説明

スポーツシューズ用鋲

【目的】 取付台に対する鋲本体の着脱を容易にすること及び及び鋲の緩みや脱落を防止することである。
【構成】 鋲本体(3)と、取付台(2)からなる。前記鋲本体(3)は一方向に膨出する膨出部(33b)を有する幹部(33)と、この膨出部を支持する基部(37)と、基部下部に設けられた接地部(34)からなる。前記取付台(2)は基部(21)と、基部から突出するリング(22)からなり、リング(22)には前記膨出部(33b)が収容可能な切り込み(24)が設けられている。鋲本体(3)は前記幹部(33)を含む第1部分(31)と前記基部(37)を含む第2部分(32)の少なくとも2部品からなり、前記第1,第2部分は分離及び結合可能である

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスポーツシューズ用鋲に関する。以下の説明ではゴルフ靴を例に挙げるが、その他野球靴、サッカーシューズ等にも応用可能である。
【背景技術】
【0002】
ゴルフ靴用鋲は靴底に埋設された座板(取付台)とこれに取り付けるピン(鋲本体)とからなり、両者は着脱自在である。両者を着脱自在とする方法は、例えばピンの根元部に設けられた雄ねじを座板内側の雌ねじにねじ込むことによる。
【0003】
ゴルフ靴用鋲は、左右両足のゴルフ靴を合わせて、約10〜30個設けられているので、すべてのピンを着脱するのは時間と手間のかかる作業である。また、そのようにネジで取り付けたものは、ゴルファーのスイングに伴ってだんだん緩み、ついには抜け落ちてしまうおそれもある。
【0004】
この問題点を解決するために、本発明者は、下記特許文献1において、「接地部を有する鋲本体と、鋲本体の取付台からなり、前記鋲本体と取付台のいずれかの要素は、先端部において横方向片側のみに膨出する膨出部を有する幹部と、この膨出部を支持する基部からなり、前記鋲本体と取付台の他方の要素は、基部と、基部から突出するリングからなり、リングには前記膨出部が収容可能な切り込みが設けられていることを特徴とするスポーツシューズ用鋲」を提案した。
【特許文献1】特開2001−137009
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、鋲本体には「先端部において横方向片側のみに膨出する膨出部」が取り付けられ、一方、取付台には「前記膨出部が収容可能な切り込み」が設けられる。これらを組み合わせるため、その着脱は方向性を有する。この方向性に逆らう力に対しては強固に抵抗するが、その方向性と同じ方向への力に対してはどうしても弱くなりがちである。本発明は、特許文献1の発明の改良であって、着脱の方向性と同じ方向への力に対しても、抵抗力を高め、それにより鋲の緩みや脱落をさらに強固に防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、接地部を有する鋲本体と、鋲本体の取付台からなり、前記鋲本体は、頭部において横方向片側のみに膨出する膨出部を有する幹部と、この膨出部を支持する基部からなり、前記取付台は、基部と、基部から突出するリングからなり、リングには前記膨出部が収容可能な切り込みが設けられているスポーツシューズ用鋲において、前記鋲本体が幹部を含む第1部分と基部を含む第2部分の少なくとも2部品からなり、前記第1,第2部分は分離及び結合可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、鋲本体と取付台を着脱するのにねじを用いないので、製造コストを削減することができる。また、ねじを使用せず、単に押し込んだり、器具で持ち上げたりするだけなので、着脱が簡単である。その結果、10〜30個の鋲本体の着脱に要する時間は大幅に短縮することができた。また、ネジを使用する場合と異なり、鋲本体が緩んだり脱落したりするおそれは少ない。
【0008】
さらに本発明によれば、前記鋲本体が幹部を含む第1部分と接地部を含む第2部分の少なくとも2部品からなるので、接地部にかかった負荷がそのまま幹部に伝わることがなく、第1部分と第2部分の隙間により吸収される。その結果、着脱の方向性に逆らう方向の力に対してはもちろん、同じ方向の力に対しても抵抗力をもつようになり、鋲本体の緩みを防止することができる。その結果、鋲本体の脱落の危険を顕著に減らすことができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
前記第2部分には貫通孔があり、この貫通孔を前記第1部分の幹部が挿通するようにしてこれら2部分が結合することが好ましい。 さらに結合を強固なものとするために前記第1部分には抜け止め用の円板を設けることが好ましい。
【0010】
前記第1部分と前記第2部分の間には隙間を設けることが好ましい。両部分を分離させるときには、この隙間にへらのような器具を挿入する。
【0011】
前記接地部は、前記第1部分と前記第2部分の両方に設けることが、鋲を安定させるために好ましい。
【実施例1】
【0012】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。
【0013】
図1は本発明第1実施例に係るゴルフ靴用鋲が靴底に埋設されている状態の断面図である。
【0014】
同図から明らかなように、靴底1に取付台2が埋設され、その取付台に鋲本体3がはめ込まれている。
【0015】
鋲本体3は、図2(断面図),図3a(平面図)、図3b(底面図)に示すように、少なくとも幹部33を含む第1部分31及び基部37を含む第2部分32からなり、第1,第2部分31,32は分離及び結合可能である。
【0016】
図2に示すように、第1部分31の幹部33はほぼ円柱形であるが、その頭部33aは横方向に延びる膨出部分33bとなっている。その結果、平面視すれば、図3に示すように、楕円を半分にした形状である。図2に示すように、膨出部の底部33cは平坦面を形成している。幹部33の膨出していない側は滑らかな面取り部33dを形成している。
【0017】
図2に示すように、第1部分31はさらに円板部35及び接地部36を有する。円板部35は、第1部分31を第2部分32と結合させたときに第2部分32と接触して、抜け止めとして作用する。接地部36は図示の実施例では下方に向かう1個所の中央突起からなる。
【0018】
第2部分32は、基部37と、接地部34と、第1部分貫通用の中央孔38からなる。基部37は肉厚のすり鉢状であり、周囲に向かって徐々に隆起している。基部37の中央には円形のくぼみ39があり、第1部分31と第2部分32を結合させたとき、このくぼみ39に前記円板部35が着座する。
【0019】
接地部34は図示の実施例では下方に向かう数カ所の突起からなる。接地部34は、図示する形状の他、ピン状でもよいし、板状であってもよい。
【0020】
上記説明から自明なように、第1部分31と第2部分32を結合させるには、単に第2部分の中央孔38に第1部分の幹部33を差し込むだけである。
【0021】
図4,図5は本発明第1実施例に係るゴルフ靴の靴底4に埋設される取付台2を示し、図4は断面図、図5は底面図である。
【0022】
取付台2は、円形基部21と、この円形基部21の中央に設けられ、下方に突出するリング22からなる。「リング」といってもこの実施例では円形ではなく、「D」形である。円形基部21には靴底4の樹脂と強く一体化させるための貫通孔23が複数個(図面では8個)設けられている。図4に示すように、リング22の根元側の約半分には、前記膨出部33bを受け入れる大きさと形状を有する切り込み24が設けられている。切り込みの底部25は平坦面となっている。また、リング22の開放先端は内側に向かって角が切り取られて、傾斜部26となっている。
【0023】
取付台2及び鋲本体3(第1部分31,第2部分32)は、通常、すべて合成樹脂から製作される。
【0024】
鋲本体3と取付台2を結合させるには、まず、前記要領で鋲本体3の第1部分31と第2部分32を結合させる。ついで、取付器具を用いて鋲本体3を取付台2に押し込むだけでよい。そのような器具が手近にないときには、指で押し込むこともできる。最初は膨出部33bがリング22先端に当たって抵抗があるが、そのまま押し込むと、双方の樹脂が僅かに変形し、膨出部33bがリング22の切り込み24にはまりこむ。この状態では膨出部33bの底面33cと切り込み24の底面25が接触して、鋲本体3と取付台2の位置が安定的する(図1参照)。
【0025】
鋲本体3と取付台2の結合を解除するには、図1に示すように、専用の器具41を使用する。器具41は「く」の字型または「Z」型で、先端を第1部分31と第2部分32の間の隙間40に差し込み、力を左方向(「く」の字型のとき)又は上方向(「Z」型のとき)に加える。すると、膨出部33bの底面33cと切り込み24の底面25の接触部を中心として回動が始まり、幹部面取り33dがリング22に沿って滑り降り、やがて、両者の係合が解ける。この説明から明らかなように、隙間40を設ける位置は鋲本体3幹部の膨出していない側でなければならない。「専用の器具」を使用すると書いたが、傾斜部に沿って鋲本体を持ち上げるという目的に適うものであれば、身近にある「へら」や金属板なども使用することができる。
【実施例2】
【0026】
図6は本発明第2実施例に係る鋲本体3Aの平面図である。第1実施例の鋲本体3と異なるのは、膨出部分33b’の形状だけである。この膨出部分33b’は平面視すれば楕円である。
【0027】
図7は本発明第2実施例に係る取付台2Aの底面図である。第1実施例の取付台2と異なるのは、切り込み24’の形状だけである。この膨出部分24’は平面視すれば楕円である。その他、第1実施例と同じ機能を有する部分には同じ符号に「’」を付けて、その説明を省略する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明第1実施例に係る、スポーツシューズ用鋲が靴底に埋設されている状態の断面図である。
【図2】本発明第1実施例の鋲本体の断面図である。
【図3】本発明第1実施例の鋲本体の平面図である。
【図4】本発明第1実施例の取付台の断面図である。
【図5】本発明第1実施例の取付台の底面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係る、スポーツシューズ用鋲の平面図である。
【図7】本発明第2実施例の取付台の底面図である。
【符号の説明】
【0029】
1 靴底
2,2A 取付台
4 靴底
21 円形基部
22 リング
23 貫通孔
24 膨出部分
25 底部
25 底面
26 傾斜部
3,3A 鋲本体
31 第1部分
32 第2部分
33 幹部
33a 頭部
33b 頭部膨出部
33c 頭部膨出部底部
33c 頭部膨出部底面
34 接地部
35 円板部
36 接地部
37 基部
38 中央孔
40 隙間
41 器具




【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地部(34,36)を有する鋲本体(3)と、鋲本体の取付台(2)からなり、
前記鋲本体(3)は、頭部(33a)において横方向片側のみに膨出する膨出部(33b)を有する幹部(33)と、この膨出部を支持する基部(37)からなり、
前記取付台(2)は、基部(21)と、基部から突出するリング(22)からなり、リングには前記膨出部(33b)が収容可能な切り込み(24)が設けられているスポーツシューズ用鋲において、
前記鋲本体(3)が前記幹部(33)を含む第1部分(31)と前記基部(37)を含む第2部分(32)の少なくとも2部品からなり、前記第1,第2部分(31,32)は分離及び結合可能であることを特徴とするスポーツシューズ用鋲。
【請求項2】
前記第2部分(32)には貫通孔(38)があり、この貫通孔を前記第1部分(31)の幹部(33)が挿通する請求項1記載のスポーツシューズ用鋲。
【請求項3】
前記第1部分(31)は抜け止め用の円板部(35)を有する請求項1又は2記載のスポーツシューズ用鋲。
【請求項4】
前記第1部分(31)と前記第2部分(32)の間に引き剥がし用の隙間(40)がある請求項1ないし3のいずれかに記載のスポーツシューズ用鋲。
【請求項5】
前記接地部(34,36)が、前記第1部分(31)にも前記第2部分(32)にも設けられている請求項1ないし4のいずれかに記載のスポーツシューズ用鋲。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate