説明

スポーツシューズ

【課題】 ソール全面からスパイクピンを出没させることができるようにする。
【解決手段】 ソール(20)には複数の挿通孔(21A)を形成し、複数の挿通孔には硬質のスパイクピン(31)をスライド自在に挿入する。複数のスパイクピンは下方に抜け止めしかつばね部材(32)によって上方に付勢する。ソール内には複数のスパイクピンの頭部(31A)と当接するスライドカム(23)を設け、複数のスライドカムはワイヤー(24)によって連結し、操作レバー(26)を操作することによりスライドカムをワイヤーを介して引っ張って第1位置と第2位置との間でスライドさせ、第1位置でスライドカムによってスパイクピンの先端を下方に突出させ、第2位置でスパイクピンを没入させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はスポーツシューズに関し、特にソール全面からスパイクピンを出没させることのできるようにしたシューズに関する。
【背景技術】
【0002】
スポーツシューズ、例えばゴルフシューズではゴルフクラブのスイング中に地面をしっかりとグリップして足元が滑らないように、ソールにスパイクやスパイクピンを設けることが行われる。
【0003】
しかし、従来の金属製のスパイクやスパイクピンではグリーン上を歩行したときに芝生にスパイク痕を残し、後のプレイヤーの円滑なプレイを妨げるおそれがある。また、ゴルフコース内のアスファルト面を歩行する際に突き上げ感や不安定感があり、さらにはアスファルト面からの衝撃が足裏から膝や腰に伝わり、疲労感が大きい。また、クラブハウス内を歩くと、フロアに損傷を与えるおそれがある。
【0004】
他方、金属製のスパイクやスパイクピンに代え、合成樹脂製のスパイクやスパイクピン、いわゆる「ノンメタルスパイク」を採用することが行われているが(特許文献1、特許文献2)、合成樹脂製のスパイクやスパイクピンはゴルフコースにおけるグリップ力が小さく、例えば濡れた芝生上や枯れた芝生上では足元が滑るおそれがある。
【0005】
これに対し、金属製又は硬質樹脂製のスパイクピンをソールから出没させるようにしたスポーツシューズが提案されている(特許文献3、特許文献4)。
【0006】
【特許文献1】特開2001−197907号公報
【特許文献2】特開平11−332612号公報
【特許文献3】特開2002−336006号公報
【特許文献4】特開平10−276805号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3、4記載のスポーツシューズでは操作レバーとスライダー又はカムを連結してスライダー又はカムを変位させ、スパイクピンを出没させる構造であるので、ソールの踵部分においてスパイクピンを出没させることはできるものの、操作レバーの設ける箇所が制限され、ソール全面においてスパイクピンを出没させるという構造を採用することが難しい。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑み、ソール全面からスパイクピンを出没させることのできるようにしたスポーツシューズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明に係るスポーツシューズは、ソールには複数の挿通孔が形成され、該複数の挿通孔には硬質のスパイクピンがスライド自在に挿入され、該複数のスパイクピンは下方に抜け止めされかつばね部材によって上方に付勢され、ソール内には上記複数のスパイクピンの頭部と当接するスライドカムが設けられ、上記複数のスライドカムはワイヤーによって連結されており、操作レバーが操作されることにより上記スライドカムが上記ワイヤーを介して引っ張られて第1位置と第2位置との間でスライドされ、上記スライドカムは第1位置で上記スパイクピンの先端を下方に突出させ、第2位置で上記スパイクピンを没入させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
本発明の特徴の1つはソール全面にスパイクピンをスライド自在に設け、スパイクピンの上方にスライドカムを設け、複数のスライドカムをワイヤーで連結し、ワイヤーを操作レバーで押し引きし、スライドカムをスライドさせてスパイクピンを出没させるようにした点にある。
【0011】
これにより、操作レバーをいずれの部位に設けてもソール全面に設けたスパイクピンを出没させることができる。
【0012】
ソールには硬質のスパイクピンのみを設けてもよいが、スパイクピンを没入させているときにも適切なグリップ力が得られるように、適切な軟らかさの樹脂製スパイクを設け、樹脂製スパイクからスパイクピンを出没させるようにするのがよい。
【0013】
即ち、ソールには複数の取付け穴を形成し、複数の取付け穴には樹脂製スパイクを挿入固定し、複数の樹脂製スパイクの中央には挿通孔を形成し、挿通孔には硬質のスパイクピンをスライド自在に挿入し、スライドカムが第1位置でスパイクピンの先端を樹脂製スパイクの下端よりも下方に突出させ、第2位置でスパイクピンの先端を樹脂製スパイク内に没入させるように構成するのが好ましい。
【0014】
ソールにはスライドカム、ワイヤー及び操作レバーをレイアウトするスペースを設ける必要がある。そこで、ソールをロワーソールとアッパーソールとから構成し、ロワーソールとアッパーソールとの間にはスライドカム、ワイヤー及び操作レバーを収容し得る空間を形成するのがよい。
【0015】
ソール全面にわたってスパイクピンをレイアウトした場合、各スライドカムを連結するワイヤーは折れ曲がってレイアウトされるおそれがある。そこで、空間内にはケーブルの移動を案内するガイドを設けるのがよい。ガイドは例えばガイドローラを採用することができる。
【0016】
スパイクピンは所定の硬さがあれば特にその材料は限定されず、例えば金属材料又は硬質の合成樹脂材料を用いて製作されることができ、又金属製の芯材を合成樹脂材料で覆って製作されることもできる。
【0017】
スライドカムはそのカム面でスパイクピンの頭部を摺接してスパイクピンをスライドさせることができればよいが、スパイクピンを突出状態及び没入状態に保持できるように、そのカム面をスパイクピンの頭部が嵌入する凹状に形成するのが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を図面に示す具体例に基づいて詳細に説明する。図1ないし図3は本発明に係るスポーツシューズの好ましい実施形態を示し、これはゴルフシューズに適用した例である。図において、靴10には履き口11が形成されるとともに、履き口11の前方にはべろ12が設けられ、べろ12の両側の間の鳩目には靴紐13が掛けわたされ、又靴10の底部にはソール20が固着されている。なお、ソール20の上方には図示しないがさらにインナーソール(中敷)が設けられていてもよい。
【0019】
ソール20はロワーソール21とアッパーソール22を積層し相互に固着して構成され、ロワーソール21とアッパーソール22はナイロンやウレタン等の合成樹脂材料を用いて例えばインジェクション成形法によって製造されている。
【0020】
このロワーソール21には円形の取付け穴21Aが前部に5つ、後部に2つソール20の外縁に沿って形成され、取付け穴21A内面には雌ねじが形成され、取付け穴21Aにはスパイク30の雄ねじが螺合されて取付けられている。
【0021】
スパイク30はナイロンやウレタン等の合成樹脂材料を用いて例えばインジェクション成形法などによって製造され、円形状の基部30Aの底面外縁に複数の突起30Bを等しい角度間隔で突設した形態をなし、基部30Aの中心には挿通孔30Cが上下に貫通して穿設されている。
【0022】
このスパイク30の挿通孔30Cにはスパイクピン31がスライド自在に挿通され、スパイク31はステンレス鋼などの金属材料を用いて製作され、先端部が鋭角となった円柱状をなし、後端には頭部31Aが拡径して形成され、スパイクピン31はその頭部31Aが挿通孔30Cの周縁と当たることによって下方に抜け止めされている。
【0023】
スパイクピン31の中間には小径部分が形成され、その小径部分の外周にはコイルばね(ばね部材)32が外装され、コイルばね32の下端は取付け孔30Cの内面の突起(図示せず)によって位置決めされて係止され、スパイクピン31を上方に付勢している。
【0024】
また、アッパーソール22には凹溝(空間)22Aがソール20の外形に沿った形状に形成され、凹溝22A内にはスパイクピン31に対応する部位にスライド溝22Bが形成されてスライドカム23がスライド自在に配置されている。
【0025】
スライドカム23はカム面22A、23Bが2段に形成され、一方のカム面23Aは厚みが小さく、スライドカム23が第2位置にスライドされたときにスパイクピン31の先端をスパイク30内に没入させ、他方のカム面23Bは厚みが大きく、スライドカム23が第1位置にスライドされたときにスパイクピン31の先端をスパイク30の突起30B下端から下方に突出させるようになっている。
【0026】
複数のスライドカム23の間はワイヤー24で連結され、凹溝22Aのコーナー部分にはワイヤー24を案内するガイドローラ(ガイド)25が設けられている。
【0027】
また、アッパーソール22の土踏まずに相当する部分には収納凹部22Cが幅方向に延びて形成され、収納凹部22Cには操作レバー26が収納され、操作レバー26の先端部はアッパーソール22に回転自在に支持され、操作レバー26にはワイヤー24が連結されてワイヤー24は無端状に構成され、又操作レバー26の摘まみ26Aはソール20から外方に突設されている。
【0028】
プレイヤーがゴルフクラブをスイングする場合、操作レバー26の摘まみ26Aを操作してスライドカム23を第1位置にスライドさせる。すると、スライドカム23のカム面23Bがスパイクピン31の頭部31Aと当たり、スパイクピン31を下方にスライドさせ、スパイクピン31の先端が図3の(b)に示されるようにスパイク30の突起30Bよりも下方に突出するので、ゴルフコースの地面をソール20全体で確実にグリップしてゴルフクラブを強くスイングすることができる。
【0029】
同様に、濡れた芝生や枯れた芝生上を歩くときにもスパイクピン31を突出させておくと、足元が滑ることもない。
【0030】
他方、グリーン上でパッティングする場合、操作レバー26の摘まみ26Aを逆方向に操作してスライドカム23を第2位置にスライドさせる。すると、スライドカム23のカム面23Aがスパイクピン31の頭部31Aと当たり、スパイクピン31がコイルばね32の付勢力によって上方にスライドし、スパイクピン31の先端が図3の(a)に示されるようにスパイク30内に没入するので、グリーン上の芝生を傷めることはない。
【0031】
このときスパイクピン31は没入しているが、ソール20には樹脂製のスパイク30があるので、グリーンの芝生を適切にグリップしてパッティングすることができる。
【0032】
また、ゴルフコース内のアスファルト面を歩行するときにもスパイクピン31を没入させておくと、突き上げ感や不安定感を感じることはなく、しかもアスファルト面からの衝撃も少ない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係るスポーツシューズの好ましい実施形態を示す図である。
【図2】上記実施形態におけるロワーソール21及びアッパーソール22を示す図である。
【図3】上記実施形態における作用を説明するための図である。
【符号の説明】
【0034】
10 靴
20 ソール
21 ロワーソール
21A 取付け穴
22 アッパーソール
22A 凹溝
22B スライド溝
23 スライドカム
23A、23B カム面
24 ワイヤー
26 操作レバー
30 スパイク
30B 突起
31 スパイクピン
31A 頭部
32 コイルばね(ばね部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソールには複数の挿通孔が形成され、該複数の挿通孔には硬質のスパイクピンがスライド自在に挿入され、該複数のスパイクピンは下方に抜け止めされかつばね部材によって上方に付勢され、ソール内には上記複数のスパイクピンの頭部と当接するスライドカムが設けられ、上記複数のスライドカムはワイヤーによって連結されており、
操作レバーが操作されることにより上記スライドカムが上記ワイヤーを介して引っ張られて第1位置と第2位置との間でスライドされ、上記スライドカムは第1位置で上記スパイクピンの先端を下方に突出させ、第2位置で上記スパイクピンを没入させるようにしたことを特徴とするスポーツシューズ。
【請求項2】
上記ソールには複数の取付け穴が形成され、該複数の取付け穴には樹脂製スパイクが挿入固定され、該複数の樹脂製スパイクの中央には上記挿通孔が形成され、該挿通孔には上記硬質のスパイクピンがスライド自在に挿入されており、上記スライドカムは第1位置で上記スパイクピンの先端を上記樹脂製スパイクの下端よりも下方に突出させ、第2位置で上記スパイクピンの先端を上記樹脂製スパイク内に没入させるようにした請求項1記載のスポーツシューズ。
【請求項3】
上記ソールがロワーソールとアッパーソールとから構成され、上記ロワーソールとアッパーソールとの間には上記スライドカム、ワイヤー及び操作レバーを収容し得る空間が形成されている請求項1記載のスポーツシューズ。
【請求項4】
上記空間内には上記ケーブルの移動を案内するガイドが設けられている請求項3記載のスポーツシューズ。
【請求項5】
上記スパイクピンは、金属材料又は硬質の合成樹脂材料を用いて製作され、あるいは金属製の芯材を合成樹脂材料で覆って製作されている請求項1又は2記載のスポーツシューズ。
【請求項6】
上記スライドカムにはそのカム面が上記スパイクピンの頭部が嵌入する凹状に形成されている請求項1記載のスポーツシューズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−44058(P2007−44058A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228317(P2005−228317)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(505296924)山本工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】