説明

ステッピングモータの制御装置

【課題】2相ステッピングモータにおいて、各励磁コイルに流れる電流量の不平衡を改善して正常なモータ駆動を実現すること。
【解決手段】励磁コイル(LA)の一端を電源(E)又はグラウンド(G)に接続するハーフブリッジ回路(11A)と、励磁コイル(LB)の一端を電源又はグラウンドに接続するハーフブリッジ回路(11B)と、各励磁コイルの他端の共通接続点を電源又はグラウンドに接続するハーフブリッジ回路(11C)とを有し、駆動パルスによって各ハーフブリッジ回路をオンオフする駆動回路(1)と、各ハーフブリッジ回路に対する駆動パルスを生成して、A相電流及びB相電流を制御する制御回路(2)とを備え、制御回路は、A相電流の指令値と実測値との偏差と、B相電流の指令値と実測値との偏差とを相互に補完するように、各ハーフブリッジ回路に対する駆動パルスを生成する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3つのハーフブリッジ回路で駆動される2相ステッピングモータの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2相ステッピングモータの制御装置として、3つのハーフブリッジ回路からなる駆動回路を備えたものが知られている。図7に示すように、駆動回路51は、直列に接続したハイサイド及びローサイドのスイッチ素子53、54からなる3つのハーフブリッジ回路52A−52Cを並列に接続して構成される。各ハーフブリッジ回路52A−52Cにおいて、ハイサイドのスイッチ素子53はモータ電源Eに接続され、ローサイドのスイッチ素子54はグラウンドに接地されている。
【0003】
ステッピングモータの励磁コイルLAは、一端がハーフブリッジ回路52Aの一対のスイッチ素子53A、54A間に接続され、他端がハーフブリッジ回路52Cの一対のスイッチ素子53C、54C間に接続される。ステッピングモータの励磁コイルLBは、一端がハーフブリッジ回路52Bの一対のスイッチ素子53B、54B間に接続され、他端がハーフブリッジ回路52Cの一対のスイッチ素子53C、54C間に接続される。そして、PWM制御によって各ハーフブリッジ回路52A−52Cのスイッチ素子53、54のオンオフが交互に切り換えられることで、モータ電源Eから励磁コイルLA、LBに流れるA相電流及びB相電流が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−015898号公報
【特許文献2】特許第3799300号公報
【特許文献3】特開2000−069796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したステッピングモータの制御装置では、ハーフブリッジ回路52CをA相電流及びB相電流の制御に共通に使用することで、ハーフブリッジ回路数を減少できるが、モータの高速駆動時にA相電流とB相電流との電流量に不平衡が生じるおそれがあった。2相ステッピングモータの場合、正弦波形のA相電流とA相電流から90度位相の遅れた正弦波形のB相電流とを用いてモータ駆動する。このとき、A相電流及びB相電流の目標値であるA相指令値及びB相指令値によって励磁コイルLA、LBに流れる電流量が制御され、このA相指令値及びB相指令値に応じてハーフブリッジ回路52Cに流れ込む電流量が制御されている。
【0006】
この場合、励磁コイルには、電流の変化を安定にしようとする性質があるため、一旦コイルに電流が流れると、指令値を与えてから実際に電流が減少するまでにタイムラグが存在する。したがってモータの高速駆動時には、先にA相電流が励磁コイルLAに流れている状態で、A相電流に対して減少指令を与え、B相電流に増加指令を与えると、A相電流が十分に減少する前にB相電流の指令値が大きくなる。このときハーフブリッジ回路52Cは、A相指令値及びB相指令値に応じた電流量よりも多い電流に対応しないため、増加指令が与えられているB相電流の電流量が制限される。このように、電流量の目標値である指令値と実際に励磁コイルに流れる電流量に大きなズレが生じて、A相電流とB相電流の電流量の不平衡が起こり、ステッピングモータが正常に回転しない等の欠点が生じていた。
【0007】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、2相ステッピングモータにおいて、各励磁コイルに流れる電流量の不平衡を改善して正常なモータ駆動を実現できるステッピングモータの制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のステッピングモータの制御装置は、第1の励磁コイルの一端を電源又はグラウンドに接続する第1のスイッチ回路と、第2の励磁コイルの一端を前記電源又は前記グラウンドに接続する第2のスイッチ回路と、前記第1、第2の励磁コイルの他端の共通接続点を前記電源又は前記グラウンドに接続する共通スイッチ回路とを有し、駆動パルスによって前記第1、第2のスイッチ回路及び前記共通スイッチ回路をオンオフする駆動回路と、前記第1、第2のスイッチ回路及び前記共通スイッチ回路に対する駆動パルスを生成して、前記第1、第2の励磁コイルに流れる電流量を制御する制御回路とを備え、前記制御回路は、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差とを相互に補完するように、前記第1、第2のスイッチ回路に対する駆動パルスを生成することを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1、第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差を相互に補完するように、第1、第2の励磁コイルに流れる電流量が制御される。よって、モータの高速駆動時において、先に第1の励磁コイルに電流が流れている状態で、後から第2の励磁コイルに電流を流す場合でも、第1の励磁コイルに指令値よりも大きな電流が流れていれば、第1の励磁コイルに流れる電流が抑えられるように駆動パルスが制御されると共に、第2の励磁コイルに十分に電流を流すように駆動パルスが制御される。このように、第1、第2の励磁コイルに流れる電流量の不平衡を改善でき、正常なモータ駆動を実現できる。
【0010】
また本発明の上記ステッピングモータの制御装置において、前記制御回路は、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差との差分を小さくするように、前記第1、第2のスイッチ回路に対する駆動パルスを生成する。この構成によれば、第1の励磁コイルにおける指令値と実測値との偏差と、第2の励磁コイルにおける指令値と実測値との偏差とを近付けることができ、第1、第2の励磁コイルに流れる電流量の不平衡を改善できる。
【0011】
また本発明の上記ステッピングモータの制御装置において、前記制御回路は、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差との差分から出力調整値を算出し、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差及び前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差のうち、いずれか小さい偏差に前記出力調整値を加算し、いずれか大きい偏差から前記出力調整値を減算する。この構成によれば、簡易な構成によって第1の励磁コイルにおける指令値と実測値との偏差と、第2の励磁コイルにおける指令値と実測値との偏差とを近付けることができる。
【0012】
また本発明の上記ステッピングモータの制御装置において、前記制御回路は、前記第1、第2の励磁コイルに流れる電流の指令値の合計値及び実測値の合計値をそれぞれ正負反転し、前記指令値の合計値に前記実測値の合計値を近付けるように、前記共通スイッチ回路に対する駆動パルスを生成する。この構成によれば、第1、第2の励磁コイルに流れる電流量に応じて、共通スイッチ回路に流すことができる電流量を適切に制御することができる。
【0013】
また本発明の上記ステッピングモータの制御装置において、前記制御回路は、前記第1、第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差に基づいてデューティ比を算出する制御ブロック部と、前記デューティ比に基づいて駆動パルスを生成する駆動パルス生成ブロック部とを有する。また本発明の上記ステッピングモータの制御装置において、前記制御ブロック部は、前記第1、第2のコイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差にゲインを乗算してデューティ比を算出する。これらの構成によれば、デューティ比に基づいて駆動パルスを生成することにより、第1、第2のスイッチ回路及び共通スイッチ回路の駆動を精度よく制御することができる。
【0014】
また本発明の上記ステッピングモータの制御装置において、前記第1のスイッチ回路は、前記第1の励磁コイルの一端と前記電源との間、前記第1の励磁コイルの一端と前記グラウンドとの間のそれぞれに設けられた一対のスイッチ素子を有し、前記第2のスイッチ回路は、前記第2の励磁コイルの一端と前記電源との間、前記第2の励磁コイルの一端と前記グラウンドとの間のそれぞれに設けられた一対のスイッチ素子を有し、前記共通スイッチ回路は、前記共通接続点と前記電源との間、前記共通接続点と前記グラウンドとの間のそれぞれ設けられた一対のスイッチ素子を有する。この構成によれば、電源とグラウンドとの間に、一対のスイッチ素子を直列に接続した3つのハーフブリッジ回路を並列に設けた駆動回路により、第1、第2の励磁コイルに電流を流すことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、2相ステッピングモータにおいて、各励磁コイルに流れる電流量の不平衡を改善して正常なモータ駆動を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施の形態に係るステッピングモータの制御装置の全体ブロック図である。
【図2】本実施の形態に係る駆動パルスの出力波形と電流波形の変化を示す説明図である。
【図3】比較例に係る制御ブロック部のブロック図である。
【図4】比較例に係る電流波形を示す図である。
【図5】本実施の形態に係る制御ブロック部のブロック図である。
【図6】本実施の形態に係るA相電流のB相電流の電流波形である。
【図7】従来の駆動回路の全体ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係るステッピングモータの制御装置の全体ブロック図である。なお、図1には、説明の便宜上、ステッピングモータの構成部品として励磁コイルのみ図示するが、ステッピングモータは通常有する構成を有するものとする。
【0018】
図1に示すように、ステッピングモータの制御装置は、2相バイポーラ型ステッピングモータの回転を制御するものであり、モータ電源E(単に電源とも称する。)からの電流をステッピングモータMの一対の励磁コイルLA(第1の励磁コイル又はA相とも称する。)、LB(第2の励磁コイル又はB相とも称する。)に供給する駆動回路1と、PWM制御により駆動回路1の電流制御を行う制御回路2とを備えている。駆動回路1は、モータ電源Eに対して互いに並列に接続された3つのハーフブリッジ回路11A−11C(11A、11B、11Cから構成されている)を備えている。第1のスイッチ回路としてのハーフブリッジ回路11Aは、モータ電源Eに接続されたハイサイドのスイッチ素子12AとグラウンドGに接続されたローサイドのスイッチ素子13Aとを直列に接続して構成される。
すなわち、第1のスイッチ回路としてのハーフブリッジ回路11Aは、第1の励磁コイルLAの一端と電源Eとの間に接続されたスイッチ素子12Aと、第1の励磁コイルLAの一端とグラウンドGとの間に接続されたスイッチ素子13Aと、から構成される一対のスイッチ素子を有する。第1のスイッチ回路は、第1の励磁コイルLAの一端を電源E又はグラウンドGに接続する。
【0019】
同様に、第2のスイッチ回路としてのハーフブリッジ回路11Bは、モータ電源Eに接続されたハイサイドのスイッチ素子12BとグラウンドGに接続されたローサイドのスイッチ素子13Bとを直列に接続して構成される。
すなわち、第2のスイッチ回路としてのハーフブリッジ回路11Bは、第2の励磁コイルLBの一端と電源Eとの間に接続されたスイッチ素子12Bと、第2の励磁コイルLBの一端とグラウンドGとの間に接続されたスイッチ素子13Bと、から構成される一対のスイッチ素子を有する。第2のスイッチ回路は、第2の励磁コイルLBの一端を電源E又はグラウンドGに接続する。
共通スイッチ回路としてのハーフブリッジ回路11Cは、モータ電源Eに接続されたハイサイドのスイッチ素子12CとグラウンドGに接続されたローサイドのスイッチ素子13Cとを直列に接続して構成される。
すなわち、共通スイッチ回路としてのハーフブリッジ回路11Cは、第1の励磁コイルLAの他端と第2の励磁コイルLBの他端が接続される共通接続点と、電源Eとの間に接続されたスイッチ素子12Cと、共通接続点とグラウンドGとの間に接続されたスイッチ素子13Cから構成される一対のスイッチ素子を有する。共通スイッチ回路は、第1の励磁コイルLAと第2の励磁コイルLBの他端の共通接続点を電源E又はグラウンドGに接続する。
なお、本実施の形態に係る各スイッチ素子12A―12C(12A、12B、12Cから構成されていることを意味する。)、13A−13C(13A、13B、13Cから構成されていることを意味する。)は、例えば、ボディダイオードが形成されたNチャネル型のMOSFET(Metal-Oxide Field-Effect Transistor)により構成される。
【0020】
各ハーフブリッジ回路11A−11Cには、それぞれ対応するスイッチ駆動回路15A−15C(15A、15B、15Cから構成されていることを意味する。)を介して制御回路2から駆動パルスが入力される。スイッチ駆動回路15Aは、途中で2股に分岐した一方の入力ラインをハイサイドのスイッチ素子12Aのゲートに接続し、NOT回路16Aを介して他方の入力ラインをローサイドのスイッチ素子13Aのゲートに接続する。同様に、スイッチ駆動回路15Bは、途中で2股に分岐した一方の入力ラインをハイサイドのスイッチ素子12Bのゲートに接続し、NOT回路16Bを介して他方の入力ラインをローサイドのスイッチ素子13Bのゲートに接続する。
【0021】
スイッチ駆動回路15Cは、途中で2股に分岐した一方の入力ラインをハイサイドのスイッチ素子12Cのゲートに接続し、NOT回路16Cを介して他方の入力ラインをローサイドのスイッチ素子13Cのゲートに接続する。そして、スイッチ駆動回路15A−15Cは、それぞれ制御回路2からの駆動パルスをハイサイドのスイッチ素子12A−12Cに印加すると共に、駆動パルスを反転させてローサイドのスイッチ素子13A−13Cのゲートに印加するように構成されている。なお、NOT回路16A−16Cは、ローサイドに接続される入力ラインではなく、ハイサイドに接続される入力ラインに設けられてもよい。
スイッチ駆動回路15A、15B、15Cから構成される駆動回路1は、駆動パルスによって、第1のスイッチ回路11A、第2のスイッチ回路11B、共通スイッチ回路11Cをオンオフする。
【0022】
ハーフブリッジ回路11Aのスイッチ素子12A、13Aの接続点P1は、電流検出器17A及びA相の励磁コイルLAを介してハーフブリッジ回路11Cのスイッチ素子12C、13Cの接続点P3に接続される。ハーフブリッジ回路11Bのスイッチ素子12B、13Bの接続点P2は、電流検出器17B及びB相の励磁コイルLBを介してハーフブリッジ回路11Cのスイッチ素子12C、13Cの接続点P3に接続される。
【0023】
励磁コイルLAの一端は、ハーフブリッジ回路11Aのスイッチ素子12A、13Aのオンオフによってモータ電源E又はグラウンドGに接続される。励磁コイルLAの他端は、ハーフブリッジ回路11Cのスイッチ素子12C、13Cのオンオフによってモータ電源E又はグラウンドGに接続される。励磁コイルLBの一端は、ハーフブリッジ回路11Bのスイッチ素子12B、13Bのオンオフによってモータ電源E又はグラウンドGに接続される。励磁コイルLBの他端は、ハーフブリッジ回路11Cのスイッチ素子12C、13Cのオンオフによってモータ電源E又はグラウンドGに接続される。
【0024】
このように、励磁コイルLAに流れる電流(以下、A相電流と称する)はハーフブリッジ回路11A、11Cによって制御され、励磁コイルLBに流れる電流(以下、B相電流と称する)はハーフブリッジ回路11B、11Cによって制御される。すなわち、ハーフブリッジ回路11Cは、励磁コイルLA、LBの電流制御に共通に使用され、A相電流及びB相電流が流れ込むように設計されている。電流検出器17Aは、A相電流を検出して、その実測値を制御回路2にフィードバックする。電流検出器17Bは、B相電流を検出して、その実測値を制御回路2にフィードバックする。なお、電流検出器17A、17Bは、例えば、電流センサやシャント抵抗等により電流を検出する。
【0025】
制御回路2の前段には、指令値生成ブロック部3が設けられている。指令値生成ブロック部3は、ステッピングモータMを動作させるための各励磁コイルLA、LBに対する電流の指令値を決定して制御回路2に入力する。例えば、指令値生成ブロック部3は、ステッピングモータMをマイクロステップ駆動させるように、正弦波状の指令値を制御回路2に入力する(図4参照)。
【0026】
制御回路2は、指令値生成ブロック部3から入力された電流の指令値と電流検出器17A、17Bからフィードバックされた電流の実測値とから、各ハーフブリッジ回路11A−11Cに対する駆動パルスを生成する。制御回路2は、第1の励磁コイルLA、第2の励磁コイルLBに流れる電流の指令値と実測値との偏差に基づいてPWM制御のデューティ比を算出する制御ブロック部21と、デューティ比から駆動パルス(PWM波形)を生成する駆動パルス生成ブロック部22とを有している。
【0027】
制御ブロック部21は、指令値生成ブロック部3からの電流の指令値に、電流検出器17A、17Bからの実測値を追従させるように各ハーフブリッジ回路11A−11Cに対するデューティ比を決定する。この場合、制御ブロック部21は、指令値に対して実測値を追従させる他、A相電流とB相電流との電流量の不平衡を補正するようにデューティ比を決定する。制御ブロック部21は、デューティ比(A相出力、B相出力、C相出力)をそれぞれ駆動パルス生成ブロック部22に出力する。
この制御回路2は、第1のスイッチ回路11A、第2のスイッチ回路11B及び共通スイッチ回路11Cに対する駆動パルスを生成して、第1の励磁コイルLA、第2の励磁コイルLBに流れる電流量を制御する。
なお、制御ブロック部21の詳細構成については後述する。
【0028】
駆動パルス生成ブロック部22は、制御ブロック部21からのデューティ比に基づいて、各ハーフブリッジ回路11A−11Cに対する駆動パルス(A相PWM出力、B相PWM出力、C相PWM出力)を生成する。駆動パルスは、デューティ比に応じてハイサイド又はローサイドのいずれか一方のスイッチ素子のオン区間を長くすると共に、いずれか他方のスイッチ素子のオフ区間を短くするように生成される。
【0029】
例えば、図2の上半部(電流波形)に示すように電流の指令値に実測値が追従される場合、図2の下半部(PWM波形)に示すように駆動パルスのオン区間とオフ区間とが制御される。なお、図2の上半部の実線W1は電流の指令値、破線W2は電流の実測値をそれぞれ示し、図2の下半部の実線W3は駆動パルスを示す。また、PWM周期は、例えば、数10[μs]に設定されている。
【0030】
期間D1に示すように、電流の指令値と実測値とが略等しい場合(指令値≒実測値)、デューティ比が約50%に設定される。デューティ比が約50%に設定されると、駆動パルスの1PWM周期におけるオン区間とオフ区間が略等しく設定される。例えば、ハーフブリッジ回路11Aにおいて、ハイサイド(ローサイド)のスイッチ素子のオン(オフ)とハイサイド(ローサイド)のスイッチ素子のオフ(オン)とが等間隔で交互に切り替えられる。
【0031】
期間D2に示すように、電流の指令値よりも実測値が小さい場合(指令値>実測値)、デューティ比が50%以上に設定される。デューティ比が50%以上に設定されると、駆動パルスの1PWM周期におけるオン区間がオフ区間よりも長く設定される。例えば、ハーフブリッジ回路11Aにおいて、ハイサイド(ローサイド)のスイッチ素子のオン(オフ)がハイサイド(ローサイド)のスイッチ素子のオフ(オン)よりも長くなる。よって、A相電流を励磁コイルLAに対してプラス側に流すときは50%以上のデューティ比になる。
【0032】
期間D3に示すように、電流の指令値よりも実測値が大きい場合(指令値<実測値)、デューティ比が50%以下に設定される。デューティ比が50%以下に設定されると、駆動パルスの1PWM周期におけるオン区間がオフ区間よりも短く設定される。例えば、ハーフブリッジ回路11Aにおいて、ハイサイド(ローサイド)のスイッチ素子のオン(オフ)がハイサイド(ローサイド)のスイッチ素子のオフ(オン)よりも短くなる。よって、A相電流を励磁コイルLAに対してマイナス側に流すときは50%以下のデューティ比になる。
【0033】
このように、電流の指令値と実測値との大小に応じてデューティ比が可変され、デューティ比に応じた駆動パルスが生成されることで、電流の指令値に実測値を追従させている。そして、駆動回路1では、駆動パルスがハーフブリッジ回路11A−11Cに入力されて、ステッピングモータMが正常にモータ駆動するようにモータ電源Eから励磁コイルLA、LBに流れる電流が制御される。
【0034】
ここで、本発明の特徴部分である制御ブロック部の詳細構成について説明する前に、比較例を参照してモータの高速駆動時のA相電流とB相電流の不平衡について説明する。図3は、比較例に係る制御ブロック部のブロック図である。図4は、比較例に係る電流波形を示す図である。なお、図4においては、実線W1a、W1b、W1cがそれぞれA相指令値、B相指令値、C相指令値を示し、破線W2a、W2bがそれぞれA相電流の変化、B相電流の変化を示す。
【0035】
図3に示す比較例に係る制御ブロック部においては、指令値生成ブロック部3からA相電流及びB相電流の指令値(以下、A相指令値、B相指令値と称する)が入力されると共に、電流検出器17A、17BからA相電流及びB相電流の実測値(以下、A相実測値、B相実測値と称する)が入力される。A相指令値及びA相実測値は偏差演算部41Aに入力され、B相指令値及びB相実測値は偏差演算部41Bに入力される。
【0036】
偏差演算部41Aは、A相指令値とA相実測値から偏差を演算し、比例要素42Aに出力する。比例要素42Aは、A相電流の偏差にPゲインK1を乗算してA相出力(デューティ比)として駆動パルス生成ブロック部22に出力する。偏差演算部41Bは、B相指令値とB相実測値から偏差を演算し、比例要素42Bに出力する。比例要素42Bは、B相電流の偏差にPゲインK1を乗算してB相出力(デューティ比)として駆動パルス生成ブロック部22に出力する。このように、A相電流及びB相電流の指令値と実測値との偏差をP制御して、ハーフブリッジ回路11A、11Bを制御するためのA相出力及びB相出力が独立して決定される。
【0037】
また、A相指令値及びB相指令値は指令値合計部43に入力され、A相実測値及びB相実測値は実測値合計部44に入力される。指令値合計部43は、A相指令値及びB相指令値を反転して合計値を演算し、C相指令値として偏差演算部41Cに出力する。実測値合計部44は、A相電流及びB相電流の実測値を反転して合計値を演算し、C相実測値として偏差演算部41Cに出力する。偏差演算部41Cは、C相指令値とC相実測値とから偏差を演算し、比例要素42Cに出力する。比例要素42Cは、C相の偏差にゲインK1を乗算してC相出力(デューティ比)として駆動パルス生成ブロック部22に出力する。
【0038】
また、図4に示すように、制御ブロック部21には、指令値生成ブロック部3から正弦波状のA相指令値W1aとB相指令値W1bが入力される。モータの正回転時には、B相指令値W1bはA相指令値W1aに対して90°位相を遅らせて入力される。また、制御ブロック部21にて、A相指令値W1aとB相指令値W1bを正負反転して合計することでC相指令値W1cが生成される。このC相指令値W1cによって、ハーフブリッジ回路11Cに流れ込む電流量が制御されており、A相指令値W1a及びB相指令値W1bで示される合計の電流量に対応するようにハーフブリッジ回路11Cが制御される。
【0039】
この場合、T1に示すA相指令値W1aのピーク手前では、B相指令値W1bが0に近づいており、A相電流W2aを多く流すことができる。しかしながら、T2に示すB相指令値W1bのピーク手前では、A相指令値W1aの減少指令に対して、実際にはA相電流W2aの減少が遅れる。これはコイルには電流の変化を安定にしようとする性質があり、励磁コイルLAへのA相電流W2aの供給が停止された後も励磁コイルLAが電流を流し続けようとするためである。このため、B相指令値W1bの増加指令が与えられる場合でも、先にハーフブリッジ回路11Cに流れていたA相電流W2aの電流量が十分に減少しておらず、B相電流W2bが流れにくくなる。
【0040】
この結果、先に流れていたA相電流W2aの電流量がA相指令値W1aに対して大きくなる一方で、後から流れるB相電流W2bの電流量がB相指令値W1bに対して小さくなる。よって、比較例に係る制御ブロック部によって制御されるステッピングモータは、A相電流W2a及びB相電流W2bの電流量に不平衡が生じて、正常にモータ駆動しないおそれがあった。
【0041】
そこで、本実施の形態の制御ブロック部21においては、A相電流の指令値と実測値との偏差と、B相電流の指令値と実測値との偏差とを相互に補完するように、駆動パルスを生成している。これによって、A相電流及びB相電流のうち、指令値に対して実測値が大きい方の電流量が抑えられて、指令値に対して実測値が小さい方に多く電流が流れるように制御される。
【0042】
以下、図5を参照して、本発明の特徴部分である制御ブロック部について説明する。図5は、本実施の形態に係る制御ブロック部のブロック図である。図6は、本実施の形態に係るA相電流のB相電流の電流波形である。
【0043】
図5に示すように、本実施の形態に係る制御ブロック部21においては、指令値生成ブロック部3からA相電流及びB相電流の指令値が入力されると共に、電流検出器17A、17BからA相電流及びB相電流の実測値が入力される。A相指令値及びA相実測値は偏差演算部31Aに入力され、B相指令値及びB相実測値は偏差演算部31Bに入力される。偏差演算部31Aは、A相指令値とA相実測値からA相電流の偏差を演算し、比例要素32A及び偏差差演算部33に出力する。偏差演算部31Bは、B相指令値とB相実測値からB相電流の偏差を演算し、比例要素32B及び偏差差演算部33に出力する。
【0044】
比例要素32Aは、A相電流の偏差にPゲインK1を乗算して減算器35に出力する。比例要素32Bは、B相電流の偏差にPゲインK1を乗算して加算器36に出力する。偏差差演算部33は、A相電流の偏差とB相電流の偏差から偏差の差分を演算し、比例要素34に出力する。比例要素34は、この偏差の差分に偏差差ゲインK2を乗算し、出力調整値として減算器35及び加算器36に出力する。減算器35は、比例要素32Aの出力値から出力調整値を減算して、A相出力(デューティ比)として駆動パルス生成ブロック部22に出力する。加算器36は、比例要素32Bの出力値に出力調整値を加算して、B相出力(デューティ比)として駆動パルス生成ブロック部22に出力する。
制御ブロック部21は、第1のコイルLA、第2のコイルLBに流れる電流の指令値と実測値との偏差にゲインを乗算してデューティ比を算出する。
【0045】
すなわち、この制御ブロック部21では、A相電流の偏差がB相電流の偏差よりも大きい場合にA相電流とB相電流との偏差の差分がプラスとなり、A相出力は減算器35により抑えられ、B相出力は加算器36により強められる。一方、A相電流の偏差がB相電流の偏差よりも小さい場合にA相電流とB相電流との偏差の差分がマイナスとなり、A相出力は減算器35により強められ、B相出力は加算器36により抑えられる。なお、出力調整値は、偏差差ゲインK2としての1/2偏差ゲインK1に偏差の差分を乗算して算出されてもよい。
【0046】
また、A相指令値及びB相指令値は指令値合計部37に入力され、A相実測値及びB相実測値は実測値合計部38に入力される。指令値合計部37は、A相指令値及びB相指令値を反転して合計値を演算し、C相指令値として偏差演算部31Cに出力する。実測値合計部38は、A相電流及びB相電流の実測値を反転して合計値を演算し、C相実測値として偏差演算部31Cに出力する。偏差演算部31Cは、C相指令値とC相実測値とから偏差を演算し、比例要素32Cに出力する。比例要素32Cは、C相の偏差にPゲインK1を乗算してC相出力(デューティ比)として駆動パルス生成ブロック部22に出力する。
制御回路2は、第1の励磁コイルLA、第2の励磁コイルLBに流れる電流の指令値の合計値及び実測値の合計値をそれぞれ正負反転し、指令値の合計値に実測値の合計値を近付けるように、共通スイッチ回路11Cに対する駆動パルスを生成する。
【0047】
このように、本実施の形態に係る制御ブロック部21では、A相出力及びB相出力のうち、大きい出力から出力調整値を減算し、小さい出力に出力調整値を加えている。これにより、A相電流の指令値と実測値との偏差と、B相電流の指令値と実測値との偏差との差分を小さくするように、駆動パルス生成ブロック部22にA相出力及びB相出力が出力される。
すなわち、制御回路2は、第1の励磁コイルLAに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、第2の励磁コイルLBに流れる電流の指令値と実測値との偏差との差分から出力調整値を算出し、第1の励磁コイルLAに流れる電流の指令値と実測値との偏差及び第2の励磁コイルLBに流れる電流の指令値と実測値との偏差のうち、いずれか小さい偏差に出力調整値を加算し、いずれか大きい偏差から出力調整値を減算する。
そして、駆動パルス生成ブロック部22においてA相出力及びB相出力により駆動パルスが生成されることで、励磁コイルLA、LBによる電流の変化を安定にしようとする性質を考慮してハーフブリッジ回路11A−11Cが制御される。
【0048】
この結果、比較例における高速回転時等で、図6の上側に示すようにA相電流とB相電流とで不平衡が生じる回転数においても、図6の下側に示すようにA相電流とB相電流の電流量が同程度に調整される。図6の例では、先に励磁コイルLAに流れていたA相電流の電流量が低減されて、後から励磁コイルLBに流れるB相電流の電流量が増加される。そして、A相電流及びB相電流の電流量の不平衡が改善されることで、ステッピングモータが正常に回転され、高速回転及び高トルクでのモータ駆動が可能となる。
【0049】
ここで、図1を参照して、本実施の形態に係るステッピングモータの制御装置の全体的な動作について説明する。制御ブロック部21には、指令値生成ブロック部3からA相指令値及びB相指令値が入力されると共に、電流検出器17A及び電流検出器17BからA相実測値及びB相実測値がフィードバックされる。制御ブロック部21では、A相指令値、A相実測値、B相指令値、B相実測値に基づいて、A相出力、B相出力、C相出力としてデューティ比が決定される。この場合、上記したようにA相出力及びB相出力は、励磁コイルLA、LBの性質による影響(不平衡)を考慮して、A相電流及びB相電流の偏差の差分が小さくなるように調整される。また、C相出力は、A相指令値及びB相指令値で示される合計の電流量に対応するように調整される。
【0050】
駆動パルス生成ブロック部22は、制御ブロック部21で決定されたA相出力、B相出力、C相出力のデューティ比に基づいて駆動パルスを生成し、各ハーフブリッジ回路11A−11Cに出力する。この駆動パルスによって各ハーフブリッジ回路11A−11CがPWM制御される。各駆動パルスは、ハイサイドのスイッチ素子12A−12Cに印加されると共に、NOT回路16A−16Cによって反転されてローサイドのスイッチ素子13A−13Cに印加される。
【0051】
そして、ハイサイドのスイッチ素子12Aがオン、ローサイドのスイッチ素子13Aがオフ、ハイサイドのスイッチ素子12Cがオフ、ローサイドのスイッチ素子13Cがオンにされると、励磁コイルLAの一端がモータ電源Eに接続されると共に励磁コイルLBの他端がグラウンドGに接続される。これにより、モータ電源Eからハーフブリッジ回路11Aのハイサイドのスイッチ素子12Aを通じて励磁コイルLAに対してプラス側(矢印側)にA相電流が流れ、ハーフブリッジ回路11Cのローサイドのスイッチ素子13Cを通じてグラウンドGに電流が流れ込む。このとき、電流検出器17AによってA相電流の実測値が検出され、制御ブロック部21にフィードバックされる。
【0052】
また、ハイサイドのスイッチ素子12Bがオン、ローサイドのスイッチ素子13Bがオフ、ハイサイドのスイッチ素子12Cがオフ、ローサイドのスイッチ素子13Cがオンにされると、励磁コイルLBの一端がモータ電源Eに接続されると共に励磁コイルLBの他端がグラウンドGに接続される。これにより、モータ電源Eからハーフブリッジ回路11Bのハイサイドのスイッチ素子12Bを通じて励磁コイルLBに対してプラス側(矢印側)にB相電流が流れ、ハーフブリッジ回路11Cのローサイドのスイッチ素子13Cを通じてグラウンドGに電流が流れ込む。このとき、電流検出器17BによってB相電流の実測値が検出され、制御ブロック部21にフィードバックされる。
【0053】
逆に、ハイサイドのスイッチ素子12Aがオフ、ローサイドのスイッチ素子13Aがオン、ハイサイドのスイッチ素子12Cがオン、ローサイドのスイッチ素子13Cがオフにされると、励磁コイルLAの一端がグラウンドGに接続されると共に励磁コイルLAの他端がモータ電源Eに接続される。これにより、モータ電源Eからハーフブリッジ回路11Cのハイサイドのスイッチ素子12Cを通じて励磁コイルLAに対してマイナス側(矢印と逆側)にA相電流が流れ、ハーフブリッジ回路11Aのローサイドのスイッチ素子13Aを通じてグランドに電流が流れ込む。このとき、電流検出器17AによってA相電流の実測値が検出され、制御ブロック部21にフィードバックされる。
【0054】
また、ハイサイドのスイッチ素子12Bがオフ、ローサイドのスイッチ素子13Bがオン、ハイサイドのスイッチ素子12Cがオン、ローサイドのスイッチ素子13Cがオフにされると、励磁コイルLBの一端がグラウンドGに接続されると共に励磁コイルLBの他端がモータ電源Eに接続される。これにより、モータ電源Eからハーフブリッジ回路11Cのハイサイドのスイッチ素子12Cを通じて励磁コイルLBに対してマイナス側(矢印と逆側)にB相電流が流れ、ハーフブリッジ回路11Bのローサイドのスイッチ素子13Bを通じてグランドに電流が流れ込む。このとき、電流検出器17BによってB相電流の実測値が検出され、制御ブロック部21にフィードバックされる。
【0055】
またこの場合、ハーフブリッジ回路11A−11Cは、A相電流及びB相電流の不平衡を考慮した駆動パルスによって制御される。ハーフブリッジ回路11A−11Cは、A相電流がB相電流に比較して流れ過ぎる場合には、A相電流の電流量を抑えてB相電流の電流量を増加するように制御し、B相電流がA相電流に比較して流れ過ぎる場合には、B相電流の電流量を抑えてA相電流の電流量を増加するように制御する。
【0056】
以上のように、本実施の形態に係るステッピングモータの制御装置によれば、A相電流の指令値と実測値との偏差及びB相電流の指令値と実測値との偏差を相互に補完するように、励磁コイルLA、LBに流れる電流量が制御される。よって、モータの高速駆動時において、先に励磁コイルLAにA相電流が流れている状態で、後から励磁コイルLBにB相電流を流す場合でも、A相電流が抑えられてB相電流を十分に流すことができる。このように、A相電流及びB相電流の電流量の不平衡を改善でき、正常なモータ駆動を実現できる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状等については、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0058】
例えば、上記した実施の形態において、A相電流の指令値と実測値との偏差と、B相電流の指令値と実測値との偏差との差分から出力調整値が算出される構成としたが、これに限定されるものではない。出力調整値は、A相電流の指令値と実測値との偏差と、B相電流の指令値と実測値との偏差とを相互に補完する値であればよく、例えば、偏差の差分に相関する値でもよい。
すなわち、制御回路2は、第1の励磁コイルLAに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、第2の励磁コイルLBに流れる電流の指令値と実測値との偏差との差分を小さくするように、第1のスイッチ回路11A、第2のスイッチ回路11Bに対する駆動パルスを生成する。
【0059】
また、上記した実施の形態において、A相出力及びB相出力のうち、いずれか低い出力に出力調整値が加算され、いずれか高い出力から出力調整値が減算される構成としたが、この構成に限定されない。制御ブロック部21は、A相電流の指令値と実測値との偏差と、B相電流の指令値と実測値との偏差とを相互に補完するようにA相出力及びB相出力を決定すればよい。
すなわち、制御回路2は、第1の励磁コイルLAに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、第2の励磁コイルLBに流れる電流の指令値と実測値との偏差とを相互に補完するように、第1のスイッチ回路11Aと第2のスイッチ回路11Bに対する駆動パルスを生成する。
【0060】
また、上記した実施の形態において、制御ブロック部が出力値としてデューティ比を出力する構成としたが、この構成に限定されない。制御ブロック部は、駆動パルス生成ブロック部が駆動パルスを生成可能な出力値を出力する構成であればよい。また、制御ブロック部及び駆動パルス生成ブロック部は一体に形成されていてもよい。
【0061】
また、上記した実施の形態において、スイッチ素子をMOSFETで構成したが、この構成に限定されない。スイッチ素子は、駆動パルスに応じてオンオフが切り換え可能であればよい。
【0062】
また、上記した実施の形態においては、P制御によって電流の指令値に対して実測値を追従させる構成としたが、この構成に限定されるものではない。PI制御又はPID制御によって電流の指令値に対して実測値を追従させる構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上説明したように、本発明は、2相ステッピングモータにおいて、各励磁コイルに流れる電流量の不平衡を改善して正常なモータ駆動を実現できるという効果を有し、特に、ミシン等の高速駆動されるステッピングモータの制御装置に有用である。
【符号の説明】
【0064】
1 駆動回路
2 制御回路
3 指令値生成ブロック部
11A ハーフブリッジ回路(第1のスイッチ回路)
11B ハーフブリッジ回路(第2のスイッチ回路)
11C ハーフブリッジ回路(共通スイッチ回路)
12A−12C、13A−13B スイッチ素子
17A、17B 電流検出器
21 制御ブロック部
22 駆動パルス生成ブロック部
31A−31C 偏差演算部
32A−32C 比例要素
33 偏差差演算部
34 比例要素
35 減算器
36 加算器
37 指令値合計部
38 実測値合計部
E モータ電源(電源)
G グラウンド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の励磁コイルの一端を電源又はグラウンドに接続する第1のスイッチ回路と、第2の励磁コイルの一端を前記電源又は前記グラウンドに接続する第2のスイッチ回路と、前記第1、第2の励磁コイルの他端の共通接続点を前記電源又は前記グラウンドに接続する共通スイッチ回路とを有し、駆動パルスによって前記第1、第2のスイッチ回路及び前記共通スイッチ回路をオンオフする駆動回路と、
前記第1、第2のスイッチ回路及び前記共通スイッチ回路に対する駆動パルスを生成して、前記第1、第2の励磁コイルに流れる電流量を制御する制御回路とを備え、
前記制御回路は、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差とを相互に補完するように、前記第1、第2のスイッチ回路に対する駆動パルスを生成することを特徴とするステッピングモータの制御装置。
【請求項2】
前記制御回路は、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差との差分を小さくするように、前記第1、第2のスイッチ回路に対する駆動パルスを生成することを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項3】
前記制御回路は、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差と、前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差との差分から出力調整値を算出し、前記第1の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差及び前記第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差のうち、いずれか小さい偏差に前記出力調整値を加算し、いずれか大きい偏差から前記出力調整値を減算することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のステッピングモータの制御回路。
【請求項4】
前記制御回路は、前記第1、第2の励磁コイルに流れる電流の指令値の合計値及び実測値の合計値をそれぞれ正負反転し、前記指令値の合計値に前記実測値の合計値を近付けるように、前記共通スイッチ回路に対する駆動パルスを生成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項5】
前記制御回路は、前記第1、第2の励磁コイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差に基づいてデューティ比を算出する制御ブロック部と、前記デューティ比に基づいて駆動パルスを生成する駆動パルス生成ブロック部とを有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項6】
前記制御ブロック部は、前記第1、第2のコイルに流れる電流の指令値と実測値との偏差にゲインを乗算してデューティ比を算出することを特徴とする請求項5に記載のステッピングモータの制御装置。
【請求項7】
前記第1のスイッチ回路は、前記第1の励磁コイルの一端と前記電源との間、前記第1の励磁コイルの一端と前記グラウンドとの間のそれぞれに設けられた一対のスイッチ素子を有し、
前記第2のスイッチ回路は、前記第2の励磁コイルの一端と前記電源との間、前記第2の励磁コイルの一端と前記グラウンドとの間のそれぞれに設けられた一対のスイッチ素子を有し、
前記共通スイッチ回路は、前記共通接続点と前記電源との間、前記共通接続点と前記グラウンドとの間のそれぞれ設けられた一対のスイッチ素子を有することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のステッピングモータの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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