説明

コンバイン

【課題】いずれかの作動部に過負荷が生じた場合には、その作動部ないしは所定の作動部を作動停止させるようにすること。
【解決手段】本機に搭載したエンジンにフィーダハウスに内蔵させた搬送コンベアの駆動軸を連動連結し、搬送コンベアの駆動軸に主軸伝動機構を介して刈取主軸を連動連結した。刈取主軸には、各作動部であるリール伝動機構を介した掻込リールと、オーガ伝動機構を介した掻込オーガと、刈刃伝動機構を介した刈刃装置をそれぞれ連動連結した。刈取主軸と主軸伝動機構との間には第1リミットクラッチを介設するとともに、第1リミットクラッチの過負荷による切断動作に刈取主軸に連動連結した各作動部の停止動作を連動させた。一方、刈取主軸とオーガ伝動機構との間には第2リミットクラッチを介設するとともに、第2リミットクラッチの過負荷による切断動作に掻込オーガの停止動作を連動させた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
刈取部の過負荷防止機能を有するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインの一形態として、特許文献1に開示されたものがある。すなわち、かかるコンバインは、機体の前方に刈取部を有して、刈取部で刈り取った穀稈の全てを機体に設けた脱穀部に投入して脱穀する全稈投入型である。そして、刈取部は、圃場に植立した穀稈を掻き込む掻込リールと、掻込リールにより掻き込まれた穀稈の株元を切断する刈刃装置と、刈刃装置により刈り取られた穀稈を掻き込みながら横送りする掻込オーガを横架したプラットフォームと、掻込オーガにより横送りされた穀稈を後方へ搬送する搬送コンベアを内蔵したフィーダハウスとを具備している。
【0003】
そして、刈取部の各作動部である掻込リールと刈刃装置と掻込オーガと搬送コンベアは、本機に搭載したエンジンから動力を受けて作動されるようにしている。すなわち、エンジンから搬送コンベアに動力が伝達される。そして、搬送コンベアから駆動主軸を介して刈刃装置と掻込オーガにそれぞれ動力が伝達される。また、掻込オーガから掻込リールに動力が伝達される。
【0004】
また、掻込オーガへの伝動経路には、トルクリミッターとして機能するリミットクラッチを配設している。そうすることで、リミットクラッチに穀稈による過負荷が作用した場合には、リミットクラッチが切断作動して掻込オーガを停止させるようにしている。そして、掻込オーガに無理な力が作用して破損等されるのを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−263914
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記したコンバインは、リミットクラッチが切断作動して掻込オーガが作動停止されると、掻込オーガから動力が伝達される掻込リールも作動停止される。そのため、リミットクラッチが切断作動した場合には、刈刃装置により刈り取られた穀稈が堅実にプラットフォーム内に掻き込まれないという不具合が生起されることがある。このような不具合が生起されるのであれば、その後の対処を考慮して、寧ろ、刈刃装置も作動停止されるのが望ましい。
【0007】
そこで、本発明は、リミットクラッチを介して掻込オーガが作動停止された場合にも、掻込リールと刈刃装置は作動を継続して、刈刃装置により刈り取られた刈取穀稈が掻込リールにより適切にプラットフォーム内に掻き込まれるようにするとともに、刈刃装置がリミットクラッチを介して作動停止された場合には、掻込オーガと掻込リールも作動停止されるようにして、上記した不具合の解消を実現することができるコンバインを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明に係るコンバインは、圃場に植立した穀稈を掻き込む掻込リールと、掻込リールにより掻き込まれた植立穀稈を切断する刈刃装置と、刈刃装置により刈り取られた穀稈を掻き込みながら横送りする掻込オーガを横架したプラットフォームと、掻込オーガによりプラットフォーム内に掻き込まれた穀稈を脱穀部まで搬送する搬送コンベアを内蔵するフィーダハウスとを具備する刈取部を本機の前方に備えたコンバインであって、本機に搭載したエンジンにフィーダハウスに内蔵させた搬送コンベアの駆動軸を連動連結し、搬送コンベアの駆動軸に主軸伝動機構を介して刈取主軸を連動連結し、刈取主軸には、リール伝動機構を介した掻込リールと、オーガ伝動機構を介した掻込オーガと、刈刃伝動機構を介した刈刃装置をそれぞれ並列的に連動連結し、刈取主軸と主軸伝動機構との間には第1リミットクラッチを介設するとともに、第1リミットクラッチは刈刃装置からの過負荷を受けて切断動作する一方、刈取主軸とオーガ伝動機構との間には第2リミットクラッチを介設するとともに、第2リミットクラッチは掻込オーガからの過負荷を受けて切断動作するようにし、第1リミットクラッチの切断駆動力は、第2リミットクラッチの切断駆動力よりも大となしたことを特徴とする。
【0009】
かかるコンバインでは、植立する穀稈等により刈刃装置に過負荷が発生して、刈刃装置から第1リミットクラッチに過負荷が作用した場合には、第1リミットクラッチが切断動作して、主軸伝動機構を介した刈取主軸への伝動経路が切断される。そのため、刈取主軸に連動連結した掻込リールと掻込オーガと刈刃装置の全ての作動部の作動が停止する。したがって、刈刃装置に発生した過負荷により第1リミットクラッチを介して全ての作動部を作動停止させることで、刈取作業を一時的に緊急停止させることができる。
【0010】
また、大量に掻き込まれた穀稈により掻込オーガに過負荷が発生して、掻込オーガから第2リミットクラッチに過負荷が作用した場合には、第2リミットクラッチが切断動作して、オーガ伝動機構を介した掻込オーガへの伝動経路が切断される。そのため、掻込オーガの作動が停止する。したがって、第2リミットクラッチを介して掻込オーガが作動停止されることで、過負荷により掻込オーガが損傷等されるのを回避することができる。
【0011】
この際、第1リミットクラッチの切断駆動力は、第2リミットクラッチの切断駆動力よりも大となしているため、第2リミットクラッチを介して掻込オーガが作動停止された場合でも、第1リミットクラッチが接続されている限り、刈刃装置と掻込リールはそれぞれ作動を継続して、刈刃装置により刈り取られた穀稈を掻込リールにより堅実にプラットフォーム内に掻き込むことができる。
【0012】
請求項2記載の発明に係るコンバインは、請求項1記載の発明に係るコンバインであって、前記第1・2リミットクラッチは、刈取主軸上に同軸的に配置したことを特徴とする。
【0013】
かかるコンバインでは、第1・2リミットクラッチを刈取主軸に同軸的にコンパクトに配置しているため、組立作業やメンテナンスを簡易化することができる。そして、既存のコンバインにも容易に適用することができる。
【0014】
請求項3記載の発明に係るコンバインは、請求項2記載の発明に係るコンバインであって、前記第1・2リミットクラッチは、それぞれ各伝動機構の一部を形成するスプロケットと、そのスプロケットに所定の巻き掛け角度で巻き掛ける伝動チェンとで構成して、スプロケットの周端部に形成した係合凸部と、伝動チェンの係合凹部とが係合されるとともに、伝動チェンの引っ張り側に作用する過大な張力により係合が解除されるようにし、第1リミットクラッチは第2リミットクラッチよりも巻き掛け角度を大となしたことを特徴とする。
【0015】
かかるコンバインでは、伝動機構の一部を形成するスプロケットと伝動チェンとで第1・2リミットクラッチを構造簡易に構成することができて、製造コストの大幅な増大を回避することができる。この点からも、第1・2リミットクラッチを刈取主軸に同軸的にコンパクトに配設することが簡易となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は次の効果を奏する。すなわち、本発明では、刈刃装置に発生した過負荷により第1リミットクラッチが切断動作して、掻込リールと掻込オーガと刈刃装置の全ての作動部の作動を停止させることで、刈取作業を一時的に緊急停止させることができる。また、掻込オーガに発生した過負荷により第2リミットクラッチが切断動作して、掻込オーガの作動を停止させることで、過負荷により掻込オーガが損傷等されるのを回避することができる。この際、第2リミットクラッチを介して掻込オーガが作動停止された場合でも、第1リミットクラッチが接続されている限り、刈刃装置と掻込リールはそれぞれ作動を継続するため、刈刃装置により刈り取られた穀稈は掻込リールにより堅実にプラットフォーム内に掻き込まれる。その結果、プラットフォーム内への刈取穀稈の掻込効率を良好に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る普通型コンバインの左側面図。
【図2】本発明に係る普通型コンバインの右側面図。
【図3】刈取部の左側面図。
【図4】刈取部の正面図。
【図5】刈取部の平面図。
【図6】刈取部の右側面説明図
【図7】刈取部の背面説明図
【図8】第1リミットクラッチの説明図。
【図9】第2リミットクラッチの説明図。
【図10】動力伝達機構図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1及び図2に示すように、コンバイン1は、左右一対のクローラ式の走行部2,2の直上方に機体3を配置して、機体3の前方に刈取部4を取り付けている。機体3には、左側に脱穀部5と選別部6を上下段に配置し、これらの直後方に排藁処理部7を配置する一方、右側に運転部8と穀粒貯留部9と原動機部10を前後方向に順次配置している。11は原動機部10に設けたエンジン、12は穀粒貯留部9に連通連設した袋詰め用搬出体、13は穀粒貯留部9に連通連設した搬出オーガである。
【0020】
刈取部4は、フィーダハウス20とプラットフォーム21と刈刃装置22と左右一対のデバイダ23,23と掻込リール24とを具備している。
【0021】
具体的には、図3〜図5に示すように、フィーダハウス20は前後方向に伸延する四角形筒状に形成して、内部には刈り取った穀稈を前方から後方に搬送する搬送コンベア27(図10参照))を配設している。そして、フィーダハウス20は運転部8の左側下方に配置するとともに、機体3の前部に後端部を昇降自在に枢支して、昇降油圧シリンダ26により昇降位置調節可能としている。図10に示すように、搬送コンベア27は駆動軸28と従動ドラム29との間に搬送ベルト30を巻回して形成している。
【0022】
プラットフォーム21は、機体3の左右幅と略同一幅で前方が開口するケーシング状に形成して、フィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)に左側部を連通連結し、内部に左右方向に回動軸芯を向けたオーガ支軸32を介して掻込オーガ25を横架している。掻込オーガ25は後述する刈刃装置22により刈り取られた穀稈をプラットフォーム21内に掻き込むとともに、フィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)内に横送り搬入するようにしている。
【0023】
刈刃装置22は、左右方向に伸延するバリカン型に形成しており、プラットフォーム21の前端下部に、その前端全幅にわたって配設している。そして、植立穀稈の株元部を刈り取るようにしている。
【0024】
すなわち、刈刃装置22は、プラットフォーム21の前下端縁部にその左右幅前幅にわたって伸延する刈刃台33を取り付け、刈刃台33に多数の受刃34を前方(機体の前進方向)へ向けて突定し、受刃34上にて左右方向に伸延させて前端縁部を鋸刃状に形成した刈刃35を左右方向に一定幅にて往復横摺動させることで、刈刃35と受刃34の相互作用にて植立穀稈の株元部が切断されるように構成している。受刃34は、基端部(後端部)の受刃本片34aと先端部(前端部)の穀稈案内片34bとから前後方向に伸延させ、かつ、前方へ先細り状に形成している。そして、多数の受刃34は、それぞれ左右幅方向に一定の間隔を開けて配置して、左右に隣接する受刃34,34の穀稈案内片34b,34b間に植立穀稈の株元部を案内して、その株元部を刈刃35により切断するようにしている。受刃本片34aには摺動溝(図示せず)を形成しており、摺動溝中を刈刃35が横断状に摺動するようにしている。
【0025】
左右一対のデバイダ23,23は、それぞれプラットフォーム21の左右側壁から前方へ突設して、機体の前進走行に伴って植立穀稈を刈取側と非刈取側とに分草するようにしている。
【0026】
掻込リール24は、左右一対のデバイダ23,23間の上方に掻込回転自在に配置して、両デバイダ23,23により分草された刈取側の植立穀稈をプラットフォーム21側に回転しながら掻き込むようにしている。
【0027】
すなわち、掻込リール24は、プラットフォーム21の後端上部に左右方向に軸線を向けたアーム支軸40を横架している。アーム支軸40の左右側端部には前後方向に伸延する左右一対の支持アーム41,41の基端部(後端部)を枢支している。そして、各支持アーム41の中途部とプラットフォーム21の側壁との間にリール昇降シリンダ42を介設して、アーム支軸40を中心に両支持アーム41,41を昇降可能としている。
【0028】
両支持アーム41,41の先端部(前端部)間には、左右方向に伸延するリール支軸43をその軸芯廻りに回転自在に軸架するとともに、リール支軸43を前後方向に始端対位置調節自在としている。リール支軸43の左右側端部には、左右一対の回転支持体44,44を左右に対向させてそれらの中心部を取り付けている。両回転支持体44,44は、金属製の板状体を正五角形状に形成して、左右に対向する各角部(頂部)間にタインバー枢支体45を介して左右方向に伸延するパイプ(円管)状のタインバー46をその軸線廻りに回転自在に横架している。各タインバー46には、左右方向に一定の間隔を開けて複数のタイン47を垂下状に取り付けている。
【0029】
右側の回転支持体44の外側方にはリール支軸43の軸芯とは偏倚した軸芯廻りに回転するタイン姿勢保持用回転支持体48を配置している。そして、タイン姿勢保持用回転支持体48は、回転支持体44と略同形状に形成して、各角部(頂部)にリンク枢支体49を取り付け、リンク枢支体49と近接するタインバー46の右側端とをリンク50を介して連結してタイン姿勢保持機構51を形成している。アーム支軸40の右側端とリール支軸43の右側端との間には、エンジン11に連動連結した連動機構52を介設して、リール支軸43を左側面視にて反時計廻りに回転させるようにしている。
【0030】
このようにして、リール支軸43を左側面視にて反時計廻りに回転させると、リール支軸43に取り付けた左右一対の回転支持体44,44も反時計廻りに回転して、両回転支持体44,44間にタインバー46を介して取り付けたタイン47は回転支持体44の外周廻りに移動する。この際、タイン姿勢保持機構51は、回転移動するタイン47の内、少なくとも植立穀稈に作用するタイン47は所定の垂下姿勢に保持して、かかる垂下姿勢に保持されたタイン47が植立穀稈に掻き込み作用するようにしている。
【0031】
上記のように構成した刈取部4は、左右一対のデバイダ23,23により分草した植立穀稈を分草して、その分草した刈取側の植立穀稈を掻込リール24により掻き込むとともに、その掻き込まれた植立穀稈の株元部を刈刃装置22により刈り取って、プラットフォーム21内に掻き込むようにしている。そして、プラットフォーム21内に掻き込まれた穀稈を掻込オーガ25によりフィーダハウス20の前端部開口部(搬入口部)に横送り搬入させ、さらには、全穀稈をフィーダハウス20内の搬送コンベア27により後方の機体3に配設した脱穀部5に搬入(投入)するようにしている。
【0032】
上記のような構成において、図6〜図10に示すように、本実施形態にかかるコンバイン1は、次のように構成している。すなわち、機体3に搭載したエンジン11には、フィーダハウス20に内蔵させた搬送コンベア27の駆動軸28を連動連結し、搬送コンベア27の駆動軸28に主軸伝動機構60を介して刈取主軸61を連動連結している。刈取主軸61には、各作動部であるリール伝動機構62を介した掻込リール24と、オーガ伝動機構63を介した掻込オーガ25と、刈刃伝動機構64を介した刈刃装置22をそれぞれ連動連結している。刈取主軸61と主軸伝動機構60との間には第1リミットクラッチ65を介設するとともに、第1リミットクラッチ65の過負荷による切断動作に刈取主軸61に連動連結した各作動部の停止動作を連動させている。そして、刈取主軸61とオーガ伝動機構63との間には第2リミットクラッチ66を介設するとともに、第2リミットクラッチ66の過負荷による切断動作に掻込オーガ25の停止動作を連動させている。
【0033】
より具体的に説明すると、図6、図7及び図10に示すように、フィーダハウス20の右側方において、プラットフォーム21の背面壁(後壁)21aに、軸支体67、68、69を介して左右方向に直状に伸延する刈取主軸61を横架している。刈取主軸61の左側端部と、フィーダハウス20の右側壁から右側外方へ突出させた搬送コンベア27の駆動軸28の右側端部28aとの間に、主軸伝動機構60を介設している。主軸伝動機構60は、駆動軸28の右側端部28aに取り付けた駆動スプロケット70と、刈取主軸61の左側端部に取り付けた従動スプロケット71との間に、主軸伝動チェン72を巻回して形成している。73は主軸伝動チェン72にテンション(緊張力)を負荷するテンションアーム、74はテンションスプロケット、75はテンションスプリング(付勢体)、76はガイドスプロケットであり、その配設位置により従動スプロケット71への主軸伝動チェン72の巻き掛け角度を規制するようにしている。
【0034】
また、刈取主軸61の右側端部61aは、プラットフォーム21の右側壁21bよりも右側方へ突出させて、この右側端部61aにリール伝動機構62とオーガ伝動機構63と刈刃伝動機構64の各基端部を連動連結している。
【0035】
リール伝動機構62は、刈取主軸61の右側端部61aにリール駆動スプロケット80を取り付ける一方、アーム支軸40の右側端部に同一軸芯上で突出した中間軸81に従動スプロケット82を回転自在に取り付けて、両スプロケット80,82間にリール伝動チェン83を巻回している。84はリール伝動チェン83を緊張方向に付勢するとともに回動案内する付勢兼案内体である。
【0036】
従動スプロケット82には駆動スプロケット85を同一軸芯上にて一体的に取り付ける一方、リール支軸43の右側端部には従動スプロケット86を取り付けて、両スプロケット85,86間に連動チェン87を巻回して連動機構52を形成している。88は連動チェン87を緊張状態に保持する緊張保持アームであり、緊張保持アーム88は中途部が支軸89を介して枢支され、緊張保持アーム88の両端部にテンションスプロケット90,91が取り付けられている。92は緊張保持アーム88を回動付勢して、連動チェン87に緊張力を付与する付勢用引っ張りスプリング(付勢体)である。
【0037】
オーガ伝動機構63は、刈取主軸61の右側端部61aにオーガ駆動スプロケット93をリール駆動スプロケット80の左側方に隣接位置させて同軸的に取り付ける一方、プラットフォーム21の右側壁21bより外方へ突出させたオーガ支軸32の右側端部にオーガ従動スプロケット94を取り付けて、両スプロケット93,94間にオーガ伝動チェン95を巻回して形成している。ここで、オーガ従動スプロケット94はオーガ駆動スプロケット93よりも大径に形成して、掻込オーガ25を減速回動させるようにしている。
【0038】
オーガ駆動スプロケット93の直上方位置には、中間スプロケット96を配置しており、中間スプロケット96はプラットフォーム21の右側壁21bに中間支軸97を介して取り付けている。中間スプロケット96とオーガ従動スプロケット94との中途部上方位置には、テンションアーム体98を配置している。テンションアーム体98は、プラットフォーム21の右側壁21bに左右方向に軸線を向けたアーム支軸99を介して前後方向に伸延するアーム片98aの基端部を枢支し、アーム片98aの基端部より上方へ伸延させて連動片98bを形成して、連動片98bの先端部とプラットフォーム21の右側壁21bとの間に引っ張りスプリング(付勢体)100を介設している。アーム片98aの先端部にはテンションスプロケット98cを取り付けている。
【0039】
このようにして、引っ張りスプリング100の引っ張り付勢力によりテンションスプロケット98cを介して中間スプロケット96とオーガ従動スプロケット94との間で移動するオーガ伝動チェン95の中途部を下方へ押圧して、オーガ伝動チェン95に緊張力を付与するようにしている。
【0040】
刈刃伝動機構64は、刈取主軸61の右側端部61aと、刈刃装置22の刈刃35との間に介設している。すなわち、刈取主軸61の右側端部61aに、前後方向に伸延する回動アーム101の基端部を取り付け、回動アーム101の先端部には前後方向に伸延する伝動ロッド102の基端部(後端部)を枢支連結している。伝動ロッド102の先端部にはリンク機構103を介して刈刃35の右側端部を連結している。リンク機構103は、上下方向の軸芯線廻りに回動して、伝動ロッド102の前後方向の往復摺動動作と、刈刃35の左右方向の往復摺動動作を連動させている。
【0041】
このようにして、軸芯廻りに回動する刈取主軸61に連動して回動アーム101が回動し、回動アーム101の回動に連動して伝動ロッド102が前後方向に往復摺動する。そして、伝動ロッド102の往復摺動にリンク機構103を介して刈刃35が連動して左右方向に往復摺動(刈刃作動)する。
【0042】
次に、第1リミットクラッチ65と第2リミットクラッチ66の構成を、図8及び図9を参照しながら説明する。
【0043】
(第1リミットクラッチ65)
第1リミットクラッチ65は、図8に示すように、刈取主軸61の左側端部に取り付けた従動スプロケット71に、その略前半周縁部にわたって主軸伝動チェン72を巻き掛けている。すなわち、従動スプロケット71の周端部には係合凸部(歯部)71aを形成している。主軸伝動チェン72は、左右一対のチェン形成リンク72aの端部同士を連結ピン72bを介して連結して無端帯状に形成している。そして、左右一対のチェン形成リンク72aと連結ピン72bとで係合凹部72cを形成している。
【0044】
従動スプロケット71の周端部に主軸伝動チェン72を掛け廻した際には、各係合凹部72cに各係合凸部(歯部)71aが係合するようにしている。この際、各係合凹部72cに各係合凸部(歯部)71aが係合している部分の角度、つまり、巻き掛け角度θ1は、略180度となるようにガイドスプロケット76の配設位置により設定している。そして、刈取主軸61がロックされて従動スプロケット71の回動が停止されると、主軸伝動チェン72の引っ張り側に作用する過大な張力により各係合凹部72cと各係合凸部(歯部)71aとの係合が解除されて、トルクリミッターとして機能するように構成している。
【0045】
(第2リミットクラッチ66)
第2リミットクラッチ66は、図9に示すように、刈取主軸61の左側端部に取り付けたオーガ駆動スプロケット93に、その略四分の一周縁部にわたってオーガ伝動チェン95を巻き掛けている。すなわち、オーガ駆動スプロケット93の周端部には係合凸部(歯部)93aを形成している。オーガ伝動チェン95は、左右一対のチェン形成リンク95aの端部同士を連結ピン95bを介して連結して無端帯状に形成している。そして、左右一対のチェン形成リンク95aと連結ピン95bとで係合凹部95cを形成している。
【0046】
オーガ駆動スプロケット93の周端部にオーガ伝動チェン95を掛け廻した際には、各係合凹部95cに各係合凸部(歯部)93aが係合するようにしている。この際、各係合凹部95cに各係合凸部(歯部)93aが係合している部分の角度、つまり、巻き掛け角度θ2は、略90度となるように中間スプロケット96の配設位置とオーガ従動スプロケット94の外径により設定している。そして、掻込オーガ25がロックされてオーガ従動スプロケット94の回動が停止されると、オーガ伝動チェン95の引っ張り側に作用する過大な張力により各係合凹部95cと各係合凸部(歯部)93aとの係合が解除されて、トルクリミッターとして機能するように構成している。
【0047】
第1リミットクラッチ65の切断駆動力は、第2リミットクラッチ66の切断駆動力よりも大となしている。すなわち、第1・2リミットクラッチ65,66は、それぞれスプロケット71,93に各伝動チェン72,95をそれぞれ所定の巻き掛け角度θ1、θ2で巻き掛けるとともに、第1リミットクラッチ65の巻き掛け角度θ1は第2リミットクラッチ66の巻き掛け角度θ2よりも大(θ1>θ2)となしている。なお、両スプロケット71,93の外径と歯数は同一となしている。
【0048】
このように構成することで、植立する穀稈等により刈刃装置22に過負荷が発生して、刈刃装置22から第1リミットクラッチ65に過負荷が作用した場合には、第1リミットクラッチ65が切断動作(トルクリミッターとして機能)して、主軸伝動機構60を介した刈取主軸61への伝動経路が切断される。そのため、刈取主軸61に連動連結した掻込リール24と掻込オーガ25と刈刃装置22の全ての作動部の作動が停止する。このように、刈刃装置22に発生した過負荷により第1リミットクラッチ65を介して全ての作動部を作動停止させることで、刈取作業を一時的に緊急停止させることができる。
【0049】
また、大量に掻き込まれた穀稈により掻込オーガ25に過負荷が発生して、掻込オーガ25から第2リミットクラッチ66に過負荷が作用した場合には、第2リミットクラッチ66が切断動作して、オーガ伝動機構63を介した掻込オーガ25への伝動経路だけが切断される。そのため、掻込オーガ25だけの作動が停止する。このように、第2リミットクラッチ66を介して掻込オーガ25が単独で作動停止されることで、過負荷により掻込オーガ25が損傷等されるのを回避することができる。
【0050】
この際、第1リミットクラッチ65の切断駆動力は、第2リミットクラッチ66の切断駆動力よりも大となしているため、第2リミットクラッチ66を介して掻込オーガ25だけが単独で作動停止される。この場合、第1リミットクラッチ65が接続されている限り、刈刃装置22と掻込リール24はそれぞれ作動を継続して、刈刃装置22により刈り取られた穀稈を掻込リール24により堅実にプラットフォーム21内に掻き込むことができる。
【0051】
そして、掻込リール24に過負荷が発生して第1リミットクラッチ65が切断動作した場合には、刈取主軸61に連動連結した各作動部、つまり、掻込リール24、掻込オーガ25及び刈刃装置22の作動が停止する。このように、過負荷を受けやすい掻込オーガ25は第2リミットクラッチ66を介して単独で作動停止させることで、掻込オーガ25が損傷等されるのを堅実に回避することができる。
【0052】
また、各伝動機構60、63を形成する各スプロケット71,93と各伝動チェン72,95とで第1・2リミットクラッチ65,66を構造簡易に構成することができて、製造コストの大幅な増大を回避することができる。また、第1・2リミットクラッチ65,66は刈取主軸61にコンパクトに配設することができるため、既存のコンバインにも適用することができる。
【0053】
なお、リール伝動機構62のリール駆動スプロケット80とリール伝動チェン83とでトルクリミッターとして機能する第3リミットクラッチ(図示せず)を形成することもできる。この際、リール伝動チェン83のリール駆動スプロケット80への巻き掛け角度(図示せず)は、前記した巻き掛け角度θ1と同等ないしはそれよりも小さく、かつ、前記した巻き掛け角度θ2よりも大きく設定する。
【0054】
このように構成することで、大量に植立した穀稈により掻込リール24に過負荷が発生することがあるが、この場合には第3リミットクラッチを介して掻込リール24を作動停止させることで、掻込リール24が損傷等されるのを回避することができる。この際、第3リミットクラッチは第2リミットクラッチ66よりも切断作動力を大となして、掻込リール24が掻込オーガ25よりも切断停止され難くすることができる。
【0055】
図10に示す動力伝達機構図において、エンジン11から搬送コンベア27に至るまでの動力伝達機構について説明する。
【0056】
すなわち、エンジン11の出力軸110に第1連動ベルト機構111を介して入力軸112を連動連結している。入力軸112には走行部2を駆動するHSTポンプ113と第2連動ベルト機構114と第3連動ベルト機構115を連動連結している。116はオーガテンションクラッチ、117は脱穀テンションクラッチ、118は第1中間軸である。第1中間軸118と脱穀部5に配設した軸流型扱胴120の扱胴支軸121との間には第4連動ベルト機構119を介設している。122はギヤケース、123は第2中間軸、124は第3中間軸、125は第2中間軸123と第3中間軸124との間に介設した第5連動ベルト機構である。126は第3中間軸124の右側端部に取り付けたフロントビータである。127は第3中間軸124と搬送コンベア27の駆動軸28との間に介設した第6連動ベルト機構、128は刈取テンションクラッチである。
【0057】
また、選別部6に配設した唐箕130と第1コンベア131と第2コンベア132と揺動選別体133には、それぞれ唐箕支軸134と第1コンベア支軸135と第2コンベア支軸136と揺動作用軸137とを平行させて配置している。そして、第3中間軸124と唐箕支軸134との間に第7連動ベルト機構140を介設し、唐箕支軸134と第1コンベア支軸135との間に第8連動ベルト機構141を介設し、第1コンベア支軸135と第2コンベア支軸136との間に第9連動ベルト機構142を介設し、第2コンベア支軸136と揺動作用軸137との間に第10連動ベルト機構143を介設している。144は第1コンベア131に連動連結した揚穀コンベア、145は第2コンベア132に連動連結した還元コンベアである。
【0058】
このように、エンジン11の駆動力は、走行部2,刈取部4、脱穀部5及び選別部6にそれぞれ伝達されて、各作動部が堅実に作動されるようにしている。
【符号の説明】
【0059】
1 コンバイン
2 走行部
3 機体
4 刈取部
5 脱穀部
6 選別部
20 フィーダハウス
21 プラットフォーム
22 刈刃装置
24 掻込リール
25 掻込オーガ
65 第1リミットクラッチ
66 第2リミットクラッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場に植立した穀稈を掻き込む掻込リールと、掻込リールにより掻き込まれた植立穀稈を切断する刈刃装置と、刈刃装置により刈り取られた穀稈を掻き込みながら横送りする掻込オーガを横架したプラットフォームと、掻込オーガによりプラットフォーム内に掻き込まれた穀稈を脱穀部まで搬送する搬送コンベアを内蔵するフィーダハウスとを具備する刈取部を本機の前方に備えたコンバインであって、
本機に搭載したエンジンにフィーダハウスに内蔵させた搬送コンベアの駆動軸を連動連結し、搬送コンベアの駆動軸に主軸伝動機構を介して刈取主軸を連動連結し、
刈取主軸には、リール伝動機構を介した掻込リールと、オーガ伝動機構を介した掻込オーガと、刈刃伝動機構を介した刈刃装置をそれぞれ並列的に連動連結し、
刈取主軸と主軸伝動機構との間には第1リミットクラッチを介設するとともに、第1リミットクラッチは刈刃装置からの過負荷を受けて切断動作する一方、刈取主軸とオーガ伝動機構との間には第2リミットクラッチを介設するとともに、第2リミットクラッチは掻込オーガからの過負荷を受けて切断動作するようにし、
第1リミットクラッチの切断駆動力は、第2リミットクラッチの切断駆動力よりも大となしたことを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記第1・2リミットクラッチは、刈取主軸上に同軸的に配置したことを特徴とする請求項1記載のコンバイン。
【請求項3】
前記第1・2リミットクラッチは、それぞれ各伝動機構の一部を形成するスプロケットと、そのスプロケットに所定の巻き掛け角度で巻き掛ける伝動チェンとで構成して、スプロケットの周端部に形成した係合凸部と、伝動チェンの係合凹部とが係合されるとともに、伝動チェンの引っ張り側に作用する過大な張力により係合が解除されるようにし、
第1リミットクラッチは第2リミットクラッチよりも巻き掛け角度を大となしたことを特徴とする請求項2記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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