説明

スカラロボット

【課題】アーム部の位置制御が容易でロボット先端部の配置位置と目標位置とのズレの少
ないスカラロボットを提供する。
【解決手段】スカラロボット1は、ベース部2、アーム部3、テーブル部4から構成され
、ベース部2は、床面等に設置されたベース10を有する。アーム部3は、ベース10に
対して回転可能に第1のアーム11を、第1のアーム11に回動可能に第2のアーム12
を、第2のアーム12に回動可能に先端部13Bにツールの取付可能な第3のアーム13
を備えている。テーブル部4は、先端に回動板22を備えた駆動軸21がベース10の正
面10Bから水平方向に突出されている。回動板22は、その中央部に突出した第5モー
タの駆動軸に回転可能に作業テーブル24の中央部を連結固定している。作業テーブル2
4は、ワークを保持する一対のチャック26を備えている。従って、ワークは作業テーブ
ル24の回転により回動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカラロボットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、産業用には、6軸ロボット、スカラロボット、直交型ロボットなどが各々の
特徴に適合する用途に選択され用いられている。それぞれのロボットの特徴としては、6
軸ロボットは、ロボット先端部の自由度が高い点が特徴であり、直交型ロボットは、構造
や制御が容易であり速度が速いとともに位置精度も良い点が特長である。また、スカラロ
ボットは、比較的速い速度と、比較的高い自由度とを有する点が特徴である。
【0003】
このような各ロボットの特徴から、ロボット先端部を複雑に移動させて加工をする場合
には、縦・横・斜めと3次元にアームを動かし、複雑な動きに対応できる、6軸ロボット
(垂直多関節ロボット)が選択される場合が多い。しかし、6軸ロボットは、ロボット先
端部を好適に素早く移動させるための制御(プログラミング)や動作位置の指定(ティー
チング)が難しいという問題があり、その問題は、ロボット先端部の動作が複雑になれば
なるほどに大きくなる。さらに、6軸ロボットは、軸数が多いゆえ、動きが複雑になるほ
どロボット先端部の目標位置に対するズレが大きくなるおそれがあった。
【0004】
そこで、ロボット先端部を素早く好適に目標位置に対して移動させるための方法が提案
されている(特許文献1)。特許文献1は、曲げ加工機にワークを供給及び回収するロボ
ットとして5軸ロボットを用いることにより、ロボットの軸数を従来の6軸制御から1軸
減らしてロボットの構造を簡単にした。また、ロボットの軸数を減らすことにより、ロボ
ット先端部を目標位置に移動させるためのプログラム作成やティーチング等に要する時間
を減少させるようにした。
【特許文献1】特開平7−16657号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、ロボット先端部を目標位置に移動させるためには、5軸
分のプログラム作成やティーチング等を行なわなければならず、プログラム作成やティー
チング等は依然複雑であった。また、ロボットの軸数が多いことにより、ロボット先端部
の目標位置に対するズレが大きく生じるおそれがあった。
【0006】
本発明は、上記問題点を解消するためになされたものであって、その目的は、アーム部
の位置制御が容易でロボット先端部の配置位置と目標位置とのズレの少ないスカラロボッ
トを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスカラロボットは、ベースに立設したスカラ型のアーム部の先端にツールを取
着し、前記スカラ型のアーム部を駆動して前記ツールを、作業テーブルに載置したワーク
に対する作業位置まで案内し、該ツールにて前記ワークに所定の作業を行なうスカラロボ
ットであって、前記作業テーブルを、前記ベースに対して相対移動させる移動部材を設け
たことを特徴とする。
【0008】
本発明のスカラロボットによれば、作業テーブルを、ベースに対して相対移動させる移
動部材を設けた。従って、アーム部を2次元のスカラ型としても、作業テーブルをベース
に対して相対移動させてアームの先端に取着されたツールのワークに対する自由度を確保
することができる。その結果、アーム部の駆動制御に必要な軌道演算処理用のプログラム
作成やティーチング等を、3次元の場合と比較して、簡単にすることができる。また、軸
数が少ないことからも、プログラム作成やティーチング等をより簡単にすることができる

【0009】
また、軸数が少ないことからアーム部の稼動時における軌道演算処理を短時間で行なえ
るので、ツールをワーク上の作業位置に高速に移動させることができる。その結果、ツー
ルを作業位置に移動させるために要する時間を短くすることができる。
【0010】
さらに、軸数が少ないことから、各軸で生じたずれの累積を少なくできて、アーム部の
先端のツールの配置位置と、ワークの作業位置との距離のずれを少なくすることができる
。その結果、ツールなどをワークの作業位置に対して精度良く配置することができる。
【0011】
このスカラロボットは、前記移動部材は、前記ベースに連結された主軸と、前記主軸に
支持された回動板と、前記回動板に対して相対移動可能に支持される前記作業テーブルと
、前記作業テーブルを前記回動板に対して相対移動させる第1駆動手段と、を備えること
が望ましい。
【0012】
このスカラロボットによれば、作業テーブルが前記回動板に対して相対移動するので、
作業テーブルの移動によりワークの作業位置を、アーム部の先端のツールに対して相対的
に変更させて、アーム部の先端のツールによるワークの作業位置への作業の自由度を高く
することができる。
【0013】
このスカラロボットは、前記主軸は、前記スカラ型のアーム部の移動面に対して回動す
るように前記ベースに回動可能に連結され、前記ベースは、前記主軸を該ベースに対して
回動させる第2駆動手段を備えることが好適である。
【0014】
このスカラロボットによれば、アーム部の先端のツールによるワークの作業位置への作
業の自由度をアーム部の移動面に対して回動する方向に確保することができる。
このスカラロボットは、前記作業テーブルは、その中心を回動中心に、前記回動板に対
して水平方向に回動するように、前記回動板に回動可能に連結されて、前記第1駆動手段
は、前記作業テーブルを回動させて前記回動板に対して相対移動させるとなおよい。
【0015】
このスカラロボットによれば、アーム部の先端のツールによるワークの作業位置への水
平面への作業の自由度を、作業テーブルの回動により確保することができる。また、ワー
クの作業位置の移動を作業テーブルの回転で行なうため、XYステージなどと比較してワ
ークを移動させる構造を容易にすることができる。
【0016】
このスカラロボットは、前記移動部材は、前記回動板に対して第1の方向に移動可能に
支持されるとともに、前記作業テーブルを前記第1の方向に対して直交する第2の方向に
移動可能に支持する移動板と、前記移動板を前記第1の方向に移動させる第3駆動手段と

を備え、前記第1駆動手段は、前記作業テーブルを前記第2の方向に移動させて前記回動
板に対して相対移動させてもよい。
【0017】
このスカラロボットによれば、アーム部の先端のツールによるワークの作業位置への水
平面への作業の自由度を、作業テーブルのX方向及びY方向への移動により確保すること
ができる。従って、作業テーブルを回動板に対して直交移動させることで、アーム部の先
端のツールは、ワークの作業位置へ対して水平面全域への作業の自由度が確保される。
【0018】
このスカラロボットは、スカラロボットは、前記作業テーブルを正転させて前記アーム
部の移動面まで移動された前記ワークの作業位置を第1の位置とし、前記作業テーブルを
逆転させて前記アーム部の移動面まで移動された前記ワークの作業位置を第2の位置とし
て、前記第1の位置と前記第2の位置をそれぞれ算出する位置演算処理手段と、前記アー
ム部の前記第1の位置への移動に要する第1の時間と、前記アーム部の前記第2の位置へ
の移動に要する第2の時間とをそれぞれ算出する軌道演算処理手段とを備え、前記第1の
時間が前記第2の時間より長い場合には、前記作業テーブルを逆転させて前記ワークの作
業位置を前記第2の位置に配置させることが好適である。
【0019】
このスカラロボットによれば、ワークの作業位置へのアーム部の先端のツールの移動を
素早くさせることができる。その結果、ツールの移動時間を短くすることができ、スカラ
ロボットによる作業時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1は、スカラロボット1の斜視構造を示す斜視図である。
図1に示すように、スカラロボット1は、ベース部2、アーム部3、移動部材としての
テーブル部4から構成されている。
【0021】
ベース部2は、床面等に設置されたベース10を有する。
ベース10は、ベース10の上部に水平な軸受部10Aを有し、その軸受部10Aには
、第1モータM1が内蔵され、その第1モータM1の駆動軸S1が回転可能に支持されて
いる。その駆動軸S1は、図2に示すように、アーム部3を構成する第1のアーム11の
基端部11Aと連結固定されている。従って、第1のアーム11は、第1モータM1が正
逆回転することによって、駆動軸S1と共に同駆動軸S1の軸心C1を回動中心としてベ
ース10に対して垂直方向に回動する。尚、第1モータM1には第1モータエンコーダE
m1が設けられ、駆動軸S1の回転角度、すなわち、第1のアーム11の水平面(ベース
10)に対する移動面15(XZ平面)方向の回動角度を検出するようになっている。
【0022】
第1のアーム11の先端部11Bには、第2モータM2が内蔵され、その第2モータM
2の駆動軸S2に、第2のアーム12の基端部12Aが連結固定されている。従って、第
2モータM2が正逆回転すると、第2のアーム12は、駆動軸S2と共に同駆動軸S2の
軸心C2を回動中心として第1のアーム11に対して垂直方向に回動するようになってい
る。尚、第2モータM2には第2モータエンコーダEm2が設けられ、駆動軸S2の回転
角度、すなわち、第2のアーム12の第1のアーム11に対する移動面15(XZ平面)
方向の回動角度を検出するようになっている。
【0023】
第2のアーム12の先端部12Bは、第3のアーム13の基端回転軸部13Aを回動可
能に支持している。従って、第3のアーム13は、基端回転軸部13Aの軸心C3を回動
中心として第2のアーム12に対して垂直方向に回動する。
【0024】
第2のアーム12の先端部12B内には、第3モータM3が内蔵されている。第3モー
タM3はその駆動軸が基端回転軸部13Aとギアを介して駆動連結されている。そして、
第3モータM3が正逆回転すると、該第3モータM3の回転力が第3のアーム13を、基
端回転軸部13Aの軸心C3を回動中心として第2のアーム12に対して垂直方向に回動
させるようになっている。尚、第3モータM3には第3モータエンコーダEm3が設けら
れ、基端回転軸部13Aの回転角度、すなわち、第3のアーム13の第2のアーム12に
対する移動面15(XZ平面)方向の回動角度を検出するようになっている。
【0025】
第3のアーム13の先端部13Bには、被加工物(ワーク)を加工する工具等のツール
(図示略)が取り付け可能になっている。すなわち、先端部13Bに取り付けられたツー
ルは、第3のアーム13の回動に従って、そのツールの先端の向きを第2のアーム12に
対して垂直方向に回動されるようになっている。
【0026】
従って、アーム部3は、ツールが取り付けられる先端部13Bを、第1及び第2のアー
ム11,12のそれぞれの回動により移動面15(XZ平面)の所定の範囲内にある目標
位置に配置するとともに、第3のアームの回動により、水平面(XY平面)に対するX方
向の角度を目標角度に配置できるようになっている。尚、説明の都合上、図1及び図3に
は、移動面15の一部分を図示している。
【0027】
ベース10には、第2駆動手段としての第4モータM4が内蔵され、その主軸としての
駆動軸21が、正面10BからX方向に水平(XY平面)に突出形成されている。その駆
動軸21の先端には、略矩形形状の回動板22が水平に連結固定されている。駆動軸21
の軸心C4に、前記移動面(XZ平面)15が交差するようになっている。従って、第4
モータM4が正逆回転することによって、回動板22は、駆動軸21の軸心C4を回動中
心として、ベース10の正面10Bから見て時計及び反時計方向に回動される。尚、第4
モータM4には第4モータエンコーダEm4が設けられ、駆動軸21の回転角度、すなわ
ち回動板22のベース10に対するYZ平面方向の回動角度を検出するようになっている

【0028】
回動板22には、第1駆動手段としての第5モータM5を内蔵している。第5モータM
5は、その駆動軸23が回動板22の上面中央から突出し、略円形の作業テーブル24の
中央部と駆動連結されている。そして、第5モータM5が正逆回転すると、作業テーブル
24は、駆動軸23の軸心C5を回動中心として回動板22に対して平行方向に回動させ
るようになっている。なお、第5モータM5には第5モータエンコーダEm5が設けられ
、駆動軸23の回転角度、すなわち作業テーブル24の回動板22に対する回動角度を検
出するようになっている。
【0029】
作業テーブル24の上面には、1組のガイド溝25が配設されていて、1組のガイド溝
25には、一対のチャック26が摺動可能に備えられている。各チャック26は、図示し
ないエアシリンダのシリンダ軸に接続されていて、そのシリンダ軸の伸縮によりガイド溝
25上を作業テーブル24の中央方向や外周方向に移動するようになっている。各チャッ
ク26は、エアシリンダのシリンダ軸が延びるようにエアバルブ27を介して圧縮空気が
供給されると、それぞれ中央方向に移動して、その間にワークを保持するようになってい
る。一方、各チャック26は、エアシリンダのシリンダ軸が格納されるようにエアバルブ
27を介して圧縮空気が供給されると、それぞれ外周方向に移動して、その間のワークを
開放するようになっている。
【0030】
従って、テーブル部4は、作業テーブル24に保持されたワークの作業位置を、作業テ
ーブル24の回転により水平面の目標位置に配置するとともに、駆動軸21の回動により
、水平面に対するY方向の角度を目標角度に配置できるようになっている。
【0031】
次に、上記のように構成したスカラロボット1の電気的構成を図4に従って説明する。
スカラロボット1は、図4に示すように、位置演算処理手段及び軌道演算処理手段とし
ての制御装置30を備えている。
【0032】
制御装置30には、CPU(中央演算装置)、ROM及びRAMが備えられている。そ
して、制御装置30のCPUは、ROMやRAMに記憶された各種データ及び各種制御プ
ログラムに従って各種処理などを実行する。尚、本実施形態では、CPUは、ROMやR
AMに記憶されたプログラム、及び、各種データに基づいて、アーム部3の先端部13B
を所定の目標位置まで移動させるように各アーム11,12,13を回動させる各モータ
M1,M2,M3をそれぞれ駆動制御するための軌道演算処理を行なう。また、CPUは
、ROMやRAMに記憶されたプログラム、及び、各種データに基づいて、テーブル部4
に保持されたワーク上の作業位置を所定の目標位置まで移動させるように駆動軸21及び
作業テーブル24を回動させる各モータM4,M5をそれぞれ駆動制御する位置演算処理
を行なう。
【0033】
制御装置30は、第1モータ駆動回路31と電気的に接続されている。第1モータ駆動
回路31は、制御装置30から入力された第1モータ制御信号31Cに基づいて生成した
第1モータ駆動信号31Dにより第1モータM1を駆動制御する。また、制御装置30は
、第1モータ駆動回路31を介して第1モータエンコーダEm1によって検出された第1
モータM1の回転量31Rを入力する。制御装置30は、入力された回転量31Rから、
第1のアーム11のベース10に対する垂直方向(XZ平面方向)の角度を検出するよう
になっている。
【0034】
制御装置30は、第2モータ駆動回路32と電気的に接続されている。第2モータ駆動
回路32は、制御装置30から入力された第2モータ制御信号32Cに基づいて生成した
第2モータ駆動信号32Dにより第2モータM2を駆動制御する。また、制御装置30は
、第2モータ駆動回路32を介して第2モータエンコーダEm2によって検出された第2
モータM2の回転量32Rを入力する。制御装置30は、入力された回転量32Rから、
第2のアーム12の第1のアーム11に対する垂直方向(XZ平面方向)の角度を検出す
るようになっている。
【0035】
制御装置30は、第3モータ駆動回路33と電気的に接続されている。第3モータ駆動
回路33は、制御装置30から入力された第3モータ制御信号33Cに基づいて生成した
第3モータ駆動信号33Dにより第3モータM3を駆動制御する。また、制御装置30は
、第3モータ駆動回路33を介して第3モータエンコーダEm3によって検出された第3
モータM3の回転量33Rを入力する。制御装置30は、入力された回転量33Rから、
第3のアーム13の先端部13Bの第2のアーム12に対する垂直方向(XZ平面方向)
の角度を検出するようになっている。すなわち、制御装置30は、ベース10に対する第
1のアーム11の角度、第1のアーム11に対する第2のアーム12の角度、及び、第2
のアーム12に対する第3のアーム13の角度から、ベース10に対するXZ平面方向の
先端部13Bの角度を検出するようになっている。
【0036】
制御装置30は、第4モータ駆動回路34と電気的に接続されている。第4モータ駆動
回路34は、制御装置30から入力された第4モータ制御信号34Cに基づいて生成した
第4モータ駆動信号34Dにより第4モータM4を駆動制御する。また、制御装置30は
、第4モータ駆動回路34を介して第4モータエンコーダEm4によって検出された第4
モータM4の回転量34Rを入力する。制御装置30は、入力された回転量34Rから、
軸心C4を中心に回動された駆動軸21のYZ平面方向に対する角度を検出するようにな
っている。すなわち、制御装置30は、軸心C4を中心に駆動軸21に従って回動された
回動板22の角度から、作業テーブル24に載置されたワークのYZ平面方向に対する角
度を検出するようになっている。
【0037】
制御装置30は、第5モータ駆動回路35と電気的に接続されている。第5モータ駆動
回路35は、制御装置30から入力された第5モータ制御信号35Cに基づいて生成した
第5モータ駆動信号35Dにより第5モータM5を駆動制御する。また、制御装置30は
、第5モータ駆動回路35を介して第5モータエンコーダEm5によって検出された第5
モータM5の回転量35Rを入力する。制御装置30は、入力された回転量35Rから、
駆動軸23の回動板22に対する角度を検出するようになっている。すなわち、制御装置
30は、駆動軸23に連結固定された作業テーブル24の回動板22に対する角度を検出
することにより、作業テーブル24に載置されたワークの回動板22に対する角度を検出
するようになっている。
【0038】
制御装置30は、エアバルブ駆動回路37と電気的に接続されている。エアバルブ駆動
回路37は、制御装置30から入力されたエアバルブ制御信号37Cに基づいてエアバル
ブ27を駆動制御する。また、制御装置30は、エアバルブ駆動回路37を介してシリン
ダ軸が格納されていることを検出するシリンダ位置センサーPS1からの格納信号37R
を入力する。制御装置30は、入力された格納信号37Rから、エアシリンダ軸が格納さ
れていることを検出するようになっている。すなわち、各チャック26がワークを開放す
る状態であることを検出するようになっている。
【0039】
制御装置30は、入出力装置38と電気的に接続されている。制御装置30は、入出力
装置38からワークの形状のデータ、ワーク上の作業位置などのデータ、先端部13Bに
取り付けたツールの種類や形状のデータ等のワークの加工に必要な各種データDT等を入
力されてRAMに保存する。また、制御装置30は、スカラロボット1の各種状態を示す
表示信号PSを入出力装置38に出力する。入出力装置38は、表示信号PSに基づいて
、表示装置39にスカラロボット1の各種状態を外部に通知するための表示をさせるよう
になっている。
【0040】
次に、上記のように構成したスカラロボット1の動作について説明する。
図5は、回動板22に対するアーム部3の先端部13Bの配置可能位置を示す説明図で
ある。先端部13Bは、図5に示すように、移動面15が、回動板22や作業テーブル2
4もしくはワークWと交差する位置上、すなわち、上から見るとX方向に一直線に形成さ
れるアーム軌道40上の任意の位置に配置可能に構成されている。従って、先端部13B
に取り付けられたツールは、回動板22上の作業テーブル24に載置されたワークWに対
して、アーム軌道40上において所定の作業が行なえるようになっている。
【0041】
一方、作業テーブル24を回転させることで、作業テーブル24の全ての位置、すなわ
ち、作業テーブル24に載置されたワークWの全ての個所をアーム軌道40上に位置させ
ることができる。従って、アーム部3による先端部13Bの配置と作業テーブル24の回
動との協働により、先端部13Bは、作業テーブル24に載置されたワークW上方の全て
の位置に配置可能となり、その先端部13Bに備えられたツールは、ワークWの全ての場
所に対して所定の作業を行えるようになっている。
【0042】
例えば、先端部13Bのツールにて作業を行なうワークW上の作業位置WP1が、図6
(a)に示すように、アーム軌道40からずれた位置にある場合には、制御装置30は、
駆動軸23を回転駆動させて作業テーブル24を反時計回り(CCW方向)に回転させて
、図6(b)に示すように、作業位置WP1をアーム軌道40上に位置させる。作業位置
WP1がアーム軌道40上に位置すると、制御装置30は、アーム軌道40上に位置され
た作業位置WP1に、先端部13Bに備えられたツールを移動させて、ワークW上の作業
位置WP1に所定の作業を行なうようになっている。
【0043】
また、第3のアーム13は、図7に示すように、ベース10と第1のアーム11との角
度θ1、及び、第1のアーム11と第2のアーム12との角度θ2の関係により、アーム
軌道40上の所定の位置に配置される。
【0044】
このとき、図7(a)に示すように、作業位置WP2の位置がベース10から離れた範
囲A1にあるとすると、第3のアーム13の先端部13Bを作業位置WP2上方に配置さ
せるため、各アーム11,12は、アーム配列D2のように配置される。すなわち、各ア
ーム11,12は、各角度θ1,θ2の角度をアーム配列D1の際と比較して広くなるよ
うに調整されて、アーム配列D2のように配置されるようになっている。
【0045】
ところで、第3のアーム13の先端部13BがX方向に移動する距離は、各角度θ1,
θ2を同じ角度だけ変化させても、アーム配列D2の場合と、アーム配列D1の場合とで
は異なる。そして、この場合、各角度θ1,θ2を同じ角度だけ変化させた場合に先端部
13BがX方向に移動する距離は、アーム配列D2の場合の方が少ない。
【0046】
すなわち、アーム配列D2の場合は、アーム配列D1と比較して、各角度θ1,θ2の
角度の変化に伴うX方向へ移動量が減少する。そのため、基端部11Aや基端部12Aの
一定の角速度で回動させても、アーム配列D2における第3のアーム13のX方向への移
動速度は、アーム配列D1における第3のアーム13の移動速度よりも遅くなり、作業時
間を増大させる一因となっている。
【0047】
また、基端部11Aから先端部13BがX方向に離れるにつれて各アーム11,12,
13に高い剛性が求められ、各アーム11,12,13を支えるために各モータM1,M
2,M3には高い出力が求められ、スカラロボットを高価で大きなものにする必要もある

【0048】
一方、図7(b)に示すように、作業位置WP3の位置がベース10に近い範囲A3に
あるとすると、第3のアーム13の先端部13Bを作業位置WP3上方に配置させるため
、各アーム11,12は、アーム配列D3のように配置される。すなわち、各アーム11
,12は、各角度θ1,θ2の角度をアーム配列D1の際と比較して狭くなるように調整
されて、アーム配列D3のように配置されるようになっている。
【0049】
ところで、第3のアーム13の先端部13BがX方向に移動する距離は、各角度θ1,
θ2を同じ角度だけ変化させても、アーム配列D3の場合と、アーム配列D1の場合とで
は異なる。そして、この場合、各角度θ1,θ2を同じ角度だけ変化させた場合に先端部
13BがX方向に移動する距離は、アーム配列D3の場合の方が多い。
【0050】
すなわち、アーム配列D3の場合は、アーム配列D1と比較して、各角度θ1,θ2の
角度の変化に伴うX方向へ移動量が増加する。そのため、基端部11Aや基端部12Aを
一定の角速度で回動させると、アーム配列D3における第3のアーム13のX方向への移
動速度は、アーム配列D1における第3のアーム13の移動速度よりも早くなる。しかし
、各角度θ1,θ2の角度を少し変化させただけで第3のアーム13のX方向における配
置位置が大きく移動することとなり、第3のアーム13の先端部13Bを高精度で配置位
置に配置することが難しくなっている。
【0051】
そのようなことから、スカラロボット1は、第3のアーム13を範囲A2内で移動させ
ると、先端部13Bに備えられたツールをワークWの作業位置に対して好適な移動速度及
び移動精度にて配置させることができる。そこで、本実施形態では、作業テーブル24の
少なくともベース10に近い半分を、各角度θ1,θ2の変化によって第3のアーム13
を好適に移動させられる範囲A2内に位置させるように配置している。
【0052】
すなわち、先端部13Bのツールにて作業を行なうワークの作業位置WP2が範囲A2
に位置しない場合には、制御装置30は、作業テーブル24を回転させて、作業位置WP
2を範囲A2内に配置させてから、ツールをワークWの作業位置WP2に配置して、その
作業位置WP2に対してツールによる作業を行なうようになっている。
【0053】
また、通常は、制御装置30は、図8(a)に示すように、第3のアーム13をワーク
に対して垂直に位置させるようになっている。しかし、ツールによるワークWへの作業は
必ずしもワークWの作業位置WP4の真上から行なうとは限らず、ツールもしくは、ワー
クWを傾ける必要のある場合がある。そこで、ツールと作業位置WP4との角度をX方向
に対して所定の角度にする必要がある場合には、制御装置30は、図8(b)及び(c)
に示すように、第3のアーム13を所定の角度だけ回動させ、先端部13BをXY平面の
X方向に対して所定の角度にして、ツールをワークWに対して所定の角度で配置させるよ
うになっている。
【0054】
さらに、通常は、制御装置30は、図9(a)に示すように、回動板22を水平に保持
するようになっている。しかし、ツールによるワークWへの作業は必ずしもワークWの作
業位置WP5の真上から行なうとは限らず、ツールもしくは、ワークWを傾ける必要のあ
る場合がある。そこで、ツールと作業位置WP5との角度をY方向に対して所定の角度に
する必要がある場合には、制御装置30は、図9(b)及び(c)に示すように、駆動軸
21を所定の角度だけ回動させて回動板22をXY平面のY方向に所定の角度に傾けて、
ツールをワークWに対して所定の角度で配置させるようになっている。
【0055】
次に、本実施形態の効果を以下に記載する。
(1)本実施形態によれば、アーム部3は、2次元である移動面15のみを移動するよ
うにした。従って、アーム部3の軌道演算処理用のプログラム作成やティーチング等をア
ームが3次元を移動する場合と比較して簡単にすることができる。また、軸数が3軸と少
ないことから、プログラム作成やティーチング等をそれより軸数の多いアームと比較して
簡単にすることができる。
【0056】
(2)本実施形態によれば、アーム部3は、第1〜第3のアーム11,12,13の3
軸構成とした。従って、軸数が少ないことから、各軸で生じたずれの累積を少なくできて
、アーム部3の先端部13Bの配置位置と目標位置との距離のずれを少なくすることがで
きる。その結果、先端部13B、すなわち、加工用のツールなどをワークWに対して高精
度にして配置することができる。
【0057】
(3)本実施形態によれば、アーム部3は、移動面15のみ移動する構成とした。従っ
て、スカラロボットの稼動時において軌道演算処理に要する時間が短くなるので、先端部
13Bを目標位置に高速に移動させることができる。その結果、アーム部3の移動に要す
る時間を短くすることができる。
【0058】
(4)本実施形態によれば、アーム部3は、移動面15のみ移動する構成とした。従っ
て、各アーム11,12,13を、主にX方向の移動に対して高い剛性を有するようにす
ればよい。その結果、各アーム11,12,13や各モータM1〜M3を小さくすること
ができて、アーム部3を小型化することができる。
【0059】
(5)本実施形態によれば、作業テーブル24の半分を、アーム部3が好適に先端部1
3Bを移動できる範囲A2になるようにした。従って、作業テーブル24を回転させれば
、作業テーブル24に載置されているワークの全ての位置の上方に先端部13Bを好適に
移動させることができる。
【0060】
(6)本実施形態によれば、作業テーブル24の回転によりワークWの作業位置を移動
した。従って、XYステージなどと比較して、ワークWの作業位置を移動させるための構
造を容易にすることができる。
【0061】
(7)本実施形態によれば、ワークWの作業位置WP1の上方に先端部13Bを配置す
る際に、アーム部3及びテーブル部4を同時に動作させることができた。従って、先端部
13Bを素早くワークWの作業位置WP1の上方に配置させることができる。
【0062】
なお、上記実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
・上記実施形態では、作業テーブル24を回動させてワークW上の作業位置を移動させ
た。しかし、これに限らず、作業テーブルを第1の方向としてのX方向に第3駆動手段と
してのXモータにより移動させ、第2の方向としてのY方向に第1駆動手段としてのYモ
ータによりそれぞれ移動可能にされたXYステージ上の移動板により移動させてワークW
上の作業位置を移動するようにしてもよい。
【0063】
・上記実施形態では、ワークWをチャックにて保持した。しかし、これに限らず、ワー
クWは、吸引や磁力などにより保持されても良い。
・上記実施形態では、先端部13Bは、3軸のアーム部にて所定の位置に移動されたが
、先端部を移動させるアーム部の軸数はこれに限られない。例えば、自由度が少なくても
良い場合は、アーム部は、1軸や2軸でもよい。
【0064】
・上記実施形態では、ツールは先端部13Bに取り付けられた。しかし、これに限らず
、ツールは、例えば、先端部13Bに取り付けられたハンドに把持されるようにしてもよ
い。
【0065】
・上記実施形態では、ワークWの作業位置を範囲A2に移動させるようにした。しかし
、これに限らず、ツールを移動させる前に、作業テーブル24の回転により次の作業位置
が配置され得る第1の位置と第2の位置とを位置演算処理に従って算出する。そして、ツ
ールを現在の位置から第1の位置に移動させるのに要する第1の時間と、ツールを現在の
位置から第2の位置に移動させるのに要する第2の時間とを軌道演算処理に従って計算す
る。そして、第1の時間が第2の時間より長ければ、次の作業位置を第2の位置に移動さ
せ、そうでなければ、次の作業位置を第1の位置に移動させるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本実施形態におけるスカラロボットの斜視構造を示す斜視図。
【図2】本実施形態におけるスカラロボットの右側面構造を示す右側面図。
【図3】本実施形態におけるスカラロボットの正面構造を示す正面図。
【図4】本実施形態におけるスカラロボットの電気的構成を示すブロック図。
【図5】本実施形態におけるアーム部の軌道を説明する説明図。
【図6】本実施形態における作業位置の移動を説明する説明図であって、(a)は作業位置がアーム軌道上にない状態を説明する図、(b)は作業位置をアーム軌道上にした状態を説明する図。
【図7】本実施形態における各アームの配列を示す説明図であって、(a)は先端部がベースから遠い場合の各アームの配列を示す図、(b)は先端部がベースに近い場合の各アームの配列を示す図。
【図8】本実施形態体におけるアームの先端部とワークとのX方向に対する配置角度の関係を説明する図であって、(a)は先端部の向きとワークが垂直である場合を示す図、(b)と(c)は先端部の向きがワークに対して垂直ではない場合を示す図。
【図9】本実施形態体におけるアームの先端部とワークとのY方向に対する配置角度の関係を説明する図であって、(a)は先端部の向きとワークが垂直である場合を示す図、(b)と(c)は先端部の向きがワークに対して垂直ではない場合を示す図。
【符号の説明】
【0067】
W…ワーク、θ1,θ2…角度、A1,A2,A3…範囲、C1,C2,C3,C4,
C5…軸心、D1,D2,D3…アーム配列、DT…データ、M1…第1モータ、M2…
第2モータ、M3…第3モータ、M4…第4モータ、M5…第5モータ、PS…表示信号
、Em1…第1モータエンコーダ、Em2…第2モータエンコーダ、Em3…第3モータ
エンコーダ、Em4…第4モータエンコーダ、Em5…第5モータエンコーダ、PS1…
シリンダ位置センサー、S1,S2…駆動軸、WP1,WP2,WP3,WP4,WP5
…作業位置、1…スカラロボット、2…ベース部、3…アーム部、4…テーブル部、10
…ベース、10A…軸受部、10B…正面、11…第1のアーム、11A…基端部、11
B…先端部、12…第2のアーム、12A…基端部、12B…先端部、13…第3のアー
ム、13A…基端回転軸部、13B…先端部、15…移動面、21,23…駆動軸、22
…回動板、24…作業テーブル、25…ガイド溝、26…チャック、27…エアバルブ、
30…制御装置、31…第1モータ駆動回路、31C…第1モータ制御信号、31D…第
1モータ駆動信号、31R,32R,33R,34R,35R…回転量、32…第2モー
タ駆動回路、32C…第2モータ制御信号、32D…第2モータ駆動信号、33…第3モ
ータ駆動回路、33C…第3モータ制御信号、33D…第3モータ駆動信号、34…第4
モータ駆動回路、34C…第4モータ制御信号、34D…第4モータ駆動信号、35…第
5モータ駆動回路、35C…第5モータ制御信号、35D…第5モータ駆動信号、37…
エアバルブ駆動回路、37C…エアバルブ制御信号、37R…格納信号、38…入出力装
置、39…表示装置、40…アーム軌道。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに立設したスカラ型のアーム部の先端にツールを取着し、前記スカラ型のアーム
部を駆動して前記ツールを、作業テーブルに載置したワークに対する作業位置まで案内し
、該ツールにて前記ワークに所定の作業を行なうスカラロボットであって、
前記作業テーブルを、前記ベースに対して相対移動させる移動部材を設けたことを特徴
とするスカラロボット。
【請求項2】
請求項1に記載のスカラロボットにおいて、
前記移動部材は、
前記ベースに連結された主軸と、
前記主軸に支持された回動板と、
前記回動板に対して相対移動可能に支持される前記作業テーブルと、
前記作業テーブルを前記回動板に対して相対移動させる第1駆動手段と、
を備えることを特徴とするスカラロボット。
【請求項3】
請求項2に記載のスカラロボットにおいて、
前記主軸は、前記スカラ型のアーム部の移動面に対して回動するように前記ベースに回
動可能に連結され、
前記ベースは、前記主軸を該ベースに対して回動させる第2駆動手段を備えることを特
徴とするスカラロボット。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のスカラロボットにおいて、
前記作業テーブルは、その中心を回動中心に、前記回動板に対して水平方向に回動する
ように、前記回動板に回動可能に連結されて、
前記第1駆動手段は、前記作業テーブルを回動させて前記回動板に対して相対移動させ
ることを特徴とするスカラロボット。
【請求項5】
請求項2又は3に記載のスカラロボットにおいて、
前記移動部材は、
前記回動板に対して第1の方向に移動可能に支持されるとともに、前記作業テーブルを
前記第1の方向に対して直交する第2の方向に移動可能に支持する移動板と、
前記移動板を前記第1の方向に移動させる第3駆動手段と、
を備え、
前記第1駆動手段は、前記作業テーブルを前記第2の方向に移動させて前記回動板に対
して相対移動させることを特徴とするスカラロボット。
【請求項6】
請求項4に記載のスカラロボットにおいて、
スカラロボットは、
前記作業テーブルを正転させて前記アーム部の移動面まで移動された前記ワークの作業
位置を第1の位置とし、前記作業テーブルを逆転させて前記アーム部の移動面まで移動さ
れた前記ワークの作業位置を第2の位置として、前記第1の位置と前記第2の位置をそれ
ぞれ算出する位置演算処理手段と、
前記アーム部の前記第1の位置への移動に要する第1の時間と、前記アーム部の前記第
2の位置への移動に要する第2の時間とをそれぞれ算出する軌道演算処理手段とを備え、
前記第1の時間が前記第2の時間より長い場合には、前記作業テーブルを逆転させて前
記ワークの作業位置を前記第2の位置に配置させることを特徴とするスカラロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−39787(P2009−39787A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203872(P2007−203872)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】