方に穀粒タンク5と排藁搬送部7を設けている。
【0009】
また、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rは、図4及び図5に示すように、両クローラ走行装置16L,16Rを機体フレーム17に対して独立して昇降させることによって、機体を自動的に水平制御することができる水平制御装置21を備えている。そして、両クローラ走行装置16L,16Rは、機体フレーム17の下方にクローラ15を掛け回すための複数の転輪22、及びアイドラ23を支持した左右一対の走行フレーム24L,24Rを備えており、両走行フレーム24L,24Rと機体フレーム17とを前後一対の前側支持アーム25と後側支持アーム26を介して連結している。
【0010】
更に詳しくは、機体フレーム17の左右両側に前後一対の支軸(横軸)27,28を回動自在に支持し、両支持軸27,28の外側端に機体後向きの前側支持アーム25と後側支持アーム26とをそれぞれ固設すると共に、この前側支持アーム25の後端を走行フレーム24L,24Rの前側に枢支し、一方後側支持アーム26の後端を走行フレーム24L,24Rの略中間部に枢支している。尚、後側支持アーム26は、前側支持アーム25よりもアーム長を長く設定してある。
【0011】
そして、前後一対の支持軸27,28の内側端には、機体上向きの前側操作アーム31と後側操作アーム32とをそれぞれ固設してあり、これら前後一対の操作アーム31,32と支持アーム25,26とが共通の横軸心回りに一体揺動するように構成している。また、水平制御用のアクチュエータである油圧シリンダ35の基端部を機体フレーム17に連結すると共に、この油圧シリンダ35のピストンロッド35aの先端を後側操作アーム32の先端(上端)に連結し、更に前側操作アーム31の先端(上端)と後側操作アーム32の略中間部とを連結ロッド36を介して連結することによって、上述した水平制御装置21を構成している。
【0012】
尚、図4は、水平制御装置21を構成する油圧シリンダ35のピストンロッド35aを、縮側ストロークエンドまで縮作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面からクローラ走行装置16L,16Rの駆動スプロケット37を駆動させる駆動軸38の軸心までの高さはh1となる。一方、図5は、油圧シリンダ35のピストンロッド35aを伸側ストロークエンドまで伸作動させた状態を示すものであって、この時クローラ15の接地面から駆動スプロケット37の駆動軸38の軸心までの高さはh2となる。つまり、機体フレーム17に対する左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの独立した昇降高さの自動調整は、上述のh2−h1(h2>h1)範囲で調節可能であり、この調節可能範囲(h2−h1)は、図6に示す如く水平制御装置21によって昇降制御される両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hに相当する。
【0013】
ところで、上述した水平制御装置21によるコンバイン1(機体)の水平制御は、作業を行う圃場の状態に適した制御を行っており、例えば、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図7にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側のクローラ走行装置(16L,16R)を自動上昇させる制御を行っている。そして、この場合の水平制御装置21による機体の水平制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hの上限側a(図6参照)で行うことにより機体の水平を保ち、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込むことを可及的に防止できるようにしてある。
【0014】
一方、湿田や軟弱な圃場以外の比較的硬い圃場(乾田)を走行しながら穀稈を刈取って穀粒を収穫する場合は、図8にコンバイン1の背面視による略図に示すように、機体が右または左下がりで傾斜した側とは反対のクローラ走行装置(16L,16R)を自動下降させる制御を行っている。そして、この場合の水平制御装置21による機体の水平制御を、両クローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hの下限側b(図6参照)で行うことにより機体の水平を保ち、当該コンバイン1の安定した作業走行を可能にしている。
【0015】
また、コンバイン1は、図9に示すブロック図の如くマイクロコンピュータ(CPU、ROM、RAM等を含む)を用いて構成される制御手段41を備えており、この制御手段41の入力側には、水平制御装置21による機体の水平制御を入りまたは切り状態とする水平自動スイッチ42、脱穀・刈取クラッチレバー40による脱穀クラッチの入り状態を検出する脱穀クラッチスイッチ43、主変速レバー13の操作位置を検出する主変速レバーポテンショメータ44、後述する複数の水平制御バルブ(53〜56)を操作する手動操作レバー45の操作状態を検出する水平手動スイッチ46、前記水平自動スイッチ42を兼ねながら機体の左右傾斜角を一定の角度に設定することができる水平ダイヤル47、選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別ダイヤル48、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する左側シリンダポテンショメータ49L、右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する右側シリンダポテンショメータ49R、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ51を所定の入力インターフェイス回路を介して接続する一方、制御手段41の出力側には、上述の水平制御が入り状態(自動作業状態)にあることを表示する水平自動ランプ52、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35を縮作動させる左下げ水平制御バルブ53、同じくこの油圧シリンダ35を伸作動させる左上げ水平制御バルブ54、また右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35を縮作動させる右下げ水平制御バルブ55、同じくこの油圧シリンダ35を伸作動させる右上げ水平制御バルブ56を所定の出力インターフェイス回路を介して接続している。尚、上述した脱穀・刈取クラッチレバー40、水平自動スイッチ42(水平ダイヤル47)、手動操作レバー45、及び選別ダイヤル48は、図3に示す如く座席11左側の操作パネル61に設けられている。
【0016】
そして、図10は、上述した制御手段41を介して実行する機体の水平制御を示すメインフローチャートであって、以下このフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、機体の後進操作に水平制御装置21を連動させて機体を上昇限まで自動上昇せしめる制御、即ち車高アップ制御を実行してステップS2に進む。ステップS2では、車高アップフラグが立っているか否か、即ち車高アップフラグが「0」であるか、「0」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「0」以外であれば元に戻り、一方車高アップフラグが「0」であればステップS3に進んで通常の水平制御を実行して元に戻る。
【0017】
尚、前記ステップS3において実行する通常の水平制御は、上述の手動操作レバー45を介して何れかの水平制御バルブ53〜56を操作し、それに対応する水平制御装置21の油圧シリンダ35を伸縮作動させることによって、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降高さを所望の高さに調整する手動制御と、機体の左右傾斜を検出する傾斜センサ51の検出結果に基づいて水平制御バルブ53〜56を作動させ、それに対応する水平制御装置21の油圧シリンダ35を伸縮作動させることによって機体の水平を自動的に保つ自動制御を含んでいる。
【0018】
次に、上述した車高アップ制御を図11に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、手動操作レバー45による水平制御バルブ53〜56の操作(手動操作)がなされたか否かを判断し、手動操作レバー45による前記操作(手動操作)がなされていなければステップS2に進み、手動操作レバー45による何らかの操作(手動操作)がなされたのであればステップS9に進む。
【0019】
ステップS2では、水平自動スイッチ42を介して水平制御が「入り」または「切り」状態となっているか否かを判断し、「入り」状態であればステップS3に進み、「切り」状態であればステップS4に進む。
【0020】
ステップS3では、脱穀クラッチスイッチ43を介して脱穀クラッチが入り状態になっているか否かを判断し、切り状態であればステップS4に進んで車高アップフラグを「0」として元に戻る。一方、脱穀クラッチが入り状態であれば、ステップS5の車高アップスタート制御、ステップS6の車高アップ上昇制御、ステップS7の車高アップ復帰チェック制御、ステップS8の車高アップ復帰制御を順次実行して元に戻る。
【0021】
また、ステップS9では、車高アップフラグが「1」であるか、「1」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「1」であればステップS10に進み、車高アップフラグが「1」以外であればステップS11に進む。
【0022】
ステップS10では、車高アップフラグを「4」としてステップS11に進み、このステップS11では、車高アップフラグが「2」であるか、「2」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「2」であればステップS12に進み、車高アップフラグが「2」以外であればステップS13に進む。
【0023】
ステップS12では、車高アップフラグを「4」としてステップS13に進み、このステップS13では、車高アップフラグが「3」であるか、「3」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「3」であればステップS14に進み、車高アップフラグが「3」以外であれば元に戻る。そして、ステップS14では、車高アップフラグを「0」として元に戻る制御を実行する。
【0024】
次に、上述した車高アップスタート制御を図12に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「0」であるか、「0」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「0」であればステップS2に進み、車高アップフラグが「0」以外であれば元に戻る。
【0025】
ステップS2では、選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段である選別ダイヤル48の設定が、図13に示す平面図のように、稲を対象とする設定(範囲)Eにあるか麦を対象とする設定(範囲)Mにあるかを判断し、稲を対象とする設定EにあればステップS3に進み、麦を対象とする設定Mにあれば元に戻る。
【0026】
ステップS3では、主変速レバーポテンショメータ44による主変速レバー13の操作位置が、「後進位置」にあるか否かを判断し、「後進位置」以外なら元に戻り、「後進位置」にあればステップS4に進んで車高アップフラグを「1」として元に戻る制御を実行する。
【0027】
次に、上述した車高アップ上昇制御を図14に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「1」であるか、「1」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「1」以外であればステップS2に進み、車高アップフラグが「1」であればステップS4に進む。
【0028】
ステップS2では、左上昇済みフラグを「0」としてステップS3に進み、このステップS3では、右上昇済みフラグを「0」として元に戻る。
【0029】
また、ステップS4では、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する左側シリンダポテンショメータ49Lの検出値が、当該クローラ走行装置16Lの「上昇リミット位置(図6におけるh2に相当)」よりも小さい値であるか否かを判断し、「上昇リミット位置」よりも小さい値であればステップS5に進み、それ以外であればステップS6に進む。
【0030】
ステップS5では、前記ステップS4の油圧シリンダ35を伸作動させる左上げ水平制御バルブ54に上昇(ON)出力してステップS7に進み、またステップS6では、左上昇済みフラグを「1」としてステップS7に進む。
【0031】
そして、ステップS7では、右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する右側シリンダポテンショメータ49Rの検出値が、当該クローラ走行装置16Rの「上昇リミット位置(図6におけるh2に相当)」よりも小さい値であるか否かを判断し、「上昇リミット位置」よりも小さい値であればステップS8に進み、それ以外であればステップS9に進む。
【0032】
ステップS8では、前記ステップS7の油圧シリンダ35を伸作動させる右上げ水平制御バルブ56に上昇(ON)出力してステップS10に進み、またステップS9では、右上昇済みフラグを「1」としてステップS10に進む。
【0033】
S10では、左上昇済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS11に進む。同様に、ステップS11でも右上昇済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS12に進む。
【0034】
S12では、左右のクローラ走行装置16L,16Rに備える水平制御装置21によってなされる機体の水平制御が、図6に示す如く、左右のクローラ走行装置16L,16Rの制御範囲Hの「上限側a」で行われているか「下限側b」で行われているかを判断し、制御範囲Hの「下限側b」で行われていればS13に進み、制御範囲Hの「上限側a」で行われていればS14に進む。
【0035】
そして、ステップS13では、車高アップフラグを「2」として元に戻り、またステップS14では、車高アップフラグを「4」として元に戻る制御を実行する。
【0036】
次に、上述した車高アップ復帰チェック制御を図15に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「3」であるか、「3」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「3」以外であればステップS2に進み、車高アップフラグが「3」であれば元に戻る。
【0037】
ステップS2では、主変速レバーポテンショメータ44による主変速レバー13の操作位置が、「前進V1以上」、即ち前進走行中にあるか否かを判断し、「前進V1以上」にあればステップS3に進み、「前進V1以上」以外のニュートラルまたは後進走行位置にあれば元に戻る。
【0038】
ステップS3では、車高アップフラグが「2」であるか、「2」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「2」であればステップS4に進み、車高アップフラグが「2」以外であればステップS5に進む。
【0039】
そして、ステップS4では、車高アップフラグを「3」として元に戻り、またステップS5では、車高アップフラグを「0」として元に戻る制御を実行する。
【0040】
次に、上述した車高アップ復帰制御を図16に示すフローチャートに基づいて説明する。先ずステップS1では、車高アップフラグが「3」であるか、「3」以外であるかを判断し、車高アップフラグが「3」以外であればステップS2に進み、車高アップフラグが「3」であればステップS4に進む。
【0041】
ステップS2では、左下降済みフラグを「0」としてステップS3に進み、このステップS3では、右下降済みフラグを「0」として元に戻る。
【0042】
また、ステップS4では、左側のクローラ走行装置16Lの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する左側シリンダポテンショメータ49Lの検出値が、図6に示す如く水平制御装置21による制御範囲Hの「上限側a」と「下限側b」の切替点Cよりも大きい値であるか否かを判断し、切替点Cよりも大きい値であればステップS5に進み、それ以外であればステップS6に進む。
【0043】
ステップS5では、前記ステップS4の油圧シリンダ35を縮作動させる左下げ水平制御バルブ53に下降(ON)出力してステップS7に進み、またステップS6では、左下降済みフラグを「1」としてステップS7に進む。
【0044】
そして、ステップS7では、右側のクローラ走行装置16Rの水平制御装置21に備える油圧シリンダ35の作動状態を検出する右側シリンダポテンショメータ49Rの検出値が、図6に示す如く水平制御装置21による制御範囲Hの「上限側a」と「下限側b」の切替点Cよりも大きい値であるか否かを判断し、切替点Cよりも大きい値であればステップS8に進み、それ以外であればステップS9に進む。
【0045】
ステップS8では、前記ステップS7の油圧シリンダ35を縮作動させる右下げ水平制御バルブ55に下降(ON)出力してステップS10に進み、またステップS9では、右下降済みフラグを「1」としてステップS10に進む。
【0046】
ステップS10では、左下降済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS11に進む。同様に、ステップS11でも右下降済みフラグが「0」であるか「1」であるかを判断し、「0」であれば元に戻り、「1」であればステップS12に進み、このステップS12では、車高アップフラグを「0」として元に戻る制御を実行する。
【0047】
以上説明したコンバイン1の車高アップ制御によれば、前処理部2で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部3と、該脱穀部3で脱穀した穀粒を選別処理する選別部4と、該選別部4で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段である選別ダイヤル48と、クローラ15を掛け回した左右一対のクローラ走行装置16L,16Rと、この左右一対のクローラ走行装置16L,16Rを機体フレーム17に対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置21を備えたコンバイン1において、前記選別ダイヤル48による選別条件の設定が稲を対象とする設定にあれば、機体の後進時に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別ダイヤル48による選別条件の設定が麦を対象とする設定にあれば、機体の後時に水平制御装置21を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段41を設けたことによって、湿田や軟弱な畦際等を走行しながら刈取り作業を行っているコンバイン1を後進させる場合、その駆動反力によって機体が前に傾くことがあっても機体の後進操作に連動して機体が設定上昇位置(例えば上昇限)まで自動上昇するので、機体の前部に配置されている前処理部2先端の分草体61や方向自動センサ62等が圃場に没入して破損するといった不具合が起こり難くなると共に、湿田や軟弱な畦際等で機体の左右一方の側が沈下して機体の下部が圃場や畦に突っ込んだ場合には、機体の後進操作に連動して速やかに機体を自動上昇させることにより最低地上高を高く保つことができるので、湿田や軟弱な畦際等における脱出性能も向上する。
【0048】
そして、機体の水平制御を主として必要とする収穫材料である稲の場合のみ、選別ダイヤル48を介して機体の後進操作に連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇させることができる。即ち、機体の後進時に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめる制御を実行するか、或いは前記制御を実行しないかを切換えることができる特別な切換スイッチ等を設けなくても、選別ダイヤル48を介して必要な時だけ機体の後進操作に水平制御装置21を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめることができるので、従来のようなオペレータの湿田モード選択スイッチの入れ忘れによって、機体を後進させても必要とする自動バックアップ制御が実行されないといった不具合が起こらない。
【0049】
更に、機体の後進操作に水平制御装置21を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置21による機体の水平制御が制御範囲Hの上限側(a)で行われていたならば、水平制御装置21による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御21が制御範囲Hの下限側(b)で行われていたならば、水平制御装置21を機体の前進操作に連動させて制御範囲Hの下限側(b)に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置21による機体の水平制御を実行状態とすることによって、前記後進操作前の水平制御装置21による機体の水平制御が行われていた状態に近い制御高さまで、当該水平制御装置21を速やかに自動復帰させることができるので作業性が向上する。
【0050】
尚、上述したコンバイン1の車高アップ制御中に主変速レバー13がニュートラルまたは後進走行位置にある時は、通常の水平制御を停止して手動操作レバー45により何れかの水平制御バルブ53〜56の操作のみを有効とし、それに対応する水平制御装置21の油圧シリンダ35を伸縮作動させることによって、左右一対のクローラ走行装置16L,16Rの昇降高さを所望の高さに調整した後、当該主変速レバー13を前進走行位置へ操作すると通常の水平制御に自動復帰するように構成すれば、作業性を損なうことなくスムーズなコンバイン1の運転操作が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】コンバインの右側面図。
【図2】コンバインの一部省略左側断面図。
【図3】操縦部の平面図。
【図4】作用状態(下降限)にある水平制御装置の要部側面図。
【図5】作用状態(上昇限)にある水平制御装置の要部側面図。
【図6】水平制御装置によるクローラ走行装置の昇降制御範囲を示す概略図。
【図7】水平制御装置によるクローラ走行装置の上限側制御を示す概略図。
【図8】水平制御装置によるクローラ走行装置の下限側制御を示す概略図。
【図9】制御手段のブロック図。
【図10】水平制御の制御手順を示すメインフローチャート。
【図11】車高アップ制御を示すフローチャート。
【図12】車高アップスタート制御を示すフローチャート。
【図13】選別ダイヤルの平面図。
【図14】車高アップ上昇制御を示すフローチャート。
【図15】車高アップ復帰チェック制御を示すフローチャート。
【図16】車高アップ復帰制御を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0052】
2 前処理部
3 脱穀部
4 選別部
15 クローラ
16L クローラ走行装置(左側)
16R クローラ走行装置(右側)
17 機体フレーム
21 水平制御装置
41 制御手段
48 選別条件設定手段
a 上限側
b 下限側
E 稲を対象とする選別条件設定手段による設定(範囲)
M 麦を対象とする選別条件設定手段による設定(範囲)
H 制御範囲
【特許請求の範囲】
【請求項1】
収穫材料を刈取って後方に搬送する前処理部(2)と、該前処理部(2)で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部(3)と、該脱穀部(3)で脱穀した穀粒を選別処理する選別部(4)と、該選別部(4)で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段(48)と、クローラ(15)を掛け回した左右一対のクローラ走行装置(16L,16R)と、この左右一対のクローラ走行装置(16L,16R)を機体フレーム(17)に対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置(21)を備えたコンバインにおいて、前記選別条件設定手段(48)による選別条件の設定が稲を対象とする設定(E)にあれば、機体の後進時に水平制御装置(21)を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段(48)による選別条件の設定が麦を対象とする設定(M)にあれば、機体の後進時に水平制御装置(21)を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段(41)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
機体の後進操作に水平制御装置(21)を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置(21)による機体の水平制御が制御範囲(H)の上限側(a)で行われていたならば、水平制御装置(21)による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御が制御範囲(H)の下限側(b)で行われていたならば、水平制御装置(21)を機体の前進操作に連動させて制御範囲(H)の下限側(b)に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置(21)による機体の水平制御を実行状態とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項1】
収穫材料を刈取って後方に搬送する前処理部(2)と、該前処理部(2)で刈取った収穫材料を脱穀処理する脱穀部(3)と、該脱穀部(3)で脱穀した穀粒を選別処理する選別部(4)と、該選別部(4)で選別処理する収穫材料に応じた選別条件を設定する選別条件設定手段(48)と、クローラ(15)を掛け回した左右一対のクローラ走行装置(16L,16R)と、この左右一対のクローラ走行装置(16L,16R)を機体フレーム(17)に対して独立して昇降させることにより機体を自動的に水平制御する水平制御装置(21)を備えたコンバインにおいて、前記選別条件設定手段(48)による選別条件の設定が稲を対象とする設定(E)にあれば、機体の後進時に水平制御装置(21)を連動させて機体を設定上昇位置まで自動上昇せしめ、一方選別条件設定手段(48)による選別条件の設定が麦を対象とする設定(M)にあれば、機体の後進時に水平制御装置(21)を連動させた機体の自動上昇を実行しない制御手段(41)を設けたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
機体の後進操作に水平制御装置(21)を連動させた機体の設定上昇位置までの自動上昇がなされた後に機体の前進操作を行う場合、前記後進操作前の水平制御装置(21)による機体の水平制御が制御範囲(H)の上限側(a)で行われていたならば、水平制御装置(21)による機体の水平制御を機体の前進操作に連動させて実行状態とし、一方前記水平制御が制御範囲(H)の下限側(b)で行われていたならば、水平制御装置(21)を機体の前進操作に連動させて制御範囲(H)の下限側(b)に対応する制御高さまで自動下降せしめ、その後に水平制御装置(21)による機体の水平制御を実行状態とする請求項1に記載のコンバイン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2009−72103(P2009−72103A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−243667(P2007−243667)
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】
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