説明

スピーカ用エッジ材料およびこれを用いたスピーカ用エッジならびにこのスピーカ用エッジを用いたスピーカ用振動板およびこれを用いたスピーカ、電子機器、装置

【課題】従来のスピーカ用の発泡ゴムエッジは生産効率が悪いため低コスト化ができず、熱可塑性エラストマーエッジは、変形しやすいため薄肉成形が困難であるという課題を有するものであった。
【解決手段】熱可塑性エラストマーに、平均粒径が40μm以下の微細なマイカと、発泡剤とを添加してスピーカ用エッジ材料を構成し、これを射出成形によりエッジ形状を形成することで、成形収縮率の小さいエラストマーエッジが得られ、射出成形による内部応力を緩和し、歪を残さず成形できるため、より薄肉成形することができ、リニアリティーが良く、軽量で、高い内部損失を有し、耐久性に優れ、製造が容易でばらつきが少なく、防水性能にも優れるという高品質、高信頼性が実現できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用途を含めた各種音響機器や映像機器に使用されるスピーカ用エッジ材料やスピーカ用エッジ、スピーカ用振動板、スピーカ、電子機器および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカ用のエッジは、振動板の外周を支持して正しい位置に保持するとともに、振動板の動きに追従して柔軟で自在に動き、横ぶれに対してはこれを制動する役目を担っている。
【0003】
その求められる性能はリニアリティーが良いこと、軽量であること、高い内部損失を有していること、耐久性に優れていること、製造が容易でばらつきが少なく、安価なことである。
【0004】
また、近年では車載用を中心に防水性も重要な特性の一つとなってきている。
【0005】
これらの要求特性を満たすために、様々な材料がエッジとして使用されている。
【0006】
例えば、天然繊維や合成繊維の織布に、ゴムやアクリル等の比較的柔軟で内部損失の大きい物質をコーティングし、さらに、必要に応じて硬度のコントロール用に熱硬化性樹脂を含浸させたシート材料を所定の形状に加熱成形した布エッジがある。
【0007】
この布エッジは、軽量でばらつきが少なく、安価であるが、昨今の車載用途では防水加工を必要とし、また熱硬化性樹脂を含浸させるために内部損失が小さくなり、歪が生じやすくなる。
【0008】
また、発泡ウレタンシートを所定の形状に加熱成形した発泡ウレタンエッジがある。
【0009】
この発泡ウレタンエッジは、上述の布エッジと比較して、リニアリティーが良く、制振性に優れているが、耐候性に弱く、さらに、品質ばらつきが大きく、信頼性にも劣るという欠点を有している。
【0010】
また、加硫ゴムエッジでは、加硫ゴムは柔軟で制振性に優れ、耐熱性、防水性にも優れているが、加硫に要する時間が必要で成形サイクルが長いという欠点を持ち、結果として低コスト化できないという課題を有している。
【0011】
さらに、ゴムエッジは重量が大きいため、これを使用すると振動系の重量が大きくなり、スピーカの能率を下げる要因にもなり、よって最近ではゴムエッジの重量を小さくするため、加硫タイプの発泡ゴムエッジも多用されている。
【0012】
一方、この加硫ゴムの代替材料として、シート成形や射出成形をすることができる熱可塑性エラストマーを用いたエッジも多く開発されている。
【0013】
尚、この出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2003−037889号公報
【特許文献2】特開2001−103595号公報
【特許文献3】特開2003−78998号公報
【特許文献4】特開平7−131888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
上述のように、エッジに求められる要求事項と高信頼性をバランス良く保っているエッジ材料の1つは発泡ゴムエッジであるが、この発泡ゴムエッジも成形工程においては加硫時間を必要とするため成形サイクルが長く、金型の汚染度も激しく、製造エネルギーが高いものとなるため、生産効率が良くないものであり、低コスト化ができないという課題を有するものであった。
【0016】
また、量産においては、生産性を向上させてコスト低減を図るために、成形工程での金型取り数を多くする必要があり、よって、薄肉で寸法精度の高い要求事項に対し、ばらつきが発生しやすいという品質上の課題を有するものであった。
【0017】
本発明は、上記課題を解決し、エッジ材料に要求されるリニアリティーが良く、軽量であり、高い内部損失を有し、耐久性に優れ、製造が容易でばらつきが少なく、そして防水性能にも優れるという性能の高いスピーカ用エッジ材料およびスピーカ用エッジならびにスピーカ用振動板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、本発明は、射出成形により形状を形成するためのスピーカ用エッジ材料で、熱可塑性エラストマーに、平均粒径が40μm以下の微細なマイカと、発泡剤とを添加してスピーカ用エッジ材料を構成している。
【0019】
この構成により、成形収縮率の小さいエラストマーが得られ、射出成形による内部応力を緩和し、歪を残さず成形できるため成形品の変形や反りを抑制し、より薄肉成形することができるため、リニアリティーが良く、軽量で、高い内部損失を有し、耐久性に優れ、製造が容易でばらつきが少なく、そして防水性能にも優れるという性能の高いスピーカ用エッジ材料とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明は、成形収縮率の小さいエラストマーが得られ、射出成形による内部応力を緩和し、歪を残さず成形できるため成形品の変形や反りを抑制し、より薄肉成形することができるため、リニアリティーが良く、軽量で、高い内部損失を有し、耐久性に優れ、製造が容易でばらつきが少なく、そして防水性能にも優れるという性能の高いスピーカ用エッジ材料とすることができる。
【0021】
よって、この構成により、成形収縮率の小さいスピーカ用エラストマーエッジが得られるため、射出成型により一体成形する際の内部応力を緩和し、歪を残さず成形できるため成形品の変形や反りを抑制し、形状の自由度が大きくなり、かつより薄肉成形することができる。
【0022】
また、射出成形であるため寸法制度が高く、生産性を向上させることができる。
【0023】
その上、より生産性を向上させるために多数個取りにした場合でも、加硫ゴムのような大きな成形ばらつきはなく、金型汚染も少なくなる。
【0024】
また、成形品のランナー部分をリサイクル活用できるため、環境にも優しく、材料利用率が向上し、低コスト化することが可能となる。
【0025】
さらに、ローリング発生を抑制することが可能となり、品質安定性が高く特性の良好化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施の形態におけるスピーカ用エッジ材料の外観図
【図2】本発明の一実施の形態におけるスピーカ用エッジの一部分を示す断面斜視図
【図3】本発明の一実施の形態におけるスピーカ用振動板の断面図
【図4】本発明の一実施の形態におけるスピーカの断面図
【図5】本発明の一実施の形態におけるスピーカの周波数特性を示す図
【図6】従来のスピーカの周波数特性を示す図
【図7】本発明の一実施の形態における電子機器の外観図
【図8】本発明の一実施の形態における装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0028】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明について説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施の形態におけるスピーカ用エッジ材料の外観図を示したものであり、図2は本発明の一実施の形態におけるスピーカ用エッジの一部分を示す断面斜視図を示したものであり、図3は本発明の一実施の形態におけるスピーカ用振動板の断面図を示したものである。
【0030】
図1に示すように、スピーカ用エッジ材料29Aは、平均粒径が40μm以下の微細なマイカ29aと、発泡剤29bと、熱可塑性エラストマー29cとで構成したものである。
【0031】
ここで、マイカ29aはエッジ材の耐熱性向上だけでなく、成形収縮の抑制による寸法安定性の向上と、材料自体の内部損失を上げることで制振性を向上させることができ、精度の向上とともに、性能の高いエッジを得ることができるエッジ材となる。
【0032】
また、熱可塑性エラストマー29cに含まれるワックスのような油分が表面にブリードアウトするのを抑制できるため、高品質、高信頼性が実現できる。
【0033】
上述のマイカ添加による効果は、マイカの平均粒径が小さいものほど優れているが、エッジの成形性とエッジ成形肉厚、及びマイカの分散性を実用範囲で考慮した際、特に平均粒径が40μm以下の微細なマイカが望ましい。
【0034】
発泡剤29bは、熱可塑性エラストマー29cを発泡させて軽量化や内部損失を向上させるとともに、流動性を助長する役割があり、成形品のショートショットやひけを解消することができる。
【0035】
さらに、マイカ29aは、平均粒径が10μm以下がより望ましく、薄肉成形にするほど粒径がより小さい方が望ましい。
【0036】
また、マイカ29aの平均粒径が1μmより小さい方が、より一層効果を発揮させることができる。
【0037】
次に、マイカ29aの混入比率は、20重量%以上で、かつ50重量%以下が望ましい。
【0038】
ここで、マイカ29aの混入比率が、20重量%より少ないと効果を有効に発揮させることができない。
【0039】
また、マイカ29aの混入比率が、50重量%を超えるとエッジ材料の流動性が低下して薄肉成形が困難になることに加え、上下振幅に必要なエッジ材料の伸びを確保できなくなる可能性がある。
【0040】
さらに、スピーカ用エッジ材料29Aは、竹材料を含んで構成しても良い。
【0041】
竹材料を含んで構成させることで、弾性率、内部損失が高まり、音質を向上させることができ、更に、材料強度も同時に高めることが可能であるため、高信頼性も実現できる。
【0042】
ここで、竹材料は竹繊維、竹粉、竹炭粉、竹の葉から抽出したプラントオパールのいずれでも良いが、要求される特性に合わせて使い分けることが望ましい。
【0043】
竹繊維は、パルプ状になった竹パルプでも良く、混入することで弾性率を向上させることができる。
【0044】
ここで、竹繊維は単に竹材料からなる繊維全般のことを指し、化学的もしくは機械的に竹材料をほぐして繊維状にしたものを竹パルプと呼び、更に詳述するならば、竹繊維を分離して懸濁液状にしたものや厚紙状にしたものも含まれる。
【0045】
竹繊維、竹パルプは平均繊維長が1mm以下であることが望ましい。
【0046】
竹繊維、竹パルプの平均繊維長が1mm以下であれば、十分叩解されており、成形時に高い分散性が得られ、高生産性が実現できると同時に、十分な補強効果も得られる。
【0047】
竹繊維、竹パルプの平均繊維長が1mmより長くなるとエラストマーへの分散工程に時間を要し、生産性が低下する。
【0048】
竹繊維、竹パルプは平均繊維径が10μm以下のミクロフィブリル状態まで微細にすることが望ましい。
【0049】
竹繊維、竹パルプは平均繊維径が10μm以下のミクロフィブリル状態まで微細にすることで、マイカ29aとの結合が強くなり、弾性率を向上させることができ、引張り強度も向上させることができる。
【0050】
更に、一般にエラストマー等のゴム材料は引張り強度と引張り伸び特性が反比例する事が知られているが、ミクロフィブリル状態の竹繊維や竹パルプを添加することにより、エラストマーの引張り強度を維持したまま引張り伸び特性を向上させるか、または引張り伸び特性を維持したまま引張り強度を向上させることが可能である。
【0051】
一方、竹繊維、竹パルプは平均繊維径が10μm以上になると、マイカ29aとの結合を強化させるという力は不足する傾向にある。
【0052】
これら竹繊維は混入量が多くなると流動性が低下し、薄肉成形が困難になる。
【0053】
そこで、竹のしなやかで強靭な特性を付与するために、竹の含有量を増やしたい場合は竹粉を使用すれば良い。
【0054】
竹粉は竹繊維より流動性が良く、よって竹の混入量を増やすことができる。
【0055】
また、竹炭粉を使用しても良く、炭化させることにより竹材料自身が硬質化して弾性率と内部損失が向上するため、音質をさらに向上させることができる。
【0056】
また、竹炭粉は着色剤を使用しなくても高品位な黒系色の外観を実現することができ、デザイン性を向上させることができる。
【0057】
さらに、竹の葉から抽出した二酸化珪素成分のプラントオパールを使用しても良い。
【0058】
竹の葉から抽出したプラントオパールは弾性率を向上させることができ、また、二酸化珪素化合物であるのでマイカ29aとの結合性も良い。
【0059】
これら竹粉、竹炭粉、竹の葉から抽出したプラントオパールは平均粒径が50μm以下が望ましい。
【0060】
特に望ましいのは、平均粒径が10μm以上で、かつ50μm以下である。
【0061】
平均粒径が50μmより大きくなると、弾性率を有効に向上させることができず、さらにマイカ29aとの高い結合性も有効に発揮させることができない。
【0062】
また、平均粒径が10μm以下であると、プラントオパールの形状が粒子状となるため、曲げ弾性率向上の効果が発揮できない。
【0063】
さらに、竹材料の混入比率は、5重量%以上で、かつ30重量%以下が望ましい。
【0064】
竹材料の混入比率が、5重量%以上で、かつ30重量%以下であれば、弾性率及び内部損失向上による音質向上、更に、高い材料強度の向上も効果的に実現可能である。
【0065】
そして、竹材料が5重量%に満たない場合は、添加量が少なすぎて効果がほとんど現れない。
【0066】
また、竹材料が30重量%より多い場合は、流動性の低下により薄肉成形が困難になり、形状の自由度が小さくなる。
【0067】
また、相溶化剤を含んでも良い。
【0068】
相溶化剤は、熱可塑性エラストマー29cとマイカ29aの相溶性を向上させ、より寸法安定性や制振性といった性能を向上させることができる。
【0069】
熱可塑性エラストマー29cのハードセグメントはオレフィン系やスチレン系、アラミド系などいずれを使用しても良い。
【0070】
ここで言うハードセグメントとは、熱可塑性エラストマーの硬質層部分のことである。
【0071】
ここでは、熱可塑性エラストマー29cのハードセグメントがオレフィン系である場合を説明する。
【0072】
相溶化剤にはメタクリロキシ基を有するシラン化合物を使用すると効果がより発揮される。
【0073】
代表的なメタクリロキシ基を有するシラン化合物は、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0074】
また、その他、官能基の異なるシラン化合物で、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどを使用しても良い。
【0075】
熱可塑性エラストマー29cのハードセグメントがスチレン系であれば、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランが望ましいが、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドも大きな効果を発揮する。
【0076】
熱可塑性エラストマー29cのハードセグメントがスチレン系の場合も上記に限定されずに、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシランを使用しても良い。
【0077】
熱可塑性エラストマー29Cのハードセグメントがアラミド系の場合は、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリドキシプリピルトリメトキシシラン、3−グリドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリドキシプロピルトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリオエトキシシランなども効果的である。
【0078】
次に、上述したスピーカ用エッジ材料29Aをスピーカ用エッジ29Bに成形し、振動板本体27を結合したスピーカ用振動板29について説明する。
【0079】
スピーカ用エッジ29Bは、上述したスピーカ用エッジ材料29Aを射出成形することにより形状を形成している。
【0080】
射出成形することにより、生産効率を向上させることができるとともに、複雑なエッジ形状であっても成形時の応力歪を生じさせることなく成形することができ、リニアリティーが良好で、精度が高く、さらにばらつきが少ないエッジを容易に得ることができる。
【0081】
このとき、スピーカ用エッジ29Bは、スピーカ用エッジ29B単体で射出成形により形成し、その後、振動板本体と結合しても良いし、スピーカ用エッジ29Bと振動板本体とを同時に一体成形して結合しても良い。
【0082】
スピーカ用エッジ29Bと振動板本体とを同時に一体成形して結合することで、接着剤が不要になるとともに、さらに生産効率を向上させることができる。
【0083】
また、振動板本体は紙でも樹脂でも一体成形することができ、接着剤が不要になる。
【0084】
振動板本体を、紙にて構成した場合は、音質や周波数特性の設計自由度を拡大することができる。
【0085】
一方、振動板本体を、樹脂にて構成した場合は、耐水性や耐湿性を向上させることができ、生産性も向上させることができる。
【0086】
また、紙からなる振動板本体は竹繊維を含む構成とすることで、竹繊維の有する強靭性により、明るく歯切れの良いクリアな音質を実現することができる。
【0087】
さらに、エッジ材料に添加する竹繊維は針葉樹からなる繊維より剛性が高く、しなやかであるため、エッジを薄肉成形する際に射出速度を上げても振動板の変形やそりが解消される。
【0088】
一方、樹脂からなる振動板本体は、軽量化と耐熱性のためにポリプロピレンを使用することが望ましく、さらに強化材として竹繊維を含んでも良い。
【0089】
そして、ポリプロピレンは50重量%以上であることが望ましい。
【0090】
ポリプロピレンが50重量%以上であれば、エッジ材料と振動板本体材料との親和性が高まり、エッジとの結合強度をより強固にすることが出来る。
【0091】
また、振動板本体の樹脂はさらに植物由来のポリ乳酸を含んでも良い。
【0092】
植物由来のポリ乳酸の混入量は、5重量%以上で、かつ30重量%以下が望ましい。
【0093】
特に望ましくは、25重量%以上で、かつ30重量%以下が良い。
【0094】
植物由来であるポリ乳酸が25重量%を超えるバイオマス樹脂は、より環境に優しい。
【0095】
この理由としては、植物由来のポリ乳酸は大気中の二酸化炭素が原料であり、燃焼させても大気中の二酸化炭素量は増加しないことから、地球温暖化防止に繋がり、その含有量が多いほど、その環境を向上させる効果は大きくなるためである。
【0096】
植物由来のポリ乳酸が5重量%に満たないと、ポリ乳酸による曲げ弾性率の向上が期待できず、効果を発揮させることができない。
【0097】
以上のように本発明は、熱可塑性エラストマーに、平均粒径が40μm以下の微細なマイカと、発泡剤とを添加してなるスピーカ用エッジ材料を射出成形して形状を形成したスピーカ用エッジと振動板本体とを結合してスピーカ用振動板を構成したものである。
【0098】
この構成とすることにより、接着剤を使用する必要がなく、寸法精度が高く、ローリングを抑制した高品質で生産性の高いスピーカ用振動板を提供することができる。
【0099】
その上従来では、ほとんどのエッジ材料は振動板と結合する際に、エッジを接着剤で貼り合せる必要があり、被着体の材料や耐熱条件によって接着剤が限定されるため音質的な影響も少なからず受けてしまうが、本発明では接着剤を使用する必要がなくなるため、この課題も解消することができる。
【0100】
また従来では、接着剤の塗布ばらつきによりローリングによる特性低下や品質低下を引起す可能性があったが、本発明では接着剤を使用する必要がなくなるため、この課題も解消することができる。
【0101】
さらに従来では、樹脂振動板の場合は接着前にプライマー塗布工程が必要であるなどの工数が多く必要になるという欠点があったが、本発明では接着剤を使用する必要がなくなるため、この課題も解消することができる。
【0102】
よって本発明は、成形収縮率の小さいエラストマーが得られ、射出成形による内部応力を緩和し、歪を残さず成形できるため成形品の変形や反りを抑制し、より薄肉成形することができるため、リニアリティーが良く、軽量で、高い内部損失を有し、耐久性に優れ、製造が容易でばらつきが少なく、そして防水性能にも優れるという性能の高いスピーカ用エッジ材料とすることができる。
【0103】
また、強化材の添加は耐熱性などの信頼性を向上させるだけでなく、内部損失も大きくする役割もあり従来の熱可塑性エラストマーより内部損失が大きくなり特性が優れ、ばらつきの少ない生産性の高いスピーカ用エッジ材料を得ることができる。
【0104】
よって、この構成により、成形収縮率の小さいスピーカ用エラストマーエッジが得られるため、射出成型により一体成形する際の内部応力を緩和し、歪を残さず成形できるため成形品の変形や反りを抑制し、形状の自由度が大きくなり、かつより薄肉成形することができる。
【0105】
また、射出成形であるため寸法制度が高く、生産性を向上させることができる。
【0106】
その上、より生産性を向上させるために多数個取りにした場合でも、加硫ゴムのような大きな成形ばらつきはなく、金型汚染も少なくなる。
【0107】
また、成形品のランナー部分をリサイクル活用できるため、環境にも優しく、材料利用率が向上し、低コスト化することが可能となる。
【0108】
そして、振動板作製に接着剤が不要であることから工数削減も含めて安価であり、接着剤の塗布ばらつきや貼り合わせずれによるローリング発生を抑制することが可能となり、薄肉成形での寸法精度が高く形状の自由度が大きいため、品質安定性が高く特性の良好化、特性設定の自由度拡大を図ることができる優れたスピーカ用振動板を提供することができる。
【0109】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明について説明する。
【0110】
図4は、本発明の一実施の形態におけるスピーカの断面図を示したものである。
【0111】
図4に示すように、着磁されたマグネット21を上部プレート22およびヨーク23により挟み込んで内磁型の磁気回路24を構成している。
【0112】
この磁気回路24のヨーク23にフレーム26を結合している。
【0113】
このフレーム26の周縁部に、本発明の振動板本体27の外周をエッジ29Bを介して接着している。
【0114】
そして、この振動板本体27の中心部にボイスコイル28の一端を結合するとともに、反対の一端を前記磁気回路24の磁気ギャップ25にはまり込むように結合して構成している。
【0115】
本発明のスピーカの周波数特性を図5、従来のスピーカの周波数特性を図6に示す。
【0116】
本発明のスピーカでは、音圧においては中高域でのピークディップが低減しているとともに、歪においても低減しており、特性のより優れたスピーカであることがわかる。
【0117】
以上は、内磁型の磁気回路24を有するスピーカについて説明したが、これに限定されず、外磁型の磁気回路を有するスピーカに適用してもよい。
【0118】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明について説明する。
【0119】
図7は、本発明の一実施形態の電子機器であるオーディオ用のミニコンポシステムの外観図を示したものである。
【0120】
スピーカ30は、エンクロジャー41に組込まれてスピーカシステムが構成されている。
【0121】
アンプ42はスピーカシステムに入力する電気信号の増幅回路を含む。
【0122】
プレーヤ等の操作部43はアンプ42に入力されるソースを出力する。
【0123】
電子機器であるオーディオ用のミニコンポシステム44は、このようにアンプ42、操作部43、スピーカシステムを有する。
【0124】
アンプ42、操作部43、エンクロジャー41は、ミニコンポシステム44の本体部である。
【0125】
すなわちスピーカ30は、ミニコンポシステム44の本体部に装着されている。
【0126】
またスピーカ30のボイスコイルは、本体部のアンプ42から給電されて振動板から音を発する。
【0127】
この構成により、従来では実現できなかった歪の低い音と良好な特性、さらには精度の高い特性づくり、品質や信頼性の安定化を可能としたミニコンポシステム44が得られる。
【0128】
なおスピーカ30の機器への応用として、オーディオ用のミニコンポシステム44について説明したが、これに限定されない。
【0129】
持運び可能なポータブル用のオーディオ機器等への応用も可能である。
【0130】
さらに、液晶テレビやプラズマディスプレイテレビ等の映像機器、携帯電話等の情報通信機器、コンピュータ関連機器等の電子機器に広く応用、展開が可能である。
【0131】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4を用いて、本発明について説明する。
【0132】
図8は、本発明の一実施形態の装置である自動車50の断面図を示したものである。
【0133】
図8に示すように、本発明のスピーカ30をリアトレイやフロントパネルに組込んで、カーナビゲーションやカーオーディオの一部として使用して自動車50を構成したものである。
【0134】
この構成とすることにより、スピーカ30を搭載して、このスピーカ30の特長を活かした歪の低い音と良好な特性、さらには品質や信頼性の安定化を図ることができる自動車等の装置を実現させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、歪の低い音と良好な特性、さらには品質や信頼性の安定化と高い生産性を必要とするスピーカに有用である。
【符号の説明】
【0136】
21 マグネット
22 上部プレート
23 ヨーク
24 磁気回路
25 磁気ギャップ
26 フレーム
27 振動板本体
28 ボイスコイル
29 振動板
29A エッジ材料
29B エッジ
29a マイカ
29b 発泡剤
29c エラストマー
30 スピーカ
41 エンクロジャー
42 アンプ
43 操作部
44 ミニコンポシステム
50 自動車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形により形状を形成するためのスピーカ用エッジ材料であって、前記スピーカ用エッジ材料は、熱可塑性エラストマーに、平均粒径が40μm以下の微細なマイカと、発泡剤とを添加してなるスピーカ用エッジ材料。
【請求項2】
マイカの平均粒径を10μm以下とした請求項1記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項3】
マイカの平均粒径を1μm以下とした請求項1記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項4】
マイカの混入比率を20重量%以上で、かつ50重量%以下とした請求項1記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項5】
竹材料をさらに含む請求項1記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項6】
竹材料の混入比率を5重量%以上で、かつ30重量%以下とした請求項5記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項7】
竹材料は、竹繊維または竹パルプのうちの少なくともいずれか1つとした請求項5記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項8】
竹繊維、竹パルプは平均繊維長が1mm以下とした請求項7記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項9】
竹繊維、竹パルプは平均繊維径が10μm以下のミクロフィブリル状態まで微細にした請求項7記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項10】
竹材料は、竹粉、竹炭粉、竹の葉から抽出した二酸化珪素成分のプラントオパールの少なくともいずれか1つとした請求項5記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項11】
竹粉、竹炭粉、竹の葉から抽出した二酸化珪素成分のプラントオパールは、平均粒径を10μm以上で、かつ50μm以下とした請求項10記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項12】
相溶化剤をさらに含む請求項1記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項13】
相溶化剤はメタクリロキシ基を有するシラン化合物とした請求項12記載のスピーカ用エッジ材料。
【請求項14】
請求項1から請求項13記載のいずれか1つのスピーカ用エッジ材料を射出成形して形状を形成したスピーカ用エッジ。
【請求項15】
請求項14記載のスピーカ用エッジと振動板本体とを結合したスピーカ用振動板。
【請求項16】
スピーカ用エッジと振動板本体とを同時に一体成形した請求項15記載のスピーカ用振動板。
【請求項17】
振動板本体を、紙または樹脂からなる材料とした請求項15記載のスピーカ用振動板。
【請求項18】
紙からなる振動板は、竹繊維を含む請求項17記載のスピーカ用振動板。
【請求項19】
樹脂からなる振動板は、ポリプロピレンを50重量%以上含むとともに、強化材として竹材料を含む請求項17記載のスピーカ用振動板。
【請求項20】
樹脂からなる振動板は、ポリプロピレンを50重量%以上含むとともに、植物由来のポリ乳酸樹脂を5重量%以上でかつ30重量%以下含む請求項17記載のスピーカ用振動板。
【請求項21】
磁気回路と、前記磁気回路に結合されたフレームと、前記フレームの外周部に結合された請求項15記載のスピーカ用振動板と、前記スピーカ用振動板に結合されるとともに、その一部が前記磁気回路から発生する磁束の作用範囲内に配置されたボイスコイルとを備えたスピーカ。
【請求項22】
請求項21記載のスピーカを搭載した電子機器。
【請求項23】
請求項21記載のスピーカを移動手段に備えた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−239248(P2011−239248A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109791(P2010−109791)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】