シューズのソール構造体
【課題】 スムーズな走行感を得ることができるソール構造体を提供する。
【解決手段】 上部ソール部材2と、その下方に配置され、上部ソール部材2よりも剛性の低い下部ソール部材3とからソール構造体1を構成する。上下部ソール部材2,3間の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aを、踵部において、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第1の円弧面から形成する。境界面上における第1の円弧面の開始点Hsを、踵部の後端から0.28L(L:ソール全長)の距離に配置し、第1の円弧面の曲率半径を200mmにする。つま先部における境界面を、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第2の円弧面から形成する。境界面上における第2の円弧面の開始点Tsを、踵部の後端から0.58Lの距離に配置し、第2の円弧面の曲率半径を300mmとする。
【解決手段】 上部ソール部材2と、その下方に配置され、上部ソール部材2よりも剛性の低い下部ソール部材3とからソール構造体1を構成する。上下部ソール部材2,3間の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aを、踵部において、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第1の円弧面から形成する。境界面上における第1の円弧面の開始点Hsを、踵部の後端から0.28L(L:ソール全長)の距離に配置し、第1の円弧面の曲率半径を200mmにする。つま先部における境界面を、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第2の円弧面から形成する。境界面上における第2の円弧面の開始点Tsを、踵部の後端から0.58Lの距離に配置し、第2の円弧面の曲率半径を300mmとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズのソール構造体に関し、詳細には、走行中にスムーズな走行感を得るようにするための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
実用新案登録第3041007号公報には、靴底の底面(ソール面)が複数の平坦面から形成されたものが示されている。この場合には、シューズ着用者が踵から着地して蹴り出しに移行していく際に、シューズ着用者の体重移動にともなって、接地面と接触するソール面が段階的に前方側に移行していくので、一応の歩行感を得ることは可能であると考えられる。
【0003】
しかしながら、上記公報に示すものは、ソール面が複数の平坦面を不連続に連結することにより構成されており、このため、上記公報記載のソール構造は、とくにランニングなどの一定速度以上の走行には適しておらず、走行時にスムーズな走行感を得ることはできない。また、静止時に接地面と接触するソール面が前後方向へのわずかな体重移動で変化するので、非常に不安定である。
【特許文献1】実用新案登録第3041007号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、走行中にスムーズな走行感を得ることができるソール構造体を提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明に係る発明者らは、実際の走行中の足の動きを詳細に分析することから始めた。まず、多数のテスター(試験者)に実際に走行してもらい、走行中の足の動きを0.004秒毎に高速度カメラで側面から撮影した。そして、図2に示すように、テスターの足Fのソール(足裏)Sが接地面Gとなす角度θを測定した。このとき、踵接地の状態(同図(a))から足裏全面接地の状態(同図(b))に移行する際の角度θを符号+で、足裏全面接地の状態から離地前の状態(同図(c))に移行する際の角度θを符号−で表した。
【0006】
図3Aおよび図3Bは、平均的な男性ランナーであるテスターAと、同様に平均的な女性ランナーであるテスターBについて、それぞれの測定結果をまとめたものである。これらの図において、左欄における「ソール全長に対する接地部の比率(%)」とは、ソール接地部の踵後端からの距離を、ソール全長を100(%)としたときのソール全長に対する比率で表したものである。したがって、比率10(%)とは、ソール全長を100としたとき、ソール接地部が踵後端から距離10の位置にあることを意味している。また、図4は、図3Aおよび図3Bのデータをグラフにまとめたものである。
【0007】
ここで、本願発明に係る発明者らは、走行中のとくに踵接地時と離地時に着目することにしたため、ソールが接地面となす角度θが±2°の範囲においては、ソールが接地面と略平行に配置されていると近似して、ソール全面が接地面と接触しているとみなすことにした。
【0008】
そして、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作の際の各ソール接地部の位置に、表3A中の数値に基づいて接地面と角度θをなす直線を引き、こうして得られた複数の直線からなる折れ線を近似する曲線(たとえば折れ線の包絡線)を求めることにした。このようにして求められた曲線を底面に有するようなソールは、実際の走行時における接地動作の際の足の動きに非常によく適合するとともに、シューズ着用者が体重移動を滑らかに行うことができ、これにより、スムーズな走行感を得ることができるようになると推測される。
【0009】
このような解析結果に基づいてなされたのが、本願の請求項1、4ないし7の発明である。
請求項1の発明に係るシューズのソール構造体は、当該ソール構造体の上側に配置されかつ当該ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、当該ソール構造体の踵部において当該ソール構造体の下側に配置され、上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備えている。上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面は、ソール構造体の踵部において、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有している。境界面上における第1の円弧面の開始点は、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されており、第1の円弧面の曲率半径が100〜500mmである。
【0010】
請求項4の発明では、第1の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.22L〜0.34Lの範囲の距離に配置されている。
【0011】
請求項5の発明では、第1の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.28Lの範囲の距離に配置されている。
【0012】
請求項6の発明では、第1の円弧面の曲率半径が150〜300mmである。
【0013】
請求項7の発明では、第1の円弧面の曲率半径が200mmである。
【0014】
上述した解析結果によれば、実際の走行試験に基づいて得られた曲線を用いてソール底面を形成するのが好ましいが、本願発明では、このような曲線で直接ソール底面を形成するのではなく、当該曲線で上部ソール部材の下面を形成するとともに、この下面に接触する上面を有しかつ上部ソール部材よりも低剛性の下部ソール部材を上部ソール部材の下方に配置する構成とした。すなわち、上下部ソール部材の境界面を上記曲線で構成するようにした。
【0015】
本願発明によれば、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材が接地面と接地するので、下部ソール部材の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。また、上部ソール部材の境界面の下部に下部ソール部材が設けられることにより、静止状態を安定して維持できる。
【0016】
この場合において、ソール構造体の踵部において上下部ソール部材間の境界面を形成する第1の円弧面の曲率半径は、請求項1の発明では、100〜500mmである。
【0017】
これは、上述した走行試験による実測値から求められた円弧面の曲率半径の範囲(150〜300mm)を包含するものである。ここで、曲率半径の下限を100mmとしたのは、曲率半径が100mmよりも小さいと、全体のソール厚が厚くなりすぎて、接地感が阻害されるとともに、重量が増大するからである。また、曲率半径の上限を500mmとしたのは、曲率半径が500mmよりも大きいと、境界面が平坦面に近くなって、境界面を円弧面とすることによる効果が得られなくなるからある。
【0018】
第1の円弧面の曲率半径は、好ましくは、請求項6の発明に記載されているように、実測値から求められた150〜300mmであり、より好ましくは、請求項7の発明に記載されているように、これらの平均値であるところの200mmである。
【0019】
また、第1の円弧面の境界面上における開始点は、請求項1の発明では、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されている。
【0020】
上述した走行試験においては、図3Aに示すように、テスターAについては、ソールと接地面のなす角度θが2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.22L(L:ソール全長)の位置にあり、同様に、テスターBについては、ソールと接地面のなす角度θが2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.34Lの位置にある。
【0021】
請求項1の発明では、実測値のばらつき(標準偏差)を考慮して、上記値に±0.05Lのマージンを設けることにより、第1の円弧面の境界面上における開始点の位置を、0.17L〜0.39Lに規定したものである。
【0022】
第1の円弧面の境界面上における開始点は、好ましくは、請求項4の発明に記載されているように、実測値から求められた0.22L〜0.34Lの範囲にあり、より好ましくは、請求項5の発明に記載されているように、これらの平均値である0.28Lである。
【0023】
次に、上述した接地動作の場合と同様にして、ソール全面接地の状態から離地までの離地動作の際の各ソール接地部の位置に、表3B中の数値に基づいて接地面と角度θをなす直線を引き、こうして得られた複数の直線からなる折れ線を近似する曲線(たとえば折れ線の包絡線)を求めることにした。このようにして求められた曲線を底面に有するようなソールは、実際の走行時における離地動作の際の足の動きに非常によく適合し、これにより、スムーズな走行感を得ることができるようになると推測される。
【0024】
このような解析結果に基づいてなされたのが、本願の請求項2、8ないし10の発明である。
請求項2の発明に係るシューズのソール構造体は、当該ソール構造体の上側に配置されかつ当該ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、当該ソール構造体のつま先部において当該ソール構造体の下側に配置され、上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備えている。上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面は、ソール構造体のつま先部において、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有している。境界面上における第2の円弧面の開始点は、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されており、第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである。
【0025】
請求項8の発明では、第2の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.55L〜0.61Lの範囲の距離に配置されている。
【0026】
請求項9の発明では、第2の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.58Lの範囲の距離に配置されている。
【0027】
請求項10の発明では、第2の円弧面の曲率半径が300mmである。
【0028】
上述した解析結果によれば、この場合においても、実際の走行試験に基づいて得られた曲線を用いてソール底面を形成するのが好ましいが、本願発明では、このような曲線で直接ソール底面を形成するのではなく、当該曲線で上部ソール部材の下面を形成するとともに、この下面に接触する上面を有しかつ上部ソール部材よりも低剛性の下部ソール部材を上部ソール部材の下方に配置する構成とした。すなわち、上下部ソール部材の境界面を上記曲線で構成するようにした。
【0029】
本願発明によれば、離地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材が接地面と接地するので、下部ソール部材の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面の形状が維持され、これにより、ソール全面接地の状態から離地時までの離地動作および蹴り出し動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0030】
この場合において、ソール構造体のつま先部において上下部ソール部材間の境界面を形成する第2の円弧面の曲率半径は、請求項2の発明では、200〜400mmである。
【0031】
上述した走行試験による実測値から求められた円弧面の曲率半径は約150mmであるが、実際のシューズにこれを適用すると、ソール厚が厚くなりすぎて、接地感が阻害されるとともに、重量が増大するため、第2の円弧面の曲率半径の下限は、このような問題が生じない限界値を採用して、200mmとした。また、曲率半径の上限を400mmとしたのは、曲率半径が400mmよりも大きいと、境界面が平坦面に近くなって、境界面を円弧面とすることによる効果が得られなくなるからある。
【0032】
第2の円弧面の曲率半径は、好ましくは、請求項10の発明に記載されているように、200〜400mmの平均値であるところの300mmである。
【0033】
また、第2の円弧面の境界面上における開始点は、請求項2の発明では、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されている。
【0034】
上述した走行試験においては、図3Bに示すように、テスターAについては、ソールと接地面のなす角度θが−2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.61L(L:ソール全長)の位置にあり、同様に、テスターBについては、ソールと接地面のなす角度θが−2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.55Lの位置にある。
【0035】
請求項2の発明では、実測値のばらつき(標準偏差)を考慮して、上記値に±0.05Lのマージンを設けることにより、第2の円弧面の境界面上における開始点の位置を、0.5L〜0.66Lに規定したものである。
【0036】
第2の円弧面の境界面上における開始点は、好ましくは、請求項8の発明に記載されているように、実測値から求められた0.55L〜0.61Lの範囲にあり、より好ましくは、請求項9の発明に記載されているように、これらの平均値である0.58Lである。
【0037】
請求項3の発明は、請求項1および2の各発明を組み合わせたものであり、上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面が、ソール構造体の踵部においては、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有しており、ソール構造体のつま先部においては、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有している。境界面上における第1の円弧面の開始点は、踵部後端から0.17L〜0.39L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置されており、第1の円弧面の曲率半径は100〜500mmであり、境界面上における第2の円弧面の開始点は、踵部後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されており、第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである。
【0038】
次に、請求項11の発明では、上部ソール部材および下部ソール部材が軟質弾性部材から構成されており、上部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで50C〜80Cであり、下部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで30C〜60Cであって、両部材の硬度差が少なくとも10Cである。
【0039】
ここで、上部ソール部材の硬度の上限を80Cとしたのは、硬度が80Cよりも高いと、ソール部材として硬くなりすぎてクッション性および足当たり感が阻害されるからである。下部ソール部材の下限を30Cとしたのは、硬度が30Cよりも低いと、物性として弱く、耐久性が得られなくなるからである。また、上下部ソール部材の硬度差を少なくとも10Cとしたのは、10Cよりも小さいと、体重移動の際に下部ソール部の圧縮変形を上部ソール部に比べて相対的に大きくすることができず、その結果、上述した第1(および第2)の円弧面の形成によるスムーズな走行感が得られなくなるためである。
【0040】
請求項12の発明に記載されているように、上部ソール部材の硬度は、好ましくは、ショアのCスケールで55C〜65Cであり、下部ソール部材の硬度は、好ましくは、ショアのCスケールで40C〜50Cである。
【0041】
請求項13の発明では、上下部ソール部材の間には、これらの境界面に沿って延びるプレートが配設されており、プレートの硬度がショアのDスケールで40D〜95Dである。
【0042】
このように、上下部ソール部材間にプレートを挟み込むことで、上部ソール部材の下側の剛性が増大するので、下部ソール部材が圧縮変形した後には、円弧面をしっかりと維持することができ、スムーズな走り心地を実現できる。
【0043】
ここで、プレートの硬度の下限を40Dとしたのは、硬度が40Dよりも低いと、走行中においてプレートによる境界面の保形性を確保できなくなるためである。また、硬度が95Dよりも高くなると、プレートが硬くなりすぎて、ソールとしてのクッション性を阻害するためである。
【0044】
請求項14ないし16の発明では、上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、波形状面のソール前後方向の中心線が前記第1の円弧面(請求項14の場合)、第2の円弧面(請求項15の場合)、第1および第2の円弧面(請求項16の場合)に沿って延びている。
【0045】
この場合には、波形状面が前記第1または(および)第2の円弧面の延設方向に延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、上下部ソール部材の合わせ面を波形状面とすることで、上下部ソール部材の圧縮変形を抑制して、上下部ソール部材の横ずれ変形を防止でき、これにより、走行安定性を向上できる。
【0046】
請求項17の発明では、上下部ソール部材の間に、前記波形状面に沿う波形状を有する波形プレートが配設されている。
【0047】
この場合には、波形プレートが前記第1の円弧面の延設方向に延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、波形プレートの挿入によって上下部ソール部材の圧縮変形をさらに抑制して、上下部ソール部材の横ずれ変形を一層防止でき、これにより、走行安定性をさらに向上できる。
【0048】
請求項18の発明では、上部ソール部材が、ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、上部プレートとの間で波形プレートを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材の下面を形成する下部プレートとから構成されている。また、下部ソール部材が、下部プレートの下面に設けられた軟質弾性部材から構成されている。
【0049】
この場合には、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材が接地面と接地するので、下部ソール部材の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面(つまり下部プレートの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0050】
しかも、この場合には、上部ソール部材が、上部プレート、波形プレートおよび下部プレートから構成されることになり、軟質弾性部材を含まないので、構造を簡略化でき、コストを低減できるとともに、全体の重量を低減できる。また、長時間の使用後には、へたりによりクッション性が低下する軟質弾性部材を上部ソール部材が含まないことで、クッション性の持続性を向上できる。
【0051】
請求項19の発明では、上部ソール部材が、ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、上部プレートとの間で波形プレートを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されている。また、下部ソール部材が、下部プレートの下面に設けられた第2の下部プレートから構成されている。
【0052】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレートが接地面と接地するので、第2の下部プレートの圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面(つまり下部プレートの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0053】
しかも、この場合には、上部ソール部材のみならず下部ソール部材もプレートから構成されることになり、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、構造をさらに簡略化でき、コストをさらに低減できるとともに、全体の重量を一層低減できる。また、長時間の使用後には、へたりによりクッション性が低下する軟質弾性部材を全く含まないことで、クッション性の持続性を一層向上できる。
【0054】
請求項20の発明では、上部ソール部材が、ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、上部プレートとの間で波形プレートを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されている。下部ソール部材は、下部プレートの下面に設けられた波状の第2の下部プレートから構成されている。
【0055】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレートが接地面と接地するので、第2の下部プレートの圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面(つまり下部プレートの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0056】
また、請求項19の発明と同様に、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、構造をさらに簡略化して、コストをさらに低減でき、全体の重量を一層低減できるとともに、クッション性の持続性を一層向上できる。
【発明の効果】
【0057】
以上のように本発明によれば、上部ソール部材と、その下方に配置され、上部ソール部材よりも剛性の低い下部ソール部材とを設け、上下部ソール部材間の踵部における境界面を、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面から形成するとともに、境界面上における第1の円弧面の開始点を、踵部の後端から0.17L〜0.39L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置し、第1の円弧面の曲率半径を100〜500mmとしたので、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0058】
また、本発明によれば、上部ソール部材と、その下方に配置され、上部ソール部材よりも剛性の低い下部ソール部材とを設け、上下部ソール部材間のつま先部における境界面を、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面から形成するとともに、境界面上における第2の円弧面の開始点を、踵部の後端から0.5L〜0.66L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置し、第2の円弧面の曲率半径を200〜400mmとしたので、ソール全面接地の状態から離地時までの離地動作および蹴り出し動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1は、本発明の第1の実施例によるシューズ用ソール構造体の縦断面図である。同図に示すように、このソール構造体1は、踵部から中足部をへてつま先部まで延設された上部ソール部材2と、上部ソール部材2の下面に取り付けられるとともに、上部ソール部材2と同様に、踵部から中足部をへてつま先部まで延設された下部ソール部材3とを備えている。なお、下部ソール部材3は、踵部およびつま先部にのみ設けるようにしてもよい。上部ソール部材2および下部ソール部材3は、いずれも幅方向(同図紙面垂直方向)に延在している。また、図示していないが、下部ソール部材3の下面には、接地面と接触するアウトソールが設けられる。このアウトソールは省略することも可能である。
【0060】
上部ソール部材2および下部ソール部材3の境界面となる上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aは、その前後端側において上方に湾曲しており、全体として湾曲面を形成している。
【0061】
上下部ソール部材2,3の踵部H側の境界面は、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第1の円弧面から形成されており、同様に、上下部ソール部材2,3のつま先部T側の境界面は、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第2の円弧面から形成されている。また、上下部ソール部材2,3の中足部における境界面は、わずかに湾曲する湾曲面または平坦面から形成されている。
【0062】
第1の円弧面の曲率半径は、もっとも好ましくは、R200つまり200mmである。なお、第1の円弧面の曲率半径は、R150〜R300でもよく、さらに、R100〜500でもよい。その理由は、段落[0017]および[0018]で述べたとおりである。
【0063】
境界面上において第1の円弧面の開始点Hsは、もっとも好ましくは、踵部後端から0.28L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置されている。なお、第1の円弧面の開始点Hsは、踵後端から0.22L〜0.34Lの範囲の距離に配置されていてもよく、さらに、0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されていてもよい。その理由は、段落[0020]〜[0022]で述べたとおりである。
【0064】
上下部ソール部材2,3は、いずれも軟質弾性部材から構成されているのが好ましく、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂の発泡体やポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂の発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材の発泡体のような軟質弾性部材から構成されている。下部ソール部材3の剛性は、上部ソール部材2の剛性よりも低くなっている。これは、たとえば、双方の部材の発泡率を異ならせることにより実現できる。
【0065】
第2の円弧面の曲率半径は、もっとも好ましくは、R300つまり300mmである。なお、第2の円弧面の曲率半径は、R200〜400でもよい。その理由は、段落[0031]および[0032]で述べたとおりである。
【0066】
境界面上において第2の円弧面の開始点Tsは、もっとも好ましくは、踵部後端から0.58L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置されている。なお、第2の円弧面の開始点Tsは、踵後端から0.55L〜0.61Lの範囲の距離に配置されていてもよく、さらに、0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されていてもよい。その理由は、段落[0034]〜[0036]で述べたとおりである。
【0067】
上部ソール部材2の硬度は、ショアのCスケールで50C〜80Cであり、より好ましくは、55C〜65Cである。下部ソール部材3の硬度は、ショアのCスケールで30C〜60Cであり、より好ましくは、40C〜50Cである。また、上部ソール部材および下部ソール部材の硬度差は、少なくとも10Cである。その理由は、段落[0038]および[0039]で述べたとおりである。
【0068】
上述のように構成されるソール構造体においては、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材3が接地面と接地するので、下部ソール部材3の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材2,3の境界面となる上部ソール部材2の下面2aの形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0069】
さらに、離地時には、同様に、相対的に剛性の低い下部ソール部材3が接地面と接地するので、下部ソール部材3の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材2,3の境界面となる上部ソール部材2の下面2aの形状が維持され、これにより、ソール全面接地の状態から踵離地時までの離地動作および蹴り出し動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0070】
なお、上部ソール部2は、着用者の足裏が当接する当接面2bと、その左右両側縁部に設けられ、上方に立ち上がる巻上げ部2cとを有している。巻上げ部2bは、シューズの甲被部(図示せず)の下部に固着されるようになっている。また、下部ソール部3の下面3bは、接地面と接触するソール面を形成している。
【0071】
<第2の実施例>
図5は、本発明の第2の実施例によるソール構造体を説明するための図であって、図1のV-V線断面に相当している。この第2の実施例では、踵部において、上下部ソール部材2,3の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aが、幅方向(図5左右方向)に傾斜する傾斜面になっており、この例では、ソール構造体の外甲側で高く、内甲側で低くなっている。
【0072】
この場合には、踵部において、下部ソール部材3の外甲側の厚みが厚く、内甲側の厚みが薄くなっているので、踵外甲側端で着地し、オーバープロネーション(過回内)するランナーに対して十分な安定性を提供できる。
【0073】
なお、第2の実施例では、ソール構造体の踵部が左右非対称であることによって、踵部の内甲側または外甲側(この例では内甲側)において、上下部ソール部材2,3の境界面を形成する第1の円弧面が、上述した所定の曲率半径を有しない場合も生じ得る。本発明は、このように、内外甲側のいずれか一方のみが所定の曲率半径の第1の円弧面から形成される場合も含んでいる。また、内甲側または外甲側のソール側面において、たとえば下部ソール部材3が上方に立ち上がる立壁部を有することによって、ソール側面側から見たときに、見かけ上、上下部ソール部材2,3の間に第1の円弧面が形成されていない場合も本発明は含んでいる。この場合には、立壁部内側のソール内部において、上下部ソール部材2,3の境界面に第1の円弧面が形成されていることになる。
【0074】
図6は図5の変形例を示している。同図に示すように、上下部ソール部材2,3の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aは、踵中央側に向かうにしたがい徐々に下方に湾曲する湾曲面で形成されていてもよい。
【0075】
<第3の実施例>
図7は、本発明の第3の実施例によるシューズ用ソール構造体の縦断面図である。この第3の実施例では、上下部ソール部材2,3の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aの間に、たとえば硬質樹脂製のプレート4が配設されている点が前記第1の実施例と異なっている。プレート4は、境界面に沿って前後方向に延びている。
【0076】
このように、上下部ソール部材2,3間にプレート4を挟み込むことで、上部ソール部材2の下側の剛性が増大するので、下部ソール部材3が圧縮変形した後には、円弧面をしっかりと維持することができ、スムーズな走り心地を実現できる。
【0077】
プレート4の硬度は、ショアのDスケールで40D〜95Dである。プレート4の硬度の下限を40Dとしたのは、硬度が40Dよりも低いと、走行中においてプレート4による境界面の保形性を確保できなくなるためである。また、硬度が95Dよりも高くなると、プレート4が硬くなりすぎ、ソールとしてのクッション性を阻害するためである。
【0078】
なお、図7の変形例である図8に示すように、ソール構造体の中足部に幅方向の貫通孔5を形成するようにしてもよく、この場合には、中足部のクッション性を向上できるとともに、ソール構造体を軽量化できる。
【0079】
<第4の実施例>
図9は、本発明の第4の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第4の実施例では、上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aが、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、この波形状面のソール前後方向の中心線5(一点鎖線参照)は、前記第1の円弧面の延設方向に延びている。
【0080】
この場合には、波形状面が前記第1の円弧面に沿って延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、上下部ソール部材2,3の合わせ面を波形状面とすることで、上下部ソール部材2,3の圧縮変形を抑制して、上下部ソール部材2,3の横ずれ変形を防止でき、これにより、走行安定性を向上できる。
【0081】
<第5の実施例>
図10は、本発明の第5の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第5の実施例では、上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aが、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されるとともに、この波形状面に対応する波形状面を有する波形プレート40が上下部ソール部材2,3間に挿入されている。波形プレート40のソール前後方向の中心線5(一点鎖線参照)は、前記第1の円弧面の延設方向に延びている。
【0082】
波形プレート40は、硬質樹脂製プレートから構成されているのが好ましく、たとえば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミドエラストマー(PAE)、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、またはエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂から構成されている。
【0083】
この場合には、波形プレート40が前記第1の円弧面に沿って延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、波形プレート40の挿入によって上下部ソール部材2,3の圧縮変形をさらに抑制して、上下部ソール部材2,3の横ずれ変形を一層防止でき、これにより、走行安定性をさらに向上できる。
【0084】
<第6の実施例>
図11は、本発明の第6の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第6の実施例では、上部ソール部材2が、ソール構造体1の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレート2Aと、上部プレート2Aの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレート2Bと、上部プレート2Aとの間で波形プレート2Bを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材2の下面を形成する下部プレート2Cとから構成されている。下部ソール部材3は、下部プレート2Cの下面に設けられた軟質弾性部材から構成されている。なお、図示していないが、下部ソール部材3および下部プレート2Cには、アウトソールが設けられていてもよい。また、上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)および下部ソール部材3の上面が、前記第1および第2の円弧面を形成している。
【0085】
この場合、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材3が接地面と接地するので、下部ソール部材3の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0086】
しかも、この場合には、上部ソール部材2が、上部プレート2A、波形プレート2Bおよび下部プレート2Cから構成されることになり、軟質弾性部材を含まないので、構造を簡略化でき、全体の重量を低減できる。
【0087】
<第7の実施例>
図12は、本発明の第7の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第7の実施例では、前記第6の実施例における軟質弾性部材製の下部ソール部材3のかわりに、プレート製の下部ソール部材(第2の下部プレート)3’が設けられている点が前記第6の実施例と異なっている。なお、図示していないが、下部ソール部材3’および下部プレート2Cには、アウトソールが設けられていてもよい。また、上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)が、前記第1および第2の円弧面を形成している。
【0088】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレート3’が接地面と接地するので、第2の下部プレート3’の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0089】
しかも、この場合には、上部ソール部材のみならず下部ソール部材もプレートから構成されることになり、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、構造をさらに簡略化でき、全体の重量を一層低減できる。
【0090】
<第8の実施例>
図13は、本発明の第8の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第8の実施例では、前記第7の実施例における下部プレート3’のかわりに、波状の下部プレート3”が設けられており、下部プレート3”の下面にアウトソール7が装着されている。第2の下部プレート3”は、第1の下部プレート2Cを構成する樹脂よりも低剛性の樹脂から構成されている。また、前記第6の実施例と同様に、上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)が、前記第1の円弧面を形成している。
【0091】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレート3”が接地面と接地するので、第2の下部プレート3”の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0092】
さらに、第7の実施例と同様に、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、全体の重量を一層低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施例によるソール構造体の前後方向中心線に沿った縦断面図である。
【図2】走行中の足と接地面との位置関係を時系列的に示す模式図である。
【図3A】走行中のソール接地部の位置とソールおよび接地面間の角度との関係を示す表である。
【図3B】走行中のソール接地部の位置とソールおよび接地面間の角度との関係を示す表(図3Aの続き)である。
【図4】図3Aおよび図3Bをグラフ化したものである。
【図5】本発明の第2の実施例によるソール構造体を説明するための図であって、図1のV-V線断面に相当する図である。
【図6】図5の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施例によるソール構造体の前後方向中心線に沿った縦断面図である。
【図8】図7の変形例を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図10】本発明の第5の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図11】本発明の第6の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図12】本発明の第7の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図13】本発明の第8の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1: ソール構造体
2: 上部ソール部材
2a: 下面
3: 下部ソール部材
3a: 上面
4: プレート
40: 波形プレート
Hs: 第1の円弧面の開始点
Ts: 第2の円弧面の開始点
L: ソール全長
【技術分野】
【0001】
本発明は、シューズのソール構造体に関し、詳細には、走行中にスムーズな走行感を得るようにするための構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
実用新案登録第3041007号公報には、靴底の底面(ソール面)が複数の平坦面から形成されたものが示されている。この場合には、シューズ着用者が踵から着地して蹴り出しに移行していく際に、シューズ着用者の体重移動にともなって、接地面と接触するソール面が段階的に前方側に移行していくので、一応の歩行感を得ることは可能であると考えられる。
【0003】
しかしながら、上記公報に示すものは、ソール面が複数の平坦面を不連続に連結することにより構成されており、このため、上記公報記載のソール構造は、とくにランニングなどの一定速度以上の走行には適しておらず、走行時にスムーズな走行感を得ることはできない。また、静止時に接地面と接触するソール面が前後方向へのわずかな体重移動で変化するので、非常に不安定である。
【特許文献1】実用新案登録第3041007号公報(図1参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、走行中にスムーズな走行感を得ることができるソール構造体を提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明に係る発明者らは、実際の走行中の足の動きを詳細に分析することから始めた。まず、多数のテスター(試験者)に実際に走行してもらい、走行中の足の動きを0.004秒毎に高速度カメラで側面から撮影した。そして、図2に示すように、テスターの足Fのソール(足裏)Sが接地面Gとなす角度θを測定した。このとき、踵接地の状態(同図(a))から足裏全面接地の状態(同図(b))に移行する際の角度θを符号+で、足裏全面接地の状態から離地前の状態(同図(c))に移行する際の角度θを符号−で表した。
【0006】
図3Aおよび図3Bは、平均的な男性ランナーであるテスターAと、同様に平均的な女性ランナーであるテスターBについて、それぞれの測定結果をまとめたものである。これらの図において、左欄における「ソール全長に対する接地部の比率(%)」とは、ソール接地部の踵後端からの距離を、ソール全長を100(%)としたときのソール全長に対する比率で表したものである。したがって、比率10(%)とは、ソール全長を100としたとき、ソール接地部が踵後端から距離10の位置にあることを意味している。また、図4は、図3Aおよび図3Bのデータをグラフにまとめたものである。
【0007】
ここで、本願発明に係る発明者らは、走行中のとくに踵接地時と離地時に着目することにしたため、ソールが接地面となす角度θが±2°の範囲においては、ソールが接地面と略平行に配置されていると近似して、ソール全面が接地面と接触しているとみなすことにした。
【0008】
そして、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作の際の各ソール接地部の位置に、表3A中の数値に基づいて接地面と角度θをなす直線を引き、こうして得られた複数の直線からなる折れ線を近似する曲線(たとえば折れ線の包絡線)を求めることにした。このようにして求められた曲線を底面に有するようなソールは、実際の走行時における接地動作の際の足の動きに非常によく適合するとともに、シューズ着用者が体重移動を滑らかに行うことができ、これにより、スムーズな走行感を得ることができるようになると推測される。
【0009】
このような解析結果に基づいてなされたのが、本願の請求項1、4ないし7の発明である。
請求項1の発明に係るシューズのソール構造体は、当該ソール構造体の上側に配置されかつ当該ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、当該ソール構造体の踵部において当該ソール構造体の下側に配置され、上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備えている。上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面は、ソール構造体の踵部において、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有している。境界面上における第1の円弧面の開始点は、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されており、第1の円弧面の曲率半径が100〜500mmである。
【0010】
請求項4の発明では、第1の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.22L〜0.34Lの範囲の距離に配置されている。
【0011】
請求項5の発明では、第1の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.28Lの範囲の距離に配置されている。
【0012】
請求項6の発明では、第1の円弧面の曲率半径が150〜300mmである。
【0013】
請求項7の発明では、第1の円弧面の曲率半径が200mmである。
【0014】
上述した解析結果によれば、実際の走行試験に基づいて得られた曲線を用いてソール底面を形成するのが好ましいが、本願発明では、このような曲線で直接ソール底面を形成するのではなく、当該曲線で上部ソール部材の下面を形成するとともに、この下面に接触する上面を有しかつ上部ソール部材よりも低剛性の下部ソール部材を上部ソール部材の下方に配置する構成とした。すなわち、上下部ソール部材の境界面を上記曲線で構成するようにした。
【0015】
本願発明によれば、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材が接地面と接地するので、下部ソール部材の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。また、上部ソール部材の境界面の下部に下部ソール部材が設けられることにより、静止状態を安定して維持できる。
【0016】
この場合において、ソール構造体の踵部において上下部ソール部材間の境界面を形成する第1の円弧面の曲率半径は、請求項1の発明では、100〜500mmである。
【0017】
これは、上述した走行試験による実測値から求められた円弧面の曲率半径の範囲(150〜300mm)を包含するものである。ここで、曲率半径の下限を100mmとしたのは、曲率半径が100mmよりも小さいと、全体のソール厚が厚くなりすぎて、接地感が阻害されるとともに、重量が増大するからである。また、曲率半径の上限を500mmとしたのは、曲率半径が500mmよりも大きいと、境界面が平坦面に近くなって、境界面を円弧面とすることによる効果が得られなくなるからある。
【0018】
第1の円弧面の曲率半径は、好ましくは、請求項6の発明に記載されているように、実測値から求められた150〜300mmであり、より好ましくは、請求項7の発明に記載されているように、これらの平均値であるところの200mmである。
【0019】
また、第1の円弧面の境界面上における開始点は、請求項1の発明では、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されている。
【0020】
上述した走行試験においては、図3Aに示すように、テスターAについては、ソールと接地面のなす角度θが2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.22L(L:ソール全長)の位置にあり、同様に、テスターBについては、ソールと接地面のなす角度θが2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.34Lの位置にある。
【0021】
請求項1の発明では、実測値のばらつき(標準偏差)を考慮して、上記値に±0.05Lのマージンを設けることにより、第1の円弧面の境界面上における開始点の位置を、0.17L〜0.39Lに規定したものである。
【0022】
第1の円弧面の境界面上における開始点は、好ましくは、請求項4の発明に記載されているように、実測値から求められた0.22L〜0.34Lの範囲にあり、より好ましくは、請求項5の発明に記載されているように、これらの平均値である0.28Lである。
【0023】
次に、上述した接地動作の場合と同様にして、ソール全面接地の状態から離地までの離地動作の際の各ソール接地部の位置に、表3B中の数値に基づいて接地面と角度θをなす直線を引き、こうして得られた複数の直線からなる折れ線を近似する曲線(たとえば折れ線の包絡線)を求めることにした。このようにして求められた曲線を底面に有するようなソールは、実際の走行時における離地動作の際の足の動きに非常によく適合し、これにより、スムーズな走行感を得ることができるようになると推測される。
【0024】
このような解析結果に基づいてなされたのが、本願の請求項2、8ないし10の発明である。
請求項2の発明に係るシューズのソール構造体は、当該ソール構造体の上側に配置されかつ当該ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、当該ソール構造体のつま先部において当該ソール構造体の下側に配置され、上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備えている。上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面は、ソール構造体のつま先部において、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有している。境界面上における第2の円弧面の開始点は、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されており、第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである。
【0025】
請求項8の発明では、第2の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.55L〜0.61Lの範囲の距離に配置されている。
【0026】
請求項9の発明では、第2の円弧面の開始点が、踵部の後端から0.58Lの範囲の距離に配置されている。
【0027】
請求項10の発明では、第2の円弧面の曲率半径が300mmである。
【0028】
上述した解析結果によれば、この場合においても、実際の走行試験に基づいて得られた曲線を用いてソール底面を形成するのが好ましいが、本願発明では、このような曲線で直接ソール底面を形成するのではなく、当該曲線で上部ソール部材の下面を形成するとともに、この下面に接触する上面を有しかつ上部ソール部材よりも低剛性の下部ソール部材を上部ソール部材の下方に配置する構成とした。すなわち、上下部ソール部材の境界面を上記曲線で構成するようにした。
【0029】
本願発明によれば、離地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材が接地面と接地するので、下部ソール部材の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面の形状が維持され、これにより、ソール全面接地の状態から離地時までの離地動作および蹴り出し動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0030】
この場合において、ソール構造体のつま先部において上下部ソール部材間の境界面を形成する第2の円弧面の曲率半径は、請求項2の発明では、200〜400mmである。
【0031】
上述した走行試験による実測値から求められた円弧面の曲率半径は約150mmであるが、実際のシューズにこれを適用すると、ソール厚が厚くなりすぎて、接地感が阻害されるとともに、重量が増大するため、第2の円弧面の曲率半径の下限は、このような問題が生じない限界値を採用して、200mmとした。また、曲率半径の上限を400mmとしたのは、曲率半径が400mmよりも大きいと、境界面が平坦面に近くなって、境界面を円弧面とすることによる効果が得られなくなるからある。
【0032】
第2の円弧面の曲率半径は、好ましくは、請求項10の発明に記載されているように、200〜400mmの平均値であるところの300mmである。
【0033】
また、第2の円弧面の境界面上における開始点は、請求項2の発明では、ソール全長をLとするとき、踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されている。
【0034】
上述した走行試験においては、図3Bに示すように、テスターAについては、ソールと接地面のなす角度θが−2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.61L(L:ソール全長)の位置にあり、同様に、テスターBについては、ソールと接地面のなす角度θが−2°以内となる接地部の位置が踵後端から0.55Lの位置にある。
【0035】
請求項2の発明では、実測値のばらつき(標準偏差)を考慮して、上記値に±0.05Lのマージンを設けることにより、第2の円弧面の境界面上における開始点の位置を、0.5L〜0.66Lに規定したものである。
【0036】
第2の円弧面の境界面上における開始点は、好ましくは、請求項8の発明に記載されているように、実測値から求められた0.55L〜0.61Lの範囲にあり、より好ましくは、請求項9の発明に記載されているように、これらの平均値である0.58Lである。
【0037】
請求項3の発明は、請求項1および2の各発明を組み合わせたものであり、上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面が、ソール構造体の踵部においては、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有しており、ソール構造体のつま先部においては、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有している。境界面上における第1の円弧面の開始点は、踵部後端から0.17L〜0.39L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置されており、第1の円弧面の曲率半径は100〜500mmであり、境界面上における第2の円弧面の開始点は、踵部後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されており、第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである。
【0038】
次に、請求項11の発明では、上部ソール部材および下部ソール部材が軟質弾性部材から構成されており、上部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで50C〜80Cであり、下部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで30C〜60Cであって、両部材の硬度差が少なくとも10Cである。
【0039】
ここで、上部ソール部材の硬度の上限を80Cとしたのは、硬度が80Cよりも高いと、ソール部材として硬くなりすぎてクッション性および足当たり感が阻害されるからである。下部ソール部材の下限を30Cとしたのは、硬度が30Cよりも低いと、物性として弱く、耐久性が得られなくなるからである。また、上下部ソール部材の硬度差を少なくとも10Cとしたのは、10Cよりも小さいと、体重移動の際に下部ソール部の圧縮変形を上部ソール部に比べて相対的に大きくすることができず、その結果、上述した第1(および第2)の円弧面の形成によるスムーズな走行感が得られなくなるためである。
【0040】
請求項12の発明に記載されているように、上部ソール部材の硬度は、好ましくは、ショアのCスケールで55C〜65Cであり、下部ソール部材の硬度は、好ましくは、ショアのCスケールで40C〜50Cである。
【0041】
請求項13の発明では、上下部ソール部材の間には、これらの境界面に沿って延びるプレートが配設されており、プレートの硬度がショアのDスケールで40D〜95Dである。
【0042】
このように、上下部ソール部材間にプレートを挟み込むことで、上部ソール部材の下側の剛性が増大するので、下部ソール部材が圧縮変形した後には、円弧面をしっかりと維持することができ、スムーズな走り心地を実現できる。
【0043】
ここで、プレートの硬度の下限を40Dとしたのは、硬度が40Dよりも低いと、走行中においてプレートによる境界面の保形性を確保できなくなるためである。また、硬度が95Dよりも高くなると、プレートが硬くなりすぎて、ソールとしてのクッション性を阻害するためである。
【0044】
請求項14ないし16の発明では、上下部ソール部材間の境界面である上部ソール部材の下面および下部ソール部材の上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、波形状面のソール前後方向の中心線が前記第1の円弧面(請求項14の場合)、第2の円弧面(請求項15の場合)、第1および第2の円弧面(請求項16の場合)に沿って延びている。
【0045】
この場合には、波形状面が前記第1または(および)第2の円弧面の延設方向に延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、上下部ソール部材の合わせ面を波形状面とすることで、上下部ソール部材の圧縮変形を抑制して、上下部ソール部材の横ずれ変形を防止でき、これにより、走行安定性を向上できる。
【0046】
請求項17の発明では、上下部ソール部材の間に、前記波形状面に沿う波形状を有する波形プレートが配設されている。
【0047】
この場合には、波形プレートが前記第1の円弧面の延設方向に延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、波形プレートの挿入によって上下部ソール部材の圧縮変形をさらに抑制して、上下部ソール部材の横ずれ変形を一層防止でき、これにより、走行安定性をさらに向上できる。
【0048】
請求項18の発明では、上部ソール部材が、ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、上部プレートとの間で波形プレートを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材の下面を形成する下部プレートとから構成されている。また、下部ソール部材が、下部プレートの下面に設けられた軟質弾性部材から構成されている。
【0049】
この場合には、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材が接地面と接地するので、下部ソール部材の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面(つまり下部プレートの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0050】
しかも、この場合には、上部ソール部材が、上部プレート、波形プレートおよび下部プレートから構成されることになり、軟質弾性部材を含まないので、構造を簡略化でき、コストを低減できるとともに、全体の重量を低減できる。また、長時間の使用後には、へたりによりクッション性が低下する軟質弾性部材を上部ソール部材が含まないことで、クッション性の持続性を向上できる。
【0051】
請求項19の発明では、上部ソール部材が、ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、上部プレートとの間で波形プレートを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されている。また、下部ソール部材が、下部プレートの下面に設けられた第2の下部プレートから構成されている。
【0052】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレートが接地面と接地するので、第2の下部プレートの圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面(つまり下部プレートの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0053】
しかも、この場合には、上部ソール部材のみならず下部ソール部材もプレートから構成されることになり、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、構造をさらに簡略化でき、コストをさらに低減できるとともに、全体の重量を一層低減できる。また、長時間の使用後には、へたりによりクッション性が低下する軟質弾性部材を全く含まないことで、クッション性の持続性を一層向上できる。
【0054】
請求項20の発明では、上部ソール部材が、ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、上部プレートとの間で波形プレートを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されている。下部ソール部材は、下部プレートの下面に設けられた波状の第2の下部プレートから構成されている。
【0055】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレートが接地面と接地するので、第2の下部プレートの圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材の下面(つまり下部プレートの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0056】
また、請求項19の発明と同様に、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、構造をさらに簡略化して、コストをさらに低減でき、全体の重量を一層低減できるとともに、クッション性の持続性を一層向上できる。
【発明の効果】
【0057】
以上のように本発明によれば、上部ソール部材と、その下方に配置され、上部ソール部材よりも剛性の低い下部ソール部材とを設け、上下部ソール部材間の踵部における境界面を、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面から形成するとともに、境界面上における第1の円弧面の開始点を、踵部の後端から0.17L〜0.39L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置し、第1の円弧面の曲率半径を100〜500mmとしたので、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0058】
また、本発明によれば、上部ソール部材と、その下方に配置され、上部ソール部材よりも剛性の低い下部ソール部材とを設け、上下部ソール部材間のつま先部における境界面を、ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面から形成するとともに、境界面上における第2の円弧面の開始点を、踵部の後端から0.5L〜0.66L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置し、第2の円弧面の曲率半径を200〜400mmとしたので、ソール全面接地の状態から離地時までの離地動作および蹴り出し動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1は、本発明の第1の実施例によるシューズ用ソール構造体の縦断面図である。同図に示すように、このソール構造体1は、踵部から中足部をへてつま先部まで延設された上部ソール部材2と、上部ソール部材2の下面に取り付けられるとともに、上部ソール部材2と同様に、踵部から中足部をへてつま先部まで延設された下部ソール部材3とを備えている。なお、下部ソール部材3は、踵部およびつま先部にのみ設けるようにしてもよい。上部ソール部材2および下部ソール部材3は、いずれも幅方向(同図紙面垂直方向)に延在している。また、図示していないが、下部ソール部材3の下面には、接地面と接触するアウトソールが設けられる。このアウトソールは省略することも可能である。
【0060】
上部ソール部材2および下部ソール部材3の境界面となる上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aは、その前後端側において上方に湾曲しており、全体として湾曲面を形成している。
【0061】
上下部ソール部材2,3の踵部H側の境界面は、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第1の円弧面から形成されており、同様に、上下部ソール部材2,3のつま先部T側の境界面は、ソール構造体1の上方に曲率中心を有する第2の円弧面から形成されている。また、上下部ソール部材2,3の中足部における境界面は、わずかに湾曲する湾曲面または平坦面から形成されている。
【0062】
第1の円弧面の曲率半径は、もっとも好ましくは、R200つまり200mmである。なお、第1の円弧面の曲率半径は、R150〜R300でもよく、さらに、R100〜500でもよい。その理由は、段落[0017]および[0018]で述べたとおりである。
【0063】
境界面上において第1の円弧面の開始点Hsは、もっとも好ましくは、踵部後端から0.28L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置されている。なお、第1の円弧面の開始点Hsは、踵後端から0.22L〜0.34Lの範囲の距離に配置されていてもよく、さらに、0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されていてもよい。その理由は、段落[0020]〜[0022]で述べたとおりである。
【0064】
上下部ソール部材2,3は、いずれも軟質弾性部材から構成されているのが好ましく、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等の熱可塑性樹脂の発泡体やポリウレタン(PU)等の熱硬化性樹脂の発泡体、またはブタジエンラバーやクロロプレンラバー等のラバー素材の発泡体のような軟質弾性部材から構成されている。下部ソール部材3の剛性は、上部ソール部材2の剛性よりも低くなっている。これは、たとえば、双方の部材の発泡率を異ならせることにより実現できる。
【0065】
第2の円弧面の曲率半径は、もっとも好ましくは、R300つまり300mmである。なお、第2の円弧面の曲率半径は、R200〜400でもよい。その理由は、段落[0031]および[0032]で述べたとおりである。
【0066】
境界面上において第2の円弧面の開始点Tsは、もっとも好ましくは、踵部後端から0.58L(L:ソール全長)の範囲の距離に配置されている。なお、第2の円弧面の開始点Tsは、踵後端から0.55L〜0.61Lの範囲の距離に配置されていてもよく、さらに、0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されていてもよい。その理由は、段落[0034]〜[0036]で述べたとおりである。
【0067】
上部ソール部材2の硬度は、ショアのCスケールで50C〜80Cであり、より好ましくは、55C〜65Cである。下部ソール部材3の硬度は、ショアのCスケールで30C〜60Cであり、より好ましくは、40C〜50Cである。また、上部ソール部材および下部ソール部材の硬度差は、少なくとも10Cである。その理由は、段落[0038]および[0039]で述べたとおりである。
【0068】
上述のように構成されるソール構造体においては、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材3が接地面と接地するので、下部ソール部材3の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材2,3の境界面となる上部ソール部材2の下面2aの形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0069】
さらに、離地時には、同様に、相対的に剛性の低い下部ソール部材3が接地面と接地するので、下部ソール部材3の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材2,3の境界面となる上部ソール部材2の下面2aの形状が維持され、これにより、ソール全面接地の状態から踵離地時までの離地動作および蹴り出し動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0070】
なお、上部ソール部2は、着用者の足裏が当接する当接面2bと、その左右両側縁部に設けられ、上方に立ち上がる巻上げ部2cとを有している。巻上げ部2bは、シューズの甲被部(図示せず)の下部に固着されるようになっている。また、下部ソール部3の下面3bは、接地面と接触するソール面を形成している。
【0071】
<第2の実施例>
図5は、本発明の第2の実施例によるソール構造体を説明するための図であって、図1のV-V線断面に相当している。この第2の実施例では、踵部において、上下部ソール部材2,3の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aが、幅方向(図5左右方向)に傾斜する傾斜面になっており、この例では、ソール構造体の外甲側で高く、内甲側で低くなっている。
【0072】
この場合には、踵部において、下部ソール部材3の外甲側の厚みが厚く、内甲側の厚みが薄くなっているので、踵外甲側端で着地し、オーバープロネーション(過回内)するランナーに対して十分な安定性を提供できる。
【0073】
なお、第2の実施例では、ソール構造体の踵部が左右非対称であることによって、踵部の内甲側または外甲側(この例では内甲側)において、上下部ソール部材2,3の境界面を形成する第1の円弧面が、上述した所定の曲率半径を有しない場合も生じ得る。本発明は、このように、内外甲側のいずれか一方のみが所定の曲率半径の第1の円弧面から形成される場合も含んでいる。また、内甲側または外甲側のソール側面において、たとえば下部ソール部材3が上方に立ち上がる立壁部を有することによって、ソール側面側から見たときに、見かけ上、上下部ソール部材2,3の間に第1の円弧面が形成されていない場合も本発明は含んでいる。この場合には、立壁部内側のソール内部において、上下部ソール部材2,3の境界面に第1の円弧面が形成されていることになる。
【0074】
図6は図5の変形例を示している。同図に示すように、上下部ソール部材2,3の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aは、踵中央側に向かうにしたがい徐々に下方に湾曲する湾曲面で形成されていてもよい。
【0075】
<第3の実施例>
図7は、本発明の第3の実施例によるシューズ用ソール構造体の縦断面図である。この第3の実施例では、上下部ソール部材2,3の境界面である上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aの間に、たとえば硬質樹脂製のプレート4が配設されている点が前記第1の実施例と異なっている。プレート4は、境界面に沿って前後方向に延びている。
【0076】
このように、上下部ソール部材2,3間にプレート4を挟み込むことで、上部ソール部材2の下側の剛性が増大するので、下部ソール部材3が圧縮変形した後には、円弧面をしっかりと維持することができ、スムーズな走り心地を実現できる。
【0077】
プレート4の硬度は、ショアのDスケールで40D〜95Dである。プレート4の硬度の下限を40Dとしたのは、硬度が40Dよりも低いと、走行中においてプレート4による境界面の保形性を確保できなくなるためである。また、硬度が95Dよりも高くなると、プレート4が硬くなりすぎ、ソールとしてのクッション性を阻害するためである。
【0078】
なお、図7の変形例である図8に示すように、ソール構造体の中足部に幅方向の貫通孔5を形成するようにしてもよく、この場合には、中足部のクッション性を向上できるとともに、ソール構造体を軽量化できる。
【0079】
<第4の実施例>
図9は、本発明の第4の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第4の実施例では、上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aが、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、この波形状面のソール前後方向の中心線5(一点鎖線参照)は、前記第1の円弧面の延設方向に延びている。
【0080】
この場合には、波形状面が前記第1の円弧面に沿って延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、上下部ソール部材2,3の合わせ面を波形状面とすることで、上下部ソール部材2,3の圧縮変形を抑制して、上下部ソール部材2,3の横ずれ変形を防止でき、これにより、走行安定性を向上できる。
【0081】
<第5の実施例>
図10は、本発明の第5の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第5の実施例では、上部ソール部材2の下面2aおよび下部ソール部材3の上面3aが、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されるとともに、この波形状面に対応する波形状面を有する波形プレート40が上下部ソール部材2,3間に挿入されている。波形プレート40のソール前後方向の中心線5(一点鎖線参照)は、前記第1の円弧面の延設方向に延びている。
【0082】
波形プレート40は、硬質樹脂製プレートから構成されているのが好ましく、たとえば、熱可塑性ポリウレタン(TPU)やポリアミドエラストマー(PAE)、ABS樹脂等の熱可塑性樹脂、またはエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂から構成されている。
【0083】
この場合には、波形プレート40が前記第1の円弧面に沿って延びていることから、スムーズな走行感をある程度確保できるとともに、波形プレート40の挿入によって上下部ソール部材2,3の圧縮変形をさらに抑制して、上下部ソール部材2,3の横ずれ変形を一層防止でき、これにより、走行安定性をさらに向上できる。
【0084】
<第6の実施例>
図11は、本発明の第6の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第6の実施例では、上部ソール部材2が、ソール構造体1の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレート2Aと、上部プレート2Aの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレート2Bと、上部プレート2Aとの間で波形プレート2Bを挟持するように配設されるとともに、上部ソール部材2の下面を形成する下部プレート2Cとから構成されている。下部ソール部材3は、下部プレート2Cの下面に設けられた軟質弾性部材から構成されている。なお、図示していないが、下部ソール部材3および下部プレート2Cには、アウトソールが設けられていてもよい。また、上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)および下部ソール部材3の上面が、前記第1および第2の円弧面を形成している。
【0085】
この場合、接地時には、相対的に剛性の低い下部ソール部材3が接地面と接地するので、下部ソール部材3の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0086】
しかも、この場合には、上部ソール部材2が、上部プレート2A、波形プレート2Bおよび下部プレート2Cから構成されることになり、軟質弾性部材を含まないので、構造を簡略化でき、全体の重量を低減できる。
【0087】
<第7の実施例>
図12は、本発明の第7の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第7の実施例では、前記第6の実施例における軟質弾性部材製の下部ソール部材3のかわりに、プレート製の下部ソール部材(第2の下部プレート)3’が設けられている点が前記第6の実施例と異なっている。なお、図示していないが、下部ソール部材3’および下部プレート2Cには、アウトソールが設けられていてもよい。また、上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)が、前記第1および第2の円弧面を形成している。
【0088】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレート3’が接地面と接地するので、第2の下部プレート3’の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0089】
しかも、この場合には、上部ソール部材のみならず下部ソール部材もプレートから構成されることになり、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、構造をさらに簡略化でき、全体の重量を一層低減できる。
【0090】
<第8の実施例>
図13は、本発明の第8の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。この第8の実施例では、前記第7の実施例における下部プレート3’のかわりに、波状の下部プレート3”が設けられており、下部プレート3”の下面にアウトソール7が装着されている。第2の下部プレート3”は、第1の下部プレート2Cを構成する樹脂よりも低剛性の樹脂から構成されている。また、前記第6の実施例と同様に、上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)が、前記第1の円弧面を形成している。
【0091】
この場合においても、接地時には、相対的に剛性の低い第2の下部プレート3”が接地面と接地するので、第2の下部プレート3”の圧縮変形により、ソール構造体としてのクッション性を確保できる。その一方で、相対的に剛性の高い上部ソール部材2によって、上下部ソール部材の境界面となる上部ソール部材2の下面(つまり下部プレート2Cの下面)の形状が維持され、これにより、踵接地時からソール全面接地の状態までの着地動作をスムーズに行うことができ、スムーズな走行感を得ることができるようになる。
【0092】
さらに、第7の実施例と同様に、ソール構造体が軟質弾性部材を全く含まないので、全体の重量を一層低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の第1の実施例によるソール構造体の前後方向中心線に沿った縦断面図である。
【図2】走行中の足と接地面との位置関係を時系列的に示す模式図である。
【図3A】走行中のソール接地部の位置とソールおよび接地面間の角度との関係を示す表である。
【図3B】走行中のソール接地部の位置とソールおよび接地面間の角度との関係を示す表(図3Aの続き)である。
【図4】図3Aおよび図3Bをグラフ化したものである。
【図5】本発明の第2の実施例によるソール構造体を説明するための図であって、図1のV-V線断面に相当する図である。
【図6】図5の変形例を示す図である。
【図7】本発明の第3の実施例によるソール構造体の前後方向中心線に沿った縦断面図である。
【図8】図7の変形例を示す図である。
【図9】本発明の第4の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図10】本発明の第5の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図11】本発明の第6の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図12】本発明の第7の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【図13】本発明の第8の実施例によるシューズ用ソール構造体の側面図である。
【符号の説明】
【0094】
1: ソール構造体
2: 上部ソール部材
2a: 下面
3: 下部ソール部材
3a: 上面
4: プレート
40: 波形プレート
Hs: 第1の円弧面の開始点
Ts: 第2の円弧面の開始点
L: ソール全長
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シューズのソール構造体であって、
前記ソール構造体の上側に配置され、前記ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、
前記ソール構造体の前記踵部において前記ソール構造体の下側に配置され、前記上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、前記上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備え、
前記上部および下部ソール部材間の境界面である前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、前記ソール構造体の前記踵部において、前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有しており、
前記境界面上における前記第1の円弧面の開始点が、ソール全長をLとするとき、前記踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されており、
前記第1の円弧面の曲率半径が100〜500mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項2】
シューズのソール構造体であって、
前記ソール構造体の上側に配置され、前記ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、
前記ソール構造体の前記つま先部において前記ソール構造体の下側に配置され、前記上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、前記上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備え、
前記上部および下部ソール部材間の境界面である前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、前記ソール構造体の前記つま先部において、前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有しており、
前記境界面上における前記第2の円弧面の開始点が、ソール全長をLとするとき、前記踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されており、
前記第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項3】
シューズのソール構造体であって、
前記ソール構造体の上側に配置され、前記ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、
前記ソール構造体の前記踵部およびつま先部において前記ソール構造体の下側に配置され、前記上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、前記上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備え、
前記上部および下部ソール部材間の境界面である前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、前記ソール構造体の前記踵部において前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有するとともに、前記ソール構造体の前記つま先部において前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有しており、
ソール全長をLとするとき、前記境界面上における前記第1の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置され、前記第1の円弧面の曲率半径が100〜500mmであり、
前記境界面上における前記第2の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置され、前記第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項4】
請求項1または3において、
前記第1の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.22L〜0.34Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.28Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項6】
請求項1または3において、
前記第1の円弧面の曲率半径が150〜300mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1の円弧面の曲率半径が200mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項8】
請求項2または3において、
前記第2の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.55L〜0.61Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項9】
請求項8において、
前記前記第2の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.58Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項10】
請求項2または3において、
前記第2の円弧面の曲率半径が300mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材および下部ソール部材が軟質弾性部材から構成されており、前記上部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで50C〜80Cであり、前記下部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで30C〜60Cであって、前記両部材の硬度差が少なくとも10Cである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項12】
請求項11において、
前記上部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで55C〜65Cであり、前記下部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで40C〜50Cである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項13】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材および下部ソール部材の間には、前記境界面に沿って延びるプレートが配設されており、前記プレートの硬度が、ショアのDスケールで40D〜95Dである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項14】
請求項1において、
前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、前記波形状面のソール前後方向の中心線が前記第1の円弧面に沿って延びている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項15】
請求項2において、
前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、前記波形状面のソール前後方向の中心線が前記第2の円弧面に沿って延びている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項16】
請求項3において、
前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、前記波形状面のソール前後方向の中心線が前記第1および第2の円弧面に沿って延びている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項17】
請求項14ないし16のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材および下部ソール部材の間には、前記波形状面に沿う波形状を有する波形プレートが配設されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項18】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材が、前記ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、前記上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、前記上部プレートとの間で前記波形プレートを挟持するように配設されるとともに、前記上部ソール部材の前記下面を形成する下部プレートとから構成されており、
前記下部ソール部材が、前記下部プレートの下面に設けられた軟質弾性部材から構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項19】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材が、前記ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、前記上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、前記上部プレートとの間で前記波形プレートを挟持するように配設されるとともに、前記上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されており、
前記下部ソール部材が、前記下部プレートの下面に設けられた第2の下部プレートから構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項20】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材が、前記ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、前記上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、前記上部プレートとの間で前記波形プレートを挟持するように配設されるとともに、前記上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されており、
前記下部ソール部材が、前記下部プレートの下面に設けられた波状の第2の下部プレートから構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項1】
シューズのソール構造体であって、
前記ソール構造体の上側に配置され、前記ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、
前記ソール構造体の前記踵部において前記ソール構造体の下側に配置され、前記上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、前記上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備え、
前記上部および下部ソール部材間の境界面である前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、前記ソール構造体の前記踵部において、前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有しており、
前記境界面上における前記第1の円弧面の開始点が、ソール全長をLとするとき、前記踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置されており、
前記第1の円弧面の曲率半径が100〜500mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項2】
シューズのソール構造体であって、
前記ソール構造体の上側に配置され、前記ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、
前記ソール構造体の前記つま先部において前記ソール構造体の下側に配置され、前記上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、前記上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備え、
前記上部および下部ソール部材間の境界面である前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、前記ソール構造体の前記つま先部において、前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有しており、
前記境界面上における前記第2の円弧面の開始点が、ソール全長をLとするとき、前記踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置されており、
前記第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項3】
シューズのソール構造体であって、
前記ソール構造体の上側に配置され、前記ソール構造体の踵部から中足部を経てつま先部まで延びるとともに、第1の剛性を有する上部ソール部材と、
前記ソール構造体の前記踵部およびつま先部において前記ソール構造体の下側に配置され、前記上部ソール部材の下面に接触する上面を有し、前記上部ソール部材の第1の剛性よりも低い第2の剛性を有する下部ソール部材とを備え、
前記上部および下部ソール部材間の境界面である前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、前記ソール構造体の前記踵部において前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第1の円弧面を有するとともに、前記ソール構造体の前記つま先部において前記ソール構造体の上方に曲率中心を有する第2の円弧面を有しており、
ソール全長をLとするとき、前記境界面上における前記第1の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.17L〜0.39Lの範囲の距離に配置され、前記第1の円弧面の曲率半径が100〜500mmであり、
前記境界面上における前記第2の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.5L〜0.66Lの範囲の距離に配置され、前記第2の円弧面の曲率半径が200〜400mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項4】
請求項1または3において、
前記第1の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.22L〜0.34Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項5】
請求項4において、
前記第1の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.28Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項6】
請求項1または3において、
前記第1の円弧面の曲率半径が150〜300mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項7】
請求項6において、
前記第1の円弧面の曲率半径が200mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項8】
請求項2または3において、
前記第2の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.55L〜0.61Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項9】
請求項8において、
前記前記第2の円弧面の開始点が、前記踵部の後端から0.58Lの範囲の距離に配置されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項10】
請求項2または3において、
前記第2の円弧面の曲率半径が300mmである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項11】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材および下部ソール部材が軟質弾性部材から構成されており、前記上部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで50C〜80Cであり、前記下部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで30C〜60Cであって、前記両部材の硬度差が少なくとも10Cである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項12】
請求項11において、
前記上部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで55C〜65Cであり、前記下部ソール部材の硬度が、ショアのCスケールで40C〜50Cである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項13】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材および下部ソール部材の間には、前記境界面に沿って延びるプレートが配設されており、前記プレートの硬度が、ショアのDスケールで40D〜95Dである、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項14】
請求項1において、
前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、前記波形状面のソール前後方向の中心線が前記第1の円弧面に沿って延びている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項15】
請求項2において、
前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、前記波形状面のソール前後方向の中心線が前記第2の円弧面に沿って延びている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項16】
請求項3において、
前記上部ソール部材の前記下面および前記下部ソール部材の前記上面が、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形状面から形成されており、前記波形状面のソール前後方向の中心線が前記第1および第2の円弧面に沿って延びている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項17】
請求項14ないし16のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材および下部ソール部材の間には、前記波形状面に沿う波形状を有する波形プレートが配設されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項18】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材が、前記ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、前記上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、前記上部プレートとの間で前記波形プレートを挟持するように配設されるとともに、前記上部ソール部材の前記下面を形成する下部プレートとから構成されており、
前記下部ソール部材が、前記下部プレートの下面に設けられた軟質弾性部材から構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項19】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材が、前記ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、前記上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、前記上部プレートとの間で前記波形プレートを挟持するように配設されるとともに、前記上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されており、
前記下部ソール部材が、前記下部プレートの下面に設けられた第2の下部プレートから構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【請求項20】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、
前記上部ソール部材が、前記ソール構造体の足裏当接面に沿ってソール前後方向に延びる上部プレートと、前記上部プレートの下方に配置され、ソール前後方向に進行する複数の波形状を有する波形プレートと、前記上部プレートとの間で前記波形プレートを挟持するように配設されるとともに、前記上部ソール部材の前記下面を形成する第1の下部プレートとから構成されており、
前記下部ソール部材が、前記下部プレートの下面に設けられた波状の第2の下部プレートから構成されている、
ことを特徴とするシューズのソール構造体。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2007−268025(P2007−268025A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−98509(P2006−98509)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000005935)美津濃株式会社 (239)
【Fターム(参考)】
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