説明

コンバイン

【課題】穀稈の処理量が変わっても、穀粒の回収ロスを低減できる脱穀装置を有するコンバインの提供である。
【解決手段】扱室66と、排塵処理室68と、拡散処理胴73と、唐箕79を備えた選別室50とを設けたコンバインに、唐箕79の回転速度をコンバインの走行状態又は作業状態に応じて増減速制御すると共に、拡散処理胴73の回転速度を唐箕79の回転速度の増減速に連動して増減速制御する制御装置100を備える。拡散処理胴73の回転速度もコンバインの走行状態又は作業状態に応じて唐箕79の回転速度と同じように変わることで、穀稈の処理量が変わっても拡散処理胴73の回転速度が適切な回転速度となって穀粒の回収ロスを低減できる。また、唐箕79の回転速度のみならず、更に扱室66に供給される穀稈量に応じて拡散処理胴73の回転速度を変化させることで、より細かな制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場に植生する穀稈を刈り取って脱穀するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
コンバインは穀稈の刈取装置と、脱穀装置と、脱穀後一時的に穀粒を貯留するグレンタンクと、グレンタンクに貯留されている穀粒を排出するオーガなどから構成される。
脱穀装置の主脱穀部である扱室には刈取装置で刈り取った穀稈が挿入され、穀稈は扱室に軸架された扱胴の表面に多数設けられた扱歯と扱網との相互作用により脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は扱網を通過して、選別室の揺動棚で受け止められ、二番穀粒(二番物という場合がある)や藁屑などを分離して穀粒のみをグレンタンクに搬送する。二番穀粒は再び処理されて穀粒、枝梗粒などに分離される。
【0003】
脱穀装置の中で最初に穀稈が挿入される扱室においては、被処理物が搬送されながら扱胴が回転することで穀稈の大部分が脱穀される。そして、扱室から落下する被処理物は、選別室において、上下前後方向に揺動する揺動棚上を移動しながら、後方のシーブで唐箕からの送風を受けて風力選別される。
【0004】
このようなコンバインにおける刈取収穫作業の能率を高めるためには、刈取穀稈の脱穀処理が効率よく行われることが必要である。しかし、脱穀装置の主脱穀部である扱室内の処理能力を高めるために扱胴を大型化させると、コンバインの大型化を招くため、好ましくない。
【0005】
そこで、下記特許文献1には、扱胴の移送方向下手側の搬送穀稈の穂先側箇所に扱室での未処理物を再処理する第1処理胴を扱胴と移送方向に沿ってラップする状態で、且つ扱胴の軸心と平行な軸心周りで駆動する状態で配備し、扱胴の移送方向下手側で且つ第1処理胴よりも移送方向下手側箇所に、扱胴軸心とほぼ直交する横軸心周りで回転する第2処理胴を配備して、第1処理胴の移送方向下手側終端部に処理物を第2処理胴のほぼ全長に亘り分散させる状態で放出供給する、掻出し部材(羽根)を設けたコンバインの構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−38619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の構成により、扱室内で穀稈の移送方向下手側まで持ち回りながら移送された藁屑や未処理物が扱胴とラップする第1処理胴によって再処理される。更に、第1処理胴により処理されない未処理物は第2処理胴によって処理されるが、第1処理胴の移送方向下手側終端部に設けた掻出し部材により第2処理胴のほぼ全長に亘って分散、放出されるため、第2処理胴における処理効率が向上する。また、各処理胴を小型化させれば脱穀装置全体を大型化させることもない。
【0008】
そして、上記特許文献1記載の構成によれば、このように刈取穀稈の処理効率が向上するが、脱穀処理が効率よく行われるためには、枝梗粒や穂切れ粒、稈切れ粒などと単粒とを分別する選別性能も重要である。これらの粒が良好に分別されなければ穀粒が藁屑と一緒に排出されてしまい、穀粒の回収ロスが増加するという問題が生じる。
【0009】
上記特許文献1記載の第2処理胴は、穀稈の処理量が多いと処理能力が低下する一方、回転軌跡の前側部分が下降回転部分となるために扱室からの排塵物を拡散させる作用が小さく、揺動棚上に均一に放出できないため、脱穀後の排塵物中の穀粒が多い場合は、穀粒を後方に排出していまい、穀粒の回収ロスの増加に繋がってしまう。
【0010】
そこで、本発明の課題は、上記問題点を解決することであり、穀稈の処理量が変わっても、穀粒の回収ロスを低減できる脱穀装置を有するコンバインの提供である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の上記課題は、以下の手段により解決できる。
請求項1記載の発明は、走行装置(3)と、該走行装置(3)の前部に備えて圃場に埴生する穀稈を刈り取る刈取部(5)と、前記走行装置(3)の上部に備えて前記刈取部(5)により刈り取った穀稈を脱穀する脱穀装置(15)とを設けたコンバインにおいて、前記脱穀装置(15)に、穀稈から穀粒を脱粒させる扱胴(69)を軸架した扱室(66)と、扱室(66)の搬送方向終端部側に達した被処理物を引き継いで処理する排塵処理胴(71)を軸架した排塵処理室(68)と、前記扱室(66)及び排塵処理室(68)の下方の部位に軸架して扱室(66)と排塵処理室(68)から落下してきた被処理物を後方へ拡散する拡散処理胴(73)と、被処理物を選別するための風を送る唐箕(79)を備えて扱室(66)と排塵処理室(68)から落下する被処理物を後方へ搬送しながら選別する前記扱室(66)下方の選別室(50)とを設け、前記唐箕(79)の回転速度をコンバインの走行状態又は作業状態に応じて増減速制御すると共に、前記拡散処理胴(73)の回転速度を前記唐箕(79)の回転速度の増減速に連動して増減速制御する制御装置(100)を備えたコンバインである。
【0012】
請求項2記載の発明は、前記刈取部(5)と脱穀装置(15)との間に、前記扱室(66)に穀稈を供給搬送する供給搬送装置(26)を設け、該供給搬送装置(26)によって搬送される穀稈の量を検出する穀稈量検出手段(103)を設け、前記制御装置(100)に、穀稈量検出手段(103)により検出される穀稈量に応じて前記拡散処理胴(73)の回転速度を増減速制御する機能を備えたコンバインである。
【0013】
請求項3記載の発明は、前記扱室(66)の後方に、該扱室(66)及び前記排塵処理室(68)からの被処理物を吸引して後方へ放出するファン(91)を設け、前記拡散処理胴(73)は、コンバインの前進方向に向かって前記ファン(91)の左右方向の幅と略同じ左右方向の幅を有し、前記扱室(66)とファン(91)との間であって、且つ該ファン(91)と左右方向で略同じ位置に設け、前記拡散処理胴(73)の下方に、前後方向に長手方向を配するフィン(97)を左右方向に複数個並列に配置して前記拡散処理胴(73)の左右方向の幅よりも左右方向の幅を長く形成した被処理物を選別するためのストローラック(98)を、該ストローラック(98)の左右一側端部が前記拡散処理胴(73)の左右一側端部と左右方向で略同じ位置になるように設け、前記ストローラック(98)は、前記拡散処理胴(73)の左右他側端部から外側にはみ出したストローラック(98)のはみ出し部(98a)のフィン(97a)の前後方向の長さを、拡散処理胴(73)と左右方向位置が重なるストローラック(98)の重複部(98b)のフィン(97b)の前後方向の長さよりも長く形成し、且つ該フィン(97a)の後端部を前記ファン(91)の下方前端部近傍まで伸ばした構成であると共に、前記重複部(98b)のフィン(97b)の前後方向の長さを長短交互に形成し、そのうちの長いフィン(97ba)のみが拡散処理胴(73)と平面視で重なる構成とした請求項1記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0014】
扱室(66)と排塵処理室(68)から落下してきた被処理物を拡散する拡散処理胴(73)は、後方に藁屑を排出するように回転するため、穀稈の処理量(被処理物の量)が少なく、藁に含粒が多い場合は、穀粒を後方に排出してしまい、穀粒の回収ロス(穀粒が藁屑と一緒に排出されてしまうこと)の増加に繋がってしまう。
一方、被処理物を選別するための風を送る唐箕(79)の回転速度は、コンバインの走行状態又は作業状態に応じて変化し、適切な回転速度になるように制御されている。
【0015】
そこで、請求項1記載の発明によれば、扱室(66)と排塵処理室(68)から落下してきた被処理物を後方へ拡散する拡散処理胴(73)の回転速度を被処理物を選別するための風を送る唐箕(79)の回転速度の増減速に連動させて増減速制御することで、すなわち、拡散処理胴(73)の回転速度をコンバインの走行状態又は作業状態に応じて唐箕(79)の回転速度の増減速と同じように変えることで、穀稈の処理量が変わっても拡散処理胴(73)の回転速度が適切な速度となって穀粒の回収ロスを低減できる。
【0016】
また、請求項2記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、唐箕(79)の回転速度のみならず、更に扱室(66)に穀稈を供給する供給搬送装置(26)の穀稈量検出手段(103)によって検出される穀稈量に応じて拡散処理胴(73)の回転速度を変化させることで、より細かな制御が可能となる。したがって、より一層、穀粒の回収ロスを低減できる。
【0017】
例えば、拡散処理胴(73)の回転速度が、穀稈量が少ないと低くなり、穀稈量が多いと高くなるように制御される場合、拡散処理胴(73)の回転速度を唐箕(79)の回転速度の増減速に連動した回転速度から、更に穀稈量が多いと高くなるように、穀稈量が少ないと低くなるように変化させることで、穀稈量が少なく、藁に含粒が多い場合でも、拡散処理胴(73)の回転速度を低く抑えられる。したがって、穀粒を後方に排出することが抑制されるため、穀粒の回収ロスを低減できる。そして、より正確な穀稈量に応じた拡散処理胴(73)の回転速度の制御が可能となる。
【0018】
更に、請求項3記載の発明によれば、上記請求項1記載の発明の効果に加えて、扱胴(68)の終端から排出された長藁や藁くずのうち、ストローラック(98)の重複部(98b)の長短交互に設けたフィン(97b)で小さな藁くずを落下させて選別した後、長藁のみを拡散処理胴(73)に投入することで拡散処理胴(73)の負荷が軽減される。また、ストローラック(98)の後方に拡散処理胴(73)が位置しないはみ出し部(98a)では、ファン(91)の近傍までフィン(97a)を伸ばすことで、長藁がファン(91)に吸収されやすくなる。したがって、より一層、穀粒の選別性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの一部切欠左側面図である。
【図2】図1のコンバインの一部切欠平面図である。
【図3】図1のコンバインの脱穀装置の左側面断面図である。
【図4】図1のコンバインの脱穀装置の扱胴付近の平面図である。
【図5】図3のS1−S1線矢視図である。
【図6】図1のコンバインの脱穀装置の動力伝動系統図である。
【図7】コンバインの車速と唐箕の回転速度及びコンバインの車速と拡散処理胴の回転速度との関係を示した図である。
【図8】本発明の実施形態のコンバインの制御装置のブロック図である。
【図9】穀稈量検出センサにより検出される穀稈量と拡散処理胴の回転速度との関係を示した図である。
【図10】図3の脱穀装置の唐箕付近の一部切り欠き右側面断面図である。
【図11】他の実施形態のコンバインの脱穀装置の唐箕付近の一部切り欠き右側面断面図である。
【図12】他の実施形態のコンバインの脱穀装置の唐箕付近の一部切り欠き右側面断面図である。
【図13】他の実施形態のコンバインの刈取部の入力部付近の動力伝動系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1には本発明の実施形態の穀類の収穫作業を行うコンバインの一部切欠左側面図を示し、図2には図1のコンバインの一部切欠平面図を、図3には図1のコンバインの脱穀装置の一部切り欠き側面断面図を示し、図4には図1のコンバインの脱穀装置の扱胴付近の平面図を示し、図5には図3のS1−S1線矢視図を示す。なお、本実施の形態ではコンバインの前進方向に向かって前側と後側をそれぞれ前、後といい、左側と右側をそれぞれ左、右ということにする。
【0021】
図1ないし図2に示すコンバイン1の走行フレーム2の下部には、ゴムなどの可撓性材料を素材として無端帯状に成型した左右一対のクローラ4を持ち、乾田はもちろんのこと、湿田においてもクローラ4が若干沈下するだけで自由に走行できる構成の走行装置3を備え、走行フレーム2の前部には刈取部5を搭載し、走行フレーム2の上部にはエンジン60(図6)ならびに脱穀装置15、操縦席20およびグレンタンク30を搭載する。
【0022】
刈取部5は、立毛する穀稈を左右に分草する分草具7,7…、分草後の穀稈を引き起す4条分の穀稈引起し装置8…、引起し後の穀稈を刈り取るバリカン式の刈取装置6、刈取後の穀稈を掻込搬送する掻込搬送装置(図示せず)、掻込搬送後の穀稈を引き継いで揚上搬送し後方の脱穀装置15に搬送供給する刈取穀稈搬送装置9、株元側供給チェン11、穂先側ラグ付き供給チェン12等からなり、車体に対して上下に昇降可能で前後方向に沿わせて設けた刈取縦フレーム17及び該刈取縦フレーム17の先端に左右横方向に沿わせて設けた刈取横フレーム16に装備している。
【0023】
刈取縦フレーム17の基部には機体幅方向に長手方向が向いた横伝動筒24(図2)を設け、走行フレーム2上に設けた支持架台(図示せず)に前記横伝動筒24を、その水平方向に伸びたエンジン動力を刈取部5の駆動部に伝達するための伝動軸24aの周りに回転自在に取付ける。したがって、刈取部5は、横伝動筒24を中心に図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取部5全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成としている。
【0024】
そして、刈取穀稈搬送装置9の終端側には、穀稈を脱穀装置15側に搬送供給する株元側供給チェン11と穂先側ラグ付き供給チェン12が上下に配して設けられ、フィードチェン14及び引継ぎ搬送チェン13に適正姿勢で穀稈を受け継ぎさせるように配置している。上記各装置の駆動はエンジン60からの動力を図示しない油圧式無段変速装置(HST)を含む変速装置を経由して行われる。
【0025】
コンバイン1の刈取部5の作動は次のように行われる。まず、エンジン60を始動して変速用、操向用などの操作レバーをコンバイン1が前進するように操作し、刈取クラッチと脱穀クラッチ(図示せず)を入り操作して機体の回転各部を伝動しながら、走行フレーム2を前進走行させると、刈取、脱穀作業が開始される。圃場に植立する穀稈は、刈取部5の前端下部にある分草具7によって分草作用を受け、次いで穀稈引起し装置8の引起し作用によって倒伏状態にあれば直立状態に引き起こされ、穀稈の株元が刈取装置6により刈り取られ、掻込搬送装置(図示せず)に掻込まれて後方に搬送され、刈取穀稈搬送装置9、株元側供給チェン11と穂先側ラグ付き供給チェン12などに受け継がれて順次連続状態で後部上方に搬送される。
【0026】
そして、穀稈は、更に後述する補助搬送体28とフィードチェン挟扼杆26、フィードチェン14及び引継ぎ搬送チェン13の始端部に受け継がれ、脱穀装置15に供給される。フィードチェン14の搬送始端部の機体内側の部位に、引継ぎ搬送チェン13が配置されており、フィードチェン挟扼杆26は、フィードチェン14の上側に対向配置されている。
【0027】
穀稈の株元側を受け継いで挟持搬送するフィードチェン14の穀稈穂先側には、前記供給チェン11からの穀稈を引き継いで搬送する引継ぎ搬送チェン13が設けられている。フィードチェン14と引継ぎ搬送チェン13との関係は、フィードチェン14の始端部が引継ぎ搬送チェン13の始端部よりも搬送方向上手側に長く延出されており、引継ぎ搬送チェン13の始端に引き継がれる穀稈の株元側を下から支えるように受け継いで掻き上げ搬送する構成になっている。
【0028】
刈取穀稈搬送終端部の供給チェン11から供給される穀稈は、引継ぎ搬送チェン13とフィードチェン14とに引き継がれるが、この時、穀稈の株元側が、穂先側の引継ぎ搬送チェン13への引継ぎと略同時に引き継がれ、若しくはそれよりも先にフィードチェン14の始端に受け継がれることになり、そして、引継ぎ後は引継ぎ搬送チェン13とフィードチェン14との共同作用によって整然と持ち上げ搬送され、フィードチェン13による株元側の挟持搬送に伴い穂先側が引継ぎ搬送チェン13の終端から脱穀装置15の扱室66内に供給されて回転する扱胴69によって脱穀処理される。
【0029】
脱穀装置15は、上側に扱胴69を軸架した扱室66を前板58と後板59の間に配置し、扱室66の下側には選別部50を一体的に設け、供給された刈取穀稈を脱穀、選別する。
脱穀装置15に供給された穀稈は、主脱穀部である扱室66に挿入され、扱室66に軸架され回転する扱胴69の多数の扱歯69aと、フィードチェン14による移送と、扱網74との相互作用により脱穀され、被処理物(穀粒や藁くず)は脱穀装置15内の選別部50の揺動棚51で受け止められ、上下前後方向に揺動する揺動棚51上を移動しながら、唐箕79からの送風を受けて風力選別され、比重の重い穀粒はチャフシーブ53および選別網63を通過し、一番螺旋65から、搬送螺旋78aを内蔵している一番揚穀筒78(図6)を経てグレンタンク30へ搬送され、グレンタンク30に一時貯留される。
【0030】
なお、唐箕79の前方には唐箕79の送風を補助するためのプレファン81を設けている。このプレファン81によって唐箕79と揺動棚51の移送棚52との空間に選別風を供給して、この空間を落下する被処理物中の軽い藁屑を早期の内に後方に飛散させ、移送する。
また、脱穀装置15の扱室66の終端に到達した脱穀された残りの穀稈で長尺のままのものは、排藁チェーン110(図6)に挟持されて搬送され、脱穀装置15の後部の藁用カッター80(図6)に投入されて切断され、圃場に放出される。
【0031】
グレンタンク30内の底部に穀粒移送用のグレンタンク螺旋30a(図6)を設け、グレンタンク螺旋30aを駆動する螺旋駆動軸に縦オーガ18および横オーガ19からなる排出オーガを連接し、グレンタンク30内に貯留した穀粒を縦オーガ螺旋18aおよび横オーガ螺旋19aの螺旋羽根のスクリュウコンベヤ作用により搬送し、排出オーガ排出口19aからコンバイン1の外部に排出する。
【0032】
扱室66に挿入された穀粒の付いた穀稈はフィードチェン14とスプリング26a付勢のフィードチェン挟扼杆26(図3)との間に挟扼され、機体後方に移送されながら扱室66内に挿入され、回転する扱胴69の扱歯69aにより脱穀される。穀稈から分離された被処理物(穀粒や藁くず)は、扱室66から扱網74を通過して、揺動棚51で受け止められる。
【0033】
揺動棚51は、扱室66の扱網74の下方に配置した移送棚52とその後方に配置した上方のチャフシーブ53とその下方の選別網63と最後端部に配置したストローラック62などから構成されている。
そして移送棚52には複数個のラック状の選別板52aを備えており、移送棚52はチャフシーブ53の前方に配置されている。移送棚52は扱胴69の下方に配置して二番処理物を受け止め得る構成になっている。
【0034】
扱網74(図3)の前方の領域で漏下する脱穀初期に脱粒した穀粒は単粒であり夾雑物も含んでいないのでチャフシーブ53上で粗選別する必要が無く、直接選別網63で唐箕79及びプレファン81からの送風により風力選別することができ、チャフシーブ53の負荷を軽くし、能率的な脱穀が可能となる。唐箕79からの送風は、送風流路に設けた風割部106によって上下に分割される。そして、唐箕79の回転速度は、コンバインの走行状態または作業状態に応じて制御装置(CPU)100により制御される。例えば、コンバインの車速に追従して段階的又は連続的に変化させたり、刈取部5の昇降により刈高さが非作業高さ以上になると、一定の回転速度に下げる(作業時と非作業時の2段階で制御する)場合などがある。また、扱胴69の回転に連動するように制御しても良い。
【0035】
揺動棚51は揺動棚駆動機構Bの作動により上下前後方向に揺動するので、被処理物は矢印D方向(図3)に移動しながら、揺動棚51上に漏下した比重の重い穀粒は選別網63を矢印E方向に通過し、一番棚板64で集積され、一番螺旋65から一番揚穀筒78(図6)を経てグレンタンク30へ搬送される。グレンタンク30に貯留された穀粒は、オーガ18、19を経由してコンバイン1の外部へ搬送される。
【0036】
揺動棚51の上の被処理物のうち軽量のものは、揺動棚51の揺動作用と唐箕79及びセカンドファン55による送風に吹き飛ばされて揺動棚51からチャフシーブ53に向けて矢印D方向に移動し、ストローラック62の上で大きさの小さい二番穀粒は矢印G方向に漏下して二番棚板85に集められ、二番螺旋86で二番揚穀筒87へ搬送される。
【0037】
二番穀粒(二番物ということがある)は、正常な穀粒、枝梗粒、藁くずおよび藁くずの中に正常な穀粒が刺さっているササリ粒などの混合物であり、二番揚穀筒87(図6)の中を二番揚穀筒螺旋87aにより揚送されて、二番処理室入口から二番処理室67の上方へ放出される。二番処理室67の下部に軸架する二番処理胴70はエンジン60からの動力を伝動して駆動機構により、図3の矢印J方向に回転する。二番穀粒は二番処理胴70の螺旋70bにより搬送され、多数の処理歯70aに衝突しながら矢印I方向(図3、図4)に進行する間に二番穀粒の分離と枝梗粒の枝梗の除去を行い、被処理物の一部は二番処理胴70の下方に設けられた受網(図示せず)を通り抜けて選別部50に漏下し、被処理物の大部分は移送棚52からチャフシーブ53方向に送られ、穀粒はチャフシーブ53と選別網63を通り、一番螺旋65に集められる。このように二番物を移送棚52上に回収してチャフシーブ53による再処理をすることにより、穀粒と藁くずとの分離が良好になる。
【0038】
扱室66の終端に到達した被処理物の中の脱穀された穀稈で長尺のままのものは、図示しない排藁処理室に投入される。また、扱胴69により脱穀された後の排藁は、フィードチェン14によって扱室66の後方側へ排出される。
また、扱室66の扱胴69による被処理物搬送方向終端部側に到達した被処理物の中で、藁くずなど短尺のものは、扱室66の扱胴69による被処理物の搬送方向終端部と排塵処理室68の排塵処理胴71による被処理物の搬送方向始端部とを連通する連通口101にある排塵処理室入口から矢印C(図4)方向に投入されて、扱室66からの取り込みを良好にする螺旋71aの作用により排塵処理室68に入り、排塵処理室68では回転する排塵処理胴71の螺旋71aにより矢印K方向(図3、図4)に搬送されながら処理される。
【0039】
排塵処理室68に入った少量の穀粒を含む藁くずを主体とする被処理物の中の漏下物(穀粒)は受け網(図示せず)から揺動棚51上に漏下し、揺動棚51に設けられたストローラック62に誘導されて二番棚板85から二番揚穀筒87を経由して二番処理室67に送られる。なお、同軸上にある二番処理胴70と排塵処理胴71の駆動は、図6に示すように、エンジン60から駆動力をプーリを介して行われる。
【0040】
また、図3に示すように、脱穀装置15の後部に排塵用の横断流ファン91を設け、排塵処理室68を含む脱穀装置15内で発生する排塵のうち、比重の軽い藁くず、枝梗および塵埃を含む空気を横断流ファン91の回転による送風で吸引し、横断流ファン出口から後方へ吹き出して、コンバイン1の外部へ放出する。
排塵処理室68から揺動棚51の終端部に落ちた排塵のうち二番穀粒、三番穀粒など小径で比重の重いものは、揺動棚51の終端部のストローラック62あるいはシーブ53を矢印G方向へ通過して二番棚板85に漏下し、再び二番処理室67において処理される。
【0041】
図6には、本発明の実施の形態のコンバイン1の脱穀装置15の動力伝動系統図を示す。図6に基づいて、脱穀装置15の伝動機構について説明する。
まず、エンジン60は、出力する回転動力を三つに分岐して、一つを走行ミッション装置61に入力し、一つをグレンタンク30の下部螺旋30aに入力し、一つを脱穀装置15の脱穀カウンタ軸31に入力する構成としている。
【0042】
脱穀カウンタ軸31に伝達された動力は、更に分岐して、一つは扱胴69、二番処理胴70、排塵処理胴71、排藁チェーン110に伝達される。また、他方は唐箕79、プレファン81、横断流ファン91、セカンドファン55、拡散処理胴73、揺動棚51、一番螺旋65、一番揚穀筒78の螺旋78a、二番螺旋86、二番揚穀筒の螺旋87a、脱穀チェン軸114などに伝達され、脱穀チェン軸114からフィードチェン14へ伝達される。
【0043】
そして、本実施形態のコンバインは、脱穀装置15に、扱室66と排塵処理室68から落下してきた被処理物を回転しながら後方へ拡散するための拡散処理胴73を設けている。図3に示すように、横断流ファン91より低い位置で揺動棚51の上面に接近させて位置させ、脱穀装置15の側壁に片持ち状態に軸架している。そして、拡散処理胴73は、横断流ファン91と扱室66の後端部との間であって、排塵処理室68の下方に位置している。
【0044】
また、拡散処理胴73は、図3及び図4に示すように、回転方向にリード角を持たせた複数の処理歯73aを設け、回転方向の前側部分が上昇回転するように矢印F方向(図3)に回転して、扱室66から落下し、唐箕79、プレファン81、セカンドファン55などからの送風により後方に搬送された被処理物や揺動棚51上に盛り上がっている一定の層厚以上に高い部分の排塵物(藁屑)や、排塵処理室68から落下してくる排塵物を横断流ファン91の後方側の棚上に、斜め後方側へ拡散できる構成としている。
【0045】
扱室66と排塵処理室68から落下してきた被処理物を拡散する拡散処理胴73は、後方に藁屑を排出するように回転するため、穀稈の処理量(被処理物)が少なく、藁に含粒が多い場合は、穀粒を後方に排出してしまい、穀粒の回収ロスの増加に繋がることがある。 一方、被処理物を選別するための風を送る唐箕79の回転速度は、前記のようにコンバインの走行状態又は作業状態に応じて変化し、適切な回転速度になるように制御装置100により制御されている。
【0046】
そこで、本実施形態のコンバインは、制御装置100によって拡散処理胴73の回転速度を唐箕79の回転速度の増減速に連動して増減速制御することで、すなわちコンバインの走行状態又は作業状態に応じて変えることで、穀稈の処理量が変わっても拡散処理胴73の回転速度が適切な回転速度となって穀粒の回収ロスを低減できる。
【0047】
図7には、コンバインの車速と唐箕79の回転速度及びコンバインの車速と拡散処理胴73の回転速度との関係を示す。この図では、コンバインの車速に追従して段階的(図7の(a)、(b))又は連続的(図7の(c)、(d))に唐箕79の回転速度を制御装置100により変化させる場合を示している。また、図8には、本発明の実施形態のコンバインの制御装置のブロック図を示す。
【0048】
図7の(a)、(c)に示すように、コンバインの車速が大きくなると、唐箕79の回転速度が増加し、コンバインの車速が小さくなると、唐箕79の回転速度が減少する。そして、唐箕79の回転速度に連動して拡散処理胴73の回転速度も変化する。すなわち、図7の(b)、(d)に示すように、唐箕79の回転速度が増加すると拡散処理胴73の回転速度も増加して、唐箕79の回転速度が減少すると拡散処理胴73の回転速度も減少する。 したがって、拡散処理胴73の回転速度もコンバインの車速に応じて変化する。コンバインの車速は、走行装置3を駆動する走行ミッション装置61中の伝動軸の回転速度を検出する車速センサ99(図8)により検出される。
【0049】
また、唐箕79の回転軸109(図6)及び拡散処理胴73の回転軸111(図6)にもそれぞれ唐箕回転数センサ117、拡散処理胴回転数センサ118を設け、各回転速度が唐箕回転数センサ117、拡散処理胴回転数センサ118によって検出される各回転数から算出される構成とする。そして、制御装置100によって車速センサ99により検出される車速に応じた回転速度になるように唐箕79の回転速度が制御されると共に、唐箕79の回転速度に連動して拡散処理胴73の回転速度も制御される。
【0050】
通常、圃場に植生する穀稈が起立状態にある場合には、刈取負荷が小さいため、車速を上げて刈取走行する。
そこで、コンバインの車速が大きい場合は、刈り取った穀稈の量が多くなるため唐箕79の回転速度を増加させる一方、コンバインの車速が小さい場合は、刈り取った穀稈の量が比較的少なくなるため唐箕79の回転速度を減少させる。更に、唐箕79の回転速度の増減速に連動して拡散処理胴73の回転速度を増減させることで、穀稈の処理量が少なく、藁に含粒が多い場合でも、拡散処理胴73の回転速度が低く抑えられ、穀粒を後方に排出することが抑制されるため、穀粒の回収ロスを低減できる。
【0051】
また、唐箕79の回転速度を刈取部5の昇降による作業時(下げ時)と非作業時(上げ時)の2段階で制御して、刈高さが非作業高さ以上になると一定の回転速度に下げたり、扱胴69の回転に連動するように制御しても良い。
【0052】
また、刈取部5の刈取装置6により刈り取った穀稈は掻込搬送装置、搬送刈取穀稈搬送装置9、株元側供給チェン11と穂先側ラグ付き供給チェン12、引継ぎ搬送チェン13、フィードチェン14、フィードチェン挟扼杆26などの供給搬送装置によって脱穀装置15の扱室68内に供給されるが、これらの供給搬送装置に穀稈を検出するセンサ(ポテンショメータなど)119を設け、穀稈量検出センサ119(フィードチェン挟扼杆26が挟持する穀稈によって押し上げられるストロークを検出するポテンショメータ)(図3、図8)により検出される穀稈量に応じて、拡散処理胴73の回転速度を変化させることで、より細かい制御が可能となる。したがって、より一層、穀粒の回収ロスを低減できる。
【0053】
図3に示すように、脱穀装置15に近接し、穀稈を挟持搬送して扱室66内に直接供給するフィードチェン挟扼杆26に穀稈量検出センサ119を設けたことで、脱穀装置15に供給される正確な穀稈量が把握でき、拡散処理胴73の回転速度を穀稈量に応じた適切な回転速度にすることができる。
【0054】
図9には、穀稈量検出センサ119により検出される穀稈量と拡散処理胴73の回転速度との関係を示す。
そして、拡散処理胴73の回転速度が、穀稈量が少ないと減少し、穀稈量が多いと増加するように制御装置100により増減速制御する。このように制御すると、唐箕79の回転速度に連動した回転速度から、更に穀稈量が多いと増加するように、穀稈量が少ないと減少するように拡散処理胴73の回転速度を変化させることができる。したがって、穀稈量が少なく、藁に含粒が多い場合でも、拡散処理胴73の回転速度が低く抑えられ、穀粒を後方に排出することが抑制されるため、穀粒の回収ロスの増加に繋がることはない。そして、より正確な穀稈量に応じた拡散処理胴73の回転速度の制御が可能となる。
【0055】
そして、図4及び図5に示すように、拡散処理胴73は、横断流ファン91の左右方向の長さ(左右幅)と略同じ左右幅を有し、横断流ファン91と左右方向の位置がほぼ同じ(略同じ左右方向位置)になるように、且つ平行に配置している。また、揺動棚51に設けられたチャフシーブ53の上方で、且つ拡散処理胴73の下方には、扱室66の終端から拡散処理胴73に臨むように、前後方向に長手方向を配するフィン97を左右方向に複数個並列に配置して、扱室66や排塵処理室68や拡散処理胴73から落下する被処理物を選別するためのストローラック98を形成している。
【0056】
ストローラック98全体の左右幅は拡散処理胴73の左右幅よりも長く、図示例ではストローラック98の左端部と拡散処理胴73の左端部が左右方向で略同じ位置にあり、ストローラック98の右端部が拡散処理胴73の右端部よりも右側に位置している。この拡散処理胴73の右端部よりも右側(外側)にはみ出したストローラック98の部分(はみ出し部)98aに位置するフィン97aの前後方向の長さを、拡散処理胴73と左右方向位置が重なるストローラック98の部分(重複部)98bに位置するフィン97bの前後方向の長さよりも長くして、フィン97aの後端部を横断流ファン91の下方(横断流ファン91の前端部)まで伸ばした構成とする。
【0057】
なお、図4に示す例では、ストローラック98のはみ出し部98aのフィン97aは一部拡散処理胴73と平面視で重複する(拡散処理胴73の右端部よりも左側に位置する)が、この重複部分は拡散処理胴73の軸受け部分に相当する。したがって、はみ出し部98aのフィン97aと重複部98bのフィン97bとの境界は拡散処理胴73の右端部近傍であって、若干拡散処理胴73の右端部よりも左又は右寄りに位置する場合も含まれる。更に、ストローラック98の重複部98bのフィン97の前後方向の長さを長短交互に形成し、そのうちの長いフィン97baのみが拡散処理胴73と平面視で重なるように、長いフィン97baの後部が拡散処理胴73に臨むように設けている。
【0058】
扱胴68の終端から排出された長藁や藁くずのうち、ストローラック98の重複部98bの長短交互に設けたフィン97b(長いフィン97ba、短いフィン97bb)で小さな藁くずを落下させて選別した後、長藁のみを拡散処理胴73に投入することで拡散処理胴73の負荷が軽減される。また、ストローラック98の後方に拡散処理胴73が位置しないはみ出し部98aでは、横断流ファン91の近傍までフィン97aの後端部を伸ばすことで、長藁が横断流ファン91に吸収されやすくなる。
【0059】
図10には、図3の脱穀装置15の唐箕79付近の一部切り欠き右側面断面図を示す。 また、唐箕79の前方には唐箕79の送風を補助するためのプレファン81を設けている。このプレファン81の下方の吸入口にシャッター82を設け、唐箕79の回転速度に応じて、シャッター82が開閉する構成としても良い。シャッター82を開放すると、プレファン81の吸気量が増し、該プレファン81からの送風量が増加する。
【0060】
シャッター82の基部側は左右方向に長手方向を有する回動軸83(脱穀装置15の左右両側壁間に軸支)に固着し、この回動軸83にはシャッターアーム84の一端部も固着している。一方、唐箕79の下方には、脱穀装置15の側壁に軸支して左右方向に長手方向を有する回動軸88が設けられ、この回動軸88には唐箕調節アーム89の一端部も固着している。そして、前記シャッターアーム84の他端部と唐箕調節アーム89の他端部が連結ロッド93によって回動可能に連結している。
【0061】
唐箕調節アーム89が矢印N方向(下方)に回動軸88を支点として回動すると、連結ロッド93が下方に作動してシャッターアーム84が回動軸83を支点として矢印P方向(後方)に回動する。シャッターアーム84と一体の回動軸83が回動することで、回動軸83に固着したシャッター82が矢印Q方向(後方)に回動してシャッター82が閉じる構成である。
【0062】
例えば、唐箕79の回転速度が所定値よりも高いときには、シャッター82を開き、唐箕79の回転速度が所定値よりも低いときには、シャッター82を閉じるように制御装置100によって唐箕調節アーム89を作動制御することで、藁屑と共に排出されてしまう穀粒の回収ロスを低減できる。また、シャッター82の開閉は手動で唐箕調節アーム89を作動させる構成でも構わない。
【0063】
図11には、他の実施形態のコンバインの脱穀装置15の唐箕79付近の一部切り欠き右側面断面図を示す。図11には、図10のプレファン81のシャッター82の開閉機構の別の例を示している。
また、シャッターアーム84の他端部(回動軸83とは反対側の端部)に基部側が選別部50の前方底板102に固着したスプリング103の先端部が連結し、更にシャッターアーム84の他端部には刈取昇降シリンダに繋がるワイヤ(インナーワイヤ)95の端部が連結している。ワイヤ95のアウターワイヤ96は前方底板102に固着した側面視L字型の支持部材108により固定されている。 刈取昇降シリンダの伸縮によりワイヤ95が引かれたり緩んだりすることでシャッタ82が矢印Q方向又は矢印Q方向とは反対方向に作動する。
【0064】
例えば、刈取部5を上昇させるために、刈取昇降シリンダを伸長させると、ワイヤ95が引かれることでシャッタ82が矢印Q方向に作動してシャッター82が閉じる構成とし、刈取部5を下降させるために、刈取昇降シリンダを短縮させると、ワイヤ95が緩むことでシャッタ82が矢印Q方向とは反対方向に作動してシャッター82が開く構成とする。
刈取部5を上昇させたときに、シャッター82が閉じることで、回行時(旋回時)に藁屑と共に排出されてしまう穀粒の回収ロスを低減できる。
【0065】
また、図10及び図11に示すように、プレファン81の前方には、藁屑などの被処理物が前方底板102上に堆積せずスムーズにプレファン81及び唐箕79へ落下するように案内するための前側ガイド板105を設けている。この前側ガイド板105は前端部を前壁104に固定し、後端部がプレファン81の外周を覆うケーシング77の下端部よりも後方に(唐箕79側に)位置するように、より下方にLだけ延ばした構成である。
揺動棚51の前方から落下した藁屑が、プレファン81に吸い込まれるように、前側ガイド板105の後端部をケーシング77の始端部(下端部)よりも後方下部に伸ばすことで、藁屑のフレーム(前方底板102)上への落下が防止でき、穀粒の選別性能が向上する。
【0066】
また、図10及び図11に示すように、プレファン81のシャッター82の基部である回動軸83と前側ガイド板105の下方後端部を前後方向で略同じ位置に設けると、前側ガイド板105とシャッター82との間に隙間が生じないため、シャッター82が閉じたときは揺動棚51の前方から落下した藁屑が、まず前方の前側ガイド板105によってプレファン81へと案内され、プレファン81で吸い込まれなかった藁屑は前方底板102上に堆積することなく後方のシャッター82によって唐箕79へと案内される。したがって、揺動棚51の前方から落下した藁屑が前側ガイド板105とシャッター82との間に溜まることを防止でき、藁屑はスムーズにプレファン81及び唐箕79へと吸い込まれ、穀粒の選別性が良好となる。
【0067】
図12には、他の実施形態のコンバインの脱穀装置15の唐箕79付近の一部切り欠き右側面断面図を示す。図12に示す脱穀装置15は、プレファン81のシャッター82を設けずに、唐箕79の前方にガイド板107を設けた構成である。
図12に示す脱穀装置15は、図10及び図11に示すように前壁104からケーシング77の下端部よりも後方に延ばした前側ガイド板105を設けているが、更に、唐箕79の前方にも、前側ガイド板105から案内される藁屑などの被処理物を唐箕79へ案内するためのガイド板107を設けている。
【0068】
唐箕79と前方底板102との間の隙間には藁屑が堆積しやすいが、前側ガイド板105と唐箕79との間に藁屑を唐箕79へ案内するためのガイド板107を設けることで、藁屑の堆積を防止できる。
そして、ガイド板107の前端部と前側ガイド板105の後端部が前後方向で略同じ位置になるように、ガイド板107と前側ガイド板105を配置することで、揺動棚51の前方から落下した藁屑は、まず前方の前側ガイド板105によってプレファン81へと案内され、プレファン81で吸い込まれなかった藁屑は堆積することなく後方のガイド板107によって唐箕79へと案内される。したがって、揺動棚51の前方から落下した藁屑が前側ガイド板105と前方底板102との間に溜まることを防止でき、藁屑はスムーズにプレファン81及び唐箕79へと吸い込まれ、穀粒の選別性が良好となる。
【0069】
更に、本実施形態のコンバイン1は、図1及び図2に示すように、脱穀装置15の入口部にある入口漏斗27上の右側上方に藁屑や雑草などを掻き込み脱穀装置15に搬送する補助搬送体28を設けている。穀稈の株元部分が引継ぎ搬送チェン13とフィードチェン14とフィードチェン挟扼杆26で挟持搬送されている間に入口漏斗27の右側(穂先側)の上方にある補助搬送体28のラグ(図示せず)は、穀稈の穂先部分で同伴される藁屑や雑草を掻き込むことができ、穀稈の桿切れや雑草の溜まりを除去できる。
【0070】
補助搬送体28には、エンジン60からの動力で駆動する刈取部5へ動力伝達するための刈取入力プーリ33と同軸上に設けた補助搬送体出力プーリ34を経由して動力伝達され、該補助搬送体出力プーリ34の駆動力はベルト36を介して補助搬送体28の入力軸に設けられた補助搬送体入力プーリ37に伝達される。
【0071】
補助搬送体出力プーリ34と補助搬送体入力プーリ37をそれぞれ割りプーリとし、ベルト36をV字ベルトとして、いずれか一方のプーリの左右の半割プーリ間の隙間を広げたり狭めたりすることで、補助搬送体28の搬送速度を調節できる。穀稈の株元部分を搬送する引継ぎ搬送チェン13とフィードチェン14の搬送速度と穀稈の穂先部分を搬送する補助搬送体28の搬送速度を変えることで、脱穀装置15へ供給される各穀稈が平行になるように揃えて搬送することが可能となる。したがって、搬送姿勢の調整が可能となり、脱穀精度を高めることができる。
【0072】
また、割りプーリ間の距離は制御装置100により引継ぎ搬送チェン13とフィードチェン14の搬送速度及び補助搬送体28の搬送速度から自動で調節できるようにしても良いし、補助搬送体28の操縦席20側に設けたレバー(図示せず)によって手動で任意に調節可能としても良い。操縦席20に割りプーリ間の距離を調節可能なレバーを設けることで、補助搬送体28の搬送速度を簡便、容易に変更できるため、操作性に優れる。そして、これら供給搬送装置の構成も簡素となる。
【0073】
また、操縦席20に設けたレバーによって「低速」、「中速」、「高速」など段階的に補助搬送体28の搬送速度を変更できる構成としても良い。すなわち、割りプーリ間の距離を3段階に調節できるようにする。段階的に補助搬送体28の搬送速度を変更できるようにすれば、誰でも容易に操作できる。なお、段階数は3段階に限られず、2段階、又はそれより多くても良い。
【0074】
また、前記のように、刈取部5は、横伝動筒24(図2)を中心に図示しない刈取昇降シリンダの伸縮作用により刈取部5全体を昇降して、圃場に植生する穀稈を所定の高さで刈取りができる構成である。そして、本実施形態のコンバインには、刈取部5を一定の高さ(非作業時における非作業姿勢)まで上げると、穀稈引起し装置8、刈取装置6、掻込搬送装置、刈取穀稈搬送装置9、株元側供給チェン11、穂先側ラグ付き供給チェン12などの刈取部5の装置と、引継ぎ搬送チェン13、フィードチェン14、フィードチェン挟扼杆26などの脱穀装置15へ穀桿を供給する全ての供給装置の駆動を断つ(刈取クラッチおよび脱穀クラッチを切りにする)スイッチ113(図8)を操縦席20近傍に設けている。
そして、このスイッチ113を入りにして、刈取部5を一定の高さ(非作業姿勢)まで上げると刈取部5の全ての搬送装置の駆動が断たれると共に、補助搬送体28の搬送も停止する構成とすればよい。
【0075】
図13には、刈取部5の入力部115付近の動力伝動系統図を示す。
図13には、動力伝動図の一例として、補助搬送体28のV字ベルト36による変速ではなく、ギア変速とした場合を示している。エンジン60からの動力は走行ミッション装置61から刈取入力部115を経てギア変速装置120へと伝達されて、更に補助搬送体28に伝達される。このように、刈取入力部115と補助搬送体28が同一の駆動経路を取ることで、刈取入力部115への伝動が断たれると、補助搬送体28の搬送作動も停止する。補助搬送体28の搬送が停止することで、刈取部5を上げた時の搬送の乱れを防止することができる。なお、脱穀装置15は別の駆動経路を取るため、扱胴69、二番処理胴70、排塵処理胴71、唐箕79、拡散処理胴73などは駆動している。
【0076】
更に、図1に示すように、側面視において、補助搬送体28の前端部が株元側供給チェン11の後端部と重複し、且つ株元側供給チェン11よりも下側になるように補助搬送体28を配置している。
このように配置することで、刈取部5が昇降して刈取部5と脱穀装置15との位置関係が変わっても、穀稈の穂先側を搬送する補助搬送体28の前端部が穀稈の株元側を搬送する株元側供給チェン11の後端部よりも下方に位置するため、穂先側が下がった状態で引き継がれる。
したがって、穀稈の引き継ぎが良くなることで穀稈が株元側供給チェン11と補助搬送体28の間からこぼれることを防いで、穀稈搬送の停滞を防止できる。
【0077】
更に、図示しないが、側面視において、補助搬送体28の前端部が引継ぎ搬送チェン13の前端部よりも下方で、且つ後方になるように補助搬送体28を配置した場合には、刈取部5が昇降して刈取部5と脱穀装置15との位置関係が変わっても、穂先側が下がった状態で引き継がれる。したがって、穀稈の引き継ぎが良くなることで穀稈が入口漏斗27上からこぼれることを防いで、穀稈搬送の停滞を防止できる。
また、刈取部5の上昇時の株元側供給チェン11終端部と補助搬送体28前端部との干渉を防止するとともに、穀稈の穂先側のスペースを十分に確保できることから、多量の穀稈を刈り取る場合でも対応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、コンバインの他の農作業機にも利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0079】
1 コンバイン 2 走行フレーム
3 走行装置 4 クローラ
5 刈取部 6 刈取装置
7 分草具 8 穀稈引き起こし装置
9 刈取穀稈搬送装置 11 株元側供給チェン
12 穂先側ラグ付き供給チェン 13 引継ぎ搬送チェン
14 フィードチェン 15 脱穀装置
16 刈取横フレーム 17 刈取縦フレーム
18 縦オーガ 19 横オーガ
19a 排出口 20 操縦席
24 横伝動筒 24a 伝動軸
26 フィードチェン挟扼杆 26a スプリング
27 入口漏斗 28 補助搬送体
30 グレンタンク 30a グレンタンク螺旋
31 脱穀カウンタ軸 33 刈取入力プーリ
34 補助搬送体出力プーリ 36 ベルト
37 補助搬送体入力プーリ 50 選別部
51 揺動棚 52 移送棚
52a 選別板 53 チャフシーブ
55 セカンドファン 58 前板
59 後板 60 エンジン
61 走行ミッション装置 62 ストローラック
63 選別網 64 一番棚板
65 一番螺旋 66 扱室
67 二番処理室 68 排塵処理室
69 扱胴 69a 扱歯
70 二番処理胴 70a 処理歯
70b 螺旋 71 排塵処理胴
71a 螺旋 73 拡散処理胴
73a 処理歯 74 扱網
77 ケーシング 78 一番揚穀筒
78a 搬送螺旋 79 唐箕
80 藁用カッター 81 プレファン
82 シャッター 83 回動軸
84 シャッターアーム 85 二番棚板
86 二番螺旋 87 二番揚穀筒
87a 二番揚穀筒螺旋 88 回動軸
89 唐箕調節アーム 91 横断流ファン
93 連結ロッド 95 インナーワイヤ
96 アウターワイヤ 97 フィン
98 ストローラック 99 車速センサ
100 制御装置 101 連通口
102 前方底板 103 スプリング
104 前壁 105 前側ガイド板
106 風割部 107 ガイド板
108 支持部材 109 唐箕回転軸
110 排藁チェーン 111 拡散処理胴回転軸
113 スイッチ 114 脱穀チェン軸
115 刈取入力部 117 唐箕回転数センサ
118 拡散処理胴回転数センサ 119 穀稈量検出センサ
120 ギア変速装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(3)と、該走行装置(3)の前部に備えて圃場に埴生する穀稈を刈り取る刈取部(5)と、前記走行装置(3)の上部に備えて前記刈取部(5)により刈り取った穀稈を脱穀する脱穀装置(15)とを設けたコンバインにおいて、
前記脱穀装置(15)に、穀稈から穀粒を脱粒させる扱胴(69)を軸架した扱室(66)と、扱室(66)の搬送方向終端部側に達した被処理物を引き継いで処理する排塵処理胴(71)を軸架した排塵処理室(68)と、前記扱室(66)及び排塵処理室(68)の下方の部位に軸架して扱室(66)と排塵処理室(68)から落下してきた被処理物を後方へ拡散する拡散処理胴(73)と、被処理物を選別するための風を送る唐箕(79)を備えて扱室(66)と排塵処理室(68)から落下する被処理物を後方へ搬送しながら選別する前記扱室(66)下方の選別室(50)とを設け、
前記唐箕(79)の回転速度をコンバインの走行状態又は作業状態に応じて増減速制御すると共に、前記拡散処理胴(73)の回転速度を前記唐箕(79)の回転速度の増減速に連動して増減速制御する制御装置(100)を備えたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記刈取部(5)と脱穀装置(15)との間に、前記扱室(66)に穀稈を供給搬送する供給搬送装置(26)を設け、
該供給搬送装置(26)によって搬送される穀稈の量を検出する穀稈量検出手段(103)を設け、
前記制御装置(100)に、穀稈量検出手段(103)により検出される穀稈量に応じて前記拡散処理胴(73)の回転速度を増減速制御する機能を備えたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記扱室(66)の後方に、該扱室(66)及び前記排塵処理室(68)からの被処理物を吸引して後方へ放出するファン(91)を設け、
前記拡散処理胴(73)は、コンバインの前進方向に向かって前記ファン(91)の左右方向の幅と略同じ左右方向の幅を有し、前記扱室(66)とファン(91)との間であって、且つ該ファン(91)と左右方向で略同じ位置に設け、
前記拡散処理胴(73)の下方に、前後方向に長手方向を配するフィン(97)を左右方向に複数個並列に配置して前記拡散処理胴(73)の左右方向の幅よりも左右方向の幅を長く形成した被処理物を選別するためのストローラック(98)を、該ストローラック(98)の左右一側端部が前記拡散処理胴(73)の左右一側端部と左右方向で略同じ位置になるように設け、
前記ストローラック(98)は、前記拡散処理胴(73)の左右他側端部から外側にはみ出したストローラック(98)のはみ出し部(98a)のフィン(97a)の前後方向の長さを、拡散処理胴(73)と左右方向位置が重なるストローラック(98)の重複部(98b)のフィン(97b)の前後方向の長さよりも長く形成し、且つ該フィン(97a)の後端部を前記ファン(91)の下方前端部近傍まで伸ばした構成であると共に、前記重複部(98b)のフィン(97b)の前後方向の長さを長短交互に形成し、そのうちの長いフィン(97ba)のみが拡散処理胴(73)と平面視で重なる構成としたことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−200183(P2011−200183A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71929(P2010−71929)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】