説明

コンバイン

【課題】刈取部の上昇に連動して刈取クラッチを入り状態から切り状態に切り換える連動操作機構を少ない部品点数で組み立てやすく構成する。
【解決手段】刈取クラッチ6のテンションアーム46と、刈取クラッチレバー16とを操作ワイヤ50のインナーワイヤ50Aで連結し、この操作ワイヤ50のアウターワイヤ50Bの一端を中間部材55に連結した。刈取部Bに備えた規制部材59Cと中間部材55との間に作動部材60を備え、刈取部Bが設定レベルを超えて上昇した場合に作動部材60の先端に規制部材59Cを当接させ、作動部材60から中間部材55に押圧力を作用させ、この中間部材55の揺動により刈取クラッチ6の切り操作を行うように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刈取部に伝えられる動力の断続を行う刈取クラッチを備え、この刈取クラッチを人為的に操作する刈取クラッチレバーを備え、前記刈取部の上昇に連動して、入り状態にある前記刈取クラッチの切り操作を行う連動操作機構を備えているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように構成されたコンバインとして特許文献1には、刈取クラッチレバー(文献では手動操作レバー)によって刈取クラッチを操作する第1リリーズワイヤを備え、この第1リリーズワイヤのアウタ部の刈取クラッチ側の端部を支持する中継揺動アームを備え、この中継揺動アームに入り方向への付勢力を作用させる付勢機構を備え、刈取部の上昇作動時に揺動する駆動アームと、この駆動アームの揺動力を中継揺動アームに伝える第2リリーズワイヤとを備えたオートクラッチが示されている。
【0003】
この特許文献1では、刈取部の支持フレームにカム機構を備え、このカム機構のカム面(円弧面)に接触するローラ部を駆動アームの先端に備えており、刈取部の上昇時にカム機構のカム面からローラ部に作用する力で駆動アームを揺動させ、この揺動力を第2リリーズワイヤから中継揺動アームに伝えて揺動を行わせ、この揺動によって刈取クラッチの切り作動を実現するように連動操作機構が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10‐56855公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるオートクラッチは、カム機構と駆動アームとワイヤとを必要するため部品点数が増大しやすく、また、カム機構と駆動アームのローラ部との位置関係を設定し、駆動アームの揺動量に対するワイヤの操作量の関係を設定する等、中継揺動アームを揺動させるために高い精度が要求されるものであった。
【0006】
このように部品点数が多いものではコストの上昇に繋がるだけでなく、組み立てに手間と時間が掛かるものとなり、また、複数の部品の組み立てに精度が要求されるものでは組み立ての後に調整の手間を必要とする等、生産性が良くなく改善の余地がある。
【0007】
本発明の目的は、刈取部の上昇に連動して刈取クラッチを入り状態から切り状態に切り換える連動操作機構を少ない部品点数で組み立てやすく構成する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の特徴は、刈取部に伝えられる動力の断続を行う刈取クラッチを備え、この刈取クラッチを人為的に操作する刈取クラッチレバーを備え、前記刈取部の上昇に連動して、入り状態にある前記刈取クラッチの切り操作を行う連動操作機構を備えているコンバインであって、前記刈取クラッチレバーの操作力を前記刈取クラッチに伝える操作ワイヤがインナーワイヤと、アウターワイヤとを備えて構成され、前記インナーワイヤの一方の端部を前記刈取クラッチレバーに連結し、他方の端部を前記刈取クラッチの断続操作部材に連結し、前記アウターワイヤの前記刈取クラッチレバー側の端部を機体フレームに支持し、前記刈取クラッチ側の端部を中間部材に支持し、前記中間部材が、前記アウターワイヤの端部を前記断続操作部材に近接させる近接姿勢と、前記断続操作部材から離間する離間姿勢とに変位自在に前記機体フレームに支持されると共に、この変位に伴う前記アウターワイヤの移動により前記刈取クラッチの入り切り操作を行わせるように構成され、前記連動操作機構が、前記中間部材に基端側が連係する棒状の作動部材と、前記刈取部に支持した規制部材とを備えて構成され、この連動操作機構は、前記刈取部が設定レベルを超えて上昇した場合に前記作動部材の先端部に前記規制部材が当接することで前記作動部材の長手方向に作用する押圧力によって前記中間部材を変位させて前記刈取クラッチを切り操作するように構成されている点にある。
【0009】
この構成によると、刈取クラッチレバーを入り位置に設定した状態において、刈取部が設定レベルを超えて上昇した場合には、規制部材が作動部材の先端部に当接することにより、この規制部材から作動部材に押圧力が作用する。この押圧力が棒状の作動部材の長手方向に作用することで中間部材を自身の長手方向に変位させ、この変位により中間部材支持されているアウターワイヤの位置を変更して刈取クラッチの切り操作が行われる。この構成では、中間部材を変位させるための構成として、規制部材と作動部材とを備える構成であるので多くの部品を必要としない。また、この構成では、規制部材からの押圧力を作動部材が直接的に中間部材に伝える構成であるため、刈取クラッチを切り操作するタイミングを設定する場合にも、例えば、規制部材の位置を変更することや、作動部材の長さを調節することで済み、組み立てに高い精度が要求されず調整も簡単に行える。
その結果、刈取部の上昇に連動して刈取クラッチを入り状態から切り状態に切り換える連動操作機構が少ない部品点数で組み立てやすく構成された。
【0010】
本発明は、前記作動部材の先端部に回転自在なローラを備えており、前記刈取部には、前記設定レベル未満での昇降時に前記ローラに接触する状態で前記ローラの移動を許すガイド機構を備えており、このガイド機構の端部に前記規制部材を備えても良い。
【0011】
これによると、刈取部が設定レベル未満にある場合には作動部材の先端のローラがガイド機構に接触する状態に維持され、刈取部の昇降に伴いローラが回転することで円滑な昇降を可能にする。また、刈取部が設定レベルを超えて上昇した場合には、この上昇に伴いガイド機構にローラが接触する状態で移動し、この移動の端部において規制部材にローラが接触するため、作動形態に無理のない状態で中間アームを変位させて刈取クラッチの切り操作を行える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】コンバインの全体側面図である。
【図2】運転部の平面図である。
【図3】コンバインの伝動系を模式的に示す図である。
【図4】刈取クラッチと連動操作機構とを示す側面図である。
【図5】刈取部の上昇時における連動操作機構の作動状態を示す側面図である。
【図6】ガイド機構と作動部材とを示す斜視図である。
【図7】主フレームと昇降シリンダとを示す側面図である。
【図8】昇降シリンダとアーム体との関係を示す側面図である。
【図9】図8のIX−IX線断面図である。
【図10】機体フレーム前部の構成を示す平面図である。
【図11】補助縦フレームと無段変速装置との位置関係を示す正面図である。
【図12】別実施形態(a)の連動操作機構を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
〔コンバインの全体構成〕
図1に示すように、左右一対のクローラ走行装置1によって走行する走行機体Aの前端に昇降シリンダ10の作動により昇降自在に刈取部Bを備えると共に、走行機体Aの前部に運転者が搭乗する運転部Cを備え、走行機体Aに対して刈取部Bから刈取穀稈が供給される脱穀装置Dと、この脱穀装置Dで選別された穀粒を貯留する穀粒タンクEとを備えて自脱型のコンバインが構成されている。
【0014】
このコンバインは、収穫作業時に刈取部Bと脱穀装置Dとを駆動した状態で走行機体Aを前進させることにより刈取部Bで穀稈の株元を切断して穀稈の刈り取りを行い、刈り取った穀稈を脱穀装置Dに搬送して脱穀処理を行い、この脱穀装置Dの脱穀処理により得られた穀粒を穀粒タンクEに貯留する処理が行われる。
【0015】
図2に示すように、運転部Cには運転者が搭乗するステップ11と、運転者が着座する運転座席12とが備えられると共に、運転座席12の前方位置に運転者が操作する操縦レバー13が備えられ、運転座席12の側方位置の側部操縦塔としてのサイドパネルに、主変速レバー14と、副変速レバー15と、刈取クラッチレバー16と、脱穀クラッチレバー17とが備えられ、ステップ11にはブレーキペダル18が備えられている。尚、主変速レバー14と、副変速レバー15と、刈取クラッチレバー16と、脱穀クラッチレバー17とはサイドパネルの上面を形成するガイドプレート19に形成されたガイド孔に挿通する状態に配置されている。
【0016】
運転座席12の下部位置にはエンジン2が備えられ、図3に示すように、走行機体Aの前部位置で左右方向での中央位置には、左右のクローラ走行装置1に駆動力を伝える伝動ケース3が配置され、この伝動ケース3の上部には静油圧式の無段変速装置4(HST)が連結されている。エンジン2と無段変速装置4との間の伝動系には駆動力を断続する主ベルト伝動機構5が備えられ、伝動ケース3からの動力を刈取部Bに駆動力を伝える伝動系にはベルトテンション式の刈取クラッチ6が備えられ、エンジン2からの駆動力を脱穀装置Dに伝える伝動系にはベルトテンション式の脱穀クラッチ7が備えられている。
【0017】
伝動ケース3には無段変速装置4から伝えられる駆動力を高低2段に変速するギヤ式の副変速機構3Tを内蔵しており、この副変速機構3Tで変速された駆動力を左右の駆動スプロケット3Sから左右のクローラ走行装置1に伝える走行駆動系が伝動ケース3に内蔵されている。また、伝動ケース3には、左右の駆動スプロケット3Sに伝える駆動力を独立して断続する操向クラッチ機構3Aと、左右の駆動スプロケット3Sに同時に制動力を作用させるブレーキ機構3Bとを内蔵している。図面には示していないが左右の操向クラッチ機構3Aは、油圧式に作動する左右の操向シリンダによって操作される。
【0018】
操縦レバー13は、非操作状態で中立姿勢を維持すると共に、左右方向の何れかに操作された場合には操向制御弁(図示せず)を操作して、左右の操向クラッチ機構3Aのうち操作に対応したもの(例えば、右側に操作した場合には右側の操向クラッチ機構3A)に操向制御弁から作動油を供給して動力を遮断し走行機体Aの操向を実現する。また、この操縦レバー13が前後方向へ操作された場合には昇降制御弁(図示せず)を操作して昇降シリンダ10に対する作動油の給排を行い刈取部Bの昇降を実現する。
【0019】
主変速レバー14は、走行機体Aを停車させる中立位置Nと、この中立位置Nから前方側に形成される前進変速域Fと、中立位置Nから後方側に形成される後進変速域Rとに亘って操作自在に構成され、この主変速レバー14と無段変速装置4とがロッドやワイヤ等で連動連係することで、主変速レバー14の操作による無段階での変速操作が実現する。副変速レバー15は、高速位置「H」と低速位置「L」とに操作自在に構成され、この副変速レバー15と副変速機構3Tが変速ロッド(図示せず)によって連動連係することで、副変速レバー15の操作によって高速走行と低速走行との切換が実現する。
【0020】
刈取クラッチレバー16は、図4に示すように、揺動操作により入り位置「入」と切り位置「切」とに切換操作自在に構成されると共に、操作ワイヤ50によって刈取クラッチ6と連動連係しており、この刈取クラッチレバー16の操作により刈取クラッチ6の入り切りが実現する。脱穀クラッチレバー17は、揺動操作により入り位置「入」と切り位置「切」との切換操作自在に構成され、この脱穀クラッチレバー17と脱穀クラッチ7とがロッドやワイヤ等によって連動連係することで脱穀クラッチレバー17の操作により脱穀クラッチ7の入り切りが実現する。
【0021】
ブレーキペダル18は、伝動ケース3に内蔵されたブレーキ機構3Bとブレーキ操作機構(図示せず)によって連動連係することで、ブレーキペダル18の踏み込み操作に連係して左右のクローラ走行装置1に制動力を作用させる。
【0022】
図10及び図11に示すように、走行機体Aの機体フレームAFは、前後向き姿勢で両サイドに配置される縦フレーム71と、これらを結ぶ横向き姿勢の複数の横フレーム72とを備えている。左右の縦フレーム71のうち、右側(運転部側)のものがステップ11の前端位置まで延設されると共に、この延設部位と平行する姿勢となる補助縦フレーム73が機体内側に備えられ、この補助縦フレーム73と右側の縦フレーム71とを連結する横向き姿勢の補助横フレーム74が備えられている。
【0023】
補助縦フレーム73の前端部で機体内側には、この補助縦フレーム73の機体中央側の内面側より更に機体中央側に突出する突出フレーム75を備えており、この突出フレーム75にはステップ11を支持する支柱状フレーム(図示せず)の下端が連結する。図面には示していないが、ステップ11は複数の支柱状フレームの上端に連結されている。
【0024】
無段変速装置4は伝動ケース3の上部の側面に対して分離自在に連結され、この無段変速装置4の上部が機体フレームAFと重複するレベルに配置されている。このような配置関係から無段変速装置4の修理や点検等の目的で伝動ケース3から取り外す場合には、この無段変速装置4を伝動ケース3から離間する方向(機体外方)に移動させる必要があり、この移動を可能にするため、図10に示すように無段変速装置4の外面と、これに近接する補助縦フレーム73との間に取り外し作業を可能にする距離Sが設定されている。
【0025】
つまり、補助縦フレーム73が機体外方に変位する配置を採用すると共に、支柱状フレームの下端を支持するための突出フレーム75を、補助縦フレーム73の前端側で無段変速装置4と干渉しない前部位置に連結することで距離Sを作り出しながら、ステップ11の支持も可能にしているのである。
【0026】
〔刈取部〕
図1及び図4に示すように、刈取部Bは、植立穀稈の分草を行う複数の分草具21と、植立穀稈を引き起こす複数の引起装置22と、植立穀稈の株元を切断するバリカン型の刈取装置23と、この刈取装置23で株元が切断された穀稈を搬送して脱穀装置DのフィードチェーンFCに供給する搬送装置24とを備えている。この刈取部Bは、機体フレームAFの前端部の刈取部支持台25に対し横向き姿勢の主軸芯Xを中心にして揺動自在に支持される丸パイプ状の支持フレーム26と、この支持フレーム26から前方斜め下降に突出するパイプ状の主フレーム27と、この主フレーム27の下端位置に連結する横向き姿勢でパイプ状の前部フレーム28と、この前部フレーム28の一方の端部から上方に伸びる姿勢で引起装置に22に駆動力を伝える伝動フレーム29とを備えると共に、主フレーム27の上端と引起装置22の上端部分とを連結する連結フレーム30を備えている。
【0027】
支持フレーム26には伝動軸26Aが内装され、この伝動軸26Aのうちエンジン側の端部に入力プーリ42が備えられている。この刈取部Bでは、伝動軸26Aからの駆動力を主フレーム27の内部の伝動軸(図示せず)と、前部フレーム28の内部の伝動軸(図示せず)と、伝動フレーム29の内部の伝動軸(図示せず)とに順次伝える伝動系が構成され、この伝動系からの駆動力が引起装置22と刈取装置23と搬送装置24とに伝えられている。
【0028】
図7〜図9に示すように、主フレーム27の中間部で、走行機体Aに対向する部位にブラケット32が固設されている。このブラケット32の上方位置の主フレーム27の後部には横向き姿勢の支持ピン33を中心にして揺動自在に左右一対のアーム体34が垂れ下がる姿勢で備えられ、昇降シリンダ10のピストンロッド10Aの先端近くに駆動ピン35が貫通状態で備えられている。この駆動ピン35が左右のアーム体34の下端部に貫通する形態で連結し、左右のアーム体34の下端部には、このアーム体34をブラケット32に連結するようにアーム体34とブラケット32とを貫通する固定ピン36が備えられている。
【0029】
アーム体34の中間位置には、コ字状に折り曲げられた保持フレーム37が左右のアーム体34を繋ぐように連結しており、この保持フレーム37の一対の端部がアーム体34から後方に突出する突出部37Aとして形成され、この突出部37Aに連結孔37Bが形成されている。
【0030】
ブラケット32には駆動ピン35が係合するため後方に開放する形状の係合凹部32Aが形成され、このブラケット32の上端位置には後方に突出するストッパー38が固定されている。このストッパー38と対向する位置で昇降シリンダ10のシリンダ部10Bの前端の上部にはブロック体39が固設され、このブロック体39に対して前後向き姿勢で形成されたネジ孔に対し当接ボルト40が、そのボルト頭40Aを前方に突出する姿勢で螺合しており、ブロック体39より後方に突出する当接ボルト40のネジ部分にロックナット41が螺合している。
【0031】
このように昇降シリンダ10のピストンロッド10Aの先端をブラケット32の係合凹部32Aに係入させているので、昇降シリンダ10の伸縮作動により主軸芯Xを中心にして主フレーム27を揺動させ、図1に仮想線で示す如く刈取部Bの昇降が実現する。
【0032】
このコンバインでは、クローラ走行装置1の後端側が圃場に沈み込んだ場合のように走行機体Aの前部が持ち上がった姿勢においても収穫作業が行えるように、クローラ走行装置1の接地位置を結ぶ仮想ラインより低いレベルまで刈取部Bの前端部を下降できるように構成されている。しかしながら、刈取部Bを下降させ過ぎた場合には走行機体Aの姿勢が変化した際に分草具21が圃場面に接触して破損することもあり、ストッパー38と当接ボルト40との位置関係の調節により刈取部Bの下降限界を任意に行えるように構成されている。
【0033】
つまり、当接ボルト40の回転により突出量を任意に設定し、ロックナット41をブロック体39の後面に圧接させることで、この当接ボルト40のボルト頭40Aがストッパー38に当接する際の刈取部Bのレベルを刈取部Bの下降限界として任意に設定でき、この下降限界レベルを超えて刈取部Bが下降する作動が阻止されるのである。
【0034】
また、このコンバインでは昇降シリンダ10を大きく伸長させて刈取部Bを高いレベルまで上昇させた状態を維持するために保持フレーム37を使用できるように構成されている。つまり、昇降シリンダ10の伸長作動により刈取部Bを上昇させてエンジン2を停止せる場合には、支持ピン33と固定ピン36とを抜き取り、図8に示す如く、駆動ピン35を中心にしてアーム体34を昇降シリンダ10の上方を覆う位置まで揺動させ、保持フレーム37の突出部37Aの端縁が昇降シリンダ10のシリンダ部10Bの前端部に当接する位置に配置し、この状態で保持フレーム37の連結孔37Bに対して支持ピン33や固定ピン36等を挿通する操作が行われる。
【0035】
このような操作が行われることにより保持フレーム37がピストンロッド10Aの上面側で、この保持フレーム37の突出部37Aの端縁が昇降シリンダ10のシリンダ部10Bの前端部に当接可能な位置に配置され、この配置状態で保持フレーム37の連結孔37Bに挿通した支持ピン33等がピストンロッド10Aの下側に配置されるため、この位置に保持フレーム37の上下方向への変位が阻止される。この状態において、例えば、昇降シリンダ10の油路系からオイルがリークしても、ピストンロッド10Aの収縮を保持フレーム37とアーム体34とが阻止することになり刈取部Bの下降が阻止される。
【0036】
〔刈取クラッチ〕
図4に示すように、伝動ケース3の側面に走行速度に同期した回転力を取り出す出力プーリ43が備えられ、この出力プーリ43と、前述した入力プーリ42とに亘って無端ベルト44が巻回されている。この無端ベルト44に張力を作用させる伝動位置と、張力を解除する動力遮断位置とに切換自在なテンションプーリ45がテンションアーム46(断続操作部材の一例)の揺動端に回転自在に支承されている。
【0037】
テンションアーム46は、刈取部支持台25に対し横向き姿勢のアーム軸47により揺動自在に支持され、このテンションアーム46の操作部46Aと刈取クラッチレバー16とが操作ワイヤ50で連動連係されている。この入力プーリ42と出力プーリ43と無端ベルト44とテンションアーム46に支持されたテンションプーリ45とで前述した刈取クラッチ6が構成されている。
【0038】
刈取クラッチレバー16は、ガイドプレート19から上方に突出する状態で横向き姿勢の軸芯周りに揺動自在に支持され、入り位置「入」に操作することで刈取クラッチ6を入り状態に設定し、切り位置「切」に操作することで刈取クラッチ6を切り状態に設定するように操作ワイヤ50を介して連動連係している(この構成の詳細は後述する)。また、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に操作した場合には、この操作と連係して脱穀クラッチレバー17を入り位置に操作するように機械的な連係機構を備えており、この連係機構は、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」から切り位置「切」に戻した場合にも脱穀クラッチレバー17は入り位置に保持されるように構成されている。
【0039】
このコンバインでは、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に操作した状態で、刈取部Bを設定レベルを超える高さまで上昇させた場合には、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に維持したまま刈取クラッチ6を切り操作し、この後に刈取部Bを設定レベル未満のレベルまで下降させた場合に刈取クラッチ6を入り状態に復帰させる連動操作機構Gを備えている。この連動操作機構Gはオートクラッチとも称せられるものであり、この連動操作機構Gの詳細を以下に説明する。
【0040】
〔連動操作機構〕
横向き姿勢の作動軸51に刈取クラッチレバー16の基端が連結し、この作動軸51と一体的に揺動する作動アーム52の揺動端に円弧状の作動リンク53の一端が揺動自在に連結している。操作ワイヤ50は、インナーワイヤ50Aとアウターワイヤ50Bとで構成され、インナーワイヤ50Aの一方の端部(図面では上端)が作動リンク53の他端に連結し、このインナーワイヤ50Aの他方の端部(図面では下端)がテンションアーム46(断続操作部材の一例)の操作部46Aに連結している。また、操作ワイヤ50のアウターワイヤ50Bのうち刈取クラッチレバー側の端部(以下、固定端部50Bfと称する)が機体フレームAFに支持され、このアウターワイヤ50Bのうち刈取クラッチ側の端部(以下、可動端部50Bmと称する)が中間部材55に支持されている。
【0041】
中間部材55は、固定端部50Bfより下側に配置され、機体フレームAFに対して横向き姿勢の軸体56を介して揺動自在に支持され、揺動により図5に示すように可動端部50Bmをテンションアーム46の操作部46Aに近接させる近接姿勢と、図4に示すように操作部46Aから離間させる離間姿勢とに切換自在に構成されている。この中間部材55は、コイルバネ57により可動端部50Bmをテンションアーム46の操作部46Aから離間させる離間姿勢に向けて付勢され、また、この中間部材55にはアーム部55Aが一体的に形成されている。
【0042】
また、中間部材55が図4に示す離間姿勢にある状態では、アウターワイヤ50Bの固定端部50Bfと可動端部50Bmとの間の領域のアウターワイヤ50Bと、その内部のインナーワイヤ50Aとを緊張させるため刈取クラッチレバー16の入り位置「入」への操作に伴い刈取クラッチ6の入り操作を実現し、刈取クラッチレバー16の切り位置「切」への操作により同図に仮想線に示す如く、刈取クラッチ6の切り操作を実現する。
【0043】
特に、中間部材55が図5に示す近接姿勢にある状態では、アウターワイヤ50Bの固定端部50Bfと可動端部50Bmとの間の領域のアウターワイヤ50Bと、その内部のインナーワイヤ50Aとを弛緩させるため、刈取クラッチレバー16が入り位置「入」に操作されても(既に入り位置「入」にあっても)、刈取クラッチ6が切り状態となる。
【0044】
刈取部Bの連結フレーム30は、中間部が上方に持ち上がる逆U字状に成形されると共に、前端が引起装置22の後面に連結し、後端が支持フレーム26に連結し、刈取部Bの昇降に伴い上下に揺動する。この連結フレーム30の後部の後面側にガイド機構59が備えられ、このガイド機構59と、中間部材55のアーム部55Aとの間に棒状の作動部材60が介装されている。
【0045】
本発明の連動操作機構Gは、中間部材55に基端部が連結する作動部材60と、連結フレーム30(刈取部B)に備えられるガイド機構59とを備えて構成されている。
【0046】
ガイド機構59は、連結フレーム30の後面に沿う姿勢(前側ほど上方に向かう傾斜姿勢)のガイド部59Aと、このガイド部59Aの両側部に配置される案内壁59Bと、ガイド部59Aの上端において後方に突出する規制部材59Cとが一体的に形成された構造を有している。
【0047】
図4〜図6に示すように、作動部材60は、棒状の作動ロッド61と、この先端のネジ部61Aに螺合する軸受ブロック62と、この軸受ブロック62を固定するためにネジ部61Aに螺合する固定ナット63と、軸受ブロック62に対して支軸64により回転自在に支持されたローラ65とを備えると共に、作動ロッド61の基端部に連結する連結プレート66を備えている。この連結プレート66が横向き姿勢の連結ピン68によりアーム部55Aに揺動自在に連結され、ローラ65がガイド機構59のガイド部59Aに接触する位置に配置されている。
【0048】
このような構成のため、図4に示すように刈取部Bが設定レベル未満にある状態で刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に操作した場合には、この操作に伴いテンションアーム46が伝動位置に操作されるため、テンションプーリ45を無端ベルト44に圧接させ刈取クラッチ6の入り操作が実現する。また、刈取クラッチ6が入り状態にある状況で刈取部Bの上昇を開始した場合には、刈取部Bが設定レベルに達する直前にガイド機構59の規制部材59Cに対して作動部材60のローラ65が当接し、この作動部材60の長手方向に作用する押圧力により、作動部材60が自身の長手方向に変位し、コイルバネ57の付勢力に抗して中間部材55を反時計方向に揺動させる。そして、上昇により刈取部Bが設定レベルに達すると、中間部材55が接近姿勢に達するため、テンションアーム46が動力遮断位置まで操作され、刈取クラッチ6が切り操作される。
【0049】
特に、刈取部Bの上昇に伴い中間部材55が離間姿勢から近接姿勢に揺動することにより、アウターワイヤ50Bの固定端部50Bfと可動端部50Bmとの間の領域のアウターワイヤ50Bと、その内部のインナーワイヤ50Aとを弛緩させる状態に達する。この弛緩によりインナーワイヤ50Aからテンションアーム46に作用する張力を低減して、テンションアーム46の動力遮断位置への変位を許容するため、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に維持したまま、刈取クラッチ6の切り操作が実現するのである。
【0050】
この後、刈取部Bが設定レベルより低い位置まで下降した際には、コイルバネ57の付勢力により中間部材55が逆方向に揺動して離間姿勢に達するため刈取クラッチ6が入り状態に復帰する。
【0051】
この連動操作機構Gでは、作動ロッド61のネジ部61Aに螺合する軸受ブロック62を回転させることにより、この作動ロッド61に対するローラ65の突出量を調節することが可能である。従って、ローラ65の突出量を調節し固定ナット63で固定することにより、刈取クラッチ6を切り操作する刈取部Bの設定レベルを人為的に調節することも可能である。また、作動部材60の基端部が連結ピン68を介して中間部材55のアーム部55Aに揺動自在に連結し、ローラ65がガイド機構59の内部に挿入する構成であるので、作動部材60の先端側を人為的に持ち上げ、ローラ65をガイド機構59から離間させる非作用状態に保持することも可能である。このように非作用状態に保持した場合には、刈取部Bが設定レベルを超えて上昇した場合にも刈取クラッチ6を入り状態に保持できる。
【0052】
つまり、圃場面が軟質でクローラ走行装置1が大きく沈み込む作業環境では、収穫作業を行う場合に刈取部Bを通常の作業レベルより高いレベル(対機体レベル)に維持することになる。このような状況では通常の作業時に刈取部Bが設定レベルを超えるレベルに達することもあり、このような状況で刈取クラッチ6を入り状態に維持するため、前述したように連動操作機構Gの作動部材60を非作用位置に設定できるように構成されているのである。
【0053】
〔実施形態の作用・効果〕
このように、刈取部Bが設定レベルを超えて上昇した場合には連動操作機構Gが刈取クラッチ6を入り状態から、強制的に切り状態に操作することにより、例えば、走行機体Aを枕地で旋回させる場合にも刈取部Bを無駄に駆動することがない。連動操作機構Gが刈取部Bの連結フレーム30に固設されたガイド機構59と、このガイド機構59の規制部材59Cに当接して押し操作される作動部材60を備えて構成されているので、刈取クラッチ6を切り操作するための構成が単純となり、組み立てに高い精度が要求されず少ない部品点数で組み立てやすく構成された。
【0054】
また、支持フレーム26に連結する連結フレーム30に対してガイド機構59が備えられているので、このガイド機構59と中間部材55との間に備えられる作動部材60の全長を短くでき、この作動部材60の作動ロッド61に対するローラ65の突出量をネジ式に調節して刈取クラッチ6を切り操作する設定レベルの調節を任意に行える。更に、作動部材60として作動ロッド61の端部にローラ65を備え、このローラ65をガイド機構59から離間する姿勢に切換可能に構成されているため、刈取部Bが設定レベルを超えて上昇する場合にも刈取クラッチ6を入り状態に維持して収穫作業を継続して行える。
【0055】
更に、刈取部Bの下降限界をストッパー38と当接ボルト40とで設定できるので、刈取部Bを過剰に下降させた場合のように、分草具21を圃場面に接触させて破損させる不都合を抑制し、刈取部Bを高レベルまで上昇させた状態には保持フレーム37を利用して昇降シリンダ10の収縮を機械的に阻止することにより、長期間に亘って刈取部Bを上昇させる状態を維持できる。
【0056】
〔別実施形態〕
本発明は、上記した実施形態以外に以下のように構成しても良い(この別実施形態では先に説明した実施形態と同じ機能を有するものに実施形態と共通の番号、符号を付している)。
【0057】
(a)図12に示すように、刈取クラッチ6のテンションアーム46に対してクラッチ入り方向に付勢力を作用させるクラッチバネ81を備えると共に、刈取クラッチレバー16の操作に伴い刈取クラッチ6を操作する操作ワイヤ50と、軸体56によって揺動自在に支持される中間部材55とを備えている。この別実施形態(a)でも連動操作機構Gが、中間部材55に基端部が連結する作動部材60と、連結フレーム30(刈取部B)に備えられるガイド機構59とを備えて構成され、操作ワイヤ50も実施形態と同様に構成されている。
【0058】
この別実施形態(a)では前述した実施形態と同様に、アウターワイヤ50Bの固定端部50Bfが機体フレームAFに支持され、可動端部50Bmが中間部材55に支持されているが、この中間部材55に付勢力を作用させるコイルバネ57の付勢方向が、操作ワイヤを弛緩させる方向に作用するように設定され、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に操作した場合にインナーワイヤ50Aを弛緩させ、刈取クラッチレバー16を切り位置「切」に操作した場合にインナーワイヤ50Aを緊張させるように構成され、また、刈取部Bが設定レベルを超えて上昇した場合に作動部材60によって中間部材55を揺動させる方向が実施形態と逆方向に設定されている。
【0059】
このような構成から、刈取部Bが設定レベル未満にある状態で刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に操作した場合には、インナーワイヤ50Aが弛緩するためクラッチバネ81の付勢力によって刈取クラッチ6が入り状態となる。また、刈取クラッチレバー16を切り位置「切」に設定した場合に操作ワイヤ50のインナーワイヤ50Aを引き操作することでクラッチバネ81の付勢力に抗して刈取クラッチ6を切り操作する。
【0060】
そして、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に設定した状態で刈取部Bが設定レベルを超えて上昇した場合には、作動部材60からの押し操作力により中間部材55が揺動し、この揺動によりアウターワイヤ50Bの固定端部50Bfと可動端部50Bmとの間の領域のアウターワイヤ50Bと、その内部のインナーワイヤ50Aとを緊張させるため、刈取クラッチレバー16を入り位置「入」に維持したまま刈取クラッチ6の切り操作が実現する。
【0061】
(b)中間部材55を、ガイドレールに沿ってスライド移動自在に支持することや、リンク機構を介して移動自在に支持しても良い。このような構成のものであっても実施形態のように揺動自在に支持したものと同様に操作ワイヤ50のアウターワイヤ50Bの端部を移動させて刈取クラッチ6の断続操作を行える。
【0062】
(c)刈取クラッチ6を、複数の摩擦板を圧接させることにより駆動力の伝動を行い、摩擦板に作用する圧力を解除することで動力の遮断を行う摩擦多板式に構成する等、無端ベルト44に作用する張力の切換で動力の断続を行う構成以外のクラッチにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、走行機体に昇降自在に刈取部を備え、この刈取部の駆動と停止とを行う刈取クラッチを備えたコンバインとして普通型のコンバインにも利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
6 刈取クラッチ
16 刈取クラッチレバー
46 断続操作部材(テンションアーム)
50 操作ワイヤ
50A インナーワイヤ
50B アウターワイヤ
50Bm 端部(可動端部)
55 中間部材
59 ガイド機構
59C 規制部材
60 作動部材
65 ローラ
AF 機体フレーム
B 刈取部
G 連動操作機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈取部に伝えられる動力の断続を行う刈取クラッチを備え、この刈取クラッチを人為的に操作する刈取クラッチレバーを備え、前記刈取部の上昇に連動して、入り状態にある前記刈取クラッチの切り操作を行う連動操作機構を備えているコンバインであって、
前記刈取クラッチレバーの操作力を前記刈取クラッチに伝える操作ワイヤがインナーワイヤと、アウターワイヤとを備えて構成され、前記インナーワイヤの一方の端部を前記刈取クラッチレバーに連結し、他方の端部を前記刈取クラッチの断続操作部材に連結し、前記アウターワイヤの前記刈取クラッチレバー側の端部を機体フレームに支持し、前記刈取クラッチ側の端部を中間部材に支持し、
前記中間部材が、前記アウターワイヤの端部を前記断続操作部材に近接させる近接姿勢と、前記断続操作部材から離間する離間姿勢とに変位自在に前記機体フレームに支持されると共に、この変位に伴う前記アウターワイヤの移動により前記刈取クラッチの入り切り操作を行わせるように構成され、
前記連動操作機構が、前記中間部材に基端側が連係する棒状の作動部材と、前記刈取部に支持した規制部材とを備えて構成され、この連動操作機構は、前記刈取部が設定レベルを超えて上昇した場合に前記作動部材の先端部に前記規制部材が当接することで前記作動部材の長手方向に作用する押圧力によって前記中間部材を変位させて前記刈取クラッチを切り操作するように構成されているコンバイン。
【請求項2】
前記作動部材の先端部に回転自在なローラを備えており、前記刈取部には、前記設定レベル未満での昇降時に前記ローラに接触する状態で前記ローラの移動を許すガイド機構を備えており、このガイド機構の端部に前記規制部材を備えている請求項1記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−231711(P2012−231711A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−101470(P2011−101470)
【出願日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】