説明

スカラーロボット

【課題】上下軸の雰囲気と外環境とをジャバラにより隔離して当該雰囲気の外環境への流
出を抑制する上下軸を、ジャバラによる隔離を維持しつつ、より高速な上下動に対応させ
ることのできるスカラーロボットを提供する。
【解決手段】スカラーロボットには、支持軸14に回動可能に設けられた第2のアーム1
5に、第2のアーム15に貫通支持して第2のアーム15に対して少なくとも軸線方向に
移動させる上下回転軸16と、上下回転軸16を外環境と隔離させるジャバラ19,20
とが設けられている。上下回転軸16の下端部17と第2のアーム15の下部との間に設
けられる下側ジャバラ20内の雰囲気を、上下回転軸16の上昇に伴い下側ジャバラ20
が収縮するとき下側ジャバラ20の外環境に流出させずに第2のアーム15の内部に流入
させるように下側ジャバラ20内と第2のアーム15内とを連通させる連通路30を備え
る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スカラーロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ロボットとしては、特許文献1に例示されるように、それを構成する複数のアー
ムが水平関節を介して順番に連結されるスカラーロボット(水平多関節型ロボット)が知
られている。このようなスカラーロボットのアームの先端には回転駆動及び上下駆動され
る上下回転軸が設けられており、この上下回転軸に取り付けられる各種ハンドにより被対
象物の組み立てや搬送作業が行なわれることもよく知られている。
【0003】
ところでスカラーロボットにも、他の産業用ロボットと同様に、速い動作速度と、高い
処理精度と、生産現場に応じた外環境下での確実な動作と、が要求される。そのようなな
かで近年、スカラーロボットから生じる粉塵や飛沫を外環境に飛散させることの許されな
いクリーンルームなどのクリーン環境下においても同スカラーロボットの高速動作が要求
されるようになってきている。そこで例えば、スカラーロボットの上下軸機構として、上
下軸にボールネジを使用する場合、当該ロボットの上下駆動機構や上下軸から生じる粉塵
や油等が外環境に飛散されることを防ぐため、上下軸に保護部材としてジャバラを設ける
ようにしている。これにより上下軸機構がジャバラにより外環境と隔離され、スカラーロ
ボットとしてクリーン環境に対応した高い防塵性や防滴性を確保するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−170184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、スカラーロボットの高速化に伴い、上下軸の上下動とともに上下動する
ジャバラも高速で伸縮されるようになり、ジャバラの伸縮により体積の変化するジャバラ
内の気圧変動が大きくなってきている。特に収縮するとき、その収縮速度に応じてジャバ
ラの内圧が高くなるため、上下軸の高速化に伴ってジャバラ内の気圧がより一層高くなる
ようになってきておりそのジャバラ内の雰囲気が外環境に大量に流出するおそれが懸念さ
れるようになってきている。このようにジャバラ内の空気が流出されるとクリーン環境の
クリーン性を低下させることも問題となる。
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、上下軸の雰囲気
と外環境とをジャバラにより隔離して当該雰囲気の外環境への流出を抑制する上下軸を、
ジャバラによる隔離を維持しつつ、より高速な上下動に対応させることのできるスカラー
ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスカラーロボットは、基軸に回動可能に設けられた回動アームに、該回動アー
ムに貫通支持して該回動アームに対して少なくとも軸線方向に移動させる主軸と、前記主
軸を外環境と隔離させるジャバラとを設けてなるスカラーロボットであって、前記主軸の
下端部と前記回動アームの下部との間に設けられる下側ジャバラ内の雰囲気を、前記主軸
の上昇に伴い前記下側ジャバラが収縮するとき当該下側ジャバラの外環境に流出させずに
前記回動アームの内部に流入させるように前記下側ジャバラ内と前記回動アーム内とを連
通させる連通路を備えることを要旨とする。
【0008】
このような構成によれば、下側ジャバラ内の雰囲気が連通路を介して回動アームの内部
に流入するようになるので、下側ジャバラが収縮して体積が減少するような場合であれ、
下側ジャバラ内に留まる余剰な雰囲気が高圧になり外環境に流出することが抑制されるよ
うになる。これにより、粉塵や油の飛沫などを含むおそれのある主軸周囲の雰囲気が外環
境に流出することが抑制されて、スカラーロボットのクリーン環境での使用が好適になさ
れるようになる。
【0009】
また、収縮する下側ジャバラの雰囲気の圧力が高くならないことから、下側ジャバラの
収縮速度を上げる、すなわち、主軸の上下動速度を速くしても当該雰囲気が外環境に流出
しないため、クリーン環境にあってもスカラーロボットの動作速度を上げることができる
ようにもなる。
【0010】
このスカラーロボットは、前記連通路は、前記回動アームの外部に設けられることを要
旨とする。
このような構成によれば、連通路が回動アームの外部に設けられるので、アームの構造
による制約が少ない。すなわち回動アームは、主軸を支持するための支持機構及び、主軸
を駆動させるための駆動機構が多数配置されるために、下側ジャバラと回動アームとの間
に空気を流通させるための通路の確保も容易ではない。これにより、下側ジャバラと回動
アームとの間の空気の流通路の確保が容易にできるようになる。また、連通路を外部に設
けることから既存のスカラーロボットへの適用も容易となる。
【0011】
このスカラーロボットは、前記連通路は、樹脂材料からなることを要旨とする。
このような構成によれば、連通路は樹脂材料から形成されるため回動アームの外形形状
に適合させ、外環境に対して好適な気密性を有する連通路を形成することが容易となる。
【0012】
このスカラーロボットは、前記主軸の上端部と前記回動アームの上部との間には前記回
動アームに連通する上側ジャバラが設けられており、前記上側ジャバラ内の雰囲気と前記
下側ジャバラ内の雰囲気とが前記回動アームを介して相互に流通可能とされることを要旨
とする。
【0013】
このような構成によれば、主軸の上下のジャバラが連通されているので、主軸の上動に
伴って収縮され高くなる下側ジャバラ内の雰囲気の圧力が、拡張される上側ジャバラ内に
吸収されるようになる。逆に、主軸の下動に伴って拡張される下側ジャバラ内が、収縮さ
れ高くなる上側ジャバラ内の雰囲気の圧力を吸収するようになる。これにより、ジャバラ
内の圧力が高くならないようにすることができるようになるとともに、回動アーム内の圧
力上昇が防止されるようにもなる。
【0014】
このスカラーロボットは、前記回動アーム内の気圧が負圧とされることを要旨とする。
このような構成によれば、回動アーム内の気圧を負圧とすることから、下側ジャバラが
収縮される際、その中の雰囲気の回動アーム内への移動がよりスムーズに行なわれるよう
になる。これにより、下側ジャバラ中の雰囲気が下側ジャバラの収縮によって外環境へ流
出するおそれがより低減されて、スカラーロボットのクリーン環境への適用可能性が一層
高められるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるスカラーロボットについてその一実施形態の正面構造を示す正面図。
【図2】同実施形態のスカラーロボットのジャバラの動作態様を示す断面図。
【図3】同実施形態のスカラーロボットのジャバラの動作態様を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した一実施形態について図に従って説明する。図1はスカラーロ
ボット(水平多関節型ロボット)についてその正面構造を示したものである。
図1に示すように、スカラーロボットは、床面等に設置された支持体としての基台11
を有して、その上端部に第1のアーム13の基端部を回転体としてこれを回動可能に支持
する連結軸12が設けられている。連結軸12は、軸心C1を有する円柱形状に形成され
ており、基台11において同軸心C1を中心に回転可能に設けられ、基台11内に設けら
れた第1モーターM1により正逆回転されるようになっている。すなわちこれにより、第
1のアーム13は、第1モーターM1により回動される連結軸12の軸心C1を回動中心
として基台11に対して水平方向に回動するようになっている。
【0017】
第1のアーム13の先端部には、第2のアーム15の基端部を回転体としてこれを回動
可能に支持させる支持軸14が連結されている。支持軸14は、第2のアーム15に対し
て軸心C2を中心に回動可能に設けられており、第2のアーム15の基端部に配設された
第2モーターM2に駆動連結され同第2モーターM2により正逆回転されるようになって
いる。これにより、第2のアーム15は、第2モーターM2の反力により軸心C2を回動
中心として第1のアーム13に対して水平方向に回動するようになっている。
【0018】
第2のアーム15は同アーム15の剛性を維持する躯体部15aと躯体部15a上に備
えられた機器を保護するカバー部15bとを備えている。第2のアーム15の先端部には
、その躯体部15aに上下回転軸16が上下方向に移動可能に、かつ、回転体として回転
可能に支持されている。また同第2のアーム15先端部の躯体部15aには、ボールねじ
ナット21とスプラインナット22とが設けられている。
【0019】
ボールねじナット21は、その中央に上下回転軸16が挿通されるとともに同第2のア
ーム15内の躯体部15aに備えられている昇降モーターM4から伝達される回転動力に
基づいて上下回転軸16を上下方向へ移動させる。一方、スプラインナット22は、その
中央に上下回転軸16が挿通されるとともに同第2のアーム15内の躯体部15aに備え
られている第3モーターM3から伝達される回転動力に基づいて上下回転軸16を回転さ
せる。すなわち上下回転軸16は、これらボールねじナット21とスプラインナット22
とにより第2のアーム15に回動及び上下動可能に支持されるようになっている。
【0020】
上下回転軸16は、その下端部17に被搬送物を把持するハンドなどのツールが取付け
られるようになっており、その回動及び上下動によって移動されるツールを通じて被対象
物に対する各種の作業が行なわれるようになっている。
【0021】
次に、第2のアーム15先端部の内部構造について図2及び図3に従って説明する。図
2は上下回転軸16が上方に突出した場合のジャバラの動作態様の断面構造を示す図であ
り、図3は上下回転軸16が下方に突出した場合のジャバラの動作態様の断面構造を示す
図である。
【0022】
図2及び図3において、上下回転軸16には、その外周面に螺旋状のボールねじ溝16
bと、軸心C3と平行なスプライン溝16sとがそれぞれ刻まれるかたちで形成されてい
る。ボールねじ溝16bはボールねじナット21に対するめねじとして構成されており、
スプライン溝16sはスプラインナット22に対するめねじとして構成されている。
【0023】
すなわちボールねじナット21は、第2のアーム15の躯体部15aに固定されるとと
もに、その内側にボールねじ溝16bを螺合させるようにして上下回転軸16を回転可能
に挿通している。また、ボールねじナット21は、昇降モーターM4からベルト(図示略
)等を介して伝達される回転動力によってその内側が回転駆動される。これにより、ボー
ルねじナット21の内側が回転して上下回転軸16のボールねじ溝16bを上下方向に移
動させると、同上下回転軸16が上下方向に移動される。
【0024】
また、スプラインナット22は、第2のアーム15の躯体部15a下部のナット支持部
18に固定されるとともに、その内側にスプライン溝16sを嵌合させるようにして上下
回転軸16を回動可能に挿通している。また、スプラインナット22は、回転動力の伝達
機構を介して第3モーターM3から伝達される回転動力によってその内側が回転駆動され
る。回転動力の伝達機構は、第3モーターM3の出力軸DS3に連結されるプーリ23と
、上下回転軸16の近くに平行設置される中間軸24のプーリ25と、それらプーリ23
,25の間に掛け渡されるタイミングベルト26とを備えている。また回転動力の伝達機
構は、中間軸24に支持されプーリ25に連結されるギア27と、軸心C3を回転の中心
としてスプラインナット22の内側に固定連結されるギア28とを備えている。これによ
り第3モーターM3から出力される回転動力が、スプラインナット22の内側に伝達され
、スプラインナット22の内側が回転して上下回転軸16のスプライン溝16sを回転方
向に回転させると、同上下回転軸16が回転方向に回転される。
【0025】
このように、第2のアーム15の躯体部15aは、第3モーターM3やスプラインナッ
ト22の剛性を維持しつつ保持するとともに、第3モーターM3とスプラインナット22
との間で回転動力を伝達する伝達機構などを備えているため、その先端部の上下回転軸1
6の周辺はそれら機器の支持、剛性維持のため空きスペースは少ない。
【0026】
また、上下回転軸16は、その上端部とカバー部15bとの間に上側ジャバラ19を備
えている。上側ジャバラ19は、可撓性を有する樹脂などにより伸縮自在に形成されてお
り、その下部がカバー部15b内に連通する筒部15Hに気密性を有し固定され、その上
部が上下回転軸16の上端部に気密性を有し固定されている。これにより上下回転軸16
のカバー部15bから上方に突出される部分は、その周囲と外環境とが上側ジャバラ19
により隔離されている。また上側ジャバラ19は、上下回転軸16の上端部の上下動に合
わせて伸縮するようになっている。例えば、上下回転軸16の上端部が上方へ伸長したと
き、図2に示すように、上側ジャバラ19も伸長して内部の体積が拡大し、逆に、上下回
転軸16の上端部が下方へ後退したとき、図3に示すように、上側ジャバラ19は縮小し
て内部の体積が縮小する。上側ジャバラ19の内部体積の増減は、上下回転軸16周囲の
雰囲気を増減させるが、上側ジャバラ19は筒部15Hを介して連通される第2のアーム
15内から上下回転軸16周囲に雰囲気を吸気すること、又は、第2のアーム15内に上
下回転軸16周囲の雰囲気を排気することができるようになっている。
【0027】
さらに、上下回転軸16は、その下端部17と躯体部15aのナット支持部18との間
には下側ジャバラ20が設けられている。下側ジャバラ20は、上側ジャバラ19と同様
に、可撓性を有する樹脂などにより伸縮自在に形成されており、その上部が躯体部15a
下部のナット支持部18に気密性を有し固定され、その下部が上下回転軸16の下端部1
7に気密性を有し固定されている。これにより上下回転軸16の躯体部15aから下方に
突出される部分は、その周囲と外環境とが下側ジャバラ20により隔離されている。また
下側ジャバラ20は、上下回転軸16の下端部17の上下動に合わせて伸縮するようにな
っている。例えば、上下回転軸16の下端部17が上方へ後退したとき、図2に示すよう
に、下側ジャバラ20は縮小して内部の体積が縮小し、逆に、上下回転軸16の下端部1
7が下方へ伸長したとき、図3に示すように、下側ジャバラ20も伸長して内部の体積が
拡大する。なお、ナット支持部18にはスプラインナット22が配置されており、ナット
支持部18を介しての下側ジャバラ20内と第2のアーム15内との間での空気の流通性
は高くないが、本実施形態では、ナット支持部18と躯体部15aの下面との間に連通路
30を設けて下側ジャバラ20内と第2のアーム15内との間の空気の流通性を向上させ
ている。
【0028】
すなわち、ナット支持部18には下側ジャバラ20が接続されるよりも上部の側面に軸
心C3に対して所定の円弧状の通気穴18Hが形成されており、躯体部15aの下面には
通気口32,33が形成されており、連通路30がそれら通気穴18Hと通気口32,3
3とを外環境と隔離しつつ連通させている。連通路30は、樹脂材料より形成されており
、その上側30Aの形状は躯体部15aの下面に適合するように形成され、その軸側30
Bの形状は通気穴18Hに適合するように形成されており、躯体部15aの下面と通気穴
18Hとを外環境との気密性を有しつつ連通させるようになっている。これにより、下側
ジャバラ20の内部体積の減少により上下回転軸16周囲の雰囲気が余剰となると、下側
ジャバラ20はその内部の雰囲気をナット支持部18の通気穴18H、連通路30及び通
気口32,33を介して第2のアーム15内に排気することができるようになっている。
逆に、下側ジャバラ20の内部体積の増加により上下回転軸16周囲の雰囲気が減少する
と、下側ジャバラ20はその内部の雰囲気を通気口32,33、連通路30及びナット支
持部18の通気穴18Hを介して第2のアーム15内から吸気することができるようにな
っている。
【0029】
このことにより、上下回転軸16の上下動によって下側ジャバラ20が高速で伸縮する
ような場合であれ、下側ジャバラ20内の気圧が外環境の気圧よりも大幅に高くなるよう
に変動することが抑制されるようになる。下側ジャバラ20内の気圧が外環境の気圧より
も大幅に高くならなければ、下側ジャバラ20の下端部と上下回転軸16の下端部17と
の気密性や、下側ジャバラ20の上端部とナット支持部18との気密性が好適に維持され
て、上下回転軸16の周囲の雰囲気が外環境に流出するおそれも低減される。すなわち、
下側ジャバラ20内と外環境との好適な隔離が維持される。
【0030】
また、躯体部15aの上面であって、カバー部15bとの間には通気口34,35が設
けられ、躯体部15aとカバー部15bとの間の空気の流通性が高く維持されている。こ
れにより、上下回転軸16の上下動によって体積の増減が正反対に生じる上側ジャバラ1
9と下側ジャバラ20とが連通されるようになっている。すなわち、上側ジャバラ19の
排気が下側ジャバラ20に吸気され、逆に、下側ジャバラ20の排気が上側ジャバラ19
に吸気されるようになり、スカラーロボットとして、上下回転軸16の上下動によって第
2のアーム15の気圧が上昇されることを抑制している。
【0031】
以上説明したように、本実施形態のスカラーロボットによれば、以下に列記するような
効果が得られるようになる。
(1)下側ジャバラ20内の雰囲気が連通路30を介して第2のアーム15の内部に流
入するようにしたので、下側ジャバラ20が収縮して体積が減少するような場合であれ、
下側ジャバラ20内に留まる余剰な雰囲気が高圧になり外環境に流出することが抑制され
る。これにより、粉塵や油の飛沫などを含むおそれのある上下回転軸16周囲の雰囲気が
外環境に流出することが抑制されて、スカラーロボットのクリーン環境での使用が好適に
なされるようになる。
【0032】
(2)収縮する下側ジャバラ20の雰囲気の圧力が高くならないことから、下側ジャバ
ラ20の収縮速度を上げること、すなわち、上下回転軸16の上下動速度を上昇させても
当該雰囲気が外環境に流出しないため、クリーン環境にあってもスカラーロボットの動作
速度を上げることができるようにもなる。
【0033】
(3)連通路30が第2のアーム15の外部に設けたので、連通路30の設置に際して
アームの構造による制約が少ない。すなわち第2のアーム15は、上下回転軸16を支持
するための支持機構及び、上下回転軸16を駆動させるためのボールねじナット21やス
プラインナット22などの駆動機構が多数配置されるために、下側ジャバラ20と第2の
アーム15との間に空気を流通させるための通路の確保が容易ではない。これにより、下
側ジャバラ20と第2のアーム15との間の空気の流通路の確保が容易にできるようにな
る。また、連通路30を外部に設けることから既存のスカラーロボットへの適用も容易と
なる。
【0034】
(4)連通路30は樹脂材料から形成されるため第2のアーム15の外形形状に適合さ
せ、外環境に対して好適な気密性を有する連通路30を形成することが容易となる。
(5)上下回転軸16の上下のジャバラ19,20を連通したので、上下回転軸16の
上動に伴って収縮される下側ジャバラ20内の雰囲気の圧力が、拡張される上側ジャバラ
19内に吸収されるようになる。逆に、上下回転軸16の下動に伴って拡張される下側ジ
ャバラ20内が、収縮される上側ジャバラ19内の雰囲気の圧力を吸収するようになる。
これにより、各ジャバラ19,20内の圧力が高くならないようにすることができるよう
になるとともに、第2のアーム15内の圧力上昇が防止されるようにもなる。
【0035】
(6)第2のアーム15内の気圧を負圧とすることから、下側ジャバラ20が収縮され
る際、その中の雰囲気の第2のアーム15内への移動がよりスムーズに行なわれるように
した。これにより、下側ジャバラ20中の雰囲気が下側ジャバラ20の収縮によって外環
境へ流出するおそれがより低減されて、スカラーロボットのクリーン環境への適用可能性
が一層高められるようになる。
【0036】
なお、上記実施形態は、例えば以下のような態様にて実施することもできる。
・上記実施形態では、通気穴18Hは軸心C3に対して所定の円弧状に形成されている
場合について例示したが、これに限らず、下側ジャバラ内部の気圧が気密性を維持できる
圧力にすることができるのであれば、通気穴の形状は、円形や楕円形でもよく、またその
数について、1つでも2つ以上の複数でもよい。
【0037】
・上記実施形態では、下側ジャバラ20の排気が第2のアーム15に回収される場合に
ついて例示したが、これに限らず、第2のアーム内は、負圧に維持されていてもよい。こ
れによれば、下側ジャバラの排気がより好適に第2のアームに移動するようにもなる。
【符号の説明】
【0038】
11…基台、12…連結軸、13…第1のアーム、14…基軸としての支持軸、15…
回動アームとしての第2のアーム、15a…躯体部、15b…カバー部、15H…筒部、
16…主軸としての上下回転軸、16b…ボールねじ溝、16s…スプライン溝、17…
下端部、18…ナット支持部、18H…通気穴、19…上側ジャバラ、20…下側ジャバ
ラ、21…ボールねじナット、22…スプラインナット、23,25…プーリ、24…中
間軸、26…タイミングベルト、27,28…ギア、30…連通路、30A…上側、30
B…軸側、32〜35…通気口、M1…第1モーター、M2…第2モーター、M3…第3
モーター、M4…昇降モーター、DS3…出力軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基軸に回動可能に設けられた回動アームに、該回動アームに貫通支持して該回動アーム
に対して少なくとも軸線方向に移動させる主軸と、前記主軸を外環境と隔離させるジャバ
ラとを設けてなるスカラーロボットであって、
前記主軸の下端部と前記回動アームの下部との間に設けられる下側ジャバラ内の雰囲気
を、前記主軸の上昇に伴い前記下側ジャバラが収縮するとき当該下側ジャバラの外環境に
流出させずに前記回動アームの内部に流入させるように前記下側ジャバラ内と前記回動ア
ーム内とを連通させる連通路を備える
ことを特徴とするスカラーロボット。
【請求項2】
前記連通路は、前記回動アームの外部に設けられる
請求項1に記載のスカラーロボット。
【請求項3】
前記連通路は、樹脂材料からなる
請求項1又は2に記載のスカラーロボット。
【請求項4】
前記主軸の上端部と前記回動アームの上部との間には前記回動アームに連通する上側ジ
ャバラが設けられており、
前記上側ジャバラ内の雰囲気と前記下側ジャバラ内の雰囲気とが前記回動アームを介し
て相互に流通可能とされる
請求項1〜3のいずれか一項に記載のスカラーロボット。
【請求項5】
前記回動アーム内の気圧が負圧とされる
請求項1〜3のいずれか一項に記載のスカラーロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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