説明

コンバイン

【課題】穀粒のロス量が増加する原因を精度よく特定することが可能なコンバインを提供する。
【解決手段】刈り取った穀稈を後方へ搬送しながら扱胴42により脱穀するコンバイン1であって、扱胴42の下側外周面に沿って配置される受網45と、受網45の下方に配置される揺動選別装置50と、受網45の終端部から漏下する穀粒の量を検出する第一ロスセンサ202と、揺動選別装置50の後部から落下する穀粒の量を検出する第二ロスセンサ203と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粒のロス量を検出するコンバインの技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、穀粒のロス量を検出するコンバインの技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
従来のコンバインは、揺動選別装置の後部にロスセンサを設け、当該ロスセンサのみによって穀粒のロス量を検出していた。
【0004】
一般に、穀粒のロス量が増加する原因としては、(i)扱胴による脱穀が円滑に行われず、受網の後端部から漏下する穀粒の量が多い場合や、(ii)揺動選別装置のチャフシーブのフィン開度が小さすぎるために、フィン間から穀粒が円滑に落下しない場合が挙げられる。
しかし、上記ロスセンサによっては、穀粒のロス量が増加する原因が、上記(i)によるものなのか、上記(ii)によるものなのかを特定することが困難であり、穀粒のロス量が増加する原因を精度よく特定することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−187642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、穀粒のロス量が増加する原因を精度よく特定することが可能なコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、
刈り取った穀稈を後方へ搬送しながら扱胴により脱穀するコンバインであって、
前記扱胴の下側外周面に沿って配置される受網と、
前記受網の下方に配置される揺動選別装置と、
前記受網の終端部から漏下する穀粒の量を検出する第一ロスセンサと、
前記揺動選別装置の後部から落下する穀粒の量を検出する第二ロスセンサと、
を具備する。
【0009】
請求項2においては、
前記第一ロスセンサの検出値を表示する第一表示部と、
前記第二ロスセンサの検出値を表示する第二表示部と、
を具備し、
前記第一表示部及び第二表示部は、操縦席に着座した作業者が、前記第一表示部及び第二表示部の表示内容を視認可能な位置に配置される。
【0010】
請求項3においては、
前記扱胴を収納する扱室には、前記扱室の後部へ送出される穀粒の量を調整可能な送塵弁が設けられ、
前記揺動選別装置は、フィン開度を変更可能なチャフシーブを有し、
前記送塵弁及びチャフシーブは、制御装置に接続されており、
前記制御装置は、
前記第一ロスセンサの検出値が所定の第一閾値以上になった場合に、車速を下げ、及び/又は前記送塵弁により穀粒の送出量を減少させ、
前記第二ロスセンサの検出値が所定の第二閾値以上になった場合に、前記チャフシーブのフィン開度を増加させる。
【0011】
請求項4においては、
前記制御装置が、前記第一ロスセンサの検出値が前記第一閾値以上になったと判断して、車速を下げ、及び/又は前記送塵弁により穀粒の送出量を減少させる制御を行っているか否かを表示する第三表示部と、
前記制御装置が、前記第二ロスセンサの検出値が前記第二閾値以上になったと判断して、前記チャフシーブのフィン開度を増加させる制御を行っているか否かを表示する第四表示部と、
を具備し、
前記第三表示部及び第四表示部は、操縦席に着座した作業者が、前記第三表示部及び第四表示部の表示内容を視認可能な位置に配置される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0013】
請求項1においては、第二ロスセンサの検出値が大きい場合で、さらに第一ロスセンサの検出値も大きいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、受網の後端部から漏下する穀粒の量が多いことによるものであるとともに、チャフシーブのフィン開度が小さすぎることによるものであると判断することが可能である。これに対し、第二ロスセンサの検出値が大きい場合で、第一ロスセンサの検出値が小さいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、チャフシーブのフィン開度が小さすぎることによるものであり、受網の後端部から漏下する穀粒の量によるものではないと判断することが可能である。また、第二ロスセンサの検出値が小さい場合でも、第一ロスセンサの検出値が大きいときには、扱胴による穀稈の脱穀が円滑に行われておらず、今後穀粒のロス量が増加する可能性があると判断することが可能である。従って、第一ロスセンサと第二ロスセンサとによって、穀粒のロス量が増加する原因を精度よく特定することが可能となり、そのロスへの対応が容易に図れる。
【0014】
請求項2においては、第一表示部と第二表示部によって、作業者が穀粒のロス状況を常に把握した状態で作業を行うことが可能となる。
【0015】
請求項3においては、制御装置により第一ロスセンサ及び第二ロスセンサの検出値に応じた制御が行われることによって、穀粒のロス量の増加を的確に抑制することが可能となる。
【0016】
請求項4においては、第三表示部と第四表示部によって、作業者が制御装置による制御が行われているか否かを常に把握した状態で作業を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態に係るコンバインの全体的な構成を示す側面図。
【図2】同じく、脱穀部及び選別部を示す側面断面図。
【図3】同じく、扱胴及び処理胴をより詳細に示す側面断面図。
【図4】同じく、送塵弁を上方から見た図。
【図5】同じく、動力の伝達経路を示すスケルトン図。
【図6】同じく、制御に関する構成を示すブロック図。
【図7】同じく、図2におけるX−X断面図。
【図8】同じく、制御態様を示すフローチャート。
【図9】(a)作業時における表示装置の表示内容を示す図。(b)非作業時における表示装置の表示内容を示す図。
【図10】(a)日付別で収穫情報を比較可能な表示装置を示す図。(b)圃場別で収穫情報を比較可能な表示装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図中の矢印F方向を前方向、矢印R方向を右方向と定義して説明を行う。
【0019】
以下では、本発明に係るコンバインの第一実施形態であるコンバイン1の全体構成について図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、コンバイン1は、走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部7、排藁処理部8及び操縦部9を備える。コンバイン1は、動力をエンジン11から走行部2、刈取部3、脱穀部4、選別部5、穀粒貯溜部7及び排藁処理部8にトランスミッションを含む動力伝達系を介して伝達し、これらの各部を駆動させる。
【0021】
走行部2は、機体の下部に設けられる。走行部2は、左右一対のクローラを有するクローラ式走行装置21を有する。走行部2は、機体をクローラ式走行装置21により走行させる。
【0022】
刈取部3は、機体の前部に昇降可能に設けられる。刈取部3は、分草具31、引起装置32、搬送装置33及び切断装置34を有する。刈取部3は、圃場の穀稈を分草具31により分草し、分草後の穀稈を引起装置32により引き起こし、引起後の穀稈を搬送装置33により後方へ搬送しつつ切断装置34により切断し、切断後の穀稈を搬送装置33により脱穀部4に向けてさらに後方へ搬送する。
【0023】
脱穀部4は、機体の左上側に配置される。脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42を有する(図2参照)。脱穀部4は、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈をフィードチェン41により受け継いで後方へ搬送し、その搬送中の穀稈を扱胴42により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5に向けて下方へ漏下させる。
【0024】
選別部5は、機体の左下側に配置される。選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を有する(図2参照)。選別部5は、脱穀部4から落下してきた処理物を揺動選別装置50により揺動選別し、揺動選別後のものを風選別装置により風選別し、風選別後のもののうち、穀粒を穀粒搬送装置により穀粒貯溜部7に向けて右側方へ搬送し、藁屑や塵埃などを風選別装置により後方へ飛ばして機体の外部へ排出する。
【0025】
穀粒貯溜部7は、機体の右後側に配置される。穀粒貯溜部7は、グレンタンク71及び穀粒排出装置72を有する。穀粒貯溜部7は、選別部5から搬送されてきた穀粒をグレンタンク71により貯溜し、その貯溜している穀粒を穀粒排出装置72によりグレンタンク71から機体の外部へ排出する。
【0026】
排藁処理部8は、機体の後側に配置される。排藁処理部8は、排藁搬送装置81及び排藁切断装置82を有する。排藁処理部8は、脱穀部4から搬送されてきた脱穀済みの排稈を排藁として排藁搬送装置81により後方へ搬送して機体の外部へ排出し、又は排藁切断装置82へ搬送し、排藁を排藁切断装置82へ搬送した場合には排藁切断装置82により切断した後に機体の外部へ排出する。
【0027】
操縦部9は、機体の右前側に配置される。操縦部9は、操縦席91や、ステアリングハンドル92、キャビン93、操作パネルなどを有して、操縦席91やステアリングハンドル92、操作パネルなどをキャビン93により覆い、操縦席91に操縦者を着座させ、ステアリングハンドル92や操作パネルに配置された操作レバーや操作スイッチ類により操縦者が各部の装置を操作することができるように構成される。
【0028】
こうして、コンバイン1は、操縦部9における操作具類の操作に応じて、動力をエンジン11から操縦部9を除く前記各部に伝達し、機体を走行部2により走行させながら、圃場の穀稈を刈取部3により刈り取って、刈取後の穀稈を脱穀部4により脱穀し、脱穀後の処理物を選別部5により選別して、選別後の穀粒を穀粒貯溜部7に貯溜する一方、脱穀後の排藁を排藁処理部8により任意に処理して機体の外部へ排出することができるようになっている。
【0029】
次に、図2〜図4を用いて、脱穀部4及び選別部5の構成について説明する。
【0030】
脱穀部4は、フィードチェン41、扱胴42及び受網45を備えるとともに、処理胴43、処理胴網47、リターンコンベア48及び受樋49を備える。
【0031】
扱胴42は、前端部を面取りした円筒状に形成される。扱胴42は、その軸心方向(長手方向)を前後方向として扱室44に収納されて、扱室44の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に取り付けられる。扱胴42は、エンジン11からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。扱胴42の外周面には複数の扱歯42aが螺旋状に取り付けられている。受網45は、扱胴42下側外周面に沿って配置されており、扱室44に配置される。
【0032】
図2及び図4に示すように、扱室44の上壁には、複数(本実施形態では四つ)の送塵弁44aが前後方向に所定間隔を空けて並設されている。扱室44の上壁には、四つの送塵弁軸44bが前後方向に所定間隔を空けて並設されている。各送塵弁軸44bは扱胴42の径方向、かつ、扱室44の内側に突出している。各送塵弁軸44bには各送塵弁44aの中央部がそれぞれ回転自在に取り付けられている。各送塵弁44aの一側部は、前後方向に延びる杆体44cに枢軸44dを介して回転自在に連結されている。最後部の送塵弁44aには、伝動杆44eが固定されている。詳細には、伝動杆44eの一端が、最後部の送塵弁44aの中央部に固定され、伝動杆44eと送塵弁44aとの固定箇所には最後部の送塵弁軸44bが挿通されている。伝動杆44eには、アクチュエータ44f(モータ等)が接続されている。伝動杆44eは、アクチュエータ44fの駆動力により最後部の送塵弁軸44bを中心に回動可能に構成される。
【0033】
図4中の実線矢印に示すように、アクチュエータ44fの駆動力により伝動杆44eが一方向に回動する場合、最後部の送塵弁44aが一方向に回動し、これに伴って杆体44cが前方に移動するとともに、残りの各送塵弁44aが一方向に回動する。扱胴42による脱穀時において、各送塵弁44aが一方向に回動されたとき、扱胴42の外周面に沿って、後方へ向かって螺旋状に送出される穀粒や藁屑等が、各送塵弁44aに案内されて前方へ流され、つまり、戻されるようになり、これにより、扱室44の後部へ送出される穀粒や藁屑等の量が減少する。
これに対し、図4中の二点鎖線矢印に示すように、アクチュエータ44fの駆動力により伝動杆44eが他方向に回動する場合、最後部の送塵弁44aが他方向に回動し、これに伴って杆体44cが後方に移動するとともに、残りの各送塵弁44aが他方向に回動する。扱胴42による脱穀時において、各送塵弁44aが他方向に回動されたとき、扱胴42の外周面に沿って、後方へ向かって螺旋状に送出される穀粒や藁屑等が、各送塵弁44aに案内されて後方へ流され、これにより、扱室44の後部へ送出される穀粒の量が増加する。
従って、脱穀時における、扱室44の後部へ送出される穀粒の量に関しては、各送塵弁44aが一方向に回動されるのに伴って減少していき、他方向に回動されるのに伴って増加していく。
【0034】
処理胴43は、円筒状に形成される。処理胴43は、その軸心方向を前後方向として処理室46に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設された回転支軸に支持される。処理胴43は、エンジン11からの動力が当該回転支軸に伝達されることによって、この回転支軸と一体的にその前後方向の軸心回りに回転する。処理胴網47は、処理胴43をその外周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。処理室46は、扱室44の右後方に位置し、扱室44と送塵口40を介して連通する。
【0035】
リターンコンベア48は、円筒状の部材の外周にらせん状の羽根を設けて構成される。リターンコンベア48は、その軸心方向を前後方向として処理室46における処理胴網47の下方に配置されて、処理室46の前壁と後壁との間に回転自在に架設される。リターンコンベア48は、エンジン11からの動力が伝達されることによって、その軸心回りに回転する。受樋49は、リターンコンベア48をその外周面に沿って下方から覆うように、処理室46に配置される。
【0036】
フィードチェン41は、扱胴42の左側方で刈取部3と排藁処理部8との間にわたって配置されて、複数のスプロケットに巻き掛けられる。フィードチェン41は、エンジン11からの動力が前記スプロケットに伝達されることによって、前後方向に回転する。前記複数のスプロケットは、扱胴42の左側方で前後方向に延設された支持フレームに支持される。
【0037】
上述の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、扱胴42に加えて処理胴43を具備する、いわゆる複胴形のコンバインである。
【0038】
図2及び図3に示すように、選別部5は、揺動選別装置50、風選別装置及び穀粒搬送装置を備える。
【0039】
揺動選別装置50は、揺動選別装置本体、前フィードパン51、後フィードパン52、チャフシーブ53、グレンシーブ54及びストローラック55を有する。
【0040】
揺動選別装置本体は、選別部5の平面視で矩形枠状に形成される。揺動選別装置本体は、その長手方向を前後方向として脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網47の下方に配置されて、下部機枠12に揺動可能かつ着脱可能に支持される。揺動選別装置本体は、揺動機構の揺動軸にエンジン11からの動力が伝達されることによって、下部機枠12に対して揺動する。
【0041】
フィードパンは、前フィードパン51及び後フィードパン52から構成される。前フィードパン51は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。後フィードパン52は、脱穀部4の扱胴42及び受網45の下方で前フィードパン51の後下方に配置されて、揺動選別装置本体の前部に支持される。
【0042】
チャフシーブ53は、脱穀部4の扱胴42及び受網45並びに処理胴43及び処理胴網47の下方で前フィードパン51の後方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。チャフシーブ53は、前後方向に所定間隔を空けて並列する複数のフィン53aを有している。各フィン53aは、前低後高状に傾斜しており、その上下中央部を中心にして回動可能に支持されている。各フィン53aは、揺動に伴って処理物を後方へ移送しつつ、隣り合うフィン53a間の隙間から穀粒を漏下させる。各フィン53aは、アクチュエータ(モータ等)53bに接続されており、アクチュエータ53bの駆動力により回動可能に構成されている。各フィン53aが回動されることによって、各フィン53aの傾斜角度が変更され、これにより隣り合うフィン53a間の隙間寸法(フィン開度)が変更される。
グレンシーブ54は、チャフシーブ53の下方に配置されて、揺動選別装置本体の前後中途部に支持される。ストローラック55は、チャフシーブ53の後方でグレンシーブ54の後上方に配置されて、揺動選別装置本体の後部に支持される。揺動選別装置50(ストローラック55)の後方、には、機体外部に連なる排出口50aが配置される。
【0043】
風選別装置は、唐箕ファン56、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59を備える。
【0044】
唐箕ファン56は、前フィードパン51の後部及び後フィードパン52の下方に配置されて、下部機枠12の前部に左右方向に横設される。プレファン57は、前フィードパン51の前部の下方で唐箕ファン56の前上方に配置されて、下部機枠12の前端部付近に左右方向に横設される。セカンドファン58は、チャフシーブ53の後端部の下方で後述の穀粒搬送装置の一番搬送装置61と二番搬送装置62との間に配置されて、下部機枠12の前後中途部に左右方向に横設される。
【0045】
吸引ファン59は、機体後部に配置されており、ストローラック55の上方に配置されて、下部機枠12の後端部の上方で左右方向に横設される。吸引ファン59は、上下方向に所定間隔を空けて配置される上部吸引カバー59aと下部吸引カバー59bとの間に設けられている。上部吸引カバー59a及び下部吸引カバー59bの後端部は、吸引ファン59の後方に存在しており、機体外部に連なる排気口59cを構成している。排気口59cは、排出口50aの上方に配置されており、下部吸引カバー59bにより排出口50aと仕切られている。
唐箕ファン56、プレファン57、セカンドファン58及び吸引ファン59は、エンジン11からの動力がそれぞれの回転軸に伝達されることによって、回転して選別風を発生させる。前記選別風は、機体内部において後上方に流れ、そして吸引ファン59に吸引された後に排気口59cから機体外部に排出され、又は排出口50aから機体外部に排出される。
【0046】
穀粒搬送装置は、一番搬送装置61、二番搬送装置62、一番揚穀装置63、二番還元装置64を備える。
【0047】
一番搬送装置61は、唐箕ファン56の後方であってチャフシーブ53及びグレンシーブ54の下方に配置され、下部機枠12の前後中途部に左右方向に横設される。二番搬送装置62は、一番搬送装置61及びセカンドファン58の後方でストローラック55の下方に配置されて、下部機枠12の後部に左右方向に横設される。
【0048】
一番揚穀装置63は、一番搬送装置61の右側方に配置されて、下部機枠12の右外側で上下方向に立設される。一番揚穀装置63は、その下端部で一番搬送装置61の右端部と接続されるとともに、その上端部で穀粒貯溜部7のグレンタンク71と接続される。
【0049】
二番還元装置64は、二番搬送装置62の右側方に配置されて、下部機枠12の右外側で前後方向に斜設される。二番還元装置64は、その後下端部で二番搬送装置62の右端部と接続されるとともに、その前上端部で脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方の空間と接続される。
【0050】
このような構成において、脱穀及び選別作業が行われる際、脱穀部4では、刈取部3から搬送されてきた刈取後の穀稈が、その株元でフィードチェン41により受け継がれ、排藁処理部8に向かって後方へ搬送される。この搬送中に、穀稈の穂先部が扱胴42により脱穀され、その穀粒や藁屑や塵埃を含む処理物が選別部5へ落下する過程で受網45により選別される。扱胴42により脱穀されなかった藁くず等の未処理物は、扱室44から送塵口40を介して処理室46に搬送されたあと、処理胴43により処理され、その処理物が選別部5へ落下する過程で処理胴網47により選別される。処理胴網47から受樋49へと落下した処理物は、リターンコンベア48により前方に搬送され、当該リターンコンベア48の前端に設けられた排気口から選別部5に投入される。
【0051】
選別部5では、揺動選別装置本体が揺動機構により揺動されている状態で、脱穀部4の受網45から落下した処理物の層が前後フィードパン51・52により均平化されて、処理物が比重選別される。前フィードパン51による選別後のものが、チャフシーブ53により粗選別される。後フィードパン52による選別後のものが、グレンシーブ54により選別される。また、脱穀部4の受網45、処理胴網47及びリターンコンベア48の排気口から落下した処理物が、チャフシーブ53により粗選別される。チャフシーブ53による選別後のものが、グレンシーブ54と唐箕ファン56、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風とにより精選別される。
【0052】
チャフシーブ53及びグレンシーブ54から落下する穀粒や藁屑などが、唐箕ファン56及びプレファン57からの選別風により精選別される。このとき、比重が大きく重い穀粒は、一番物として選別風に逆らって落下し、一番搬送装置61に収容される。これよりも比重が小さく軽いものは、唐箕ファン56及びプレファン57からの選別風により、さらにはセカンドファン58からの選別風により二番搬送装置62の上方へ向けて飛ばされる。
【0053】
この飛ばされたものの中でも比較的重いもの、例えば枝梗付穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置62に収容される。これを除いたものは、唐箕ファン56、プレファン57及びセカンドファン58からの選別風によりストローラック55へ向けてさらに飛ばされる。そのうちの藁屑は、ストローラック55によりほぐされる。この藁屑の中にある穀粒は、二番物として落下し、二番搬送装置62に収容される。他の塵埃は、前記選別風により排出口50aから機体外部に排出される。
【0054】
一番物は、一番搬送装置61により一番揚穀装置63に搬送され、つづいて一番揚穀装置63により穀粒貯溜部7のグレンタンク71に搬送されて、グレンタンク71に貯溜される。二番物は、二番搬送装置62により二番還元装置64に搬送され、つづいて二番還元装置64により脱穀部4の扱室44又は揺動選別装置50の上方空間へ搬送されて、脱穀されて、又は脱穀されずに、揺動選別装置50及び風選別装置により再選別される。
【0055】
次に、図5及び図6を用いて、コンバイン1におけるエンジン11から走行部2(クローラ式走行装置21)まで(走行系)の動力の伝達経路について説明する。
【0056】
図5に示すように、コンバイン1の走行系の動力の伝達経路には、走行用の油圧式無段変速装置(以下、走行用HSTという。)110、操向用の油圧式無段変速装置(以下、操向用HSTという。)120、伝動機構140が備えられる。
【0057】
走行用HST110には、可変容量型の走行ポンプ110P、固定容量型の走行モータ110Mが備えられる。走行ポンプ110Pと走行モータ110Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、走行ポンプ110Pと走行モータ110Mとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
【0058】
走行ポンプ110Pには、走行ポンプ軸111、プランジャ、シリンダ、走行ポンプ容量調整手段113が備えられる。走行ポンプ軸111はエンジン11の出力軸と連動連結され、シリンダは走行ポンプ軸111に相対回転不能に支持される。シリンダに複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。走行ポンプ容量調整手段113は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによりプランジャの往復摺動するストロークが変更され、走行ポンプ110Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
【0059】
走行モータ110Mには、プランジャ、シリンダ、走行モータ軸115、固定斜板が備えられる。シリンダは走行モータ軸115に相対回転不能に支持される。固定斜板は走行モータ本体114に固定され、走行ポンプ110Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダ及び走行モータ軸115を回転させる。
【0060】
走行用HST110は変速操作装置によって走行ポンプ容量調整手段113が操作可能とされる。図5又は図6に示すように、変速操作装置には、人為操作可能な主変速操作具としての主変速レバー94、第一操作位置検出センサ94a、走行ポンプ110P用の作動装置である変速アクチュエータ116が備えられる。第一操作位置検出センサ94a、変速アクチュエータ116は、コンバイン1に備えられる後述の制御装置200と接続される。
【0061】
主変速レバー94は、操縦部9で操縦席91近傍に配置される。主変速レバー94は、中立位置から前進側又は後進側へと回動操作可能とされる。
【0062】
第一操作位置検出センサ94aは、主変速レバー94の回動基部に設けられ、主変速レバー94の回動角を主変速レバー94の操作位置として検出可能とされる。また、変速アクチュエータ116は、本実施の形態においては、油圧シリンダ、電磁弁、この電磁弁を作動させるソレノイド等から構成される。但し、変速アクチュエータ116は、特に限定するものではなく、電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能である。
【0063】
主変速レバー94が中立位置から前進側又は後進側へ回動操作されると、その操作位置が第一操作位置検出センサ94aにより検出され、変速アクチュエータ116のソレノイドが制御装置200により作動させられて、電磁弁が切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが第一操作位置検出センサ94aの検出値に応じた長さに伸縮され、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)113が中立位置から前進側又は後進側へ傾転されて、走行ポンプ110Pの容量が変更される。
【0064】
こうして、走行用HST110では、走行ポンプ110Pの駆動時に、走行ポンプ容量調整手段(可動斜板)113の傾転に応じて走行ポンプ110Pの容量が変更されることによって、走行ポンプ110Pから走行モータ110Mへ吐出される作動油の吐出量及び吐出方向が変更され、走行モータ軸115の回転方向が正又は逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
【0065】
図5に示すように、操向用HST120には、可変容量型の操向ポンプ120P、固定容量型の操向モータ120Mが備えられる。操向ポンプ120Pと操向モータ120Mとはそれぞれ油圧ポンプと油圧モータとで構成され、互いに流体接続される。なお、操向ポンプと操向モータとは少なくとも一方が可変容量型であればよい。
【0066】
操向ポンプ120Pには、操向ポンプ軸121、プランジャ、シリンダ、操向ポンプ容量調整手段123が備えられる。操向ポンプ軸121はエンジン11と連動連結され、シリンダは操向ポンプ軸121に相対回転不能に支持される。シリンダに複数のプランジャが往復摺動可能に収納される。操向ポンプ容量調整手段123は可動斜板と制御軸とを有し、制御軸にて可動斜板を傾転させることによりプランジャの往復摺動するストロークが変更され、操向ポンプ120Pからの吐出量を変更することができるように構成される。
【0067】
操向モータ120Mには、プランジャ、シリンダ、操向モータ軸125、固定斜板が備えられる。シリンダは、操向モータ軸125に相対回転不能に支持される。固定斜板は操向モータ本体124に固定され、操向ポンプ50Pから送油される圧油により、プランジャが押されてシリンダ及び操向モータ軸125を回転させる。
【0068】
操向用HST120は操向操作装置によって操向ポンプ容量調整手段123が操作可能とされる。図5又は図6に示すように、操向操作装置には、人為操作可能な操向操作手段としてのステアリングハンドル92と、操向位置検出センサ92a、操向ポンプ120P用の作動装置である操向アクチュエータ126が備えられる。操向位置検出センサ92a、操向アクチュエータ126は、制御装置200と接続される。
【0069】
ステアリングハンドル92は、操縦部9で操縦席91の前方に配置され、左右回りに回動操作可能とされる(図1)。操向位置検出センサ92aは、ステアリングハンドル92の回動基部に設けられ、ステアリングハンドル92の回動角をステアリングハンドル92の操作位置として検出可能とされる。また、操向アクチュエータ126は、本実施の形態においては、油圧シリンダ、電磁弁、この電磁弁を作動させるソレノイド等から構成される。但し、操向アクチュエータ126は、特に限定するものではなく、電動モータや電動シリンダ等で構成することも可能である。
【0070】
ステアリングハンドル92を回動操作されると、その操作位置が操向位置検出センサ92aにより検出され、操向アクチュエータ126のソレノイドが制御装置200により操向位置検出センサ92aの検出値に基づいて作動させられて、電磁弁が切り換えられる。この電磁弁の切り換えによって、油圧シリンダが操向位置検出センサ92aの検出値に応じた長さに伸縮され、操向ポンプ容量調整手段(可動斜板)123が傾転されて、操向ポンプ120Pの容量が変更される。
【0071】
こうして、操向用HST120では、操向ポンプ120Pの駆動時に、操向ポンプ容量調整手段(可動斜板)123の傾転に応じて操向ポンプ120Pの容量が変更されることによって、操向ポンプ120Pから操向モータ120Mへ吐出される作動油の吐出量及び吐出方向が変更され、操向ポンプ軸121の回転方向が正又は逆方向に変更されるとともに、回転数が無段階に変更される。
【0072】
図5に示すように、伝動機構140には、一対の遊星ギヤ機構、即ち第一遊星ギヤ機構150a及び第二遊星ギヤ機構150b、走行用出力伝動機構160、操向用出力伝動機構170が備えられる。
【0073】
第一遊星ギヤ機構150aには、サンギヤ151、インターナルギヤ154、複数の遊星ギヤ152・152・・・・・・、キャリア153が備えられる。サンギヤ151は回転軸156に固定され、インターナルギヤ154はサンギヤ151を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ152はインターナルギヤ154の内歯とサンギヤ151の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア153に回転自在に軸支される。そして、キャリア153が第一出力軸130aと固定される。
【0074】
同様に、第二遊星ギヤ機構150bには、サンギヤ151、インターナルギヤ154、複数の遊星ギヤ152・152・・・・・・、キャリア153が備えられる。サンギヤ151は回転軸156に固定され、インターナルギヤ154はサンギヤ151を同心状に囲繞するように配置される。各遊星ギヤ152はインターナルギヤ154の内歯とサンギヤ151の外歯とに噛合するように両ギヤ間に介装され、キャリア153に回転自在に軸支される。そして、キャリア153が第二出力軸130bと固定される。
【0075】
走行用出力伝動機構160には、出力軸161、分岐軸165、第一走行用出力ギヤ列166a、第二走行用出力ギヤ列166b、歯車噛合式の副変速機構167、駐車用ブレーキ装置162が備えられる。出力軸161は走行用HST110における走行モータ110Mの走行モータ軸115と連動連結され、分岐軸165は出力軸161に副変速機構167を介して連動連結される。
【0076】
副変速機構167は走行用の走行モータ軸115の回転動力を出力軸161と分岐軸165との間で多段変速させることができるように構成される。なお、本実施形態においては、副変速機構を、作業用の低速段と走行用の高速段とに変速可能となるように構成しているが、三段以上に変速可能となるように構成してもよい。
【0077】
副変速機構167には、高速駆動ギヤ167a及び低速駆動ギヤ167bと、高速従動ギヤ167c及び低速従動ギヤ167dと、走行系シフタ167eと、伝動軸167fとが備られる。高速駆動ギヤ167a及び低速駆動ギヤ167bは、それぞれ出力軸161に相対回転不能に支持される。高速駆動ギヤ167aと高速従動ギヤ167cとが噛合され、低速駆動ギヤ167bと低速従動ギヤ167dとが噛合される。高速従動ギヤ167cと低速従動ギヤ167dとが走行系シフタ167eを介して伝動軸167fに選択的に係合可能とされている。
【0078】
副変速機構167は、副変速操作装置によって操作可能とされる。副変速操作装置には、図6に示すように、人為操作可能な副変速操作具としての副変速レバー95と、第二操作位置検出センサ95aとが備えられる。第二操作位置検出センサ95aは制御装置200と接続される。
【0079】
副変速レバー95は、操縦部9で操縦席91近傍に配置され、低速位置又は高速位置へ前後に回動操作可能とされる。第二操作位置検出センサ95aは、副変速レバー95の回動基部に設けられ、副変速レバー95の操作位置を検出可能とされる。
【0080】
副変速レバー95が低速位置に回動操作されると、その回動角が副変速レバー95の操作位置として第二操作位置検出センサ95aにより検出される。この変速操作によって、走行系シフタ167eが低速従動ギヤ167d側へ移動され、低速従動ギヤ167dが伝動軸167fに当該走行系シフタ167eを介して係合される。その結果、低速側に変速された回転動力が、出力軸161から伝動軸167fを介して分岐軸165へ伝達される。
【0081】
一方、副変速レバー95が高速位置に回動操作されているときには、その操作位置が第二操作位置検出センサ95aにより検出され、この変速操作により、走行系シフタ167eが高速従動ギヤ167c側へ移動され、高速従動ギヤ167cが伝動軸167fに当該走行系シフタ167eを介して係合される。その結果、高速側に変速された回転動力が、出力軸161から伝動軸167fを介して分岐軸165へ伝達される。
【0082】
なお、走行モータ110Mの走行モータ軸115にはPTOプーリ118が固定され、このPTOプーリ118から走行モータ110Mの回転動力が刈取部3の伝動機構に伝達可能とされる。
【0083】
第一走行用出力ギヤ列166aは分岐軸165の回転動力を第一遊星ギヤ機構150aのインターナルギヤ154に伝達し、第二走行用出力ギヤ列166bは分岐軸165の回転動力を第二遊星ギヤ機構150bのインターナルギヤ154に伝達することができるように構成される。第一走行用出力ギヤ列166aと第二走行用出力ギヤ列166bの各伝動方向及び伝動比は、互いに同一に設定される。
【0084】
駐車用ブレーキ装置162は、ブレーキ軸163、ブレーキユニット164を有し、ブレーキ軸163により出力軸161から回転動力を受けて分岐軸165へ出力し、ブレーキユニット164によりブレーキ軸163に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。
【0085】
操向用出力伝動機構170には、出力軸171、共通軸172、第一操向用出力ギヤ列173a、第二操向用出力ギヤ列173b、クラッチ装置175、操向用ブレーキ装置174が設けられる。
【0086】
出力軸171は操向用HST120における操向モータ120Mの操向モータ軸125と連動連結され、共通軸172は出力軸171にクラッチ装置175を介して連動連結される。クラッチ装置175は出力軸171から共通軸172への回転動力を伝動又は遮断することができるように構成される。
【0087】
第一操向用出力ギヤ列173aは共通軸172の回転動力を回転軸等を介して第一遊星ギヤ機構150aのサンギヤ151に伝達し、第二操向用出力ギヤ列173bは共通軸172の回転動力を回転軸156等を介して第二遊星ギヤ機構150bのサンギヤ151に伝達するものとされる。第一操向用出力ギヤ列173aと第二操向用出力ギヤ列173bの伝動比は同一に設定され、伝動方向は互いに反対方向に設定される。
【0088】
操向用ブレーキ装置174は出力軸171に対して選択的に制動力を付加することができるように構成される。
【0089】
このような構成において、ステアリングハンドル92が回動操作されずに操向用HST120の操向モータ120Mが停止し、主変速レバー94が中立位置から回動操作されて走行用HST110の走行モータ110Mが駆動する場合、走行モータ110Mの回転動力が、走行モータ軸115から、走行用出力伝動機構160の出力軸161、分岐軸165、第一及び第二走行用出力ギヤ列166a・166b、第一及び第二遊星ギヤ機構150a・150bのインターナルギヤ154、遊星ギヤ152、キャリア153の順に各部材に伝達され、ついで第一及び第二出力軸130a・130bに伝達される。
【0090】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸130aと第二出力軸130bとが同一回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置21に備えられた駆動輪が同一回転方向に同一回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動し、機体が直進走行することとなる。
【0091】
主変速レバー94が中立位置に回動操作されて走行用HST110の走行モータ110Mが停止し、ステアリングハンドル92が回動操作されて操向用HST120の操向モータ120Mが駆動する場合、操向モータ120Mの回転動力が、操向モータ軸125から、操向用出力伝動機構170の出力軸171、共通軸172、第一及び第二操向用出力ギヤ列173a・173b、第一及び第二遊星ギヤ機構150a・150bのサンギヤ151、遊星ギヤ152、キャリア153の順に各部材に伝達され、ついで第一及び第二出力軸130a・130bに伝達される。
【0092】
この回転動力の伝達によって、第一出力軸130aと第二出力軸130bとが互いに反対方向に回転され、ひいては左右一方のクローラ式走行装置21の駆動輪が正又は逆方向へ回転され、左右他方のクローラ式走行装置21の駆動輪が逆又は正方向へ回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が駆動され、その場で機体のスピンターン旋回が行われる。これにより、例えば圃場や枕地での方向転換が可能とされる。
【0093】
主変速レバー94が中立位置から回動操作されて走行用HST110における走行モータ110Mが駆動するとともに、ステアリングハンドル92が回動操作されて操向用HST120の操向モータ120Mが駆動する場合、走行モータ110Mから走行用出力伝動機構160を介して伝達される回転動力と、操向モータ120Mから走行用出力伝動機構160を介して伝達される回転動力とが、第一及び第二遊星ギヤ機構150a・150bでそれぞれ合成された後、第一及び第二出力軸130a・130bに伝達される。
【0094】
この回転動力の伝達によって、第一及び第二出力軸130a・130bが互いに異なる回転数で回転され、ひいては左右の各クローラ式走行装置21の駆動輪が互いに異なる回転数で回転される。その結果、左右のクローラ式走行装置21が速度差をもって駆動され、機体の走行と左又は右方向への旋回とが同時に行われる。旋回方向及び旋回半径は左右のクローラ式走行装置21の速度差に応じて決定される。
【0095】
そして、これらの場合、走行方向は、主変速レバー94が前進側へ回動操作されている場合には前進となり、主変速レバー94が後進側へ回動操作されている場合には後進となる。また、機体の走行速度は、主変速レバー94及び副変速レバー95の操作位置に応じて変更されることとなる。
【0096】
以下では、図2、図3、図6及び図7を用いて、コンバイン1の制御に関する構成について説明する。
【0097】
図6に示すように、コンバイン1は制御装置200を具備する。また、制御装置200には、送塵弁44a、チャフシーブ53、第一操作位置検出センサ94a、第二操作位置検出センサ95a、操向位置検出センサ92a、第一閾値調節ダイヤル96の操作位置を検出する第一ダイヤル位置検出センサ96a、第二閾値調節ダイヤル97の操作位置を検出する第二ダイヤル位置検出センサ97a、走行速度検出センサ201、第一ロスセンサ202、第二ロスセンサ203、変速アクチュエータ116及び操向アクチュエータ126が接続される。
なお、第一操作位置検出センサ94a、第二操作位置検出センサ95a、操向位置検出センサ92a、変速アクチュエータ116及び操向アクチュエータ126については前述したため、以下では説明を省略する。
【0098】
制御装置200は、コンバイン1の任意の位置に設けられる。制御装置200は、中央処理装置、記憶装置等により構成される。
【0099】
制御装置200は、アクチュエータ44fを介して各送塵弁44aに接続されており、アクチュエータ44fを駆動することにより各送塵弁44aを回動可能に構成される。
【0100】
制御装置200は、アクチュエータ53bを介してチャフシーブ53(各フィン53a)に接続されており、アクチュエータ53bを駆動することにより、各フィン53aを回動して、隣り合うフィン53a間の隙間寸法(フィン開度)を変更可能に構成される。
【0101】
第一閾値調節ダイヤル96は、第一ロスセンサ202の検出値の閾値(第一閾値)を設定するための操作具であり、操縦部9の操縦席91近傍に配置される。第一閾値調節ダイヤル96は、所定の角度範囲内で回動操作可能とされる。
【0102】
第一ダイヤル位置検出センサ96aは、第一閾値調節ダイヤル96の回動基部に設けられ、第一閾値調節ダイヤル96の回動角を第一閾値調節ダイヤル96の操作位置として検出可能とされる。第一閾値調節ダイヤル96により設定される第一閾値は、第一ダイヤル位置検出センサ96aが検出する第一閾値調節ダイヤル96の回動角に対応した値となる。
【0103】
第二閾値調節ダイヤル97は、第二ロスセンサ203の検出値の閾値(第二閾値)を設定するための操作具であり、操縦部9の操縦席91近傍に配置される。第二閾値調節ダイヤル97は、所定の角度範囲内で回動操作可能とされる。
【0104】
第二ダイヤル位置検出センサ97aは、第二閾値調節ダイヤル97の回動基部に設けられ、第二閾値調節ダイヤル97の回動角を第二閾値調節ダイヤル97の操作位置として検出可能とされる。第二閾値調節ダイヤル97により設定される第二閾値は、第二ダイヤル位置検出センサ97aが検出する第二閾値調節ダイヤル97の回動角に対応した値となる。
【0105】
走行速度検出センサ201は、コンバイン1の走行速度を検出するものである。走行速度検出センサ201は、コンバイン1の走行系の動力の伝達経路における適宜の軸やギヤの回転速度を走行速度として検出することができるように構成される。
【0106】
第一ロスセンサ202は、受網45の終端部から漏下する穀粒の量を検出するものである。図2、図3及び図7に示すように、第一ロスセンサ202は、平板状の感圧センサにより構成される。第一ロスセンサ202は、扱室44の側壁に固定される。より詳細には、第一ロスセンサ202は、前後方向において受網45の終端部近傍(送塵口40のすぐ前方)に配置される(図2及び図3参照)。また、第一ロスセンサ202は、上下(高さ)方向において受網45の下端部と同じ高さに位置するように、扱室44の右側壁に固定される(図7参照)。当該第一ロスセンサ202は、検出面を左方(受網45の方向)に向けた状態で配置される。このように、第一ロスセンサ202を扱室44の側壁に固定することで、当該第一ロスセンサ202の検出面に処理物等が堆積するのを防止し、検出精度の低下を防止することができる。脱穀作業が行われる場合、扱胴42は正面視(図7参照)において時計回りに回転し、当該扱胴42の下側と受網45との間で搬送中の穀稈の穂先部が脱穀される。扱胴42から落下する穀粒は、受網45に到達して、そして受網45から漏下する。このとき、受網45の終端部から漏下する穀粒は、扱胴42の回転により受網45の右方へと飛ばされて第一ロスセンサ202に接触する。これにより、第一ロスセンサ202は、受網45の終端部から漏下する穀粒の量を検出することができる。
【0107】
第二ロスセンサ203は、揺動選別装置50の後部(ストローラック55)から落下する穀粒の量、すなわち穀粒のロス量を検出するものである。図2及び図3に示すように、第二ロスセンサ203は、例えば感圧センサにより構成される。第二ロスセンサ203は、揺動選別装置50の後部(ストローラック55下方)に配置されており、ストローラック55から落下する穀粒が接触可能な位置に配置されている。コンバイン1においては、作業(刈取作業、脱穀作業、及び選別作業)が行われる場合、藁屑に混じった穀粒や、枝梗に付着したままの穀粒が、揺動選別装置50の揺動や前記風選別装置の選別風により後方へ送られ、ストローラック55によりほぐされて落下することがある。このとき、落下する穀粒は、第二ロスセンサ203に接触する。これにより、第二ロスセンサ203は、揺動選別装置50の後部(ストローラック55)から落下する穀粒の量(ロス量)を検出することができる。揺動選別装置50の後部から落下した穀粒は、二番還元装置64により脱穀部4の扱室44へ搬送され、そして再度、扱室44内を送出され、又は、二番還元装置64により揺動選別装置50の上方空間へ搬送され、そして再度、揺動選別装置50及び風選別装置により選別される。
なお、揺動選別装置50の後部(ストローラック55)から落下する穀粒の量(ロス量)は、扱胴42による穀稈の脱穀が円滑に行われず、受網45の終端部から漏下する穀粒の量が増大する場合や、揺動選別装置50のチャフシーブ53のフィン開度が小さすぎるために、フィン間から穀粒が円滑に落下しない場合は、増大する傾向にある。
【0108】
なお、第一ロスセンサ202・第二ロスセンサ203に換えて、発光素子及び受光素子を有する光センサを用い、発光素子及び受光素子の間を通過する穀粒の量を検出するように構成してもよい。また、第一ロスセンサ202・第二ロスセンサ203に換えて、発信器及び受信機を有する超音波センサを用い、発信器及び受信機の間を通過する穀粒の量を検出するように構成してもよい。
【0109】
以下では、図8を用いて、コンバイン1による作業(刈取作業、脱穀作業、及び選別作業)中における制御装置200の制御の態様について説明する。
なお、本実施形態では、作業者は、第一閾値調節ダイヤル96により第一閾値をQtに設定し、第二閾値調節ダイヤル97により第二閾値をRtに設定していることとする。第一閾値Qt・第二閾値Rtの大きさは、作業条件等に応じて作業者が適宜決定する。
【0110】
図8のステップS101において、制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満であるか否かを判定する。
検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満である場合、制御装置200はステップS101の処理を再度行い、それ以外の場合はステップS102に移行する。
【0111】
ステップS102において、制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt以上であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満であるか否かを判定する。
検出値Qdが第一閾値Qt以上であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt未満である場合、制御装置200はステップS103に移行し、それ以外の場合はステップS104に移行する。
【0112】
ステップS103において、制御装置200は、コンバイン1の車速Vを下げ、及び/又は、各送塵弁44aにより穀粒の送出量を減少させる。
制御装置200による車速Vを減少させる制御は、車速Vを、第一ロスセンサ202の検出値Qdが第一閾値Qtとなったときの車速V1以下に制限することによって行われる。すなわち、検出値Qdが第一閾値Qtに達した場合、作業者が主変速レバー94を増速側へ回動操作しても、制御装置200はコンバイン1の車速VがV1以上に増加しないように制御する。これにより、刈取部3による穀稈の刈り取り量が減少し、扱胴42による穀稈の脱穀が円滑に行われるようになるので、第一ロスセンサ202の検出値Qdが減少する。制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満になるまで、車速Vの制御を継続する。
制御装置200による各送塵弁44aの制御は、各送塵弁44aをアクチュエータ44fにより一方向に回動して、各送塵弁44aの位相を、第一ロスセンサ202の検出値Qdが第一閾値Qtとなったときの位相よりも、前記一方向側にずらすことによって行われる。これにより、扱胴42による脱穀時において、扱胴42の外周面に沿って、後方へ向かって螺旋状に送出される穀粒が、各送塵弁44aに当接して前方へ案内されて、扱室44の後部へ送出される穀粒の量が減少するので、第一ロスセンサ202の検出値Qdが減少する。制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満になるまで、各送塵弁44aの制御を継続する。
【0113】
ステップS104において、制御装置200は、検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt以上であるか否かを判定する。
検出値Qdが第一閾値Qt未満であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt以上である場合、制御装置200はステップS105に移行し、それ以外の場合はステップS106に移行する。
【0114】
ステップS105において、制御装置200は、隣り合うフィン53a間の隙間寸法、すなわちチャフシーブ53のフィン開度を増加させる。
制御装置200によるフィン開度の制御は、各フィン53aをアクチュエータ53bにより回動して、各フィン53aの傾斜角度を、第二ロスセンサ203の検出値Rdが第二閾値Rtとなったときの角度よりも、増大させることによって行われる。これにより、各フィン53a間から穀粒が落下しやすくなり、各フィン53a間から穀粒が円滑に落下するので、第二ロスセンサ203の検出値Rdが減少する。制御装置200は、検出値Rdが第二閾値Rt未満になるまで、フィン開度の制御を継続する。
【0115】
ステップS106において、すなわち、検出値Qdが第一閾値Qt以上であり、かつ、検出値Rdが第二閾値Rt以上である場合においては、制御装置200は、上記S103に記載した、車速Vの制御、及び/又は各送塵弁44aの制御を行い、さらに、上記S105に記載した、フィン開度の制御を行う。
【0116】
以上にように構成することで、上記S106に示すように、第二ロスセンサ203の検出値が大きい場合、すなわち穀粒のロス量が多い場合で、さらに第一ロスセンサ202の検出値も大きいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、受網45の後端部から漏下する穀粒の量が多いことによるものであるとともに、チャフシーブ53のフィン開度が小さすぎることによるものであると判断することが可能である。これに対し、上記S105に示すように、第二ロスセンサ203の検出値が大きい場合で、第一ロスセンサ202の検出値が小さいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、チャフシーブ53のフィン開度が小さすぎることによるものであり、受網45の後端部から漏下する穀粒の量によるものではないと判断することが可能である。また、上記S103に示すように、第二ロスセンサ203の検出値が小さい場合でも、第一ロスセンサ202の検出値が大きいときには、扱胴42による穀稈の脱穀が円滑に行われておらず、今後第二ロスセンサ203の検出値(穀粒のロス量)が増加する可能性があると判断することが可能である。従って、第一ロスセンサ202と第二ロスセンサ203とにより、穀粒のロス量が増加する原因を精度よく特定することが可能となり、そのロスへの対応が容易に図れる。
【0117】
また、制御装置200により第一ロスセンサ202及び第二ロスセンサ203の検出値に応じた制御が行われることによって、穀粒のロス量の増加を的確に抑制することが可能となる。
【0118】
図9(a)及び図9(b)に示すように、コンバイン1は、表示装置300を具備する。表示装置300は、例えば液晶ディスプレイで構成されており、制御装置200に接続されている。表示装置300は、作業時(脱穀クラッチON時)と、非作業時(脱穀クラッチOFF時)とで表示内容を変更するように構成されている。
【0119】
図9(a)に示すように、作業時においては、表示装置300は、第一ロスセンサ202の検出値を表示する第一表示部301と、第二ロスセンサ203の検出値を表示する第二表示部302と、制御装置200が、第一ロスセンサ202の検出値が前記第一閾値以上になったと判断して、上記S103及びS106に記載した、車速を下げ、及び/又は各送塵弁44aにより穀粒の送出量を減少させる制御を行っているか否かを表示する第三表示部303と、制御装置200が、第二ロスセンサ203の検出値が前記第二閾値以上になったと判断して、上記S105及びS106に記載した、チャフシーブ53のフィン開度を増加させる制御を行っているか否かを表示する第四表示部304と、コンバイン1の車速を表示する第五表示部305と、単位時間当たりの穀物の収穫量を表示する第六表示部306と、収穫した穀物の水分を表示する第七表示部307と、単位面積(一反)当たりの穀物の収穫量を表示する第八表示部308と、グレンタンク71に貯溜される穀粒の量を表示する第九表示部309と、エンジン負荷率を表示する第十表示部310と、燃料の残量を表示する第十一表示部311と、を有する。
第三表示部303は、制御装置200が、第一ロスセンサ202の検出値が前記第一閾値以上になったと判断して、上記S103及びS106に記載した、車速を下げ、及び/又は各送塵弁44aにより穀粒の送出量を減少させる制御を行っているときは点滅した状態になり、制御装置200が当該制御を行っていないときは点灯又は消灯した状態になる。
第四表示部304は、制御装置200が、第二ロスセンサ203の検出値が前記第二閾値以上になったと判断して、上記S105及びS106に記載した、チャフシーブ53のフィン開度を増加させる制御を行っているときは点滅した状態になり、制御装置200が当該制御を行っていないときは点灯又は消灯した状態になる。
【0120】
図9(b)に示すように、非作業時においては、表示装置300は、本日(現在の日付)の穀物の収穫量を表示する第十二表示部312と、本日の平均反収(単位面積(一反)当たりの穀物の収穫量)を表示する第十三表示部313と、本日の収穫した穀物の平均水分量を表示する第十四表示部314と、コンバイン1の車速を表示する第五表示部305と、グレンタンク71に貯溜される穀粒の量を表示する第九表示部309と、エンジン負荷率を表示する第十表示部310と、を有する。
また、表示装置300(表示部301〜314)は、操縦席91に着座した作業者が、各表示部301〜314の表示内容を視認可能な位置に配置されており、例えば操縦席91の前部に設けられたダッシュボード上に配置される。
【0121】
上記した第一表示部301と第二表示部302によって、作業者が穀粒のロス状況を常に把握した状態で作業を行うことが可能となる。
また、第三表示部303と第四表示部304によって、作業者が制御装置200による制御が行われているか否かを常に把握した状態で作業を行うことが可能となる。
【0122】
また、コンバイン1は、記憶装置(不図示)と、前記記憶装置に記憶されている情報を表示する表示装置320と、を具備する。
前記記憶装置には、複数の圃場(圃場A〜C)における、現在から過去までの収穫情報が、圃場毎・日付毎に記憶されている。前記収穫情報は、穀物の収穫量、平均反収(単位面積(一反)当たりの穀物の収穫量)、及び収穫した穀物の平均水分量で構成される。
図10(a)に示すように、表示装置320は、本日(現在の日付)における前記収穫情報(穀物の収穫量、平均反収、及び収穫した穀物の平均水分量)を表示する表示部321と、過去(例えば、一年前の同日)における前記収穫情報を表示する表示部322と、で構成される。また、表示部321及び表示部322は、同一の圃場(圃場A)における前記収穫情報を表示する。
これにより、作業者は、前記収穫情報を日付毎に比較することが可能となる。また、表示装置320に収穫量と平均反収が表示されるように構成することで、一般に、作業者は、一反当たりの収穫量を意識して作業を行っていると考えられるので、作業者が圃場の状態や収穫状況を容易に把握することが可能となる。また、表示装置320に、穀物の平均水分量が表示されるので、作業者は、この表示された平均水分量を籾の乾燥時間の目安として用いることが可能となる。
【0123】
また、コンバイン1は、前記記憶装置と、前記記憶装置に記憶されている情報を表示する表示装置330と、を具備する。
図10(b)に示すように、表示装置330は、圃場Aにおける前記収穫情報(穀物の収穫量、平均反収、及び収穫した穀物の平均水分量)を表示する表示部331と、圃場Aとは異なる圃場Bにおける前記収穫情報を表示する表示部332と、圃場A及び圃場Bとは異なる圃場Cにおける前記収穫情報を表示する表示部333と、を有する。また、表示部331、表示部332及び表示部333は、本日(現在の日付)における前記収穫情報を表示する。
これにより、作業者は、前記収穫情報を圃場毎に比較することが可能となる。例えば、圃場毎に品種や育て方を変えた際の比較に有用である。また、表示装置330に収穫量と平均反収が表示されるように構成することで、一般に、作業者は、一反当たりの収穫量を意識して作業を行っていると考えられるので、作業者が圃場の状態や収穫状況を容易に把握することが可能となる。また、表示装置320に、穀物の平均水分量が表示されるので、作業者は、この表示された平均水分量を籾の乾燥時間の目安として用いることが可能となる。
【0124】
以上の如く、本実施形態に係るコンバイン1は、
刈り取った穀稈を後方へ搬送しながら扱胴42により脱穀するコンバインであって、
扱胴42の下側外周面に沿って配置される受網45と、
受網45の下方に配置される揺動選別装置50と、
受網45の終端部から漏下する穀粒の量を検出する第一ロスセンサ202と、
揺動選別装置50の後部から落下する穀粒の量を検出する第二ロスセンサ203と、
を具備する。
【0125】
これにより、第二ロスセンサ203の検出値が大きい場合、すなわち穀粒のロス量が多い場合で、さらに第一ロスセンサ202の検出値も大きいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、受網45の後端部から漏下する穀粒の量が多いことによるものであるとともに、チャフシーブ53のフィン開度が小さすぎることによるものであると判断することが可能である。これに対し、第二ロスセンサ203の検出値が大きい場合で、第一ロスセンサ202の検出値が小さいときには、穀粒のロス量の増加の原因は、チャフシーブ53のフィン開度が小さすぎることによるものであり、受網45の後端部から漏下する穀粒の量によるものではないと判断することが可能である。また、第二ロスセンサ203の検出値が小さい場合でも、第一ロスセンサ202の検出値が大きいときには、扱胴42による穀稈の脱穀が円滑に行われておらず、今後第二ロスセンサ203の検出値(穀粒のロス量)が増加する可能性があると判断することが可能である。従って、第一ロスセンサ202と第二ロスセンサ203とによって、穀粒のロス量が増加する原因を精度よく特定することが可能となり、そのロスへの対応が容易に図れる。
【0126】
また、コンバイン1においては、
第一ロスセンサ202の検出値を表示する第一表示部301と、
第二ロスセンサ203の検出値を表示する第二表示部302と、
を具備し、
第一表示部301及び第二表示部302は、操縦席91に着座した作業者が、第一表示部301及び第二表示部302の表示内容を視認可能な位置に配置される。
【0127】
これにより、第一表示部301と第二表示部302によって、作業者が穀粒のロス状況を常に把握した状態で作業を行うことが可能となる。
【0128】
また、コンバイン1においては、
扱胴42を収納する扱室44には、扱室44の後部へ送出される穀粒の量を調整可能な送塵弁44aが設けられ、
前記揺動選別装置50は、フィン開度を変更可能なチャフシーブ53を有し、
送塵弁44a及びチャフシーブ53は、制御装置200に接続されており、
制御装置200は、
第一ロスセンサ202の検出値が所定の第一閾値以上になった場合に、車速を下げ、及び/又は送塵弁44aにより穀粒の送出量を減少させ、
第二ロスセンサ203の検出値が所定の第二閾値以上になった場合に、チャフシーブ53のフィン開度を増加させる。
【0129】
このように、制御装置200により第一ロスセンサ202及び第二ロスセンサ203の検出値に応じた制御が行われることによって、穀粒のロス量の増加を的確に抑制することが可能となる。
【0130】
また、コンバイン1においては、
制御装置200が、第一ロスセンサ202の検出値が前記第一閾値以上になったと判断して、車速を下げ、及び/又は送塵弁44aにより穀粒の送出量を減少させる制御を行っているか否かを表示する第三表示部303と、
制御装置200が、第二ロスセンサ203の検出値が前記第二閾値以上になったと判断して、チャフシーブ53のフィン開度を増加させる制御を行っているか否かを表示する第四表示部304と、
を具備し、
第三表示部303及び第四表示部304は、操縦席91に着座した作業者が、第三表示部303及び第四表示部304の表示内容を視認可能な位置に配置される。
【0131】
これにより、第三表示部303と第四表示部304によって、作業者が制御装置200による制御が行われているか否かを常に把握した状態で作業を行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0132】
1 コンバイン
4 脱穀部
5 選別部
40 送塵口
42 扱胴
43 処理胴
44 扱室
45 受網
46 処理室
50 揺動選別装置
50a 排出口
53 チャフシーブ
200 制御装置
202 第一ロスセンサ
203 第二ロスセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
刈り取った穀稈を後方へ搬送しながら扱胴により脱穀するコンバインであって、
前記扱胴の下側外周面に沿って配置される受網と、
前記受網の下方に配置される揺動選別装置と、
前記受網の終端部から漏下する穀粒の量を検出する第一ロスセンサと、
前記揺動選別装置の後部から落下する穀粒の量を検出する第二ロスセンサと、
を具備するコンバイン。
【請求項2】
前記第一ロスセンサの検出値を表示する第一表示部と、
前記第二ロスセンサの検出値を表示する第二表示部と、
を具備し、
前記第一表示部及び第二表示部は、操縦席に着座した作業者が、前記第一表示部及び第二表示部の表示内容を視認可能な位置に配置される、
請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記扱胴を収納する扱室には、前記扱室の後部へ送出される穀粒の量を調整可能な送塵弁が設けられ、
前記揺動選別装置は、フィン開度を変更可能なチャフシーブを有し、
前記送塵弁及びチャフシーブは、制御装置に接続されており、
前記制御装置は、
前記第一ロスセンサの検出値が所定の第一閾値以上になった場合に、車速を下げ、及び/又は前記送塵弁により穀粒の送出量を減少させ、
前記第二ロスセンサの検出値が所定の第二閾値以上になった場合に、前記チャフシーブのフィン開度を増加させる、
請求項1又は請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記制御装置が、前記第一ロスセンサの検出値が前記第一閾値以上になったと判断して、車速を下げ、及び/又は前記送塵弁により穀粒の送出量を減少させる制御を行っているか否かを表示する第三表示部と、
前記制御装置が、前記第二ロスセンサの検出値が前記第二閾値以上になったと判断して、前記チャフシーブのフィン開度を増加させる制御を行っているか否かを表示する第四表示部と、
を具備し、
前記第三表示部及び第四表示部は、操縦席に着座した作業者が、前記第三表示部及び第四表示部の表示内容を視認可能な位置に配置される、
請求項3に記載のコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−244942(P2012−244942A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−119391(P2011−119391)
【出願日】平成23年5月27日(2011.5.27)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】