説明

シール部材を備えた筐体の製造方法

【課題】シール部材を備えた筐体の製造工程を削減でき、生産性を向上させることのでき、かつ、金型費の増大を抑えることができるシール部材を備えた筐体の製造方法を提供する。
【解決手段】可動側金型と、第一固定側金型10とを重ね合わせて成形された空間に、第一材料を射出して、筐体100を成形し、可動側金型に筐体100を保持した状態で、第一固定側金型10を可動側金型から離間させる。次に、筐体100を保持した可動側金型を第二固定側金型と対向する位置へ移動させ、可動側金型と、第二固定側金型とを重ね合わせて成形された空間に、第二材料を射出して、可動側金型に保持された筐体にシール部材を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材を備えた筐体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯電話機などの電子機器の筐体は、上部筐体と下部筐体とからなり、下部筐体の上部筐体との接合面に防水などの目的でシール部材を設けている。そして、このシール部材を上部筐体の接合面との間で弾性変形させ、上部筐体に下部筐体を取り付けている。
【0003】
シール部材が設けられた筐体は、シール部材と筐体とを別々に成形し、筐体のシール取り付け部にシール部材を組み付けることで製造されている。
【0004】
特許文献1には、予め専用の金型によって成型された筐体を、別の金型に設置し、筐体の所望の位置にシール部材を成型する、所謂インサート成形によって製造する方法が記載されている。このように、シール部材を、インサート成形で筐体に成形することによって、シール部材を筐体に組み付ける作業をなくすことができ、生産性を向上できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、インサート成形の場合は、専用の金型で成形した筐体を金型から取り出し、別の金型にセットするという工程を有するため、シール部材を備えた筐体の生産性を十分には向上できなかった。また、少なくとも、筐体を成形するための2個以上の金型と、インサート成形するための2個以上の金型とが必要となり、金型費が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、シール部材を備えた筐体の製造工程を削減でき、生産性を向上させることのでき、かつ、金型費の増大を抑えることができるシール部材を備えた筐体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、移動金型と、第一金型とを重ね合わせて形成された空間に、溶融した第一材料を射出して、筐体を成形する工程と、上記移動金型に上記筐体を保持した状態で、上記第一金型を上記移動金型から離間させる工程と、シール部材を成形するための第二金型と対向する位置に、上記移動金型を移動させる工程と、上記移動金型と、上記第二金型とを重ね合わせて形成された空間に、上記第一材料よりも軟質な溶融した第二材料を射出して、上記移動金型に保持された筐体にシール部材を成形する工程とを有することを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1のシール部材を備えた筐体の製造方法において、上記第一材料として、非晶性材料を用い、上記第二材料として、熱可塑性エラストマーを用いたことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2のシール部材を備えた筐体の製造方法において、上記第一金型を上記移動金型から離間させるときに、上記筐体を上記移動金型に保持させるための保持手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項3のシール部材を備えた筐体の製造方法において、上記保持手段は、上記第一金型に設けられ、上記第一金型を上記移動金型から離間させるときに上記筐体を上記移動金型側へ押圧する押圧手段を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至5いずれかのシール部材を備えた筐体の製造方法において、上記移動金型に保持された筐体にシール部材を成形した後、上記第二金型にシール部材が成形された筐体を保持した状態で、上記第二金型を上記移動金型から離間させる工程を有し、上記第二金型に、上記第二金型からシール部材が成形された筐体を取り出すための取り出し手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至6いずれかのシール部材を備えた筐体の製造方法において、上記筐体の内周面が、第一金型により成形されることを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7いずれかのシール部材を備えた筐体の製造方法において、上記シール部材のシール部以外の箇所に、最後に第二材料を流れ込ませるためのオーバーフロー部が成形されるよう上記第二金型を形成したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、筐体を成形する工程と、シール部材を成形する工程とで、共通の移動金型を使用するので、特許文献1に記載の製造方法に比べて、金型費を抑えることができる。また、筐体を成形した後、筐体が保持された移動金型を、第二金型と対向する位置へ移動させることで、筐体の所定の位置にシール部材を成形することができる。これにより、成形した筐体を金型から取り外して、別の金型にセットする工程を無くすことができ、生産性を向上することができる。
また、本発明によれば、筐体を成形してから、筐体にシール部材を成形するので、シール部材を成形してから、シール部材に筐体を成形する場合に比べて、次の効果を得ることができる。すなわち、シール部材を成形してから筐体を成形する場合、射出圧により移動金型に保持されたシール部材が変形する。その結果、移動金型とシール部材との間に隙間が生じ、そこに筐体を成形する材料が流れ込む所謂かぶりが生じるおそれがある。一方、筐体は、シール部材よりも硬質な第一材料で成形される。このため、成形された筐体は、シール部材よりも射出圧による変形を抑制することができる。よって、筐体を成形してから、筐体にシール部材を成形することによって、かぶりを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施形態に係る二色成形機の概略構成図。
【図2】本二色成形機により成形されるシール部材を備えた筐体の斜視図。
【図3】可動金型部と固定金型部とが離間した状態を示す図。
【図4】二次成形部において、エジェクタピンにより完成品を第二固定側金型から取り外す状態を示す図。
【図5】樹脂かぶりについて説明する図。
【図6】二色成形機における電気回路の一部を示すブロック図。
【図7】二色成形機の制御フローチャート
【図8】変形例の二色成形機で成形されるシール部材を備えた筐体の平面図。
【図9】一次成形部で成形される一次成形品(筐体)の平面図。
【図10】二次成形部で成形される二次成形品(シール部材)の平面図。
【図11】シール部材を備えた筐体の断面斜視図。
【図12】変形例の二色成形機の一次成形部における工程を説明する図。
【図13】変形例の二色成形機の二次成形部における工程を説明する図。
【図14】第二固定側金型周辺の部分拡大断面図。
【図15】変形例の二色成形機における電気回路の一部を示すブロック図。
【図16】(a)は、一次成形部の制御フローチャートであり、(b)は、二次成形部の制御フローチャート。
【図17】スライダを複数設けた構成における一次成形品成形後の可動側部の平面図。
【図18】スライダを複数設けた構成における二次成形品成形後の可動側部の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
図1は、二色成形機1の概略構成図であり、図2は、本二色成形機1により成形されるシール部材101を備えた筐体100の斜視図である。
図2に示すように、シール部材101を備えた筐体100は、上方に開口した凹部空間が形成され、開口の回りの開口端面にシール部材101が形成されている。筐体は、ABS樹脂(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)、PC樹脂(ポリカーボネート樹脂)、PC/ABS系ポリマーアロイなどの非晶性材料で形成されている。シール部材は、ポリエステル系熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性エラストマー(TPE)で形成される。
【0011】
このシール部材を備えた筐体100の凹部空間に、不図示の回路基板などが収納され、表示部や操作部を備えた不図示の上部筐体の接合面により、シール部材が潰されて、上部筐体が、シール部材を備えた筐体取り付けられる。
【0012】
図1に示すように、二色成形機1は、一次成形部2と、二次成形部3とを有している。
一次成形部2には、第一固定側部4aを有しており、二次成形部3には、第二固定側部4bを有している。また、二色成形機1は、不図示の回転盤に設置された2つの可動側部5a,5bが設けられており、図においては、第一可動側部5aが、第一固定側部4aと対向しており、第二可動側部5bが、第二固定側部4bと対向している。第一可動側部5aと、第二可動側部5bとは、同じ構成である。
【0013】
第一固定側部4aは、金型プレート6a、押付機構7a、ランナープレート8a、スプループレート9aなどで構成されている。金型プレート6aには、筐体成形のための筐体成形部を有した第一金型としての第一固定側金型10がセットされている。保持手段であり、押付手段である押付機構7aは、押付プレート71a、シリンダ73a、押付ピン72aなどを有している。押付プレート71aは、第一固定側金型10の図中上部に所定の隙間を有して配置されている。押付ピン72aは、第一固定側金型10に形成された貫通孔に挿入されており、一端が、押付プレート71aに固定され、他端が、第一固定側金型の筐体成形部に面している。押付プレート71aの図中両端には、金型プレート6aに固定された空圧式のシリンダ73aが取り付けられている。押付プレート71aは、ランナープレート8aとの間に配設された複数のスプリング16aにより第一可動側部5a側に押圧されている。
【0014】
押付プレート71aの図中上部には、複数のスプリング16aを介して、ランナープレート8aが設けられている。ランナープレート8aには、押付プレート71aを貫通する貫通部81aを有している。ランナープレート8aには、第一固定側金型10に溶融材料を流し込む流路であるランナー18aが形成されており、ランナー18aは、貫通部81a内を通って、第一固定側金型10のランナー17aと接続している。
【0015】
ランナープレート8aの図中上部には、スプループレート9aが設けられており、スプループレート9aには、スプルー15aが形成されたスプルー部14aが組み込まれている。スプループレート9aは、第一プレート91aと、第二プレート92aとからなり、第一プレート91aと、第二プレート92aとは、接離可能に構成されている。スプルー15aの入口は、溶融材料を射出する不図示の射出器のノズルが接続されており、スプルー15aの出口は、ランナープレート8aに形成されたランナー18aと接続している。
【0016】
第一固定側部4aは、対向する可動側部に対して、接離可能に構成されており、また、スプループレート9aは、ランナープレート8aに対して、接離可能に構成されている。
【0017】
第二固定側部4bは、次の点以外は、第一固定側部4aと同様な構成である。すなわち、金型プレート6bにセットされる金型が、シール部材101成形するための第二金型としての第二固定側金型20である点。押付機構7aがなく、第二固定側金型20から製品を取り出すための取り出し手段たるエジェクタ機構7bを設けている点。ランナー17b,18bやスプルー15bの形状が異なる点である。また、第二固定側部4bのエジェクタ機構7bは、エジェクタプレート71b、シリンダ73b、エジェクタピン72bなどを有している。エジェクタプレート71bは、第二固定側金型20に対して所定の隙間を有して配置されている。エジェクタピン72bは、第二固定側金型20に形成された貫通孔に挿入されており、一端が、エジェクタプレート71bに固定され、他端が第二固定側金型20のシール部材を成形するためのシール部材成形部に面している。エジェクタプレート71bの図中両端には、金型プレート6bに固定された空圧式のシリンダ73bが取り付けられている。
【0018】
不図示の回転盤に設置された第一、第二可動側部5a,5bは、金型保持部11a,11b、移動金型としての可動側金型12a,12bなどを有している。金型保持部11a,11bの図中上面に可動側金型12a,12bがセットされている。
【0019】
図1においては、装置の理解しやすさの観点から各固定側部4a,4bが、各可動側部5a,5bの上方に配置された構成にしているが、図1を90°回転させた構成、すなわち、一次成形部2と二次成形部3とが並列に配置され、各固定側部が各可動側部に対して水平方向に移動することで型開き・型閉じが行なわれる構成が、一般的な構成である。
【0020】
図6は、二色成形機1における電気回路の一部を示すブロック図である。同図において、制御手段たる制御部200は、二色成形機全体の制御を司るもので、演算手段であるCPU、記録手段であるRAM、ROM等から構成されている。この制御部200には、第一固定側部4aの各プレート(金型プレート6a、ランナープレート8a、スプループレート9a)を移動させる第一プレート駆動部201aが接続されている。また、押付機構7aの空圧式のシリンダ73aを移動させるための押付機構駆動部202a、第一材料を射出するための第一射出機203aなども接続されている。また、第一プレート駆動部201aは、スプループレート9aのみを移動させる移動手段と、金型プレート6a、ランナープレート8aを一体で移動させる移動手段とを備えている。また、制御部200は、第二固定側部4bの各プレート(金型プレート6b、ランナープレート8b、スプループレート9b)を移動させる第二プレート駆動部201bが接続されている。また、エジェクタ機構7bの空圧式のシリンダ73bを移動させるためのエジェクト機構駆動部202b、第二材料を射出するための第二射出機203bなども接続されている。さらに、第二プレート駆動部201bは、スプループレート9bのみを移動させる移動手段と、金型プレート6b、ランナープレート8bを一体で移動させる移動手段とを備えている。また、制御部200には、不図示の回転盤を回転させる回転盤駆動部204も接続されている。
【0021】
次に、成形工程について、図1、図3、図4を用いて説明する。
まず、一次成形部における工程について、説明する。
図1に示すように、制御部200は、第一射出機203aを制御して第一射出機203aの不図示のノズルから、溶融した筐体100を成形する材料である第一材料(非晶性材料)をスプルー15aに射出する。本実施形態としては、第一材料として、PC/ABS系ポリマーアロイであるマルチロン D−3410FA(帝人化成株式会社製)を用いた。スプルー15aに射出された第一材料は、ランナー18a,17aを介して、第一可動側金型12aの筐体成形部と、第一固定側金型10の筐体成形部とで構成された空間に充填され、一次成形品たる筐体100が成形される。
【0022】
次に、制御部200は、第一プレート駆動部201aを制御して、スプループレート9aをランナープレート8aから離間する方向へ移動させる。これにより、筐体100と、スプルーランナー部S1とが離間し、スプルーランナー部S1が露出する。また、スプループレート9aの第二プレート92aが、第一プレート91aから離間し、スプルーランナー部S1を除去しやすくしている。次に、制御部200は、押付機構駆動部202aを制御して、押付プレート71aを複数のスプリング16aに抗してランナープレート8a側に押圧していたシリンダ73aの空気圧を、シリンダ73aが押付プレート71aを第一固定側金型10側に引き寄せる空気圧に切り替える。これにより、成形された筐体100が、押付ピン72aにより、第一可動側金型12aに押圧される。次に、制御部200は、第一プレート駆動部201aを制御して、金型プレート6a、ランナープレート8aを第一可動側金型12から離間する方向へ移動させる。金型プレート6aが移動して、第一固定側金型10が、第一可動側金型12aから離間し始めると、押付ピン72aが、複数のスプリング16aの押圧力と押付プレート71aを第一固定側金型10側へ移動させるシリンダ73aの力とにより第一固定側金型10から突出し、筐体100を第一可動側金型12aへ押し付ける。これにより、筐体100が、第一可動側金型12aに保持される(図3参照)。
【0023】
次に、図4に示すように、制御部200は、押付機構駆動部202aを制御して空気圧シリンダ73aの空気圧を、シリンダ73aが押付プレート71aを、ランナープレート側へ押圧する空気圧へ切り替え、押付プレート71aをランナープレート8aに当接させる。次に、エアブローなどを施して、スプルーランナー部S1を除去する。
以上が、一次成形部2における工程である。
【0024】
次に、二次成形部3における工程について、説明する。
まず、制御部200は、第二射出機203を制御して、図1に示すように、一次成形部2で溶融した第一材料がスプルー15aに射出されるのと、ほぼ同期して第二射出機203bの不図示のノズルから溶融した第二材料(熱可塑性エラストマー)をスプルー15bに射出する。本実施形態としては、第二材料として、ポリエステル系熱可塑性エラストマーであるプリマロイ A1600N(三菱化学株式会社製)を用いた。スプルー15bに射出された第二材料は、ランナー18b,17bを介して、第二可動側金型12bに保持された筐体100と、第二固定側金型20のシール部材成形部とで構成された空間内に充填される。これにより、筐体100の所定の位置にシール部材101が成形される。これにより、二次成形品であるシール部材101を備えた筐体100(以下、完成品という)が成形される。
【0025】
次に、制御部200は、第二プレート駆動部203bを制御して、スプループレート9bをランナープレート8bから離間する方向へ移動させる。これにより、図3に示すように、スプルーランナー部S2と、完成品とが分離されるとともに、スプルーランナー部S2が露出する。次に、金型プレート6bと、ランナープレート8bとを第二可動金型12bから離間する方向へ移動させる。このとき、完成品は、第二固定側金型20に保持され、第二固定側部4bとともに、第二可動側部5bから離間する。
【0026】
次に、完成品を保持するための治具を、第二固定側部4bと第二可動側部5bとの間に挿入したら、図4に示すように、制御部200は、エジェクト機構駆動部202bを制御して、エジェクタプレート71bをランナープレート8a側に押圧していたシリンダ73bの空気圧を、エジェクタプレート71bを第二固定側金型20に引き寄せる空気圧に切り替える。すると、エジェクタプレート71bが、シリンダ73bによって、第二固定側金型20側へ移動し、エジェクタピン72bが、第二固定側金型20から突出する。これにより、成形された完成品が、エジェクタピン72bにより、第二可動側部5b側に押される。その結果、完成品が、第二固定側金型20から取り外され、完成品が治具に保持され、装置から取り出される。完成品が、二次成形部3から取り出されたら、制御部200は、空気圧シリンダ73bの空気圧を切り替えて、エジェクタプレート71aをランナープレート8b側へ移動させ、エジェクタプレート71aをランナープレート8aに当接させる。そして、エアブローなどを施して、スプルーランナー部S2を除去する。
以上が、二次成形部3での工程である。
【0027】
一次成形部2、および二次成形部3で、スプルーランナー部S1,S2を除去したら、制御部200は、不図示の回転盤を回動させて、第一可動側部5aを、第二固定側部4bと対向させ、第二可動側部5bを、第一固定側部4aと対向させる。そして、スプループレート9aをランナープレート8aと当接させ、第一固定側部4aを第二可動側部5bへ移動させて、第一固定側金型10を第二可動側金型12bに重ね合わせて、上述と同様にして、一次成形部で、第二可動金型に筐体を成形する。また、スプループレート9bをランナープレート8bと当接させる。また、第二固定側部4bを第一可動側部5aへ移動させて、第二固定側金型20を第一可動側金型12aに重ね合わせる。そして、上述同様、二次成形部でシール部材101を備えた筐体100を成形する。
【0028】
本実施形態では、一次成形部2で筐体100を成形し、二次成形部3で、筐体100にシール部材101を成形しているので、樹脂かぶりを抑制することができる。以下に、具体的に説明する。
図5は、一次成形部2でシール部材101を成形し、二次成形部3でシール部材101に筐体100を成形するよう構成した二色成形機における、二次成形部3の要部拡大構成図である。
図に示すように、二次成形部3において、樹脂材を充填する際、エラストマーからなる軟質のシール部材101が圧力により変形する。その結果、可動側金型12とシール部材101との間に隙間ができ、この隙間に、筐体100を成形する樹脂材が流れ込んで、樹脂かぶりが発生してしまう。筐体100を成形する樹脂材料は、ABS樹脂やPO樹脂などの比較的硬質の樹脂である。よって、完成品にこのような樹脂かぶりがあると、不図示の上部筐体を、シール部材101を備えた筐体100に取り付ける際に、この樹脂かぶりが、シール部材101が潰れるのを阻害してしまう。その結果、十分なシール性が得られなくなるという不具合が生じる。
【0029】
一方、本実施形態においては、一次成形部2で筐体100を成形している。よって、二次成形部3で、シール部材101を成形するためにエラストマーを充填するときに、ABS樹脂などの比較的硬質な樹脂材からなる筐体100は、圧力により変形し難い。これにより、二次成形部3での成形時に、筐体100と可動側金型との間に隙間が生じて、そこにエラストマーが流れ込むのを抑制することができる。
【0030】
また、本実施形態においては、筐体100の内周面が第一固定側金型10により成形されるよう構成している。このように構成することによって、シール部材101のゲートおよび筐体100のゲートが筐体100の内周面となるように容易に設定することができる。その結果、図2に示すように、シール部材101のゲート跡M2、筐体100のゲート跡M3が、人目のつかない筐体100の内周部となり、完成品の外観が損なわれるのを抑制することができる。また、本実施形態においては、完成品を第二固定側金型に保持し、第二固定側部5bに取り出し手段たるエジェクタ機構7bを設けて完成品を第二固定側金型20から取り出すようにしている。これにより、図2に示すように、筐体の内周面にエジェクタピンの跡M1ができ、エジェクタピンの跡を人目につかないようにすることができ、製品の外観を損なわにようにすることができる。
【0031】
また、筐体100の内周面が第一固定側金型10により成形されるよう構成した場合、一次成形部2で樹脂材を流し込んで、樹脂材が冷えて硬化すると、樹脂材が縮み、第一固定側金型10に筐体100が密着してしまう。その結果、筐体成形の型開き時に、筐体100が、可動側金型12に保持されず、第一固定側金型10に保持されるおそれがある。しかし、本実施形態においては、保持手段であり、押付手段である押付機構7aを第一固定側部4aに設けて、一次成形部2で、筐体100成形後の型開き時に、押付ピン72aで、筐体100を可動側金型12に押し付けている。これにより、筐体100を確実に、可動側金型12に保持させることができる。
【0032】
図7は、二色成形機の制御フローチャートである。
図に示すように、まず、制御部200は、一次成形部2および二次成形部3において、金型プレート6a,6bを可動側部5a,5b側へ移動させて、型閉めを行う(S1)。次に、制御部200は、第一射出機203aおよび第二射出機203bからそれぞれ材料を射出し、各成形部2、3で成形品を成形する(S2)。次に、制御部200は、押付機構駆動部202aを制御して、空気圧シリンダ73aの空気圧を切り替える(S3)。次に、制御部200は、第一、第二プレート駆動部201a,201bを制御して、各成形部2,3で型開き動作を行う(S4)。このとき、押付機構7aのシリンダ73aの空気圧が押付プレート71aをランナープレート8a側へ押圧する空気圧から、押付プレート71aを第一固定側金型10側へ引き寄せる空気圧に切り替わっている。よって、押付ピン72aが、複数のスプリング16aの押圧力と、シリンダ73aの空気圧とにより第一固定側金型10から突出し、筐体100が第一可動側金型12aへ押し付けられる。これにより、筐体100が可動側金型12に保持される。次に、制御部200は、エジェクタ機構駆動部202bを制御して、空気圧シリンダ73bの空気圧を切り替えて、エジェクタピン71bを突出させて、完成品を第二固定側金型20から取り出す(S5)。
【0033】
本実施形態においては、押付機構7aは空気圧式のシリンダ73aを有しているが、空気圧式のシリンダ73aが無い構成でもよい。この場合、押付プレート71に第一固定側金型10を貫通して可動側金型12のパーティングライン(可動側金型12の第一固定側金型10との対向面のうち、筐体成形部以外の面)に当接するリターンピンを設ける。型が閉じているときは、可動側金型12によって、リターンピンがランナープレート8a側へ押圧されることで、押付プレート71aがランナープレート8aに当接している。これにより、押付ピン72aの先端が、可動側金型12の筐体成形部に当接せず、第1固定側金型10の筐体成形部に面することができる。筐体成形後、金型プレート6aが移動して、第一固定側金型10が第一可動側金型12aから離間し始めると、複数のスプリング16aの押圧力により押付ピン72aとリターンピンとが、第一固定側金型10から突出し、押付ピン72aで筐体100を第一可動側金型12aに押し付ける。このような構成でも、可動側金型12と第一固定側金型10とを離間させるときに、押付ピン72aで、筐体100を可動金型12側に押し付けることができる。
【0034】
次に、本発明の変形例について、説明する。
図8は、変形例の二色成形機で成形されるシール部材101を備えた筐体100の平面図である。図9は、一次成形部2で成形される一次成形品(筐体100)の平面図であり、図10は、二次成形部3で成形される二次成形品(シール部材101)の平面図である。図11は、シール部材101を備えた筐体100の断面斜視図である。
図8、9に示すように、筐体100には、部品が組み込まれるための複数の枠部102a、回路基板などがネジ止めされるための複数のネジ止め部102cなどを有している。図8、図11に示すように、筐体100の外枠の内壁面に沿って、無端状のシール部材101が形成されている。また、図11に示すように、シール部材101の頂部から外側の傾斜面が、この筐体100に取り付けられる不図示のもう一方の筐体と当接してシール性を発揮するためのシール部101cとなっている。そして、シール部材101のシール部101c以外の箇所であるシール部材の内周壁101dには、4箇所のゲート部101aと、第二材料(エラストマー)が最後に流れ込むオーバーフロー部101bが4箇所形成されている。このオーバーフロー部101bは、図8に示すように、4箇所のゲート部101aから流れ込んできた第二材料が交わる箇所に形成されている。
【0035】
次に、変形例の二色成形機について説明する。
図12は、変形例2の二色成形機の一次成形部2における工程を説明する図であり、図13は、変形例の二色成形機の二次成形部3における工程を説明する図である。
【0036】
図12、図13に示すように、この変形例の二色成形機の各固定側部4a,4bには、金型プレート6を可動側部5に固定するためのプラロック19を備えている。プラロック19は、ランナープレート8に取り付けられている。図12(a)、図13(a)に示すように、型閉時は、プラロック19の先端が可動側部5の可動側金型プレート24に設けられた凹形状の被ロック部に挿入されて、固定側の金型プレート6を可動側の金型プレート24に固定している。また、第一固定側部4aに設けられた固定側押付機構7の固定側押付プレート71には、固定側押付ピン72の他に固定側押付リターンピン73が設けられている。固定側押付リターンピン73は、固定側の金型プレート6aを貫通して、可動側部5の可動側金型プレート24と対向している。固定側押付プレート71は、固定側金型プレート内に移動可能に設けられており、固定側押付プレート71は、固定側押付プレートを移動させる空気圧シリンダや油圧シリンダなどの固定側押付機構駆動部202a(図15参照)に接続されている。固定側押付リターンピン73は、次の3つの機能を有している。すなわち、一つ目は、押付プレート71aが引っ掛かるなどしてランナープレート8側に戻らなかったとき、型閉め時に可動側金型プレート24と当接して、押付プレート71をランナープレート8側へ戻す機能である。2つ目は、押付プレート71が傾いて移動しないようにガイドする機能である。3つ目は、後述するように第一固定側金型10を可動側金型12から離間させる機能である。
【0037】
第二固定側部4bに設けられたエジェクト機構700のエジェクトプレート701の構成は、第一固定側部4bの固定側押付機構7と同様な構成をしている。すなわち、エジェクタプレート701にエジェクタピン702の他にリターンピン703が設けられている。リターンピン703は、可動側部5の可動側金型プレート24と対向している。エジェクタプレート701は、固定側金型プレート内に移動可能に設けられている。エジェクタプレート701は、エジェクタプレート701を移動させる空気圧式や油圧式のシリンダなどのエジェクタ機構駆動部202b(図15参照)に接続されている。エジェクタ機構700のリターンピン703は、次の2つの機能を有している。すなわち、エジェクトプレート701が引っ掛かるなどしてランナープレート8側に戻らなかったとき、型閉め時に可動側金型プレート24と当接して、エジェクトプレート701をランナープレート8側へ戻す機能である。2つ目は、エジェクトプレート701が傾いて移動しないようにガイドする機能である。
【0038】
各可動側部5a,5bは、内部に可動側押付機構25の可動側押付プレート251や、後述するスライダ機構210のアンギュラプレート26を移動させるためのスペースを有するスペーサーブロック110を有している。スペーサーブロック110は、可動側金型12を保持する可動側金型プレート24が保持されている。可動側押付機構25は、上記固定側部に設けられた固定側押付機構7と同様の構成を有している。すなわち、可動側押付プレート251に可動側押付ピン252と可動側リターンピン253とが設けられている。可動側押付機構25の可動側押付ピン252は、可動側金型プレート24、可動側金型12を貫通して、先端が可動側金型12の筐体成形部に面している。可動側押付機構25の可動側リターンピン253は、可動側金型プレート24を貫通して、先端が可動側金型プレート24のパーティングライン(固定側部との対向面)に面している。この可動側リターンピン253も、可動側押付プレート251を型閉め時に元の位置に戻す機能、可動側押付プレートをガイドする機能、後述するように第二固定側金型20を可動側金型12から離間させる機能を有している。
【0039】
また、各可動側部5a,5bには、保持手段であり、対向部材である板状のスライダ21、スライダをスライドさせるためのスライド機構210が設けられている。このスライダ21は、可動側金型プレート24のパーティングライン(第一固定側部との対向面)に設けられた矩形状の凹部にスライド自在に取り付けられている。スライド機構210は、アンギュラピン22と、アンギュラプレート26と、アンギュラプレート26を移動させるスライダ駆動部205(図15参照)とを備えている。図12に示すように、このスライダ21には、矩形状の貫通孔21aが設けられており、この貫通孔21aにアンギュラピン22の先端部分が貫通している。アンギュラピン22は、スペーサーブロック110内部に移動可能に設けられたアンギュラプレート26に取り付けられ、可動側金型プレート24を貫通している。スライダ21の貫通孔21aの外側の面は、図中下方から上方へ向かうにつれて、内側(可動金型)に近づくようなテーパ面となっている。スライドピン22の先端の貫通孔21aのテーパ面と対向する部分も、図中下方から上方へ向かうにつれて、内側(可動金型)に近づくようなテーパ面となっている。
【0040】
また、各固定側部4a,4bには、スライダ21のスライドをロックするためのロッキングブロック23が設けられている。第一固定側部4aのロッキングブロック23は、図12示すように、金型プレート6に取り付けられており、型閉時、先端がスライダ21の外側端部と当接している。一方、第二固定側部4bのロッキングブロック23は、図13に示すように、ランナープレート8に取り付けられており、金型プレート6を貫通し、型閉時、先端がスライダ21の外側端部と当接している。スライダ21の外側端部は、図中下方から上方へ向かうにつれて、内側(可動金型側)に近づくようなテーパ面となっている。また、ロッキングブロック23の先端のスライダの外側端部と当接箇所も、図中下方から上方へ向かうにつれて、内側(可動金型側)に近づくようなテーパ面となっている。
【0041】
図14は、第二固定側金型20の周辺の要部拡大断面図である。
図14に示すように、第二固定側金型20のノズルから射出された第二材料が交わる箇所には、オーバーフロー成形部20aが設けられている。このオーバーフロー成形部20aには、不図示のガス抜き弁が設けられている。
【0042】
図15は、変形例の二色成形機における電気回路の一部を示すブロック図である。
この変形例の二色成形機の制御部200には、可動側押付機構駆動部206やスライダ駆動部205なども接続されている。
【0043】
次に、この変形例の二色成形機の一次成形部の工程について、図12および図16(a)を用いて説明する。
まず、制御部200は、型閉動作を行った後(S11)、図12(a)に示すように、第一射出機203aの不図示のノズルから、第一材料を射出して、一次成形品たる筐体100を成形する(S12)。このとき、スライダ21は、スライダ21の一部が、筐体100と対向する対向位置に位置させている。次に、制御部200は、第一プレート駆動部201aを制御して、図12(b)に示すように、スプループレート9をランナープレート8から離間する方向に移動させて、スプルーランナー部S1を、露出させる(S13)。次に、図12(c)に示すように、スプループレート9の第二プレート92を、第一プレート91から離間し、スプルーランナー部S1を除去しやすくする。
【0044】
次に、制御部200は、プラロック19のロックを解除し(S14)、固定側押付機構駆動部202aを制御して、図12(d)に示すように、押付プレート71を第一固定側金型10側へ移動させる(S15)。すると、固定側リターンピン73が金型プレート6から突き出して金型プレート6およびランナープレート8を可動側金型12から離間させる方向へ移動させる。また、これと同時に固定側押付ピン72が突き出して、一次成形品である筐体100を可動側金型12に押し付ける。また、このとき、スライダ21の一部が筐体100の一部と対向しており、筐体100が第一固定側金型10に保持されて第一固定側金型10とともに移動するのを阻止する。このように、変形例の二色成形機においては、スライダ21と、固定側押付ピン72とで、筐体100を可動側金型12に保持させる。また、この変形例においては、固定側押付プレート71に設けた固定側リターンピン73で第一固定側金型10と可動側金型12とを離間させる。よって、第一固定側金型10の離間のタイミングと、固定側押付ピン72の突き出しタイミングとを簡単な構成で同期させることができる。これにより、固定側押付ピン72で確実に筐体100を可動側金型12側に押し付けることができる。
【0045】
そして、固定側リターンピン73で所定量金型が開いたら、制御部200は、第一プレート駆動部201aを制御して、図12(e)に示すように、金型プレート6とランプレート8とを可動側金型12から離間する方向に移動させる(S16)。これにより、第一固定側金型10が完全に可動側金型12から離間する。
【0046】
次に、この変形例の二色成形機の二次成形部3の工程について、図13および図16(b)を用いて説明する。
まず、制御部200は、型閉動作を行った後(S21)、図13(a)に示すように、一次成形部2で溶融した第一材料が射出されるのとほぼ同期して、第二射出機203bの不図示のノズルから溶融した第二材料(熱可塑性エラストマー)を射出する(S22)。すると、可動側金型12に保持された筐体100と、第二固定側金型20のシール部材成形部とで構成された空間に第二材料が充填され、筐体100の所定の位置にシール部材101が成形される。このとき、4箇所のゲートから筐体100と第二固定側金型のシール部材成形部とによって形成された空間に射出された第二材料は、図10に示すような経路を通って、最後に図14に示すオーバーフロー成形部20aへ充填される。このとき、上記空間内に射出された第二材料から発生したガスは、オーバーフロー成形部20aへ流れていき、オーバーフロー成形部20aに設けられた不図示のガス抜き弁から排出される。オーバーフロー成形部20aを設けることにより、次の効果が得られる。すなわち、ガスが完全に抜け切らずに上記空間内にたまったりして、充填不良などが生じても、その充填不良の発生箇所は、最後に第二材料が充填されて成形されるオーバーフロー部101bに生じる(図10参照)。これにより、シール部材101のシール部101cに充填不良による欠肉などが生じるのを抑制することができるという効果である。また、オーバーフロー成形部20aに不図示のガス抜き弁を設けることで、オーバーフロー部101cにガス抜き弁の跡が生じることになり、シール性に影響が生じることがない。
【0047】
筐体100にシール部材101が成形されたら、制御部200は、第二プレート駆動部201bを制御して、図13(b)に示すように、スプループレート9とランナープレート8とを可動側金型12から離間する方向へ移動させる(S23)。これにより、ロッキングブロック23が、スライダ21の外側端部から離間する。次に、制御部200は、スライダ駆動部205を制御して、図13(c)に示すように、アンギュラプレート26を可動側金型側へ移動させて、アンギュラピン22を移動させる。すると、アンギュラピン先端のテーパ面が、スライダ21の貫通孔21aのテーパ面と当接して、スライダ21を図中左側へ移動させる(S24)。これにより、スライダ21の筐体100の一部と対向していた部分が、退避する。
【0048】
次に、制御部200は、プラロック19のロックを解除(S25)し、図13(d)に示すように、可動側押付機構駆動部206を制御して、可動側押付プレート251を可動側金型側へ移動させる。すると、可動側リターンピン253が可動側金型プレート24から突き出して固定側の金型プレート6を移動させる。また、これと同時に可動側押付ピン252が突き出して、完成品を第二固定側金型20に押し付ける。このときは、上述したように、スライダ21が退避して、筐体100とは対向していないので、完成品は、スライダ21に移動が阻止されることなく、第二固定側金型20の保持され、第二固定側金型20とともに移動する。この変形例では、第二固定側金型20と可動金型12とが離間するときに、可動側押付ピン252で、完成品を第二固定側金型20へ押し付ける。これにより、確実に、完成品を第二固定側金型20に保持させることができる。
【0049】
次に、制御部200は、第二プレート駆動部201bを制御して、図13(e)に示すように、スプループレート9をランナープレート8から離間する方向に移動させる(S26)。すると、スプループレート9とランナープレート8とが離間し、スプルーランナー部S2が露出する。次に、図13(f)に示すように、スプループレート9の第二プレート92を、第一プレート91から離間させ、スプルーランナー部S2を除去しやすくする。次に、制御部200は、第二プレート駆動部201bを制御して、図13(g)に示すように、金型プレート6とランナープレート8とを可動側金型12から離間する方向に移動させて、第二固定側金型20を完全に可動側金型12から離間させる(S28)。次に、完成品を保持するための不図示の治具を、第二固定側部4bと第二可動側部5bとの間に挿入する。そして、制御部200は、エジェクト機構駆動部202bを制御して、図13(h)に示すように、エジェクタプレート71を第2固定側金型20側へ移動させる。すると、完成品がエジェクタピン72により、第二固定側金型20から取り外はずされ、治具に保持される。
【0050】
この変形例においては、一次成形部2において、第一金型たる第一固定側金型10と移動側金型たる可動側金型12とが離間するときに、筐体100を可動側金型12に保持させるための保持手段設けている。具体的には、保持手段として、次の2つの構成を有している。すなわち、ひとつめの保持手段は、第一金型側である第一固定側部4に設けられ、第一固定側金型10を可動側金型12から離間させるときに筐体100を可動側金型側へ押し付ける押付手段としての固定側押付機構7である。2つ目の保持手段は、移動金型側たる可動側部5の第一固定側部4との対向面にスライド自在に設けられ、少なくとも第一固定側金型10を可動側金型12から離間させるときに筐体100の一部と対向する対向部材たるスライダ21である。第一固定側金型10を可動側金型12から離間させるとき、固定側押付機構7の押付ピン71で、筐体100を可動側金型12に押し付ける。また、このとき、スライダ21の一部を筐体100と対向させて、筐体100が、第一固定側金型10とともに移動するのを阻止する。これにより、筐体100を可動側金型12に確実に保持させることができる。
【0051】
また、この変形例においては、シール部材101のシール部101c以外の箇所に、最後に第二材料を流れ込ませるためのオーバーフロー部101bが成形されるよう第二金型たる第二固定側金型20にオーバーフロー成形部20aを設けている。これにより、第二材料の充填不良が生じても、その影響は、最後に第二材料が流れ込むオーバーフロー部101bに生じる。その結果、シール部材101のシール部101cに欠肉などが生じるのを抑制することができ、良好なシール性が得られるシール部材101を備えた筐体100を成形することができる。
【0052】
また、この変形例においても、第一固定側金型12で筐体100の内周面を成形するので、ゲートを筐体100の内周面に容易に設定することができる。これにより、筐体100の外周面にゲート跡が生じないので、製品の外観を損ねるのを抑制することができる。
【0053】
また、上記変形例においては、スライダ21を図中左側のみに設けているが、図17に示すように、スライダ21を複数設けてもよい。この図17に示す構成は、可動側金型プレート24の固定側の金型プレートとの対向面の図中左側と右側とに矩形の凹部24R,24Lを設け、これら凹部24R,24Lにスライダ21R,21Lをスライド自在に設けている。第一成形部2で筐体100を成形し、第一固定側金型10と可動金型12とを離間させるときは、図17に示すように、図中左側のスライダ21Lの一部を筐体100の図中左側端部と対向させる。また、図中右側のスライダ21Rの一部を筐体100の図中右側端部と対向させる。これにより、筐体100が、第一固定側金型10とともに移動しようとするのをスライダ21L,21Rが阻止して、筐体100を可動側金型12に保持させることができる。そして、二次成形部3で完成品を成形して、第二固定側金型20を可動側金型12から離間させるとき、図18に示すように、図中左側のアンギュラピン22Lを固定側部側へ移動させて、図中左側のスライダ21Lを図中矢印A1方向へ移動させる。また、図中右側のアンギュラピン22Rを固定側部側へ移動させて、図中右側のスライダ21Rを図中矢印A2方向へ移動させる。これにより、スライダ21L、21Rが退避し、筐体100と対向しなくなる。各スライダ21R,21Lが退避したら、第二固定側金型20を可動側金型12させて、可動側金型12から離間させる。このとき、各スライダ21R,21Lは、退避位置にあり、筐体100と対向していないので、完成品は、第二固定側金型20に保持されて、第二固定側金型20とともに移動する。
【符号の説明】
【0054】
1:二色成形機
2:一次成形部
3:二次成形部
4a:第一固定側部
4b:第二固定側部
5a:第一可動側部
5b:第二可動側部
6a,6b:金型プレート
7a:押付機構
7b:エジェクタ機構
8a,8b:ランナープレート
9a,9b:スプループレート
10:第一固定側金型
11a,11b:金型保持部
12a:第一可動側金型
12b:第二可動側金型
14:スプルー部
15a15b:スプルー
16a,16b:スプリング
17a,17b,18a,18b:ランナー
20:第二固定側金型
71a,71b:エジェクタプレート
72a,72b:エジェクタピン
73a,73b:シリンダ
100:筐体
101:シール部材
S1,S2:スプルーランナー部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】特開平6−297497号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動金型と、第一金型とを重ね合わせて形成された空間に、溶融した第一材料を射出して、筐体を成形する工程と、
上記移動金型に上記筐体を保持した状態で、上記第一金型を上記移動金型から離間させる工程と、
シール部材を成形するための第二金型と対向する位置に、上記移動金型を移動させる工程と、
上記移動金型と、上記第二金型とを重ね合わせて形成された空間に、上記第一材料よりも軟質な溶融した第二材料を射出して、上記移動金型に保持された筐体にシール部材を成形する工程とを有することを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法。
【請求項2】
請求項1のシール部材を備えた筐体の製造方法において、
上記第一材料として、非晶性材料を用い、上記第二材料として、熱可塑性エラストマーを用いたことを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2のシール部材を備えた筐体の製造方法において、
上記第一金型を上記移動金型から離間させるときに、上記筐体を上記移動金型に保持させるための保持手段を備えたことを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法。
【請求項4】
請求項3のシール部材を備えた筐体の製造方法において、
上記保持手段は、上記第一金型側に設けられ、上記第一金型を上記移動金型から離間させるときに上記筐体を上記移動金型側へ押し付ける押付手段を備えたことを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法
【請求項5】
請求項3または4のシール部材を備えた筐体の製造方法において、
上記保持手段は、上記移動金型側の上記第一金型との対向面にスライド自在に設けられ、少なくとも上記第一金型を上記移動金型から離間させるときに上記筐体の一部と対向する対向部材を備えたことを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5いずれかのシール部材を備えた筐体の製造方法において、
上記移動金型に保持された筐体にシール部材を成形した後、上記第二金型にシール部材が成形された筐体を保持した状態で、上記第二金型を上記移動金型から離間させる工程を有し、
上記第二金型側に、上記第二金型からシール部材が成形された筐体を取り出すための取り出し手段を設けたことを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6いずれかのシール部材を備えた筐体の製造方法において、
上記筐体の内周面が、第一金型により成形されることを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至7いずれかのシール部材を備えた筐体の製造方法において、
上記シール部材のシール部以外の箇所に、最後に第二材料を流れ込ませるためのオーバーフロー部が成形されるよう第二金型を形成したことを特徴とするシール部材を備えた筐体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2011−251478(P2011−251478A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127265(P2010−127265)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【特許番号】特許第4669570号(P4669570)
【特許公報発行日】平成23年4月13日(2011.4.13)
【出願人】(500363298)工立化成株式会社 (2)
【出願人】(510003036)株式会社ササキ製作所 (2)
【Fターム(参考)】