説明

ダイボンド剤組成物及び半導体装置。

【課題】本発明は、ワイヤーボンドの予備加熱で半硬化することができ、ワイヤーボンド可能な強度を有し、かつ平坦性を維持することができるダイボンド剤組成物を提供し、パッケージの製造工程の短縮化及び生産性の向上を目的とする。
【解決手段】
第1基板の一方の面側に配置された第1半導体素子と、前記第1半導体素子と前記第1基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、前記第1半導体素子の前記第1基板と反対側に配置された第2半導体素子とで構成される半導体装置の前記第1半導体素子と前記第2半導体素子との間を封止するダイボンド剤組成物であって、
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化促進剤 (A)成分と下記(C)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部となる量
(C)硬化剤 (A)成分中のエポキシ基1当量に対し、該(C)成分中のエポキシ基と反応性を有する基が0.8〜1.25当量となる量、及び
(D)レーザー回折法で測定される累積頻度99%の粒径が前記第1半導体素子と第2半導体素子間距離の±20%である固体粒子 (A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して0.01〜200質量部となる量を含有し、ただし、(A)成分及び(C)成分の少なくともいずれかがシリコーン変性されているダイボンド剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子を接着するのに好適なダイボンド剤組成物に関し、詳細には半導体素子が三次元的に積層されたチップ積層型パッケージにおいて、ワイヤーボンドにより電気的に接続されている半導体素子同士を良好に張り合わせることができるダイボンド剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エポキシ樹脂は接着性・耐熱性・耐湿性に優れていることから、種々の用途に使用されている。特に液状エポキシ樹脂は、微細化・高速化が推し進められている半導体分野において、複雑・微細な設計のデバイスにも対応できるため、広く使用されている。特に近年は実装方式が多様化され、高密度化しており、半導体パッケージにおいても半導体素子が三次元的に積層されたチップ積層型パッケージが開発されている(特許文献1)。3次元的に半導体素子が搭載され、ボンディングワイヤで半導体素子と基板が電気的に接続された構造の当該パッケージではフィルム状の接着材を用いる方法が一般に用いられている(特許文献2)。しかし、この方法はダイボンディングペーストを用いる方法に比べ工程数が多くコスト高となる難点があった。また、チップ積層型パッケージでは、フィルム材料やSiチップなどのスペーサーを用いることによりボンディングワイヤの変形を防ぐために高さを保持していたが、これも高コストであった。
【0003】
ウエハーに貼り付けられたダイアタッチフィルムでボンディングワイヤごと封止する工法もあるが、これもダイアタッチフィルムが高価でありコスト的に問題があった。また、チップ積層技術において、最も需要が高く、かつ難関であるのが、同一寸法のチップを同位置に垂直方向に積層することである。低コストで半導体素子を3次元的に正確な位置にチルトやワイヤーの変形等の不良なく実装するためには、第2半導体素子をワイヤーボンディングしている第1半導体素子上へ搭載する際に第1半導体素子上へ塗布されるダイボンド剤組成物の特性が非常に重要となり、チップ積層型パッケージの製造において、第2半導体素子を接着するのに好適なダイボンド剤組成物の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−349228号公報
【特許文献2】特開2004−43762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
チップ積層型パッケージの製造は、通常、ダイボンド剤組成物を第1半導体素子上に塗布した上に第2半導体素子を搭載し、Cステージ化によりダイボンド剤組成物を硬化させた後、第2半導体素子をワイヤーボンディングする。ここで、該第2半導体素子を第1半導体素子上に搭載した後、ワイヤーボンドの予備加熱で該ダイボンド剤組成物を半硬化することができ、該半硬化状態のダイボンド剤組成物がワイヤーボンド可能な強度を有し、かつ平坦性を維持していれば、Cステージ化工程をスキップして第2半導体素子をワイヤーボンドすることが可能になる。当該方法によりパッケージの製造工程を短縮化することができ、生産性の向上をもたらすことができる。本発明は、ワイヤーボンドの予備加熱で半硬化することができ、ワイヤーボンド可能な強度を有し、かつ平坦性を維持することができるダイボンド剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のダイボンド剤組成物がワイヤーボンドの予備加熱で半硬化し、かつワイヤーボンド可能な強度を付与できることを見出した。また、特定の粒径を有する固体粒子を含有することにより、半導体素子間にギャップを確保し樹脂組成物の平坦性を維持することができることを見出した。
【0007】
即ち、本発明は、
第1基板の一方の面側に配置された第1半導体素子と、前記第1半導体素子と前記第1基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、前記第1半導体素子の前記第1基板と反対側に配置された第2半導体素子とで構成される半導体装置の前記第1半導体素子と前記第2半導体素子との間を封止するダイボンド剤組成物であって、
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化促進剤 (A)成分と下記(C)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部となる量
(C)硬化剤 (A)成分中のエポキシ基1当量に対し、該(C)成分中のエポキシ基と反応性を有する基が0.8〜1.25当量となる量、及び
(D)レーザー回折法で測定される累積頻度99%の粒径が前記第1半導体素子と第2半導体素子間距離の±20%である固体粒子 (A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して0.01〜200質量部となる量を含有し、ただし、(A)成分及び(C)成分の少なくともいずれかがシリコーン変性されているダイボンド剤組成物を提供する。また、さらに本発明は、上記ダイボンド剤組成物の硬化物を備える半導体装置及び、該半導体装置の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダイボンド剤組成物は、半導体素子の搭載後にワイヤーボンドの予備加熱温度で半硬化することが可能であり、ワイヤーボンディングをするのに十分な強度及び平坦性を維持することができるため、Cステージ化をスキップして半導体素子をワイヤーボンディングすることが可能であり、半導体素子を3次元的に正確な位置にチルトやワイヤーの変形等の不良なく実装する事ができる。これによって、パッケージ製造工程の簡略化、生産性の向上、コスト削減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は実施例で製造した半導体装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、第1基板の一方の面側に配置された第1半導体素子と、前記第1半導体素子と前記第1基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、前記第1半導体素子の前記第1基板と反対側に配置された第2半導体素子とで構成される半導体装置において、前記第1半導体素子と前記第2半導体素子との間を封止するダイボンド剤組成物である。以下、ダイボンド剤組成物の各成分について詳細に説明する。
【0011】
(A)エポキシ樹脂
本発明において、(A)エポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を使用することができ特に制限はされないが、例えばノボラック型、ビスフェノール型、ビフェニル型、フェノールアラルキル型、ジシクロペンタジエン型、ナフタレン型、アミノ基含有型、後述するシリコーン変性エポキシ樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。なかでも(A)エポキシ樹脂はビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ノボラック型エポキシ樹脂及びシリコーン変性エポキシ樹脂が好ましい。
【0012】
シリコーン変性エポキシ樹脂は、アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを反応させて得られる共重合体である。アルケニル基含有エポキシ樹脂としては、たとえば下記式(1)〜(4)のものが挙げられる。
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【0013】
上記式(1)〜(4)において、Rは下記式で表されるグリシジル基であり、
【化5】

Xは水素原子又は臭素原子であり、nは0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜50の整数、より好ましくは0又は1〜20の整数である。mは0又は1以上の整数、好ましくは0又は1〜5の整数、より好ましくは0又は1である。ただし、樹脂が室温で固体であるためにはm/(m+n)が 0.01〜0.5、好ましくは0.02〜0.2の範囲であることが好ましい。
【0014】
上記アルケニル基含有エポキシ樹脂と反応させるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは下記平均組成式(5)で示される化合物である。
【化6】

【0015】
上記式(5)において、R2は置換、或いは非置換の1価炭化水素基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、或いはアルケニルオキシ基である。1価炭化水素基は、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜7であるのがよく、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基や、これらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をハロゲン原子等で置換したハロゲン置換1価炭化水素基が挙げられる。
【0016】
a、bは0.001≦a≦1、1≦b≦3、1≦a+b<4を満足する数であり、好ましくは0.01≦a≦0.1、1.8≦b≦2、1.85≦a+b≦2.1である。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中にケイ素原子を1〜1000個、好ましくは2〜400個、さらに好ましくは5〜200個有するものが望ましい。該オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、式(6)の化合物が挙げられる。
【0017】
【化7】

(R2は上述の通りであり、好ましくはメチル基或いはフェニル基である。pは1〜1000の整数、好ましくは3〜400の整数であり、qは0または1〜20の整数、好ましくは0または1〜5の整数であり、1<p+q<1000、好ましくは2<p+q<400、さらに好ましくは5<p+q<200を満たす整数である。)
【0018】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、さらに具体的には下記のものを挙げることができる。
【化8】

【0019】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子量100〜100,000、好ましくは500〜20000であることが望ましい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が前記範囲内である場合、該オルガノハイドロジェンポリシロキサンと反応させるアルケニル基含有エポキシ樹脂の構造或いは分子量により、オルガノハイドロジェンポリシロキサンがマトリクスに均一に分散した均一構造、或いはオルガノハイドロジェンポリシロキサンがマトリクスに微細な層分離を形成する海島構造が出現する。
【0020】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が比較的小さい場合、特に100〜10,000である場合は均一構造が形成され、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が比較的大きい場合、特に10,000〜100,000である場合は海島構造が形成される。均一構造と海島構造の何れかは用途に応じて選択されればよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子量が100未満であれば硬化物は剛直で脆くなり、一方、分子量が100,000より大きければ、海島構造が大きくなり局所的な応力が発生するため好ましくない。
【0021】
アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンを反応させる方法は公知の方法を用いることができ、例えば、白金系触媒の存在下で、アルケニル基含有エポキシ樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応に付する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、アルケニル基含有エポキシ樹脂が有するアルケニル基1モルに対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基が0.1〜1モルとなる量で共重合させることが好ましい。
【0022】
(B)硬化促進剤
本発明の硬化促進剤としては、有機リン、イミダゾール、3級アミン等の塩基性有機化合物が挙げられる。該硬化促進剤は反応性に優れ硬化速度が速いため、該硬化促進剤を含有するダイボンド剤組成物はワイヤーボンドの予備加熱で良好に半硬化することができ、また、ワイヤーボンドをするのに十分な強度を有する半硬化物を提供することができる。3級アミンとしてはトリエチルアミン、ベンジルジメチルアミン、α−メチルベンジルジメチルアミン、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等が挙げられる。
【0023】
有機リンとしては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−トルイル)ホスフィン、トリ(p−メトキシフェニル)ホスフィン、トリ(p−エトキシフェニル)ホスフィン、トリフェニルホスフィン・トリフェニルボレート誘導体、テトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体等が挙げられる。なかでも、下記式に表されるテトラフェニルホスフィン・テトラフェニルボレート誘導体が好ましい。
【0024】
【化9】

式中、R〜Rは夫々独立に水素原子又は或いは炭素数1〜10の炭化水素基、或いはハロゲン原子である。
【0025】
イミダゾールとしては下記式(7)で表されるイミダゾール誘導体が挙げられる。
【化10】

【0026】
式中、R、R、Rは互いに独立に水素原子、または炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の酸素原子、窒素原子、および硫黄原子を含んでいてよい1価炭化水素基である。該1価炭化水素基としては、例えば、アルキロール基、アルコキシ基、アミノ基、チオフェニル基等が挙げられ、R、Rの少なくとも1つがメチロール基であるのが好ましい。
【0027】
このようなイミダゾール誘導体としては、2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール等が挙げられる。
【0028】
中でも、下記式(8)で表されるメチロールイミダゾール誘導体が反応性に優れ硬化速度が速いため好ましい。
【化11】

式中、Rは炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜6の酸素原子、窒素原子、および硫黄原子を含まない1価炭化水素基であり、特に好ましくは、メチル基である。Rは前述の通りである。
【0029】
特に、下記式で表されるメチロールイミダゾール誘導体が好適に使用される。
【化12】

【0030】
また、本発明のダイボンド剤組成物は、Cステージ化をスキップしない従来工程でのパッケージの製造においても使用することができ、この場合には、上記式(8)においてRがメチロール基である硬化促進剤を使用するのが良い。
【0031】
(B)硬化促進剤の配合量は、(A)エポキシ樹脂と(C)エポキシ樹脂硬化剤との合計の100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5質量部であることがよい。硬化促進剤が前記下限値未満である場合は、ワイヤーボンドの予備加熱で半硬化することができず、予備加熱後のダイボンド剤組成物にワイヤーボンド可能な強度及び平坦性を付与することが出来ない。また、ダイボンド剤組成物が硬化不十分になる恐れがある。また、前記上限値より多い場合は、ダイボンド剤組成物の保存性に支障をきたす恐れがある。
【0032】
(C)硬化剤
(C)硬化剤は、エポキシ樹脂用硬化剤として公知のものを使用することができ、例えばフェノール樹脂、酸無水物、及びアミン類が挙げられる。この中でも硬化性とBステージ状態での安定性を考慮すると、フェノール樹脂が好ましい。フェノール樹脂としては、アラルキル型、ノボラック型、ビスフェノール型、トリスヒドロキシフェニルメタン型、ナフタレン型、シクロペンタジエン型、フェノールアラルキル型フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂等が挙げられ、これらを単独、あるいは2種類以上を混合して用いても良い。なかでもアラルキル型、ノボラック型、ビスフェノール型フェノール樹脂、シリコーン変性フェノール樹脂が好ましい。
【0033】
シリコーン変性フェノール樹脂としては、上記式(5)で示したオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、下記に示すアルケニル基含有フェノール樹脂とを反応させて得られる共重合体が挙げられる。反応は公知の方法を用いて行えばよく、例えば、白金系触媒の存在下で、アルケニル基含有フェノール樹脂とオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを付加反応に付する。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、アルケニル基含有フェノール樹脂が有するアルケニル基1モルに対し、オルガノハイドロジェンポリシロキサンが有するSiH基が0.1〜1モルとなる量で共重合させることが好ましい。
【0034】
該アルケニル基含有フェノール樹脂としては、たとえば下記に示すものが挙げられる。
【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

(但し、X、n、mは上述の通り。)
【0035】
成分(A)と成分(C)の配合比は、成分(A)中のエポキシ基1当量に対し、成分(C)中のエポキシ基と反応性を有する基が、0.8〜1.25当量であることが望ましく、特に0.9〜1.1当量であることが望ましい。当量比がこの範囲にない場合、一部未反応になり、硬化物の性能、更にはこれを用いる半導体装置の性能に支障をきたす恐れがある。
【0036】
なお、本発明のダイボンド剤組成物は、成分(A)と成分(C)の少なくともいずれかがシリコーン変性されているのが好ましく、成分(C)がシリコーン変性されていない場合、成分(A)がシリコーン変性エポキシ樹脂である。ダイボンド剤組成物がシリコーン鎖を含有することにより、低弾性であり耐熱サイクル性に優れた硬化物を与える。
【0037】
(D)固体粒子
(D)固体粒子は、ワイヤーボンディング時の第1半導体素子と第2半導体素子の平坦性を維持するために、第1半導体素子と第2半導体素子との間にギャップを確保するスペーサーとして機能する。該固体粒子は、レーザー回折法で測定される累積頻度99%の粒径(d99)が、第1半導体素子と第2半導体素子間距離の±20%、好ましくは±10%であることを特徴とする。d99が、上記上限値を超えると、チップ、基板、または金配線等にダメージを与え、後述する無機質充填材とそれ以外の部分との境界において局所的なストレスが発生し半導体装置の機能を損なう恐れがある。また、d99が、上記下限値未満では、第1半導体素子と第2半導体素子との間のスペーサーとしての役割が果たせないので好ましくない。中でも、累積頻度80%の粒径(d80)が、前記d99の80%以上、好ましくは85〜95%である固体粒子が好適に使用できる。このような固体粒子の粒径は、デバイスの設計に応じて適切な粒径の固体粒子を適宜選択すればよい。一般に第1半導体素子と第2半導体素子間の距離は10〜200μm、好ましくは20〜100μmであり、従って、d99は8〜250μm、好ましくは16〜120μm程度である。
【0038】
該固体粒子は、室温〜150℃、好ましくは100〜150℃のいずれかの温度で固体状であり、中でも球状粒子或いは略球状粒子がよい。特に、弾性を有するゴム状粒子が好適であり、例えば弾性率が0.1〜5GPaであるゴム状粒子がよい。固体粒子はBステージ化及びCステージ化の温度以上、特に半田リフロー時の温度以上で耐熱性を有するのがよく、好ましくは50〜300℃、特に100〜280℃で耐熱性を有するのがよい。
【0039】
このような固体粒子は、均一な粒子径分布を持ち、上記条件を満たすものであれば、無機質粒子あるいは合成樹脂粒子のいずれでも用いることができる。特に半導体素子表面を傷つけないために、ある一定の硬さと同時にある程度の弾性と圧縮変形後の回復率を任意の範囲内に調整することが容易に行える点で、合成樹脂製の粒子が好ましく用いられる。該スペーサーを形成するのに適している合成樹脂としては、以下の各種プラスチック材料等が挙げられるが、以下に限定されるものではない。ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール等の線状または架橋高分子;シリコーン複合パウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー等のシリコーンパウダー;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジビニルベンゼン重合体、ジビニルベンゼン−スチレン共重合体、ジビニルベンゼン−アクリル酸エステル共重合体、ジアリルフタレート重合体、トリアリルイソシアネート重合体、ベンゾグアナミン重合体等の網目構造を有する樹脂。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。特に、シリコーンパウダー、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリスチレン、架橋ジビニルベンゼンが好適に使用でき、ポリスチレン換算の重量平均分子量が10,000〜10,000,000、好ましくは100,000〜5,000,000であるものがよい。
【0040】
(D)成分の配合量は成分(A)と成分(C)の合計100質量部に対して、0.01〜200質量部、好ましくは0.05〜50質量部、さらに好ましくは0.1〜5質量部である。前記上限値超では組成物の高粘度化による作業性悪化となるため好ましくなく、前記下限値未満では第2半導体素子搭載後に平坦性が悪化するため好ましくない。
【0041】
本願発明のダイボンド剤組成物は、さらに、必要に応じて以下に説明する(E)無機充填材及び(F)熱可塑性樹脂粒子を加えることができる。
【0042】
(E)無機充填材
(E)成分は、前述した(D)固形粒子及び後述する(F)熱可塑性樹脂粒子を除く無機充填材であり、樹脂組成物の粘度や硬化物の強度を調製するために機能する。該無機質充填剤はレーザー回折法で測定される累積頻度99%の粒径(d99)が、第1半導体素子と第2半導体素子間の距離の20%以下、特に10%以下であることが望ましく、平均粒径が該距離の10%以下、特に5%以下であることが望ましい。d99が上記上限値より大きい、或いは、平均粒径が上記上限値より大きい場合は、チップ、基板、金配線等にダメージを与え、或いは無機質充填材とそれ以外の部分との境界において局所的なストレスが発生し、半導体装置の機能を損なう恐れがある。このような(E)無機充填材の平均粒径としては0.1〜5μm、好ましくは0.3〜3μmであり、平均粒径が上記下限値未満では組成物の粘度が上昇し、上記上限値超では半導体装置の機能を損なう恐れがあるため好ましくない。無機充填材の配合量は、(A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して10〜150質量部、好ましくは30〜100質量部である。
【0043】
このような無機充填材は、上述の粒子径を有するものであれば特に制限されないが、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、酸化チタン、シリカチタニア、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、マグネシア、マグネシウムシリケート、タルク、マイカ等を挙げることができ、これらは1種単独あるいは2種類以上組み合せて使用することができる。特に、シリカ、アルミナ、タルクを1種単独あるいは2種類以上組み合せて使用することが好ましい。
【0044】
また、該無機充填材は、樹脂と無機充填材との結合強度を強くするため、予めシラン系カップリング剤で表面処理したものを使用することが好ましい。より好ましくは、(A)成分のエポキシ樹脂とカップリング剤で表面処理した充填材とを予め減圧・混練処理を行うことが望ましい。これにより充填材表面とエポキシ樹脂の界面がよく濡れた状態とすることができ、耐湿信頼性が格段に向上する。
【0045】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。
【0046】
(F)熱可塑性樹脂粒子
(F)成分は、(D)及び(E)成分以外の、25℃で固体状の熱可塑性樹脂粒子であり、硬化物に低応力性を付与するために機能する。(F)熱可塑性樹脂粒子は略球状、円柱もしくは角柱状、不定形状、破砕状、及び燐片状等であるのがよく、特に略球状、及び鋭角部を有しない不定形状の樹脂粒子が好ましい。該熱可塑性樹脂粒子の平均粒径は、用途に応じて適宜選択されるが、レーザー回折法で測定される累積頻度99%の粒径(d99)が10μm以下、特に5μm以下であることが望ましく、平均粒径は0.1〜5μm、特に0.1〜2μmであることが望ましい。d99が前記上限値より大きい、或いは平均粒径が5μmより大きい場合は、半硬化或いは硬化段階において、熱可塑性樹脂粒子の一部が十分に膨潤或いは溶解せずに残存し、硬化後の組成物の特性を損なう恐れがある。一方、平均粒径が前記下限値よりも小さい場合は樹脂組成物の粘度が大きくなり作業性が著しく悪くなる恐れがある。なお樹脂粒子の粒径の測定は電子顕微鏡観察により行うことができる。
【0047】
熱可塑性樹脂は公知の樹脂であれば特に制限されるものでなく、例えばAAS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリブタジエン樹脂、各種のフッ素樹脂、各種のシリコーン樹脂、ポリアセタール、各種のポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポニフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリメタクリル酸メチル等が挙げられる。これらの中でもメタクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ブタジエン樹脂、ポリスチレン樹脂もしくはこれらの共重合体から選択される樹脂であることが望ましい。或いは粒子の内核(コア)部と外皮(シェル)部で樹脂が異なるコア・シェル構造ものであっても良い。その場合コアはシリコーン樹脂、フッ素樹脂、又はブタジエン樹脂等からなるゴム粒子であり、シェルは線形分子鎖からなる上記各種の熱可塑性樹脂であることが望ましい。
【0048】
また、(F)熱可塑性樹脂粒子は架橋構造を有していてもよい。しかし(F)熱可塑性樹脂粒子がエポキシ樹脂網目構造中に均一に分散された構造を形成することが好ましいと考えられることから、架橋度は低い方が好ましく、より好ましくは架橋の無い線状分子鎖である。(F)熱可塑性樹脂粒子の分子量は、樹脂の種類に依存して適宜選択される。典型的には、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,000〜10,000,000、好ましくは10,000〜100,000、重量平均分子量が10,000〜100,000,000、好ましくは100,000〜1,000,000である。数平均分子量が上記下限値より小さい、或いは重量平均分子量が上記下限値より小さい場合は、膨潤する温度が低温になりすぎ、Aステージ状態が不安定になる恐れがある。一方、数平均分子量が上記上限値より大きい、或いは重量平均分子量が上記上限値より大きい場合は膨潤する温度が高くなって、ワイヤーボンドの予備加熱時間では十分に膨潤せず、粒子熱可塑性樹脂の一部がエポキシ樹脂網目構造の形成を阻害する恐れがある。
【0049】
(F)熱可塑性樹脂粒子の配合量は(A)成分と(C)成分との合計の100質量部に対して、5〜50質量部、好ましくは10〜30質量部である。含有量が前記下限値より少ない場合は、十分な樹脂強度が得られず温度サイクル試験やリフロー試験でクラックが発生する可能性がある。一方含有量が前記上限値よりも多い場合は、エポキシ樹脂の網目構造の形成を阻害する恐れがある。
【0050】
その他の成分
上記成分の他、本発明の組成物には用途に応じて、シランカップリング剤、難燃剤、イオントラップ剤、ワックス、着色剤、接着助剤、希釈材等を、本発明の目的を阻害しない量で、添加することができる。
【0051】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシプロピル)テトラスルフィド、γ−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。これらの中でもγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを使用することが好ましい。上記カップリング剤を用いる場合、その使用量は、上記(A)〜(C)成分100質量部に対して、通常0.1〜5.0質量部であり、好ましくは0.3〜3.0質量部である。
【0052】
ダイボンド剤組成物の調製
本発明の組成物は、上記各成分を、公知の混合方法、例えば、ミキサー、ロール等を用いて混合することによって製造することができる。また、本発明のダイボンド剤組成物は、E型粘度計により25℃において測定される粘度が1〜400Pa・s、好ましくは5〜300Pa・sであることがよい。粘度が前記上限値超では、脱泡性不良によるボイド等が発生し充填性が劣り、前記下限値未満では平坦性不良となるため好ましくない。
【0053】
本発明のダイボンド剤組成物は、ワイヤーボンドの予備加熱、例えば、120〜180℃、特に140〜160℃で、1〜10分間、特に3〜7分間加熱することにより半硬化することが可能であり、予備加熱後のダイボンド剤組成物がワイヤーボンドするのに充分な強度を有することを特徴とする。尚、本明細書中において半硬化とは、樹脂組成物が部分的に架橋し流動性を有していない状態を意味する。半硬化した状態での強度は、予備加熱後のDSC発熱量(J/g)と予備加熱前のDSC発熱量(J/g)の比率で求めることができる。予備加熱後のDSC発熱量(J/g)が予備加熱前のDSC発熱量(J/g)の50%以下、好ましくは20〜50%、より好ましくは30〜40%であると、ワイヤーボンドをするときに半導体素子のずれを起こさず、良好にワイヤーボンドすることが可能になる。尚、予備加熱後のDSC発熱量(J/g)が予備加熱前のDSC発熱量(J/g)の50%以下とは樹脂組成物の硬化反応が50%以上進行していることを意味する。予備加熱後のDSC発熱量(J/g)が50%超では、樹脂組成物は未硬化(液状から半硬化前の状態であり、流動性を有する状態)であり、第2半導体素子が第1半導体素子に固定されず、ワイヤーボンディングをする時に第2半導体素子がずれるため好ましくない。
【0054】
本発明のダイボンド剤組成物は、第1基板の一方の面側に配置された第1半導体素子と、前記第1半導体素子と前記第1基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、前記第1半導体素子の前記第1基板と反対側に配置された第2半導体素子とで構成される半導体装置において、前記第1半導体素子と前記第2半導体素子との間を封止するダイボンド剤組成物である。また、本発明のダイボンド剤組成物は、第1基板と第1半導体素子の間を封止するダイボンド剤としても使用することができる。
【0055】
半導体装置の製造方法
本発明は(i)第1基板の一方の面側に配置された第1半導体素子の基板との接着面と反対側の面に本発明のダイボンド剤組成物を塗布する工程と、(ii)前記第1半導体素子上に塗布された該ダイボンド剤組成物上に第2半導体素子を搭載する工程を含む、半導体装置の製造方法を提供する。
【0056】
本発明の半導体装置の製造方法の一つとしては、以下の工程1〜8を含むものが挙げられる。当該工程により製造される半導体装置の断面図を図1に示す。(工程1)第1基板(1)の一方の面側に本発明のダイボンド剤組成物(6)を塗布する工程。(工程2)前記ダイボンド剤組成物(6)上に第1半導体素子(2)を搭載する工程。(工程3)前記第1半導体素子(2)と前記第1基板(1)をワイヤーボンディング(3)する工程。(工程4)前記第1半導体素子(2)上に本発明のダイボンド剤組成物(4)を塗布する工程。(工程5)前記ダイボンド剤組成物(4)上に第2半導体素子(5)を搭載する工程。(工程6)前記第2半導体素子(5)と前記第1基板(1)をワイヤーボンディング(3)する工程。(工程7)前記ダイボンド剤組成物(6)及び前記ダイボンド剤組成物(4)を硬化させる工程。(工程8)上記半導体装置全体を封止樹脂(7)で封止する工程。
【0057】
ダイボンド剤組成物を塗布する方法は特に制限されないが、例えば、スピンコーティング、印刷、圧縮成形等が挙げられる。ダイボンド剤組成物の厚みはデバイスの設計に応じて適宜選択すればよいが、通常、10〜200μm、好ましくは20〜100μmである。第1基板としては、BT基板又はFR−4、FR−5等のガラスエポキシ基板等が使用できる。
【0058】
第1半導体素子及び第2半導体素子の搭載方法は特に限定されるものではなく、適宜選択され、例えば、ダイボンダーを用いて熱圧着する方法等が挙げられる。半導体素子の搭載条件において、半導体素子搭載時の半導体素子及び基板の温度、時間、圧力が重要因子であり、例えば、半導体素子の温度が25℃乃至70℃、基板の温度が25℃乃至70℃、時間が0.1秒乃至10秒、圧力が0.01MPa乃至10MPaであることが望ましい。
【0059】
ダイボンド剤組成物の硬化条件は、100℃〜200℃、好ましくは110〜175℃の温度で、8〜1時間、好ましくは5〜2時間である。硬化は半導体装置全体の樹脂封止工程で同時に行ってもよい。半導体装置全体を樹脂封止する工程は従来公知の方法に従えばよく、封止樹脂及び封止条件は適宜選択すればよい。ワイヤーボンディングは公知の方法で行えばよく、例えば、ワイヤーボンダーにより、半導体素子の温度50℃、基板の温度25℃、圧力0.1kg/チップ面積、時間0.1秒の条件で行うことができる。
【0060】
本発明のダイボンド剤組成物は、第1半導体素子または第2半導体素子の搭載後に前述したワイヤーボンドの予備加熱温度で半硬化することが可能であり、ワイヤーボンディングをするのに十分な強度及び平坦性を維持することができるため、Cステージ化をスキップして第1半導体素子または第2半導体素子をワイヤーボンディングすることが可能である。これによって半導体素子を3次元的に正確な位置にチルトやワイヤーの変形等の不良なく実装する事ができ、パッケージ製造工程の簡略化、生産性の向上、コスト削減が可能になる。
【0061】
[実施例]
以下、実施例および比較例を示し、本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。尚、下記記載において累積頻度99%の粒径(d99)及び80%の粒径(d80)はレーザー回折法で測定したものである。
【0062】
シリコーン変性樹脂の合成
[合成例1]
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、式(9)のエポキシ樹脂42.0g(0.10mol)とトルエン168.0gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.5gを滴下し、直ちに式(10)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を30分程度で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これからトルエンを除去し、黄色透明液体(η=5Pa・s/25℃、エポキシ当量400、オルガノポリシロキサン含有量46.4質量%)を得た。これを(A)シリコーン変性エポキシ樹脂とした。
【化17】

【化18】

【0063】
[合成例2]
攪拌羽、滴下漏斗、温度計、エステルアダプターと環流管を取り付けたフラスコに、下記(11)のフェノール樹脂30.8g(0.10mol)とトルエン123.2gを入れ、130℃/2時間で共沸脱水を行う。これを100℃に冷却し、触媒(信越化学製CAT−PL−50T)0.5gを滴下し、直ちに上記式(10)のオルガノハイドロジェンポリシロキサン36.3g(0.05mol)とトルエン145.2gの混合物を30分程度で滴下し、更に100℃/6時間で熟成した。これからトルエンを除去し、褐色透明液体(η=20Pa・s/25℃、フェノール当量340、オルガノポリシロキサン含有量54.1質量%)を得た。これを(C)シリコーン変性硬化剤とした。
【化19】

【0064】
実施例1〜3、比較例1〜3
表1に示す各成分を、25℃のプラネタリーミキサーを用いて混合し、25℃の3本ロールを通過させた後、25℃でプラネタリーミキサーを用いて混合し、各組成物を調製した。各組成物について、後述の(a)乃至(c)の諸試験を行った。結果を表1に示す。
【0065】
使用樹脂等
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂a1:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量180、日本化薬社製RE310S)
エポキシ樹脂a2:合成例1で調製したシリコーン変性エポキシ樹脂(エポキシ当量400)
(B)硬化促進剤
硬化促進剤b1:2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成製 2E4MHZ−PW)
(C)硬化剤
硬化剤c1:ジアリルビスフェノールA(フェノール当量154、小西化学製 BPA−CA)
硬化剤c2:合成例2で調製したシリコーン変性硬化剤(フェノール当量340)
(D)固体粒子:ジビニルベンゼン(球状単分散:60μm、d99:65μm、d80:62μm、積水化学製、ミクロパールGS−260)
(E)無機充填材:球状溶融シリカ(平均粒径:0.8μm、d99:3μm、アドマッテクス製SE2030)
(F)熱可塑性樹脂粒子:ポリメタクリル酸メチル(数平均分子量:50,000、重量平均分子量:150,000、平均粒径:1μm、d99:3μm、軟化点:80〜100℃)
(G)その他の添加剤
シランカップリング剤:KBM−403(信越化学工業製)
【0066】
試験方法
(a)粘度
各組成物について、JIS Z−8803に準じ、E型粘度計(HBDV−III、ブルックフィールド社製)を用いて、測定温度25℃、ずり速度2.00(sec−1)、回転開始後2分における粘度を測定した。
【0067】
(b)DSC発熱量
各組成物を150℃で5分間加熱した後のDSC発熱量と、加熱前のDSC発熱量を測定装置TG-DSC(メトラー社製)、条件試料10mg、昇温速度10℃/minを用いて測定し、(150℃で5分間加熱した後のDSC発熱量/加熱前のDSC発熱量)×100(%)を算出し、150℃で5分間加熱した後のDSC発熱量が初期のDSC発熱量の50%以下であるものを○、50%超であるものを×とした。
【0068】
(c)予備加熱後の強度
AUS308(20μm厚)を塗布したBT基板(200μm厚、35mm×35mm)上に、ディスペンサーを用いて各組成物を塗布した(3mm)。各組成物上に半導体素子(700μm厚、5mm×5mm)をダイボンダーを用いて搭載し、チップ温度50℃、基板温度25℃、圧力0.1kg/チップ面積、時間0.1秒の条件でダイボンディングした。その後150℃/5minで加熱した後、25℃でのせん断接着力を測定し、せん断接着力が5kg以上のものを○、5kg以下のものを×とした。
【0069】
第1半導体素子と第2半導体素子間の距離が60μmである半導体装置の製造
AUS308(20μm厚)を塗布したBT基板(200μm厚、35mm×35mm)上に、ディスペンサーを用いて各ダイボンド剤組成物を塗布した(7mm)。該ダイボンド剤組成物上に第1半導体素子(200μm厚、10mm×10mm)をダイボンダーを用いて搭載し、チップ温度50℃、基板温度25℃、圧力0.1kg/チップ面積、時間0.1秒の条件でダイボンディングした。その後150℃/5minで予備加熱した後ワイヤーボンディングした。次に、該第1半導体素子上に各ダイボンド剤組成物をディスペンサーを用いて塗布し(6mm)、該ダイボンド剤組成物上に第2半導体素子(200μm厚、9mm×9mm)をダイボンダーを用いて搭載し、チップ温度50℃、基板温度25℃、圧力0.1kg/チップ面積、時間0.1秒の条件でダイボンディングした。その後150℃/5minで予備加熱した後ワイヤーボンディングした。次に、窒素通気下120℃/1時間+165℃/2時間でダイボンド剤組成物を硬化した。さらに、前記積層体をKMC−2520(信越化学工業製エポキシ封止材)で封止した。製造した半導体装置の断面図を図1に示す。封止条件は金型温度175℃、注入時間10秒、注入圧70KPa、成型時間90秒、後硬化条件は180℃/2時間であり、成型後の試験片全体は1000ミクロン厚、35mm×35mmである。該試験片を20個作成し、以下の(d)乃至(f)の諸試験に用いた。結果を表1に示す。
【0070】
(d)耐リフロー性
上記で得た試験片を、85℃/85%RHの恒温恒湿器に168時間放置して、更に最高温度が260℃であるIRリフローオーブン中を3回通過させた後に、超音波索傷装置で、剥離、クラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数(20個)を数えた。
【0071】
(e)温度サイクル試験
上記(d)耐リフロー性試験を行なった後にクラック等の無かった試験片を、温度サイクル試験機に投入した。−55℃/30分+(−55℃→125℃)/5分+125℃/30分+(125℃→−55℃)/5分を1サイクルとし、500サイクル或いは1000サイクル施した後に、超音波索傷装置を用いて剥離及びクラック等の不良の有無を観測し、不良が見られる試験片数/総試験片数を数えた。
【0072】
(f)第2半導体素子を搭載後の平坦性
上記(d)及び(e)で使用した後の半導体素子を対角線で垂直に切断し、第1半導体素子と第2半導体素子間のダイボンド剤の厚さを測定し、次の式を用いて各組成物の平坦性を算出し、平坦性が10%未満のものを○、平坦性が10%以上のものを×とした。
平坦性=((ダイボンド剤の最厚部−ダイボンド剤の最薄部)/ダイボンド剤の平均厚さ)×100(%)
【0073】
【表1】

【0074】
表1より、本発明のダイボンド剤組成物は、ワイヤーボンドの予備加熱で良好に半硬化し、ワイヤーボンド時に半導体素子のずれを起こさない十分な強度を有し、かつ平坦性を維持することができる。また、シリコーン変性された樹脂を有することにより、温度サイクル性に優れた硬化物を提供することができる。
[実施例4]
【0075】
本発明のダイボンド剤組成物を、Cステージ化をスキップしないで半導体装置を製造する工程で使用した例を以下に示す。
【0076】
硬化促進剤b1に変えて、硬化促進剤b2として2−フェニル−4,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成製2PHZ−PW)を配合した以外は、実施例1と同様の組成及び方法でダイボンド剤組成物を調製した。AUS308(20μm厚)を塗布したBT基板(200μm厚、35mm×35mm)上に、ディスペンサーを用いて該ダイボンド剤組成物を塗布した(7mm)。該ダイボンド剤組成物上に第1半導体素子(200μm厚、10mm×10mm)をダイボンダーを用いて搭載し、125℃/1hr+165℃/2hrで硬化した。その後、第1半導体素子と基板をワイヤーボンドした。次に、ダイボンド剤組成物を、該第1半導体素子上に塗布後、第2半導体素子を搭載し、125℃/1hr+165℃/2hrで硬化した後、第2半導体素子と基板をワイヤーボンドした。さらに、前記積層体をKMC−2520(信越化学工業製エポキシ封止材)で封止し、断面が図1で示される試験片を20個作成し、耐リフロー性、温度サイクル性、及び平坦性を評価した。結果を表2に示す。
【0077】
【表2】

【0078】
表2より、本発明のダイボンド剤組成物はCステージ化をスキップしない工程で半導体装置を製造する場合においても良好に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明のダイボンド剤組成物は、パッケージの製造工程においてCステージ化をスキップして半導体素子をワイヤーボンディングすることを可能にし、さらに、半導体素子を正確な位置にチルトやワイヤーの変形等の不良なく実装する事ができる。これにより、パッケージの製造工程の簡略化、生産性の向上、コスト削減を可能とする。本発明のダイボンド剤組成物は特にチップ積層型のパッケージの製造用において有用である。
【符号の説明】
【0080】
1 第1基板
2 第1半導体素子
3 ボンディングワイヤ
4 ダイボンド剤組成物
5 第2半導体素子
6 ダイボンド剤組成物
7 封止樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板の一方の面側に配置された第1半導体素子と、前記第1半導体素子と前記第1基板とを電気的に接続するボンディングワイヤと、前記第1半導体素子の前記第1基板と反対側に配置された第2半導体素子とで構成される半導体装置の前記第1半導体素子と前記第2半導体素子との間を封止するダイボンド剤組成物であって、
(A)エポキシ樹脂
(B)硬化促進剤 (A)成分と下記(C)成分の合計100質量部に対して0.1〜10質量部となる量
(C)硬化剤 (A)成分中のエポキシ基1当量に対し、該(C)成分中のエポキシ基と反応性を有する基が0.8〜1.25当量となる量、及び
(D)レーザー回折法で測定される累積頻度99%の粒径が前記第1半導体素子と第2半導体素子間距離の±20%である固体粒子 (A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して0.01〜200質量部となる量を含有し、ただし、(A)成分及び(C)成分の少なくともいずれかがシリコーン変性されているダイボンド剤組成物。
【請求項2】
120〜180℃のいずれかの温度で、1〜10分のいずれかの時間加熱した後のDSC発熱量が、加熱前のDSC発熱量の50%以下であることを特徴とする、請求項1に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項3】
さらに(E)無機充填材を(A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して10〜200質量部で含有する、請求項1または2に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項4】
さらに(F)25℃において固体状の熱可塑性樹脂粒子を(A)成分と(C)成分の合計100質量部に対して5〜50質量部で含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項5】
(D)成分が室温〜150℃のいずれかの温度で固体状の粒子である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項6】
(D)成分が球状粒子或いは略球状粒子である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項7】
(B)成分が下記式(7)で示されるイミダゾール誘導体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物。
【化1】

(式中、R、R、Rは、互いに独立に水素原子、または炭素数1〜10の酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子を含んでいてよい1価炭化水素基である)
【請求項8】
イミダゾール誘導体が下記式(8)で示される化合物である請求項7に記載のダイボンド剤組成物。
【化2】

(式中、Rは炭素数1〜10の酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子を含まない1価炭化水素基であり、Rは水素原子、または炭素数1〜10の酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子を含んでいてよい1価炭化水素基である)
【請求項9】
成分(F)が、メタクリル樹脂、フェノキシ樹脂、ブタジエン樹脂、ポリスチレン樹脂又はこれらの共重合体から選択される熱可塑性樹脂粒子である、請求項1〜8のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項10】
成分(F)が、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,000〜10,000,000であり、及び重量平均分子量が10,000〜100,000,000である熱可塑性樹脂粒子である、請求項1〜9のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項11】
E型粘度計により25℃において測定される粘度が1〜400Pa・sである、請求項1〜10のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物の硬化物を備える半導体装置。
【請求項13】
(i)第1基板の一方の面側に配置された第1半導体素子の、該基板との接着面と反対側の面に請求項1〜11のいずれか1項に記載のダイボンド剤組成物を塗布する工程、(ii)前記第1半導体素子上に塗布されたダイボンド剤組成物上に第2半導体素子を搭載する工程を含む、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−7007(P2012−7007A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141806(P2010−141806)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】