説明

サルの新規薬物代謝酵素

【課題】サルの新規薬物代謝酵素を提供する。
【解決手段】特定の配列群から選択されるアミノ酸配列、または前記アミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、薬物代謝酵素であるサル由来のタンパク質、前記タンパク質をコードする遺伝子、前記遺伝子を含む組換えベクター、前記ベクターを含む形質転換体、前記タンパク質と被検物質とを接触させる工程を含む、前記被検物質の代謝に対する、前記タンパク質の関与の有無を測定する方法、および前記測定方法を含むサルをモデル動物として被検物質の薬効、代謝および/または安全性を予測する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サルの新規薬物代謝酵素に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物代謝には、チトクロムP450(CYP)と呼ばれるヘム酵素である薬物代酵素が深く関与していることがよく知られている。CYPは遺伝子ファミリーを形成しており、ヒトではこれまでに57種類のCYP機能遺伝子と58種類の偽遺伝子の存在が報告され、他の哺乳動物もそれぞれ数十種類のCYP遺伝子を有することが知られている。各CYPの構造は極めて類似しているが、基質や代謝活性がそれぞれ異なっている。
CYPは、アミノ酸配列の相同性に基づいて分類され、各CYPは、例えば「CYP1A1」というようにCYPに続けてファミリー名(数字)、サブファミリー名(アルファベット)、固有名(数字)を表記することによって特定される。
【0003】
新薬の開発過程において、ヒト臨床試験への外挿性を高めるために、薬物代謝パターンが、ヒトと非常に似ていると考えられているカニクイザルなどのサルをモデル動物として用いた薬物動態試験、薬効試験、安全性試験等の非臨床試験が広く行われている。
しかしながら、最近一部の薬物については、サルの代謝パターンがヒトの代謝パターンと異なる場合があるとの報告がなされている(非特許文献1〜4)。
【0004】
また、特許文献1には、CYPの分子種ごとに基質が異なるとともに、最近では、各CYPの遺伝子多型によって代謝活性や基質特異性が異なることが報告されている。そして、ヒトでは個人差をもとにしたオーダーメイド医療を目指して、CYPの分子種や多型と代謝活性に関する研究が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−4号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nartimatsu S. et al., Chem Biol Interact (2000) 127:73-90
【非特許文献2】Sharer JE. et al., Drug Metab Dispos (1995) 23:1231-1241
【非特許文献3】Stevens JC. et al., Drg Metab Dispos (1993) 21:753-760
【非特許文献4】Weaver RJ. et al., Xenobiotica (1999) 29:467-482
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
モデル動物を使用して代謝試験等を行う場合も、ヒトCYPとモデル動物CYPとの相違、モデル動物間の多型等を考慮することによって、試験結果の意味をより的確に評価し、有効に活用することができると考えられる。例えば、ヒトとカニクイザルとで代謝パターンが大きく異なり、カニクイザルにおいて大きな副作用を生じさせる医薬品候補化合物があった場合、代謝パターンの相違がヒトとカニクイザルのCYPの違いに起因することが判明し、ヒトにおいて同様の副作用が生じないことを確認することができれば、その化合物の開発を無駄に停止することなく、ヒト用の医薬品として開発を継続、促進できる可能性がある。しかしながら、カニクイザルやアカゲザルで種差の原因となるようなCYP分子種の探索は、あまり行われていないのが実状である。
そこで、本発明は、ヒトとサルとで、薬物の代謝パターンの異なる原因となる新規なサルの薬物代謝酵素を提供することを目的とする。
また、これらの点については、サルモデル間においてもCYPの違いに起因することが判明する場合もあり、サル間においても、薬物の代謝パターンの異なる原因となる新規なサルの薬物代謝酵素を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、サルとヒトとの薬物の代謝パターンの相違を明らかにすることを目的として、また、異種のサルの薬物の代謝パターンの相違を明らかにすることをも目的として、さらに、同種のサルの薬物の代謝パターンの相違を明らかにすることをも目的として、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特有に発現している新規な薬物代謝酵素を見出し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
以下の(a)または(b)のタンパク質。
(a)配列番号:1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、薬物代謝酵素であるタンパク質。
[2]
[1]に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
[3]
[2]に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
[4]
[3]に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
[5]
[1]に記載のタンパク質に対する抗体。
[6]
[1]に記載のタンパク質と被検物質とを接触させる工程を含む、
前記被検物質の代謝に対する、前記タンパク質の関与の有無を測定する方法。
[7]
サルをモデル動物として、被検物質の薬効、代謝および/または安全性を試験する工程、
[1]に記載のタンパク質と被検物質とを接触させて、前記タンパク質の関与の有無を測定する工程、
を含む、前記被検物質のサルまたはヒトにおける薬効、代謝および/または安全性を予測する方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、新規なサルの薬物代謝酵素を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】配列番号1で示されるアカゲザルのCYP2C93のアミノ酸配列を示す。
【図2】配列番号2で示されるカニクイザルのCYP2C93のアミノ酸配列を示す。
【図3】配列番号3で示されるアカゲザルのCYP1D1のアミノ酸配列を示す。
【図4】配列番号4で示されるカニクイザルのCYP1D1のアミノ酸配列を示す。
【図5】配列番号5で示されるカニクイザルのCYP2G2のアミノ酸配列を示す。
【図6】配列番号6で示されるアカゲザルのCYP2C93のcDNAの塩基配列を示す。
【図7】配列番号7で示されるカニクイザルのCYP2C93のcDNAの塩基配列を示す。
【図8】配列番号8で示されるアカゲザルのCYP1D1のcDNAの塩基配列を示す。
【図9】配列番号9で示されるカニクイザルのCYP1D1のcDNAの塩基配列を示す。
【図10】配列番号10で示されるカニクイザルのCYP2G2のcDNAの塩基配列を示す。
【図11】配列番号11で示されるカニクイザルのCYP2C93 SV1の塩基配列を示す。
【図12】配列番号12で示されるカニクイザルのCYP2C93 SV2の塩基配列を示す。
【図13】アカゲザルのmmCYP2C93とカニクイザルのmfCYP2C93のアミノ酸配列のcDNA塩基配列から推測されるアミノ酸配列のマルチプル・アライメントを示す。破線で示している領域は、CYPに共通に存在するヘム結合領域と推定される領域である。SRS−1〜SRS−6として示される領域は、基質認識部位を示す。アスタリスク(*)は、mmCYP2C93とmfCYP2C93とで、アミノ酸配列が共通している部分を示す。
【図14】ヒト(h)、ラット(r)、アカゲザル(mm)およびカニクイザル(mf)のCYP2Cアミノ酸配列と、カニクイザルmfCYP2C93およびアカゲザルmmCYP2C93のアミノ酸配列を使用して描いた分子進化系統樹を示す。CYP2C93は、いずれのヒトCYP2Cとも1対1の関係にはならず、CYP2C93がヒトには存在しない分子種である可能性が示唆された。
【図15】肝由来のRNAのRT−PCR産物の電気泳動の結果を示す。CYP2C93転写物として、SV1は通常の転写物を意味し、SV2は異常転写物を意味する。 アカゲザル(No.2,3,9)において、SV1とSV2の双方が転写されており、カニクイザルでは、SV2のみが転写されている。
【図16】肝由来のRNAのRT−PCR産物の電気泳動の結果を示す。CYP2C93転写物として、SV1は通常の転写物を意味し、SV2は異常転写物を意味する。 アカゲザルにおいてはSV1が転写されており、カニクイザルにおいては、SV1とSV2の双方が転写されていることが確認できる。ただし、ここで検出されるカニクイザルSV1は、エクソン1に1塩基欠損があるため、non−functionalな転写物である。
【図17】CYP2C遺伝子の遺伝子座を示す。CYP2C93遺伝子は、ゲノム上に遺伝子が存在し、CYP2C76と共にCYP2C遺伝子クラスターの末端の、ヒトゲノムにおいては、intergenic領域に該当する部分に位置していた。また、CYP2C93遺伝子に対応する、ヒトCYP遺伝子は存在していなかった。
【図18】CYP2C93のmRNA発現の組織分布を示す。CYP2C93のmRNAは、調べた10種類の組織の中では肝臓で最も高く発現していた。また、肝臓以外でも、脳と精巣でも発現していることが確認された。
【図19】ウェスタンブロットの結果を示す。
【図20】図20Aは、SV1(a)とSV2(b)のエクソン1〜エクソン3のCYP2C93遺伝子フラグメントを含むmini gene plasmidの模式図を示す。図20Bは、アガロースゲル上で可視化させた増幅産物を示す。図20Bにおいて、レーン1と2は、参照実験を示す。レーン1は、SV1を発現しているカニクイザルの肝臓RNAを用いたRT−PCRの結果を示し、レーン2は、SV1を発現しているアカゲザルの肝臓RNAを用いたRT−PCRの結果を示す。レーン3は、IVS2−1GのカニクイザルCYP2C93発現プラスミドをCOS1にトランスフェクションし抽出したRNAを用いて行ったRT−PCRの結果を示し、それぞれ、レーン4は、IVS2−1Tのカニクイザル、レーン5は、IVS2−1Gのアカゲザル、レーン6は、IVS2−1TのアカゲザルのCYP2C93発現プラスミドを用いた場合の結果を示す。レーン7は、コントロール・ベクター(ネガティブコントロール)の結果を示す。図20Cは、イントロン1とエクソン2の境界およびイントロン2とエクソン3の境界を示す。SV1とSV2におけるエクソン配列はboxで囲み、IVS−1G>Tの変異は下線で示した。
【図21】カニクイザル(mf)およびアカゲザル(mm)のCYP1D1と、ヒト(h)のCYP1D1Pのアミノ酸配列のマルチプル・アライメントを示す。破線で示している領域は、CYPに共通に存在するヘム結合領域と推定される領域である。SRS−1〜SRS−6として示される領域は、基質認識部位を示す。アスタリスク(*)は、mmCYP1D1とmfCYP1D1とhCYP1D1Pで、アミノ酸配列が共通している部分を示す。
【図22】ヒト(h)、ニホンザル(mfu)、マーモセット(cj)、イヌ(d)、ゼブラフィッシュ(z)、アカゲザル(mm)およびカニクイザル(mf)のCYP1ファミリーのアミノ酸配列を使用して作成した分子進化系統樹を示す。アカゲザルとカニクイザルのCYP1D1は、ヒトのCYP1D1Pと1対1の関係にあることが確認された。
【図23】CYP1D1遺伝子の遺伝子座を示す。CYP1D1遺伝子は、TMC1、ALDH1A1、およびANX1に隣接して位置しており、その位置はサルとヒトで保存されている。
【図24】カニクイザルCYP1D1のmRNA発現の組織分布を示す。CYP1D1のmRNAの発現量を1としたときの相対値で示す。
【図25】肝ミクロソームでのCYP1D1のウェスタンブロットの結果を示す。
【図26】カニクイザル(mf)、マウス(m)、ラット(r)およびウサギ(rab)のCYP2G2とヒト(h)のCYP2G2Pのアミノ酸配列のマルチプル・アライメントを示す。破線で示している領域は、CYPに共通に存在するヘム結合領域と推定される領域である。SRS−1〜SRS−6として示される領域は、基質認識部位を示す。アスタリスク(*)は、アミノ酸配列が共通している部分を示す。
【図27】ヒト(h)およびカニクイザル(mf)のCYP2ファミリーのアミノ酸配列を使用して作成した分子進化系統樹を示す。
【図28】カニクイザルとアカゲザルCYP2G2遺伝子のエクソン1およびエクソン3におけるシークエンスの結果を示す。ヒト遺伝子におけるナンセンス変異も示す。
【図29】CYP2G2のmRNA発現の組織分布を示す。CYP2G2のmRNAの鼻粘膜での発現量を1としたときの相対値で示す。
【図30】鼻粘膜ミクロソームでのCYP2G2のウェスタンブロットの結果を示す。
【図31】配列番号96で示されるカニクイザルのTを挿入したCYP2C93 SV2の塩基配列を示す。
【図32】配列番号97で示されるカニクイザルのT欠損のSV1とSV2のアミノ酸配列を示す。
【図33】配列番号98で示されるカニクイザルのTを挿入したCYP2C93のSV2のアミノ酸配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお。本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
本発明のタンパク質は、サル特異的に機能している薬物代謝酵素である。中でも、カニクイザル、アカゲザル、ニホンザル等のマカク属が属する旧世界ザルや、マーモセット等の新世界ザルに特異的な薬物代謝酵素である。
カニクイザル、アカゲザルから同定された新規CYPタンパク質のアミノ酸配列を配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5として示し、これらのアミノ酸配列を有するタンパク質は、カニクイザルまたはアカゲザルの肝臓または鼻粘膜のRNAを用いて逆転写PCR(RT−PCR)によりその存在が見出されたタンパク質である。
これら新規CYPタンパク質は、新規CYPタンパク質をコードする遺伝子を適当なベクターに挿入し、このベクターを用いて宿主を形質転換することによって発現させ、得ることができる。
【0014】
これら新規CYPタンパク質は、ヒトでは発現していないか、発現したとしても機能を持たないが、サルでは発現しているため、サルにおけるヒトとは異なる薬物の代謝パターンを確認する指標となる薬物代謝酵素である。例えば、サル特異的な薬物代謝酵素が、ある種の薬物に対する代謝活性を有する場合は、当該薬物に対する代謝パターンが、サルとヒトとにおいて異なる可能性が示唆され、サルでの特定的な薬物代謝を強く示唆することを意味する。このことは、サル間においても同様であり、特定のサルにおける特異的な薬物代謝を強く示唆することを意味する。
【0015】
本発明のタンパク質は、それが薬物代謝酵素であって、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなるタンパクと同一の機能を有する限り、配列番号1に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個)のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されている等の変異が生じていてもよい。またこれらの変異は、自然に発生したものであってもよく、人為的に改変したものであってもよい。
本発明のタンパク質は、それが薬物代謝酵素であって、配列番号2に記載のアミノ酸配列からなるタンパクと同一の機能を有する限り、配列番号2に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個)のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されている等の変異が生じていてもよい。またこれらの変異は、自然に発生したものであってもよく、人為的に改変したものであってもよい。
本発明のタンパク質は、それが薬物代謝酵素であって、配列番号3に記載のアミノ酸配列からなるタンパクと同一の機能を有する限り、配列番号3に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個)のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されている等の変異が生じていてもよい。またこれらの変異は、自然に発生したものであってもよく、人為的に改変したものであってもよい。
本発明のタンパク質は、それが薬物代謝酵素であって、配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるタンパクと同一の機能を有する限り、配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個)のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されている等の変異が生じていてもよい。またこれらの変異は、自然に発生したものであってもよく、人為的に改変したものであってもよい。
本発明のタンパク質は、それが薬物代謝酵素であって、配列番号5に記載のアミノ酸配列からなるタンパクと同一の機能を有する限り、配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個(例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個)のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されている等の変異が生じていてもよい。またこれらの変異は、自然に発生したものであってもよく、人為的に改変したものであってもよい。
【0016】
本発明の遺伝子は、本発明のタンパク質である新規CYPタンパク質をコードする遺伝子であって、DNAであってもよくRNAであってもよい。また、本発明の遺伝子は、新規CYPタンパク質をコードする遺伝子であれば、構造遺伝子の状態で存在していてもよく、cDNAとして存在していてもよく、mRNAとして存在していてもよい。また、本発明の遺伝こは、ゲノム遺伝子であってもよく、人為的に作成したベクターにあってもよい。
本発明の遺伝子は、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に記載のアミノ酸配列をコードする遺伝子であるか、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されている等の変異が生じているアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする遺伝子であってもよい。
新規CYPタンパク質をコードする遺伝子として、例えば、配列番号6−10として記載されるcDNAであってもよく、配列番号6−10として記載されるcDNAに相補的な遺伝子であってもよく、また、配列番号6−10として記載されるcDNAが存在する全長のゲノム配列であってもよい。
【0017】
また、本発明に係る遺伝子は、配列番号6−10に記載の塩基配列若しくはその一部からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNA配列をストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、薬物代謝酵素であるタンパク質をコードするサル由来の遺伝子も含む。
ストリンジェントな条件とは、例えば、5%Denhardt's Solution(0.1%Ficoll(Pharmacia)、0.1%ポリビニルピロリドン、0.1%ウシ血清アルブミンを含む)と、0.5%SDSと、100μg/mlサケ精子DNAを含む6×SSC溶液(1×SSCは0.15M NaCl、15mM クエン酸ナトリウム)中において65℃で洗浄する条件をいう。ストリンジェンシーは塩濃度(イオン強度)、温度等によって制御することができ、ストリンジェンシーがより高い条件、即ち塩濃度がより低く、温度がより高い条件では、相同性が十分に高いDNAのみがハイブリダイズする。従って、かかる条件下で、配列番号6−10に記載の塩基配列若しくはその一部からなるDNAと相補的な塩基配列からなるDNA配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAがコードするタンパク質のアミノ酸配列は、配列番号1−5に記載のアミノ酸配列と、それぞれ、高い相同性を有し、同一の機能を有するものと考えられる。当業者であれば、温度や塩濃度を調製することによって、ストリンジェントな条件を適宜選択することができる。
【0018】
本発明のタンパク質および遺伝子は、そのアミノ酸配列、塩基配列および/または機能により本発明に含まれると解される限り、その由来は限定されないが、好ましくはサル由来であり、さらに好ましくは、カニクイザルまたはアカゲザル由来である。
【0019】
本発明の組換えベクターは、上記遺伝子を含む組換えベクターであり、ベクターに本発明の遺伝子を挿入することにより、斯かる組換えベクターを提供することができる。
本発明の遺伝子を挿入するベクターとしては、挿入した遺伝子を安定に保持するものであれば、特に限定されず、例えば、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322、pBR325)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5)、酵母由来のプラスミド(例えば、pSH19、pSH15)、λファージ系やM13ファージ系などのバクテリオファージ、SV40、パピローマウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルス、バキュロウイルスなどのウイルスベクターなどが挙げられる。
ベクターには、宿主内で、本発明のタンパク質が効率よく発現されるよう、宿主に適した、プロモータ配列、エンハンサー配列、シャインダルガーノ配列、シグナル配列、ポリAシグナルなどを適宜選択し、これら配列を挿入することができる。
【0020】
本発明の遺伝子をベクターへ挿入する方法は、従来公知の方法を用いることができ、特に限定されず、例えば、制限酵素を用いてベクターを切断し、リガーゼ反応によって、遺伝子を該切断部位に連結する方法などが挙げられる。
【0021】
本発明の形質転換体は、上記組換えベクターを含む形質転換体であり、組換えベクターを用いて形質転換させることにより、斯かる形質転換体を提供することができる。
組換えベクターを導入する宿主としては、特に限定されず、例えば、大腸菌や緑膿菌などのグラム陰性菌、枯草菌などのグラム陽性菌、放線菌、酵母、糸状菌、動植物培養細胞、昆虫培養細胞などが挙げられ、中でも大腸菌が好ましい。
ベクターの導入方法としては、宿主が大腸菌である場合には塩化カルシウム法、枯草菌を宿主とする場合にはコンピテントセル法や酢酸リチウム法、枯草菌、放線菌、酵母などにはプロトプラスト法、動植物細胞、酵母、細菌などに広く用いられる方法としてリン酸カルシウム共沈法、エレクトロポレーション法、DEAE−デキストランやポリブレンなどのポリマーと複合体を形成させる方法などから適宜選択することができる。カチオン性脂質のリポソームと複合体を形成させるリポフェクトアミン(Invitrogen)を用いることもできる。
【0022】
本発明の形質転換体を培養することにより本発明のタンパク質を製造することができる。形質転換体の培養は、宿主細胞の特性、発現するタンパク質の特性、プロモータの特性などにより選択することができ、特に限定されず、例えば、MEM培地、DMEM培地、Williams E培地(Gibco)等の公知の培地を使用することができる。また、例えば抗生物質耐性を有するプラスミドを用いた場合は、当該抗生物質を培地に添加することにより目的タンパク質の発現を調節することができ、またラクトース依存性プラスミドを使用した場合はIPTGを培地に添加して発現を誘導することができる。
形質転換体を培養して発現させることにより製造される本発明のタンパク質は、通常のタンパク質の精製方法を用いて精製することができ、例えば、クロマトグラフィー、限外濾過法、塩析、浸透圧ショック法、超音波処理などの公知のタンパク質の精製方法を組み合わせて精製することができる。
クロマトグラフィー法としては、例えば、水溶液中で行うイオン交換クロマトグラフィー、ゲル濾過、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、有機溶媒を用いる逆相クロマトグラフィーなどが挙げられる。
発現させたタンパク質は、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を用いて修飾を加えたり部分的にペプチドを除去したりすることもできる。
タンパク質修飾酵素としては、トリプシン、キモトリプシン、プロテインキナーゼやグルコシダーゼなどが挙げられる。
【0023】
本発明の形質転換体は、上記組換えベクターを含む形質転換体であり、組換えベクターを用いて形質転換させることにより、斯かる形質転換体を提供することができる。
本発明の抗体は、本発明のタンパク質に対する抗体であり、新規CYPタンパク質、新規CYPと機能的に同質なタンパク質、例えば、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、または配列番号5に記載のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、薬物代謝酵素であるタンパク質、またはそれらの部分ペプチドに特異的に結合する抗体であればよく、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体であってもよい。
ヒト以外の哺乳動物を本発明のタンパク質で免疫することによって得た非ヒト抗体のほか、ヒト化抗体や、遺伝子組換えにより得られた抗体であってもよい。また、本発明のタンパク質を認識する抗体であれば、キメラ抗体であってもよく、認識部位のみを有するFabなどの抗体であってもよい。
【0024】
本発明の抗体は、公知またはそれに準じた方法により製造することができるが、以下に代表的方法を例示する。
ポリクローナル抗体は、新規CYPタンパク質またはその部分ペプチドを用いて哺乳動物、好ましくはマウスやラット等のげっ歯目、ウサギ目、サルなどの霊長目の動物を免疫し、血清を得て、この血清を新規CYPタンパク質またはその部分ペプチドを固定したアフィニティーカラムに通して精製することにより得ることができる。
モノクローナル抗体は、ポリクローナル抗体の製造方法と同様に、新規CYPタンパク質またはその部分ペプチドを用いて哺乳動物を免疫し、この動物から得た抗体産生細胞と、増殖力の強いミエローマ細胞とを融合させ、個々の融合(ハイブリドーマ)細胞を分離し、求める抗体の生産能を検定することによって抗原の一つのエピトープに特異的に反応する抗体分子を1種だけ生産する細胞を選択し、この細胞を培養することによって製造することができる。また、モノクローナル抗体は、モノクローナル抗体のアミノ酸配列をコードする遺伝子をベクターに挿入し、このベクターを宿主に導入して産生させて遺伝子工学的方法で得ることもできる。ヒト抗体遺伝子を導入したトランスジェニック動物を免疫すれば、ヒト抗体を産生することもでき、マウスのモノクローナル抗体の抗原結合部位をコードするcDNAとヒトのIgG遺伝子の定常部をコードする遺伝子を連結してこれをBリンパ球に導入すればキメラ抗体分子を生産させることもできる。
【0025】
本発明の抗体は、本発明のタンパク質を特異的に認識して結合する限り、フラグメントや修飾された抗体であってもよい。抗体のフラグメントとしては例えば、F(ab)、F(ab')、またはsingle chainFvなどが挙げられ、修飾された抗体としては例えばポリエチレングリコールなどの化合物と結合された抗体などが挙げられる。
本発明の抗体は、新規CYPタンパク質の精製や検出、定量に用いることができるし、また新規CYPタンパク質の生物学的活性を亢進または抑制する作用を有する場合には、アゴニストまたはアンタゴニストとなりうる。
【0026】
本発明の新規CYPタンパク質は、サル特有のタンパク質であるため、新規CYPタンパク質が代謝に関与する化合物については、サルとヒトにおいて代謝パターンが異なる可能性が高い。
斯かる新規CYPタンパク質の特性を利用することにより、医薬品候補化合物などの被検物質のサルを用いた薬効、代謝および/または安全性のin vivo試験を行う前に、in vitroで、新規CYPタンパク質が当該被検物質の薬物代謝に関与するかどうかを確認することにより、サルでの被検物質の薬効、代謝および/または安全性を予測することができる。また、サル特有に被検物質が代謝される場合には、サルをモデル動物として試験することの可否を評価することができる。例えば、新規CYPタンパク質が、当該被検物質の代謝に深く関与していれば、当該被検物質のヒトにおける代謝はサルと大きく異なる可能性が示唆され、サルをモデル動物として試験を行うことは望ましくないものと評価される。また、サルでの薬物代謝試験結果と、他の動物での薬物代謝試験結果を比較して、サルでの薬物代謝の特異性を検証することができる。
一方、新規CYPタンパク質が、当該物被検物質の代謝に関与していない場合は、当該被検物質はヒトと相同性の高い別の代謝酵素によって代謝される可能性が示唆され、サルをモデル動物とした試験の結果を利用して、ヒトにおける薬効、代謝および/または安全性を類推することが可能と考えられる。
このように新規CYPタンパク質を用いることによって、無駄な試験を省略し、試験を迅速化することも可能である。
【0027】
また、ヒトとサルにおいて代謝パターンが異なる薬物は、新規CYPタンパク質がその代謝に関与している可能性が高いことが推測される。そこで、ヒトとサルにおいて代謝パターンが異なる被検物質を新規CYPタンパク質と接触させ、適当な条件でインキュベートし、新規CYPタンパク質の当該被検物質の代謝への関与を測定することによって、この代謝パターンの相違の原因を評価することが可能である。
このような方法により、代謝パターンの相違が新規CYPタンパク質に起因することがわかれば、サルをモデル動物とした試験結果に拘束されて試験を無駄に停止することなく、試験を継続、迅速化することが可能である。
【0028】
本発明は、上述したように、本発明のタンパク質と被検物質とを接触させる工程を含む、前記被検物質の代謝に対する、前記タンパク質の関与の有無を測定する方法を提供する。また、本発明は、サルをモデル動物として、被検物質の薬効、代謝および/または安全性を試験する工程、本発明のタンパク質と被検物質とを接触させて、前記タンパク質の関与の有無を測定する工程、を含む、前記被検物質のサルまたはヒトにおける薬効、代謝および/または安全性を予測する方法を提供する。
【0029】
本発明においては、サルとヒトとの薬物代謝パターンの相違を測定するのみならず、上述のサルとヒトとの薬物代謝パターンの相違を測定する方法に準じて、異種のサル間の薬物代謝パターンの相違や、同種のサル間の薬物代謝パターンの相違を測定することもできる。
【0030】
本発明の新規CYPタンパク質、遺伝子、組換えベクター、形質転換体、抗体は、サルをモデル動物とした、ヒト用の医薬品候補化合物についての薬効、代謝および/または安全性を試験の評価に用いられるキットとして用いてもよい。キットには、新規CYPタンパク質が被検物質を代謝するのに必要な試薬、容器、装置などを含んでいてもよい。このようなキットは、サルをモデル動物とした試験結果と略同様の結果がヒトにおける試験でも得られるかどうかの推測や、ヒトとサルとにおいて試験結果が異なる場合の原因の究明、あるいは、サルをモデル動物として試験をすることの是非の検討などに用いることができる。
【実施例】
【0031】
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0032】
実施例1:CYP2C93
(RNAの抽出)
組織サンプル(脳、肺、心臓、肝臓、腎臓、副腎、空腸、精巣、卵巣、および子宮)を、4−5歳齢の3−5kgのカニクイザルのオス、メス3個体からそれぞれ採取した。
採取した各サンプルは、採取直後に液体窒素により凍結した。凍結サンプルは、まず、乳鉢で磨り潰し、次いで、Polytron PT1200E(Kinematica)を用いて、TRIzol(Invitrogen)中でホモジナイズした。TRIzolの使用説明書に従って全RNAを抽出した。抽出した全RNAは、DNase I(Takara)で処理した後、GenElute Mammalian Total RNA Mini Kit(Sigma−Aldrich)により精製した。得られたRNAは、(Real−time RT−PCR)において用いた。
同様にして、7歳齢の3−5kgのアカゲザル11個体および4−5歳齢の3−5kgのカニクイザル8個体の肝臓に由来する全RNA(肝臓由来の全RNA)を抽出した。得られたRNAは、CYP2C93の転写バリアントの発現を分析するために、転写解析において用いた。
【0033】
(ゲノムDNAの抽出)
7歳齢の3−5kgのアカゲザル2個体および4−5歳齢の3−5kgのカニクイザル141個体の全血液サンプルから、製造者の使用説明書に従って、PUREGENE(登録商標) DNA isolation kit (Gentra Systems)を用いて、ゲノムDNAを調製した。
【0034】
(cDNAのクローニング)
Reverse transcription−polymerase chain reaction(RT−PCR)は、カニクイザルおよびアカゲザルから抽出された肝臓由来の全RNAを用いて行った。
総RNA量1μg、オリゴ(dT)プライマー(Sigma−Aldrich)、およびSuperScript II RT逆転写酵素(Invitrogen)を含む混合物中、37℃で1時間反応させて、一本鎖cDNAを調製した。
続いて、調製した一本鎖cDNAをテンプレートとして用い、KOD Plus DNA polymerase(東洋紡)を用いて、サーマルサイクラー(Applied Biosystems)に添付の製造者の使用説明書に従って、PCRを行った。
PCRの反応条件は、初期変性反応を95℃で2分間行い、95℃で20秒、58℃で20秒、72℃で2分間の35サイクルで行った。最終伸長反応を72℃で10分間行った。
プライマーとしては、
mmCYP2Cv4(5rt1) 5’-ATGTCTGGAGAAGAGAAGGC-3’(配列番号13)
および
mmCYP2Cv4(3rt2) 5’-GACTTGCAGGTGACAAAAGATCA-3’(配列番号14)
を用いた。
これらプライマーは、アカゲザルゲノム上に見出したCYP2C様配列をもとにデザインしたものである。
該CYP2C様配列は、ヒトCYP2C9 cDNA配列を用いて、アカゲザルゲノムについてGenBankのBLAST解析を行って見出した配列である。
増幅されたcDNAは、Aを付加した後、TAPO TA Clonong Kit(Invitrogen)を用いて、pCR2.1ベクターにクローニニグし、ABI PRISM BigDye Terminator v3.0 Ready Reaction Cycle Sequencing Kit(Applied Biosystems)を用いて、インサートのシーケンス反応を行い、得られた産物をABI−3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)を使用して泳動し、塩基配列解析を行って塩基配列データを取得した。得られたcDNA配列をCYP2C93とした。
【0035】
なお、5’RACE(5’ rapid amplification of cDNA ends)を行い、翻訳開始点が正しいことを確認した。
5’RACEは以下のプライマーを用い、上記PCR反応と同様にして行った。
mfCYP2Cv4(3gsp1) 5’-CAACTCCTCCACAATAC-3’(for RT reaction、配列番号15)
mfCYP2Cv4(3gsp2) 5’-CGCAGTCCTCAATGCTTCTCTTA-3’(for the initial PCR、配列番号16)
mfCYP2Cv4(3btj1) 5’-CCAAAATTTCGCAAGGTCAAA-3’(for the nested PCR、配列番号17)
【0036】
アカゲザルCYP2C93(mmCYP2C93)の塩基配列(配列番号6)の結果から、該塩基配列は、490アミノ酸のORFを有していた。ORF配列から、推測されるアミノ酸配列には、6つの基質認識部位(Gotoh, O. J Biol Chem (1992) 267:83-90)、およびヘム結合部位が存在した。mmCYP2C93のORFのアミノ酸配列(配列番号1)は、図1および図13に示す。
一方、カニクイザルCYP2C93(mfCYP2C93)の塩基配列の結果から、2つのcDNAが確認された(配列番号11および配列番号12)。エクソン2の完全長を保持する配列をSV1とし(配列番号11)、欠いている配列をSV2とした(配列番号12)。これらは、アカゲザルCYP2C93のcDNA配列と>99%の相同性を示した。SV1とSV2のcDNAの塩基配列は、いずれも、エクソン1に1塩基欠損があり(c.102T>del)、フレームシフトおよび中途終止コドンを生じていた。エクソン1の1塩基欠損(c.102T>del)を生じていない場合の、mfCYP2C93のORFのアミノ酸配列(配列番号2)を、図2および図13に示す。ただし、CYP2C93のc.102T>delは、カニクイザルの1個体に確認されただけであり、多くのカニクイザルゲノムには、T欠損はないと考えられた。
【0037】
(配列解析)
DNASIS Pro(Hitachi Software)およびGentycs system(Software Development)を用いて、得られた塩基配列データを分析した。
ホモロジー・サーチは、BLAST program(National Center for Biotechnology Information)によって行った。
cDNA配列から推測されるアミノ酸配列についてClustalWプログラムを用いたマルチプル・アライメントを実行し、また、Neighour−joining法により分子進化系統樹を作成した。
ヒト、カニクイザル及びアカゲザルCYP2Cサブファミリーのゲノム構造解析のために、BLATプログラム(UCSC Genome Bioinformatics)を用いた。
マルチプル・アラインメントの結果を図13に、分子進化系統樹を図14に示す。また、アカゲザルCYP2C93とCYP2Csとの相同性解析結果を表1に示す。
【0038】
【表1】

【0039】
アカゲザルCYP2C93のアミノ酸配列と、ヒト(Human)、アカゲザル(Rhesus)、カニクイザル(Cynomolgus)の他のCYP2Csのアミノ酸配列の相同性は、71−81%であった。最も相同性の高い配列は、ヒトCYP2C8とオーソロガスな、カニクイザルCYP2C8と、アカゲザルCYP2C74であった。すなわち、ここで得られたアカゲザルCYP2C93とカニクイザルCYP2C93は、既存のヒトまたはサルのCYP2Csと相対的に低い相同性を示す、すなわち新規なCYP2C配列であることが明らかとなった。
【0040】
(転写解析)
CYP2C93の転写物であるSV1とSV2の存在を、別途調整した、7個体のカニクイザルおよび10個体のアカゲザルの肝RNAを用いて、RT−PCRにより、確認した。
上述の(cDNAのクローニング)の方法と同様にして、逆転写させて一本鎖cDNAを調製し、PCRを行った。
PCRの反応条件は、初期変性反応を95℃で10分間行い、95℃で15秒、60℃で30秒、68℃で1分間の35サイクルで行った。最終伸長反応を68℃で5分間行った。
プライマーとしては、
mfCYP2Cv4 (5btj1b) 5’-TCCTTTCACTCTGGAGACAGAGTTC-3’(配列番号18)
および
mfCYP2Cv4 (3btj1) 5’-CCAAAATTTCGCAAGGTCAAA-3’(配列番号19)
を用いた。
RT−PCR産物の1.5%アガロースゲルを用いた電気泳動の結果を図15および図16に示す。
図15と図16の結果から、機能的なCYP2C93は,カニクイザルにはなくアカゲザルにあること(種差)、また、アカゲザルでも半分程度の個体でしか発現していないこと(個体差)が示唆された。
【0041】
(BACクローン解析)
カニクイザルのCYP2C93遺伝子座の解析をBacterial Artificial Chromosome(BAC)クローンを用いて行った。
アカゲザルBACライブラリー(BACPAC)を、カニクイザルCYP2C75およびCYP2C76 cDNAをプローブとしてスクリーニングし、CYP2Cを含むBACクローンを単離した。ライブラリー・フィルターとのハイブリダイゼーションは、BACPACの使用説明書に従って行い、プローブは、[α]32P−dCTP(Amersham Biosciences)の存在下で、RadPrime DNA labeling system(Invitrogen)を用いて合成した。
BAC DNAをDNA PhasePrepTM BAC DNA Kit(Sigma−Aldrich)により精製した。各BAC DNAに含まれるCYP2C遺伝子を同定するため、精製されたBAC DNAをテンプレートとして、1ユニットのAmpliTaq Gold DNA polymerase(Applied Biosystems)、0.2mMのdNTPs、2mMのMgCl、5pmolの遺伝子特異的プライマーの総量を20μLとしてPCRを行った。
PCRの反応条件は、初期変性反応を95℃で10分間行い、95℃で20秒、55℃で20秒、72℃で1分間の30サイクルで行った。最終伸長反応を72℃で10分間行った。
プライマーとしては、mfCYP2C93の5’末端解析用として、
mfCYP2Cv4 (5btj1a) 5’-CTGGTGCTCTGTCTCTCCTGTT-3’(配列番号20)
および
mfCYP2Cv4 (3ex1a) 5’-TGCTGAAAGATTTGCTGATATTC-3’(配列番号21)
を用い、3’末端解析用として、
mfCYP2Cv4 (5ex9a) 5’-CTGAAATCTCTTACTGATTTAAAGGC-3’(配列番号22)
および
mfCYP2Cv4 (3btj3a) 5’-TCTGGTATGAAGGTAGCATAGAAACAAG-3’(配列番号23)
を用いた。
また、CYP2C8およびCYP2C76のプライマーとして以下のプライマーを用いた(配列番号24−31)。
【0042】
【表2】

【0043】
結果を図17に示す。CYP2C93は、アカゲザルゲノムにおいて、CYP2C76に隣接しており、CYP2Cクラスターの末端に位置していた。アカゲザルゲノムのBLAT検索の結果においても、CYP2C93の一部の配列が、同様の位置に存在していることが確認された。このCYP2C93の位置が、ヒトのゲノムでは遺伝子の存在しないintergenic領域に対応していた。
一方、ヒトゲノムのBLAT検索の結果から、CYP2C93のcDNAと90%以上の相同性を有する配列は、ヒトゲノム上には存在しないことが確認された。したがって、新規CYP2C93はヒトでは対応するCYPが存在していないことが示唆される。
【0044】
BLATプログラムを用い、アカゲザルゲノムとmmCYP2C93のcDNA配列とから、CYP2C93のエクソン−イントロン構造を分析した。BLAT解析において、アカゲザルゲノムは、エクソン6以外のエクソンを含むことが確認されたので、エクソン6をゲノムから増幅した。
テンプレートとしてアカゲザルのゲノムDNAを用い、1ユニットのLA Taq polymerase(Takara)、0.2mMのdNTPs、2mMのMgCl、5pmolのプライマーの総量を20μLとして、PCRを行った。
PCRの反応条件は、初期変性反応を95℃で2分間行い、95℃で20秒、55℃で30秒、72℃で5分間の35サイクルで行った。最終伸長反応を72℃で20分間行った。
プライマーとしては、エクソン1として、
mmCYP2Cv4 (5int5b) 5’-GACCTTCCCAGGCTTCAG-3’(配列番号36)
mmCYP2Cv4 (3int6b) 5’-TCCTATTTTGGCAAACACCA-3’(配列番号37)
を用いた。
Aの付加後に、PCR産物をTOPO XL Cloning Kit(Invitrogen)を用いて、添付の製造者の使用説明書に従って、ベクターにクローニングし、配列を解析した。結果を表3に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
エクソンおよびイントロンは、それぞれ大文字と小文字で示した。高度に保存されたGU−AGモチーフは、下線を付して太字で示す。
【0047】
(エクソンの増幅)
SV2が生じる原因として,スプライシングサイトの遺伝子変異によるスプライシング・パターンの変化が考えられるため、上記の方法でエクソンの増幅を行った。以下のプライマーを使用した。
エクソン1として、
mmCYP2Cv4 (5flk1a) 5’-CCTTGACTCCAATCCAATGC-3’(配列番号32)
mmCYP2Cv4 (3int1b) 5’-CCAAAATGTTTCTCCACTCACA-3’(配列番号33)
および、エクソン2/3として、
mmCYP2Cv4 (5int1b) 5’-GTTCTCCTGACCTCCGTTTC-3’(配列番号34)
mmCYP2Cv4 (3int3b) 5’-CTGGAACCCAGGTTTATGCT-3’(配列番号35)
本エクソンの増幅実験は、IVS2−1G>Tを判定するためにも利用することができるため、仮にCYP2C93のSV2が個体差や種差の原因となっていれば,その原因究明や試験に供する個体選別の判定系として使用できる。
【0048】
(Real−time RT−PCR)
各組織におけるCYP2C93のmRNAの発現量を、Real−time RT−PCRにより測定した。
各遺伝子に特異的な、プライマー及びTaqManプローブ(Biosearch Technology Japan)は、Primer Express software(Applied Biosystems)を用いて設計したものを用いた。
プライマーとして、
mfCYP2Cv4 (5btj3a) 5’-GAGTGGCAACTTTAAGAAAAGTGAAA-3’(配列番号38)
mfCYP2Cv4 (3btj3a) 5’-TCTGGTATGAAGGTAGCATAGAAACAAG-3’(配列番号39)
を用いて、
プローブとして、
mfCYP2Cv4 bhq3FW
5’-FAM-CTCAATGCCACTCCCACTGCCAAA-BHQ-3’(配列番号40)
を用いた。
プローブは、5’末端をFAM fluorescence reporter dyeにより標識した。RT反応は、ランダムプライマー(Invitrogen)を用いて行った。PCRは、RT産物の25分の1量を用いて、全量25μLとしてTaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)を用い、ABI Prism 7500 sequence detection system(Applied Biosystems)により行った。各プライマーの最終濃度は600nMとし、プローブの最終濃度は200nMとした。サーマルサイクラーの条件は、50℃で2分、95℃で10分の後、40サイクルで95℃で15秒および60℃で1分とした。
標準曲線は、対応するcDNAのプラスミドの10倍の希釈液を用いて作成した。
すべてのCYP遺伝子に対し、アッセイの特異性の確認は、予想されたサイズの目的PCR産物が単一のバンドとしてアガロースゲル上にあらわれること、及び、各遺伝子の相対的な発現レベルは、Applied Biosystems製のキットにより、18SリボソームRNAレベルを測定することにより標準化した。各遺伝子について、少なくとも3回の増幅を行った。結果を図18に示す。
【0049】
(Esherichia coliにおけるヘテロタンパク質の発現)
Ttranscript variantであるSV1およびSV2に対応するカニクイザルのmfCYP2C93 SV1およびmfCYP2C93 SV2、アカゲザルのmmCYP2C93の3つの発現プラスミドを調製し、Iwataらの方法(Iwata, H. et al., Biochem Pharmacol (1998) 55:1315-1325)に従ってタンパク質を発現させた。
まず、得られているカニクイザルのCYP2C93のcDNAは、c.102T>delを含むので、QuikChangeTM XL II kit (Stratagene)を用いて、添付の製造者の使用説明書に従って、次のプライマー
mfCYP2Cv4 (5qc1) 5’-CCTGGCCCCACtCCTCTCCCTATTATTGG-3’(配列番号41)
mfCYP2Cv4 (3qc1) 5’-CCAATAATAGGGAGAGGaGTGGGGCCAGG-3’(配列番号42)
を用いて、c.102にTを挿入した。
配列番号41および配列番号42の配列中、小文字で表わされている塩基は、変更された塩基を意味する。
挿入された配列はシークエンシングにより確認した。
得られたプラスミドをPCRのテンプレートとして用いて、KOD Plus DNAPpolymerase(Toyobo)およびフォワードおよびリバースプライマーとして、次のプライマー
mmCYP2Cv4 (5exp1bov)
5’-GGAATTCCATATGGCTCTGTTATTAGCAGTTTTTCTCTGTCTCTCCTGTTTGCTTCT-3’(配列番号43)
および
mmCYP2Cv4 (3exp1) 5’-GCTCTAGACTTAACCTTCTTCAGACAGGAGT-3’(配列番号44)
を用いてPCRを行った
上記プライマー配列中の下線部分はNdeI認識部位(配列番号43)とXbaI認識部位(配列番号44)を表し、ヒトNADPH−CYP reductaseのcDNAを含むpCWベクターへのサブクローニングを容易にする。
E.coliでのタンパク質の発現は、Iwataらの方法(Iwata, H. et al., Biochem Pharmacol (1998) 55:1315-1325)に従い、調製した発現プラスミドを用いて大腸菌(DH5α)にて行い、そのE.coli細胞からSandhuらの方法(Sandhu, P. et al., Arch Biochem Biophysis (1994) 309:168-177)に従い、膜画分を調製した。
同様に、カニクイザルCYP2C8、CYP2C18、CYP2C43、CYP2C75およびCYP2C76についても発現させ、膜画分を調製した。
Omuraらの方法(Omura, T. et al., J Biol Chem (1964) 239:2379-2385)に従い、U−3000 spectrophotometer(Shimadzu)を使用して、各膜画分中のCYPタンパク質の量を、また、Phillipsらの方法(Phillips, AH. et al., J Biol Chem (1962) 237:2652-2660)に従って、NAPDH−CYP レダクターゼの濃度を測定した。
【0050】
(薬物の代謝活性)
Yamazakiらの方法(Yamazaki, H. et al., Biochem Pharmacol (2002) 56:243-251)に従い、mfCYP2C8、mfCYP2C43、mfCYP2C75、mfCYP2C76、mfCYP2C93(Tを挿入したSV1バリアント)、mfCYP2C93(Tを挿入したSV2バリアント)およびmmCYP2C93を用いて、ヒトCYP2Cの基質である、Paclitaxel、Tolbutamide、Diclofenac、FlurbiprofenおよびS−Mephenytoin(各化合物はSigma−Aldrichより購入した)に対する代謝活性を解析した。結果を表4に示す。
【0051】
【表4】

【0052】
表4の結果から、大腸菌で発現させたCYP2C93は、ヒトCYP2ファミリーの基質である、Tolbutamide、Diclofenac、FlurbiprofenおよびS−Mephenytoinを代謝することがわかった。また、アカゲザルのCYP2C93は機能的なタンパク質であり、カニクイザルのCYP2C93_SV1は、c.102T>delの変異がなければ機能的なタンパク質であるのに対して、エクソン2が欠損した転写物(SV2)由来のカニクイザルCYP2C93_SV2は、c.102T>delの変異がなくても機能的なタンパク質でとならないと考えられた。
【0053】
(ウェスタンブロッティング解析)
CYP2C93に対するポリクローナル抗体は、抗原領域を推測し、該領域の特異的なアミノ酸配列に対するペプチドを用いて作製した(Thermo Fisher Scientificにて作製)。
C−末端のシステインのチオール基にKeyhole Limpet Hemocyaninを結合させた、合成ぺプチド
NH2-QEEIDRVIGRHRSPC-COOH(配列番号45)
を用いて、New Zealand White Rabbitを免疫して、CYP2C93抗体を得た。
カニクイザルのmfCYP2C18、mfCYP2C8、mfCYP2C43、mfCYP2C75、mfCYP2C76、およびmfCYP2C93の大腸菌で発現させたCYPタンパク質1.0pmolとCYP2C93を発現していることが確認されたアカゲザルから取り出した肝ミクロソーム15μgを、10%SDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、Hybond−P filter(GE Healthcare)上に移行した。このフィルターを用いて、ウサギ抗CYPC2C93抗体(1:1000)、及びホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヒツジ抗ウサギIgG抗体(Surmodics)を用いたイムノブロッティングを行った。
ローディングコントロールとしてのProtein disulfide isomerase(PDI)は、ウサギ抗PDI抗体(1:200、SantaCruz Biotechnology)を用いて検出した。
製造者の使用説明書に従って、特定のバンドを、ECL Western Blotting detection reagent(Amersham Biosciences)により可視化した。結果を図19に示す。
抗CYPC2C93抗体は、mfCYP2C8、mfCYP2C76およびmfCYP2C93に交差性を示したが、サイズの違いからmfCYP2C93のバンドは、mfCYP2C8およびmfCYP2C76のバンドと区別可能であった。アカゲザルの肝ミクロソームの結果から、CYP2C93は肝で発現していることが示唆された。
【0054】
(エクソン2の解析)
IVS2−1G>T変異がエクソン2欠損の原因となり得るのか確認するために、mini gene plasmidを調製した。
テンプレートとして、mfCYP2C93 SV1およびmfCYP2C93 SV2を発現するカニクイザルのゲノム、およびmmCYP2C93を発現するアカゲザルゲノムを用い、エクソン1〜エクソン3のCYP2C93遺伝子フラグメントを、1ユニットのLA Taq polymerase(Takara)、0.2mMのdNTPs、2mMのMgCl、5pmolのプライマー
mmCYP2Cv4 (5flk1a) 5’-CCTTGACTCCAATCCAATGC-3’(配列番号32)
および
mmCYP2Cv4 (3int3b) 5’-CTGGAACCCAGGTTTATGCT-3’(配列番号35)
の総量を20μLとして用いて、PCRにより増幅した。
PCRおよびシークエンスは、(エクソンの増幅)におけるエクソン6の増幅と同様にして行った。
イントロン1のスプライシングアクセプター部位にIVS2−1Gを持つカニクイザルCYP2C93遺伝子断片を含むプラスミド(pcDNA3.1−mfCYP2C93_IVS2−1G)、同じ部位にIVS2−1Tを持つカニクイザルCYP2C93遺伝子断片を含むプラスミド(pcDNA3.1−mfCYP2C93_IVS2−1T)、同じ部位にIVS2−1Gを持つアカゲザルCYP2C93遺伝子断片を含むプラスミド(pcDNA3.1−mmCYP2C93_IVS2−1G)調製した。同じ部位にIVS2−1Tを持つアカゲザルCYP2C93遺伝子断片を含むプラスミド(pcDNA3.1−mmCYP2C93_IVS2−1T)を作成するために、IVS2−1G>T変異を、QuickChang XL II kit(Stratagene)を用いて、pcDNA3.1−mmCYP2C93_IVS2−1Gに導入した。
プライマーは、
mmCYP2C93IVS2−2AG>AT (5qc1)
5’-CTCCTTTCCCAtTTCTCAAAACTC-3’(配列番号46)
および
mmCYP2C93IVS2−2AG>AT (3qc1)
5’-GAGTTTTGAGAAaTGGGAAAGGAG-3’(配列番号47)
を用いた。なお、小文字で示された塩基は、変異された塩基を表す。
挿入された全配列をシークエンスにより確認した。得られたプラスミドを、添付の製造者の使用説明書に従って、COS1細胞(Riken)にトランスフェクトし、トランスフェクトから24時間後に、細胞から全RNAをRNeasy Mini Kit(QIAGEN)を用いて、添付の製造者の使用説明書に従って、抽出した。
抽出した全RNAを用いて、RT反応を行った後、プライマーとして、
mfCYP2Cv4 (5btj1b) 5’-TCCTTTCACTCTGGAGACAGAGTTC-3’(配列番号20)
および
mfCYP2Cv4 (3btj1) 5’-CCAAAATTTCGCAAGGTCAAA-3’(配列番号21)
を用いてPCRを行った。
コントロールとして、β−アクチンのRT−PCRを行ったが、PCRではプライマーとして、
mf&h_β−アクチン(5qrt1) 5’- AACGGTGAAGGTGACAGCA-3’(配列番号48)
および
mf&H_β−アクチン(3qrt1) 5’- AGTGGGGTGGCTTTTAGGA-3’(配列番号49)
を用い、得られたPCR産物を、アガロースゲル上で可視化した。
結果を図20に示す。
図20において、発現したCYP2C93のmRNAのRT−PCRを行うことにより、IVS2−1TとIVS2−1Gのスプライシングへの影響を確認した。例えば,IVS2−1GのプラスミドではSV1のみが、IVS2−1TのプラスミドではSV2のみが発現していることを確認することにより、IVS2−1TがSV2生成、つまりaberrant splicingによるexon 2 skippingの原因であると考えることができる。図20において、IVS2−1TがSV2生成の原因にはなっていることが確認できた。また、IVS2−1Tの塩基置換をgenotypingすることによって、非臨床試験に供与する個体を選別したり、CYP2C93が関与する薬物代謝における種差や個体差の原因として提示することができると考えられた。さらに、図20の結果から、イントロン1のスプライシングアクセプター部位のIVS2−1G>Tである遺伝的バリアントは、スプライシングのパターンが変わることによりエクソン2のスキップを生じさせていることが明らかとなり、このスプライシングサイトの変異により、SV2の転写物が生じることが確認できた。SV2の存在は、CYP2C93により媒介される薬物代謝に影響を与えると考えられる。また、CYP2C93(SV1)だけ発現している個体とSV2だけ発現している個体を見出して、それらの個体間で遺伝子配列を調べればスプライシングサイトに重要な配列の違いを確認することができると考えられる。
【0055】
(遺伝子型の判定)
c.102T>delの遺伝子型を判定するため、GeneMapper(Applied Biosystems)を用いて解析を行った。
テンプレートとして、カニクイザル141個体,アカゲザル8個体のゲノムDNAを用い、(転写解析)における方法と同様にして、PCRを行った。
プライマーとしては、
mfCYP2Cv4 (5gm1a) 5’-CTGGTGCTCTGTCTCTCCTGTT-3’(配列番号50)
および
mfCYP2Cv4 (3gmla)5’-TGCTGAAAGATTTGCTGATATTC-3’(配列番号51)
を用いた。
PCR産物は、ABI PRISM 3730 DNA Analyzer(Applied Biosystems)で電気泳動させ、製品の製造者の使用説明書に従って、測定データを解析した。
野生型のゲノムとは異なるサイズのピークとしてc.102T>delの存在が確認された。
なお、カニクイザル141個体中、c.102T>del(Tの欠損あり)変異を有していたのは1個体のみであり、ヘテロ(核細胞にゲノムが2コピー存在するうち,一方は野生型,もう一方は変異型)であることが確認された。この結果より、c.102T>del変異は一般的にカニクイザルに存在する変異ではなく,かなり稀な変異であると考えられ、他のカニクイザルでSV1を発現している個体が存在すれば、CYP機能を有する可能性があると考えられる。したがって、カニクイザルCYP2C93のSV1に対応するタンパクを発現させることは、サルにおけるCYP2C93の代謝機能を調べる(種差の判定に用いることができるという)意義を有することを意味する。
【0056】
ダイレクト・シークエンス法によって、IVS2−1G>Tの遺伝子型を決定するため、(エクソンの増幅)に記載したのようにPCRを行い、PCR産物の塩基配列を決定した。
テンプレートとして、カニクイザル6個体,アカゲザル2個体のゲノムDNAを用い、プライマーとしては、
mmCYP2Cv4 (5int1b) 5’-GTTCTCCTGACCTCCGTTTC-3’(配列番号34)
mmCYP2Cv4 (3int3b) 5’-CTGGAACCCAGGTTTATGCT-3’(配列番号35)
を用いた。
IVS2−1G>Tはカニクイザルでは全ての個体で確認されたがアカゲザルでは確認されなかったので,ほとんどのカニクイザルではSV2を,アカゲザルではSV1を発現していることと合致していた。
また、SV1は、11のアカゲザルのうち6個体において発現し、カニクイザル8個体のうち1個体において発現していた。しかしながら、カニクイザルのSV1は、稀なアレルであるc.102T>delのヌル遺伝子型を示し、機能を有していないことも明らかとなった。
【0057】
以上のように、CYP2C93は、ヒトには存在しない分子種であり肝臓で発現し薬物代謝機能を有することから、サルとヒトの種差の原因となりうる。また、機能的なタンパク質としてCYP2C93がアカゲザルでは発現しているがカニクイザルでは発現していないので、CYP2C93が関与する薬物(特にCYP2C93に特異的な基質)の代謝におけるカニクイザルとアカゲザルの種差の原因となり得る。さらに、機能的なタンパクをコードするSV1がアカゲザルでも,調べた半分程度の個体でしかSV1が発現していないので、アカゲザルでCYP2C93が関与する薬物(特にCYP2C93に特異的な基質)の代謝における個体差の原因となり得る。すなわち、CYP2C93がカニクイザルと(CYP2C93を発現している)アカゲザルの種差の原因になり得る。一方、ヒトとカニクイザルは機能的なCYP2C93を持たないと考えられるので、CYP2C93特異的な基質の代謝はカニクイザルを用いて代謝活性を測定する方がヒトへの予測性が高まると考えられる。
【0058】
実施例2:CYP1D1
(RNAの抽出)
実施例1と同様にして、4−5歳齢の3−5kgのカニクイザルのオス、メス3個体の組織サンプル(脳、肺、心臓、肝臓、腎臓、副腎、空腸、精巣、卵巣、および子宮)由来のRNAをそれぞれ抽出した。また、4−5歳齢の3−5kgのアカゲザル2個体の肝臓に由来する全RNAを抽出した。
【0059】
(ゲノムDNAの抽出)
実施例1と同様にして、7歳齢の3−5kgの10匹のアカゲザルおよび4−5歳齢の3−5kgの20匹のカニクイザルの血液サンプルから、ゲノムDNAを調製した。
【0060】
(cDNAのクローニング)
RT−PCRを、以下に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、アカゲザルおよびカニクイザルから抽出された肝臓由来の全RNAを用いて行った。
プライマーとしては、
mmCYP1A8 (5rt2) 5’-GAAATGATTCTCAACCTAGCAGTCA-3’(配列番号52)
および
mmCYP1A8 (3rt2) 5’-GCATAGCTCAGGGGAATAAACTG-3’(配列番号53)
を用いた。これらプライマーは、アカゲザル遺伝子データのコンピュータ分析により予期されたCYP様ORF候補配列からデザインしたプライマーの塩基配列である。
増幅されたcDNAは、Aを付加した後、TAPO TA Clonong Kit(Invitrogen)を用いて、pCR2.1ベクターにクローニングし、塩基配列を決定した。得られたcDNA配列をmfCYP1D1とした。
【0061】
なお、5’RACEを行い、翻訳開始点が正しいことを確認した。
5’RACEは、以下のプライマーを用い、5’RACE System for Rapid Amplification of cDNA Ends (Invitrogen)を用いて、上記のRTおよびPCR反応と同様にして行った。
mfCYP1A8(3gsp1) 5’-TACTTGTTTCACCATTTC-3’(for RT reaction、配列番号54)
mfCYP1A8(3seq2) 5’-AGACAGGCACCATGCCAAG-3’(for the initial PCR、配列番号55)
mfCYP1A8(3gsp3) 5’-CGTAAGGTAAGGATGCTCTCCA-3’(for the nested PCR、配列番号56)
【0062】
アカゲザルおよびカニクイザルのCYP1D1は、1621bpの塩基配列であり、該塩基配列は、537アミノ酸のORFを有していた。ORF配列から、推測されるアミノ酸配列には、6つの基質認識部位(Gotoh (1992)、J. Biol. Chem. Vol.267, p.83-90)、およびヘム結合部位が存在した。mfCYP1D1およびmmCYP1D1のORFのアミノ酸配列は、図3、図4および図21に示す。
【0063】
(配列解析)
得られた塩基配列データを実施例1と同様にして解析した。
マルチプル・アラインメントの結果を図21に、分子進化系統樹を図22に示す。また、カニクイザルCYP1D1と他のCYP1ファミリーとのアミノ酸配列の相同性解析結果を表5に示す。
【0064】
【表5】

【0065】
カニクイザルCYP1D1のcDNAから推測されるアミノ酸配列は、ヒトのCYP1D1P(以前CYP1A8として知られた偽遺伝子であり、CYP1A1、CYP1A2、CYP1B1とヒトCYP1ファミリーを構成する。)と、91%の相同性を示し、カニクイザルのCYP1A1やCYP1A2アミノ酸配列とは、43−44%の相同性を示すに過ぎない。なお、解析に用いたヒトCYP1D1Pは、ヒトゲノム上に見出されるCYP1D1P遺伝子配列から推測されるアミノ酸配列から中途終止コドンを除いたものである。
【0066】
BLATプログラムを用い、アカゲザルゲノムとmfCYP1D1のcDNA配列とから、CYP1D1のエクソン−イントロン構造を分析した。結果を表6に示す。
【0067】
【表6】

【0068】
CYP1D1遺伝子は、14kbに渡り、6つのエクソンを有していた。エクソンおよびイントロンは、それぞれ大文字と小文字で示した。高度に保存されたGU−AGモチーフは、下線を付して太字で示す。
【0069】
また、CYP1D1のゲノム構造を調べるために,BLATプログラムにより、mfCYP1D1のcDNA配列をアカゲザル・ゲノムにマップしたところ、CYP1D1遺伝子のゲノム上の位置と方向がサルとヒトで保存されていることが確認され、CYP1D1遺伝子はサルとヒトでオーソロガスであることが分かった。結果を図23に示す。
【0070】
(Real−time RT−PCR)
以下の変更をした以外は実施例1と同様にして、各組織におけるCYP1D1のmRNAの発現量を、Real−time RT−PCRにより測定した。
プライマーとして、
mfCYP1A8 (5btj1) 5’- TCTCCGCTACCTTCCACTGC-3’(配列番号57)
および
mfCYP1A8 (3btj1) 5’- CAGCGTATTTGTTGTGGCATAC-3’(配列番号58)
を用い、プローブとして、
mfCYP1A8bhq1FW 5’-FAM-CGGGAGTTTTATCGGGCCCTGA-BHQ-3’(配列番号59)
を用いた。これらプライマーとプローブは、CYPの中では比較的相同性の高いCYP1A1とCYP1A2を増幅しないようなプライマーおよびプローブであり、プライマーは,エクソン境界部分を挟んで作製し,万が一ゲノムDNAがコンタミしていても結果に影響がないようにした。
CYP1A1のプライマーとして、
h&mfCYP1A1(5abi1) 5’-AAACCTTTGAGAAGGGCCACA-3’ (配列番号60)
h&mfCYP1A1(3abi1) 5’-TCATCCAGCTGCTTCTCCTGA-3’(配列番号61)
CYP1A2のプライマーとして、
h&mfCYP1A2(5abi1) 5’-AGAGGTTCAAGGCCTTCAACC-3’(配列番号62)
h&mfCYP1A2(3abi1) 5’-GAGGCTCCAGGAGATGGCT-3’(配列番号63)
プローブとして、CYP1A1においては、
h&mfCYP1A1mgb1FW 5’-FAM- CCGGGACATCACAGAC -MGB-3’(配列番号64)
CYP1A2においては、
h&mfCYP1A2mgb1FW 5’-FAM-TGCCCTGTTCAAGCA- MGB-3’(配列番号65)
を用いた。
プライマーセットとプローブの最終濃度は、それぞれ600nM、200nMとした。
結果を図24に示す。CYP1D1は、肝臓、腎臓、空腸で発現していることが確認できたが、肝臓で最も強く発現していた。肝臓では、カニクイザル肝臓で最も高く発現するCYP1分子種として知られているCYP1A1の発現量と同等であった。
【0071】
(Esherichia coliにおけるタンパク質の発現)
以下のようにした以外は、実施例1と同様にして、CYP1D1タンパク質を大腸菌で発現させた。
NdeI部位を後のPCR産物のサブクローニングにおいて用いるので、CYP1D1のcDNAの内部NdeI部位は、QuickChange XL II kit(Stratagen)を用いて、製造者の使用説明書に従って、アミノ酸残基を変更させることなく、変異させた。
小文字記載の塩基は変異される塩基を意味するが、用いたプライマーは以下のとおりである。
mfCYP1A8(QC)
5’-CACGTACAAGATCATCTTGCTACtTATGATAAGGATCATATCCGAG-3’(配列番号66)
mfCYP1A8(QC−R)
5’-CTCGGATATGATCCTTATCATAaGTAGCAAGATGATCTTGTACGTG-3’(配列番号67)
N−末端の修飾は以下のフォワードおよびリバースプライマーを用いてPCRにより実施した。
CYP1D1として、
mfCYP1A8(5exp1bov)
5’-GGAATTCCATATGGCTCTGTTATTAGCAGTTTTT-CCTGGAGAGGTGACCACTT-3’(配列番号68)
mfCY1A88(3exp1)
5’-GCTCTAGATTGCTAGTTAAGTAAATTCAAATCATC-3’(配列番号69)
を用い、
CYP1A1として、
mfCYP1A1(5exp2bov)
5’-GGAATTCCATATGGCTCTGTTATTAGCAGTTTTT-GCCACGGAGTTTCTTCTAGC-3’(配列番号70)
mfCYP1A1(3exp1)
5’- GCTCTAGA-CAGGGCTCTCAAGCACCTAA-3’(配列番号71)
CYP1A2として、
mfCYP1A2(5exp1bov)
5’-GGAATTCCATATGGCTCTGTTATTAGCAGTTTTT-TTCTCGGCCACAGAGCTTC-3’(配列番号772)
mfCYP1A2(3exp1)
5’-GCTCTAGA-TGGTGTCTTCTTCACTTGATGG-3’(配列番号73)
を用いた。フォワードプライマーと、リバースプライマーそれぞれで下線を付したNdeI部位とXbaI部位は、PCR産物をヒトNADPH−P450レダクターゼのcDNAを含むpCWにサブクローニングするために用いた。
次いで、細胞膜画分を調製、CYPタンパク質の定量、NAPDH−CYP レダクターゼの濃度を実施例1と同様にして測定した。
【0072】
(薬物の代謝活性)
Yamazakiらの方法(Yamazaki, H. et al., Biochem Pharmacol (2002) 56:243-251)に従って、カニクイザルCYP1D1などのCYPタンパク質またはカニクイザルの肝ミクロソーム(BD−GENTEST)を用いて、EROD(7−エトキシレゾルフィン O−デエチラーゼ、7−エトキシレゾルフィンはSigma−Aldrichから購入したものを用いた。)の代謝活性を解析した。
100mM リン酸カリウムバッファー(pH 7.4)中で、CYPタンパク質または肝ミクロソーム、NADPH産生系(0.25mM NADP+、2.5mM グルコース−6−リン酸、0.25 unit/mL グルコース−6−リン酸でヒドロゲナーゼ)、および基質であるEROD(10 μM)で、37℃10分間反応を行い、0.50mLのメタノールを加えて反応を終了させた。900gで5分間遠心分離した後、上澄液をHPLCにより分析した。
結果を表7に示す。なお、代謝活性反応において、発現させたCYPタンパク質(表中、CYP1ファミリーとして記載)は20pmol/mL、肝ミクロソーム(表中、Liverとして記載。)は0.1mg/mL用いた。それぞれ、表23における単位は、CYPタンパク質では、nmol/min/nmolであり、肝ミクロソームでは、nmol/min/mgであった。
【0073】
【表7】

【0074】
表7の結果から、カニクイザルのCYP1D1は、機能タンパク質として発現していると考えられた。
【0075】
(ウェスタンブロッティング解析)
実施例1と同様にして、CYP1D1に対するポリクローナル抗体は、特異的なアミノ酸配列を用いて作製した(Thermo Fisher Scientific)。
C−末端のシステインのチオール基にKeyhole Limpet Hemocyaninを結合させた、合成ぺプチド
NH2-SKGRKQLSPPGPWS-COOH(配列番号74)
を用いて、New Zealand White Rabbitを免疫して、CYP1D1抗体を得た。
カニクイザルのmfCYP1A1、mfCYP1A2、mfCYP1D1の大腸菌で発現させたCYPタンパク質1.0pmolとカニクイザルの肝ミクロソーム15μgを、10%SDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、Hybond−P filter(GE Healthcare)上に移行した。このフィルターを用いて、ウサギ抗CYP1D1抗体(1:1000)、及びホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヒツジ抗ウサギIgG抗体(Surmodics)を用いたイムノブロッティングを行った。
ローディングコントロールとしてのProtein disulfide isomerase(PDI)は、ウサギ抗PDI抗体(1:200、SantaCruz Biotechnology)を用いて検出した。
製造者の使用説明書に従って、特定のバンドを、ECL Western Blotting detection reagent(Amersham Biosciences)により可視化した。結果を図25に示す。
【0076】
以上のように、ヒトでは偽遺伝子となり機能を失ったCYP1D1がサルでは肝臓で発現し代謝機能を有していることから、サルのCYP1D1は、基質代謝におけるサルとヒトの種差の原因となりうる代謝酵素である。また、CYP1D1は、サルにおいて、CYP1ファミリーの中では,肝臓でCYP1A1と同程度高く発現しているので、CYP1ファミリーが関与する基質の代謝への寄与が大きい可能性があり、そのような基質の代謝における種差の原因ともなりうる代謝酵素である。さらに、アカゲザルやカニクイザルでは、ヒトCYP1D1P遺伝子で見られたエクソン2の3つのナンセンス変異とエクソン7の2つのナンセンス変異は確認されなかった(データ示さず)。
【0077】
実施例3:CYP2G2
(RNAの抽出)
実施例1と同様にして、4−5歳齢の3−5kgのカニクイザルのオス、メス3個体の組織サンプル(脳、肺、心臓、肝臓、腎臓、副腎、空腸、精巣、卵巣、子宮、および鼻粘膜)由来のRNAをそれぞれ抽出した。
(ゲノムDNAの抽出)
実施例1と同様にして、血液サンプルから、ゲノムDNAを調製した。
【0078】
(cDNAのクローニング)
RT−PCRを、以下に記載の条件に変更した以外は、実施例1と同様にして、カニクイザルから抽出された鼻粘膜由来の全RNAを用いて行った。
プライマーとしては、
mmCYP2G2 (5rt1) 5’- GACCTGGCACCATGGAGaT-3’(配列番号75)
および
mmCYP2G2 (3rt1) 5’-CCTGAACAcGAGAGGAGAGC-3’(配列番号76)
を用いた。これらプライマーは、アカゲザルゲノムにおいてCYP2G2配列をコードしていると考えられる遺伝子配列から推測したコード領域に対応するcDNAをRT−PCRで増幅するために設計したものである。
増幅されたcDNAは、Aを付加した後、TAPO TA Clonong Kit(Invitrogen)を用いて、pCR2.1ベクターにクローニングし、塩基配列を決定した。得られたcDNA配列をmfCYP2G2とした。
【0079】
なお、5’RACEを行い、翻訳開始点が正しいことを確認した。
5’RACEは、以下のプライマーを用い、上記CYP1D1と同様にして行った。
mfCYP2G2(3gsp1) 5’-TGACCTTGGAAGTTTC-3’(for RT reaction、配列番号77)
mfCYP2G2(3gsp2) 5’-ACTGAACTCATCCGCTTGGTCT-3’(for the initial PCR、配列番号78)
mfCYP2G2(3gsp3) 5’-CACAGGGCCGTATTTCTCC-3’(for the nested PCR、配列番号79)
【0080】
カニクイザルCYP2G2は、494アミノ酸残基のORFを有していた。ORF配列から、推測されるアミノ酸配列には、6つの基質認識部位(Gotoh (1992)、J.Biol. Chem. Vol.267, p.83-90)、およびヘム結合部位が存在した。mfCYP2G2のORFのアミノ酸配列は、図5および図26に示す。
【0081】
(配列解析)
得られた塩基配列データを実施例1と同様にして解析した。
マルチプル・アラインメントの結果を図26に、分子進化系統樹を図27に示す。
また、カニクイザルCYP2G2と他のCYPとの、相同性解析結果を表8に示す。
【0082】
【表8】

【0083】
カニクイザルCYP2G2のcDNAから推測されるアミノ酸配列は、ヒトのCYP2G2P(偽遺伝子である。)と、93%の相同性を示す。なお、CYP2G2Pは、ヒトゲノム上に見出されるCYP2G2P遺伝子配列から推測されるコード領域のアミノ酸配列で中途終止コドンを除いたものである。
【0084】
BLATプログラムを用い、アカゲザルゲノムとmfCYP2G2のcDNA配列とから、CYP2G2のエクソン−イントロン構造を分析した。結果を表9に示す。
【0085】
【表9】

【0086】
CYP2G2遺伝子は、9つのエクソンを有していた。エクソンおよびイントロンは、それぞれ大文字と小文字で示した。高度に保存されたGU−AGモチーフは、下線を付して太字で示す。
【0087】
(エクソンの増幅)
ヒトCYP2G2ゲノムにおいて、推測されるコード領域のエクソン1とエクソン3に中途終止コドンがあることから、サルにも同様の中途終止コドンが存在するのか調べるためにCYP2G2のエクソン1およびエクソン3を増幅して、シークエンスした。
テンプレートとしてアカゲザルまたはカニクイザルのゲノムDNAを用い、1ユニットのAmpliTaq Gold(Applied Biosynthesis)、0.2mMのdNTPs、2mMのMgCl、10pmolの遺伝子特異的プライマーの総量を20μLとして、PCRを行った。
PCRの反応条件は、初期変性反応を94℃10分間行い、94℃15秒、58℃30秒、72℃2分間の35サイクルで行った。最終伸長反応を72℃5分間行った。該遺伝子特異的プライマーとしては、エクソン1として、
mmCYP2G2−ex1 (5flk1a)
5’-GCTGAGGCATAAGAATCACC-3’(配列番号80)
および
mmCYP2G2−ex2 (3int2b)
5’-CAGGCATACAACACTACGCT-3’(配列番号81)
を用い、エクソン3として、
mmCYP2G2−ex3 (5int2a)
5’-CATCCCTCCACCTTCCTATG-3’(配列番号82)
および
mmCYP2G2−ex3 (3int3a)
5’-ACTTTTAATATGGAAGCTGGCC-3’(配列番号83)
を用いた。
次いで、PCR産物を、以下のシーケンスプライマーを用いて直接シーケンスした(ダイレクト・シーケンス法)。
mmCYP2G2−ex1(5flk1b) 5’-CTCCAATGACATTCAAACCC-3’ (for exon 1、配列番号84)
mmCYP2G2−ex3(5int2b) 5’-GATCCTGGAGAGAGGGAACC-3’ (for exon 3、配列番号85)
結果を表10及び図28に示す。
【0088】
【表10】

【0089】
(Real−time RT−PCR)
以下の変更をした以外は実施例1と同様にして、各組織におけるCYP2G2のmRNAの発現量を、Real−time RT−PCRにより測定した。
プライマーとして、
mfCYP2G2 (5btj1) 5’- CAGTATTTGCCAGGAAGACACAA-3’(配列番号86)
および
mfCYP2G2 (3btj1) 5’- GAGGACCAAGTTCTTGAGGTTGA-3’(配列番号87)
を用い、プローブとして、
mfCYP2G2bhq1FW
5’-FAM- CCCAAAACCCTCGGGACTTCATTG-BHQ-3’(配列番号88)
を用いた。
プライマーセットとプローブの最終濃度は、それぞれ600nM、200nMとした。
結果を図29に示す。CYP2G2は、鼻粘膜で強く発現していることが確認できたが、肝臓では発現していなかった。
【0090】
(Esherichia coliにおけるヘテロタンパク質の発現)
以下のようにした以外は、実施例1と同様にして、CYP2G2タンパク質を大腸菌で発現させた。N−末端の修飾は以下のフォワードおよびリバースプライマーを用いてPCRにより実施した。
mfCYP2G2 (5exp1bov)
5’-GGAATTCCATATGGCTCTGTTATTAGCAGTTTTTATCTTTCTGGCACTCTGCTTGTC-3’(配列番号89)
および
mfCYP2G2 (3exp1) 5’-GCTCTAGAGCTCAGCGGGCCACGA-3’(配列番号90)
次いで、細胞膜画分を調製、CYPタンパク質の定量、NAPDH−CYP レダクターゼの濃度を実施例1と同様にして測定した。
CYP2A23、CYP2A24、CYP2A26のPCRで用いたプライマーは以下のとおりである。
CYP2A23/CYP2A24では、以下の共通のプライマーを用いた。
FW 5’-GGAATTCCATATGGCTCTGTTATTAGCAGTTTTTGTGGCCTTGCTGGCCTG-3’(配列番号91)
RV 5’-GCTCTAGACTCAGCGGGGCAGGAAGC-3’(配列番号92)
CYP2A26では、以下のプライマーを用いた。
FW 5'-GGAATTCCATATGGCTCTGTTATTAGCAGTTTTTCTCTGTCTCTCCTTTGTGC-3'(配列番号93)
RV 5'-GCTCTAGACAGATGGGCTAGCATTCTTCA-3'(配列番号94)
【0091】
(薬物の代謝活性)
Yamazakiらの方法(Yamazaki, H. et al., Biochem Pharmacol (2002) 56:243-251)に従って、CYP2G2を用いて、クマリンの代謝活性を解析した。結果を表11に示す。
【0092】
【表11】

【0093】
表11の結果から、アカゲザルのCYP2G2は、機能タンパク質として発現していると考えられた。
【0094】
(ウェスタンブロッティング解析)
実施例1と同様にして、CYP2G2に対するポリクローナル抗体は、特異的なアミノ酸配列を用いて作製した(Thermo Fisher Scientific)。
C−末端のシステインのチオール基にKeyhole Limpet Hemocyaninを結合させた、合成ぺプチド
NH2-YPQHFLDEQGRFKK-COOH(配列番号95)
を用いて、New Zealand White Rabbitを免疫して、CYP2G2抗体を得た。
カニクイザルの鼻粘膜ミクロソームは、Dingらの方法(Ding, X. et al., Mol Pharmacol 37:489-496.)により作製した。
カニクイザルmfCYP2G2、mfCYP2A23、mfCYP2A24、mfCYP2A26の組換タンパク質1.0pmolとカニクイゲザルの鼻粘膜ミクロソーム(15μg、50μgまたは100μg)を、10%SDSポリアクリルアミドゲルで電気泳動し、Hybond−P filter(Amersham Biosciences)上に移行した。このフィルターを用いて、ウサギ抗CYP2G2抗体(1:1000)、及びホースラディッシュペルオキシダーゼにコンジュゲートされたヒツジ抗ウサギIgG抗体(Surmodics)を用いたイムノブロッティングを行った。
製造者の使用説明書に従って、特定のバンドを、ECL Western Blotting detection reagent(Amersham Biosciences)により可視化した。結果を図30に示す。
【0095】
以上のように、CYP2G2は、鼻粘膜で高発現している鼻粘膜でメジャーな分子種なので,鼻粘膜でCYP2AやCYP2Gが関与する薬物代謝への寄与が大きく、また、ヌルアレルが見つかったことから個体差の原因となり得、また、その代謝におけるヒトとの種差の原因となり得る。
【配列表フリーテキスト】
【0096】
配列番号1 アカゲザルのCYP2C93のアミノ酸配列を示す。
配列番号2 カニクイザルのCYP2C93のアミノ酸配列を示す。
配列番号3 アカゲザルのCYP1D1のアミノ酸配列を示す。
配列番号4 カニクイザルのCYP1D1のアミノ酸配列を示す。
配列番号5 カニクイザルのCYP2G2のアミノ酸配列を示す。
配列番号6 アカゲザルのCYP2C93のcDNAの塩基配列を示す。
配列番号7 カニクイザルのCYP2C93のcDNAの塩基配列を示す。
配列番号8 アカゲザルのCYP1D1のcDNAの塩基配列を示す。
配列番号9 カニクイザルのCYP1D1のcDNAの塩基配列を示す。
配列番号10 カニクイザルのCYP2G2のcDNAの塩基配列を示す。
配列番号11 カニクイザルのCYP2C93 SV1の塩基配列を示す。
配列番号12 カニクイザルのCYP2C93 SV2の塩基配列を示す。
配列番号13 アカゲザル上に見出したCYP2C様配列をもとにデザインした5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号14 アカゲザル上に見出したCYP2C様配列をもとにデザインした3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号15 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号16 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号17 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号18 転写解析において用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号19 転写解析において用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号20 カニクイザルのCYP2C93の5’末端解析用のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号21 カニクイザルのCYP2C93の5’末端解析用のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号22 カニクイザルのCYP2C93の3’末端解析用のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号23 カニクイザルのCYP2C93の3’末端解析用のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号24 カニクイザルのCYP2C8の5’末端解析用のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号25 カニクイザルのCYP2C8の5’末端解析用のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号26 カニクイザルのCYP2C8の3’末端解析用のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号27 カニクイザルのCYP2C8の3’末端解析用のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号28 カニクイザルのCYP2C76の5’末端解析用のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号29 カニクイザルのCYP2C76の5’末端解析用のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号30 カニクイザルのCYP2C76の3’末端解析用のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号31 カニクイザルのCYP2C76の3’末端解析用のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号32 エクソンの増幅時に用いたエクソン1のプライマーの塩基配列を示す。
配列番号33 エクソンの増幅時に用いたエクソン1のプライマーの塩基配列を示す。
配列番号34 エクソンの増幅時に用いたエクソン2/3のプライマーの塩基配列を示す。
配列番号35 エクソンの増幅時に用いたエクソン2/3のプライマーの塩基配列を示す。
配列番号36 エクソンの増幅時に用いたエクソン6のプライマーの塩基配列を示す。
配列番号37 エクソンの増幅時に用いたエクソン6のプライマーの塩基配列を示す。
配列番号38 Real−time RT−PCRにおけるCYP1D1の5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号39 Real−time RT−PCRにおけるCYP1D1の3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号40 Real−time RT−PCRにおけるプローブの塩基配列を示す。
配列番号41 c.102にTを挿入する際に用いた、プライマーの塩基配列を示す。
配列番号42 c.102にTを挿入する際に用いた、プライマーの塩基配列を示す。
配列番号43 CYP2A93のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号44 CYP2A93のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号45 C−末端のシステインのチオール基にKeyhole Limpet Hemocyaninを結合させた、合成ぺプチドのペプチド部分のアミノ酸配列を示す。
配列番号46 IVS2−1G>T変異を導入するために用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号47 IVS2−1G>T変異を導入するために用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号48 β−アクチンのプライマーの塩基配列を示す。
配列番号49 β−アクチンのプライマーの塩基配列を示す。
配列番号50 c.102T>delの遺伝子型を決定するために用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号51 c.102T>delの遺伝子型を決定するために用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号52 アカゲザル遺伝子データのコンピュータ分析により予期されたCYP様ORF候補配列からデザインした5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号53 アカゲザル遺伝子データのコンピュータ分析により予期されたCYP様ORF候補配列からデザインした3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号54 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号55 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号56 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号57 Real−time RT−PCRにおけるCYP1D1の5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号58 Real−time RT−PCRにおけるCYP1D1の3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号59 Real−time RT−PCRにおけるプローブの塩基配列を示す。
配列番号60 Real−time RT−PCRにおけるCYP1A1の5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号61 Real−time RT−PCRにおけるCYP1A1の3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号62 Real−time RT−PCRにおけるCYP1A2の5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号63 Real−time RT−PCRにおけるCYP1A2の3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号64 Real−time RT−PCRにおけるCYP1A1のプローブの塩基配列を示す。
配列番号65 Real−time RT−PCRにおけるCYP1A2のプローブの塩基配列を示す。
配列番号66 大腸菌に発現させる際に、CYP1D1のNde1部位を変異させるために用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号67 大腸菌に発現させる際に、CYP1D1のNde1部位を変異させるために用いたプライマーの塩基配列を示す。
配列番号68 CYP1D1のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号69 CYP1D1のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号70 CYP1A1のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号71 CYP1A1のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号72 CYP1A2のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号73 CYP1A2のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号74 C−末端のシステインのチオール基にKeyhole Limpet Hemocyaninを結合させた、合成ぺプチドのペプチド部分のアミノ酸配列を示す。
配列番号75 アカゲザルゲノムにおいてCYP2G2配列をコードしていると考えられる遺伝子配列から推測したコード領域に対応するcDNAをRT−PCRで増幅するために設計した5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号76 アカゲザルゲノムにおいてCYP2G2配列をコードしていると考えられる遺伝子配列から推測したコード領域に対応するcDNAをRT−PCRで増幅するために設計した3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号77 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号78 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号79 5’RACEおけるプライマーの塩基配列を示す。
配列番号80 エクソン1の増幅に用いた5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号81 エクソン1の増幅に用いた3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号82 エクソン3の増幅に用いた5’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号83 エクソン3の増幅に用いた3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号84 ダイレクトシークエンス法において用いた、エクソン1のシークエンスプライマーの塩基配列を示す。
配列番号85 ダイレクトシークエンス法において用いた、エクソン3のシークエンスプライマーの塩基配列を示す。
配列番号86 Real−time RT−PCRにおけるCYP2G2の3’末端プライマーの塩基配列を示す。
配列番号87 Real−time RT−PCRにおけるCYP2G2のプローブの塩基配列を示す。
配列番号88 Real−time RT−PCRにおけるCYP2G2のプローブの塩基配列を示す。
配列番号89 CYP2G2のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号90 CYP2G2のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号91 CYP2A23/CYP2A24のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号92 CYP2A23/CYP2A24のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号93 CYP2A26のFプライマーの塩基配列を示す。
配列番号94 CYP2A26のRプライマーの塩基配列を示す。
配列番号95 C−末端のシステインのチオール基にKeyhole Limpet Hemocyaninを結合させた、合成ぺプチドのペプチド部分のアミノ酸配列を示す。
配列番号96 カニクイザルのTを挿入したCYP2C93 SV2の塩基配列を示す。
配列番号97 カニクイザルのT欠損のSV1とSV2のアミノ酸配列を示す。
配列番号98 カニクイザルのTを挿入したCYP2C93のSV2のアミノ酸配列を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(a)または(b)のタンパク質。
(a)配列番号:1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、および配列番号5からなる群から選択されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が置換、欠失、付加および/または挿入されたアミノ酸配列からなり、薬物代謝酵素であるタンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載のタンパク質をコードする遺伝子。
【請求項3】
請求項2に記載の遺伝子を含む組換えベクター。
【請求項4】
請求項3に記載の組換えベクターを含む形質転換体。
【請求項5】
請求項1に記載のタンパク質に対する抗体。
【請求項6】
請求項1に記載のタンパク質と被検物質とを接触させる工程を含む、
前記被検物質の代謝に対する、前記タンパク質の関与の有無を測定する方法。
【請求項7】
サルをモデル動物として、被検物質の薬効、代謝および/または安全性を試験する工程、
請求項1に記載のタンパク質と被検物質とを接触させて、前記タンパク質の関与の有無を測定する工程、
を含む、前記被検物質のサルまたはヒトにおける薬効、代謝および/または安全性を予測する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−55274(P2012−55274A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203775(P2010−203775)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成22年6月18日 国際霊長類学会 第23回大会京都2010のホームページ(http://www.ips2010.jp/)に掲載された発表番号087「カニクイザルのチトクロームP450Sの同定と分析」にて発表 平成22年8月26日 第150回 日本獣医学会学術集会のホームページ(http://tech.obihiro.ac.jp/%7Ejsvs150/)に掲載されたJ.日本比較薬理学毒性学会 一般演題J−5「カニクイザルCYP2G2の同定・解析」にて発表
【出願人】(393030626)株式会社新日本科学 (5)
【Fターム(参考)】